【文献】
Murat Guvendiren et al.,Welding Kinetics in a Miscible Blend of High-Tg and Low-Tg Polymers,Macromolecules ,米国,American Chemical Society,2010年 4月 3日,Vol.43, No.7,3392-3398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0017】
[概要]
本発明のレーザー溶着用樹脂材料は、前述のとおり、前記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(i)、ポリカーボネート樹脂(i)と前記一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂(ii)の混合物、又は前記一般式(1)で表される構造単位と前下記一般式(2)で表される構造単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂(iii)を含むことを特徴とする。
以下、本発明に使用するポリカーボネート樹脂等につき、詳細に説明する。
【0018】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂(i)、ポリカーボネート樹脂(i)及びポリカーボネート樹脂(ii)の混合物、又は前記一般式(1)で表される構造単位と前下記一般式(2)で表される構造単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂(iii)である。
【0019】
[ポリカーボネート樹脂(i)]
ポリカーボネート樹脂(i)は、分子中に少なくとも下記一般式(1)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
【化4】
(一般式(1)中、R
1はメチル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Xは、
【化5】
のいずれかを示し、R
4及びR
5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、Zは、炭素原子(C)と結合して置換基を有していてもよい炭素数6〜12の脂環式炭素水素を形成する基を示す。)
【0020】
上記一般式(1)において、R
1はメチル基であり、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基であるが、R
2及びR
3は特には水素原子であることが好ましい。
【0021】
また、Xは、
【化6】
である場合、R
4及びR
5の両方がメチル基であるイソプロピリデン基であることが好ましく、また、Xが、
【化7】
の場合、Zは、上記一般式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素原子(C)と結合して、炭素数6〜12の二価の脂環式炭化水素基を形成するが、二価の脂環式炭素水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5−トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0022】
ポリカーボネート樹脂(i)としての好ましい具体例としては、以下のイ)〜ニ)のポリカーボネート樹脂が挙げられる。
イ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位を有するもの、即ちR
1がメチル基、R
2とR
3が水素原子、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ロ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン構造単位、即ちR
1がメチル基、R
2とR
3が水素原子、Xがシクロドデシリデン基である構造単位を有するもの。
ハ)2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン構造単位、即ちR
1がメチル基、R
2とR
3がメチル基、Xがイソプロピリデン基である構造単位を有するもの、
ニ)2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン構造単位、即ちR
1がメチル基、R
2とR
3が水素原子、Xがシクロヘキシリデン基である構造単位を有するもの、
これらの中で、より好ましくは上記イ)、ロ)またはハ)、さらに好ましくは上記イ)またはロ)、特には上記イ)のポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0023】
これらポリカーボネート樹脂(i)は、それぞれ、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを、ジヒドロキシ化合物として使用して製造することができる。
【0024】
ポリカーボネート樹脂(i)は、一般式(1)で表される構造単位以外のカーボネート構造単位を有することもでき、例えば、前記一般式(2)で表される構造単位(例えば、ビスフェノール−A由来の構造単位)、あるいは後述するような他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を有していてもよい。一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位の共重合量は、通常60モル%以下であり、50モル%以下が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下が最も好ましい。
【0025】
ポリカーボネート樹脂(i)の粘度平均分子量(Mv)は、15,000〜30,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形体が得られ、15,000を下回ると、耐衝撃性が悪化しやすく、実使用上問題となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、射出成形することが困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(i)のより好ましい分子量の下限は、18,000、さらに好ましくは20,000であり、上限は、より好ましくは29,000、さらに好ましくは28,000、特に好ましくは26,000である。
ここで、粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を使用し、温度20℃での極限粘度([η])(単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式:η=1.23×10
−4M
0.83 の式から算出される値を意味する。
