特許第6286215号(P6286215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286215
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20180215BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H01L21/302 101D
   H05H1/46 C
   H01L21/302 103
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-12917(P2014-12917)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-141957(P2015-141957A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】川上 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】中村 勤
(72)【発明者】
【氏名】木原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北田 裕穂
(72)【発明者】
【氏名】谷村 英宣
(72)【発明者】
【氏名】楠本 広則
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−083633(JP,A)
【文献】 特開平04−335120(JP,A)
【文献】 特開2012−049393(JP,A)
【文献】 特開2013−247263(JP,A)
【文献】 特開2010−141104(JP,A)
【文献】 特開2013−115268(JP,A)
【文献】 特開2013−222910(JP,A)
【文献】 特開2012−156275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205、21/302、21/3065、21/31、
21/365、21/461、21/469、21/86、
H05H 1/00− 1/54、
G01J 5/00− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置された処理室と、この処理室内へガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に配置され処理対象の試料がその上に載置される試料台と、前記処理室の上方でこれを覆って配置され当該処理室内にプラズマを形成するため導入される電界が透過する誘電体製の板部材と、前記処理室の外側に配置され前記電界を前記板部材に供給する電界供給路と、前記板部材の温度を検出する温度検出器とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記温度検出器は、前記板部材の外側で離間して配置されこの板部材から放射される赤外線を受けてその温度を検知する赤外センサと、前記板部材と前記赤外センサとの間に配置され同一の材料で構成された第一の窓部材およびこの第一の窓部材と前記赤外センサとの間で当該第一の窓部材から離間されて配置された第二の窓部材とを有し、
前記第二の窓部材はその表面に外部から前記板部材と異なる温度の流体が供給されて所定の範囲内の温度に維持され、前記第一および第二の窓部材を透過した前記赤外線を受けて前記赤外センサが前記板部材の温度を検出するプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記第二の窓部材の温度に応じて前記赤外センサから得られる出力を補正して前記板部材の温度を検出するプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記第二の窓部材の表面に温度が調節された空気が供給されて前記所定の範囲内の温度に維持されるプラズマ処理装置。
【請求項4】
対象物の温度を検出する温度センサであって、
前記対象物から放射される赤外線を受けて前記温度を検知する赤外センサと、前記対象物と前記赤外センサとの間に配置され同一の材料で構成された第一の窓部材およびこの第一の窓部材と前記赤外センサとの間で当該第一の窓部材から離間されて配置された第二の窓部材とを備え、
前記第二の窓部材はその表面に外部から前記対象物と異なる温度の流体が供給されて所定の範囲内の温度に維持され、前記第一および第二の窓部材を透過した前記赤外線を受けて前記赤外センサが前記対象物の温度を検出する温度センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の温度センサであって、
前記第二の窓部材の温度に応じて前記赤外センサから得られる出力を補正して前記対象物の温度を検出する温度センサ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の温度センサであって、
