特許第6286600号(P6286600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6286600
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】超音波加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20180215BHJP
   B24B 1/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B24B37/00 E
   B24B1/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-103891(P2017-103891)
(22)【出願日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年9月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】高崎 光也
【審査官】 中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−225280(JP,A)
【文献】 特開平02−026388(JP,A)
【文献】 特開昭64−058464(JP,A)
【文献】 特開平04−053610(JP,A)
【文献】 特開昭59−094591(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202062262(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00
B23K 20/10
B24B 1/04
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、前記ベースを基点として配置された支柱と、前記支柱に沿った方向に微振動を生じさせる超音波ユニットと、前記超音波ユニットを前記支柱に沿った状態で支持するホルダとを有する超音波加工装置であって、
前記ホルダには、前記超音波ユニットが前記支柱の立設方向に沿って振動することをガイドする複数の第1ガイドローラが備えられ、
前記複数の第1ガイドローラは、前記超音波ユニットの軸心を基点として放射状に配置され、前記ホルダの保持部を基点としてリジットに固定される複数のガイドローラと、前記超音波ユニットの軸心方向へ向けた付勢力を生じさせ、前記超音波ユニットを前記リジットに固定されたガイドローラへ押し付ける付勢手段が付帯された少なくとも1つのガイドローラとから成ることを特徴とする超音波加工装置。
【請求項2】
前記第1ガイドローラの配置数を偶数とする場合、各第1ガイドローラは、前記超音波ユニットの軸心を基点として放射状に均等配置し、
対向配置された第1ガイドローラのうちのいずれか一方に、前記付勢手段を付帯させることを特徴とする請求項1に記載の超音波加工装置。
【請求項3】
前記ホルダには、前記超音波ユニットが微振動する際に生じる軸線周りの回転を抑制する回り止め手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波加工装置。
【請求項4】
前記回り止め手段は、前記ホルダまたは前記支柱に固定されたガイドと、
前記超音波ユニットに固定され、かつ前記ガイドに付勢される第2ガイドローラにより構成されていることを特徴とする請求項3に記載の超音波加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波加工装置に係り、特に、プラズマ処理を行う際に使用されるシャワーヘッドにおける微細加工を高精度に行う場合に好適な超音波加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理を行う際に使用されるシャワーヘッドの微細加工に用いられる超音波加工装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているような構成のものが知られている。
【0003】
いずれの文献に開示されている超音波加工装置も、被加工部材を載置するためのベースと、このベースを基点として立設された支柱、および支柱に沿って配置、支持される超音波ユニットを備えている。そして、超音波ユニットにおける被加工部材との対向部位には、ホーンと呼ばれる加工工具が装着されている。
【0004】
