(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係る配線基板の構造]
まず、第1の実施の形態に係る配線基板の構造について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る配線基板を例示する断面図である。
図1を参照するに、配線基板1は、基板本体11と、絶縁膜12と、密着層13と、金属層14と、配線層15と、密着層23と、金属層24と、配線層25とを有する。
【0012】
なお、本実施の形態では、便宜上、配線層15側を上側又は一方の側、配線層25側を下側又は他方の側とする。又、各部位の配線層15側の面を上面又は一方の面、配線層25側の面を下面又は他方の面とする。但し、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、本実施の形態では、平面視とは対象物を基板本体11の一方の面11aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基板本体11の一方の面11aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
配線基板1において、基板本体11は、配線層15等を形成する基体となる部分であり、貫通孔11xが形成されている。基板本体11の厚さは、例えば、100〜200μm程度とすることができる。基板本体11の材料としては、シリコン、ガラス、樹脂等を用いることができる。
【0014】
なお、配線基板1は、半導体チップを搭載することにより半導体パッケージとなり得る。その際、半導体チップはシリコン基板を有するものが多いため、熱膨張係数を整合させる観点からすると、基板本体11の材料としてシリコンやシリコンに熱膨張係数が近い硼珪酸ガラスを用いると好適である。硼珪酸ガラスは、硼酸(B
2O
3)と珪酸(SiO
2)を主成分として含むガラスであり、熱膨張係数は3ppm/℃程度である。又、加工性の観点からすると、基板本体11の材料としてシリコンを用いると好適である。
【0015】
基板本体11の熱膨張係数を半導体チップの熱膨張係数と整合させる理由は、高温環境下や低温環境下で動作する場合も含め、配線基板1と半導体チップとの接合部に生じる熱応力を低減するためである。以下、本実施の形態では、基板本体11の材料がシリコンである場合を例にして説明する。
【0016】
貫通孔11xは、基板本体11の一方の面11aから他方の面11bに貫通する、例えば平面形状が略円形の孔(所謂TSV:through silicon via)である。貫通孔11xの直径は、例えば、20〜40μm程度とすることができる。
図1では、貫通孔11xが2個描かれているが、基板本体11に形成する貫通孔11xの個数は任意に決定できる。
【0017】
絶縁膜12は、基板本体11の一方の面11a及び他方の面11b、及び貫通孔11xの内側面を連続的に被覆している。絶縁膜12は、基板本体11と密着層13、金属層14、配線層15、密着層23、金属層24、及び配線層25との間を絶縁するための膜である。絶縁膜12としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO
2膜)を用いることができる。シリコン酸化膜の厚さは、例えば1〜2μm程度とすることができる。
【0018】
密着層13は、貫通孔11xの周囲の基板本体11の一方の面11a上に絶縁膜12を介して積層され、更に、貫通孔11xの内側面に延在し、貫通孔11xの内側面の一方の面11a側の約半分の領域において絶縁膜12を介して積層されている。密着層13は、金属層14よりも絶縁膜12との密着性が良好な材料から構成されている。基板本体11の一方の面11a上に形成される密着層13の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。なお、貫通孔11xの内側面に形成された密着層13の厚さは、基板本体11の一方の面11a側から貫通孔11xの深い部分にいくにつれて薄くなってもよい。密着層13は、本発明に係る第1密着層の代表的な一例である。
【0019】
金属層14は、密着層13上に積層されている。言い換えれば、密着層13は、基板本体11と金属層14との間に形成されている。なお、貫通孔11xの内側面の中央部近傍において、金属層14の先端部分が密着層13を介さずに絶縁膜12上に直接形成されてもよい。本実施の形態では、金属層14の材料として銅(Cu)を用いる。基板本体11の一方の面11a上において密着層13上に積層される金属層14の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。なお、貫通孔11xの内側面に形成された金属層14の厚さは、基板本体11の一方の面11a側から貫通孔11xの深い部分にいくにつれて薄くなってもよい。金属層14は、本発明に係る第1金属層の代表的な一例である。
【0020】
基板本体11の材料がシリコンであり、絶縁膜12がシリコン酸化膜であり、金属層14の材料が銅(Cu)である場合に、シリコン酸化膜と銅との密着性が良くない。そこで、シリコン酸化膜との密着性が銅よりも優れているチタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタンタングステン(TiW)等により密着層13を形成することで、シリコン酸化膜と銅とを密着層13を介して良好に密着させることができる。