【0026】
ポリカーボネート樹脂(i)は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量に調整してもよい。また、必要に応じ、粘度平均分子量が上記の好適範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
【0027】
[ポリカーボネート樹脂(ii)]
ポリカーボネート樹脂(ii)は、下記一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート樹脂である。
【化8】
(一般式(2)のXは、前記一般式(1)と同義である。)
【0028】
上記一般式(2)で表されるポリカーボネート構造単位の好ましい具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノール−A由来のカーボネート構造単位である。
【0029】
ポリカーボネート樹脂(ii)は、一般式(2)で表される構造単位以外のカーボネート構造単位を有することもでき、他のジヒドロキシ化合物由来のカーボネート構造単位を有していてもよい。一般式(2)で表される構造単位以外の構造単位の共重合量は、通常50モル%未満が好ましく、より好ましくは40モル%以下、さらには30モル%以下、特には20モル%以下であり、10モル%以下、なかでも5モル%以下が最も好ましい。
【0030】
他のジヒドロキシ化合物としては、例えば以下のような芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルエチル)フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4’−(1,3−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,4−フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−6−メチル−3−tert−ブチルフェニル)ブタン等が挙げられる。
【0031】
ポリカーボネート樹脂(ii)の粘度平均分子量(Mv)は、10,000〜30,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形体が得られ、10,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、射出成形または押出成形が困難となりやすい。ポリカーボネート樹脂(ii)のより好ましい分子量の下限は、11,000、さらに好ましくは12,000であり、その上限はより好ましくは26,000、さらに好ましくは24,000、最も好ましくは20,000である。
なお、粘度平均分子量(Mv)の定義は、前記したとおりである。
【0032】
ポリカーボネート樹脂(ii)は、1種または2種以上を混合して使用してもよく、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して上記粘度平均分子量に調整してもよい。また、必要に応じ、粘度平均分子量が上記の好適範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよい。
【0033】
[ポリカーボネート樹脂(i)及び(ii)の割合]
ポリカーボネート樹脂(i)及びポリカーボネート樹脂(ii)の混合物を用いる場合の割合は、両者の質量比で、ポリカーボネート樹脂(i)/ポリカーボネート樹脂(ii)=9/1〜1/9であることが好ましい。このような混合割合で用いることにより、高い硬度を有して耐傷付き性に優れ、また、優れた耐熱性をも達成することが可能となる。ポリカーボネート樹脂(i)は、その質量比が1を下回ると表面硬度が低下し、成形体としたときに表面が傷つき易くなってしまい、また、レーザー溶着性が低下しやすくなり、9を超えると成形体の耐衝撃性が低下し割れを起こしたり、耐熱性が低下し易い。
より好ましい混合比は、ポリカーボネート樹脂(i)/ポリカーボネート樹脂(ii)=8/2〜2/8、さらに好ましくは7/3〜3/7である。
【0034】
[共重合ポリカーボネート樹脂(iii)]
また、本発明で用いる共重合ポリカーボネート樹脂(iii)は、前記一般式(1)で表される構造単位と前記一般式(2)の構造単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂である。
共重合ポリカーボネート樹脂(iii)中の前記一般式(1)で表される構造単位と前記一般式(2)の構造単位の好ましい構造単位は、上記したポリカーボネート樹脂(i)とポリカーボネート樹脂(ii)における構造単位と同様である。
【0035】
上記一般式(2)の構造単位(すなわち、ビスフェノール−A由来の構造単位)は、特に限定されないが、共重合ポリカーボネート樹脂(iii)中、好ましくは10〜90質量%の範囲、より好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%、特に好ましくは30〜70質量%の範囲が好適である。このような共重合割合とすることにより、硬度と機械的物性のバランスが良好となるので好ましい。
【0036】
共重合ポリカーボネート樹脂(iii)の粘度平均分子量(Mv)は、10,000〜30,000であることが好ましい。粘度平均分子量がこの範囲であると、成形性が良く、且つ機械的強度の大きい成形体が得られ、10,000を下回ると、耐衝撃性が低下し使用が困難となりやすく、30,000を超えると溶融粘度が増大し、射出成形または押出成形が困難となりやすい。共重合ポリカーボネート樹脂(iii)のより好ましい分子量の下限は、11,000、さらに好ましくは12,000であり、その上限はより好ましくは29,000、さらに好ましくは28,000である。
なお、粘度平均分子量(Mv)の定義は、前記したとおりである。
【0037】
なお、ポリカーボネート樹脂(i)及び(ii)並びに共重合ポリカーボネート樹脂(iii)の鉛筆硬度は、HB以上であることが好ましい。ここで、鉛筆硬度はJIS K5600−5−4に準拠して測定される。
鉛筆硬度がHBより低いと、成形体の表面硬度が低く、表面が傷付きやすくなってしまう。ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、中でもF以上、特にはH以上であることが好ましい。
【0038】
また、ポリカーボネート樹脂(i)及び(ii)並びに共重合ポリカーボネート樹脂(iii)は、そのガラス転移温度が140℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、また110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度をこのような範囲とすることで、特にレーザー溶着部の強度がより高くなる。
なお、ガラス移転温度は、DSCを用い、窒素気流下、室温から10℃/minの速度で昇温し、その変曲点をガラス転移温度として測定される。
