(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原水に凝結剤を添加して凝集処理する一次凝集処理手段と、該一次凝集処理手段の凝集処理水を凝集フロックと清澄水とに固液分離する沈殿槽又は浮上槽とを備える第一の凝集固液分離手段と、
該第一の凝集固液分離手段で得られた清澄水にフェノール性水酸基を有する高分子を添加し、その後凝結剤を添加して凝集処理する二次凝集処理手段と、該二次凝集処理手段の凝集処理水を濾過して濾過処理水を得る濾過手段とを備える第二の凝集固液分離手段とを有する凝集固液分離装置であって、
前記一次凝集手段及び二次凝集手段で添加される凝結剤が無機凝結剤であることを特徴とする凝集固液分離装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明の凝集固液分離方法は、原水に凝結剤を添加して凝集処理した後、沈殿又は浮上によって凝集フロックと清澄水に固液分離する第一の凝集固液分離工程と、該第一の凝集固液分離工程で得られた清澄水にフェノール系高分子を添加し、その後凝結剤を添加して凝集処理した後、濾過手段によって濾過処理水を得る第二の凝集固液分離工程とを有することを特徴とする。
本発明の凝集固液分離装置は、原水に凝結剤を添加して凝集処理する一次凝集処理手段と、該一次凝集処理手段の凝集処理水を凝集フロックと清澄水とに固液分離する沈殿槽又は浮上槽とを備える第一の凝集固液分離手段と、該第一の凝集固液分離手段で得られた清澄水にフェノール系高分子を添加し、その後凝結剤を添加して凝集処理する二次凝集処理手段と、該二次凝集処理手段の凝集処理水を濾過して濾過処理水を得る濾過手段とを備える第二の凝集固液分離手段とを有することを特徴とする。
【0025】
[原水]
本発明で凝集固液分離処理する原水としては特に制限はなく、工業用水、水道水、井水、河川水、湖沼水、海水、かん水、工場廃水などが挙げられるが、本発明では、特に通常の無機凝結剤等の凝結剤では凝集処理が困難な中性多糖類等の水溶性高分子有機物を含む原水の凝集固液分離に好適である。
また、本発明は、このような原水を凝集固液分離処理して、逆浸透膜(RO膜)、限外濾過膜(UF膜)、精密濾過膜(MF膜)等の分離膜やイオン交換樹脂の汚染物質である水溶性高分子有機物を高度に除去することができることから、本発明は、特に上記のような各種の原水をRO膜分離装置等の膜分離装置やイオン交換処理装置で処理する場合の前処理工程に有効に適用することができる。
【0026】
[第一の凝集固液分離]
本発明においては、上記のような原水に凝結剤を添加して凝集処理(以下、「一次凝集処理」と称す。)した後、沈殿又は浮上により凝集フロックと清澄水とに固液分離する。
【0027】
第一凝集処理で原水に添加する凝結剤としては、水処理で使用できるものであれば特に限定されず、以下に例示するような無機凝結剤及び/又はカチオン性高分子よりなる有機凝結剤を用いることができ、このうち、特に無機凝結剤を好適に使用することができる。なお、有機凝結剤は通常無機凝結剤とともに使用される。
無機凝結剤:ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム系無機凝結剤、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝結剤
有機凝結剤:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、ポリエチレンイミン、アルキレンジクロライド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物
これらの凝結剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
第一の凝集固液分離工程における凝結剤の添加量は、原水の水質や用いる凝結剤の種類によっても異なるが、アルミニウム系無機凝結剤の場合、Alとして1.0〜7.0mg/L、特に1.5〜5mg/Lが好ましく、鉄系無機凝結剤の場合、Feとして3.0〜20mg/L、特に5〜15mg/Lが好ましい。凝結剤の添加量が少な過ぎると十分な凝集処理効果を得ることができない場合があるが、多過ぎると発生汚泥量の増加につながり、また、本発明では、第一の凝集固液分離と第二の凝集固液分離とを行うことで、フェノール系高分子の必要添加量のみならず、凝結剤の必要添加量も低減することができることから、凝結剤の添加量を上記上限以下に抑えることが、本発明による凝結剤の必要添加量の低減効果を十分に得る上で好ましい。
【0029】
第一の凝集固液分離工程における一次凝集処理は、上記のような凝結剤の必要量を原水に添加して、2〜20分程度反応させることにより行うことが好ましい。
【0030】
