(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン層破壊によるオゾンホールからの太陽光に含まれる紫外線により皮膚ガンを発症する等の問題が懸念され、日焼け止め等の原料として、紫外線を効果的に吸収、散乱する紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の研究、開発が進められている。
【0003】
ところで、太陽光に含まれる紫外線中、UV−C(180〜280nm)はオゾン層に吸収されるため地球表面に到達することはなく、また、UV−B(280〜320nm)も有機化合物により遮蔽(カット)することは可能であった。
【0004】
しかし、UV−A(320〜400nm)は皮膚ガンを発症させる等有害であるため、日焼け止め等の原料として、リチウム、ナトリウム、カリウムの少なくとも1種を含有する酸化亜鉛合金粉末が特許文献1に開示されている。そして、リチウム等が含まれる酸化亜鉛合金粉末を使用することで広範囲な紫外線を遮蔽できるとされているが、湿式法で生成される酸化亜鉛合金粉末は凝集により白色を呈し、化粧料に適用した場合、白っぽく、透明感のない仕上がりとなる欠点があり、かつ、製造効率も非常に悪い欠点があった。
【0005】
また、特許文献2には、バンドギャップが2.5〜3.2eVの範囲にある酸化セリウムCeO
2、酸化チタン、酸化亜鉛ZnO等の無機酸化物微粒子から成る紫外線遮断剤が開示されている。しかし、酸化セリウムCeO
2は、高い触媒活性を有し、樹脂や油脂等の酸化分解を促進させてしまうことから、酸化セリウムCeO
2を化粧品や樹脂中に配合した場合に変色や変臭の原因となる問題があった。また、二酸化チタンTiO
2や酸化亜鉛ZnOが含まれる紫外線防御剤は、紫外線散乱効果が高く、紫外線から皮膚を保護するのに有効である。しかし、二酸化チタンTiO
2や酸化亜鉛ZnO等の金属化合物は、紫外線を受けるとその表面に活性酸素を発現することが知られており、活性酸素は極めて反応性が高く、化粧品のように長期に亘って反復・連用するものにあっては皮膚組織に及ぼす影響が懸念される。
【0006】
そこで、上記酸化セリウムCeO
2の酸化触媒活性や、二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnOの光触媒活性を低下させるため、これ等無機酸化物微粒子の表面をアモルファスシリカSiO
2で被覆する方法が特許文献3に開示されている。
【0007】
ところで、紫外線カットパウダー(紫外線遮蔽性粉末)が含まれる樹脂組成物や油脂組成物に対する透明性や有彩色性を希望する市場要請に応えるために、紫外線カットパウダーは一層微粒子化され、粉体比表面積が大きくなる傾向にある。そして、粉体比表面積の増加は必要とする被覆量の増大をもたらし、上記無機酸化物微粒子の触媒活性を低下させるためには相当量のシリカSiO
2が必要となる。この結果、無機酸化物微粒子としての酸化セリウムCeO
2、二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnOの品位が劣化してしまい、紫外線カットパウダーの紫外線遮蔽効果が低下する問題を有していた。
【0008】
すなわち、微粒子化を求める紫外線吸収剤市場の要請に応えるためには、より少量の被覆量で、相対的に紫外線カットパウダー(紫外線遮蔽性粉末)の含有量を極力減らすことなく、触媒活性を抑制できる表面処理技術の開発が急務となっている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
参考例と本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に記載された内容に限定されるものではない。
【0027】
すなわち、
参考例に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)は、
二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選択された平均粒径10〜500nmの微粒子と、二酸化ケイ素SiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選択されかつ上記微粒子を覆う被覆処理層とで構成され、上記被覆処理層が原子層堆積法(ALD法)により成膜された1層以上の原子層で構成されていることを特徴とし、
また、
実施の形態に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)は、
酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO
2(3.6eV)から選択された平均粒径10〜500nmの微粒子と、二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選択されかつ上記微粒子を覆う被覆層と、二酸化ケイ素SiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選択されかつ上記被覆層を覆う被覆処理層とで構成され、上記被覆層と被覆処理層が原子層堆積法(ALD法)により成膜された1層以上の原子層でそれぞれ構成されていることを特徴とする。
【0028】
1.微粒子基材
参考例に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の微粒子基材は、二酸化チタンTiO
2(3.2eV:バンドギャップの数値を示す。以下同様)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選択された平均粒径10〜500nmの微粒子で構成され、また、
