【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、第1のファセットミラーまたは第2のファセットミラーのファセット要素のうちの少なくとも1つがEUV放射を回折させるための回折光学要素として設計される冒頭部で述べたタイプの照明システムによる第1の態様に従って達成される。
本発明は、事前定義された、例えば、球面の表面形態によってではなく、回折によって、すなわち、ファセット要素によって事前定義されたグレーティング構造での入射EUV放射の回折によって、ファセット要素の所要のビーム整形をもたらすことを提案する。EUV波長範囲、すなわち、約5nmと約20nmとの間の波長の放射用を含む、反射効果を有する回折光学要素の生産性または機能性は、P.Naulleau等によって説明されており、EUV位相マスクの実現を記載している論文"Diffractive optical elements and their potential role in high efficiency illuminators",2008 EUV Workshop, 6/12/2008,Lawrence Berkeley National Laboratoryを参照されたい。そこに記載されている1つの例示的な実施形態では、基板は2値(単段)表面構造を備えており、それに反射多層被覆が施されている。多層被覆の層をできるだけ共形に施すことによって位相ホログラムを発生させることができる。
回折光学要素のようなファセット要素の実施形態は、EUV放射の(ほとんど)任意の入射ビームプロファイルをそれぞれ反射され回折された所望のビームプロファイルに変換することを可能にする。特に、一方または両方のファセットミラーの各ファセット要素は、照明システムの各部分ビームまたはチャネルに対して理想的なビームプロファイルを発生させるために個別に適合された回折の性質を備えることができる。EUV放射のビーム整形は回折によって行われるので、ファセット要素の表面形態は、その生成が簡単化されるように選ぶことができる。照明システムで回折光学要素を使用することによるさらなる利点は、回折光学要素が、その活性領域で入射放射を混ぜ合わせ、それにより、照明放射の均質化または均一性を改善することである。例として、第1のファセットミラーのそれぞれのファセット要素は、(それに割り当てられた)瞳ファセットミラーのファセット要素をできるだけ均質に、例えば、「シルクハット」照明分布で照明するために使用することができる。
【0005】
本発明の第1の態様に従った一実施形態では、第2のファセットミラーのファセット要素のうちの少なくとも1つは、照明視野の一部のみを照明するための回折光学要素として設計される。このようにして、照明視野の角度分布または瞳は照明視野の異なる部分には異なるように選ぶことができる、すなわち、瞳が照明視野にわたって場所依存で変化する照明視野を発生させることが可能である。例として、照明視野の中央部分領域では、X双極子、すなわち、照明視野の短い側の方向に向けられた双極子のような瞳分布を実現することが可能であり、一方、照明視野の外側部分領域では、Y双極子、すなわち、照明視野の長い側の方向に向けられた双極子を実現することが可能であり、逆も同様である。従来の照明システムでは、対照的に、照明視野全体が、一般に、瞳ファセットミラーのそれぞれのファセット要素によって照明される。
【0006】
ウェハスキャナのようなEUV投影露光装置では、照明視野は、一般に、長方形であり、例えば20:1の高いアスペクト比を有し、短い側は走査方向に平行に延びる。上述でより詳しく説明したように、視野ファセットミラーのファセット要素の形状は、一般に、照明視野の形状に対応する。しかしながら、適切な場合、瞳ファセットミラーで回折ファセット要素を使用して、照明視野の形状から外れた形状を選ぶことが可能である、すなわち、視野ファセット要素のために異なるアスペクト比を、適切な場合、正方形の形状さえ選ぶことが可能である。このようにして、適切な場合、視野ファセットミラーのファセット要素のサイズを減少させることが可能であり、かつ/または前記ファセット要素は中間焦点からより小さな距離に配列することができ、またはより多くのファセット要素が同じ距離で実現され得る。
【0007】