なお、この一次凝集処理に際して、必要に応じて原水に硫酸、塩酸等の酸を添加して凝集pHを下げることにより、凝結剤由来のAl、Fe等の金属カチオンの作用を強めて、カルボキシル基等の反応吸着官能基を有する多糖類等と凝結剤との凝集反応を促進させることができる。また、一次凝集処理時には、用いた凝結剤の凝集反応に好適なpHに調整するために、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加してもよい。
【0031】
一次凝集処理時の凝集pHは、用いる凝結剤の種類及び原水の水質に応じて適宜決定されるが、アルミニウム系無機凝結剤の場合はpH6.1〜6.9程度、鉄系無機凝結剤の場合はpH5.0〜6.5程度とすることが好ましい。
【0032】
一次凝集処理水は、沈殿槽における沈殿分離又は浮上槽における浮上分離により凝集フロックと清澄水とに固液分離するが、この固液分離に先立ち或いは固液分離時に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを粗大化することにより、固液分離効率を高めることができる。
【0033】
ここで用いる高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系等のアニオン性高分子凝集剤、ノニオン性高分子凝集剤等の1種又は2種以上が挙げられ、好ましくはポリアクリルアミド系等のアニオン性高分子凝集剤である。高分子凝集剤は、0.02〜0.20mg/L程度の添加量で、凝結剤が添加された凝集処理水に添加し、0.5〜3.0分程度の急速撹拌と、その後の2.0〜10分程度の緩速反応で凝集フロックを粗大化させることが好ましい。
【0034】
従来、例えばRO膜分離処理の前処理として原水の凝集固液分離を行う場合、高分子凝集剤は処理水中に残留して後段のRO膜の汚染物質となることから、高分子凝集剤の使用は避けられていた。
しかし、本発明では、第一の凝集固液分離で得られた清澄水を更に処理する第二の凝集固液分離工程において、再度凝結剤を添加して凝集処理することにより、この第一の凝集固液分離の処理水(清澄水)中に残留する高分子凝集剤を除去することができるため、高分子凝集剤添加による膜汚染を防止することができる。
【0035】
上記のように、アクリルアミド系高分子凝集剤等の高分子凝集剤の添加で粗大な凝集フロックを形成させることにより、その後の固液分離速度を増加させ、また、沈殿槽又は浮上槽における処理能力の向上を図ると共に、固液分離により得られる清澄水の清澄度を上げることができる。
【0036】
[第二の凝集固液分離]
本発明では、上記の第一の凝集固液分離で得られた清澄水に、フェノール系高分子を添加し、その後凝結剤を添加して凝集処理(以下「二次凝集処理」と称す。)した後、濾過手段によって固液分離することにより濾過処理水を得る。
【0037】
二次凝集処理で用いるフェノール系高分子は、フェノール系高分子のアルカリ溶液として添加されることが、フェノール系高分子の安定性、取り扱い性等の面で好ましく、フェノール系高分子のアルカリ溶液としては、前述の特許文献2に記載されるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性で、中性域及び/又は高塩類存在下で不溶化するフェノール系高分子化合物のアルカリ溶液(以下、「フェノール系高分子のアルカリ溶液I」と称す。)、特許文献3に記載される融点130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液(以下、「フェノール系高分子のアルカリ溶液II」と称す。)、特許文献4に記載されるメチルフェノール類を含むフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール系樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してレゾール型の2次反応を行って得られるフェノール系樹脂のアルカリ溶液(以下、「フェノール系高分子のアルカリ溶液III」と称す。)、などが挙げられるが、好ましくは、特許文献3に記載されるフェノール系高分子のアルカリ溶液II、即ち、融点130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液である。なお、フェノール系高分子は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
以下各フェノール系高分子のアルカリ溶液について説明する。
なお、以下において分子量又は重量平均分子量は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した値である。
【0039】
{フェノール系高分子のアルカリ溶液I}
