特許第6285965号(P6285965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6285965EUVリソグラフィデバイス用照明システムおよびそのためのファセットミラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6285965
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】EUVリソグラフィデバイス用照明システムおよびそのためのファセットミラー
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180215BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20180215BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G03F7/20 521
   G02B5/08 A
   G02B5/18
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-558395(P2015-558395)
(86)(22)【出願日】2014年2月11日
(65)【公表番号】特表2016-513281(P2016-513281A)
(43)【公表日】2016年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2014052639
(87)【国際公開番号】WO2014128025
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】102013202948.9
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/767,986
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ルオッフ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ゼンガー インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン ヨルク
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンナーケス クリシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】シュレゼナー フランク
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−519172(JP,A)
【文献】 特開2012−227526(JP,A)
【文献】 特表2013−503460(JP,A)
【文献】 特表2013−516079(JP,A)
【文献】 特開2012−244184(JP,A)
【文献】 特開2011−228698(JP,A)
【文献】 特表2005−536900(JP,A)
【文献】 特開2001−244168(JP,A)
【文献】 米国特許第6392792(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィデバイス(1)のための照明システム(10)であって、
EUV放射(4)を反射するファセット要素(13a〜d)を有する第1のファセットミラー(13)と、
前記第1のファセットミラー(13)によって反射された前記EUV放射(4)を照明視野(BF)上に反射するためのファセット要素(14a〜d)を有する第2のファセットミラー(14)と
を含み、
前記第2のファセットミラー(14)の前記ファセット要素(14a、c;14b、d)のうちの少なくとも1つが、前記EUV放射(4)を回折させるための回折光学要素として設計され、
前記第2のファセットミラー(14)の前記ファセット要素(14a、c;14b、d)のうちの少なくとも1つが、前記照明視野(BF)の一部(T1;T2)のみを照明するための回折光学要素として設計される、
ことを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記ファセット要素(14a、c)が前記照明視野(BF)の一部(T1)を照明するように設計され、前記一部が少なくとも2つの非連続な部分領域(A1、A2)を含む、請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記第2のファセットミラー(14)が、前記照明視野(BF)の第1の部分(T1)を照明するための複数の第1のファセット要素(14a、c)と、前記照明視野(BF)の第2の部分(T2)を照明するための複数の第2のファセット要素(14b、d)とを有し、前記第2の部分が前記第1の部分と異なる、請求項1または2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記第1のファセットミラー(13)のファセット要素(13a〜d)が、前記第2のファセットミラー(14)の前記第1のファセット要素(14a、c)を照明するための第1の位置と、前記第2のファセットミラー(14)の前記第2のファセット要素(14b、d)を照明するための少なくとも第2の位置との間で切り替え可能である、請求項3に記載の照明システム。
【請求項5】
前記第2のファセットミラー(14)の前記ファセット要素(14a〜d)は、第1のファセット要素(14a、c)が第2のファセット要素(14b、d)と交互になる格子配列を形成する、請求項3または4に記載の照明システム。
【請求項6】
