特許第6286776号(P6286776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6286776活性層の初期歪み状態を最終歪み状態へと修正するプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6286776
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】活性層の初期歪み状態を最終歪み状態へと修正するプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20180226BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20180226BHJP
   H01L 41/312 20130101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L27/12 B
   H01L41/312
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-538581(P2015-538581)
(86)(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公表番号】特表2016-500922(P2016-500922A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】IB2013002292
(87)【国際公開番号】WO2014068377
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】1202939
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ル ヴァイヨン, イヴ‐マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァロ, エティエンヌ
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−063666(JP,A)
【文献】 特開2007−281406(JP,A)
【文献】 特開2007−012897(JP,A)
【文献】 特表2006−509376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0037323(US,A1)
【文献】 米国特許第05385490(US,A)
【文献】 K. T. Turner,Fabricating Strained Silicon Substrates Using Mechanical Deformation during Wafer Bonding,ECS Transactions [ONLINE],The Electrochemical Society,2008年,第16巻,第8号,p.321−328,[DL from http://aipes.engr.wisc.edu/sites/default/files/pdfs/strain_bywafer_bonding.pdf]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 27/12
H01L 41/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Eで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、且つhで示される厚さを有する初期歪み状態の活性層(10)を備える第1の基板(1)を準備するステップと、b)Eで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、hで示される厚さを有し、且つ静止時の初期形状を有する第2の基板(2)を準備するステップと、c)Rで示される同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、前記第1の基板(1)及び前記第2の基板(2)を曲げるステップと、d)前記第2の基板(2)が前記第1の基板の形状に緊密に従うように、前記第2の基板(2)を前記活性層(10)に接合するステップと、e)前記活性層(10)が最終歪み状態を有するように、前記第2の基板(2)の初期静止時形状を再確立するステップとを含む、活性層(10)と呼ばれるものの前記初期歪み状態をεで示される前記最終歪み状態へと修正するプロセスにおいて、前記第2の基板(2)の前記第2の材料がE/E≦10−3の関係を守る可撓性材料であり、前記第2の基板(2)の厚さがh/h10の関係を守り、前記曲率半径が、R=h/2εの関係を守ることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記第1の基板(1)が、前記活性層(10)を形成する第1の部分と第2の部分(11)とを備え、前記プロセスが、前記第1の基板(1)の前記第2の部分(11)の厚さを減少させることを含むステップd1)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の基板(1)が自己支持性のままであるように、ステップc)の前にステップd1)が実施されることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップd1)が、前記第1の基板(1)の前記第2の部分(11)の全体を除去するように実施され、ステップd)の後であってステップe)の前に実施されることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の基板(2)が2つの側端部分(20)を備え、前記プロセスが、それぞれ針形状である少なくとも1つの補強部材(5)を、各側端部分(20)に配置することを含むステップc1)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
