(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286153
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-175111(P2013-175111)
(22)【出願日】2013年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-46954(P2015-46954A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
【審査官】
白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−147315(JP,A)
【文献】
特開2002−185295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路とを備え、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を保持し、前記過電流検出回路が過電流を検出したとき該第2の電圧の値に応じて過電流検出時の処理内容を決定することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を第1の閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路と、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を第2の閾値と比較した結果を前記パワートランジスタがオフのときに保持する判定回路と、前記過電流検出回路により過電流が検出されたときに前記判定回路で保持された前記結果に応じて過電流保護処理の内容を切り替える過電流処理切替回路と、を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路と、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を保持するサンプルホールド回路と、前記過電流検出回路により過電流が検出されたときに該サンプルホールド回路で保持された前記第2の電圧の値に応じて過電流保護処理のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、を備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のスイッチング電源装置において、
前記第2の抵抗又は前記バイアス電流に温度係数を持たせるとともに前記第2の抵抗又は前記バイアス電流の電流源を前記パワートランジスタの発熱の影響を受けるように配置し、前記パワートランジスタに流れる電流の値に起因して前記第2の電圧が変化するようにしたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流検出回路を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過電流検出回路を備えた従来のスイッチング電源装置を
図8と
図9に示す(特許文献1)。
図8のスイッチング電源装置は、ハイサイドNMOSパワートランジスタMN11とローサイドNMOSパワートランジスタMN12のうちのパワートランジスタMN11のオン抵抗Ronに発生する電圧を、制御回路50の端子52,54から電流検出回路55のオペアンプ56に取り込んでここで増幅し、過電流検出閾値回路57で設定された閾値Vref1とコンパレータ59で比較して、過電流発生の有無を判定する装置である。
【0003】
一方、
図9のスイッチング電源装置は、そのパワートランジスタMN11のソースに直列に外付け抵抗Rsを接続して、その抵抗Rsに発生する電圧を端子52,54から電流検出回路55のオペアンプ56に取り込んでここで増幅し、過電流検出閾値回路57で設定された別の閾値Vref2とコンパレータ59で比較し、過電流発生の有無を判定する装置である。
【0004】
そして、
図8および
図9のいずれのスイッチング電源装置も、過電流発生が有りと判定されると、ゲート駆動回路60によるパワートランジスタMN11,MN12の駆動が停止される。L1はインダクタ、C1は出力コンデンサである。
【0005】
図9のように外付け抵抗Rsを使用する場合は、その抵抗Rsに発生する電圧の温度係数が小さいため温度変化に対する対策は必要ないが、
図8のようにパワートランジスタMN11のオン抵抗Ronを使用する場合は、その抵抗Ronが温度係数をもつため、そこに発生する電圧が温度によって大きく変化するので温度補償が必要になる。
【0006】
そこで、特許文献1では、制御回路50に、オン抵抗Ronを使用する場合の温度補償を行った過電流検出閾値Vref1と、外付け抵抗Rsを使用する場合の温度補償を行わない過電流検出閾値Vref2の2つを用意して、これをスイッチ58で自動切り替えできるようにし、制御回路50を共通に使用できるようにしている。
【0007】
このスイッチ58の切り替えは次のように行われる。コンパレータ61の閾値電圧Vref3を入力電圧Vinに対して、Vref3<Vinに設定しておくと、