【0021】
配線層15は、基板本体11の一方の面11a側において、導電層15aと導電層15bとが積層された構造を有する。配線層15は、例えば、貫通孔11xの周囲の基板本体11の一方の面11a上に形成された平面形状が略円形のパッド部を有する。配線層15は、パッド部の他に、基板本体11の一方の面11a上において所定の平面形状にパターニングされたパターン部を有してもよい。貫通孔11x内に形成された配線層15は、金属層14を被覆して貫通孔11xの一方の面11a側を埋めている。配線層15は、本発明に係る第1配線層の代表的な一例である。
【0022】
導電層15aは、基板本体11の一方の面11a側の金属層14上に、貫通孔11xの一端側(一方の面11a側)を埋めるように形成されている。導電層15aの上部には、凹部15xが形成されている。導電層15aの材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。基板本体11の一方の面11a上に形成される導電層15aの厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。
【0023】
導電層15bは、貫通孔11xの内側面側の金属層14上に、貫通孔11xの上側の約半分の領域を埋めるように形成されている。つまり、導電層15bは、導電層15aの下端面に接して、貫通孔11xの一方の面11a側の約半分の領域を埋めるように形成されている。導電層15bの他方の面11b側の端部には、他方の面11b側に開口する凹部15yが形成されている。導電層15bの材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。なお、貫通孔11xの内側面の中央部近傍において、導電層15bの先端部分が密着層13及び金属層14を介さずに絶縁膜12上に直接形成されてもよい。
【0024】
密着層23は、貫通孔11xの周囲の基板本体11の他方の面11b上に絶縁膜12を介して積層され、更に、貫通孔11xの内側面に延在し、貫通孔11xの内側面の下側の約半分の領域において絶縁膜12を介して積層されている。そして、密着層23は、更に延在し、凹部15yの内側面及び内底面を含む導電層15bの下端面に積層されている。密着層23は、金属層24よりも絶縁膜12との密着性が良好な材料から構成されている。基板本体11の他方の面11b上に形成される密着層23の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。なお、貫通孔11xの内側面に形成された密着層23の厚さは、基板本体11の他方の面11b側から貫通孔11xの深い部分にいくにつれて薄くなってもよい。なお、密着層23と密着層13とは直接は導通していない(接していない)。密着層23は、本発明に係る第2密着層の代表的な一例である。
【0025】
金属層24は、密着層23上に積層されている。言い換えれば、密着層23は、基板本体11と金属層24との間、及び、配線層15の他方の面11b側の端部と金属層24との間に形成されている。なお、貫通孔11xの内側面の中央部近傍において、金属層24の先端部分が密着層23を介さずに絶縁膜12上に直接形成されてもよい。本実施の形態では、金属層24の材料として銅(Cu)を用いる。基板本体11の他方の面11b上において密着層23上に積層される金属層24の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。なお、貫通孔11xの内側面に形成された金属層24の厚さは、基板本体11の一方の面11a側から貫通孔11xの深い部分にいくにつれて薄くなってもよい。金属層24は、本発明に係る第2金属層の代表的な一例である。
【0026】
基板本体11の材料がシリコンであり、絶縁膜12がシリコン酸化膜であり、金属層24の材料が銅(Cu)である場合に、シリコン酸化膜と銅との密着性が良くない。そこで、シリコン酸化膜との密着性が銅よりも優れているチタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタンタングステン(TiW)等により密着層23を形成することで、シリコン酸化膜と銅とを密着層23を介して良好に密着させることができる。
【0027】
配線層25は、基板本体11の他方の面11b側に形成されている。配線層25は、例えば、貫通孔11xの周囲の基板本体11の他方の面11b上に形成された平面形状が略円形のパッド部を有する。配線層25は、パッド部の他に、基板本体11の他方の面11b上において所定の平面形状にパターニングされたパターン部を有してもよい。貫通孔11x内に形成された配線層25は、金属層24を被覆して貫通孔11xの他方の面11b側を埋めている。配線層25は、本発明に係る第2配線層の代表的な一例である。
【0028】