フェノール系高分子のアルカリ溶液Iのフェノール系高分子化合物は、フェノール性水酸基を有し、アルカリ可溶性で、中性域及び/又は高塩類存在下で不溶化するものであり、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0040】
<フェノール系樹脂>
(1) フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物
(2) クレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物
(3) キシレノールとホルムアルデヒドとの縮合物
(4) 上記(1)〜(3)のフェノール系樹脂をアルキル化して得られるアルキル変性
フェノール系樹脂
これらのフェノール系樹脂はノボラック型であってもレゾール型であっても良く、両者の混合物であっても良い。いずれかのフェノール系樹脂を用いるかは、原水の種類によって、より効果的なものが選択使用される。
なお、ノボラック型フェノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂の重量平均分子量は1,000以上であることが好ましい。
【0041】
<ポリビニルフェノール系重合体>
(5) ビニルフェノールの単独重合体
(6) 変性ビニルフェノールの単独重合体
(7) ビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールと疎水性ビニルモノマーとの共重合体
上記(6)の変性ビニルフェノールとしては、例えば、アルキル基やアリル基等で置換されたビニルフェノール、ハロゲン化ビニルフェノール等、フェニル基が何らかの化合物で化学修飾されたビニルフェノールが挙げられる。
また、(7)の疎水性ビニルモノマーとしては、例えばエチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル等の水不溶性又は水難溶性のビニルモノマーが挙げられる。このような疎水性ビニルモノマーと、ビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールとの共重合体中のビニルフェノール及び/又は変性ビニルフェノールの割合は、モル比で0.5以上、特に0.7以上であることが好ましい。
前記(5)〜(7)のビニルフェノール系重合体は、その重量平均分子量が1000以上例えば1000〜100000であることが好ましく、このような分子量の重合体は、通常、粉末で提供される。
【0042】
<フェノール系高分子化合物のアルカリ溶液>
上述のフェノール系高分子化合物は水に不溶又は難溶であるので、水に溶解可能な溶媒に溶解させて使用する。使用される溶媒としてはアセトン等のケトン、酢酸メチル等のエステル、メタノール等のアルコール等の水溶性有機溶媒、アルカリ水溶液、アミン等が挙げられるが、通常の場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤を用いて溶液とする。
フェノール系高分子化合物のアルカリ水溶液は、通常、アルカリ剤濃度3〜25重量%(pH11〜13)、フェノール系高分子化合物濃度10〜35重量%として調製される。
【0043】
{フェノール系高分子のアルカリ溶液II}
融点が130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液は、特許文献3に記載されるように、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させてノボラック型フェノール樹脂を得、該ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してアルカリ触媒の存在下にレゾール型の2次反応を行うことにより製造される。
上記融点が130〜220℃のフェノール樹脂の融点は、好ましくは150〜200℃である。
【0044】
また、融点が130〜220℃のフェノール樹脂の重量平均分子量は5000以上が好ましく、さらに好ましくは10000以上である。一方、重量平均分子量が50000を超える場合は、一部分子量100万以上の分子が生成し、粘度が高く、時間経過でさらに架橋し、不溶物が発生する可能性が高いため、重量平均分子量は50000以下、特に30000以下であることが好ましい。
また、融点が130〜220℃のフェノール樹脂の重量平均分子量は、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量の2〜5倍程度となることが好ましい。
【0045】
また、融点が130〜220℃のフェノール樹脂は、フェノール類2核体含有率が3重量%未満、特に2重量%以下であることが好ましく、また、分子量624以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下であることが好ましい。より好ましくは、分子量624以下の低分子量成分の含有率は5重量%以下である。また、分子量624を超え1200以下の低分子量成分の含有率が10重量%以下、特に7重量%以下であることが好ましい。