前記ファセット要素(13a〜d、14a〜d)のうちの少なくとも1つが、EUV放射(4)を放射センサ(25)上に偏向させるための回折光学要素として設計される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項7】
前記ファセット要素(13a〜d、14a〜d)のうちの少なくとも1つが、平坦表面形態を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項8】
少なくとも1つの回折ファセット要素(13a〜d、14a〜d)が、付形面(26a)を有する基板(26)と、EUV放射(4)を反射するための多層被覆(28)とを有し、前記多層被覆が前記基板(26)に施される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項9】
前記基板(26)が、多段表面プロファイル(27b、27c)を有する、請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
少なくとも1つの回折ファセット要素(13a〜d、14a〜d)が、前記EUV放射(4)の波長(λB)の大きさの程度の横方向範囲(D)を有するグレーティング構造(27a〜c)を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の照明システム。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の照明システム(10)を含むEUVリソグラフィデバイス(1)。
【請求項12】
前記第1のファセットミラー(13)の前記ファセット要素(13a〜d)のうちの少なくとも1つが、回折光学要素として設計される、請求項1に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUV放射を反射するファセット要素を有する第1のファセットミラーと、第1のファセットミラーによって反射されたEUV放射を照明システムの照明視野上に反射するためのファセット要素を有する第2のファセットミラーとを含むEUVリソグラフィデバイス用照明システムに関する。本発明は、さらに、そのような照明システムを含むEUVリソグラフィデバイスと、少なくとも1つの回折ファセット要素を含むファセットミラーとに関する。
EUVリソグラフィデバイスの照明システム、特に、EUV投影露光装置では、ファセットミラーの形態の光学要素は、照明システムによって照明される照明視野において、EUV光源によって発生された放射の均質化を生じさせるのに使用される。この場合、視野ファセットミラーとも呼ばれる第1のファセットミラーが、一般に、照明システムの二次光源を発生させるために使用される。第2のファセットミラーは、第1のファセットミラーによって発生された二次光源の場所に配列され、瞳ファセットミラーと呼ばれる。第2のファセットミラーのファセット要素は、第1のファセットミラーのファセット要素を照明視野上に画像化する役割を果たす。それゆえに、第1のファセットミラーのファセット要素(例えば、正方形、長方形、…)の形状は、一般に、照明視野の形状に対応する。
【0002】
ファセットミラーがEUVリソグラフィデバイスで使用される場合、光損失に関連した理想的でない画像化が、ファセット要素の生成中の製造誤差のために生じる可能性がある。この場合に不利に作用するものは、画像化またはビーム整形に必要とされる個々のファセット要素の表面形態を、十分正確に生成することができないか、または従来の生成方法では非常に高い費用でしか生成することができない可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、照明視野の照明を最適化することができるように、照明システム、前記照明システムを含むEUVリソグラフィデバイス、およびファセットミラーを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、第1のファセットミラーまたは第2のファセットミラーのファセット要素のうちの少なくとも1つがEUV放射を回折させるための回折光学要素として設計される冒頭部で述べたタイプの照明システムによる第1の態様に従って達成される。
本発明は、事前定義された、例えば、球面の表面形態によってではなく、回折によって、すなわち、ファセット要素によって事前定義されたグレーティング構造での入射EUV放射の回折によって、ファセット要素の所要のビーム整形をもたらすことを提案する。EUV波長範囲、すなわち、約5nmと約20nmとの間の波長の放射用を含む、反射効果を有する回折光学要素の生産性または機能性は、P.Naulleau等によって説明されており、EUV位相マスクの実現を記載している論文"Diffractive optical elements and their potential role in high efficiency illuminators",2008 EUV Workshop, 6/12/2008,Lawrence Berkeley National Laboratoryを参照されたい。そこに記載されている1つの例示的な実施形態では、基板は2値(単段)表面構造を備えており、それに反射多層被覆が施されている。多層被覆の層をできるだけ共形に施すことによって位相ホログラムを発生させることができる。