前記第二の窓部材の表面に温度が調節された空気が供給されて前記所定の範囲内の温度に維持される温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内部の処理室内に配置した半導体ウエハ等の試料を当該処理室内に形成したプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置に係り、特に処理室の壁を構成する部材の温度を調節しつつ試料を処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子は微細化により、リソグラフィーにより形成されたマスクを下層膜に転写するエッチング工程にはより高い精度の寸法精度、つまりCD(Critical Dimension)精度が要求されている。量産現場において高いCD制御性に加えて、CDの再現性を確保することが重要な課題である。
【0003】
一般にエッチング工程においてCDが変動する要因としてはエッチングチャンバ内壁に被処理材から発生した反応生成物が付着する、チャンバ内部材が長期的な使用により消耗する、チャンバ内部材の温度等が変動し、チャンバ内の内壁等へのラジカルの付着確率が変化し、エッチング性能へ影響するプラズマ状態が変動する等の要因が挙げられる。
【0004】
従来のプラズマ処理装置では、チャンバ内温度変動を抑制するために真空チャンバの外側壁を電熱式のヒーターで加熱することにより温度を調整するものが知られていた。また、μ波等のプラズマ生成用の電界または磁界の伝播を阻害するものを設置することを避けるべきこれら電界、磁界の導波路内に配置された誘電体製の窓部材等は温風を吹き付けることにより加熱するものも知られていた。
【0005】
このような技術では、温度の調節を精度良く実現する為にはその温度調節の対象物の温度を検知してその検出の結果に基づいてヒーターの加熱の量や温風の温度を加減することが必要となるが、上記の通り電界または磁界を乱してしまう接触式の温度計を設置することは避けるべきであることから、非接触で温度を検知する手段、例えば放射温度計が用いられていた。また、放射温度計による温度の検知の際には、温度計と窓部材等の対象物との間に対象物に面して(あるいは臨んで)これからの赤外線が透過可能な覗き窓が配置されていた。
【0006】
また、特許文献1に開示されるように、真空チャンバの内部の壁面を構成する部材または当該壁面部材の表面をアルミナのような誘電体の材料にし、処理室に面する石英からなる窓を配置して、当該窓を通して赤外線温度計により内部壁面部材の温度を検知することで、耐プラズマ壁の温度制御を高精度に行い、プラズマによる処理の安定化を図る技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−250293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術は、次の点について、考慮が不十分であったため問題が生じていた。すなわち、上記の放射温度計等の特定の波長の帯域の電磁波を用いて非接触で温度を検出する手段を用いる従来技術では、覗き窓自体から放射される電磁波の影響について配慮されていない。
【0009】
つまり、覗き窓自体が輻射または伝導により熱を受けて加熱されその温度が上昇した場合には、覗き窓の部材自体が赤外線、または遠赤外線等の電磁波を放射することになり、当該覗き窓を通して電磁波を受けて温度を検知する温度計は当然に覗き窓を透過するものとこれから放射された電磁波とを受けていることになる。このため、温度を検出する対象物の部材の実際の温度とは異なる量の電磁波に基づいて温度を検出しており、その検出の精度が損なわれていたことについて、上記従来技術は考慮されていなかった。
【0010】
本発明の目的は、対象となる装置を構成する部材の温度の検出の精度を向上させて、より安定したその温度の調節を可能にしてプラズマ処理の安定性を向上させたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、真空容器内部に配置された処理室と、この処理室内へガスを供給するガス供給手段と、前記処理室内に配置され処理対象の試料がその上に載置される試料台と、前記処理室の上方でこれを覆って配置され当該処理室内にプラズマを形成するため導入される電界が透過する誘電体製の板部材と、前記処理室の外側に配置され前記電界を前記板部材に供給する電界供給路と、前記板部材の温度を検出する温度検出器とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記温度検出器は、前記板部材の外側で離間して配置されこの板部材から放射される赤外線を受けてその温度を検知する赤外センサと、前記板部材と前記赤外センサとの間に配置され同一の材料で構成された第一の窓部材およびこの第一の窓部材と前記赤外センサとの間で当該第一の窓部材から離間されて配置された第二の窓部材とを有し、前記第二の窓部材はその表面に外部から前記板部材と異なる温度の流体が供給されて所定の範囲内の温度に維持され、前記第一および第二の窓部材を透過した前記赤外線を受けて前記赤外センサが前記板部材の温度を検出することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、覗き窓から放出される電磁波を低減、及び安定させ、且つその値を補正することにより温度モニタの測定精度を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の上部の構成を拡大して示す縦断面図である。
