(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
≪第1の実施形態≫
以下、第1の実施形態に係る歩行型草刈機について、
図1〜
図8に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、歩行型草刈機100を+X方向から見た状態が示され、
図2には+Y方向から見た状態が示されている。なお、本実施形態では、歩行型草刈機の走行方向をY軸方向(第2軸方向)とし、Y軸に水平面内で直交する方向をX軸方向(第1軸方向)、X軸及びY軸を含む面(水平面)に垂直な方向をZ軸方向としている。
図1に示すように、歩行型草刈機100は、草刈機本体10と、操舵桿90と、を備えている。本第1の実施形態の歩行型草刈機100は、果樹などの幹周辺や畦畔などを草刈機本体10が走行しながら草刈りを行うものである。また、歩行型草刈機100を操作する作業者は、操舵桿90を握り、草刈機本体10から離れた位置(例えば−X方向に2m程度離れた位置)を歩行しながら操作する。
【0015】
草刈機本体10は、基台としてのベース12と、第1の車輪14A,14Bと、第2の車輪16A,16Bと、刈刃部18と、原動機20と、を備える。
【0016】
ベース12は、刈刃部18や原動機20を保持する部材であり、その一部には、操舵桿90の一端部(下端部)が接続されている。
【0017】
第1の車輪14A,14Bは、ベース12の+Y側端部近傍に設けられ、
図1のX軸方向に延びる第1の回転軸としての車軸15を中心として回転する車輪である。第2の車輪16A,16Bは、ベース12の−Y側端部近傍位置に設けられ、X軸方向に延びる第2の回転軸としての車軸17を中心として回転する車輪である。草刈機本体10を−Z側から見た状態を示す
図3から分かるように、車軸15には、駆動力伝達機構としてのクラッチ機構40Aが設けられ、車軸17には駆動力伝達機構としてのクラッチ機構40Bが設けられている。クラッチ機構40A,40Bの作用により、第1の車輪14A,14Bと第2の車輪16A,16Bとが原動機20により回転駆動される場合、草刈機本体10は、四輪駆動で走行する。また、クラッチ機構40A,40Bの作用により、第1の車輪14A,14Bと第2の車輪16A,16Bのいずれかが原動機20により回転駆動される場合、草刈機本体10は、二輪駆動で走行する。なお、クラッチ機構40A,40Bの詳細については、後述する。
【0018】
刈刃部18は、
図3に示すように、Z軸方向に延びる回転軸18aを中心に回転する円形の回転部材としての回転板28と、回転板28の円周方向に関して等間隔に配置された4枚の金属刃30と、金属刃30それぞれの間隙に配置された4本の樹脂製のコード(例えば、ナイロン製のコード)32とを有する。刈刃部18は、原動機20の発生する駆動力により、回転軸18aを中心として回転する。この回転により、金属刃30の回転軸18aから最も遠い部分の軌跡は、第1の半径の円Bとなるので、金属刃30により円B内に存在する草を刈ることができる。また、樹脂製のコード32の回転軸18aから最も遠い部分の軌跡は、第2の半径(>第1の半径)である円Cとなるので、樹脂製のコード32により円C内に存在する草を刈ることができる。なお、樹脂製のコード32は、その回転により草を刈ることができるものの、果樹などの幹に接触した場合でも該幹を損傷させることはほとんどない。すなわち、刈刃部18によれば、幹に傷をつけることなく、幹近傍の草を刈ることができる。
【0019】
図1に戻り、原動機20は、第1の車輪14A,14B及び/又は第2の車輪16A,16Bを回転駆動するとともに、刈刃部18を回転駆動する。
【0020】
操舵桿90は、
図1に示すように、棒状部90aと、ハンドル部90bと、受付部としての前後進変更ハンドル92と、を有する。棒状部90aは、例えば2m程度の全長を有し、その一端(下端)は、ベース12に接続され、他端には、ハンドル部90bが設けられている。なお、棒状部90aの一端は、リンク機構などにより、ベース12に対する回動(ベース12に対する角度調整)が可能になっている。操舵桿90は、一例として、
図2(a)に示すように、X軸及びZ軸に対して傾斜した状態で使用される。なお、
図2(a)では、棒状部90aが草刈機本体10の横方向(略X軸方向)に延びた状態となっているが、例えば、棒状部90aが草刈機本体10の後方向(略Y軸方向)に延びた状態となってもよい。また、棒状部90aは、複数(
図1では、2つ)の関節部98a,98bを有し、
図2(b)に示すように、全体形状を変更することが可能となっている。これにより、