回折光学要素のようなファセット要素の実施形態は、EUV放射の(ほとんど)任意の入射ビームプロファイルをそれぞれ反射され回折された所望のビームプロファイルに変換することを可能にする。特に、一方または両方のファセットミラーの各ファセット要素は、照明システムの各部分ビームまたはチャネルに対して理想的なビームプロファイルを発生させるために個別に適合された回折の性質を備えることができる。EUV放射のビーム整形は回折によって行われるので、ファセット要素の表面形態は、その生成が簡単化されるように選ぶことができる。照明システムで回折光学要素を使用することによるさらなる利点は、回折光学要素が、その活性領域で入射放射を混ぜ合わせ、それにより、照明放射の均質化または均一性を改善することである。例として、第1のファセットミラーのそれぞれのファセット要素は、(それに割り当てられた)瞳ファセットミラーのファセット要素をできるだけ均質に、例えば、「シルクハット」照明分布で照明するために使用することができる。
【0005】
本発明の第1の態様に従った一実施形態では、第2のファセットミラーのファセット要素のうちの少なくとも1つは、照明視野の一部のみを照明するための回折光学要素として設計される。このようにして、照明視野の角度分布または瞳は照明視野の異なる部分には異なるように選ぶことができる、すなわち、瞳が照明視野にわたって場所依存で変化する照明視野を発生させることが可能である。例として、照明視野の中央部分領域では、X双極子、すなわち、照明視野の短い側の方向に向けられた双極子のような瞳分布を実現することが可能であり、一方、照明視野の外側部分領域では、Y双極子、すなわち、照明視野の長い側の方向に向けられた双極子を実現することが可能であり、逆も同様である。従来の照明システムでは、対照的に、照明視野全体が、一般に、瞳ファセットミラーのそれぞれのファセット要素によって照明される。
【0006】
ウェハスキャナのようなEUV投影露光装置では、照明視野は、一般に、長方形であり、例えば20:1の高いアスペクト比を有し、短い側は走査方向に平行に延びる。上述でより詳しく説明したように、視野ファセットミラーのファセット要素の形状は、一般に、照明視野の形状に対応する。しかしながら、適切な場合、瞳ファセットミラーで回折ファセット要素を使用して、照明視野の形状から外れた形状を選ぶことが可能である、すなわち、視野ファセット要素のために異なるアスペクト比を、適切な場合、正方形の形状さえ選ぶことが可能である。このようにして、適切な場合、視野ファセットミラーのファセット要素のサイズを減少させることが可能であり、かつ/または前記ファセット要素は中間焦点からより小さな距離に配列することができ、またはより多くのファセット要素が同じ距離で実現され得る。
【0007】
1つの実施形態では、ファセット要素は照明視野の一部を照明するように設計され、照明視野の一部は少なくとも2つの非連続な部分領域を含む。回折光学要素を使用すると、照明視野の一部を同時に照明することが可能になり、照明視野の一部は、具体的には入射EUV放射が異なる次数の回折(例えば、−1次および+1次の回折)に回折されることによる、2つの(または多分より多くの)非連続な部分領域を含む。
【0008】
1つの実施形態では、第2のファセットミラーは、照明視野の第1の部分を照明するための複数の第1のファセット要素と、照明視野の第2の部分を照明するための複数の第2のファセット要素とを有し、前記第2の部分は第1の部分と異なる。照明視野の第3、第4、…の部分を照明するための第3、第4、…のファセット要素を設けることもでき、照明視野の部分はいずれの場合も互いに異なることができることは言うまでもない。瞳ファセットミラーは、ここで、特に、異なるタイプのファセット要素によって照明される照明視野の部分が互いに補完して、全照明視野を形成するように構成することができる。
適切な場合、瞳ファセットミラーのそれぞれの第1、第2、…のファセット要素によって照明される照明視野の部分の間に重なりがあることも可能である。これは、3つの、特に4つ以上の異なるタイプのファセット要素が瞳ファセットミラーに設けられ、それらが、適切な場合、露光動作中に、照明されるべきマスク構造に応じて選択され得る場合に特に有利である。適切な場合、さらに、露光の間の走査動作中に、それぞれ画像化されるべきであり、現在、照明視野に位置を定められているマスクのその部分領域(ストリップ)に、瞳ファセットミラーのファセット要素の選択、したがって、照明視野の場所依存瞳を適合させることができる。
1つの有利な実施形態では、第1のファセットミラーのファセット要素は、第1のファセット要素を照明するための第1の位置と、第2のファセット要素を照明するための第2の位置との間で切り替えられ得る。第1のファセットミラーのファセット要素は、一般に、照明視野の所望の瞳形状を実現する役割を果たす瞳ファセットミラーのそれらの(第1または第2の)ファセット要素を、狙った通りに、選択するために、少なくとも2つの(角度)位置間で切替え可能である。この場合、一般に、複数の切替え位置(少なくとも2つ)を選ぶことができ、放射は、2つの(またはより多くの)異なる角度または(狭い)角度分布で入射する。第1または第2のファセット要素の照明の狙い通りの選択の結果として、場所依存で照明視野の瞳を変更し、瞳を、例えば、それぞれ画像化されるべきマスク構造に適合させることが可能である。
【0009】
さらなる実施形態では、第2のファセットミラーのファセット要素は、第1のファセット要素が第2のファセット要素と交互になる格子配列を形成する。それは、照明視野の異なる部分領域を照明するためのファセット要素が互いに比較的小さい距離に配列される場合、有利であることが立証された。このように、瞳ファセットミラーの第1のファセット要素を照明するための第1の位置と瞳ファセットミラーの第2のファセット要素(および、適切な場合、第3、第4、…のファセット要素)を照明するための第2の位置との間の視野ファセットミラーのファセット要素の差または差角は、比較的小さい。これは、視野ファセットミラーのファセット要素の反射率が、一般に、狭い入射角範囲でのみ最適化されるので有利である。