より詳しくは、配線層25は、金属層24上に形成され、基板本体11の他方の面11b上から貫通孔11x内に延在し、貫通孔11xの下側の約半分の領域を埋めるように形成されている。配線層25の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。基板本体11の他方の面11b上に形成される配線層25の厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。
【0029】
配線層25は、貫通孔11x内で、密着層23及び金属層24を介して、配線層15と導通している(電気的に接続されている)。なお、貫通孔11x内に配されている配線層15及び25を貫通配線と称する場合がある。配線層25の一方の面11a側(配線層15側)の端部には、一方の面11a側に突起する凸部25xが形成され、凸部25xは凹部15y内に配されている。このように、凸部25xが凹部15y内に配され、かしめ状態となることにより、配線層15と配線層25とが貫通孔11x内で密着層23及び金属層24を介して接する面積が増大するため、配線層15と配線層25とが高い強度で接合される。
【0030】
[第1の実施の形態に係る配線基板の製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る配線基板の製造方法について説明する。
図2〜
図5は、第1の実施の形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、
図2〜
図5では、主に貫通孔11xの周辺部分を拡大して例示している。
【0031】
まず、
図2(a)に示す工程では、基板本体11を準備して基板本体11の一方の面11aから他方の面11bに貫通する貫通孔11xを形成し、更に貫通孔11xの内側面を含む基板本体11の周囲に絶縁膜12を形成する。基板本体11としては、例えば、6インチ(約150mm)、8インチ(約200mm)、12インチ(約300mm)等のシリコンウェハを用いることができる。シリコンウェハの厚さは、例えば0.625mm(6インチの場合)、0.725mm(8インチの場合)、0.775mm(12インチの場合)等であるが、バックサイドグラインダー等で適宜薄型化(例えば、100〜200μm程度)することができる。
【0032】
貫通孔11xは、例えば、貫通孔11xを形成する位置を開口するレジスト層(図示せず)を形成し、レジスト層(図示せず)をマスクとして基板本体11をエッチングすることにより形成できる。エッチングとしては、例えばSF
6(六フッ化硫黄)を用いた反応性イオンエッチング(DRIE:Deep Reactive Ion Etching)等の異方性エッチング法を用いると好適である。貫通孔11xの平面形状は、例えば、直径20〜40μm程度の円形とすることができる。例えば、貫通孔11xの直径が20μmで基板本体11の厚さが200μmであれば、貫通孔11xのアスペクト比(直径と深さの比)は10となる。
【0033】
絶縁膜12としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO
2膜)を用いることができる。シリコン酸化膜は、例えば、基板本体11の表面近傍の温度を1000℃以上とするウェット熱酸化法により、基板本体11の表面近傍を熱酸化することで形成できる。シリコン酸化膜の厚さは、例えば1〜2μm程度とすることができる。
【0034】
次に、
図2(b)に示す工程では、基板本体11の一方の面11a側から、例えば、スパッタ法等により、密着層13及び金属層14を順次形成する。密着層13及び金属層14は、基板本体11の一方の面11a上に絶縁膜12を介して積層され、更に、貫通孔11xの内側面に延在し、貫通孔11xの内側面の上側の約半分の領域において絶縁膜12を介して積層される程度に形成する。なお、貫通孔11xの内側面の中央部近傍の領域Aにおいて、金属層14の先端部分が密着層13を介さずに絶縁膜12上に直接形成されてもよい。
【0035】
絶縁膜12がシリコン酸化膜であり、金属層14の材料が銅(Cu)である場合には、密着層13の材料としては、例えば、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタンタングステン(TiW)等を用いることができる。基板本体11の一方の面11a上に形成される密着層13の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。又、基板本体11の一方の面11a上において密着層13上に積層される金属層14の厚さは、例えば、0.2〜5μm程度とすることができる。なお、絶縁膜12がシリコン酸化膜であり、金属層14の材料が銅(Cu)である場合に、シリコン酸化膜と銅の密着性は良くないが、チタン(Ti)等により密着層13を形成することで、シリコン酸化膜と銅は密着層13を介して良好に密着することができる。
【0036】
次に、
図2(c)に示す工程では、基板本体11の一方の面11a上に、貫通孔11xの一方の面11a側の端部を塞ぐように、密着層13及び金属層14を介して、保護膜100をラミネートする。保護膜100としては、例えば、樹脂フィルム等を用いることができる。なお、保護膜100の一部が貫通孔11x内に突起してもよい。
【0037】
次に、