【0039】
[ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明に使用する上記ポリカーボネート樹脂を製造する方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち特に好適なものについて、具体的に説明する。
【0040】
・界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、前記各ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させてもよい。
【0041】
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0042】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、なかでも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、なかでも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0043】
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族第三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0044】
分子量調整剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、なかでも芳香族フェノールが好ましい。
このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−オキシン安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0045】
分子量調整剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0046】
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調整剤は、ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
【0047】
・溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
【0048】
ジヒドロキシ化合物は、それぞれ前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。なかでも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、ジフェニルカーボネートが特に好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0049】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、なかでも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0050】
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が、熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率、エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
【0051】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0052】
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0053】
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、この範囲の条件で、ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
【0054】
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0055】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いても良い。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1質量ppm以上であり、また、通常100質量ppm以下、好ましくは20質量ppm以下である。
【0056】
[レーザー溶着用樹脂材料]
上記したポリカーボネート樹脂を含む本発明の樹脂材料は、レーザー溶着用として用いる。本発明の樹脂材料からなる部材を少なくとも一方に用い、他の樹脂部材と当接させ、レーザー光を照射しレーザー溶着して互いに強固に接合させることができ、2以上の樹脂部材から構成される溶着体を製造できる。
樹脂部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、レーザー光透過性のある部材を透過したレーザー光が、レーザー光吸収性のある部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明の樹脂材料は、レーザー光に対する透過性が高く、また溶着性に優れるので、レーザー光の透過側の部材として好ましく用いることができる。ここで、該レーザーが透過する部材の厚み(レーザー光が透過する方向の厚み)は、用途、組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0057】
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、例えば、Arレーザー(波長:510nm)、He−Neレーザー(630nm)、CO
2レーザー(10600nm)などの気体レーザー、色素レーザー(400〜700nm)などの液体レーザー、YAGレーザー(1064nm)などの固体レーザーや、半導体レーザー(655〜980nm)等が利用できる。ビーム品質、コストの点で、半導体レーザーが好ましく用いられる。また、溶着相手材の種類によって、適宜レーザー種を選択することもできる。
【0058】
より具体的には、例えば、本発明のレーザー溶着用樹脂材料からなる部材(I)とレーザー光吸収性を有する樹脂材料からなる部材(II)を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、本発明のレーザー溶着用樹脂材料からなる部材(I)側からレーザー光を照射(好ましくは接着面に垂直に照射)する。この時、必要によりレンズ系を利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームはる部材(I)中を透過し、レーザー光吸収性の部材(II)の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって部材(I)側にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。このようにして部材同士を溶着された成形品は、高い接合強度を有する。