実施の形態に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の微粒子基材は、酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO
2(3.6eV)から選択された平均粒径10〜500nmの微粒子で構成されている。上記微粒子基材の粒径が波長の1/2程度であるとMie散乱領域となり不透明感を有し、また、微粒子基材の粒径が波長の1/2より遙かに小さいとRayleigh散乱領域となり透明感を有する。上記微粒子基材の粒径については、本発明に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の用途に応じて適宜選択すればよいが、一般的には透明感を有し、効果的に紫外線を遮蔽(カット)できる100nm以下が好ましい。
【0029】
2.原子層堆積法
原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法は、分子層(原子層)を構成する元素が含まれる原料ガスを真空装置内に交互に導入し、真空装置内に配置された被成膜体の最表面に吸着された分子と、次に導入される原料ガスとの反応により単原子(単分子)層ずつ堆積させる方法で、層の膜厚を原子層レベルで制御できる方法である。
【0030】
そして、原子層堆積法は、被成膜体側から単原子(単分子)層ずつ堆積しながら成膜が始まる方法のため、被成膜体(微粒子基材)に対してピンホールのない被覆層を形成することが可能である。この原子層堆積法は、一般的な真空成膜法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタリング法等)において、膜原料クラスターが被成膜体上に飛来し、被成膜体表面に付着かつ上記クラスターが結合して膜を形成していくため、潜在的に該クラスター間にピンホールを作ってしまう可能性を有する一般的な真空成膜法と大きく異なっている。また、直進性が高いスパッタリング法や真空蒸着法では成膜が困難な凹凸を有する被成膜体面上にも、原子層堆積法では均一な成膜が可能であり、更に、原子層堆積法においては原料がガスであるため、スパッタリング法や真空蒸着法で多発するスプラッシュ(膜原料が固まりのまま被成膜体に飛来すること)の発生もない。従って、スプラッシュが成膜中の膜に付着し、それが脱落してピンホールになるような現象もない。また、原子層堆積法で用いられる真空装置においては、PVD法やCVD法で用いられる真空装置に必要であった高価な電源ユニット等が不要であり、従来の成膜方法と比較して成膜コストの低減も図れる。
【0031】
そして、原子層堆積法では、分子層を構成する元素のそれぞれが含まれる第1反応ガス(反応ガス1)と第2反応ガス(反応ガス2)を、真空装置(反応室)内に交互に導入する下記のA〜I工程で1サイクルを構成し、このサイクル数により膜厚の調整が行なわれる。
【0032】
A.真空装置に第1反応ガス(反応ガス1)を導入
B.被成膜体の最表面に第1反応ガスが化学吸着
C.被成膜体の最表面が第1反応ガスで飽和
D.真空装置から過剰な第1反応ガスおよび副生成物を排気
E.真空装置に第2反応ガス(反応ガス2)を導入
F.被成膜体の最表面に吸着していた第1反応ガスと第2反応ガスが反応
G.被成膜体の最表面が第2反応ガスで飽和
I.真空装置から過剰な第2反応ガスおよび副生成物を排気
【0033】
そして、原子層堆積法では、二酸化ケイ素SiO
2、Al
2O
3、ZrO
2、HfO
2、Ta
2O
5、二酸化チタンTiO
2等の酸化物膜、AlN、TaN、TiN、TaSiN、TiSiN等の窒化物膜、Cu、Ru、Ir、Ni、Pt等の金属膜、CaF
2、SrF
2、MgF
2等のフッ化物膜、GaAs、InP、GaP等の化合物膜の成膜が可能である。
【0034】
例えば、原子層堆積法でもっとも多く成膜が行われている酸化アルミニウムAl
2O
3の単原子(単分子)層を形成する場合、下記(i)〜(iv)の4工程で1サイクルが完成する。
【0035】
(i)第1反応ガスである水分子を導入して被成膜体の最表面にOH基を吸着させる。
【0036】
(1層目以降の反応)
2H
2O+:O−Al(CH
3)
2 → :Al−O−Al(OH)
2+2CH
4
(ii)過剰水分子をパージ排気する。
(iii)酸化アルミニウムAl
2O
3膜の第2反応ガス(反応ガス2)であるTMA[Trimethyl Aluminum:Al(CH
3)
3]ガスを導入する。TMA分子がOH基と反応してCH
4ガスが発生する。
(1層目の反応)
Al(CH
3)
3+:O−H → :O−Al(CH
3)
2+CH
4
(1層目以降の反応)
Al(CH
3)
3+:Al−O−H → :Al−O−Al(CH
3)
2+CH
4
(iv)過剰なTMAガスとCH
4ガスをパージ排気する。
【0037】
この4工程で約0.1nmの酸化アルミニウムAl
2O
3膜が形成されるので、要求する膜厚に到達するまで上記4工程を繰り返して膜厚を増加させる。
【0038】
原子層堆積法においては反応を促進させるため、被成膜体を加熱(100〜300℃)するか、あるいはプラズマを行うことが好ましい。
【0039】
基本的には、その他の膜種も反応ガスが異なるだけで、第1反応ガス導入、パージ、第2反応ガス導入、パージの4工程プロセスで成膜可能である。更には、原子層堆積法による成膜は、不純物が取り込まれことが少ない精製作用があるため、低純度の反応ガスを使用しても高純度の膜を得ることができる。
【0040】
3.原子層堆積法の装置
原子層堆積法の装置は真空成膜装置としては比較的簡単な構造であり、多くの装置メーカから市販されているが、基本的には、真空チャンバーに反応ガス導入機構が付属した装置である。