1つの実施形態では、ファセット要素は照明視野の一部を照明するように設計され、照明視野の一部は少なくとも2つの非連続な部分領域を含む。回折光学要素を使用すると、照明視野の一部を同時に照明することが可能になり、照明視野の一部は、具体的には入射EUV放射が異なる次数の回折(例えば、−1次および+1次の回折)に回折されることによる、2つの(または多分より多くの)非連続な部分領域を含む。
【0008】
1つの実施形態では、第2のファセットミラーは、照明視野の第1の部分を照明するための複数の第1のファセット要素と、照明視野の第2の部分を照明するための複数の第2のファセット要素とを有し、前記第2の部分は第1の部分と異なる。照明視野の第3、第4、…の部分を照明するための第3、第4、…のファセット要素を設けることもでき、照明視野の部分はいずれの場合も互いに異なることができることは言うまでもない。瞳ファセットミラーは、ここで、特に、異なるタイプのファセット要素によって照明される照明視野の部分が互いに補完して、全照明視野を形成するように構成することができる。
適切な場合、瞳ファセットミラーのそれぞれの第1、第2、…のファセット要素によって照明される照明視野の部分の間に重なりがあることも可能である。これは、3つの、特に4つ以上の異なるタイプのファセット要素が瞳ファセットミラーに設けられ、それらが、適切な場合、露光動作中に、照明されるべきマスク構造に応じて選択され得る場合に特に有利である。適切な場合、さらに、露光の間の走査動作中に、それぞれ画像化されるべきであり、現在、照明視野に位置を定められているマスクのその部分領域(ストリップ)に、瞳ファセットミラーのファセット要素の選択、したがって、照明視野の場所依存瞳を適合させることができる。
1つの有利な実施形態では、第1のファセットミラーのファセット要素は、第1のファセット要素を照明するための第1の位置と、第2のファセット要素を照明するための第2の位置との間で切り替えられ得る。第1のファセットミラーのファセット要素は、一般に、照明視野の所望の瞳形状を実現する役割を果たす瞳ファセットミラーのそれらの(第1または第2の)ファセット要素を、狙った通りに、選択するために、少なくとも2つの(角度)位置間で切替え可能である。この場合、一般に、複数の切替え位置(少なくとも2つ)を選ぶことができ、放射は、2つの(またはより多くの)異なる角度または(狭い)角度分布で入射する。第1または第2のファセット要素の照明の狙い通りの選択の結果として、場所依存で照明視野の瞳を変更し、瞳を、例えば、それぞれ画像化されるべきマスク構造に適合させることが可能である。
【0009】
さらなる実施形態では、第2のファセットミラーのファセット要素は、第1のファセット要素が第2のファセット要素と交互になる格子配列を形成する。それは、照明視野の異なる部分領域を照明するためのファセット要素が互いに比較的小さい距離に配列される場合、有利であることが立証された。このように、瞳ファセットミラーの第1のファセット要素を照明するための第1の位置と瞳ファセットミラーの第2のファセット要素(および、適切な場合、第3、第4、…のファセット要素)を照明するための第2の位置との間の視野ファセットミラーのファセット要素の差または差角は、比較的小さい。これは、視野ファセットミラーのファセット要素の反射率が、一般に、狭い入射角範囲でのみ最適化されるので有利である。
【0010】
さらなる実施形態では、ファセット要素のうちの少なくとも1つは、EUV放射を放射センサ上に偏向させるための回折光学要素として設計される。回折光学要素は、特に、入射EUV放射の放射パワーの一部のみを高次の回折に反射するように設計することができ、一方、放射パワーの主要部分は照明視野を照明するために使用される。放射センサは、入射EUV放射の放射強度またはパワーを検出し、照明システムの上流に配設されたEUV光源のパワーを検査する役割、および、適切な場合、調整する役割を果たすことができる。
【0011】
さらなる実施形態では、ファセット要素のうちの少なくとも1つは平面表面形態を有し、特別に、すべてのファセット要素が平面表面形態を有する。(実質的に)平坦な表面形状を有するファセット要素は、他の表面形態、例えば球面の表面形態と比較してより正確に生成することができる。ファセット要素で一般に使用される球面形態の場合には、さらに、隣接するファセット要素が隣接する縁部領域で相互に互いに遮光するという問題がある可能性がある。本出願の意味内では、平坦表面形態は、多分実行される表面構造化の前に、使用される基板が平坦形状を有する表面形態であると理解される(以下を参照)。