【0059】
ここで、レーザー光吸収性の部材(II)は、少なくとも樹脂を含み、且つ、本発明のレーザー溶着用樹脂材料からなる部材(I)と溶着可能なものであれば特に制限されない。部材(II)に含まれる樹脂は、部材(I)と同じポリカーボネート樹脂は勿論のこと異種のその他の熱可塑性樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などが挙げられる。また、部材(II)は1種または2種以上の樹脂から構成されていてもよい。
【0060】
また、部材(II)に含まれる樹脂は、照射するレーザー光波長の範囲内に吸収波長を持つものが好ましい。さらに、部材(II)に、レーザー光吸収剤を添加含有させることにより、その吸収特性を発現させることが好ましい。
レーザー光吸収剤としては、染料、顔料等の着色剤が挙げられ、染料としては、アントラキノン系、インジゴイド系、ペリレン系、ペリノン系、アゾ系、メチン系、フタロシアニン系、アントラピリドン系等の油溶性染料や分散染料を好ましく用いることができる。
顔料としては、顔料としては、無機顔料と有機顔料のいずれも好ましく用いることができる。無機顔料としては、酸化物、硫化物、硫酸塩、カーボンブラック等を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系等を挙げることができる。これら顔料の中ではカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0061】
カーボンブラックは、その製造方法、原料種等に制限はなく、従来公知の任意のもの、例えば、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。これらの中でも、着色性とコストの点から、オイルファーネスブラックが好ましい。
【0062】
カーボンブラックの平均粒子径は適宜選択して決定すればよいが、中でも5〜60nmが好ましく、更には7〜55nm、特に10〜50nmであることが好ましい。平均粒子径を5nm以上とすることで、流動性が向上する傾向にあり、60nm以下とすることで成形体の漆黒性が向上する。
【0063】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、通常1,000m
2/g未満が好ましく、中でも50〜400m
2/gであることが好ましい。窒素吸着比表面積を1,000m
2/g未満にすることで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、窒素吸着比表面積は、JIS K6217に準拠して測定することができる。
またカーボンブラックのDBP吸収量は、300cm
3/100g未満であることが好ましく、中でも30〜200cm
3/100gであることが好ましい。DBP吸収量を300cm
3/100g未満にすることで、樹脂組成物の流動性や成形品の外観が向上する傾向にあり好ましい。なお、DBP吸収量はJIS K6217に準拠して測定することができる。
【0064】
カーボンブラックは、単独でまたは2種以上併用して使用することができ、また、カーボンブラックは、バインダーを用いて顆粒化することも可能であり、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン系樹脂等の樹脂中に高濃度で溶融混練したマスターバッチで使用することも好ましい。
【0065】
これらのレーザー光吸収剤は単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。レーザー光吸収剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対し0.001〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.005〜3質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部である。
【0066】
レーザー溶着する部材(I)及び(II)の組み合わせとしては、上記の中でも、レーザー光透過性の部材(I)としてレーザー光吸収剤を含有しない本発明のレーザー溶着用樹脂材料からなる部材を用い、レーザー光吸収性の部材(II)としてレーザー光吸収剤を含有する本発明のレーザー溶着用樹脂材料からなる部材を使用することが好ましい。このような組み合わせでレーザー溶着することで、特に強い溶着強度を達成することが可能となる。
【0067】
[その他の成分]
本発明のレーザー溶着用樹脂材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0068】
・その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクルレート、フェニルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
その他の樹脂を含有する場合は、ポリカーボネート樹脂及びその他の樹脂の合計100質量%基準で、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。その他の樹脂を上記の範囲よりも多く用いた場合は、表面硬度、耐擦傷性、耐衝撃性、透明性、レーザー溶着性が低下する場合がある。
【0069】
・樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染顔料、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、耐衝撃性改良剤(エラストマー等)、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。特に熱安定剤や酸化防止剤は光線透過率や色相の向上のために使用することが好ましく、また紫外線吸収剤や離型剤を使用することも好ましい。
以下、本発明に使用するポリカーボネート樹脂に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
【0070】
・・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0071】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製(商品名、以下同じ)「アデカスタブ1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP−10」、城北化学工業社製「JP−351」、「JP−360」、「JP−3CP」、BASF社製「イルガフォス168」等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0072】