図3図1に示す実施例に係る覗き窓の光学的な特性を示すグラフである。
図4】特定の物体の赤外線の放射強度の各波長毎の変化を示すグラフである。
図5図2に示す実施例に係る別の覗き窓が無い場合の赤外線温度センサが検知する放射強度を示すグラフである。
図6図2に示す実施例の別の覗き窓の光学的な特性を示すグラフである。
図7図2に示す実施例に係る別の覗き窓が配置された場合の赤外線温度センサ119が検知する放射強度を示すグラフである。
図8図2に示す実施例に係る覗き窓123と覗き窓129の温度の変動に対する放射強度の変動の大きさを示すグラフである。
図9図2に示す実施例に係る赤外線温度センサの出力または検出値を覗き窓の放射強度を用いて補正する方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態をについて図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例を、図を用いて説明する。ここで、図1,2は本発明の実施例に係るプラズマ処理装置を示す図であり、特に本実施例ではマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチングを行うプラズマ処理装置である。
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。この図において、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置は、円筒形またはこれと見なせる程度の近似した形状を有してその円筒形の側壁の上部が開放された真空容器101の上部に円板形状の誘電体窓103(例えば石英製)を設置して、これらの間がシールされて内部が気密に封止されている。
【0017】
また、誘電体窓103の下方には、この真空容器101内部の処理室104内にエッチングガスを導入するための貫通孔が複数個配置されたシャワープレート102(例えば石英製またはイットリア製)が配置されている。処理室104は誘その天井面が電体窓103と真空容器101の側壁との間で内外が気密に封止された状態で構成されている。また、その下面はシャワープレート102により構成されており、このシャワープレート104102は処理室104内部に形成されるプラズマに面することになり、処理中はシャワープレート102を介してその上方に配置された誘電体窓103にプラズマからの熱が伝達される。
【0018】
シャワープレート102と誘電体窓103との間にはこれらにより上下を挟まれた空間が配置され、この内部はエッチングガスを流すためのガス供給装置105と連通されて、ガス供給装置105から供給されたエッチングガスが内部で拡散した後シャワープレート102の貫通孔を通り処理室104内に導入される。また、真空容器101の下方には真空排気装置(図示省略)が配置され、真空容器101内の処理室104の底面に配置された真空排気口106を介し処理室104と連通されている。
【0019】
プラズマを生成するための電力を処理室104に伝送するため、誘電体窓103の上方には電磁波を放射する高周波導入手段として導波管107(またはアンテナ)が配置されている。この導波管107は誘電体窓103の上方に向けて延在する円筒形の管状部分を有し、その内部には誘電体窓103下方の処理室104内での電磁波の分布を調整するための誘電体板121(例えば石英製)が設置されている。
【0020】
導波管107は、その上下方向に延在した導波管107の円筒形の管状部分は上端部において水平方向に延在する断面矩形状の管状部分の一端部と連結されて向きが変えられ、さらに断面矩形状の管状部分の他端側には導波管107内へ伝送される電磁波を発振して形成するための電磁波発生用電源109が配置されている。この電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波が用いられる。
【0021】
処理室104の外周部であって誘電体窓103の上方及び真空容器101の円筒状部分の側壁の外周側には、磁場を形成する磁場発生コイル110が配置され、電磁波発生用電源109より発振されて導波管107及び誘電体窓103、シャワープレート102を介して処理室104内に導入された電界は、直流電流が供給されて磁場発生コイル110により形成され処理室104内に導入された磁場との相互作用により、エッチングガスの粒子を励起して処理室104内のシャワープレート102の下方の空間にプラズマを生成する。また、本実施例では処理室104内の下部であってシャワープレート102の下方にはその下面に対向して配置されたウエハ載置用電極111が配置されている。
【0022】
ウエハ載置用電極111は、本実施例では略円筒形状を有してその上面であって処理対象のウエハ112が載せられる面には溶射によって形成された誘電体製の膜(図示省略)が配置されており、その誘電体の膜内部に配置された膜状の少なくとも1つの電極には高周波フィルター115を介して直流電源116が接続されて直流電力が供給可能に構成されている。さらに、ウエハ載置用電源111の内部には、円板形状の導体製の基材が配置されておりマッチング回路113を介して高周波電源114が接続されている。