補剛材(4)を形成する層を前記第2の基板(2)に接合することを含むステップc2)であって、ステップc)の前に実施されるステップc2)を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
各補強部材(5)が補剛材(4)を形成する前記層から延在することを特徴とする、請求項5と組み合わせた請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の基板(2)の前記第2の材料がE/E≦10−4の関係を守り、前記第2の基板(2)の厚さがh/h≧10の関係を守ることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記活性層(10)の厚さが、5nm〜50nmの間に含まれ、前記第2の基板(2)の厚さが、1cm〜10cmの間に含まれることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記曲率半径が絶対値で0.5m〜2mの間に含まれることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の基板(2)の前記第2の材料がエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、PA 6−3−Tなどのポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記活性層(10)の前記第1の材料が半導体であり、Si、Ge、Si−GeなどのIV−IV材料、GaN、GaAs、InP、InGaAsなどのIII−V材料、及びII−VI材料を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記活性層(10)の前記第1の材料が圧電材料であり、ジルコン酸チタン酸鉛、ZnO、GaN、AlN、石英、LiNbO、LiTaO、BaTiO、及びトルマリンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記活性層(10)を最終基板へと移転させることを含むステップf)を含み、次に、前記第2の基板(2)を除去することを含むステップg)を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
基板(2)と、
前記基板(2)の上にある活性層(10)とを備え、
前記活性層(10)がEで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、前記活性層(10)がhで示される厚さを有し、前記基板(2)がEで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、前記基板(2)がhで示される厚さを有し、前記基板(2)及び前記活性層(10)がRで示される曲率半径の湾曲形状を有する、活性層(10)と呼ばれるものの初期歪み状態をεで示される最終歪み状態へと修正するための構造において、前記基板(2)の前記第2の材料がE/E10−3の関係を守る可撓性材料であり、前記基板(2)の厚さがh/h10の関係を守り、曲率半径が、R=h/2εの関係を守ることを特徴とする、構造。
【請求項16】
前記基板(2)が2つの側端部分(20)を備え、前記構造が、各側端部分(20)に配置された、それぞれ針形状である少なくとも1つの補強部材(5)を備えることを特徴とする、請求項15に記載の構造。
【請求項17】
前記基板(2)に接合される補剛材(4)を形成する層を備えることを特徴とする、請求項15又は16に記載の構造。
【請求項18】
各補強部材(5)が補剛材(4)を形成する前記層から延在することを特徴とする、請求項16と組み合わせた請求項17に記載の構造。
【請求項19】
記基板(2)の前記第2の材料がエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、PA 6−3−Tなどのポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1518のいずれか一項に記載の構造。
【請求項20】
前記活性層(10)の前記第1の材料が半導体であり、Si、Ge、Si−GeなどのIV−IV材料、GaN、GaAs、InP、InGaAsなどのIII−V材料、及びII−VI材料を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1519のいずれか一項に記載の構造。
【請求項21】
前記活性層(10)の前記第1の材料が圧電材料であり、ジルコン酸チタン酸鉛、ZnO、GaN、AlN、石英、LiNbO、LiTaO、BaTiO、及びトルマリンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1519のいずれか一項に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性層と呼ばれるものの初期歪み状態を最終歪み状態へと修正するプロセス、及び活性層の初期歪み状態を最終歪み状態へと修正する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