図2(b)に示すように、作業者と草刈機本体10との間に樹木の下枝LBが存在する場合、作業者は、操舵桿90の形状(関節部98a,98bの角度)を下枝LBと操舵桿90との接触を回避可能な形状とすることができる。これにより、下枝LBの影響を受けることなく歩行型草刈機100を操作することができる。すなわち、作業者は、下枝を上に上げて支えながら作業しなくてよいため、作業者の労働負荷を軽減することができる。なお、関節部98a,98bとしては、例えば、特開2006−349020号公報に開示されているジョイント装置と同様の構成を有する回動固定具を採用することができる。
【0021】
ハンドル部90bは、歩行型草刈機100を操作する作業者が握る部分であり、オーバル状の形状を有している。ハンドル部90bには、歩行型草刈機100の動作指示を受け付けるための各種スイッチ類及び前後進変更ハンドル92が設けられている。
【0022】
前後進変更ハンドル92には、2本のワイヤー96a,96bの一端が接続されている。このワイヤー96a,96bの他端は、ベース12上に設けられた不図示のミッションケースに接続されている。ミッションケースの内には、ミッション機構が内蔵されている。ミッション機構は、草刈機本体10の進行方向(+Y方向又は−Y方向)を切り替える機能を有する。したがって、前後進変更ハンドル92を作業者が操作することで、草刈機本体10の進行方向を変更することができる。
【0023】
次に、
図4に基づいて、車軸15に設けられたクラッチ機構40Aについて詳細に説明する。
【0024】
図4(a)には、クラッチ機構40Aの一部断面図が模式的に示されている。クラッチ機構40Aは、スプロケット48と、ワンウェイクラッチ46と、第1ギア44a及び第2ギア44bを有するクラッチ44と、第1ギア44aに固定されたスライド部材42と、を備える。
【0025】
スプロケット48は、ワンウェイクラッチ46を介して、車軸15に設けられている。スプロケット48は、草刈機本体10の駆動系を模式的に示す
図5から分かるように、チェーン54が噛み合った状態となっている。チェーン54は、原動機20に接続されている第3の回転軸としての駆動軸52に設けられたスプロケット50にも噛み合っているため、駆動軸52(スプロケット50)の回転に応じて、スプロケット48も回転する。
【0026】
ワンウェイクラッチ46は、車軸15とスプロケット48の間に設けられており、スプロケット48の所定方向(
図5の矢印D’)の回転力を車軸15に伝達し、逆方向の回転力を車軸15には伝達しない機能を有する。
【0027】
クラッチ44の第2ギア44bは、スプロケット48の+X側の面に固定されている。一方、クラッチ44の第1ギア44aは、スライド部材42の−X端部に固定されている。スライド部材42は、車軸15の長手方向(X軸方向)に沿って形成されたスライド孔15a内に挿入された状態となっている。また、スライド部材42の−X端部には、突起部42aが設けられており、この突起部42aは、車軸15に形成されたガイド孔15bに沿って移動できるようになっている。したがって、スライド部材42が、
図4(a)に示す位置に存在する場合には、第1ギア44aと第2ギア44bとは噛み合わないため、スプロケット48の駆動力は、ワンウェイクラッチ46の作用により、
図5のD’方向の駆動力のみ車軸15に伝達される。一方、スライド部材42が、
図4(b)に示す位置に存在する場合には、第1ギア44aと第2ギア44bとが噛み合うため、スプロケット48の駆動力は、
図5のD’方向のみならず、その逆方向の駆動力も車軸15に伝達される。
【0028】
本第1の実施形態では、
図4(a)の状態と
図4(b)の状態との切り替えを作業者が行うものとする。なお、スライド部材42と車軸15との間にバネなどの弾性部材を設け、該弾性部材により作業者の切り替え作業を補助するようにしてもよい。
【0029】
第2の車輪16A,16B側の車軸17に設けられたクラッチ機構40Bも、上述したクラッチ機構40Aと同様の構成を有している。したがって、以下の説明では、クラッチ機構40Aと同一の符号を用いて説明するものとする。ただし、クラッチ機構40Bのワンウェイクラッチ46は、
図5に示すように、矢印D方向(矢印D’の逆方向)の駆動力を車軸17に伝達する。すなわち、クラッチ機構40Bによると、
図4(a)のようにクラッチ44が噛み合っていない状態では、スプロケット48の駆動力は、ワンウェイクラッチ46の作用により、
図5のD方向の駆動力のみ車軸17に伝達される。一方、
図4(b)に示すようにクラッチ44が噛み合っている状態では、スプロケット48の駆動力は、
図5のD方向のみならず、その逆方向(D’方向)の駆動力も車軸17に伝達される。