【0023】
このようなプラズマ処理装置において、図示されていない真空容器101の側壁に連結された真空容器101であってその減圧された搬送室の内部にロボットアーム等の搬送手段が配置された真空搬送容器の当該搬送室を搬送されて処理室104内に搬入されたウエハ112は、直流電源116から印加される直流電圧の静電気力でウエハ載置用電極111上に吸着された後、ガス供給装置105から所定のエッチングガスが処理室104内に供給され処理室104内部の圧力が処理に適した圧力に調節された後、上記電界及び磁界が処理室104内に供給されてウエハ載置用電極111及びシャワープレート102との間の処理室104内の空間にプラズマが形成される。プラズマが形成された状態でウエハ載置用電極111に接続された高周波電源114から高周波電力が印加されてウエハ112上方にバイアス電位が形成され、プラズマ中の荷電粒子がウエハ112表面に引き込まれてウエハ112表面上に配置された処理対象の膜がエッチング処理される。
【0024】
また、処理中に誘電体窓103、およびシャワープレート102の温度制御を行うため、誘電体窓103の上方でこれと導波管107との間に配置され内部が円筒形の空間を有した空洞共振器108の円筒の上面に相当する天井面を構成する部材に、常温のドライエアが通流するガスラインに接続されて供給されたドライエアを所望の温度に加熱して円筒形上の密閉された空間128内に供給し誘電体窓103及びシャワープレート102とを加熱する加熱手段である温風ヒーター117が配置されている。また、温風ヒーター117は温風ヒーター制御器118に接続されている。
【0025】
温風ヒーター117で加熱されたドライエアは空洞共振機108の天井面を構成する部材に配置されたガス導入穴を通して導波路内に導入される。その加熱されたドライエアは誘電体窓103と接触して熱エネルギーが伝達され、誘電体窓103が加熱され、その下方に配置されたシャワープレート102も熱の伝導によって加熱される。
【0026】
また、空洞共振機器108の天井面には内部を水が通流する冷却水流路120を構成するリング状の溝を有するリング状の部材が配置され、温風ヒーター117でドライエアを加熱せずに常温で導入すること及び冷却水流路120を通る冷却水にからの排熱により、誘電体窓103を冷却することも出来る。その為、温風ヒーター117をON−OFFすることにより、誘電体窓103の加熱と冷却が可能となる。
【0027】
なお、空間128内に導入されたドライエアは、空間128の中央上方でこれに連結されている導波管107の円筒形上部内を上方に流れ、導波管107の断面矩形状部分と円筒形状部との連結部の上面に配置された排気ポート122を通して導波管107外部に排出される。このため、導波管107の円筒形状部内に配置された誘電体板121はドライエアが通過可能に構成されている。

また誘電体窓103の温度を計測・監視するため赤外線放射温度センサ119が、導波管107の外側に設置されている。赤外線放射温度センサ119にて検出された温度を示す信号は、温風ヒーター制御器118に通信手段を介して伝送される。温度ヒーター制御機器118は、受信した当該信号に基づいて誘電体窓103温度を検出した結果を所期の設定温度と比較し、この結果に応じて誘電体窓103が所望の温度になるように、温風ヒーター117にONまたはOFFを命じる信号を発振して温風ヒーター117の動作を調節する。ここで、、温風ヒーター117により調整する誘電体窓103の温度の範囲を室温〜100℃としている。

図2は、図1に示す実施例に係るプラズマ処理装置の上部の構成を拡大して示す縦断面図である。本図において、赤外線放射温度センサ119は、磁場発生コイル110により形成される磁束密度が当該コイル内の1/10以下(200Gauss)になる位置に配置されている。
【0028】
この構成のため、空洞共振器108の天井面を構成する部材の上面にμ波の漏えい防止用の金属メッシュ124及びこの金属メッシュ124の上方に赤外線を透過させるための円板形状の部材である覗き窓123が配置され、更には当該覗き窓123の上方に配置されその内部をセンサーで覗くための垂直方向に軸を有して延在し覗き穴126及びこの上方で接続されて配置され同様に垂直方向に軸を有して延在した断面の大きさが小さくされた覗き穴125が導波管107の円筒形上部を構成する部材の内部に配置されている。更に、覗き穴125の上方には、赤外線放射温度センサ119が、コイル上面より磁束密度がコイル内の1/10以下になる位置になるように、導波管107の円筒形状部を構成する部材の上方に載せられた支持台127が配置されている。
【0029】
円筒形状部の部材の上方に配置されて当該部材にボルトやねじで締結された支持台127は、その上端部の上方に赤外線放射温度センサーモニター119が載せられてこれらが相互に固定されている。図示していないが、覗き穴125,126内部空間、金属メッシュ124を通して下方の誘電体窓103から放射された赤外線が赤外線放射温度センサ119まで到達できるように支持台127は覗き穴125の上方の開口と赤外線放射温度センサーモニター119の受光部との間を結ぶ赤外線の通過空間を遮ることが無いように構成されている。また、覗き窓123は、材料としてフッ化カルシウム(フッ化バリウム、ゲルマニウム等でも良い)から或いはこれを主な成分として含む材料で構成され、その厚さが3mmの板状の部材で構成されている。