図8のオン抵抗Ronを使用する場合は、V2=Vinであるので、コンパレータ61の出力が“H”となるが、パワートランジスタMN12を駆動する端子53が“H”と“L”を繰り返すので、アンド回路62の出力は“H”と“L”を繰り返す。SRFF回路63は電源投入時にワンショットマルチ回路64から出力する“H”のパルスによって初期リセットされ、Q出力が“L”となっているので、過電流閾値検出回路57のスイッチ58は当初は閾値Vref2に切り替わっている。そして、アンド回路62の出力が“H”になった時点で、SRFF回路63がセットされてそのQ出力が“H”になり、それが保持されるので、過電流閾値検出回路57のスイッチ58は閾値Vref1に切り替えられ、それが保持される。つまり、
図8のようにパワートランジスタMN11のオン抵抗Ronを過電流検出抵抗として使用する場合は、過電流閾値検出回路57は温度補償を行った閾値Vref1に設定される。
【0008】
一方、
図9のように外付け抵抗Rsを使用する場合は、パワートランジスタMN11がオンする毎に端子54の電圧V2がVref3<V2となり、コンパレータ61の出力はこのとき“H”になるが、パワートランジスタMN11がオンするときのパワートランジスタMN12を駆動する端子53は“L”であり、このためアンド回路62が“H”になることはなく、SRFF回路63のQ出力は初期設定された“L”から変化しない。よって、
図9のように外付け抵抗Rsを過電流検出抵抗として使用する場合は、過電流閾値検出回路57は閾値Vref2に設定される。
【0009】
このように、
図8、
図9のスイッチング電源装置では、制御回路50に駆動端子51,53と出力端子52の他に、過電流検出用の端子54を追加することで、共通の制御回路50を用いて、温度補償された過電流検出閾値Vref1又は温度補償されていない過電流閾値Vref2を自動識別して切り替え、過電流検出ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−226916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、
図8、
図9のスイッチング電源装置は、パワートランジスタMN11に流れるオン抵抗Ronあるいは外付け抵抗Rsに発生する電圧を検出することで過電流検出のための閾値の切り替えを行っているが、過電流を検出した際にその後どのような制御を行うかについては全く記載がない。
【0012】
本発明の目的は、過電流が検出された際に、当該過電流に対応する処理が自動的に設定されるようにしたスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路と
を備え、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を保持し、前記過電流検出回路が過電流を検出したとき該第2の電圧の値に応じて過電流検出時の処理内容を決定することを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を
第1の閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路と、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を
第2の閾値と比較し
た結果を前記パワートランジスタがオフのときに保持する判定回路と、前記過電流検出回路により過電流が検出されたときに前記判定回路
で保持された前記結果に応じて過電流保護処理の内容を切り替える過電流処理切替回路と、を備えることを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、ドライバによってオン/オフ駆動されるパワートランジスタと、過電流検出用の電流検出端子と、前記パワートランジスタに直列接続された第1の抵抗と、前記パワートランジスタと前記第1の抵抗の共通接続点と前記電流検出端子との間に接続された第2の抵抗と、前記パワートランジスタがオフのときのみに前記電流検出端子から前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗にバイアス電流を供給する電流源と、前記パワートランジスタがオンのときに前記電流検出端子に得られる第1の電圧を閾値と比較して過電流を検出する過電流検出回路と、前記バイアス電流により前記第2の抵抗に発生する第2の電圧を保持するサンプルホールド回路と、前記過電流検出回路により過電流が検出されたときに該サンプルホールド回路で保持された前記第2の電圧の値に応じて過電流保護処理のパラメータを設定するパラメータ設定手段と、を備えることを特徴とする。
