(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発光素子の表面はアルミニウムを含む導電性の第1被覆層に覆われており、前記波長変換層を形成する工程の後に、前記第1の被覆層を絶縁性の第2被覆層に変質させる工程を有する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
前記波長変換層を形成する工程の後に、前記導電部材上に形成された前記波長変換層を被覆する反射層を形成する請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、以下に図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置の製造方法を例示するものであって、本発明は発光装置の製造方法を以下に限定するものではない。
【0011】
また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0012】
電着法によって形成された波長変換層と発光素子の密着性は、波長変換部材の粒径と、波長変換部材のアスペクト比と、に起因する。波長変換層と発光素子20の密着性が低下すると、波長変換層が発光素子20から剥がれるおそれがある。波長変換層とは、粒子状の波長変換部材が連続的に繋がった凝集体のことである。
【0013】
波長変換部材の粒径が大きいほど、波長変換層と発光素子20の密着性が低下するおそれがある。
図1(a)及び
図1(b)に示すように発光素子20の表面に隙間なく波長変換部材10が形成された場合は、波長変換部材10の粒径が大きいほど、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dが広くなりやすい。波長変換部材10が球体の場合には、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dは波長変換部材10の粒径とほぼ同じ値になる。このため、波長変換部材10の粒径が大きいほど、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dが広くなる。発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dが広くなると、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点が少なくなるので、波長変換層と発光素子20の密着性が低下する。
【0014】
ただし、波長変換部材10の粒径が小さいほど発光素子20から発する光が波長変換層で散乱されやすい。散乱された光は発光素子20と、波長変換部材10とに当たりやすくなる。散乱された光が発光素子20と、波長変換部材10に当たると光の一部が発光素子20と、波長変換部材10に吸収される。このため、光取り出し効率を高くするためには粒径の大きい波長変換部材10を使用することが好ましい。
【0015】
尚、本明細書において、粒径とは、電気抵抗法によりコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いて粒径分布を測定した場合の50%粒子径(体積基準)を示す。電気抵抗法は、分散させた粉体が電極間を通過する際の電気抵抗と粒径との相関性を利用する方法であることから、粒子が強く凝集しており一次粒子にまで分散させることが難しい場合は、凝集した二次粒子の粒径を測定することになる。
【0016】
波長変換部材10のアスペクト比が高いほど、波長変換層と発光素子20の密着性が低下するおそれがある。尚、本明細書において、アスペクト比とは、日本工業規格(JIS Z 8900−1:2008)に則り、走査型電子顕微鏡を用いて100個以上の粒子を撮影した粒子群の画像から粒子の最大長径と最大長径に直交する幅を測定し、平均の長径と幅を求め、その比をアスペクト比とする。
【0017】
断面視において波長変換部材10のアスペクト比が1である円形状であれば
図1(a)及び
図1(b)に示すように発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dがほぼ同じ距離になりやすい。断面視において波長変換部材10が円形状よりもアスペクト比が大きい楕円形状であれば
図1(c)に示すように、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dにバラつきが生じやすい。
【0018】
断面視において波長変換部材10が楕円形状であれば、発光素子20の表面に対して平行方向における波長変換部材10の幅がバラつきやすい。例えば
図1(a)及び
図1(b)に示すように断面視において波長変換部材10が円形状であれば、波長変換部材10がどの向きに配置されても発光素子20の表面に対して平行方向における波長変換部材10の幅は変わらない。しかし、断面視において波長変換部材10が楕円形状であれば、波長変換部材10が配置される向きによって発光素子20の表面に対して平行方向における波長変換部材10の幅が変わりやすい。
【0019】
このため、波長変換部材10のアスペクト比が高ければ、発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dがバラつきやすい。発光素子20と波長変換部材10とが接触する点の間隔Dが広い箇所で、波長変換層と発光素子20の密着性が低下しやすくなる。尚、説明のために断面視において波長変換部材10を円形状や楕円形状としており、実際の形状は円形状や楕円形状だけでなく略直方体形状や、表面に凹凸がある等の様々な形状がある。