【0012】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの回折ファセット要素は、付形面を有する基板と、EUV放射を反射するための多層被覆とを有し、前記多層被覆は基板に施される。多層被覆は、一般に、異なる材料からなる複数の個々の層を有し、一般に、異なる屈折率を有する2つの材料からなる交互層が使用される。個々の層の層厚および層材料は、ファセット要素で反射されるべきEUV放射波長に適合される。ファセット要素を回折光学要素として使用することができるように、回折光学要素は付形面を有する。表面プロファイルは、例えば2値プロファイル、すなわち、1段または1段高所(one step height)のみを有するプロファイルとすることができる。
1つの展開では、基板は多段表面プロファイルを有する。2、3、4、…、n段表面プロファイルによって、例えば、鋸歯様表面構造、したがって、鋸歯またはブレーズドグレーティングの三角形形状に近似することが可能である。波長に適合した好適なブレーズ角と、近似した鋸歯構造間の距離とを選ぶことによって、入射EUV放射が反射される次数の回折を、狙った通りに、選択し、回折効率を向上させることが可能である。ブレーズプロファイルは、例えば、フレネルレンズのような回折光学要素を生成するために使用することができる、すなわち、EUV放射は単一次数の回折にのみ偏向される。ビーム整形では、少なくとも2段表面プロファイル、好ましくは、多段表面プロファイルが不規則であり、明確に定められた周期性がなく、その結果、離散的な次数の回折を区別できない回折光学要素を使用することが可能である。そのようなビーム整形回折光学要素の場合には、しかも、多段表面プロファイルは回折効率を向上させることができる。
【0013】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの回折要素は、一般に基板の付形面として具現されるグレーティング構造を有し、グレーティング構造はEUV放射の波長の大きさの程度の横方向範囲(lateral extent)を有する。EUV放射の回折では、グレーティング構造の横方向範囲(格子定数またはピッチとも呼ばれる)は、一般に、それぞれ反射され回折されるEUV放射の波長λの大きさの程度である、すなわち、グレーティング構造の横方向範囲は、一般に、50×λ、好ましくは10×λ、より好ましくは5×λを超えない。EUV放射の波長は、一般に、5nmと15nmとの間にあるので、グレーティング構造の最大の横方向範囲(格子定数)は750nmを超えず、好ましくは150nm以下、特に75nm以下である。当然、EUV放射の波長λが15nm未満、例えば13.5nmである場合、グレーティング構造の横方向範囲はそれに応じて減少される。
【0014】
本発明のさらなる態様は、上述のように具現される照明システムを含むEUVリソグラフィデバイスに関する。上述でより詳しく説明したように、照明システムは、画像化されるべき構造(マスク)が配列される面の像視野をできるだけ均質に照明する役割を果たす。ここで説明する照明システムを用いて、照明視野の場所またはそれぞれ照明される部分に依存する角度分布(場所依存瞳)を発生させることができる。
本発明の1つの態様は、本発明の1つの態様は、特に、上述したような照明システムのためのファセットミラーで実現され、ファセットミラーはEUV放射を反射するための少なくとも1つの回折ファセット要素を含み、回折ファセット要素は、基板と、EUV放射を反射する多層被覆とを含み、前記多層被覆は基板に施され、少なくとも1つの回折ファセット要素はEUV放射を回折させるように設計される。
【0015】
1つの実施形態では、一般に基板の付形面として具現され、EUV放射の大きさの程度の横方向範囲を有するグレーティング構造を、少なくとも1つの回折ファセット要素は有する。上述で示したように、横方向範囲(格子定数またはピッチ)は、一般に、50×λ以下、10×λ以下、特に5×λ以下であり、ここで、λはEUV放射の波長を示す。
【0016】
