特許第6288091号(P6288091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧

特許6288091熱硬化性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板および電子部品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288091
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20180226BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20180226BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C08G59/20
   H05K3/28 C
   H05K1/03 630C
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-528350(P2015-528350)
(86)(22)【出願日】2014年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2014069649
(87)【国際公開番号】WO2015012381
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-154879(P2013-154879)
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】諸越 信太
(72)【発明者】
【氏名】古田 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】菊地 彩子
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−25894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/20
H05K 1/03
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上のカルボキシル基含有化合物(A)と、
エポキシ当量が400g/eq以上である、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)と
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
[式中、Zは独立に、炭素数8以上の炭化水素、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数)であり、Xは独立に、炭素数1〜50の2価の有機基である。]
【請求項2】
式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)におけるXが独立に、下記群(a)のうちの何れかの基である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)におけるZが独立に、不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸由来の基、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数)である、請求項1〜の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
不飽和脂肪酸が、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ステアロール酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、セトレイン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびニシン酸からなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、エポキシ化合物(B)とは異なるエポキシ化合物(C)を含む、請求項1〜の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
エポキシ化合物(C)が、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、式(C1)〜(C4)で表される化合物、オキシランを有するモノマーの重合体およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】
[式(C1)中、pは1〜50の整数である。]
【請求項7】
さらに溶媒(D)を含有する、請求項1〜の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、カルボキシル基含有化合物(A)以外のエポキシ硬化剤(E)を含有する、請求項1〜の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
エポキシ硬化剤(E)が、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、アミンアダクト、ポリカルボン酸系硬化剤、ポリアミン系硬化剤および触媒型硬化剤からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、請求項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜を有する硬化膜付き基板。
【請求項12】