【0020】
複数の種類の波長変換部材を用いた場合、1種類の波長変換部材を用いるよりも、波長変換層と発光素子の密着性が低下するおそれがある。複数の種類の波長変換部材を用いることで波長変換層内の波長変換部材の粒径及び波長変換部材のアスペクト比にバラつきが生じやすい。つまり、発光素子と複数の波長変換部材とが接触する点の間隔が変わりやすくなる。このため、発光素子と複数の種類の波長変換部材とが接触する点の間隔がバラついた中で広い箇所で、波長変換層と発光素子の密着性が低下しやすくなる。尚、1種類の波長変換部材でも波長変換部材の粒子毎に波長変換部材の粒径及び波長変換部材のアスペクト比が異なるが、複数の種類の波長変換部材を用いることで1種類の波長変換部材より波長変換部材の粒径及び波長変換部材のアスペクト比のバラつきが大きくなりやすい。
【0021】
本実施の形態に係る発光装置は、波長変換層に波長変換部材よりも粒径とアスペクト比が小さい充填部材を含有させる。充填部材が波長変換部材の粒子間に配置されるので、波長変換層と発光素子の密着性を向上させることができる。
【0022】
2種類の波長変換部材を第1波長変換部材と、第2波長変換部材とすると、第1波長変換部材と第2波長変換部材とが同じ元素を含むことが好ましい。第1波長変換部材と第2波長変換部材とが同じ元素を含まない場合よりも、第1波長変換部材と第2波長変換部材とが同じ元素を含む方が第1波長変換部材と第2波長変換部材の密着性が向上しやすい。
【0023】
また、第1波長変換部材と第2波長変換部材とがアルミニウムを含むことが好ましい。第1波長変換部材と第2波長変換部材とがアルミニウムを含むことで後述する電着工程時の電着浴液中で第1波長変換部材と第2波長変換部材との帯電状態の違いを小さくできる。これにより、第1波長変換部材と第2波長変換部材とが波長変換層内で偏りが抑制されて形成されるので、波長変換層と発光素子の密着性が向上する。
【0024】
第2波長変換部材がアルミニウムを含まない場合や、第2波長変換部材がアルミニウムを含んでいても第1波長変換部材より電着浴液中で帯電しにくい場合でも、第2波長変換部材の表面をアルミニウムを含む被覆部材で覆うことで、第1波長変換部材と第2波長変換部材の帯電状態の違いを小さくできる。これにより、第1波長変換部材と第2波長変換部材とが波長変換層内で偏りが抑制されて形成されるので、波長変換層と発光素子の密着性を向上させることができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法の各工程について詳述する。
【0026】
工程1.基体に発光素子を接続する工程
導電部材32を有する基体30を準備する。基体30は、
図2(a)に示すように絶縁性の支持基板31と、支持基板31の上面に設けられる一対の導電部材32と、を備える。次に、
図2(b)に示すように導電部材32上に、導電性の接合部材40を介して発光素子20の電極23を接続する。
【0027】
発光素子20は、保持基板21と、半導体層22と、半導体層22側に備えられた少なくとも一対の電極23と、を備えている。また、発光素子20の一対の電極23を有する面を電極形成面24とし、電極形成面の反対側の面を光取り出し面25とする。さらに、保持基板21が絶縁性である場合は、後述する電着法で波長変換層を形成するために、発光素子20は保持基板21の光取り出し面25と、電極形成面24と光取り出し面25の間の側面と、を覆う導電性の第1被覆層26を備える。尚、保持基板21が導電性である場合でも、第1被覆層26を備えていてもよい。
【0028】
第1被覆層26はアルミニウムを含むことが好ましい。後述する波長変換層に含まれる第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材と、がアルミニウムを含むため、第1被覆層26がアルミニウムを含むことで第1被覆層と波長変換層との密着性が高くなる。
【0029】
工程2−1.波長変換層を形成する工程
波長変換層50を電着により形成する。第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材と、を含む電着浴液中に、上記の発光素子を載置した基体を浸漬し、通電させる。これにより、
図3に示すように発光素子20の表面及び導電部材32の表面に波長変換層50が形成される。
図3の点線部内の拡大図に示すように、波長変換層50は、第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52が混合して配置され、第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に充填部材55が配置されて形成される。
【0030】
電着浴液は第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材に加えて溶媒と電解質を含む。溶媒としてはイソプロピルアルコール、アセトン等の非水系溶媒が好ましい。電解質としては、例えば、硝酸マグネシウム等の公知の部材を用いることができる。電解質を含む電着浴液の中で第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材と、を分散させることで第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材を帯電させることができる。そして、発光素子及び導電部材を通電させると、発光素子及び導電部材の表面に第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材が堆積し、波長変換層を形成できる。