図3(a)に示す工程では、基板本体11の他方の面11b側から、例えば、スピンコート法やスプレーコート法等により、基板本体11の他方の面11b及び貫通孔11x内に液状の樹脂等を塗布する。そして、所定温度に加熱して液状の樹脂等を硬化させる。これにより、貫通孔11xの内側面の他方の面11b側、金属層14、及び保護膜100の貫通孔11x内に露出する部分を連続的に被覆するレジスト層110が形成される。なお、レジスト層110は、貫通孔11xを充填するように形成してもよい。
【0038】
次に、
図3(b)に示す工程では、保護膜100を除去し、レジスト層110の一部を貫通孔11xの一方の面11a側の端部から露出させる。保護膜100は、例えば、有機溶剤に溶融させて除去できる。或いは、保護膜100は、例えば、機械的に剥離することで除去してもよい。
【0039】
次に、
図3(c)に示す工程では、金属層14上及びレジスト層110の貫通孔11xの一方の面11a側の端部から露出する部分上に、配線層15の一部となる導電層15aを形成する。導電層15aは、例えば、基板本体11の一方の面11a側からめっき液を供給し、金属層14を給電層とする電解めっき法により形成できる。導電層15aの材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。基板本体11の一方の面11a上に形成される導電層15aの厚さは、例えば、5〜30μm程度とすることができる。なお、導電層15aは、コンフォーマルめっきにより、金属層14から等方的に成長するため、平面視で貫通孔11xと重複する領域内の導電層15aの上部には凹部15xが形成される。
【0040】
次に、
図4(a)に示す工程では、レジスト層110を除去する。レジスト層110は、例えば、有機溶剤に溶融させて除去できる。
【0041】
次に、
図4(b)に示す工程では、貫通孔11xの一方の面11a側を埋めるように、導電層15aの他方の面11b側に、配線層15の他部となる導電層15bを形成する。導電層15bは、例えば、基板本体11の他方の面11b側からめっき液を供給し、金属層14を給電層とする電解めっき法により形成できる。導電層15bの材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。導電層15bは、貫通孔11xの上側の約半分の領域を埋めるように形成される。導電層15bは、コンフォーマルめっきにより、金属層14から等方的に成長するため、導電層15aの他方の面11b側の端部に他方の面11b側に開口する凹部15yが形成される。なお、貫通孔11xの内側面の中央部近傍において、導電層15bの先端部分が密着層13及び金属層14を介さずに絶縁膜12上に直接形成されてもよい。この工程により、金属層14を被覆して貫通孔11xの一方の面11a側を埋める配線層15が形成される。
【0042】
次に、
図4(c)に示す工程では、基板本体11の他方の面11b側から、例えば、スパッタ法等により、密着層23及び金属層24を順次形成する。密着層23及び金属層24は、基板本体11の他方の面11b上に絶縁膜12を介して積層され、更に、貫通孔11xの内側面に延在し、貫通孔11xの内側面の他方の面11b側の約半分の領域において絶縁膜12を介して積層される。そして、密着層23及び金属層24は、更に延在し、配線層15の他方の面11b側の端部に形成された凹部15yの内側面及び内底面を含む導電層15bの下端面に連続的に積層される。なお、密着層23と密着層13とは直接は導通していない(接していない)。
【0043】
密着層23及び金属層24の材料や厚さ等は、例えば、密着層13及び金属層14と同様とすることができる。なお、絶縁膜12がシリコン酸化膜であり、金属層24の材料が銅(Cu)である場合に、シリコン酸化膜と銅の密着性は良くないが、チタン(Ti)等により密着層23を形成することで、シリコン酸化膜と銅は密着層23を介して良好に密着することができる。
【0044】
次に、
図5に示す工程では、基板本体11の他方の面11b側からめっき液を供給し、導電層15bの下側に、例えば、金属層24を給電層とする電解めっき法により配線層25を形成する。配線層25は、密着層23及び金属層24を被覆して貫通孔11xの他方の面11b側(貫通孔11xの下側の約半分の領域)を埋めるように形成され、密着層23及び金属層24を介して、配線層15と電気的に接続される。なお、貫通孔11x内の配線層25の一方の面11a側の端部に一方の面11a側に突起する凸部25xが形成され、凸部25xは凹部15y内に配される。この工程の後、配線層15及び25をサブトラクティブ法等により所定の平面形状にパターンニングし、更に個片化することにより、配線基板1(
図1参照)が完成する。
【0045】
このように、第1の実施の形態に係る配線基板1では、貫通孔11xの内側面と銅の金属層14とは密着層13を介して密着している。又、貫通孔11xの内側面と銅の金属層24とは密着層23を介して密着している。そのため、配線基板1が高温状態や低温状態で繰り返し使用された場合でも、従来よりも銅のポンピング現象(温度変化による伸縮)が緩和され、銅の金属層14及び24が貫通孔11xの内側面から剥離して貫通配線が導通不良となるおそれを低減できる。
【0046】