【0041】
パウダーへの成膜に適した代表的な原子層堆積法の装置を
図3と
図4に示す。
【0042】
図3に示す原子層堆積法の装置は、薄く敷き詰めたパウダー102表面に成膜する装置である。真空チャンバー100の内部には、パウダー102が入ったパウダートレイ101がある。このパウダートレイ101にはパウダー102が移動するように振動を与えてもよい。真空チャンバー100にはメインバルブ103を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)104が接続されている。更に、複数の反応ガスを導入するバルブ107と流量計108が取り付けられている。バルブ107は、ガスを加熱する機構が付随したものもある。成膜を促進するため、加熱ヒータ105やプラズマ源106を有することが好ましい。
【0043】
また、原子層堆積法は真空蒸着法、スパッタリング法ほどの高真空を必要としないため、高真空を得るための油拡散ポンプやターボ分子ポンプ、クライオポンプ等を必要とせず、荒引きポンプとして使用されるロータリーポンプ、ドライポンプ等を使用することができる。
【0044】
また、原子層堆積法のガス供給バルブ107は、反応ガスが液化する場合は、ヒータを組み込むことで、液化を防止することができる。
【0045】
次に、
図4に示す原子層堆積法の装置は、パウダーキャン201内に多段で敷き詰められたパウダー202の各表面に成膜する装置である。真空チャンバー200の内部には、パウダー202を多段で敷き詰める上記パウダーキャン201がある。このパウダーキャン201にはパウダー202が移動できるように振動を与えてもよい。真空チャンバー200にはメインバルブ203を経由して真空ポンプ(ドライポンプ)204が接続されている。更に、複数の反応ガスを導入するバルブ207と流量計208が取り付けられている。バルブ207は、ガスを加熱する機構が付随したものもある。成膜を促進するために、加熱ヒータ205やプラズマ源206を有することが好ましい。尚、符号209はフィルターを示す。
【0046】
4.原子層堆積法の膜材料
光の波長λ(nm)と光子エネルギーhν(eV)の間には、
hν=hc/λ=1239.8/λ……(式1)
の関係が成り立つことが知られている。
【0047】
例えば、二酸化チタンTiO
2のバンドギャップは3.2eVなので、光学吸収端の波長387nmより短い光が吸収され、それより長い波長は全部透過する。
【0048】
皮膚に対して有害なUV−A(320〜400nm)波長域の光を吸収、散乱できる材料を微粒子基材に使用するのが好ましい。UV−A(320〜400nm)波長域をバンドギャップで表すと約3.1〜3.9eVになり、UV−A波長域を広くカバーできる金属酸化物として二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)が使用される。尚、バンドギャップが3.1eV未満の材料を使用すると、光の吸収が可視光領域にも及ぶため着色が強くなり、化粧料、フィルム、プラスチックおよび塗料等への配合が制限されるため好ましくない。
【0049】
但し、二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選択される材料は、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線に対しては効果的な紫外線遮断効果を示すものの、UV−B(280〜320nm)領域の紫外線に対しては遮断効果が十分でない。そこで、UV−B(280〜320nm)領域の紫外線に対しても効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO
2(3.6eV)から選ばれる1種以上を上記微粒子基材に適用し、かつ、該微粒子基材の表面を覆う皮膜材料として、UV−A(320〜400nm)波長域における紫外線遮蔽機能を有する二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)を使用する構成が好ましい。これにより、UV−BからUV−A領域のほぼ全域に亘る紫外線の透過を実質的に遮断でき、とりわけUV−A領域の紫外線を効率よく遮断する紫外線遮断剤を簡便に得ることができる。また、酸化セリウムCeO
2の酸化触媒活性や二酸化チタンTiO
2および酸化亜鉛ZnOの光触媒活性を抑制するための被覆材料として、二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3が使用される。
【0050】
ところで、原子層堆積法により膜を形成する反応ガスは各社から販売されている。以下の表1に本発明で採用した皮膜の代表的な反応ガスを示す。
【0051】
非特許文献1に記載されたこれ等代表的な皮膜材料(反応ガス)について表1にまとめるが、ここに示す皮膜材料(反応ガス)に限定されるものではない。
【0052】
【表1】
(注)
「Me」: Methyl
「Et」: Ethyl
「OMe」: Methoxy
「OEt」: Ethoxy
「acac」: Acetylaceto-nato
「thd」: 2, 2, 6, 6-Tetramethyl-3, 5-heptanedionate
「apo」: 2-Amino-Pent-2-en-4-onate
「dmg」: Dimethyl-glyoximato
【0053】
5.紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の構造
(1)
参考例に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)