【0031】
また、電解質としては硝酸マグネシウムを用いることが好ましい。電着時の化学反応により硝酸マグネシウムは水酸化マグネシウムに変化する。この水酸化マグネシウムが発光素子と、第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材と、を結着する結着材の役割をする。このため、更に波長変換層と発光素子の密着性を向上させることができる。
【0032】
第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52は、発光素子20が発する第一ピーク波長の光を、この第一ピーク波長とは波長の異なる第二ピーク波長の光に波長変換する部材である。
【0033】
第1波長変換部材51はアルミニウムを含む粒子状の材料が用いられる。第1波長変換部材51の材料としては例えばYAGを用いることができる。第2波長変換部材52は、粒子状の母材53と、母材53の表面を覆う被覆部材54とを備える。母材53の材料としては、第1波長変換部材51と同じアルミニウムを含む部材だけでなく、アルミニウムを含まない部材も用いることができる。母材53の材料としては例えばSCASNを用いることができる。被覆部材54の材料としては、アルミニウムを含む部材を用いることができる。被覆部材54の材料としては、例えば酸化アルミニウムを用いることができる。
【0034】
例えば、波長変換部材としてYAGとSCASNを用いる場合に、SCASNはYAGより電着浴液中で帯電しにくいので酸化アルミニウム等で被覆することが好ましい。つまり、第1波長変換部材51としてYAGを第2波長変換部材52の母材53としてSCASNを用いることが好ましい。このようにすることで帯電しにくいSCASNを波長変換層内に分散して形成することができる。
【0035】
充填部材55はアルミニウムを含む材料が用いられる。充填部材55の材料としては例えば酸化アルミニウムを用いることができる。充填部材55の粒径は第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の両方の粒径よりも小さい。
【0036】
充填部材55は第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52よりも粒径が小さいので、第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に配置されやすい。充填部材55が第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に配置されることで、第1波長変換部材51と第2波長変換部材52で形成された波長変換層よりも、第1波長変換部材51と第2波長変換部材52と充填部材55とで形成された波長変換層50の方が、発光素子20と接触する点が増えやすい。このため、波長変換層50と発光素子20との密着性を向上させることができる。
【0037】
また、充填部材55は第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に配置されるので波長変換層50の密度を上げることができる。このため、充填部材55を含むことで波長変換層自体の密着性が高くなる。
【0038】
また、第1波長変換部材51と第2波長変換部材52とは充填部材55より粒径が大きいものを用いることができるので、充填部材55と同じ粒径の第1波長変換部材51と第2波長変換部材52を用いた場合よりも、光取り出し効率が向上する。第1波長変換部材51と第2波長変換部材52は、粒径が小さいほど発光素子から発する光を散乱しやすい。このため、散乱された光が発光素子20と、第1波長変換部材51と、第2波長変換部材52とに当たりやすくなる。散乱された光が発光素子20と、第1波長変換部材51と、第2波長変換部材52に当たると光の一部が発光素子20と、第1波長変換部材51と、第2波長変換部材52に吸収される。これにより、第1波長変換部材51と第2波長変換部材52の粒径が小さいと光取り出し効率が低下する。
【0039】
充填部材55のアスペクト比は第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の両方のアスペクト比よりも小さい。充填部材55のアスペクト比が大きい場合には、充填部材55が配置されている向きによって発光素子20の表面に対して平行方向における充填部材55の幅の変化が大きくなりやすい。発光素子20と第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52とが接触する点の間隔が同じでも、発光素子20の表面に対して平行方向における充填部材55の幅の変化が大きいので第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に充填部材55が配置されたり、配置されなかったりする。このため、第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に配置される充填部材55にバラつきが生じやすい。
【0040】