好ましくは、基板は多段表面プロファイルを有する。多段表面プロファイルの結果として、鋸歯様表面構造が近似されて、またはグレースケールリソグラフィ(以下を参照)の場合には、鋸歯様表面構造を生成して、例えばブレーズドグレーティングのような回折光学要素を実現し、特定の事前定義された次数の回折へのEUV放射の回折の効率を向上させることができる。ビーム整形回折ファセット要素を実現するために、多段表面プロファイルは、非周期的表面構造に近づくように設計することもできる。多段表面プロファイルは、例えばリソグラフィ法を用いて表面を微細構造化することによって実現することができる。
好ましくは、多段表面プロファイルは、異なる段高所を有する少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは4つの段を有する。段または段高所の数が多いほど、所望の表面プロファイルに十分に近づくことができ、一般に、回折ファセット要素の回折効率は大きくなる。極端な場合には、(疑似)連続高所プロファイルまたは表面プロファイルも可能であり、個々の段はもはや識別できない。そのような表面プロファイルは、例えば、グレースケールリソグラフィを用いて生成することができる。
【0017】
さらなる実施形態では、多層被覆は、多段表面プロファイルを平滑にするために、少なくとも100個の個々の層、好ましくは少なくとも120個の個々の層、特に少なくとも150個の個々の層を有する。この場合、個々の層は、高い屈折率材料または低い屈折率材料から構成された層であり、個々の層の層厚および層材料は、ファセット要素で反射されるべきEUV放射波長に整合されると理解される。例えば、拡散を防止するように、または環境にある汚染物質に対して多層被覆を保護するように設計される多層被覆の追加の層は、本出願の意味内では個々の層と見なされない。
【0018】
十分に多くの個々の層を設けることによって、多層被覆において実質的に連続な位相プロファイル(substantially continuous phase profile)を実現することが可能であり、その結果、特に、ブレーズドグレーティングのような鋸歯様表面構造に近づくように設計された表面構造の場合には、所望の次数の回折への回折の効率を最大にすることができる。この場合、それは、例えば鋸歯様表面構造のグレーティング構造の横方向範囲がEUV放射の波長よりも著しく小さい範囲内にある場合に有利であり、それは、個々の層の層厚がほとんどこの範囲内にあり、個々の層が、層厚と同等であるかまたは層厚よりも著しく大きい横方向範囲を有する構造に共形に成長するからである。
多層被覆は、従来の被覆法によって、すなわち、平坦状に、施すことができる。特に、気相からの層材料の従来の堆積を、多層被覆を施すために使用することができる。多層被覆の層による平滑化に加えてまたはその代替として、基板の多段表面プロファイルに施される平滑化層を使用することも可能である。平滑化層は、一般に、機械的に平滑化されるかまたは研磨され、その結果、平滑化層は所望の表面プロファイルを有するかまたはそれに近づく。平滑化に好適な従来の材料、例えば、SiまたはSiO
2を、平滑化層のための材料として使用することができる。後続のステップで、多層被覆が平滑化層に施される。
【0019】
ファセットミラーが瞳ファセットミラーとして使用される場合、特に、照明視野の第1の部分を照明するために使用される第1のファセット要素の多段表面プロファイルは、照明視野の第2の部分を照明するために使用される第2のファセット要素の多段表面プロファイルと異なることが可能である。
一般に、第1および/または第2のファセット要素の表面プロファイルも互いに異なり、専用の個々の表面プロファイルを、特に、ファセット要素ごとに定めることができる。適切な場合、回折光学要素の表面に形成される回折グレーティングのグレーティング周期は、適切な場合、基板表面の場所にも依存すること、すなわち、表面にわたって一定である単一周期長のみを基板が有することが必ずしも必要ではないことは言うまでもない。同じことが、付形面によって近似される可能性のある鋸歯様表面構造のブレーズ角に当てはまる。特に、もはや均一の周期長でない表面プロファイルを生成することも可能である。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明に不可欠な詳細を示す図面の図を参照した本発明の例示的な実施形態の以下の記述から、および特許請求の範囲から明白である。個々の特徴はいずれの場合もそれ自体個々に、または本発明の変型では任意の所望の組合せで複数として実現することができる。
例示的な実施形態が、概略図で示され、以下の記述で説明される。