【0010】
さらなる実施形態では、ファセット要素のうちの少なくとも1つは、EUV放射を放射センサ上に偏向させるための回折光学要素として設計される。回折光学要素は、特に、入射EUV放射の放射パワーの一部のみを高次の回折に反射するように設計することができ、一方、放射パワーの主要部分は照明視野を照明するために使用される。放射センサは、入射EUV放射の放射強度またはパワーを検出し、照明システムの上流に配設されたEUV光源のパワーを検査する役割、および、適切な場合、調整する役割を果たすことができる。
【0011】
さらなる実施形態では、ファセット要素のうちの少なくとも1つは平面表面形態を有し、特別に、すべてのファセット要素が平面表面形態を有する。(実質的に)平坦な表面形状を有するファセット要素は、他の表面形態、例えば球面の表面形態と比較してより正確に生成することができる。ファセット要素で一般に使用される球面形態の場合には、さらに、隣接するファセット要素が隣接する縁部領域で相互に互いに遮光するという問題がある可能性がある。本出願の意味内では、平坦表面形態は、多分実行される表面構造化の前に、使用される基板が平坦形状を有する表面形態であると理解される(以下を参照)。
【0012】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの回折ファセット要素は、付形面を有する基板と、EUV放射を反射するための多層被覆とを有し、前記多層被覆は基板に施される。多層被覆は、一般に、異なる材料からなる複数の個々の層を有し、一般に、異なる屈折率を有する2つの材料からなる交互層が使用される。個々の層の層厚および層材料は、ファセット要素で反射されるべきEUV放射波長に適合される。ファセット要素を回折光学要素として使用することができるように、回折光学要素は付形面を有する。表面プロファイルは、例えば2値プロファイル、すなわち、1段または1段高所(one step height)のみを有するプロファイルとすることができる。
1つの展開では、基板は多段表面プロファイルを有する。2、3、4、…、n段表面プロファイルによって、例えば、鋸歯様表面構造、したがって、鋸歯またはブレーズドグレーティングの三角形形状に近似することが可能である。波長に適合した好適なブレーズ角と、近似した鋸歯構造間の距離とを選ぶことによって、入射EUV放射が反射される次数の回折を、狙った通りに、選択し、回折効率を向上させることが可能である。ブレーズプロファイルは、例えば、フレネルレンズのような回折光学要素を生成するために使用することができる、すなわち、EUV放射は単一次数の回折にのみ偏向される。ビーム整形では、少なくとも2段表面プロファイル、好ましくは、多段表面プロファイルが不規則であり、明確に定められた周期性がなく、その結果、離散的な次数の回折を区別できない回折光学要素を使用することが可能である。そのようなビーム整形回折光学要素の場合には、しかも、多段表面プロファイルは回折効率を向上させることができる。
【0013】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの回折要素は、一般に基板の付形面として具現されるグレーティング構造を有し、グレーティング構造はEUV放射の波長の大きさの程度の横方向範囲(lateral extent)を有する。EUV放射の回折では、グレーティング構造の横方向範囲(格子定数またはピッチとも呼ばれる)は、一般に、それぞれ反射され回折されるEUV放射の波長λの大きさの程度である、すなわち、グレーティング構造の横方向範囲は、一般に、50×λ、好ましくは10×λ、より好ましくは5×λを超えない。EUV放射の波長は、一般に、5nmと15nmとの間にあるので、グレーティング構造の最大の横方向範囲(格子定数)は750nmを超えず、好ましくは150nm以下、特に75nm以下である。当然、EUV放射の波長λが15nm未満、例えば13.5nmである場合、グレーティング構造の横方向範囲はそれに応じて減少される。
【0014】
本発明のさらなる態様は、上述のように具現される照明システムを含むEUVリソグラフィデバイスに関する。上述でより詳しく説明したように、照明システムは、画像化されるべき構造(マスク)が配列される面の像視野をできるだけ均質に照明する役割を果たす。ここで説明する照明システムを用いて、照明視野の場所またはそれぞれ照明される部分に依存する角度分布(場所依存瞳)を発生させることができる。
本発明の1つの態様は、本発明の1つの態様は、特に、上述したような照明システムのためのファセットミラーで実現され、ファセットミラーはEUV放射を反射するための少なくとも1つの回折ファセット要素を含み、回折ファセット要素は、基板と、EUV放射を反射する多層被覆とを含み、前記多層被覆は基板に施され、少なくとも1つの回折ファセット要素はEUV放射を回折させるように設計される。
【0015】
1つの実施形態では、一般に基板の付形面として具現され、EUV放射の大きさの程度の横方向範囲を有するグレーティング構造を、少なくとも1つの回折ファセット要素は有する。上述で示したように、横方向範囲(格子定数またはピッチ)は、一般に、50×λ以下、10×λ以下、特に5×λ以下であり、ここで、λはEUV放射の波長を示す。
【0016】
好ましくは、基板は多段表面プロファイルを有する。多段表面プロファイルの結果として、鋸歯様表面構造が近似されて、またはグレースケールリソグラフィ(以下を参照)の場合には、鋸歯様表面構造を生成して、例えばブレーズドグレーティングのような回折光学要素を実現し、特定の事前定義された次数の回折へのEUV放射の回折の効率を向上させることができる。ビーム整形回折ファセット要素を実現するために、多段表面プロファイルは、非周期的表面構造に近づくように設計することもできる。多段表面プロファイルは、例えばリソグラフィ法を用いて表面を微細構造化することによって実現することができる。