「活性層」という表現は、特に、マイクロ電子工学、光学、オプトエレクトロニクス、圧電気、又は更にはスピントロニクスの分野における応用を意図した構成部品が層上又は層中に製作される層(若しくは複数の副層)を意味するものと理解される。
【0003】
「歪み状態」という表現は、場合によっては引張り応力又は圧縮応力である、有用な層の変形部分間の内部応力によってもたらされる、歪みを意味するものと理解される。内部応力がゼロ又はほぼゼロのとき、対応する歪み状態を指すのには「弛緩状態」と言われる。
【0004】
半導体で作られた活性層は、特にその電子バンド構造を修正するために、(引張り又は圧縮)歪みを与えられる。これは、層の電子輸送特性又は電磁特性を修正するという結果を有する。電子の観点から見ると、キャリア移動度が改善されることがある。電磁気の観点から見ると、歪み状態の修正は、半導体と絶縁体の原子価と伝導帯、及び場合によっては(直接若しくは間接)バンドギャップの修正に結び付く。
【0005】
構成部品の性能を改善するために、歪みレベルが高い活性層が必要とされており、即ち、活性層はかなりの歪み(又は換言すれば、かなりの相対的延長)を受けることができなければならない。したがって、より正確には、欠陥を作り出すことなく、0.75%超、又は更には1%超歪ませることができる、活性層を得ることが求められている。
【0006】
以下にD1で示される文献「Fabricating Strained Silicon Substrates Using Mechanical Deformation during Water Bonding」、K.T.Turner,ECS Transactions,16(8)321−328(2008)は、活性層の初期歪み状態を最終歪み状態へと修正するプロセス(特に図2を参照)を開示しており、プロセスは、a)Eで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、且つhで示される厚さを有する初期歪み状態の活性層を備える第1の基板を準備するステップと、b)Eで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、hで示される厚さを有し、且つ静止時の初期形状を有する第2の基板を準備するステップと、c)Rで示されるほぼ同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、第1の基板及び第2の基板を曲げるステップと、d)第2の基板が第1の基板の形状に緊密に従うように、第2の基板を活性層に接合するステップと、e)活性層が最終歪み状態を有するように、第2の基板の初期静止時形状(initial at−rest shape)を再確立するステップとを含む。
【0007】
D1は、図4(a)及び4(b)を比較し、第327ページの第1パラグラフを見ると、所与の厚さ比h/h(h/h=1/ξ=10)に対してE2=E1(即ち、D1の表記法に従って、E/E=1/Σ=1)の関係を守る第2の材料を用いた第2の基板を使用するのが好ましいことを開示している。D1は、かかる第2の基板によって、接合ステップd)の後では第1の基板の厚さが減少することと併せて、活性層を実質的に変形させることができ、したがって層の内部に高い歪みを得ることができることを教示している。一方で、D1は、第1の基板に対する第2の基板の可撓性(Σ=100)によって、接合ステップd)の後では第1の基板の厚さが減少することと併せて、同じ所与の厚さ比h/h(h/h=1/ξ=10)に対して、Σ=1に対して得られる歪み値の70%にしかならないことを教示している。
【0008】
第1の基板がかなりの剛性を有するとき、D1に記載されたプロセスは完全に満足がいくものではなく、例えば、第1の基板がシリコンなどの第1の半導体で作られている場合、第2の基板もΣ=1を守るようなかなりの剛性を有する。その結果、かかる第2の基板は、活性層を0.75%超変形させることが望ましい場合に、欠陥を作り出すことなくステップc)で曲げるのが困難なことがあり、これは特に、第2の基板がかなりのサイズ(例えば、h/h=1/ξ=10)のものである場合に当てはまる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上述の欠点を改善することを目的とし、活性層と呼ばれるものの初期歪み状態をεで示される最終歪み状態へと修正するプロセスに関し、プロセスは、a)Eで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、且つhで示される厚さを有する初期歪み状態の活性層を備える第1の基板を準備するステップと、b)Eで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、hで示される厚さを有し、且つ静止時の初期形状を有する第2の基板を準備するステップと、c)Rで示されるほぼ同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、第1の基板及び第2の基板を曲げるステップと、d)第2の基板が第1の基板の形状に緊密に従うように、第2の基板を活性層に接合するステップと、e)活性層が最終歪み状態を有するように、第2の基板の初期静止時形状を再確立するステップとを含み、プロセスは、第2の基板の第2の材料がE/E<10−2の関係を守る可撓性材料である点、第2の基板の厚さがh/h≧10の関係を守る点、並びに曲率半径が、R=h/2εの関係を守る点で注目すべきものである。