請求項10に記載の硬化膜または請求項11に記載の硬化膜付き基板を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板および電子部品に関する。さらに詳しくは、特定の化合物を含む熱硬化性樹脂組成物、該組成物から形成された硬化膜、該硬化膜を有する硬化膜付き基板、および、該硬化膜または硬化膜付き基板を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化および高性能化が急速に進んでおり、これらの発展は電子部品の薄型化や小型化により達成されている。特にプリント配線板の分野では、折りたたみ可能なフレキシブル配線板が電子機器の小型化や軽量化に大きく貢献している。
【0003】
フレキシブル配線板は、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの樹脂材料からなる基板の片面または両面に銅などの金属層を貼り付け、該金属層をエッチング処理などをすることにより所定の導体回路パターンを形成し、さらにその導体回路を保護する絶縁膜を形成することで製造されている。
【0004】
ここで使用される絶縁膜には、絶縁性等の電気的特性、はんだ耐熱性、基板に対する密着性、耐屈曲性、エッチング処理などのフレキシブル配線板を形成する上で使用され得る薬品に対する耐性に優れること、絶縁膜付き基板には、絶縁膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくいこと等が求められる。また、近年、基板として、PET(ポリエチレンテレフタラート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の比較的耐熱温度の低い樹脂材料を使用する傾向にあり、このような基板を用いる場合には、基板の耐熱温度以下(例えば、150℃以下)の低温条件で絶縁膜を形成できることが要求される。
このような絶縁膜に使用する材料については各種組成物が検討されている。
【0005】
特許文献1には、特定のカルボキシル基含有化合物とエポキシ化合物を含む熱硬化性組成物が開示されており、特許文献2には、特定のアミド酸を含有する熱硬化性インク組成物が開示されている。しかしながら、これらの特許文献には、フルオレン構造を有するエポキシ樹脂については記載されておらず、フルオレン構造を有するエポキシ樹脂についての具体的検討もなされていない。
また、特許文献3には、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物および硬化剤を含む硬化性組成物が開示されている。
【0006】
しかしながら、いずれの特許文献においても、150℃以下の低温条件で硬化させた膜についての具体的な物性評価等の検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−25894号公報
【特許文献2】特開2013−32501号公報
【特許文献3】特開2012−102228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、150℃以下の低温条件でも、絶縁性等の電気的特性、はんだ耐熱性、基板に対する密着性、耐屈曲性および酸やアルカリなどの薬品に対する耐性に優れる硬化膜、ならびに、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい硬化膜付き基板を形成することが可能な熱硬化性樹脂組成物およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意検討を行った。
例えば、前記特許文献に具体的に記載されている組成物を検討したところ、該組成物を用いて150℃以下の低温条件で得られた硬化膜は、絶縁性等の電気的特性、はんだ耐熱性、基板に対する密着性、耐屈曲性、酸やアルカリなどの薬品に対する耐性、または膜形成時の収縮に伴う耐反り性に優れる硬化膜ではなかった。
【0010】
本発明者らは、前記知見を踏まえて、様々な検討をした結果、下記構成を有する熱硬化性樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば以下の[1]〜[13]に関する。
【0011】
[1] 式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上のカルボキシル基含有化合物(A)と、
フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)と
を含む熱硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化1】
[式中、Zは独立に、炭素数8以上の炭化水素、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数)であり、Xは独立に、炭素数1〜50の2価の有機基である。]
【0013】
[2] エポキシ化合物(B)が、エポキシ当量が400g/eq以上である、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物を含む、[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0014】
[3] 式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)におけるXが独立に、下記群(a)のうちの何れかの基である、[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化2】
【0016】
[4] 式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)におけるZが独立に、不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸由来の基、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数)である、[1]〜[3]の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0017】