【0030】
本実施例において、赤外線放射温度センサ119と覗き窓123との間には別の覗き窓129が配置され、さらに、覗き窓129の内部または表面に流体を供給してこれを所定の温度の範囲に、本例では20〜30℃の間の値、所謂常温の範囲に維持できるように流体の吹き出し口130が備えられている。吹き出し口130は、図示しない流体源としてのドライエアタンク及びポンプとに管路を介して連結され、管路を通してタンク内のドライエアが吹き出し口130に供給される。
【0031】
このように、支持台127は、覗き窓129とドライエア吹き出し口130が設置出来る構造となっている。また、別の覗き窓129の材料は覗き窓123のものと同じ材料で同じ組成で構成され、これら窓を構成する板状の部材の厚さも同じであることが望ましい。
【0032】
図3は、図2に示す実施例に係る覗き窓の光学的な特性を示すグラフである。特に、覗き窓123の材料がフッカカルシウムであり窓の厚さが3mmである場合の、赤外線の波長8〜14μmの範囲での窓部材123の光学的な特性を示すグラフである。
【0033】
本図では、横軸に赤外線の波長を、縦軸にを示したものである。本図に示される通り、波長8〜10μmまでは透過率が支配的である領域(以下、透過領域)であり、10〜14μmまでは放射率が支配的な領域(同放射領域)であることが判る。
【0034】
ここで、8〜14μmの波長は赤外線温度センサ119が検知可能な波長の範囲である。一般的には常温から500℃程度を観測する、赤外線温度センサはサーモパイル素子を使用しており、上記8〜14μmの波長の範囲はこのサーモパイル素子が検知可能な波長の範囲に対応しており、少なくともこれを含まれるものである。この図が示す様に、サーモパイル素子を備えた赤外線温度センサ119が検知する赤外線もしくはその放射強度は、波長8〜10μmに関しては、覗き窓123を通過する誘電体窓121の放射強度であり、10〜14μmに関しては、覗き窓123から放出される放射強度である。
【0035】
図4は、特定の物体の赤外線の放射の強さ(放射強度)の各波長毎の変化を示すグラフである。特に本図では、100℃の物体と60℃の同物体との横軸の赤外線の波長の変化に対する各波長毎の放射強度(以下、分光放射強度)を縦軸に採って示している。
【0036】
本実施例では、誘電体窓103の温度は100℃の際に覗き窓123の温度は60℃またはこれ以上の値まで上昇する。そこで、本図では誘電体窓103の温度が100℃の場合に覗き窓123を透過する赤外線の分光放射強度の変化を実線402に、覗き窓123の温度が60℃の場合に当該覗き窓123から放射される赤外線の分光放射強度の変化を実戦404として各々に示している。ここで、上方に離間して配置された覗き窓129が無い場合には、100℃の物体の分光放射強度を波長8〜10μmまで積分して得られた積分値401が覗き窓123を通過して赤外線温度センサ119が検知する誘電体窓103の放射強度となり、60℃の物体の分光強度を10〜14μmまで積分して得られた積分値403が赤外線温度センサ119が検知する覗き窓123が放射する赤外線の放射強度となる。
【0037】
図5は、図2に示す実施例に係る別の覗き窓が無い場合の赤外線温度センサ119が検知する放射強度を示すグラフである。本図では、2つの種類の放射強度の値を示しており、一方は覗き窓123を透過してくる誘電体窓103からの赤外線の放射強度であり、他方は覗き窓123が赤外線温度センサ119に対して放射する赤外線の放射強度を示している。
【0038】
本図に示す通り、本実施例では覗き窓123を通過してくる誘電体窓121からの放射強度と覗き窓123から放出される放射強度の値はほぼ同じと見做せる程度に近似している。このことは、赤外線温度センサ119が検知している放射強度の半分が覗き窓123から受光した放射によるものであり、誘電体窓103の表面の温度を間に覗き窓123を挟んで赤外線の放射強度を検知して検出する場合にはその値の大きさや精度は覗き窓123から受ける影響が大きいことを示している。
【0039】
図6は、図2に示す実施例の別の覗き窓の光学的な特性を示すグラフである。本図は、特定の物体(本例では黒体)が100℃の場合と20℃の場合とでの分光放射強度を縦軸に採って示すものである。
【0040】
ここで、別の覗き窓129が設置されているとする。覗き窓129は覗き窓123の上方に離間されて配置されているため覗き窓123から或いは支持台127を介した熱の伝達は無いか実質的に無いと見做せる程度に小さくされており、これを加熱する熱源は無いと見做せる。
【0041】