【0010】
したがって、本出願人は、ステップc)でねじりモーメントを増加させることに関して、驚くことに、第2の基板の剛性よりも厚さの方が重要な役割を果たすことを観察している。この理由のため、第2の基板の厚さはh/h≧10の関係を守るように選択される。その結果、第2の基板は、かかる厚さに対してプリセットされた曲率が得られるようにしなければならない。この理由のため、第2の材料は、E/E<10−2の関係を守る可撓性材料であるように選択される。曲率は、R=h/2εの関係に従ってプリセットされ、最終歪み状態εは所望の歪みレベル(及びしたがって所望の変形)によって特徴付けられる。
【0011】
更に、ステップc)及びd)の順序は逆にされてもよいことが注目されるであろう。ステップd)がステップc)の前に実施されるとき、ステップc)は、Rで示されるほぼ同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、第1の基板及び第2の基板を同時に曲げることを含む。ステップd)がステップc)の後に実施されるとき、ステップc)は、Rで示されるほぼ同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、第1の基板及び第2の基板を別個に曲げることを含む。ステップd)は、その結果、第2の基板が第1の基板の湾曲形状に緊密に従うように、第2の基板を活性層に接合することを含む。
【0012】
初期歪み状態が引張り歪み状態であるとき、ステップc)が、曲率半径が負であるように、即ち活性層の自由表面が凹面であるように実施されると、ステップc)で、弛緩した最終歪み状態(即ち、ε=0)が得られる。
【0013】
初期歪み状態が圧縮歪み状態であるとき、ステップc)が、曲率半径が正であるように、即ち活性層の自由表面が凸面であるように実施されると、ステップc)で、弛緩した最終歪み状態が得られる。
【0014】
初期歪み状態が弛緩状態であるとき、ステップc)が、曲率半径が正であるように、即ち活性層の自由表面が凸面であるように実施されると、ステップc)で、伸張した最終歪み状態が得られる。
【0015】
初期歪み状態が弛緩状態であるとき、ステップc)が、曲率半径が負であるように、即ち活性層の自由表面が凹面であるように実施されると、ステップc)において、圧縮した最終歪み状態が得られる。しかしながら、歪みレベルが高すぎる場合、この過程には活性層の座屈が伴うことがある。
【0016】
1つの実現方法によれば、第1の基板は、活性層を形成する第1の部分と、第2の部分とを備え、プロセスは、第1の基板の第2の部分における厚さを減少させることを含むステップd1)を含む。
【0017】
一実施形態によれば、ステップd1)は、第1の基板が自己支持性のままであるように実施され、ステップd1)はステップc)の前に実施される。
【0018】
したがって、かかる自己支持性の第1の基板により、かなりの曲率がステップc)で得られるようにすること、及び活性層を第2の基板へと移転させるのをより簡単にすることの両方が可能になる。
【0019】
一変形例の実施形態によれば、ステップd1)は、第1の基板の第2の部分のほぼ全体を除去するように実施され、ステップd1)は、ステップd)の後であってステップe)の前に実施される。
【0020】
したがって、歪みレベルと関連するエネルギーが活性層に集中する。
【0021】
第2の基板が2つの側端部分を備え、プロセスが、好ましくはそれぞれ針形状である少なくとも1つの補強部材を、各側端部分に配置することを含むことが有利である。
【0022】
縁効果が、即ち、活性層の側端部分の歪みレベルに関する有効性の損失が、観察されている(図2aに図示)。したがって、かかるステップc1)により、第2の基板の側端部分を局所的に補強することによって、この課題を解決することができる。更に、針形状は、第2の基板の第2の材料が高可撓性のままであることを担保しながら、機械的補強を得るのに特に適している。
【0023】
プロセスが、補剛材を形成する層を第2の基板に接合することを含むステップc2)を含み、ステップc2)がステップc)の前に実施されることが有利である。
【0024】
したがって、第2の基板が、補剛材を形成する層と併せて複合基板を画成することにより、活性層が厚い厚さhを有するときであっても、欠陥を作り出すことなく高い歪みレベルを得ることができる。補剛材を形成する層は、有用な層の変形を補償することを可能にするカウンタープレートとして作用する。
【0025】
一実施形態によれば、各補強部材は補剛材を形成する層から延在する。
【0026】
したがって、補剛材を形成する層を使用して第2の基板に補強部材を入れるのは簡単である。
【0027】
第2の基板の第2の材料がE/E≦10−3の関係を守り、第2の基板の厚さがh/h≧10の関係を守ることが好ましい。
【0028】
更に、第2の基板の第2の材料がE/E≦10−4の関係を守り、第2の基板の厚さがh/h≧10の関係を守ることが好ましい。
【0029】
したがって、これらの数学的関係が守られることを担保することで、第1の基板に対する第2の基板の厚さの増加が第1の基板に対する第2の基板の可撓性の増加と結合されるので、欠陥を作り出すことなく活性層の高い歪みレベルを得ることが可能になる。
【0030】
一実施形態によれば、活性層の厚さは、5nm〜50nmの間、好ましくは5nm〜35nmの間に含まれ、第2の基板の厚さは、1cm〜10cmの間に含まれる。
【0031】
一実施形態によれば、曲率半径は絶対値で0.5m〜2mの間に含まれる。
【0032】