[5] 不飽和脂肪酸が、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ステアロール酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、セトレイン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびニシン酸からなる群より選択される1種以上の化合物である、[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0018】
[6] さらに、エポキシ化合物(B)とは異なるエポキシ化合物(C)を含む、[1]〜[5]の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0019】
[7] エポキシ化合物(C)が、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、式(C1)〜(C4)で表される化合物、オキシランを有するモノマーの重合体およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、[6]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【化3】
[式(C1)中、pは1〜50の整数である。]
【0020】
[8] さらに溶媒(D)を含有する、[1]〜[7]の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0021】
[9] さらに、カルボキシル基含有化合物(A)以外のエポキシ硬化剤(E)を含有する、[1]〜[8]の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
[10] エポキシ硬化剤(E)が、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、アミンアダクト、ポリカルボン酸系硬化剤、ポリアミン系硬化剤および触媒型硬化剤からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、[9]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0022】
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物から得られる硬化膜。
[12] [11]に記載の硬化膜を有する硬化膜付き基板。
[13] [11]に記載の硬化膜または[12]に記載の硬化膜付き基板を有する電子部品。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、絶縁性等の電気的特性、はんだ耐熱性、基板、特に銅やポリイミド等からなる基板に対する密着性、耐屈曲性および酸やアルカリなどの薬品に対する耐性に優れる硬化膜、ならびに、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい硬化膜付き基板を、150℃以下という低温条件下でも得ることができる。また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、バランスよくこれら効果を有する硬化膜を形成することができるため、非常に実用性の高い組成物であり、様々な用途に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)、該組成物の調製方法、硬化膜の形成方法、硬化膜付き基板および電子部品について詳細に説明する。
なお、本発明において、符号の異なる化合物は異なる化合物を示す。例えば、化合物(B)は化合物(A)以外の化合物である。
【0025】
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の組成物は、特定のカルボキシル基含有化合物(A)およびフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)を含有する。本発明の組成物は、前記成分のほか、エポキシ化合物(B)とは異なるエポキシ化合物(C)(以下では「その他のエポキシ化合物(C)」ということがある)、溶媒(D)およびカルボキシル基含有化合物(A)以外のエポキシ硬化剤(E)(以下では「エポキシ硬化剤(E)」ということがある)等の添加剤を含有してもよく、有色、無色のどちらであってもよい。
このような本発明の組成物によれば、絶縁性等の電気的特性、はんだ耐熱性、基板に対する密着性、耐屈曲性および酸やアルカリなどの薬品(具体的には、前記金属層をエッチングする際などに用いられる薬品)に対する耐性に優れる硬化膜、ならびに、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい硬化膜付き基板を、150℃以下という低温条件下でも得ることができる。
【0026】
1.1. カルボキシル基含有化合物(A)
カルボキシル基含有化合物(A)(以下では「化合物(A)」ということがある)は、式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
化合物(A)は、カルボキシル基を有しているため、エポキシ硬化剤として作用する。すなわち、加熱処理により、化合物(A)のカルボキシル基とエポキシ化合物(B)のオキシラン環またはオキセタン環とが反応して硬化が進み、硬化膜が形成される。この硬化膜は、基板との良好な密着性を示し、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい。
このような化合物(A)を特定のエポキシ化合物(B)と組み合わせて使用することで初めて、前記効果を有する組成物となる。