【0046】
融点が130〜220℃のフェノール樹脂は、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型フェノール樹脂に対して、2核体を含む概ね分子量1000以下の低分子量成分が通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下と大きく減少し、水の凝集処理に用いた場合、凝集処理水側に残留する未凝集物が著しく少なく、TOC、COD
Mnが著しく低減された、膜分離処理の給水として好ましい凝集処理水が得られる。
【0047】
融点が130〜220℃のフェノール樹脂のアルカリ溶液IIは、pH11〜13程度で、フェノール樹脂濃度が5〜50重量%、特に10〜25重量%程度の水溶液であることが好ましい。
【0048】
{フェノール系高分子のアルカリ溶液III}
フェノール系高分子のアルカリ溶液IIIは、メチルフェノール類を含むフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に反応させて得られたノボラック型フェノール系樹脂のアルカリ溶液に、アルデヒド類を添加してレゾール型の2次反応を行って得られるフェノール系樹脂(以下「2次反応メチルフェノール系樹脂」と称す。)のアルカリ溶液である。
即ち、ノボラック型フェノール系樹脂の製造に用いる原料フェノール類として、クレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等のメチルフェノール類を必須成分とする。
【0049】
クレゾールとしては、o,m,pのいずれも利用可能であり、これらの2種以上の混合物であってもよい。またキシレノールの各異性体、及び2,3,5−トリメチルフェノールを用いることができる。さらに原料フェノール類として、クレゾール等のメチルフェノール類を主体に、他のフェノール類を混合して用いてもよい。この場合、他のフェノール類としては、例えば、フェノール、o,m,pの各エチルフェノール、ジエチルフェノールの各異性体、2,3,5−トリエチルフェノールなどのアルキルフェノール類、α,βの各ナフトールなどの多芳香環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ピロガロール、レゾルシン、カテコールなどの多価フェノール類、ハイドロキノンなどが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。これらの他のフェノール類は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
なお、これらの他のフェノール類をメチルフェノール類と共に併用する場合、原料フェノール類としてメチルフェノール類を用いることによる効果を有効に得るために、原料フェノール類中の50重量%以上、特に70〜100重量%がクレゾール、キシレノール、トリメチルフェノール等のメチルフェノール類であることが好ましい。
【0050】
2次反応メチルフェノール系樹脂の融点は好ましくは130〜220℃であり、より好ましくは150〜205℃である。
【0051】
また、2次反応メチルフェノール系樹脂の重量平均分子量は5,000以上が好ましく、さらに好ましくは10000以上である。一方、重量平均分子量が50000を超える場合は、一部分子量100万以上の分子が生成し、粘度が高く、時間経過でさらに架橋し、不溶物が発生する可能性が高いため、2次反応メチルフェノール系樹脂の重量平均分子量は50000以下、特に30000以下であることが好ましい。
この2次反応メチルフェノール系樹脂の重量平均分子量は、反応前、即ち、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型メチルフェノール系樹脂の重量平均分子量の2〜7倍程度となることが好ましい。
【0052】
また、この2次反応メチルフェノール系樹脂は、レゾール型2次反応の原料であるノボラック型メチルフェノール系樹脂に対して、2核体を含む概ね分子量1000以下の低分子量成分の含有量が減少し、水の凝集処理に用いた場合、凝集処理水側に残留する未凝集物が著しく少なく、TOC、COD
Mnが著しく低減された、膜分離処理の給水として好ましい凝集処理水が得られる。
【0053】