一実施形態によれば、第2の基板の第2の材料はエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、PA 6−3−Tなどのポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から好ましくは選択される。
【0033】
このように、エラストマーを選択することによって、第1の基板の第1の材料に対して第2の基板の第2の材料の可撓性が大幅に高く(エラストマーのヤング率が低く)、例えばE/E≦10−4であるおかげで、例えばh/h≧10であるように、活性層に対する第2の基板の厚さを大幅に増加させることができるので、かかる選択によって、欠陥を作り出すことなく、活性層を0.75%超、又は更には1%超変形させることがより簡単になる。したがって、上述したように、第2の基板の厚さは、ステップc)でねじりモーメントを増加させるための重大なパラメータである。
【0034】
1つの特徴によれば、活性層の第1の材料は半導体であり、Si、Ge、IV−IV材料(Si−Geなど)、III−V材料(GaN、GaAs、InP、InGaAsなど)、及びII−VI材料を含む群から好ましくは選択される。
【0035】
活性層の第1の材料が圧電材料であり、ジルコン酸チタン酸鉛、ZnO、GaN、AlN、石英、LiNbO、LiTaO、BaTiO、及びトルマリンを含む群から好ましくは選択されるのが有利である。
【0036】
このように、かかる第1の材料によって、初期歪み状態が弛緩状態であるとき、及び圧縮性の最終歪み状態を得ることが望ましいときに、活性層の座屈の問題を克服することが可能になる。具体的には、第1の材料が前もって静的に圧縮歪みを受けていた場合、第1の材料は壊れることなく、振幅が増加した機械的振動を受け入れる。圧電変換の有効性も改善される。更に、活性層の座屈を伴う圧縮歪みは、やはり、機械的振動の振幅及び圧電変換の有効性を増加させることを可能にする。
【0037】
一実施形態によれば、活性層の第1の材料は、高分子、好ましくは高分子半導体、更に好ましくは有機高分子半導体である。
【0038】
したがって、かかる第1の材料は、ヤング率がより低いため、剛性材料よりも簡単に歪む。更に、剛性材料に比べて、かかる第1の材料の明らかに厚い厚さが歪んでもよい。
【0039】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は強磁性材料である。
【0040】
したがって、かかる第1の材料はスピントロニクス用途に特に適している。活性層の歪み状態を修正することによって、ヒステリシスサイクルの修正が可能になる。
【0041】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は非線形光学材料である。
【0042】
したがって、かかる第1の材料は、第二高調波を発生させるのに特に適していることがある。
【0043】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は焦電材料である。
【0044】
1つの実現方法によれば、プロセスは、活性層を最終基板へと移転させることを含むステップf)を含み、次に、第2の基板を除去することを含むステップg)を含む。
【0045】
したがって、第2の基板は、歪み状態を修正するためにのみ用いられる一時基板を形成する。最終基板は、活性層に関して想起される用途に応じて選択される。
【0046】
本発明はまた、活性層と呼ばれるものの初期歪み状態をεで示される最終歪み状態へと修正するための構造に関し、構造は、
基板と、
基板の上にある活性層とを備え、
活性層はEで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、活性層はhで示される厚さを有し、基板はEで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、基板はhで示される厚さを有し、基板及び活性層はRで示される曲率半径の湾曲形状を有し、構造は、基板の第2の材料がE/E≦10−2の関係を守る可撓性材料である点、及び基板の厚さがh/h≧10の関係を守るという点、並びに曲率半径が、R=h/2εの関係を守るという点で注目すべきである。
【0047】
したがって、上述したように、本出願人は、ねじりモーメントを増加させることに関して、また所望の湾曲形状を有する活性層を得ることに関して、驚くことに基板の厚さの方が剛性よりも重要な役割を果たすことを観察している。この理由のため、基板の厚さはh/h≧10の関係を守るように選択される。その結果、基板は、かかる厚さに対してプリセットされた曲率が得られるようにしなければならない。この理由のため、第2の材料は、E/E<10−2の関係を守る可撓性材料であるように選択される。曲率は、R=h/2εの関係に従ってプリセットされ、最終歪み状態εは所望の歪みレベル(及びしたがって所望の変形)によって特徴付けられる。
【0048】
一実施形態では、基板は2つの側端部分を備え、構造は、それぞれ針形状であることが好ましい、各側端部分に配置された少なくとも1つの補強部材を備える。
【0049】
このように、縁効果が、即ち、活性層の側端部分の歪みレベルに関する有効性の損失が、観察されている(図2aに図示)。したがって、かかる構造により、基板の側端部分を局所的に補強することによって、この問題を克服することができる。更に、針形状は、基板の第2の材料が高可撓性のままであることを担保しながら、機械的補強を得るのに特に適している。
【0050】
構造が、基板に接合された補剛材を形成する層を備えることが有利である。
【0051】