化合物(A)は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明の組成物中の化合物(A)の濃度は、1〜80重量%が好ましく、5〜60重量%がより好ましい。この濃度範囲であると、本発明の組成物から得られる硬化膜は、基板に対する密着性、耐屈曲性および酸やアルカリに対する耐性が良好となり、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくく、また、これらのバランスのとれたものとなる。
【0028】
【化4】
[式中、Zは独立に、炭素数8以上の炭化水素、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数)であり、Xは独立に、炭素数1〜50の2価の有機基である。]
【0029】
Zにおける炭素数8以上の炭化水素としては、好ましくは炭素数12以上の炭化水素、より好ましくは炭素数18以上の炭化水素、さらに好ましくは炭素数26以上の炭化水素であり、特に好ましくは炭素数28以上の炭化水素である。なお、Zにおける炭化水素の炭素数の上限は、特に制限されないが、好ましくは60であり、より好ましくは48であり、さらに好ましくは40である。
【0030】
Zにおける−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基中のnとしては、本発明の組成物中に含まれる他の成分との相溶性に優れる化合物が得られ、基板、特に金属に対する密着性に優れる硬化膜が得られる等の点から、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましく、1〜3の整数がさらに好ましい。
【0031】
Zは独立に、不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸由来の基、または、−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基(nは0〜10の整数であり、好ましくは前述の範囲である。)であることが、得られる化合物(A)を含む組成物から形成される硬化膜の基板、特に銅に対する密着性および耐屈曲性等の点から好ましい。
不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸由来の基としては、不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸を還元的アミノ化反応させることで得られるジアミンからアミノ基を除いた基が挙げられる。
【0032】
ダイマー酸とは、不飽和脂肪酸が分子間重合反応等によって二量化して得られる二塩基酸である。ダイマー酸は、例えば、ルイス酸またはブレンステッド酸を触媒として用いて、不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる。ダイマー酸は、公知の方法(例:特開平9−12712号公報)で製造することができる。
ダイマー酸は、通常、分子内に二重結合が存在するが、本発明では、水素添加反応により、分子内に存在する二重結合が還元されて飽和二塩基酸となったものもダイマー酸に含めるものとする。
【0033】
なお、ダイマー酸は、合成条件および精製条件にもよるが、通常はダイマー酸の他、モノマー酸やトリマー酸等も少量含まれる。
例えば、リノール酸を用いてダイマー酸を製造する場合、得られる混合物は一般的に炭素数36のダイマー酸を主成分として含むが、炭素数18のモノマー酸および炭素数54のトリマー酸も副成分として少量含むのが一般的であり、原料由来の様々な構造を含む。
【0034】
不飽和脂肪酸の炭素数は、通常4〜24、好ましくは14〜20である。
不飽和脂肪酸としては、例えば、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ステアロール酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、セトレイン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸およびニシン酸が挙げられる。
【0035】
不飽和脂肪酸から得られたダイマー酸を還元的アミノ化反応させることで得られるジアミンは合成して得てもよく、市販品でもよい。市販品としては、例えば、バーサミン551(商品名、BASFジャパン(株)製)、プリアミン1074(商品名、クローダジャパン(株)製)が挙げられる。ダイマー酸型ジアミンは、ダイマー酸の還元的アミノ化反応によって得られたジアミンを水素添加してなる化合物も含み、その市販品としては、例えば、バーサミン552(商品名、BASFジャパン(株)製)が挙げられる。
【0036】
Xは独立に、本発明の組成物に含まれる他の成分との相溶性、化合物(A)を合成する際の反応性等の点から、炭素数1〜40の2価の有機基が好ましく、炭素数1〜30の2価の有機基がより好ましく、−R1−(R1は炭素数2〜4の炭化水素である。)または−ph−(phはベンゼン環である。)[なお、R1およびphは炭素数1〜25の有機基で置換されていてもよい。]であることがさらに好ましく、下記群(a)のうちの何れかの基であることが特に好ましい。
【0037】
前記有機基としては、炭化水素基、または、炭化水素基の一部が−C(CF32−、−CO−、−COOH、−S−もしくは−SO2−で置換されていてもよい基が挙げられる。この炭化水素基としては、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。不飽和炭化水素基である場合には、二重結合を有している基であることが好ましい。
【0038】
【化5】
【0039】
化合物(A)は、下記アミド酸(i)および下記化合物(ii)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
後述する式(1)で表されるアミノ化合物(a1)と、酸無水物(a2)とを反応させて得られたアミド酸(以下「アミド酸(i)」ともいう。)