又、配線層25の凸部25xが配線層15の凹部15y内に配され、かしめ状態となることにより、配線層15と配線層25とが貫通孔11x内で密着層23及び金属層24を介して接する面積が増大するため、配線層15と配線層25とが高い強度で接合される。そのため、たとえ銅のポンピング現象が多少生じたとしても銅の金属層14及び24が貫通孔11xの内側面から剥離して貫通配線が導通不良となるおそれを低減できる。
【0047】
又、基板本体11の一方の面11aにポリイミド等の絶縁膜を介して密着層13及び金属層14を形成する場合もある。このような構造の場合には、ポリイミド等の絶縁膜の銅(Cu)と接する部分に、銅のポンピング現象によりクラックが発生する問題があった。本実施の形態では、銅のポンピング現象が緩和さるため、ポリイミド等の絶縁膜の銅(Cu)と接する部分にクラックが発生するおそれを低減できる。基板本体11の他方の面11bにポリイミド等の絶縁膜を介して密着層23及び金属層24を形成する場合も同様である。
【0048】
又、配線層15は基板本体11の一方の面11a側から形成し、配線層25は基板本体11の他方の面11b側から形成し、貫通孔11x内に配された配線層15及び25が貫通配線となる。つまり、一度に形成する貫通配線は貫通孔11xの深さの半分程度で済むため、アスペクト比の高い貫通孔11x(例えば、アスペクト比が10の貫通孔)にも容易にめっき金属を充填してシームやボイド等の欠陥のない貫通配線を形成できる。要するに、本実施の形態の貫通配線形成方法では、実質的なアスペクト比を半分程度にできるということである。
【0049】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、基板本体として樹脂を主成分とする基材を用いる例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する。
【0050】
図6は、第2の実施の形態に係る配線基板を例示する断面図である。
図2を参照するに、配線基板2は、基板本体11が基板本体31に置換された点が配線基板1(
図1参照)と相違する。
【0051】
基板本体31は、例えば、ガラス布基材をエポキシ樹脂に含浸させた基材である。基板本体31の厚さは、例えば、0.2〜1.6mm程度とすることができる。なお、基板本体31は絶縁性であるため、基板本体31の周囲に絶縁膜12は形成されていない。
【0052】
又、密着層13が形成されていなく、銅の金属層14が基板本体31の一方の面31aから貫通孔31xの内壁面にかけて直接形成されている。又、密着層23が形成されていなく、銅の金属層24が基板本体31の他方の面31bから貫通孔31xの内壁面にかけて直接形成されている。なお、密着層13及び23が形成されていない理由は、銅の金属層14及び24と樹脂を主成分とする基材である基板本体31とは比較的良好に密着するからである。
【0053】
配線基板2を作製するには、まず、基板本体31として樹脂を主成分とする基材を準備して基板本体31にドリル加工やレーザ加工等により貫通孔31xを形成し、その後、第1の実施の形態の
図2(b)から
図5と同様の工程を実行する。但し、絶縁膜12、密着層13、及び密着層23を形成する工程は不要である。
【0054】
このように、基板本体としてシリコンに代えて樹脂を主成分とする基材を用いてもよい。この場合には、銅の金属層14及び24と樹脂を主成分とする基材である基板本体31とは比較的良好に密着するため、銅のポンピング現象はある程度抑制されているが、凸部25x及び凹部15yを設ける構造により、更に、銅のポンピング現象を緩和できる。すなわち、配線層25の凸部25xが配線層15の凹部15y内に配され、かしめ状態となることにより、配線層15と配線層25とが貫通孔11x内で金属層24を介して接する面積が増大するため、配線層15と配線層25とが高い強度で接合される。そのため、たとえ銅のポンピング現象が多少生じたとしても銅の金属層14及び24が貫通孔31xの内側面から剥離して貫通配線が導通不良となるおそれを低減できる。
【0055】
又、配線層15は基板本体31の一方の面31a側から形成し、配線層25は基板本体31の他方の面31b側から形成し、貫通孔31x内に配された配線層15及び25が貫通配線となる。つまり、一度に形成する貫通配線は貫通孔31xの深さの半分程度で済むため、アスペクト比の高い貫通孔31x(例えば、アスペクト比が10の貫通孔)にも容易にめっき金属を充填してシームやボイド等の欠陥のない貫通配線を形成できる。要するに、本実施の形態の貫通配線形成方法では、実質的なアスペクト比を半分程度にできるということである。
【0056】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0057】
例えば、第1の実施の形態において、基板本体11の材料として、シリコンに代えてガラスを用いてもよい。但し、この場合、ガラスは絶縁体であるため、絶縁膜12は形成しなくてもよい。
【0058】
又、第1及び第2の実施の形態の効果として、銅のポンピング現象が緩和されることを説明したが、シード層や配線層に銅以外の金属を用いた場合には、金属のポンピング現象が緩和される効果を奏する。例えば、シード層や配線層に銅合金を用いた場合には、銅合金のポンピング現象が緩和される効果を奏する。