このように、基板が、補剛材を形成する層と併せて複合基板を画成することにより、活性層が厚い厚さhを有するときであっても、欠陥を作り出すことなく高い歪みレベルを得ることができる。補剛材を形成する層は、有用な層の変形を補償することを可能にするカウンタープレートとして作用する。
【0052】
一実施形態によれば、各補強部材は補剛材を形成する層から延在する。
【0053】
したがって、補剛材を形成する層を使用して第2の基板に補強部材を入れるのは簡単である。
【0054】
一実施形態によれば、基板の第2の材料はエラストマーであり、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、PA 6−3−Tなどのポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から好ましくは選択される。
【0055】
このように、エラストマーを選択することによって、活性層の第1の材料に対して基板の第2の材料の可撓性が大幅に高く(エラストマーのヤング率が低く)、例えばE/E≦10−4であるおかげで、例えばh/h≧10であるように、活性層に対する基板の厚さを大幅に増加させることができるので、かかる選択によって、欠陥を作り出すことなく、活性層を0.75%超、又は更には1%超変形させることがより簡単になる。したがって、上述したように、基板の厚さは、活性層が所望の湾曲形状を有するように、ねじりモーメントを増加させるための重大なパラメータである。
【0056】
一実施形態によれば、活性層の第1の材料は半導体であり、Si、Ge、IV−IV材料(Si−Geなど)、III−V材料(GaN、GaAs、InP、InGaAsなど)、及びII−VI材料を含む群から好ましくは選択される。
【0057】
活性層の第1の材料が圧電材料であり、ジルコン酸チタン酸鉛、ZnO、GaN、AlN、石英、LiNbO、LiTaO、BaTiO、及びトルマリンを含む群から好ましくは選択されるのが有利である。
【0058】
このように、かかる第1の材料によって、初期歪み状態が弛緩状態であるとき、及び圧縮性の最終歪み状態を得ることが望ましいときに、活性層の座屈の問題を克服することが可能になる。具体的には、第1の材料が前もって静的に圧縮歪みを受けていた場合、第1の材料は壊れることなく、振幅が増加した機械的振動を受け入れる。圧電変換の有効性も改善される。更に、活性層の座屈を伴う圧縮歪みは、やはり、機械的振動の振幅及び圧電変換の有効性を増加させることを可能にする。
【0059】
一実施形態によれば、活性層の第1の材料は、高分子、好ましくは高分子半導体、更に好ましくは有機高分子半導体である。
【0060】
したがって、かかる第1の材料は、ヤング率がより低いため、剛性材料よりも簡単に歪む。更に、剛性材料に比べて、かかる第1の材料の明らかに厚い厚さが歪んでもよい。
【0061】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は強磁性材料である。
【0062】
したがって、かかる第1の材料はスピントロニクス用途に特に適している。活性層の歪み状態を修正することによって、ヒステリシスサイクルの修正が可能になる。
【0063】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は非線形光学材料である。
【0064】
したがって、かかる第1の材料は、第二高調波を発生させるのに特に適していることがある。
【0065】
別の実施形態によれば、活性層の第1の材料は焦電材料である。
【0066】
他の特徴及び利点は、本発明によるプロセスを実現する方法の以下の説明からより明白になるが、これらの方法は、非限定例として与えられるものであり、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1a】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1b】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1c】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1d】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1e】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1f】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図1g】本発明によるプロセスを実現する第1の方法の様々なステップを示す横断面図である。
図2a】本発明によるプロセスの実現例の変形を示す横断面図である。
図2b】本発明によるプロセスの実現例の変形を示す横断面図である。
図3】本発明によるプロセスを実現するための動作範囲を示す、h/hがx軸上に、E/Eがy軸上に表されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
様々な実現方法において、説明を単純にするため、同一の要素又は同じ機能を有する要素に対して同じ符号が使用される。
【0069】
図1a〜1gに示されるプロセスは、活性層10の初期歪み状態をεで示される最終歪み状態へと修正するプロセスである。非限定例として、活性層10の初期歪み状態は弛緩状態である。
【0070】