第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の両方よりアスペクト比が小さい充填部材55を用いることが好ましい。充填部材55がどの向きに配置されても発光素子20の表面に対して平行方向における充填部材55の幅の変化が小さくなる。このため、第1波長変換部材51及び第2波長変換部材52の粒子間に充填部材55がバラつきなく配置されやすい。これにより発光素子20から剥がれにくい波長変換層50を形成することができる。
【0041】
工程2−2.第1被覆層を変質させる工程
第1被覆層26を備えた発光素子20を用いた場合は、第1被覆層26を絶縁性の第2被覆層に変質させる工程を行うことが好ましい。第1被覆層が絶縁性の第2被覆層に変質することで発光素子が短絡することを抑制できる。第2被覆層に変質させる工程は、例えば、温度130℃以上、湿度90%以上の環境下で保持することにより酸化させるなどの方法で行うことができる。これにより、導電性の第1被覆層26を絶縁性の第2被覆層とすることができる。尚、第2被覆層は発光素子20から出射された光を妨げないために透光性を有する部材が好ましい。例えば、第1被覆層26の材料がアルミニウムである場合は第2被覆層は酸化アルミニウムとなる。酸化アルミニウムは透光性を有するので第2被覆層として好ましい。
【0042】
工程2−3.反射層を形成する工程
第1被覆層の絶縁化処理において絶縁化されるのは、発光素子を覆う第1被覆層のみであり、支持基板上の導電部材は絶縁化されない。そのため、
図4に示すように、電着工程により導電部材上に形成された波長変換層を被覆する反射層60を形成してもよい。尚、反射層60は光反射部材の凝集体とする。反射層60は光反射部材を含む電着浴液中に、発光素子を載置した基体を浸漬し通電させて形成される。第2被覆層27が絶縁化しているので第2被覆層27覆われている部分には反射層60が形成されにくい。導電部材32の上に設けられた波長変換層50上には反射層60を形成することができる。反射層60を形成することによって発光素子20から出射された光が導電部材32上に形成された波長変換層50に吸収されることを抑制できる。
【0043】
工程3.透光性樹脂を形成する工程
波長変換層50及び/又は反射層60の剥がれを更に抑制するために、波長変換層50及び/又は反射層60を被覆する透光性材料を形成してもよい。さらに、波長変換層50及び/又は反射層60の粒子間に透光性材料を含浸させて含浸層を形成することが好ましい。
【0044】
透光性材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。透光性材料を形成する方法としては、ポッティング、スプレー等を用いることができる。
【0045】
また、
図5に示すように透光性樹脂70により発光素子を覆うレンズを形成してもよい。レンズの形成には公知の方法が用いられる。例えば圧縮成形によりレンズを形成することができる。
【0046】
透光性樹脂70を形成することで、更に波長変換層が発光素子から剥がれることを抑制できる。また、発光素子からの剥がれを抑制した波長変換層を形成することで、透光性樹脂を形成するまでの搬送時等でかかる力によって波長変換層が発光素子から剥がれることを抑制できる。
以下、各部材について詳説する。
【0047】
(基体)
基体は、発光素子や保護素子などの電子部品を配置するためのものであり、絶縁性の支持基板と、支持基板の上面に、互いに離間して形成された少なくとも一対の導電部材と、を備える。基体の形状は、例えば、厚みが0.3mm〜0.5mm程度の矩形平板状などのような上面が平坦な形状を有していることが好ましい。
【0048】
支持基板としては、樹脂、セラミック等が挙げられる。樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、BTレジン、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリフタルアミド樹脂、ナイロン樹脂などの熱可塑性樹脂や、これらの変性樹脂又はこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂等が挙げられる。セラミックとしては、アルミナ、窒化アルミニウム等が挙げられる。また、支持基板は単層構造でも積層構造でもよい。また、これらの支持基板には、当該分野で公知の着色剤、充填剤、強化繊維等を含有させてもよい。
【0049】
導電部材は、発光素子と対面する支持基板の面に設けられる。尚、導電部材は支持基板の内部、又は支持基板の発光素子と対面する面と反対側の面に設けられていてもよい。この導電部材は、発光素子等の電子部品に外部電源からの電圧を印加するために用いられる。導電部材としては、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等によって形成することができる。また、導電部材は、発光素子からの光を効率よく取り出すために、その表面が銀又は金などの反射率の高い材料で覆われているのが好ましい。導電部材の厚みは、例えば、5μm〜80μm程度の厚みであることが好ましい。
【0050】
(発光素子)
発光素子は、支持基板上に形成された導電部材上にフリップチップ実装される。発光素子の発光色としては、用途に応じて任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色(波長430〜490nmの光)の発光素子としては、窒化物半導体を用いることができる。その窒化物半導体としては、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1)等を用いることができる。発光素子は、フェイスダウン構造のものを使用することができる。なお、発光素子を実装していない導電部材上に、保護素子を実装してもよい。