好ましくは、多段表面プロファイルは、異なる段高所を有する少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つまたは4つの段を有する。段または段高所の数が多いほど、所望の表面プロファイルに十分に近づくことができ、一般に、回折ファセット要素の回折効率は大きくなる。極端な場合には、(疑似)連続高所プロファイルまたは表面プロファイルも可能であり、個々の段はもはや識別できない。そのような表面プロファイルは、例えば、グレースケールリソグラフィを用いて生成することができる。
【0017】
さらなる実施形態では、多層被覆は、多段表面プロファイルを平滑にするために、少なくとも100個の個々の層、好ましくは少なくとも120個の個々の層、特に少なくとも150個の個々の層を有する。この場合、個々の層は、高い屈折率材料または低い屈折率材料から構成された層であり、個々の層の層厚および層材料は、ファセット要素で反射されるべきEUV放射波長に整合されると理解される。例えば、拡散を防止するように、または環境にある汚染物質に対して多層被覆を保護するように設計される多層被覆の追加の層は、本出願の意味内では個々の層と見なされない。
【0018】
十分に多くの個々の層を設けることによって、多層被覆において実質的に連続な位相プロファイル(substantially continuous phase profile)を実現することが可能であり、その結果、特に、ブレーズドグレーティングのような鋸歯様表面構造に近づくように設計された表面構造の場合には、所望の次数の回折への回折の効率を最大にすることができる。この場合、それは、例えば鋸歯様表面構造のグレーティング構造の横方向範囲がEUV放射の波長よりも著しく小さい範囲内にある場合に有利であり、それは、個々の層の層厚がほとんどこの範囲内にあり、個々の層が、層厚と同等であるかまたは層厚よりも著しく大きい横方向範囲を有する構造に共形に成長するからである。
多層被覆は、従来の被覆法によって、すなわち、平坦状に、施すことができる。特に、気相からの層材料の従来の堆積を、多層被覆を施すために使用することができる。多層被覆の層による平滑化に加えてまたはその代替として、基板の多段表面プロファイルに施される平滑化層を使用することも可能である。平滑化層は、一般に、機械的に平滑化されるかまたは研磨され、その結果、平滑化層は所望の表面プロファイルを有するかまたはそれに近づく。平滑化に好適な従来の材料、例えば、SiまたはSiO2を、平滑化層のための材料として使用することができる。後続のステップで、多層被覆が平滑化層に施される。
【0019】
ファセットミラーが瞳ファセットミラーとして使用される場合、特に、照明視野の第1の部分を照明するために使用される第1のファセット要素の多段表面プロファイルは、照明視野の第2の部分を照明するために使用される第2のファセット要素の多段表面プロファイルと異なることが可能である。
一般に、第1および/または第2のファセット要素の表面プロファイルも互いに異なり、専用の個々の表面プロファイルを、特に、ファセット要素ごとに定めることができる。適切な場合、回折光学要素の表面に形成される回折グレーティングのグレーティング周期は、適切な場合、基板表面の場所にも依存すること、すなわち、表面にわたって一定である単一周期長のみを基板が有することが必ずしも必要ではないことは言うまでもない。同じことが、付形面によって近似される可能性のある鋸歯様表面構造のブレーズ角に当てはまる。特に、もはや均一の周期長でない表面プロファイルを生成することも可能である。
【0020】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明に不可欠な詳細を示す図面の図を参照した本発明の例示的な実施形態の以下の記述から、および特許請求の範囲から明白である。個々の特徴はいずれの場合もそれ自体個々に、または本発明の変型では任意の所望の組合せで複数として実現することができる。
例示的な実施形態が、概略図で示され、以下の記述で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】照明視野を照明するための照明システムを含むEUVリソグラフィ装置の概略図である。
図2】照明視野の異なる部分を照明するように設計された第1および第2の回折ファセット要素を有する図1の照明システムのための瞳ファセットミラーの概略図である。
図3】照明視野の視野依存瞳照明を発生させるための図2の瞳ファセットミラーの図である。
図4a-4c】2値表面プロファイル(図4a)を有する、および鋸歯様表面構造に近似するためのそれぞれ2段表面プロファイルおよび4段表面プロファイル(図4b、c)を有する構造化表面(グレーティング構造)を有する基板の3つの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面についての以下の記述では、同一の参照符号が、同一のまたは機能的に同一の構成要素に対して使用される。
図1は、EUVリソグラフィ装置1を概略的に示す。EUVリソグラフィ装置1は、50nm未満の、特に、約5nmと約15nmとの間のEUV波長範囲で高いエネルギー密度を有するEUV放射を発生させるためのEUV光源2を含む。EUV光源2は、例えば、レーザ誘起プラズマを発生させるためのプラズマ光源の形態で、またはシンクロトロン放射源として具現することができる。プラズマ光源の場合には、特に、図1に示すように、照明ビーム4を形成するためにEUV光源2のEUV放射を集束するために、およびこのようにしてエネルギー密度をさらに増加させるために、集光ミラー3を使用することが可能である。照明ビーム4は、EUVリソグラフィ装置1が動作する動作波長λBのまわりの狭帯域波長範囲に集中する波長スペクトルを有する。モノクロメータ12が、動作波長λBを選択するために、または狭帯域波長範囲を選択するために使用される。