請求項4にかかる発明は、請求項1、2又は3に記載のスイッチング電源装置において、前記第2の抵抗又は前記バイアス電流に温度係数を持たせるとともに前記第2の抵抗又は前記バイアス電流の電流源を前記パワートランジスタの発熱の影響を受けるように配置し、前記パワートランジスタに流れる電流の値に起因して前記第2の電圧が変化するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パワートランジスタがオフのときにバイアス電流を第2の抵抗に流して該第2の抵抗に発生する第2の電圧を保持し、過電流検出回路が過電流発生を検出したとき、その第2の電圧の値に応じて過電流保護処理の内容を決定するので、過電流検出特性に影響を与えることなく、過電流を検出した際に必要となる処理を自動的に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図2】本発明の実施例2のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図3】本発明の実施例3のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図4】本発明の実施例4のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図5】本発明の実施例5のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図6】本発明の実施例6のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図7】
図1のスイッチング電源装置の動作波形図である。
【
図8】トランジスタのオン抵抗を過電流検出に使用する従来技術のスイッチング電源装置の回路図である。
【
図9】外付け抵抗を過電流検出に使用する従来技術のスイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施例1>
図1に実施例1の降圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、過電流検出時の処理切替機能を備えたスイッチング電源装置である。MP1はPMOSのパワートランジスタ、RsはそのパワートランジスタMP1に流れる負荷電流を検出する外付けの抵抗(第1の抵抗)、RfはパワートランジスタMP1がオフのときに後記するバイアス電流Ibを流す抵抗(第2の抵抗)、Cfは抵抗Rfとでフィルタを構成するコンデンサ、L1はインダクタ、D1はダイオード、C1は出力コンデンサである。
【0017】
10Aはスイッチング電源装置本体(1チップIC)であり、高電位電源端子11、電流検出端子12、駆動出力端子13、ハイサイド電源端子14、接地端子15等を外部端子として備える。内部には、パワートランジスタMP1をPWM(パルス幅変調)駆動するドライバ16、閾値電圧Vref0と電流検出端子12に発生する電圧V1を比較するコンパレータ17からなる過電流検出回路18を備える。また、電流検出端子12とハイサイド電源端子14との間に接続されバイアス電流Ibを流すバイアス電流源19を備える。また、閾値電圧VrefAと電流検出端子12の電圧V1を比較するコンパレータ20、閾値電圧VrefBと電流検出端子12の電圧V1を比較するコンパレータ21、パワートランジスタMP1がオフのときに検出したコンパレータ20,21の出力を保持するラッチ22,23からなる判定回路24を備える。さらに、判定回路24の出力と過電流検出回路18の出力を取り込んで過電流保護処理にどの処理を適用するかを切り替える過電流処理切替回路25を備える。なお、電流源19、ラッチ22,23を制御するCLKは、パワートランジスタMP1を駆動するPWM信号に同期したクロックである。
【0018】
本実施例1のスイッチング電源装置のメイン機能は過電流検出機能である。パワートランジスタMP1がオンしているとき、そのパワートランジスタMP1に流れる電流Ipが抵抗Rsに流れることで電圧V1が発生し、この電圧V1が抵抗Rfを介して電流検出端子12からスイッチング電源装置本体10Aに取り込まれる。この電圧V1は、コンパレータ17で閾値電圧Vref0と比較され、V1<Vref0のとき、過電流検出信号Vpが生成する。抵抗RfとコンデンサCfで構成されるフィルタは、パワートランジスタMP1のオン直後の抵抗Rsと抵抗Rfの共通接続点の急峻な電圧立上りやノイズを緩和するためのものである。パワートランジスタMP1がオンしているときは、クロックCLKによって電流源19がオフとなるので、抵抗Rfにはバイアス電流が流れない。以上の過電流検出には既存技術を利用している。
【0019】
本発明はサブ機能に特徴がある。サブ機能として、
図7に動作波形を示しており、パワートランジスタMP1がオフ時に、抵抗Rfに電流源19によってバイアス電流Ibが流れ、これにより電流検出端子12に電圧V1が発生し、この電圧V1の値に応じて、過電流保護処理を切り替える機能を有している。
【0020】
Rf>>Rsに設定すると、電圧V1は以下の式で表される。
V1=Rf×Ib (1)
【0021】
本実施例1では、この電圧V1をコンパレータ20,21において閾値電圧VrefA,VrefBと比較し、その比較結果をパワートランジスタMP1がオフのときにラッチ回路22,23に保持しておくことで、パワートランジスタMP1がオンし過電流検出回路18が過電流を検出した(Vpがイネーブル)とき、そのラッチ回路22,23の出力と過電流検出信号Vpとを過電流処理切替回路25に入力し、過電流保護処理内容の設定を行う。