【0030】
次に、本第1の実施形態の歩行型草刈機100の操作方法について、
図6,
図7に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図6(a)には、クラッチ機構40A,40Bのクラッチ44が噛み合っていない場合(
図4(a)の場合)の駆動軸52及び車軸15,17の状態が模式的に示されている。
【0032】
図6(a)に示すように、クラッチ44が噛み合っていない場合において、作業者が、草刈機本体10を矢印G方向(前進方向)に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作したとする。この場合、駆動軸52は、矢印E方向に回転するので、チェーン54は、矢印F方向に動く。このチェーン54の動きに応じて、クラッチ機構40A,40Bそれぞれのスプロケット48も動くが、ワンウェイクラッチ46の作用により、車軸15にはクラッチ機構40Aのスプロケット48の駆動力は伝達せず、車軸17にはクラッチ機構40Bのスプロケット48の駆動力が伝達し、矢印D方向に回転する。これにより、
図6(a)の状態では、草刈機本体10は、後輪駆動により、矢印G方向に走行する。なお、
図6(a)の状態では、第1の車輪14A,14Bは、遊動輪として機能する。
【0033】
一方、
図6(b)に示すように、クラッチ44が噛み合っていない場合において、作業者が、草刈機本体10を矢印G’方向(後進方向)に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作したとする。この場合、駆動軸52は、矢印E’方向に回転するので、チェーン54は、矢印F’方向に動く。このチェーン54の動きに応じて、クラッチ機構40A,40Bそれぞれのスプロケット48も動くが、ワンウェイクラッチ46の作用により、車軸17にはクラッチ機構40Bのスプロケット48の駆動力は伝達せず、車軸15にはクラッチ機構40Aのスプロケット48の駆動力が伝達し、矢印D’方向に回転する。これにより、
図6(b)の状態では、草刈機本体10は、後輪駆動により、矢印G’方向に走行する。なお、
図6(b)の状態では、第2の車輪16A,16Bは、遊動輪として機能する。
【0034】
これに対し、クラッチ機構40A,40Bのクラッチ44が、
図4(b)に示すように噛み合った状態で、作業者が、草刈機本体10を
図7(a)、
図7(b)の矢印G方向(前進方向)又はG’方向(後進方向)に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作したとする。この場合、駆動軸52及びチェーン54の動きに応じて、クラッチ機構40A,40Bのスプロケット48も回転し、車軸15、17には各スプロケット48の駆動力が伝達し、車軸15,17が同一の方向(矢印D又はD’方向)に回転する。これにより、
図7(a)、
図7(b)の状態では、草刈機本体10は、四輪駆動により、矢印G又はG’方向に走行する。
【0035】
なお、作業者は、草刈りを行う場所の状況(地面の凹凸など)に応じて、四輪駆動と二輪駆動とを使い分けるようにすればよい。また、本第1の実施形態では、二輪駆動時には、前進する際も後進する際も後輪駆動となるため、作業者は前進・後進のいずれにおいても同様の操作反力で操舵することが可能である。例えば、平地果樹園の幹周草刈りの際は、草刈機を幹周に回り込ませて操舵させながら草刈りを行うため、容易に操舵できる二輪駆動を選択できる。このように、本実施形態では、簡易で省スペースな駆動方式切替機構を組み込むことによって、1台の草刈機で四輪駆動と二輪駆動を切り替えることができる。また、本発明は果樹園などの平坦地だけでなく、斜面でも使用するメリットがある。例えば、法面の雑草を刈る際には、草刈機を等高線方向に直進させて草刈するため、直進性が高く、駆動力が発揮できる四輪駆動を選択できる。
【0036】
なお、本第1の実施形態では、二輪駆動時には、前進する際も後進する際も後輪駆動となる場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、クラッチ機構40A,40Bのワンウェイクラッチ46の回転力を伝達する向きを入れ替えることとしてもよい。この場合、
図8(a)示すように、作業者が草刈機本体10を矢印G方向に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作した場合には、第1の車輪14A,14Bが矢印D方向に駆動される。また、