このような構成の超音波加工装置では、被加工部材にホーンを押し当て、ホーンに対して超音波による微振動を付加する。ホーンに微振動を与えた際、被加工部材とホーン当接部との間に砥粒を供給する事で、被加工部材におけるホーンが当接している部分が研削され、微細加工が成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−35374号公報
【特許文献2】特開2014−14826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているような構成の超音波加工装置は、超音波ユニットが支柱の立設方向に沿って移動可能に支持されており、超音波によりホーンが微振動する際、その反力を受けて超音波ユニット自体も振動する。上記特許文献に開示されているような超音波加工装置では、加工に使用する砥粒等が超音波ユニットと、支持部との間に介入すると、加工のための微振動を妨げてしまう。このため、超音波ユニットと支持部との間には、砥粒の噛み込みが生じない程度の隙間が設けられており、この隙間によって生ずる超音波ユニットの振動方向と交差する方向に生じるブレが、被加工部材に対する微細加工の加工精度を低下させる要因となっていた。
【0007】
そこで本発明では、上記課題を解決し、被加工部材に対する微細加工の加工精度を向上させる事のできる超音波加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波加工装置は、ベースと、前記ベースを基点として配置された支柱と、前記支柱に沿った方向に微振動を生じさせる超音波ユニットと、前記超音波ユニットを前記支柱に沿った状態で支持するホルダとを有する超音波加工装置であって、前記ホルダには、前記超音波ユニットが前記支柱の立設方向に沿って振動することをガイドする複数の第1ガイドローラが備えられ、前記複数の第1ガイドローラは、前記超音波ユニットの軸心を基点として放射状に配置され、前記ホルダの保持部を基点としてリジットに固定される複数のガイドローラと、前記超音波ユニットの軸心方向へ向けた付勢力を生じさせ、前記超音波ユニットを前記リジットに固定されたガイドローラへ押し付ける付勢手段が付帯された少なくとも1つのガイドローラとから成ることを特徴とする。
【0009】
また、上記特徴を有する超音波加工装置では、前記第1ガイドローラの配置数を偶数とする場合、各第1ガイドローラは、前記超音波ユニットの軸心を基点として放射状に均等配置し、対向配置された第1ガイドローラのうちのいずれか一方に、前記付勢手段を付帯させる構成とすると良い。このような特徴を有する事で、付勢手段が付帯された第1ガイドローラと対向する第1ガイドローラは、リジットに固定されたガイドローラとなる。このため、超音波ユニットの押し付け状態を安定させる事ができ、加工精度の向上を図る事ができる。
【0010】
また、上記特徴を有する超音波加工装置における前記ホルダには、前記超音波ユニットが微振動する際に生じる軸線周りの回転を抑制する回り止め手段を備えるようにすると良い。このような特徴を有する事で、超音波ユニットの回転を抑制し、被加工物の加工精度を向上させることができる。
【0011】
さらに、上記特徴を有する超音波加工装置における前記回り止め手段は、前記ホルダまたは前記支柱に固定されたガイドと、前記超音波ユニットに固定され、かつ前記ガイドに付勢される第2ガイドローラにより構成することができる。このような特徴を有する事で、回り止めの支持を弾性的に成す事ができる。これにより、ガイドと第2ガイドローラとの間に微細な塵埃が噛み込まれても、これを乗り越えてガイドする事ができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する超音波加工装置によれば、被加工部材に対する微細加工の加工精度を向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る超音波加工装置の構成を示す側面図である。
図2図1におけるA−A、およびB−B断面における超音波ユニット部分を示す図である。
図3図2の構成を説明するためのブロック図である。
図4図1におけるC−C断面における超音波ユニット部分を示す図である。
図5図4におけるD−D断面を示す図である。
図6】第2実施形態に係る超音波加工装置のブレ防止構造の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の超音波加工装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、図1は、実施形態に係る超音波加工装置の構成を示す側面図である。また、図2は、図1におけるA−A、およびB−B断面における超音波ユニット部分を示す図であり、図3は、図2の構成を説明するためのブロック図である。また、図4は、図1におけるC−C断面における超音波ユニット部分を示す図であり、図5は、図4におけるD−D断面を示す図である。