熱安定剤の含有量は、使用する全ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0073】
・・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0074】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製(商品名、以下同じ)「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0075】
酸化防止剤の含有量は、使用する全ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0076】
・・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0077】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0078】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
【0079】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0080】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0081】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0082】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。
【0083】
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
また、前記の脂肪族炭化水素の数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
なお、脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0084】
なお、上述した離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、使用する全ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0085】
・・紫外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、ポリカーボネート樹脂の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0086】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0087】
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製(商品名、以下同じ)「シーソーブ701」、「シーソーブ702」、「シーソーブ703」、「シーソーブ704」、「シーソーブ705」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0088】
紫外線吸収剤の含有量は、使用する全ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、耐候性の改良効果が乏しく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こしやすい。
なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0089】
[レーザー溶着用部材]
レーザー溶着用部材の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂材料について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも射出成形が好ましい。
【0090】
[好適特性]
本発明のレーザー溶着用樹脂材料は、JIS K5600−5−4に準拠して測定される、厚み3mmにおける鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上がより好ましい。また、後記する実施例の項に記載の条件で測定されたデュポン衝撃強度(面衝撃強度)が、20J以上であることが好ましく、22J以上がより好ましい。鉛筆硬度がH以上、面衝撃強度が20J以上の両方を満足することによって、本発明のレーザー溶着用樹脂材料は、硬度と耐衝撃性の両方が求められるレーザー溶着用材料に、好適に使用することが可能である。
【0091】
本発明のレーザー溶着用樹脂材料をレーザー溶着した溶着体は、硬度と耐衝撃性のバランスに優れるので、例えば、以下のようなものに好ましく適用できる。
・建物(ビル、家屋、温室等)の窓ガラス;車、飛行機、建設機械の窓ガラス;ガレージ、アーケード等の屋根;サンルーフ、ルーフパネル、日除け;各種のぞき窓;
・照灯用レンズ、信号機レンズ、光学機器のレンズ;レンズカバー;ミラー、眼鏡、ゴーグル、バイクの風防;太陽電池カバー;保護カバー;
・ヘッドランプ、インナーレンズ、リアランプ等の各種自動車用ランプカバー;自動車内装パネル;
・ディスプレイ装置用カバー、表示パネル用部材、遊技機(パチンコ等)用部品;
・各種携帯端末、カメラ、ゲーム機等、電気電子機器やOA機器の筺体;ヘルメット;
・シート、フィルムおよびその積層体。
特に、自動車内装パネル、自動車ランプレンズ、窓、筐体、タッチパネル又はライトガイド等に、またシート、フィルムおよびこれらの積層体を用いる場合は、携帯型表示体の保護窓、表示装置用部材、表示装置用カバー、保護具用部材又は車載用部品に好適である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
【0093】
[ポリカーボネート樹脂(i)]
ポリカーボネート樹脂(i)に該当するポリカーボネート樹脂として、以下のポリカーボネート樹脂(C−PC)を使用した。
【0094】
(1)ポリカーボネート樹脂(C−PC)の製造:
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「BPC」と記す。)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.66モル(5.71kg)を、撹拌機および溜出凝縮装置付きのSUS製反応器(内容積40リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs
2CO
3)を、BPC1モルに対し1.5×10
−6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを溜出させた。