図8(b)示すように、作業者が草刈機本体10を矢印G’方向に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作した場合には、第2の車輪16A,16Bが矢印D’方向に駆動される。このようにすることで、草刈機本体10を前進させる際も後進させる際も駆動方式を前輪駆動とすることができる。
【0037】
以上、詳細に説明したように、本第1の実施形態によると、草を刈る刈刃部18が設けられたベース12には、X軸方向に延びる車軸15に固定された2つの第1の車輪14A,14Bと、X軸方向に延びる車軸17に固定された2つの第2の車輪16A,16Bと、が設けられ、前後進変更ハンドル92は、草刈機本体10をY軸方向一側(例えば、前進方向)に動かす操作と、他側(例えば、後進方向)に動かす操作とを受け付ける。そして、クラッチ機構40A,40Bは、前進方向に動かす操作に連動して、第1の車輪14A,14B、第2の車輪16A,16Bのいずれか一方に原動機20による回転駆動力を伝達させ、後進方向に動かす操作に連動して、第1の車輪14A,14B、第2の車輪16A,16Bのいずれか他方に原動機20による回転駆動力を伝達させる。これにより、本第1の実施形態では、作業者が草刈機本体10を前進させる際も後進させる際も、草刈機本体10は、自動的に前輪駆動又は後輪駆動になる。したがって、作業者は、草刈機本体10を操作方向にかかわらず同様の操作感で操作することができるため、操作性を向上することが可能である。
【0038】
また、本第1の実施形態では、クラッチ機構40Aは、原動機20の回転駆動力がX軸回りのいずれの方向の場合でも該回転駆動力を第1の車輪14A,14Bに伝達する状態(
図4(b)、
図7(a)、
図7(b)の状態)と、原動機20の回転駆動力がX軸回りのいずれか一方の場合にのみ回転駆動力を第1の車輪14A,14Bに伝達する状態(
図4(a)、
図6(a)、
図6(b)の状態)と、で切り替え可能であり、クラッチ機構40Bは、原動機20の回転駆動力がX軸回りのいずれの方向の場合でも該回転駆動力を第2の車輪16A,16Bに伝達する状態(
図4(b)、
図7(a)、
図7(b)の状態)と、原動機20の回転駆動力がX軸回りのいずれか一方の場合にのみ回転駆動力を第2の車輪16A,16Bに伝達する状態(
図4(a)、
図6(a)、
図6(b)の状態)と、で切り替え可能である。これにより、簡易な構成で、四輪駆動と二輪駆動との変更を実現できるとともに、作業者は、草刈機本体10を操作方向にかかわらず同様の操作感で操作することが可能である。
【0039】
また、本第1の実施形態では、クラッチ機構40A、40Bは、ワンウェイクラッチ46を有するので、簡易な構成で、二輪駆動時において、前進・後進にかかわらず同様の駆動方式(前輪駆動又は後輪駆動)での走行を実現することができる。
【0040】
なお、上記第1の実施形態では、作業者がスライド部材42を手動で動かすことにより、四輪駆動と二輪駆動の切り替えを行う場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ハンドル部90bに四輪駆動と二輪駆動とを切り替えるための切り替え用のハンドルを設け、ベース12に切り替え用のハンドルの操作に応じてスライド部材42を
図4(a)、
図4(b)の各状態間で遷移させる機構を設けることとしてもよい。これにより、駆動方式を変更する際に、作業者が屈んだりする必要がないため、作業者の負担を軽減することができる。
【0041】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態について、
図9、
図10に基づいて説明する。本第2の実施形態では、クラッチ機構40A’,40B’が、第1の実施形態のワンウェイクラッチ46に代えて、
図9(a)、
図9(b)に示すベアリング58を備えている点に特徴を有する。なお、本実施形態では、草刈機本体10は、常時、二輪駆動であるものとする。
【0042】
図10には、本第2の実施形態における操作系の構成が概略的に示されている。
図10に示すように、本第2の実施形態の操作系は、前後進変更ハンドル92と、ワイヤー96a,96bと、リンク機構64と、ミッションケース60と、クラッチ機構40A’、40B’と、を備える。ミッションケース60内部には、ミッション機構が格納されている。ミッション機構は、作業者の操作に応じて草刈機本体10の進行方向(+Y方向又は−Y方向)を切り替える。
【0043】
前後進変更ハンドル92を作業者が操作すると、ワイヤー96a,96bを介してリンク機構64が変形する。これに伴い、ミッションケース60内のミッション機構は草刈機本体10の進行方向を切り替え、クラッチ機構40A’、40B’のクラッチ44は噛み合った状態と噛み合っていない状態との間で遷移する。例えば、作業者が、草刈機本体10を前進(+Y方向に移動)させるため、