【0015】
[超音波加工装置の基本構成]
実施形態に係る超音波加工装置10は、ベース12と、このベース12を基点として配置されたステージ14、および支柱16が備えられ、支柱16によって支持された超音波ユニット18が設けられている。ベース12は、ステージ14と支柱16を配置するための基礎である。ステージ14は、被加工部材を配置するための定盤としての役割を備え、必要に応じて平面方向の移動軸(例えばX軸とY軸)を備える構成とすれば良い。
【0016】
支柱16は、ベース12を基点として立設された支持構造物であり、少なくともステージ14よりも高い位置にまで延設されている。実施形態に係る支柱16には、ガイドレール16aと、このガイドレール16aに沿って摺動可能なホルダ20が備えられている。ガイドレール16aは、支柱16の長手方向に沿って配置されている。ホルダ20は、詳細を後述する超音波ユニット18を保持する要素であり、ガイドレール16aに沿って摺動する事で、超音波ユニット18の配置高さを調整可能とすると共に、超音波によって生ずる微振動の反力(微振動)を吸収する。また、実施形態に係る支柱16には、シーブ16bが備えられ、図示しないカウンターウェイトにより、超音波ユニット18の重量をほぼ相殺する事が可能な構成とされている。
【0017】
超音波ユニット18は、詳細を図示しない超音波発生装置を備えたユニットである。超音波ユニット18は、上述したホルダ20により支持されると共に、シーブ16bを介してカウンターウェイトにより吊下され、その下端部の対向位置にステージ14が位置するように構成されている。また、超音波ユニット18の下端部には、ホーン18aと呼ばれる加工工具が装着され、超音波発生装置による超音波振動が、ホーン18aに伝達されるように構成されている。
【0018】
[ブレ防止構造:第1形態]
このような基本構成を有する実施形態に係る超音波加工装置10では、図2に、図1におけるA−A、B−B断面(超音波ユニット部分のみ)を示すように、ホルダ20の保持部20aに備えたガイドローラ(第1ガイドローラ)22(22a〜22c)によって、超音波ユニット18を支持している。ガイドローラ22により超音波ユニット18を支持する事で、超音波ユニット18が軸線方向に微振動する際、これに追従して支持を成す事ができる。
【0019】
また、実施形態の場合、円柱状に形成された超音波ユニット18の外周に、複数(図2に示す例では3つ)のガイドローラ22a〜22cを配置し、これら複数のガイドローラ22a〜22cにより支持を成す構成としている。複数のガイドローラ22a〜22cは、超音波ユニット18の軸心Oを基点として、その周囲に等間隔となるように配置している。ガイドローラ22は、保持部20aを基点としてリジットに固定することを基本としているが、複数のガイドローラ22のうちの少なくとも1つのガイドローラ(図2に示す例の場合、ガイドローラ22c)は、超音波ユニット18に対する付勢力を生じさせるように、弾性的に固定されている。
【0020】
具体的には、ガイドローラ22cを保持するローラホルダ24を、保持部20aに対して摺動可能に配置する。ここで、ローラホルダ24の摺動方向は、図3にブロック図を示すように、超音波ユニット18に対するガイドローラ22cの接触点を通る接線に対して直交する方向(矢印Eで示す方向)となるように構成する。そして、保持部20aとローラホルダ24との間にバネ等の付勢手段26を介在させてガイドローラ22cを超音波ユニット18側へ押し付ける構成とすれば良い。
【0021】
このような構成とする事で、超音波ユニット18は、リジットに固定されたガイドローラ22a,22bに押し付けられた状態を維持するこのため、微振動によって生じるブレを抑制する事ができる。また、超音波ユニット18に対してガイドローラ22cが弾性的に押し付けられているため、ガイドローラ22a〜22cと超音波ユニット18との間に微細な塵埃(例えば砥粒)が噛み込まれたとしても、これを乗り越えてガイドする事が可能となる。
【0022】
[ねじれ防止構造]
また、実施形態に係る超音波加工装置10は、微振動に起因した超音波ユニット18の軸心O周りの回転(捻じれ)を防止するための回り止め手段28が備えられている。回り止め手段28は、図4図1におけるC−C断面(超音波ユニット部分のみ)を示すように、ローラベース30とガイド32を備えている。ローラベース30は、超音波ユニット18に固定されるベースであり、ガイドローラ(第2ガイドローラ)34(34a,34b)を備えている。ガイドローラ34は、転動方向が、超音波ユニット18の軸線方向に沿うこととなるように配置されている。また、ガイドローラ34は、詳細を後述するガイド32の挟み込みが可能となるように、ローラ面を対向させて対を成すように配置されている。