【0095】
次に、反応器内を60分かけて温度を280℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに80分間反応を続け重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の攪拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は300℃、攪拌動力は0.90kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を2軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp−トルエンスルホン酸ブチルを2軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を2軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してカーボネート樹脂のペレットを得た。得られたペレットの粘度平均分子量(Mv)は24,000であった。なお、粘度平均分子量の測定は、前述のとおりである。
【0096】
[ポリカーボネート樹脂(ii)]
ポリカーボネート樹脂(ii)に該当するポリカーボネート樹脂として、以下のポリカーボネート樹脂(A−PC)を使用した。
【0097】
<ポリカーボネート樹脂(「A−PC」)>
ビスフェノール−Aを出発原料とした界面法によるポリカーボネート樹脂
三菱エンジニアリングプラスチックス社製
商品名「ユーピロン(登録商標)S−3000」
粘度平均分子量(Mv):21,000
【0098】
さらに、以下の安定剤、酸化防止剤及び離型剤を使用した。
[安定剤]
・リン系安定剤:
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
ADEKA社製、商品名「アデカスタブ2112(AS2112)」
[酸化防止剤]
・ヒンダートフェノール系酸化防止剤:
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
BASF社製、商品名「イルガノックス1010(Irg1010)」
[離型剤]
・ペンタエリスリトールテトラステアレート
コグニスジャパン社製、商品名「ロキシオールVPG861(VPG861)」
・ステアリルステアリレート
日油社製、商品名「ユニスターM9676(M9676)」
[レーザー光吸収剤]
・カーボンブラック−ポリスチレンマスターバッチ
越谷化成工業社製、商品名「RB904G」
カーボンブラック:40質量%、ポリスチレン:60質量%
【0099】
(実施例1〜8、比較例1)
<ポリカーボネート樹脂組成物ペレットの製造>
上記した各樹脂及び添加剤を後記表1に示す組成(質量部)で配合混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30XCT」)により、バレル温度280℃で混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレット(PC1−N〜PC3−N及びPC1−B〜PC3−B)を製造した。
【0100】
なお、ガラス転移温度、鉛筆硬度、及び耐衝撃性の測定は、以下のとおりである。
<ガラス移転温度>
DSC(セイコー社製、型式:SSC−5000)を用い、得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを、窒素気流下、室温から10℃/minの速度で昇温し、その変曲点をガラス転移温度として測定した。結果を表1に示す。
<鉛筆硬度>
得られたポリカーボネート樹脂組成物ペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度260〜280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpmの条件下にて、90mm×50mm×3mm厚の平板状試験片を射出成形した。得られた平板状試験片(3mm厚)につき、JIS K5600−5−4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機株式会社製)を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。結果を表1に示す。
【0101】
<耐衝撃性(デュポン衝撃強度(面衝撃強度))>
上記各ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80−9E」)を用い、シリンダー設定温度260〜280℃、金型温度80℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、100mm×100mm×2mm厚の平板状試験片を成形した。
得られた平板状試験片を用い、東洋精機製作所社製「デュポン衝撃強度測定機」を用いて、亀裂が生じたものを破壊として10回試験を行い、50%破壊エネルギーを求めた。その際の撃芯半径は1/16インチ、錘は133gで、温度25℃で測定した。
結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
<レーザー溶着強度>
上記各ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを80℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度260〜280℃、金型温度80℃、射出時間2秒、成形サイクル40秒の条件で、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。このISO試験片の片側半分を切削し、レーザー光透過側用試験片(I)又はレーザー光吸収側用試験片(II)とした。
【0104】
上記レーザー光透過側用試験片(I)をレーザー光透過側、上記レーザー光吸収側用試験片(II)をレーザー光吸収側として、ずらして重ね合わせ、透過側からレーザーを照射した。レーザー溶着は、浜松ホトニクス社製レーザー光加熱装置「LD−HEATER L10060」を用い、レーザー光光源:半導体レーザー、レーザー波長:940nm、レーザー走査速度:2mm/秒、レーザー出力:7Wで行った。
レーザー溶着強度の測定は、引張試験機(インストロン社製5544型)を使用し、透過側用試験片(I)と吸収側用試験片(II)の先端をそれぞれ掴み、引張速度50mm/minで引張方向に荷重をかけて剪断破壊する荷重(破断荷重、単位:N)を求めた。
結果を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
表1、2の実施例及び比較例の対比から、本発明のレーザー溶着用樹脂材料は、鉛筆硬度がH以上であり且つ面衝撃強度が20J以上であることから、レーザー溶着性に優れ、硬度と耐衝撃性のバランスにも優れた材料であることがわかる。