図10に示すように、前後進変更ハンドル92を矢印H方向に操作すると、ミッションケース60内のミッション機構は、草刈機本体10の進行方向を前進に切り替える。そして、クラッチ機構40B’のクラッチ44は噛み合った状態(
図9(b))になり、クラッチ機構40A’のクラッチ44は噛み合わない状態(
図9(a))になる。これにより、草刈機本体10は、前進時には、後輪駆動にて走行する。一方、作業者が矢印Hとは逆向きに前後進変更ハンドル92を操作すると、ミッションケース60内のミッション機構は、進行方向を後進に切り替える。そして、クラッチ機構40B’のクラッチ44は噛み合わない状態(
図9(a))になり、クラッチ機構40A’のクラッチ44は噛み合った状態(
図9(b))になる。これにより、草刈機本体10は、後進時にも、後輪駆動にて走行する。
【0044】
なお、本第2の実施形態においては、リンク機構64の構造を一部変更したり、ミッションケース60とリンク機構64との接続方法を変更したりすることで、前進時及び後進時のいずれにおいても、草刈機本体10を前輪駆動方式で駆動させることもできる。
【0045】
以上のように、本第2の実施形態によると、ワンウェイクラッチを用いなくても、前進時及び後進時において、同一の駆動方式で草刈機本体10を駆動させることができる。これにより、作業者の操作性を向上させることができる。
【0046】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態について、
図11〜
図13に基づいて詳細に説明する。本第3の実施形態では、
図11に示すように、駆動軸52にクラッチ機構40A”、40B”が設けられており、車軸15,17にはクラッチ機構が設けられていない点に特徴を有している。
【0047】
クラッチ機構40A”は、
図11に示すように、スプロケット50Aと、ワンウェイクラッチ46と、第1ギア44Aa及び第2ギア44Abを有するクラッチ44Aと、を備える。
【0048】
スプロケット50Aと、車軸15に設けられたスプロケット48Aには、チェーン54Aが噛み合った状態となっている。スプロケット50Aと駆動軸52との間に設けられたワンウェイクラッチ46は、駆動軸52のX軸回りの一方向(例えば、+X方向から見て、反時計回り方向:
図11のD’方向)の回転駆動力をスプロケット50A及びスプロケット48Aに伝達する。
【0049】
クラッチ44Aの第2ギア44Abは、スプロケット50Aの−X側の面に固定されている。一方、クラッチ44Aの第1ギア44Aaは、駆動軸52に設けられ、X軸方向に移動可能とされている。本第3の実施形態では、クラッチ44Aが噛み合わない状態では、駆動軸52がX軸回りの一方向(例えば、D’方向)に回転している間のみ、スプロケット50A及びスプロケット48AがX軸回りの一方向に回転する。一方、クラッチ44Aが噛み合った状態では、駆動軸52がX軸回りの一方向又は逆方向に回転している間、スプロケット50A及びスプロケット48AがX軸回りの一方向又は逆方向に回転する。
【0050】
クラッチ機構40B”は、クラッチ機構40A”と同様、スプロケット50Bと、ワンウェイクラッチ46と、第1ギア44Ba及び第2ギア44Bbを有するクラッチ44Bと、を備える。スプロケット50Bと、車軸17に設けられたスプロケット48Bには、チェーン54Bが噛み合った状態となっている。
【0051】
本第3の実施形態では、クラッチ機構40B”のクラッチ44Bが噛み合わない状態では、駆動軸52がX軸回りの逆方向(例えば、+X方向から見て、時計回り方向:
図11のD方向)に回転している間のみ、スプロケット50B及びスプロケット48BがX軸回りの逆方向に回転する。一方、クラッチ機構40B”のクラッチ44Bが噛み合った状態では、駆動軸52がX軸回りの一方向又は逆方向に回転している間、スプロケット50B及びスプロケット48BがX軸回りの一方向又は逆方向に回転する。
【0052】
次に、本第3の実施形態の歩行型草刈機100の操作方法について、
図12,
図13に基づいて詳細に説明する。
【0053】
図12(a)には、クラッチ機構40A”,40B”のクラッチ44A,44Bが噛み合っていない状態が示されている。
【0054】
図12(a)に示すように、クラッチ機構40A”,40B”のクラッチ44A,44Bが噛み合っていない状態において、作業者が、草刈機本体10を矢印G方向(前進方向)に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作したとする。この場合、駆動軸52は、+X方向から見て時計回り方向(