アミド酸(i)またはその部分イミド化物(以下「イミド化物(i)」ともいう。)と、酸無水物(a2')とを反応させて得られた化合物(以下「化合物(ii)」ともいう。)
1モルのアミノ化合物(a1)と2モル以上の酸無水物(a2)とを反応させて得られた化合物(ii)
【0040】
以下、アミノ化合物(a1)、酸無水物(a2)および酸無水物(a2’)などの反応原料、ならびに化合物(A)の合成時に使用してもよい反応溶媒(a3)について説明した後、化合物(A)の合成条件について説明する。
【0041】
1.1.1. アミノ化合物(a1)
アミノ化合物(a1)は、式(1):H2N−Z−Y(Yはアミノ基またはヒドロキシル基であり、Zは式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−4)におけるZと同義であり、好ましい例も同様である。)で表される。
アミノ化合物(a1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
Zが炭素数8以上の炭化水素であり、Yがアミノ基であるアミノ化合物(a1)としては、前述のダイマー酸型ジアミンやその水素添加物等が挙げられる。
【0043】
Zが−(CH2CH2−O)n−CH2CH2−で表される基であるアミノ化合物(a1)としては、2−アミノエタノール、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテルが挙げられる。これらの中でも、本発明の組成物中に含まれる他の成分との相溶性に優れる化合物が得られ、金属に対する密着性に優れる硬化膜が得られる等の点から、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテルが好ましい。
【0044】
1.1.2. 酸無水物(a2)
酸無水物(a2)は、酸無水物基を有する化合物であれば特に制限されないが、酸無水物基を1つ有する化合物(一無水物)であることが好ましい。
酸無水物(a2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
一無水物としては、式(2)で表される化合物、テトラプロペニルコハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、2−ドデセン−1−イルコハク酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−t−ブチルフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,3−シクロへキサンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物などが挙げられる。
【0046】
【化6】
[式(2)中、X'は、前記群(a)のうちの何れかの基である。]
【0047】
これらの中でも、化合物(A)の濃度が高い組成物(該組成物はインクジェット用インクとして好適に使用することができる。)を調製できる点で、式(2)で表される化合物、すなわちコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、フタル酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物およびcis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物が好ましく、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、コハク酸無水物、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0048】
1.1.3. 酸無水物(a2’)
アミド酸(i)またはイミド化物(i)と反応させる酸無水物(a2’)としては、酸無水物基を1つ有する化合物であることが好ましく、酸無水物(a2)と同様の化合物が挙げられ、好ましい化合物も酸無水物(a2)と同様である。
酸無水物(a2’)は、酸無水物(a2)と同一でも異なっていてもよい。
酸無水物(a2’)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
1.1.4. 反応溶媒(a3)
化合物(A)を合成する際には、通常、反応溶媒(a3)を用いる。
反応溶媒(a3)としては、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、メチルエチルスルホキシド、ジメチルスルホキシドおよびメチルスルホキシドなどが挙げられる。
また、これらの溶媒以外の溶媒を、さらに混合して用いることもできる。
反応溶媒(a3)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
化合物(A)の合成が完了したときに反応溶媒(a3)が残存している場合には、該反応溶媒(a3)を溶媒(D)として用いることもできる。反応溶媒(a3)の中でも、本発明の組成物中の他の成分との相溶性がよい等の点から、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0051】
<カルボキシル基含有化合物(A)の合成条件>
―アミド酸(i)またはイミド化物(i)―
アミド酸(i)は、アミノ化合物(a1)および酸無水物(a2)を混合して、穏やかな反応条件下で合成することができる。穏やかな反応条件とは、例えば、常圧下、温度5〜60℃、反応時間0.2〜20時間で、好ましくは温度5〜30℃、反応時間0.2〜10時間で、触媒を使用することなく、酸無水物(a2)の酸無水物基が反応により開環して生じたカルボキシル基を活性化させることなく反応させる、という条件である。カルボキシル基の活性化とは、例えば、酸クロリドへの変換である。
前記の穏やかな反応条件では、アミノ化合物(a1)のアミノ基やヒドロキシル基と酸無水物(a2)の酸無水物基とが反応して生じたカルボキシル基がアミノ化合物(a1)のアミンと反応したり、イミド化したりすることがないため、カルボキシル基を有するアミド酸(i)を得ることができる。