【0022】
例えば、抵抗Rfとして、温度上昇に比例して抵抗値が大きくなる温度係数のものを使用したり、あるいは、抵抗Rfに流すバイアス電流Ibに温度上昇とともにその電流が増加するような温度係数を設定する。抵抗Rfに温度係数の大きなものを使用する場合は、その抵抗RfをパワートランジスタMP1の近くに配置しておく。これにより、パワートランジスタMP1に流れる電流が大きくなると、パワートランジスタMP1の温度が上昇するので、その抵抗Rfの値が大きくなる。なお、パワートランジスタMP1の電流が大きいときには、ドライバ16で駆動する電流も多くなることから、そのドライバ16も発熱し、その熱によってバイアス電流Ibの電流も増加する。
【0023】
つまり、パワートランジスタMP1の電流増加により発生する温度上昇に起因して、電圧V1も上昇する。過電流検出信号Vpが過電流処理切替回路25に入力したときは、その電圧V1の値に応じて、以下のように処理を切り替える。VrefA<VrefBとしたとき、
【0024】
(1)V1<VrefAの場合:スイッチングの1サイクルごとに過電流制限が行われ、次のクロックサイクルではリセットされて再度電流検出から始まる動作を繰り返す「パルスバイパルスモード機能」に設定する。これは、負荷電流が通常使用領域にある場合である。
【0025】
(2)VrefA≦V1<VrefBの場合:過電流状態を検出してスイッチング動作を止めた際に、設定されたクールダウン時間間隔で自動的に復帰を試みる「ヒカップモード機能」に設定する。これは、負荷電流が最大電流に達した状態で、パワートランジスタMP1に熱的負荷が大きくなった場合である。
【0026】
(3)VrefB≦V1の場合:過電流検出が行われた後に負荷の状態が回復してもリセット操作を行なわないと動作を再開しない「ラッチモード機能」に設定する。これは、負荷が短絡に近いか短絡している状態で、ヒカップモードなどで復帰してもすぐに過電流がかかる状態であり、パワートランジスタMP1が熱破壊を起こしそうな状態の場合である。
【0027】
以上の(1)〜(3)の処理切替機能は、パワートランジスタMP1の熱による破壊を防止し、スイッチング電源装置の故障防止に効果的である。
【0028】
また、負荷電流が大きくなると、パワートランジスタMP1で発生するノイズも大きくなるが、このときは、温度係数の大きい抵抗Rfの値が大きくなるのでフィルタ効果が高くなり、ノイズを低減できる効果がある。
【0029】
以上のように、バイアス電流Ibによって発生する電圧V1は、外付けの抵抗Rfやバイアス電流IbがパワートランジスタMP1で発生する熱の影響を大きく受けるように状況設定を行っておいた場合には、その発熱温度によって異なるので、上記したモードA,B,Cの振り分けがその発熱温度に応じて行われる。
【0030】
また、上記した電圧V1は、外付けの抵抗Rfの値によっても異なってくる。この場合は、上記したモードA,B,Cの振り分けが抵抗Rfの設定値に応じて行われる。よって、ユーザにおいて抵抗Rfの値を適宜選定することで、前記したモードA,B,Cの振り分けを任意に行うことが可能となる。なお、この場合は、外付けの抵抗Rfやバイアス電流Ibが温度の影響を受けないような状況設定を行っておいてもよい。
【0031】
<実施例2>
図2に実施例2の降圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、過電流動作時のパラメータ設定を可能にするスイッチング電源装置である。
【0032】
10Bはスイッチング電源装置本体(1チップIC)であり、
図1のスイッチング電源装置本体10Aに備えられているドライバ16、過電流検出回路18、バイアス電流源19の他は、パワートランジスタMP1がオフのときオンするスイッチ31とホールド用コンデンサChを備えたサンプルホールド回路30、そのサンプルホールド回路30のホールド電圧V1hをバッファリングするバッファ回路32、そのバッファ回路32の出力信号と過電流検出信号Vpを入力して過電流保護処理のパラメータ設定を行う過電流処理設定回路33を備える。なお、電流源19、スイッチ31を制御するCLKは、パワートランジスタMP1を駆動するPWM信号に同期したクロックである。
【0033】
本実施例2のスイッチング電源装置は、メイン機能の過電流検出は
図1の実施例1と同じである。サブ機能として、パワートランジスタMP1のオフ時に抵抗Rfにバイアス電流Ibを流して発生させた電圧V1が、サンプルホールド回路30で電圧V1hとして保持され、バッファ回路32に入力する。過電流処理設定回路33は、パワートランジスタMP1がオンしたとき、バッファ回路32の出力電圧V1hと過電流検出信号Vpを入力して、過電流保護処理のパラメータを設定する。
【0034】
この過電流処理設定回路33では、例えば「ヒカップモード」におけるクールダウン時間を、バッファ回路32から出力する電圧V1hで決まるようにしておけば、その電圧V1hが高くなるほどクールダウン時間が長くなるように制御することができる。このとき、実施例1で説明したように、抵抗Rfやバイアス電流Ibに温度特性をもたせておくことにより、負荷電流が大きいほど高温になり電圧V1hが高くなるところから、パワートランジスタMP1の発熱が大きいほど、クールダウン時間を長くすることができる。