原料フェノール類としてメチルフェノール類を用いて得られる2次反応メチルフェノール系樹脂では、原料フェノール類としてメチルフェノール類を用いたことによる疎水性の上昇により、原料フェノール類としてフェノールを用いて得られる2次反応フェノール樹脂に比較して、凝集せずに凝集処理水中に残留する樹脂の分子量域が低分子量側にシフトする。このため、原料フェノール類としてメチルフェノール類を用いて得られる2次反応メチルフェノール系樹脂は、原料フェノール類としてフェノールを用いて得られる2次反応フェノール樹脂に比較して、分子量1000以下の低分子量成分の含有量の許容値が高く、この値は20重量%以下程度でよく、好ましくは15重量%以下である。
【0054】
2次反応メチルフェノール系樹脂のアルカリ溶液IIIは、pH11〜13程度で、フェノール樹脂濃度が5〜50重量%、特に10〜25重量%程度の水溶液であることが好ましい。
【0055】
上記のようなフェノール系高分子のアルカリ溶液の添加量は、被処理水、即ち、第一の凝集固液分離で得られた清澄水の水質、用いるフェノール系高分子の種類、要求される処理水の水質によっても異なるが、一般的には、当該フェノール系高分子で凝集処理すべき、被処理水中の中性多糖類等と同量程度であり、フェノール系高分子の添加量として被処理水中の中性多糖類の含有率に応じて0.1〜2.0mg/L程度とすることが好ましい。フェノール系高分子の添加量が少な過ぎるとフェノール系高分子による中性多糖類等の凝集処理効果を十分に得ることができない。一方、多過ぎても添加量に見合う凝集効果の向上効果を得ることはできない。本発明では、凝結剤による第一の凝集固液分離と、その後のフェノール系高分子と凝結剤による第二の凝集固液分離とを行うことで、フェノール系高分子の必要添加量を従来法に比べて低減することができるという効果を有効に得る上で、フェノール系高分子添加量は、凝集効果が得られる添加量範囲において、低く設定することが好ましい。
【0056】
なお、フェノール系高分子のアルカリ溶液は、沈殿槽や浮上槽の集水トラフ等の薬液の拡散性に優れた箇所に添加することが好ましく、また、添加後の拡散を促進するために、添加に先立ち希釈水で希釈して、薬液量を増大させて添加することが好ましい。この場合の希釈倍率には特に制限はないが、100〜1000倍程度に希釈して、フェノール系高分子濃度0.2重量%未満の希薄溶液として添加することが好ましい。
【0057】
フェノール系高分子のアルカリ溶液の添加と、その後の凝結剤の添加との時間間隔は、長い方が好ましく、従って、沈殿槽又は浮上槽からの清澄水を受ける清澄水受け槽を設け、フェノール系高分子のアルカリ溶液の添加と、その後の凝結剤の添加との間に、十分な時間間隔、例えば1.0〜3.0分程度を確保することが好ましい。また、受け槽がなく、凝結剤を配管注入する場合には、フェノール系高分子溶液の反応時間を10秒以上かせぐため、濾過手段の直前で凝結剤を添加することが好ましい。
【0058】
フェノール系高分子の添加後に添加する凝結剤としては、前述の一次凝集処理で添加される凝結剤として例示したものを用いることができ、好ましくは、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム系無機凝結剤、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝結剤等の1種又は2種以上が挙げられる。
なお、一次凝集処理で用いる凝結剤と二次凝集処理で用いる凝結剤とは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0059】
二次凝集処理における凝結剤は、フェノール系高分子による凝集処理後において、フェノール系高分子を確実に後段の濾過装置で捕捉するために添加されるものであり、その添加量は一次凝集処理における凝結剤の添加量の1/5〜1/10程度の少量でよく、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等のアルミニウム系無機凝結剤であれば、Al換算の添加量が0.3〜1.5mg/L程度となるように、また、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄等の鉄系無機凝結剤であればFe換算の添加量が0.6〜3.0mg/L程度となるように添加される。
二次凝集処理における凝結剤の添加量が少な過ぎると、フェノール系高分子添加後に凝結剤を添加することによる上記効果を十分に得ることができず、多過ぎても添加量に見合う効果の向上は得られず、後段の濾過手段の負荷の増大、発生汚泥量の増加を招き、好ましくない。
【0060】
なお、凝結剤についても、フェノール系高分子と同様に十分な拡散性を確保し得る箇所に添加することが好ましく、また、薬液量を増大させて拡散性を高めることが好ましい。このため、凝結剤は有効成分として0.2重量%未満の濃度に希釈し、添加水量を多くして添加することが好ましい。
【0061】