【0052】
アミド酸(i)の部分イミド化は、熱的方法あるいは脱水触媒および脱水剤を用いた化学的方法で行うことができるが、合成後の混合物を、精製処理を行わないで本発明の組成物の調製材料として使用できる等の点から、熱的方法で行うことが好ましい。
なお、本発明において、部分イミド化とは、前記(i)において、アミノ化合物(a1)として、両末端がアミノ基である化合物を用い、該化合物の両末端が酸無水物(a2)と反応した場合、その一方のみがイミド化することをいう。
【0053】
部分イミド化は、例えば、常圧下、温度が通常50〜200℃、好ましくは60〜180℃、反応時間が通常0.2〜20時間、好ましくは0.5〜10時間で、触媒を使用しない加熱工程により行うことができる。この加熱工程により、イミド化物(i)を得ることができる。
【0054】
また、前記の緩やかな反応条件に代えて、アミド酸(i)の合成およびそのイミド化を前記加熱工程により行ってもよい。すなわち、アミノ化合物(a1)および酸無水物(a2)を混合して、前記加熱工程下で反応を進め、イミド化物(i)を合成してもよい。
【0055】
アミノ化合物(a1)の仕込み量は、酸無水物(a2)の酸無水物基数1モルに対して、通常0.1〜3モル、好ましくは0.5〜2モルである。
【0056】
―化合物(ii)―
アミド酸(i)またはそのイミド化物(i)を合成する際に、アミノ化合物(a1)の仕込み量を、酸無水物(a2)の酸無水物基数1モルに対して1モルよりも多くした場合、アミノ化合物(a1)由来の未反応のヒドロキシル基あるいはアミノ基が存在する。この場合、前記アミド酸(i)またはそのイミド化物(i)と、さらに酸無水物(a2’)とを反応させてもよい。このようにして、カルボキシル基を含有する化合物(ii)を合成することができる。
なお、前記のようにして得られたアミド酸(i)またはイミド化物(i)は、精製処理により単離した後、酸無水物(a2’)と反応させてもよく、前記のようにして得られたアミド酸(i)またはイミド化物(i)を含む溶液に酸無水物(a2’)を添加して、酸無水物(a2’)を反応させてもよい。
【0057】
また、化合物(ii)は、1モルのアミノ化合物(a1)と2モル以上、好ましくは2〜4モルの酸無水物(a2)とを反応させることでも得ることができる。
【0058】
これらの反応は、例えば、常圧下、温度が通常10〜200℃、好ましくは20〜180℃、反応時間が通常0.2〜20時間、好ましくは0.5〜10時間という条件で行うことができる。
【0059】
酸無水物(a2’)の仕込み量は、アミド酸(i)またはイミド化物(i)1モルに対して、通常0.1〜3モル、好ましくは0.5〜2モルである。
なお、全仕込み量という観点からは、化合物(A)の合成において、アミノ化合物(a1)のモル数をna1、酸無水物(a2)および(a2’)の合計のモル数をna2とした時、モル比(na1/na2)を、通常0.1〜5.0、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.1〜3.0に設定すればよい。
本発明の組成物中の他の成分との相溶性に優れる化合物が得られ、基板、特に金属との密着性に優れる硬化膜が得られる等の点から、前記モル比が好ましい。
【0060】
反応溶媒(a3)の全使用量は、反応をスムーズに進める観点から、アミノ化合物(a1)と酸無水物(a2)と酸無水物(a2’)との合計100重量部に対して、通常100重量部以上、好ましくは100〜500重量部である。
以上のようにして得られた反応液または混合液には、化合物(A)および反応溶媒(a3)などが含まれる。この化合物(A)を含む反応液または混合液は、そのまま本発明の組成物の調製材料として用いてもよく、化合物(A)を単離して本発明の組成物の調製材料として用いてもよい。
【0061】
<反応原料の反応系への添加順序>
反応原料の反応系への添加順序は、特に限定されない。
アミド酸(i)の合成では、例えば、アミノ化合物(a1)と酸無水物(a2)とを同時に反応溶媒(a3)に加える方法、酸無水物(a2)を反応溶媒(a3)中に溶解させた後にアミノ化合物(a1)を加える方法、アミノ化合物(a1)を反応溶媒(a3)中に溶解させた後に酸無水物(a2)を加える方法など、何れの方法も用いることができる。
化合物(ii)の合成では、例えば、上述のようにしてアミノ化合物(a1)と酸無水物(a2)とを反応させた後、得られたアミド酸(i)またはイミド化物(i)を単離し、単離物と酸無水物(a2’)と反応溶媒(a3)とを混合する方法、上述のようにしてアミノ化合物(a1)と酸無水物(a2)とを反応させた後、さらに酸無水物(a2’)を加える方法など、何れの方法も用いることができる。また、アミノ化合物(a1)と酸無水物(a2)(一部が酸無水物(a2’)に相当することになる。)と反応溶媒(a3)とを混合して、化合物(ii)を合成してもよい。
【0062】
<アミド酸(i)および化合物(ii)の具体例>
アミド酸(i)の具体例としては、式(i−1)〜(i−2)および(ii−1)〜(ii−2)で表される化合物が挙げられる。
化合物(ii)の具体例としては、式(ii−1)〜(ii−4)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
1.2. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)
本発明に用いられるフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)(以下では「エポキシ化合物(B)」ということがある)は、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物であれば特に限定されない。
このようなエポキシ化合物(B)は、分解温度が高く、耐熱安定性に優れるため、前記効果に加え、これらの効果を併せ持つ硬化膜を得ることができる。