図1に示すように、「微粒子基材」30に、UV−A(320〜400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた無機酸化物微粒子を適用し、上記「微粒子基材」30を覆う「被覆処理層」31に、シリカSiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた皮膜材料が適用されて、
参考例に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)は構成されている。
【0054】
尚、シリカSiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた皮膜材料を原子層堆積法(ALD法)により成膜して「被覆処理層」31を形成する場合、少なくとも一層以上の原子層(分子層)から成る極めて薄い膜で、酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた無機酸化物微粒子から成る「微粒子基材」30を覆うことで、該「微粒子基材」30のUV−A波長域における紫外線遮蔽効果の低下を抑制することができる。
【0055】
(2)
実施の形態に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)
図2に示すように、「微粒子基材」50に、UV−B(280〜320nm)波長域における紫外線に対しても効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO
2(3.6eV)から選ばれる1種以上を適用し、かつ、「微粒子基材」50を覆う「被覆層」51に、UV−A(320〜400nm)波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた皮膜材料が適用されると共に、該「被覆層」51を覆う「被覆処理層」52に、シリカSiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた皮膜材料が適用されて、
実施の形態に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)は構成されている。
【0056】
尚、シリカSiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた皮膜材料を原子層堆積法(ALD法)により成膜して「被覆処理層」52を形成する場合、少なくとも一層以上の原子層(分子層)から成る極めて薄い膜で、酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた皮膜材料から成る「被覆層」51を覆うことで、該「被覆層」51のUV−A波長域における紫外線遮蔽効果の低下を抑制することができる。
【0057】
(3)本発明に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の構造は、
図2に示したように、「微粒子基材」50に、UV−B波長域における紫外線に対しても効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)、酸化錫SnO
2(3.6eV)から選ばれる平均粒径10〜500nmの微粒子を適用し、「微粒子基材」50を覆う「被覆層」51に、UV−A波長域における紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた皮膜材料を適用すると共に、「被覆層」51を覆う「被覆処理層」52に、シリカSiO
2、酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた皮膜材料が適用された構造
であることを要する。
【0058】
すなわち、「微粒子基材」50に、UV−B波長域の紫外線に対しても効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)または酸化錫SnO
2(3.6eV)から選ばれた平均粒径10〜500nmの紫外線吸収微粒子を適用し、上記「微粒子基材」50をUV−A波長域の紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた「被覆層」51で被覆する構造
であることを要する。
【0059】
尚、
図2に示した構造とは反対に、「微粒子基材」50に、UV−A波長域の紫外線遮蔽効果の高い二酸化チタンTiO
2(3.2eV)、酸化亜鉛ZnO(3.2eV)、酸化セリウムCeO
2(3.1eV)から選ばれた平均粒径10〜500nmの紫外線吸収微粒子を適用し、上記「微粒子基材」50をUV−B波長域の紫外線に対しても効果的な紫外線遮断効果を示す酸化ニッケルNiO(3.6eV)または酸化錫SnO
2(3.6eV)から選ばれた「被覆層」51で被覆した場合、「被覆層」51を構成する酸化ニッケルNiO(3.6eV)または酸化錫SnO
2(3.6eV)の皮膜の影響によりUV−A波長域の紫外線遮蔽効果が低下してしまうため、好ましくない。
【0060】
(4)また、紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の最外層が酸化触媒活性を有する酸化セリウムCeO
2で構成された場合、酸化触媒活性を有する酸化セリウムCeO
2の作用で樹脂や油脂の酸化分解が促進されるため化粧品や樹脂中に配合した場合に変色や変臭の原因になる。また、最外層が光触媒活性を有する二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnOで構成された場合、光の吸収により活性酸素が発現するため化粧品として使用した場合に皮膚組織に及ぼす影響が懸念される。このため、これ等の触媒活性を抑制するため、