フェノール系高分子による凝集処理水に上記の凝結剤を添加した後は、10秒〜3分程度反応させた後、濾過手段で濾過する。ここで用いる濾過手段としては、水処理で使用されるものであればよく、特に制限はない。例えば二層濾過器やUF膜分離装置、MF膜分離装置などを用いることができる。
【0062】
第二の凝集固液分離で得られた濾過水は、RO膜やイオン交換樹脂の汚染物質となる中性多糖類等の水溶性高分子有機物が高度に除去されたものであるため、これを更にRO膜等の膜供給水として水回収を図ることができる。
【0063】
本発明においては、本発明による2段の凝集固液分離で得られた処理水について、前述の特許文献5(特開2012−213676号公報)に開示されている水質評価方法に従って、該処理水中に含まれる水溶性高分子有機物の残留指標を表すSFF(Soluble Fouling Factor)を測定し、或いはSFFと共に更に、従来一般的に膜供給水の汚染度の指標として用いられている、ASTM D4189に定義されているSDI(Silt Density Index)値、JIS K 3802に定義されているFI(Fouling Index)値、MF(Desalination,vol.20,p.353−364,1977)値、及びMFF(MF Factor)値のいずれか1以上を求め、これらの測定結果に基づいて、一次凝集処理における凝結剤添加量と、二次凝集処理におけるフェノール系高分子及び凝結剤添加量を調整することもでき、このようにすることで、汚染性が極めて低い膜供給水として好適な処理水を得ることができる。
【0064】
[水処理]
上述のように、本発明による2段の凝集固液分離で得られる処理水(第二の凝集固液分離の濾過処理水)は、汚染性が著しく低減されたものであり、本発明は、特にこの処理水を更に膜分離処理する水処理に好適である。
【0065】
即ち、本発明の水処理方法は、本発明の凝集固液分離方法で得られた濾過処理水を膜分離処理するものであり、また、本発明の水処理装置は、本発明の凝集固液分離装置と、この凝集固液分離装置で得られた濾過処理水を処理する、RO膜、UF膜、又はMF膜分離装置とを有するものであり、膜汚染性が著しく低減された、膜供給水として好ましい水を膜分離装置に供給することができるため、RO膜、UF膜、MF膜の透過流束を長期に亘り良好に維持することができ、エネルギーコストや膜洗浄等にかかわるメンテナンス費用の軽減で、生産水の原単位費用を低減することができ、また膜処理水の水質向上を図ることができる。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
各実施例、比較例に使用したフェノール系高分子、及び無機凝結剤を下記表1,2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
なお、フェノール系高分子のアルカリ溶液は182〜455倍に希釈して、樹脂濃度0.037〜0.093重量%の水溶液として添加した。また、無機凝結剤は製品として5.5又は11重量%の水溶液として添加した。後掲の表4〜6に示すフェノール系高分子添加量は、フェノール系高分子としての添加量であり、また、無機凝結剤添加量は、無機凝結剤としての添加量である。
【0071】
また、高分子凝集剤としては、栗田工業(株)製アクリルアミド系高分子凝集剤「クリフロックPA331(20モルアニオン、推定分子量1500万)」(表記記号PA331)を用いた。
【0072】
凝集固液分離試験方法、及び膜濾過性試験方法、濁度測定方法、及び判定基準は以下の通りである。
【0073】
[凝集固液分離試験方法]
<フェノール系高分子後添加の場合(以下、単に「後添加」と称す。)>
<第一の凝集固液分離>
1) 原水1100mLをビーカーに採り、宮本製作所製「MJS−6」でジャーテストを行った。
2) (藻類繁殖の激しい湖水系工業用水を原水とする実施例17〜21及び比較例29の場合には所定量の硫酸を添加した後)無機凝集剤を所定量添加し、150rpmで7分攪拌して凝集フロックを形成させた。
3) この間に必要に応じてNaOHを添加して所定の凝集pHに調整した。
4) ジャーテスターを停止し、PA331を所定量添加し、150rpmで2分の急速攪拌と引き続き50rpmで7分の緩速攪拌を行い、大きな凝集フロックを形成させた。
5) ジャーテスターを停止後、凝集フロックが沈降したところで、上澄みをデカンテーションで採水し、これを一次処理水とした。
【0074】
<第二の凝集固液分離>
6) 5)の一次処理水1100mLをビーカーに採り、宮本製作所製「MJS−6」でジャーテストを行った。
7) フェノール系高分子を150rpmの攪拌下に所定量添加し、2分間攪拌した。引き続き150rpmの攪拌下に無機凝結剤の所定量を添加し2分間攪拌後、さらに50rpmで7分間攪拌した。