【0051】
発光素子は、導電部材上に半導体層、保持基板の順に配置される。半導体層の導電部材と対向する面は、一対の電極を備えている。発光素子の電極の形状は略矩形や円形などの種々の形状に形成することができる。発光素子の電極の材料は導電性であればよく公知の材料が用いられる。
【0052】
(接合部材)
接合部材は、導電部材と、発光素子とを電気的に接続させると共に、発光素子を導電部材上に固定させるための部材である。接合部材は、少なくとも発光素子の電極と導電部材との間に介在するように配置される。接合部材の材料としては、例えば、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Au−Snなどのハンダ材料や、金などの金属バンプ、異方性導電ペーストなどがある。
【0053】
(第1波長変換部材及び第2波長変換部材)
第1波長変換部材及び第2波長変換部材は、発光素子が発する第一ピーク波長の光を、この第一ピーク波長とは波長の異なる第二ピーク波長の光に波長変換する部材である。本明細書で波長変換する部材とは第一ピーク波長と第二ピーク波長の差が10nmより大きいものとする。
【0054】
第1波長変換部材としては、アルミニウムを含み励起されるものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体・酸窒化物系蛍光体・サイアロン系蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、Ce等のランタノイド系元素で主に付活される希土類アルミン酸塩蛍光体、又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。
【0055】
詳細には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(Ce:YAG);セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(Ce:LAG);ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO−Al
2O
3−SiO
2);βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体等の窒化物系蛍光体などが挙げられる。
【0056】
第2波長変換部材は粒子状の母材と、母材の表面を覆う被覆部材とを備える。被覆部材の形成方法は蒸着等の公知の方法を用いることができる。母材の材料としては、第一ピーク波長とは波長の異なる第二ピーク波長の光に波長変換する材料であればよい。母材の材料としては第1波長変換部材に用いることのできる材料だけでなく、アルミニウムを含まない材料を用いてもよい。アルミニウムを含まない母材の材料としては例えばユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、KSF系蛍光体等が挙げられる。尚、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、KSF系蛍光体でもアルミニウムを含む場合には第1波長変換部材に用いてもよい。
【0057】
第2波長変換部材の被覆層の材料としては、アルミニウムを含み透光性を有するものであればよい。被覆層の材料としては、例えば酸化アルミニウムが挙げられる。
【0058】
第2波長変換部材はアルミニウムを含む被覆層に覆われているので、同じ粒径で同じアスペクト比の第1波長変換部材と第2波長変換部材を比較した場合に、第1波長変換部材同士の密着性よりも第2波長変換部材同士の密着性を高くすることができる。電着浴液の電解質として硝酸マグネシウムを用いる場合には、硝酸マグネシウムは電着時の化学反応により水酸化マグネシウムに変化する。この水酸化マグネシウムが発光素子と、第1波長変換部材と、第2波長変換部材と、充填部材と、を結着する役割をする。このため、電着時に電解質である硝酸マグネシウムが多く付着すると密着性が高くなる。
【0059】
第2波長変換部材はアルミニウムを含む被覆層に覆われているので、同じ粒径で同じアスペクト比の第1波長変換部材より電着時に帯電しやすくできる。帯電しやすくした第2波長変換部材は第1波長変換部材より電解質である硝酸マグネシウムが多く付着するので、第2波長変換部材同士の密着性を第1波長変換部材同士の密着性より高くできる。
【0060】
上述したように粒径が大きいほど波長変換部材の光取り出し効率は向上するので、波長変換部材の粒径は大きい方か好ましい。同じ粒径で同じアスペクト比の第1波長変換部材よりも第2波長変換部材の密着性を高くすることができるので、第2波長変換部材の粒径を第1波長変換部材の粒径より大きくする方が好ましい。第1波長変換部材の粒径を第2波長変換部材の粒径より大きくした場合よりも発光素子と波長変換層の密着性を向上させることができる。
【0061】
また、第2波長変換部材のアスペクト比は第1波長変換部材のアスペクト比よりも大きい方が好ましい。同じ粒径で同じアスペクト比の第1波長変換部材よりも第2波長変換部材の密着性を高くすることができるので、第2波長変換部材のアスペクト比を第1波長変換部材のアスペクト比より大きくする方が好ましい。第1波長変換部材のアスペクト比を第2波長変換部材のアスペクト比より大きくした場合よりも発光素子と波長変換層の密着性を向上させることができる。
【0062】