エポキシ化合物(B)は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、本発明の成物中の他の成分との相溶性、得られる硬化膜の屈曲性等の点から、好ましくは200〜550g/eqであり、より好ましくは220〜530g/eq、さらに好ましくは230〜510g/eqである。
また、本発明の組成物は、基板に対する密着性および耐屈曲性が良好な硬化膜が得られ、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい硬化膜付き基板が得られる等の点から、エポキシ当量が400g/eq以上の、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましく、エポキシ当量が450g/eq以上の、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物を含むことがより好ましい。
エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、例えばJIS K7236に記載の方法で測定することができる。
【0065】
エポキシ化合物(B)の屈折率は、耐薬品性に優れる硬化膜が得られる等の点から、好ましくは1.50〜1.75であり、より好ましくは1.52〜1.73であり、さらに好ましくは1.54〜1.71である。
エポキシ化合物(B)の屈折率は、例えばJIS K7105やJIS K7142に記載の方法で測定することができる。
【0066】
エポキシ化合物(B)は、合成して得てもよく、市販品でもよい。
エポキシ化合物(B)の市販品としては、例えば、OGSOL PG−100(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.64、エポキシ当量259g/eq)、OGSOL CG−500(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.70、エポキシ当量311g/eq)、OGSOL EG−200(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.62、エポキシ当量292g/eq)、OGSOL EG−250(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.58、エポキシ当量417g/eq)、OGSOL EG−280(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.56、エポキシ当量467g/eq)、OGSOL CG−400(屈折率1.53、エポキシ当量540g/eq)が挙げられる。
【0067】
エポキシ化合物(B)として、エポキシ当量が400g/eq以上で屈折率が1.57以下の化合物、例えばOGSOL EG−280を使用した場合、特に、基板に対する密着性および耐屈曲性が良好な硬化膜が得られ、膜形成時の収縮に伴う反りが起こりにくい硬化膜付き基板が得られる。一方で、得られる硬化膜は、酸やアルカリ水溶液に対する耐性が低下する傾向にあるため、エポキシ当量が400g/eq未満で屈折率が1.57以上のエポキシ化合物を併用することでこれらの特性にバランス良く優れる硬化膜が得られる。
【0068】
例えば、エポキシ化合物(B)としてOGSOL EG−280と、OGSOL EG−200またはOGSOL CG−500とを併用した場合、全エポキシ化合物(B)中、OGSOL EG−280の配合量を40〜90重量%にすると、酸やアルカリ水溶液に対する耐性および耐屈曲性に優れ、かつ、これらのバランスのとれた硬化膜が得られるため好ましく、さらに好ましくは50〜80重量%である。
【0069】
また、例えば、OGSOL EG−280と、化合物(C)として「TECHMORE VG3101L」((株)プリンテック製)とを併用した場合、全エポキシ化合物(化合物(B)+化合物(C))中、OGSOL EG−280の配合量を5〜40重量%にすると、酸やアルカリ水溶液に対する耐性および耐屈曲性に優れ、かつ、これらのバランスのとれた硬化膜が得られるため好ましく、さらに好ましくは10〜35重量%である。
【0070】
エポキシ化合物(B)の含有量は、耐薬品性およびはんだ耐熱性に優れる硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物100重量%に対し、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは3〜40重量%であり、化合物(A)100重量部に対し、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは30〜380重量部、さらに好ましくは50〜350重量部である。
【0071】
1.3. その他のエポキシ化合物(C)
本発明の組成物はその他のエポキシ化合物(C)(以下では単に「エポキシ化合物(C)」ということがある)をさらに含有することが好ましい。本発明では、オキシラン環またはオキセタン環を1つ以上有する化合物をエポキシ化合物という。本発明において、エポキシ化合物(C)としては、エポキシ化合物(B)以外のエポキシ化合物を指す。エポキシ化合物(C)としては、オキシラン環を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。
エポキシ化合物(C)は、1種のみを用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
エポキシ化合物(C)としては、例えば、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、式(C1)〜(C4)で表される化合物、オキシランを有するモノマーの重合体、オキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0073】