図2に示すように「被覆処理層」52としてシリカSiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3で被覆することを要する。
【0061】
6.成膜方法
図3に示す原子層堆積法の装置を用い、パウダートレイ101内に薄く敷き詰めた微粒子基材であるパウダー102の外表面に被覆層を成膜する方法について説明する。
【0062】
まず、真空チャンバー100内部のパウダートレイ101に、微粒子基材である「紫外線吸収微粒子」から成るパウダー102を挿入する。
【0063】
次に、真空チャンバー100を大型ドライポンプ104により5Paまで排気した後、パウダー102をヒータにより300℃まで加熱するのが好ましい。すなわち、成膜を促進するため、加熱ヒータ105を用い、パウダー102を300℃程度に加熱するのが好ましい。300℃程度に加熱することで、パウダー102の吸着水、ガスを除去することができ、その後、良好な成膜を行うことが可能となる。また、アニール効果により、紫外線カットパウダーの特性安定化が図れる。
【0064】
また、パウダートレイ101には、パウダー102が移動できるように振動を与えることが好ましい。但し、パウダー102が少量の場合には、振動を与えなくても成膜することができる。
【0065】
その後、第1層目(被覆層)を成膜するため2種類の反応ガスを上記原子層堆積法の4工程プロセスを20回繰り返し、次に第2層目(被覆処理層)を成膜するため2種類の反応ガスを原子層堆積法の4工程プロセスを20回繰り返して成膜を完了させた後、真空チャンバー100を大気開放し、本発明の第2実施の形態に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を得ることができる。
【0066】
各層の膜厚は、4工程プロセスの回数(原子層の層数)で決まる。ここでは、4工程プロセスを20回繰り返したが、20回に限定されるものではない。
【0067】
そして、下記材料を成膜した場合における「4工程プロセスの回数と膜厚」の関係は以下の通りである。
【0068】
すなわち、酸化アルミニウムAl
2O
3膜(およそ0.1nm/回)、二酸化ケイ素SiO
2膜(およそ0.06nm/回)、二酸化チタンTiO
2膜(およそ0.05nm/回)、酸化亜鉛ZnO膜(およそ0.2nm/回)、酸化セリウムCeO
2膜(およそ0.25nm/回)、酸化ニッケルNiO膜(およそ0.025nm/回)、および、酸化錫SnO
2(およそ0.2nm/回)である。
【0069】
これ等のデータから、原子層堆積法(ALD法)による4工程プロセスの回数を決定することにより、上記被覆層、第一被覆層、第二被覆層、および、被覆処理層等の膜厚を正確に制御することができ、1層以上、好ましくは1層〜40層の原子層(分子層)で構成するとよい。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施例について
参考例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【0071】
[
参考例1]
図3に示す原子層堆積法の装置を用い、微粒子基材である「二酸化チタンTiO
2」から成るパウダー102の外表面に被覆処理層を成膜して、
参考例1に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0072】
すなわち、真空チャンバー100内部のパウダートレイ101に、「二酸化チタンTiO
2」から成るパウダー102を挿入した後、真空チャンバー100を大型ドライポンプ104により5Paまで排気した。
【0073】
次いで、成膜準備および成膜の間中、加熱ヒータ105を用いて上記パウダー102を300℃に加熱し、かつ、成膜の間中、均一な成膜が行えるようにパウダートレイ101を介しパウダー102に振動を与えた。
【0074】
すなわち、パウダー102に振動を与えながら、被覆処理層としてシリカSiO
2を成膜するため、2種類の反応ガスについて原子層堆積法の4工程プロセスを20回繰り返して成膜を完了させた後、真空チャンバー100を大気開放し、
参考例1に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0075】
[紫外線カットパウダーの特性測定]
次に、得られた紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」(表では「UV−Aカット効果」と略称する)、および、「触媒活性の抑制効果」(表では「触媒活性抑制効果」と略称する)をそれぞれ測定した。
【0076】
(1)UV−A波長域における遮蔽(カット)効果
まず、得られた紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)をエタノールに分散させた後、UV−A波長域(320〜400nm)の光を透過する合成石英ガラス上に、乾燥後の厚さが約10μmとなるように上記分散液を塗布し、乾燥させた。
【0077】
そして、乾燥された紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を、自記分光光度計によりUV−A波長域の拡散透過特性を測定して「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」を評価した。
【0078】
すなわち、波長350nmにおける透過率が50%以上の場合は「×」、10%以下50%未満の場合は「○」、10%未満の場合は「◎」で評価した。
【0079】