【0035】
以上のように電圧V1hは、外付けの抵抗Rfやバイアス電流IbがパワートランジスタMP1で発生する熱の影響を大きく受けるように状況設定を行っておいた場合は、その発熱温度によって異なる。この場合は、上記したように過電流処理設定回路33での設定内容がその発熱温度に応じて行われる。
【0036】
また、上記した電圧V1hは、外付けの抵抗Rfの値によっても異なってくる。この場合は、上記した過電流処理設定回路33での設定内容が抵抗Rfの設定値に応じて行われる。よって、ユーザにおいて抵抗Rfの値を適宜設定することで、上記した過電流処理設定回路33での設定内容を任意に変更することが可能となる。なお、この場合は、外付けの抵抗Rfやバイアス電流Ibが温度の影響を受けないような状況設定を行っておいてもよい。
【0037】
<実施例3>
図3に実施例3の降圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、
図1のスイッチング電源装置において、ダイオードD1をNMOSパワートランジスタMN1に置き換え、スイッチング電源装置本体10Cに、ローサイド電源端子14aと接地端子15との間に接続されたドライバ16aを設けて、そのドライバ16aによって、パワートランジスタMN1がパワートランジスタMP1と相補的にPWM駆動されるようにしたものである。動作は
図1で説明したスイッチング電源装置と同じである。
【0038】
<実施例4>
図4に実施例4の降圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、
図2のスイッチング電源装置において、ダイオードD1をパワーNMOSパワートランジスタMN1に置き換え、スイッチング電源装置本体10Dに、ローサイド電源端子14aと接地端子15との間に接続されたドライバ16aを設けて、そのドライバ16aによって、パワートランジスタMN1がパワートランジスタMP1と相補的にPWM駆動されるようにしたものである。動作は
図2で説明したスイッチング電源装置と同じである。
【0039】
<実施例5>
図5に実施例5の昇圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、パワートランジスタMN1のドレインと高電位電源端子11との間にインダクタL2を接続し、そのインダクタL2とパワートランジスタMN1との共通接続点と出力コンデンサC1との間にダイオードD2を接続して、パワートランジスタMN1をオン/オフさせることにより、電源電圧Vccを昇圧した電圧が出力電圧Voutとして出力されるようにしたものである。
【0040】
本実施例では、抵抗RsがパワートランジスタMN1のソースと接地との間に接続され、電流検出端子12とパワートランジスタMN1のソースとの間に抵抗Rfが接続され、電流検出端子12と接地との間にコンデンサCfが接続される。そして、スイッチング電源装置本体10Eにおいては、ローサイド電源端子14aと接地端子15との間に、
図1におけるスイッチング電源装置本体10Aと同様な構成が組み込まれている。ただし、電流検出端子12へのバイアス電流はバイアス電流源19aから供給される。パワートランジスタMN1を駆動するドライバ16aは
図3におけるものと同じである。
【0041】
<実施例6>
図6に実施例6の昇圧型のスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、
図5のスイッチング電源装置と同様に、パワートランジスタMN1のドレインと高電位電源端子11との間にインダクタL2を接続し、そのインダクタL2とパワートランジスタMN1との共通接続点と出力コンデンサC1との間にダイオードD2を接続して、パワートランジスタMN1をオン/オフさせることにより、電源電圧Vccを昇圧した電圧が出力電圧Voutとして出力されるようにしたものである。
【0042】
本実施例では、抵抗RsがパワートランジスタMN1のソースと接地との間に接続され、電流検出端子12とパワートランジスタMN1のソースとの間に抵抗Rfが接続され、電流検出端子12と接地との間にコンデンサCfが接続される。そして、スイッチング電源装置本体10Fにおいては、ローサイド電源端子14aと接地端子15との間に、
図2におけるスイッチング電源装置本体10Bと同様な構成が組み込まれている。ただし、電流検出端子12へのバイアス電流は電流源19aから供給される。パワートランジスタMN1を駆動するドライバ16aは
図4におけるものと同じである。
【符号の説明】
【0043】
10A〜10F:スイッチング電源装置本体(1チップIC)、11:高電位電源端子、12:電流検出端子、13:駆動出力端子、14:ハイサイド電源端子、14a:ローサイド電源端子、15:接地端子、16,16a:ドライバ、17:コンパレータ、18:過電流検出回路、19,19a:バイアス電流源、20,21:コンパレータ、23,24:ラッチ回路、24:判定回路、25:過電流処理切替回路、30:サンプルホールド回路、31:スイッチ、32:バッファ回路、33:過電流処理設定回路