【0023】
照明ビーム4は、本例では4つの反射光学要素13から16を含む照明システム10により構造化物体Mを照明する役割を果たす。構造化物体Mは、反射性マスクとすることができ、例えば、反射性マスクは、物体Mに少なくとも1つの構造を生成するために、反射性および非反射性または少なくとも低い反射性の領域を有する。代替として、構造化物体Mは、複数のマイクロミラーとすることができ、複数のマイクロミラーは、1次元または多次元配列で配列され、複数のマイクロミラーは、適切な場合、それぞれのミラーへのEUV放射4の入射角を設定するために少なくとも1つの軸のまわりに移動可能である。
構造化物体Mは、照明ビーム4の一部を反射し、投影ビーム5を成形し、投影ビーム5は構造化物体Mの構造に関する情報を運び、投影ビーム5は投影レンズ20に放射され、投影レンズ20は、基板W上への構造化物体Mまたは構造化物体Mのそれぞれの部分領域の画像化を行う。基板W、例えば、ウェハは、半導体材料、例えばシリコンを含み、ウェハステージWSとも呼ばれるマウントに配列される。
【0024】
この場合には、照明システム10の第1および第2の反射要素13、14は、ファセットミラーとして具現され、格子配列で配列されたマイクロミラーの形態の複数のファセット要素を有する。図1は、各ファセットミラー13、14に対して、例として、4つのファセット要素13a〜d、14a〜dを示し、そのファセット要素で照明ビーム4または照明ビーム4のそれぞれの部分ビームが反射される。第1の光学要素13は、以下では、視野ファセットミラー13とも呼ばれ、照明システム10の二次光源を発生させる役割を果たす。第2の光学要素14は、第1の光学要素13によって発生された二次光源の場所に配列され、以下では、瞳ファセットミラー14とも呼ばれる。
視野ファセットミラー13のそれぞれのファセット要素13a〜dに入射する照明ビーム4の部分ビームは、前記要素で瞳ファセットミラー14のそれぞれのファセット要素14a〜d上に偏向される。視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dは、長方形とし、例えば20:1のアスペクト比(x:y)を有することができ、X方向は図1の図面の面に対して垂直に延びる。この場合、ファセット要素13a〜dのアスペクト比は、照明システム10によって照明される、例えば、長方形の照明視野のアスペクト比に対応する。長方形の形状と異なる形状である照明視野および/またはファセット要素13a〜dが同様に可能であることは言うまでもない。
本例では、視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dの各々は、X方向に平行な軸方向のまわりに傾斜させることができる。加えて、それぞれのファセット要素13a〜dは、適切な場合、さらに、XZ面(図面の面)にあるさらなる軸のまわりに傾斜可能とすることができる。照明ビーム4がファセット要素13a〜dに入射する方向は、このようにして設定することができる。以下でさらにより詳細に説明するように、傾斜させることによって、特に、視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dと瞳ファセットミラー14のファセット要素14a〜dとの間の割当てを変更して、照明される物体Mの場所に所望の照明分布(照明瞳または角度分布)を発生させることもできる。
【0025】
一般に、それぞれの照明モードの場合に、または事前定義された時点に、視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dと瞳ファセットミラー14のファセット要素14a〜dとの間の1:1割当てが選ばれる。しかしながら、適切な場合、視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dのうちの2つ以上が瞳ファセットミラー14のファセット要素14a〜dに割り当てられるように割当てを行い、異なる照明モードを設定することもできる。この点に関する詳細は、本出願人の名義の米国特許出願公開第2009/0041182号に見いだすことができ、その全体が参照される。
【0026】
図1に示したファセットミラー13、14の場合には、ファセット要素13a〜d、14a〜dは回折光学要素として具現される、すなわち、回折光学要素は、照明ビーム4または照明ビーム4のそれぞれの部分ビームの所望のビーム整形を実行するために回折グレーティング構造を有する。ビーム整形は回折構造によって行われるので、ファセット要素13a〜d、14a〜dの表面形態は、それを簡単な方法で製造できるように選ぶことができる。図示の例では、ファセット要素13a〜d、14a〜dは、平坦な表面形態または表面形状を有する。この表面形態は、第1に、容易に生成することができ、第2に、それぞれのファセットミラー13、14のファセット要素13a〜d、14a〜dの部分的相互遮光を防止する。
【0027】
視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dの回折構造は、ファセット要素13a〜dが照明ビーム4のそれぞれ反射された部分ビームの「シルクハット」様プロファイルを発生させ、それにより、瞳ファセットミラー14のそれぞれのファセット要素14a〜dに入射する照明放射4の均一性を向上させるように選ばれる。