図12(a)のD方向)に回転するので、駆動軸52の駆動力は、スプロケット50Bに伝達し、スプロケット50Aには伝達しない。したがって、スプロケット50BはD方向に回転し、この回転駆動力は、チェーン54B、スプロケット48Bを介して、車軸17に伝達し、第2の車輪16A、16BがD方向に回転する。なお、
図12(a)では、回転する部材を太線にて示している。これにより、
図12(a)の状態では、草刈機本体10は、後輪駆動により、矢印G方向に移動するようになっている。なお、
図12(a)の状態では、第1の車輪14A,14Bは、遊動輪として機能する。
【0055】
一方、
図12(b)に示すように、クラッチ機構40A”,40B”のクラッチ44A,44Bが噛み合っていない状態において、作業者が、草刈機本体10を矢印G’方向(後進方向)に移動させるように前後進変更ハンドル92を操作したとする。この場合、駆動軸52は、+X方向から見て反時計回り方向(
図12(b)のD’方向)に回転するので、駆動軸52の回転駆動力は、スプロケット50Aに伝達し、スプロケット50Bには伝達しない。したがって、スプロケット50AはD’方向に回転し、この回転駆動力は、チェーン54A、スプロケット48Aを介して、車軸15に伝達し、第1の車輪14A、14BがD’方向に回転する。なお、
図12(b)では、回転する部材を太線にて示している。これにより、
図12(b)の状態では、草刈機本体10は、後輪駆動により、矢印G’方向に移動するようになっている。なお、
図12(b)の状態では、第2の車輪16A,16Bは、遊動輪として機能する。
【0056】
これに対し、クラッチ機構40A”,40B”のクラッチ44A,44Bが、
図13(b)に示すように噛み合った状態では、草刈機本体10は、四輪駆動により、矢印G又はG’方向に移動するようになっている。なお、本第3の実施形態では、
図12(a)、
図12(b)の状態と
図13の状態との切り替えを作業者が行うものとする。車軸52と、第1ギア44Aaとの間、及び車軸52と、第1ギア44Baとの間にバネなどの弾性部材を設け、該弾性部材により作業者の切り替え作業を補助するようにしてもよい。
【0057】
以上、説明したように、本第3の実施形態によると、第1の実施形態と同様の効果を得られるほか、車軸15,17周りにクラッチ機構を設けなくてもよいため、車軸15,17周りの省スペース化を図ることができる。また、車軸15,17周りの部品を少なくすることができるため、車軸15,17に草などが絡まるのを抑制することができる。
【0058】
なお、上記第3の実施形態では、クラッチ機構40A”、40B”のワンウェイクラッチ46に代えて、
図14(a)、
図14(b)に示すように、ベアリング58を設けることとしてもよい。この場合、
図10と同様の操作系を採用することで、各クラッチ機構40A”,40B”のクラッチ44A,44Bを噛み合った状態と、噛み合っていない状態との間で遷移させるようにすることができる。これにより、例えば、
図14(a)に示すように、矢印G方向に草刈機本体10を駆動するときに、クラッチ機構40B”のクラッチ44Bを噛み合った状態に遷移させれば、後輪駆動で走行させることができる。また、例えば、
図14(b)に示すように、矢印G’方向に草刈機本体10を駆動するときに、クラッチ機構40A”のクラッチ44Aを噛み合った状態に遷移させれば、後輪駆動で走行させることができる。なお、
図14(a)、
図14(b)に代えて、矢印G方向及び矢印G’方向への駆動の際に、草刈機本体10を前輪駆動で走行させるようにしてもよい。
【0059】
なお、上記各実施形態では、第1の車輪14A,14Bが車軸15とともに回転し、第2の車輪16A,16Bが車軸15とともに回転する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、第1の車輪14A,14B(又は第2の車輪16A,16B)が遊動輪の状態になっている場合(駆動軸の駆動力が伝達していない場合)に、各車輪14A,14B(又は16A,16B)が個別に回転するような構成を採用してもよい。これにより、草刈機本体10においては、遊動輪それぞれが異なる回転速度で回転させることができるため、作業者は草刈機本体10の操舵を容易に行うことが可能となる。また、スプロケット、クラッチ、ワンウェイクラッチの全てを駆動軸の左右のどちらかの側に取り付けても構わない。さらに、ここでは駆動軸を1本使用した例を示したが、これに限ったものではない。
【0060】
上述した各実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。