さらに、本実施例の別の覗き窓129は、プラズマ処理装置が配置された建屋内部であり温度が調節されたクリーンルームの中で上記の通り供給されたドライエアと接しており、その温度は常温である20℃にされている。そこで、本図では、誘電体窓103の温度が100℃の場合に覗き窓123を透過する赤外線の分光放射強度の変化を実線602に、覗き窓129の温度が20℃の場合の当該覗き窓129から放射される赤外線の分光放射強度の変化を実線404として各々示している。図4と同様に、本図において実線402で示される誘電体窓103が100℃の場合に覗き窓129を透過する赤外線の分光放射強度の値を波長8〜10μmの範囲で積分した積分値601が、覗き窓129を通過し赤外線温度センサ119が検知する誘電体窓103の放射強度となり、20℃の覗き窓129から放射される赤外線の分光強度を10〜14μmの範囲で積分した積分値603が赤外線温度センサ119が検知する覗き窓129が放射する赤外線の放射強度となることを表している。
【0042】
図7に、別の覗き窓129がある場合の赤外線温度センサ119が検知する放射強度を示す。図7は、図2に示す実施例に係る別の覗き窓が配置された場合の赤外線温度センサ119が検知する放射強度を示すグラフである。
【0043】
本図では、2つの種類の放射強度の値を示しており、一方は覗き窓129を透過してくる誘電体窓103からの赤外線の放射強度であり、他方は覗き窓129が赤外線温度センサ119に対して放射する赤外線の放射強度を示している。覗き窓129と通過してくる誘電体窓121からの放射強度に対して、覗き窓129から放出される放射強度の値は6割程度であり、覗き窓129の影響が覗き窓123に比べて減少していることが分かる。
【0044】
図8は、お図2に示す実施例に係る覗き窓123と覗き窓129の温度の変動に対する放射強度の変動の大きさを示すグラフである。本図に示す通り、覗き窓129の放射強度の変化量は、覗き窓123に対して1/10程度の値を有している。これは、誘電体窓103を常温の20℃から100℃まで加熱した場合、覗き窓123は20℃〜60℃まで変化するのに対して、覗き窓129の温度が常温20〜30℃の範囲の温度に安定して実現されている為である。
【0045】
一方、上記実施例の覗き窓129を配置することにより、赤外線温度センサ119の検知の精度が覗き窓123のみを備えた場合と比較してその窓の部材から受ける影響は低減できた。さらに、覗き窓129の温度を安定させることで、覗き窓129からの放射強度の変動を低減することで、検出の精度を更に向上させることができる。即ち、覗き窓129の温度またはこれによる放射強度の変動の大きさが誘電体窓103からの放射強度またはその変動の大きさと比して十分に小さいか実質的に無視できる場合には、覗き窓129からの温度またはこれから得られる放射強度の値を用いて赤外線温度センサ119からの出力または検出した値やデータを補正することが可能となる。
【0046】
図9は、図2に示す実施例に係る赤外線温度センサ119の出力または検出値を覗き窓の放射強度を用いて補正する方法を示すグラフである。本例において、検出値の補正には、覗き窓129の温度20〜100℃に対する波長8〜14μmの放射強度と波長8〜10μmの放射強度の値、より詳細にはこれらの波長の範囲について分光放射強度の値を積分した値を使用する。
【0047】
この値は、変換値のデータとして温風ヒータ制御器118の内部またはこれと通信可能に接続され外部に配置されたメモリやハードディスク等の記憶装置に予め記録または格納しておく。例えば、赤外線温度センサ119が覗き窓123,129を通して赤外線を受光した結果、検出された温度が55℃を示している場合、所定の温度範囲にされた覗き窓129からの放射強度は、上記温風ヒータ制御器118は内部のCPUデバイス等の演算器が記憶装置内のデータを参照した結果、図7に示す通り32.2W/sr/m2であるので、先の放射強度81.6W/sr/m2から覗き窓129の放射強度32.2W/sr/m2が減算されて、覗き窓129を透過して受光された赤外線の放射強度は49.4W/sr/m2として検出または算出される。
【0048】
この49.4W/sr/m2となる波長8〜10μmの放射強度の積分値に対応する温度は98℃であることが、上記予め記憶されたデータから演算器により算出され、温風ヒータ制御器118により誘電体窓103の温度が98℃として検出される。このような手段により、赤外線温度センサ119の検出値を補正することで覗き窓129からの影響を低減してより精度の高い温度の検出とこれによるプラズマ処理装置の処理室内壁の温度の調節及び処理の結果としてのウエハ上面の配線構造の形状を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
101…真空容器
102…シャワープレート
103…誘電体窓
104…処理室
105…ガス供給装置
106…真空排気口
107…導波管
108…空洞共振器
109…電磁波発生用電源
110…磁場発生コイル
111…ウエハ載置用電極
112…ウエハ
113…マッチング回路
114…高周波電源
115…フィルター
116…静電吸着用直流電源
117…温風ヒーター
118…温風ヒーター制御器
119…赤外線温度センサ
120…冷却水流路
121…誘電体板
122…排気ポート
123…覗き窓
124…金属メッシュ
125…覗き穴
126…覗き穴
127…支持台
128…空間
129…覗き窓
130…吹き出し口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9