視野ファセットミラー13のファセット要素のうちの1つの13dの回折構造は、入射照明ビーム4の強度のある割合が高次の回折に回折され、その結果、強度のこのある割合が瞳ファセットミラー14ではなくむしろ放射センサ25に入射するように具現される。放射センサ25は、入射EUV放射の強度を測定する役割を果たし、EUV光源2の機能を検査するために使用することができる。測定した放射強度は、例えば、放射センサ2の測定信号を制御ユニット(図示せず)に供給して、EUVリソグラフィデバイス1の動作を制御するかまたは調整することによって、EUV光源2の放射パワーを調整するのに使用することもできることは言うまでもない。
【0028】
回折光学要素としての瞳ファセットミラー14のファセット要素14a〜dの実施形態の結果として、図2に示され、照明システム10によって構造化物体Mをもつ面に発生される長方形の照明視野BFの一部のみを、それぞれのファセット要素14a〜dは狙い通りに照明することができる。本例では、いくつかの第1のファセット要素14a、14c、…は照明視野BFの第1の部分T1を照明するように設計され、一方、いくつかの第2のファセット要素14b、14d、…は、照明視野BFの第2の部分T2を照明する役割を果たし、第1の部分T1および第2の部分T2は、照明視野BFの区域全体をカバーする。
図2においてやはり認識できるように、照明視野BFの第1の部分T1は、照明視野BFのそれぞれ左の縁部および右の縁部に形成された2つの非連続な部分領域A1、A2から構成される。第1のファセット要素14a、14c、…は回折光学要素として具現され、入射EUV放射は異なる次数の回折に、したがって、異なる方向に回折することができるので、照明視野BFの非連続な部分領域A1、A2の同時照明が可能である。照明視野BFの第2の中央部分T2は(この部分は第2のファセット要素14b、14d、…によって照明される)、対照的に、単一の連続な領域として具現される。
【0029】
図2においてやはり認識できるように、瞳ファセットミラー14の第1および第2のファセット要素14a〜dは、格子に配列され、第1のファセット要素14a、14c、…は、第2のファセット要素14b、14d、…と交互になる。これは、視野ファセットミラー13のファセット要素13a〜dを用いて狙った通りに瞳ファセットミラーのそれぞれ第1のファセット要素14a、14c、…および第2のファセット要素14b、14d、…を照明するのに有利である。上述でより詳しく説明したように、瞳ファセットミラー14の第1のファセット要素14a、14c、…の照明と瞳ファセットミラー14の第2の隣接するファセット要素14b、14d、…の照明との間を切り替えるために、視野ファセットミラー13のそれぞれ割り当てられたファセット要素13a、13b、…は、視野ファセットミラー13のファセット要素13aに基づいて例として図1に示したように、第1の角度位置W1と第2の角度位置W2との間で切り替えることができる。
【0030】
瞳ファセットミラー14の第1および第2のファセット要素14a、14bの隣接する配列の結果として、それぞれ割り当てられた第1のファセット要素13aの第1の角度位置W1と第2の角度位置W2との間を切り替えるための差角は小さく、それは、第1のファセット要素13aの反射率に有利な効果があり、前記反射率は狭い入射角度範囲に対して最適化される。アクチュエータは(それ自体が知られており、ここではさらに特別に詳細には説明しない)、視野ファセットミラーのファセット要素13a〜dの角度位置W1、W2の間を切り替える役割を果たすことができる。
【0031】
視野ファセットミラー13のファセット要素13a、13b、…によって照明される瞳ファセットミラー14のこれらのファセット要素14a、14c、…のみを示す図3を参照しながら以下でさらに詳細に説明するように、2つの角度位置W1、W2の間の切替えにより、照明視野BFの場所に依存する瞳または角度分布を、狙った通りに、設定することが可能になる。明確に認識できるように、瞳ファセットミラー14の上部領域および下部領域の第1のファセット要素14a、14c、…は、双極子視野分布のように照明される。瞳ファセットミラー14上の空間分布は照明視野BFでの角度分布(瞳)に対応するので、対応する双極子(X双極子)が、照明視野BFの第1の部分T1に発生する。同時に、視野ファセットミラー13のファセット要素13a、13b、…は、さらに、瞳ファセットミラー14の左の部分領域および右の部分領域に配列されている瞳ファセットミラー14の第2のファセット要素(図3にはさらに具体的には明示していない)を照明する。瞳ファセットミラー14の第2のファセット要素は、照明視野BFの第2の中央部分T2のY双極子のような瞳または角度分布を発生する。
【0032】
図3を参照して例として示すように、異なる角度分布または瞳は、瞳ファセットミラー14の第1および第2のファセット要素14a〜dの好適な選択によって照明視野BFの異なる部分T1、T2に発生させることができる。特に、例として上述で説明したX双極子分布およびY双極子分布以外の角度分布も発生させることができる。瞳ファセットミラー14に2つを超える異なるタイプのファセット要素14a〜dを設けて、照明視野BFの2つを超える部分を異なる角度分布または瞳で照明することも可能であることは言うまでもない。