【0023】
対を成すガイドローラ34は、一方のガイドローラ34aがローラベース30に固定され、他方のガイドローラ34bは、ローラベース30の取付面に沿って、矢印Fで示す方向への摺動が可能な構成とされている。一方のガイドローラ34aと他方のガイドローラ34bとの間には、バネなどにより構成される付勢手段36が配置され、一方のガイドローラ34aに対して他方のガイドローラ34bが引き付けられるように構成されている。
【0024】
ガイド32は、ガイドローラ34を転動させる要素であり、上述したホルダ20または支柱16に固定されたガイドベース32aと、ガイドベース32aに接続され、超音波ユニット18の軸線方向に沿って配置されるガイドレール32bとを有する。ガイドベース32a、およびガイドレール32bの具体的構成は問わないが、ガイドレール32bに関しては、少なくとも両側面に、ガイドローラ34の転動面を備えるものとする。
【0025】
このような構成とすることで、超音波ユニット18と共に微振動するガイドローラ34a,34bにより、ホルダ20等に固定されているガイドレール32bが挟持される。これにより、超音波ユニット18が軸心O周りに回転する力に対する反力を生じさせ、超音波ユニット18の回転を防止することができる。また、対を成すガイドローラ34a,34bは、付勢手段36によりガイドレール32bに付勢されているため、転動面に砥粒等の塵埃が付着したとしても、これを乗り越えるように動作する事ができる。
【0026】
[作用・効果]
このような構成の超音波加工装置10によれば、超音波による微振動に起因した、超音波ユニット18のブレや回転を抑制する事ができる。このため、被加工部材に対する微細加工の加工精度を向上させる事ができる。
【0027】
[第2形態]
上記実施形態では、超音波ユニット18を支持する構造について、ホルダ20の保持部20aに備えられるガイドローラ22を3つとし、そのうちの1つ(ガイドローラ22c)に、超音波ユニット18に対する付勢手段26を備える構成とする旨説明した。
【0028】
しかしながら、超音波ユニット18を支持するガイドローラ22は、3つに限るものでは無い。例えば図6に示すように、ガイドローラ22を4つ(ガイドローラ22a〜22d)としても良い。このような構成とする場合。超音波ユニット18の軸心Oを基点として4つのガイドローラ22を均等に配置し、隣接する2つのガイドローラ22(図6に示す例では、ガイドローラ22c,22d)が付勢手段26を備える構成とすると良い。
【0029】
このような構成とする事で、保持部20aに対してリジットに固定されたガイドローラ22(図6に示す例では、ガイドローラ22a,22b)に対応するガイドローラ22(図6に示す例では、ガイドローラ22c,22d)に付勢手段26が備えられることとなる。これにより、超音波ユニット18の押し付けが安定して成されることとなり、微振動によるブレを、より効果的に抑える事が可能となる。
ブレ防止構造をこのような構成とした場合であっても、上記実施形態と同様な効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0030】
10………超音波加工装置、12………ベース、14………ステージ、16………支柱、16a………ガイドレール、16b………シーブ、18………超音波ユニット、18a………ホーン、20………ホルダ、20a………保持部、22(22a〜22d)………ガイドローラ、24………ローラホルダ、26………付勢手段、28………回り止め手段、30………ローラベース、32………ガイド、32a………ガイドベース、32b………ガイドレール、34(34a,34b)………ガイドローラ、36………付勢手段。
【要約】
【課題】被加工部材に対する微細加工の加工精度を向上させる事のできる超音波加工装置を提供する。
【解決手段】ベース12と、ベース12を基点として配置されたステージ14、及び支柱16を有し、支柱16に沿った方向に微振動を生じさせる超音波ユニット18と、超音波ユニット18を支柱16に沿った状態で支持するホルダ20とを有する超音波加工装置10であって、ホルダ20には、超音波ユニット18が支柱16の立設方向に沿って振動することをガイドする複数のガイドローラ22が備えられ、複数のガイドローラ22のうちの少なくとも1つのガイドローラ(例えばガイドローラ22c)には、超音波ユニット18の軸心方向へ向けた付勢力を生じさせる付勢手段36が付帯されていることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6