この結果を以下の表2に記載する。
【0080】
(2)触媒活性の抑制効果
次に、得られた紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)の触媒活性の抑制効果を調べた。
【0081】
上記抑制効果の目安として、一定量の紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)をアセトアルデヒド気体と共に透明密封容器内に投入し、かつ、紫外光の照射を行い、一定時間経過した時点で、アセトアルデヒドの自動酸化による分解率を測定し評価した。
【0082】
すなわち、アセトアルデヒドの自動酸化による分解率が50%以上の場合は「×」、10%以下50%未満の場合は「○」、10%未満の場合は「◎」で評価した。
【0083】
この結果も以下の表2に記載する。
【0084】
[
参考例2〜6および比較例1〜4]
微粒子基材として表2に示す「二酸化チタン」「酸化亜鉛」「酸化セリウム」「酸化ニッケル」および「酸化錫」のいずれかを適用し、被覆処理層として表2に示す「二酸化ケイ素(シリカSiO
2)」または「酸化アルミニウム」を適用した点を除き
参考例1と同様にして、
参考例2〜6および比較例1〜4に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0085】
得られた各紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)における「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」を表2に記載する。
【0086】
【表2】
【0087】
[実施例7]
図3に示す原子層堆積法の装置を用い、微粒子基材である「酸化ニッケル」から成るパウダー102外表面に「被覆層」(二酸化チタン)と「被覆処理層」(二酸化ケイ素)を順に成膜して、実施例7に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0088】
尚、「被覆処理層」(二酸化ケイ素)は
参考例1と同様の条件で成膜し、かつ、「被覆層」は二酸化チタンTiO
2を成膜するため、2種類の反応ガスについて上記原子層堆積法の4工程プロセスを20回繰り返し行っている。
【0089】
そして、得られた紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)における「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」を表3に記載する。
【0090】
[実施例8〜18および比較例5〜10]
微粒子基材として表3に示す「酸化ニッケル」「酸化錫」「二酸化チタン」「酸化亜鉛」および「酸化セリウム」のいずれかを適用し、被覆層として表3に示す「二酸化チタン」「酸化亜鉛」「酸化セリウム」および「酸化ニッケル」のいずれかを適用し、かつ、被覆処理層として表3に示す「二酸化ケイ素」または「酸化アルミニウム」を適用した点を除き実施例7と同様にして実施例8〜18および比較例5〜10に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0091】
得られた各紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)における「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」を表3に記載する。
【0092】
【表3】
【0093】
[比較例11〜19]
微粒子基材として表4に示す「二酸化チタン」「酸化亜鉛」「酸化セリウム」「酸化ニッケル」および「酸化錫」のいずれかを適用し、かつ、被覆層として表4に示す「二酸化チタン」「酸化亜鉛」および「酸化セリウム」のいずれかを適用すると共に、被覆処理層を設けていない点を除き
参考例1若しくは実施例7と同様にして比較例11〜19に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)を製造した。
【0094】
そして、得られた各紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)における「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」を表4に記載する。
【0095】
【表4】
【0096】
「評 価」
(1)表2に示す結果から、微粒子基材に、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、該微粒子基材表面が二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層で覆われた
参考例1〜6に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」が全て「〇」の評価(波長350nmにおける透過率が10%以下50%未満)であり、かつ、「触媒活性の抑制効果」も全て「◎」の評価(アセトアルデヒドの自動酸化による分解率が10%未満)となっており、紫外線カットパウダーとしての特性が良好であることが確認される。
【0097】
(2)一方、微粒子基材に、UV−B(280〜320nm)波長域に紫外線遮蔽効果を有する酸化ニッケルNiO、酸化錫SnO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、該微粒子基材表面が二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層で覆われた比較例1〜4に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」が全て「×」の評価(波長350nmにおける透過率が50%以上)になっており、紫外線カットパウダーとしての特性が良好でないことが確認される。