図4a〜4cは、上述のように具現される回折ファセット要素13a〜d、14a〜dを生成する役割を果たすことができる基板26の3つの例を示す。基板26は付形面26aを有し、簡単のための図4aにのみ示されている多層被覆28が付形面26aに施され、前記多層被覆は動作波長λBでEUV放射4を反射する。反射多層被覆28は、異なる材料からなる複数の個々の層29a、29bを有する。本例では、個々の層は、異なる屈折率を有する材料から交互に形成される。動作波長λBが、本例におけるように、約13.5nmである場合、個々の層29a、29bは、通常、モリブデンおよびケイ素からなる。例えば、モリブデンおよびベリリウム、ルテニウムおよびベリリウム、またはランタンおよびB4Cなどの他の材料の組合せが、同様に、動作波長λBに応じて可能である。
【0033】
図4aに示した基板26の場合には、付形面26aは単段表面プロファイル27aを有する、すなわち、長方形または平行六面体の段が、普通なら平坦な表面26aに形成される。基板26の詳細または部分領域のみが図4aに示されており、図4aに示した横方向範囲Dを有する部分領域が周期的に繰り返されて、付形面26aにグレーティング構造が形成されることは言うまでもない。
【0034】
同じことが、図4bおよび図4cに示した付形面26aに当てはまり、図4bおよび図4cの場合、2段表面プロファイル27bおよび4段表面プロファイル27cを有する基板26がそれぞれ示されている。図4bの2段表面プロファイル27bの段S1およびS2は、異なる段高所を有し、表面26aの平坦区間とともに鋸歯プロファイル、すなわち、基板26の表面26aの平坦区間に対していわゆるブレーズ角θで傾いた傾斜段を形成する、横方向範囲Dをもつ三角形プロファイルに近づく。ブレーズドグレーティングの鋸歯様表面プロファイル、したがって、特定の次数の回折への回折のためのグレーティングの選択能力を、一層よく近似することができ、表面プロファイルの段の数が多ければ、すなわち、図4cに示した4つの段S1からS4を有する表面プロファイル27cは、鋸歯プロファイルの近似を改善することができる。
【0035】
本例において周期的である表面プロファイル27a〜cは、基板26の微細構造化によって生成することができ、その目的のために、リソグラフィ法が、特に、好適である。リソグラフィの微細構造化中に、最初に、フォトレジストが、基板26の平坦表面26aに塗布される。後続のステップにおいて、フォトレジストはリソグラフィ装置で露光されて、所望の構造がフォトレジストに転写される。続いて、フォトレジストは、現像され、このプロセスにおいて所望の構造に対応する一般に2段のプロファイルを取得する。さらなるステップにおいて、フォトレジストのプロファイルは、エッチングによって基板26に転写される。多段表面プロファイル27b、27cを生成するために、このプロセスを、適切な場合、多数回繰り返すことができる。図4a〜cに関連して説明したような周期的表面プロファイルを生成することの代替として、厳密な周期構造を見分けることができない非周期的表面プロファイルを生成することも可能であることは言うまでもない。代替として、表面プロファイルをグレースケールリソグラフィで構造化することもでき、それによって、(疑似)連続的可変プロファイルの生成が可能になる。表面プロファイル27b、27cは、多層被覆28を施すことによって平滑化することができ、その結果、実質的に三角形または鋸歯様表面プロファイルが、多層被覆28の上側の自由界面に生じる。
【0036】
多層被覆28、正確には、個々の層29a、29bは、一般に、従来の被覆方法で、一般には蒸着によって、平坦状に基板26に施される。1段プロファイル27aおよび多段表面プロファイル27b、27cの横方向範囲Dは、それぞれ、近似的に、使用されるEUV放射の波長の大きさの程度にすべきであり、ことによると、使用されるEUV放射の波長よりも著しく小さくすべきである。EUV放射を回折させるには、グレーティング構造27a〜cの横方向範囲Dは、一般に、50×λB、好ましくは10×λB、特に5×λBを超えるべきでなく、動作波長λBは、本例では、約13.5nmである。
【0037】
上述でより詳しく説明した個々の層29a、29bに加えて、反射多層被覆28は、拡散を防止するための中間層をさらに含むことができる。反射多層被覆28は、一般に、下にある個々の層29a、29bの酸化を防止するためにキャッピング層をさらに有する。ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、クロム、亜鉛、またはスズなどの金属材料をキャッピング層として使用することができる。補助層およびキャッピング層を図中に示すのは、図を簡単化するために省かれた。平滑化のために、基板26の上側26aに平滑化層(図示せず)を施すことも可能であり、平滑化層は、例えば、SiまたはSiO2から形成することができ、ブレーズ角θに研磨され(機械的に)、その結果、平滑化層は所望の表面プロファイルに近づくかまたはそれをもたらす。
【0038】
図4a〜cに示した例示的な実施形態では、基板26は平坦表面形態(グレーティング構造は別として)を有する。しかしながら、基板26は、適切な場合、湾曲表面形態を有することもでき、例えば、凹面形態または凸面形態が可能であり、湾曲表面形態は、球面でまたは非球面で設計できることは言うまでもない。しかしながら、平坦表面26aは、特に簡単に生成することができ、そのため、そのような表面形態は、生成するのがより難しい他の表面形態に比べて好ましい。
【0039】
ここで説明したような多段表面プロファイル27b、27cを有する回折光学要素は、図1から図3に関連して説明した照明システム10のためのファセットミラー13、14のファセット要素13a〜d、14a〜dとしてだけでなく、有利には、EUV放射をそれぞれ反射し回折させるための他のデバイスで使用することもできることは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c