8) 7)の凝集処理水(肉眼ではフロック形成確認はできないレベル)を10分程度静置し、No.5A濾紙で濾過して濾過処理水1100mL弱を得た。この濾過処理水を最終処理水として、膜濾過性と濁度の評価を行った。
【0075】
<フェノール系高分子先添加の場合(以下、単に「先添加」と称す。)>
1) 原水1100mLをビーカーに採り、宮本製作所製「MJS−6」でジャーテストを行った。
2) (藻類繁殖の激しい湖水系工業用水を原水とする比較例24〜28,30,31の場合には硫酸を添加した後)フェノール系高分子を所定量添加して150rpmで3分間反応後、無機凝結剤を所定量添加し、150rpmで7分攪拌して凝集フロックを形成させた。
3) この間に必要に応じてNaOHを添加して所定の凝集pHに調整した。
4) ジャーテスターを停止し、10分ほど静置した凝集処理水をそのままNo.5A濾紙で濾過して濾過処理水を得、これを最終処理水として、膜濾過性と濁度の評価を行った。
【0076】
<無機凝結剤単独処理の場合(以下、単に「無機単独」と称す。)>
1) 原水1100mLをビーカーに採り、宮本製作所製「MJS−6」でジャーテストを行った。
2) 150rpmの攪拌下に無機凝結剤の所定量を添加し7分間攪拌した。
3) ジャーテスターを停止し、10分ほど静置した凝集処理水をそのままNo.5A濾紙で濾過して濾過処理水を得、これを最終処理水として、膜濾過性と濁度の評価を行った。
【0077】
[膜濾過性試験方法]
1) 最終処理水とした濾過処理水1000mLを500mLずつ2本のシリンダーに採取してそれぞれサンプル1、サンプル2とした。
2) 栗田工業開発センター(栃木県下都賀郡野木町)の排水回収のRO膜透過水を予め1)のサンプル1,2と同程度の室温に調整して十分量準備し、その500mLをT
0測定用水とした。
3) T
0測定用水500mLを、メルクミリポア社製 孔径0.45μm、47φのニトロセルロース製メンブレンフィルター(MF)用い、67kPa(500mmHg)の減圧下で濾過し、濾過時間T
0を計測した。
4) 同じMFに、500mLのサンプル1を通水して濾過時間T
1を計測し、引き続き500mLのサンプル2をさらに通水して濾過時間T
2を計測した。
5) 測定された濾過時間T
0、T
1、T
2を、いずれも実測水温から25℃における濾過時間に水の水温と粘性係数の関係式を用いて補正して、それぞれ補正T
0、補正T
1、補正T
2の値を得た。なお、20〜28℃の水温範囲の水温1℃当りの補正係数は1.024である。
補正T
0、補正T
1、補正T
2から、下記式よりSFF、MFFを算出した。
SFF=補正T
1/補正T
0
MFF=補正T
2/補正T
1
【0078】
[濁度測定方法]
最終処理水とした濾過処理水について、HACH社製「2100P」により濁度(NTU)を測定し、超純水のNTU値を差し引いた値を真濁度とした。
【0079】
[判定基準]
SFF、MFF及び真濁度のRO膜供給水としての判定基準は下記表3に示す通りである。
【0080】
【表3】
【0081】
[実施例1〜8、比較例1〜10:液晶製造排水生物処理水の凝集固液分離]
液晶製造工程排水を脱窒素までを含む生物処理を行って得られた生物処理水を、ポリ硫酸第二鉄(PFS)で凝集処理し、次いでRO膜処理を行って、排水回収を行っているA工場の生物処理水を原水として、それぞれの処理手順でRO膜前処理としての凝集固液分離を行った。
結果を表4に示す。
また、比較例8及び実施例1〜6の後添加と比較例2及び3〜7の後添加におけるBP201添加量とSFFとの関係を
図1(a)に、BP201添加量とMFFとの関係を
図1(b)に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
[考察]
比較例1に示すように、無機単独処理では、無機凝結剤であるポリ硫酸第二鉄(PFS)添加量を300mg/Lまで増加してもSFF=1.28、MFF=1.23で、比較例2のPFS120mg/L添加に対して処理効果の向上は少なく、いずれも表3の判定基準に照らしあわせると「RO膜供給水として好ましくない」と評価される。
【0084】
中性多糖類に対する凝集効果のあるフェノール系高分子BP201を併用した比較例3〜8は、その添加量に応じて、膜濾過性が改善される。
【0085】
比較例3〜8と、本発明の実施例1〜6におけるBP201添加量とその添加効果を示す
図1(a)、(b)より、本発明によれば、同じ効果を得るためのBP201添加量が半分以下に減少していることが分かる。
【0086】
また、実施例7,8と比較例9,10の対比より、クレゾール系樹脂のアルカリ溶液であるBP151を用いた場合や、ポリビニルフェノールのアルカリ溶液であるL401を用いた場合でも、同じPFS添加量および同じフェノール系高分子添加量において、本発明によれば、大きく処理効果が向上することが分かる。
【0087】