【0098】
(3)また、表3に示す結果から、微粒子基材に、UV−B(280〜320nm)波長域に紫外線遮蔽効果を有する酸化ニッケルNiO、酸化錫SnO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、該微粒子基材表面を、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物の被覆層で覆うと共に、二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層を設けた実施例7〜18に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」が全て「◎」の評価(波長350nmにおける透過率が10%未満)で、かつ、「触媒活性の抑制効果」も全て「◎」の評価(上記分解率が10%未満)となっており、紫外線カットパウダーとしての特性が極めて良好であることが確認される。
【0099】
(4)他方、微粒子基材に、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnOおよび酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、該微粒子基材表面を、UV−B(280〜320nm)波長域に紫外線遮蔽効果を有する酸化ニッケルNiOまたは酸化錫SnO
2から選ばれた無機酸化物の被覆層で覆うと共に、二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層を設けた比較例5〜10に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、すなわち、微粒子基材と被覆層の構成材料を実施例7〜18と反転させた比較例5〜10に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」が全て「×」の評価(波長350nmにおける透過率が50%以上)になっており、紫外線カットパウダーとしての特性が良好でないことが確認される。
【0100】
(5)次に、表4に示す結果から、微粒子基材に、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を適用したが、被覆層と被覆処理層が設けられていない比較例11〜13に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」は全て「〇」の評価(波長350nmにおける透過率が10%以下50%未満)であるが、「触媒活性の抑制効果」は全て「×」(アセトアルデヒドの自動酸化による分解率が50%以上)の評価になっており紫外線カットパウダーとしての特性が良好でないことが確認される。
【0101】
(6)また、表4に示す結果から、微粒子基材に、UV−B(280〜320nm)波長域に紫外線遮蔽効果を有する酸化ニッケルNiO、酸化錫SnO
2から選ばれた無機酸化物微粒子が適用され、かつ、該微粒子基材表面が、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物の被覆層で覆われた構造を有するが、被覆処理層が設けられていない比較例14〜19に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)においては、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」が全て「◎」の評価(波長350nmにおける透過率が10%未満)であるが、「触媒活性の抑制効果」は全て「×」(アセトアルデヒドの自動酸化による分解率が50%以上)の評価になっており紫外線カットパウダーとしての特性が良好でないことが確認される。
【0102】
(7)上述した結果から、微粒子基材に、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、かつ、該微粒子基材表面が二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層で覆われると共に、被覆処理層が原子層堆積法により成膜された1層以上の原子層でそれぞれ構成されている
参考例1〜6に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)は、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」に優れているため、日焼け止め等の原料として好適であることが理解される。
【0103】
(8)同様に、微粒子基材に、UV−B(280〜320nm)波長域に紫外線遮蔽効果を有する酸化ニッケルNiO、酸化錫SnO
2から選ばれた無機酸化物微粒子を用い、該微粒子基材表面を、UV−A(320〜400nm)波長域の紫外線遮蔽効果が高い二酸化チタンTiO
2、酸化亜鉛ZnO、および、酸化セリウムCeO
2から選ばれた無機酸化物の被覆層で覆うと共に、該被覆層の表面が二酸化ケイ素SiO
2または酸化アルミニウムAl
2O
3から選ばれた被覆処理層で覆われ、かつ、被覆層と被覆処理層が原子層堆積法により成膜された1層以上の原子層でそれぞれ構成されている実施例7〜18に係る紫外線遮蔽性粉末(紫外線カットパウダー)も、「UV−A波長域における遮蔽(カット)効果」と「触媒活性の抑制効果」に優れているため、日焼け止め等の原料として好適であることが理解される。