プロセスは、初期歪み状態にあり、Eで示されるヤング率を有する第1の材料で作られ、且つhで示される厚さを有する活性層10を備える、第1の基板1(図1aに示される)を準備することを含むステップa)を含む。活性層10の第1の材料は半導体であってもよく、Si、Ge、IV−IV材料(Si−Geなど)、III−V材料(GaN、GaAs、InP、InGaAsなど)、及びII−VI材料を含む群から好ましくは選択される。非限定例として、活性層の厚さは、5nm〜50nmの間、好ましくは5nm〜35nmの間に含まれる。更に、シリコンのヤング率は約160GPaである。
【0071】
第1の基板1は、活性層10を形成する第1の部分と、第2の部分11とを備える。プロセスは、第1の基板1の第2の部分11の厚さを減少させることを含むステップd1)を含む。より正確には、図1bに示されるように、ステップd1)は、第1の基板1が自己支持性のままであるように実施される。ステップd1)は、機械的に、特に研削によって、又は更には化学エッチングによって実施されてもよい。
【0072】
プロセスは、Eで示されるヤング率を有する第2の材料で作られ、hで示される厚さを有し、且つ静止時の初期形状を有する第2の基板2を準備することを含むステップb)を含む。第2の基板2の第2の材料は、E/E<10−2の関係を守る可撓性材料である。第2の基板2の厚さはh/h≧10の関係を守る。曲率半径は、R=h/2εの関係を守る。より正確には、第2の基板2の第2の材料はエラストマーであってもよく、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート、PA 6−3−Tなどのポリアミド、及びポリテトラフルオロエチレンを含む群から好ましくは選択される。更に、PDMSのヤング率は約7.1MPaである。非限定例として、第2の基板2の厚さは1cm〜10cmの間に含まれる。
【0073】
プロセスは、ほぼ同一の曲率半径の湾曲形状をそれぞれ有するように、第1の基板1(図1cに図示)及び第2の基板2を曲げることを含むステップc)を含む。曲率半径は0.5m〜2mの間に含まれてもよい。ステップc)は、湾曲した円筒状の型を使用して実施されてもよい。その結果、活性層10は中間歪み状態を、即ち僅かな引張り歪みの状態を有する。
【0074】
プロセスは、第2の基板2が第1の基板1の湾曲形状に緊密に従うように、第2の基板2を活性層10に接合すること(図1dに図示)を含むステップd)を含む。ステップd)は、当業者には知られている適切な洗浄剤を使用して、第2の基板2と活性層10との間に直接結合を得るように実施されてもよい。
【0075】
ステップd)の後、例えばエッチングによって、第1の基板1の第2の部分11が除去される(図1eに図示)。このように、本発明による構造が図1eに示される。したがって、構造は、
第2の基板2と、
第2の基板2の上にある活性層10とを備える。
【0076】
プロセスは、活性層10が最終歪み状態を、即ち高い引張り歪みの状態を有するように、第2の基板2の初期静止時形状(図1fに図示)を再確立することを含むステップe)を含む。
【0077】
図1gに示されるように、プロセスは、活性層10を最終基板3へと移転させることを含むステップf)を含み、次に、第2の基板2を除去することを含むステップg)を含む。最終基板3が作られる材料は、当然ながら、ステップe)で得られる歪みレベルが維持されるように、適切なヤング率を有さなければならない。ステップg)は層間剥離のステップであってもよい。
【0078】
図2aに示される実現方法では、プロセスは、補剛材4を形成する層を第2の基板2に接合することを含むステップc2)を含み、ステップc2)はステップc)の前に実施されるという点で、図1a〜1gに示されるプロセスと異なる。
【0079】
図2bに示される実現方法では、プロセスは、それぞれ針形状である少なくとも1つの補強部材5を、第2の基板2の各側端部分20に配置することを含むステップc1)を含むという点で、図2aに示されるプロセスと異なる。更に、各補強部材5は補剛材4を形成する層から延在する。このように、本発明による構造が図2bに示される。したがって、構造は、
2つの側端部分20を備える第2の基板2と、
第2の基板2の上にある活性層10と、
基板2に接合された補剛材4を形成する層と、
補剛材4を形成する層からそれぞれ延在する、各側端部分20に配置された針形状の補強部材5とを備える。
【0080】
図3に示されるグラフに関して、仮説E<<E及びh>>hを有する文献D1において開発されたモデルは、次式に結び付く。
【数1】
【0081】
Fは、歪みを誘発する動作の有効性を表す品質係数として定義されてもよい。図3に示されるグラフは、0.9、0.95、及び0.99という、Fの3つの値にそれぞれ対応する3つの直線D1、D2、及びD3を示す。Fが約1のとき(例えば、F=0.99に対応する直線D3に関して)、
【数2】

である。したがって、F=0.99に対応する直線D3の下に限定される部分は、プロセスの動作範囲を定義する。
【0082】
非限定例として、第2の基板2の第2の材料はE/E≦10−3の関係を守ってもよく、第2の基板2の厚さはh/h≧10の関係を守ってもよい。同様に、第2の基板2の第2の材料はE/E≦10−4の関係を守ってもよく、第2の基板2の厚さはh/h≧10の関係を守ってもよい。
【0083】
上述した本発明を実現する方法は、当然ながら実際には限定的ではない。いかなる形でも本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態の変形において詳細及び改善が追加されてもよい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図2a
図2b
図3