[実施例9〜13、比較例11〜23:半導体製造排水生物処理水の凝集固液分離]
半導体製造工程排水を生物処理して得られた生物処理水を、塩化第二鉄(FC)で凝集処理し、次いでRO膜処理を行って、排水回収を行っているB工場の生物処理水を原水として、それぞれの処理手順でRO膜前処理としての凝集固液分離を行った。
結果を表5に示す。
また、比較例21及び実施例9〜11の後添加と比較例12と比較例13〜17の先添加におけるPB151添加量とSFFとの関係を
図2(a)に、BP151添加量とMFFとの関係を
図2(b)に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
[考察]
比較例11に示すように、無機単独処理では、無機凝結剤である塩化第二鉄(FC)添加量を160mg/Lまで増加してもSFF=1.20、MFF=1.22で、比較例12のFC添加量80mg/Lに対して処理効果の向上は少なく、いずれも表3の判定基準に照らしあわせると「RO膜供給水として好ましくない」と評価される。
【0090】
中性多糖類に対する凝集結果のあるフェノール系高分子BP151を併用した比較例13〜19は、BP151添加量3又は5mg/Lの場合を除いて、その添加量に応じて、膜濾過性が改善される。
【0091】
BP151添加量3又は5mg/Lで、BP151を添加しない場合よりもMFFが悪化するのは、BP151反応対象の多糖類に対して、その凝集剤であるBP151量が非常に少ないため、両者の反応物が生じても不溶化することができず、さらに濾過処理で透過してしまう半不溶化状態となり、その結果、MFを閉塞させる作用が増大したためと考えられる。
【0092】
比較例13〜17と、本発明の実施例9〜11におけるBP151添加量とその添加効果を示す
図2(a)、(b)より、本発明によれば、SFF=1.10,MFF=1.10の同じ効果を得るためのBP151添加量が半分程度に減少していることが分かる。
【0093】
また、実施例15,16と比較例22,23の対比より、フェノール樹脂のアルカリ溶液であるBP201を用いた場合やポリビニルフェノールのアルカリ溶液であるL401を用いた場合でも、同じFC添加量および同じフェノール系高分子添加量において、本発明によれば大きく処理効果が向上することが分かる。
【0094】
[実施例14〜19、比較例24〜34:藻類繁殖の激しい湖水系工業用水の凝集固液分離]
鹿島地区の工業用水は北浦を水源としており、無機凝結剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)や液体硫酸アルミニウム(LAS)の添加量を増加させてもMFF1.10以下とすることができない原水である。
そこで、この工業用水を原水として、それぞれの処理手順で凝集固液分離を行った。
結果を表6に示す。
また、比較例29及び実施例14〜16の後添加と比較例25と比較例26〜28の先添加の場合のBP201添加量とSFFとの関係を
図3(a)に、BP201添加量とMFFとの関係を
図3(b)に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
[考察]
比較例24に示すように、無機単独処理では、無機凝結剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)添加量を100mg/Lまで増加して、効果を高めるために硫酸を併用して、凝集pH6.2とすることでSFF=1.056、MFF=1.092と表3の判定基準に照らして、RO膜供給可能な処理水が得られる。しかし、PACの必要添加量は100mg/Lと多い。
【0097】
比較例25のPAC添加量40mg/Lでは、凝集pHを適性化しても、SFF=1.101、MFF=1.122でRO膜供給可能ではあるが改善の余地が大きい。
【0098】
比較例25のPAC凝集条件で、フェノール系高分子BP201を併用すると、比較例26〜28のように、SFF、MFFが改善される。
【0099】
比較例26〜28と、本発明の実施例14〜16におけるBP201添加量とその添加効果を示す
図3(a)、(b)より、表3の判定基準のSFF<1.05、MFF<1.06の「RO供給水として好ましい水準」とするのに必要なフェノール系高分子の添加量がPAC添加量40mg/Lの条件で、ほぼ半減できることが分かる。
また、実施例17,18と比較例30,31の対比より、クレゾール系樹脂のアルカリ溶液であるBP151を用いた場合や、ポリビニルフェノールのアルカリ溶液であるL401を用いた場合でも、同じPAC添加量および同じフェノール系高分子添加量において、本発明によれば、大きく処理効果が向上することが分かる。
無機凝結剤として液体硫酸アルミニウム(LAS)を使用した場合でも、実施例19に示すように、従来法の比較例34に比べて、処理効果が向上する。