第1波長変換部材の粒径は3.0μm〜9.5μmが好ましい。第1波長変換部材の粒径が3.0μmより小さい場合は、発光素子から出射された光が第1波長変換部材によって散乱されやすくなるので発光装置の出力が低下するおそれがある。第1波長変換部材の粒径が9.5μmより大きい場合は、第1波長変換部材と発光素子とが接する点の間隔が広くなり波長変換層と発光素子の密着性が低下するおそれがある。
【0063】
第2波長変換部材の粒径は5.5μm〜12.0μmが好ましい。第2波長変換部材の粒径が5.5μmより小さい場合は、発光素子から出射された光が第2波長変換部材によって散乱されやすくなるので発光装置の出力が低下するおそれがある。第2波長変換部材は被覆部材によって覆われているため第1波長変換部材より発光素子から出射された光を散乱しやすい。このため、第2波長変換部材の粒径は第1波長変換部材の粒径より大きい方が好ましい。
【0064】
第2波長変換部材の粒径が12.0μmより大きい場合は、第2波長変換部材と発光素子の密着性が低下するおそれがある。第2波長変換部材は被覆部材によって覆われているため同じ粒径で同じアスペクト比の第1波長変換部材よりも密着性を高くできる。このため、第2波長変換部材は第1波長変換部材の粒径より大きい粒径を用いることができる。
【0065】
(充填部材)
充填部材はアルミニウムを含み、実質的に発光素子からの光で励起されない材料であればよい。尚、本明細書における「実質的に発光素子からの光で励起されない」には、全く励起されない場合のほか、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で励起される場合も含まれる。つまり、充填部材は波長変換部材等のような意図して発光素子からの光で励起される材料以外の材料を用いることができる。
【0066】
充填部材は実質的に発光素子からの光で励起されない部材であればよく、第1波長変換部材及び第2波長変換部材より発光素子からの光を吸収しにくい部材を適宜選択できる。このため、波長変換層が第1波長変換部材及び第2波長変換部材の粒径よりも小さい充填部材を備えていても、光取り出し効率の低下を抑制することができる。充填部材の材料としては例えば、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0067】
充填部材の粒径は、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が小さい方の粒径の0.1倍以上0.7倍以下が好ましい。充填部材の粒径が、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が小さい方の粒径の0.1倍より小さい場合は、発光素子から出射された光が散乱されやすくなる。充填部材の粒径が、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が小さい方の粒径の0.7倍より大きい場合は、充填部材が第1波長変換部材と第2波長変換部材の粒子間に配置されにくくなる。
【0068】
充填部材の粒径は、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が大きい方の粒径の0.05倍以上0.5倍以下が好ましい。充填部材の粒径が、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が大きい方の粒径の0.05倍より小さい場合は、発光素子から出射された光が散乱されやすくなる。充填部材の粒径が、第1波長変換部材と第2波長変換部材の内で粒径が大きい方の粒径の0.5倍より大きい場合は、充填部材が第1波長変換部材と第2波長変換部材の粒子間に配置されにくくなる。
【0069】
充填部材の粒径は0.3μm〜9.0μmが好ましい。充填部材の粒径が0.3μmより小さい場合は、発光素子から出射された光が充填部材により散乱されやすくなるので光取り出し効率が低下するおそれがある。充填部材の粒径が9.0μmより大きい場合は、充填部材が第1波長変換部材と第2波長変換部材の粒子間に配置されにくくなり、波長変換層と発光素子の密着性が向上されにくくなる。
【0070】
充填部材はアスペクト比が1.0に近いことで発光素子と波長変換層の密着性が向上されやすくなる。充填部材のアスペクト比は1.0〜1.3であれば、充填部材が第1波長変換部材と第2波長変換部材の粒子間に配置されやすくなるためである。
【0071】
また、充填部材と第2被覆層と被覆部材の3種類が同じ材料の酸化アルミニウムで形成されることが好ましい。このようにすることで、波長変換層と発光素子の密着性が向上するので好ましい。
【0072】
(反射層)
反射層を構成する光反射部材は、発光素子から出射された光、または波長変換層で波長変換された光を効率よく反射させることができる材料が好ましい。例えば、発光素子から出射された光のピーク波長において70%以上反射させることができる材料がより好ましい。また、発光素子から出射された光、または波長変換層で波長変換された光が透過、吸収しにくい材料が好ましい。尚、光反射部材は導電部材が短絡しないために絶縁性の材料であることが好ましい。
【0073】
光反射部材としては、光を反射し得る材料、例えば、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、BaSO
4、MgO等の粉末を用いることで、効率よく光を反射させることができる。これらの材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。