【化7】
[式(C1)中、pは1〜50の整数である。]
【0074】
オキシラン環を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートのことを指し、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルのことを指す。
【0075】
オキシラン環を有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0076】
オキシラン環を有するモノマーの重合体およびオキシラン環を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、スチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。本発明の組成物がこれらのエポキシ化合物を含有すると、該組成物から形成された硬化膜のはんだ耐熱性が良好となるため好ましい。
【0077】
エポキシ化合物(C)の中でも、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび式(C1)〜(C4)で表される化合物が好ましい。
【0078】
エポキシ化合物(C)の市販品としては、商品名「jER807」、「jER815」、「jER825」、「jER827」、「jER828」、「jER828EL」、「jER871」、「jER872」、「jER190P」、「jER191P」、「jER1001」、「jER1004」、「jER1004AF」、「jER1007」、「jER1032H60」、「jER1256」、「jER157S70」(以上、三菱化学(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、「アラルダイトCY184」(以上、BASF社製)、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「セロキサイド8000」、「EHPE−3150」(以上、(株)ダイセル製)、商品名「TECHMORE VG3101L」((株)プリンテック製)、「HP7200」、「HP7200H」、「HP7200HH」(以上商品名、DIC(株)製)、「NC−3000」、「NC−3000H」、「EPPN−501H」、「EOCN−102S」、「EOCN−103S」、「EOCN−104S」、「EPPN−501H」、「EPPN−501HY」、「EPPN−502H」、「EPPN−201−L」(以上商品名、日本化薬(株)製)、「TEP−G」(商品名、旭有機材工業(株)製)、「MA−DGIC」、「Me−DGIC」、「TG−G」(以上商品名、四国化成工業(株)製)、「TEPIC−VL」(商品名、日産化学工業(株)製)、「FLEP−10」、「FLEP−50」、「FLEP−60」、「FLEP−80」(以上商品名、東レチオコール(株)製)などが挙げられる。これらの中でも、はんだ耐熱性および基板への密着性が特に良好な硬化膜が得られる等の点から、商品名「アラルダイトCY184」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「TECHMORE VG3101L」、商品名「jER828」、商品名「jER828EL」が好ましい。
【0079】
本発明の組成物中のエポキシ化合物(C)の濃度は特に限定されないが、10〜80重量%が好ましく、15〜70重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、本発明の組成物から形成された硬化膜の耐熱性、酸やアルカリに対する耐性が良好となるため好ましい。
【0080】
1.4. 溶媒(D)
本発明の組成物は、溶媒(D)をさらに含有することが好ましい。溶媒(D)は、化合物(A)およびエポキシ化合物(B)を溶解することができる溶媒であることが好ましい。また、単独では化合物(A)またはエポキシ化合物(B)を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することによって、溶媒(D)として用いることも可能になる場合がある。
溶媒(D)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0081】
溶媒(D)の沸点は、通常150〜300℃、好ましくは150〜250℃である。
溶媒(D)としては、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0082】
溶媒(D)の中でも、本発明の組成物中の他の成分との相溶性が良い点で、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0083】
溶媒(D)は、本発明の組成物における固形分濃度(溶媒以外の成分の濃度)が20〜80重量%となるような割合で、特に20〜70重量%となる割合で用いることが好ましい。なお、固形分とは、組成物中の溶媒以外の全成分をいう。化合物(A)の合成時に得られた反応液または混合液をそのまま他の成分と混合する場合には、前記溶媒には化合物(A)の合成時に使用した反応溶媒(a3)も含まれる。
【0084】
1.5. エポキシ硬化剤(E)
得られる硬化膜のはんだ耐熱性および酸やアルカリ水溶液に対する耐性をより向上させるために、本発明の組成物はさらに、化合物(A)以外のエポキシ硬化剤(E)を含有してもよい。エポキシ硬化剤(E)としては、酸無水物系硬化剤、フェノール樹脂系硬化剤、アミンアダクト、ポリカルボン酸系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、触媒型硬化剤などが挙げられる。
エポキシ硬化剤(E)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
エポキシ硬化剤(E)を用いる場合、本発明の組成物中、エポキシ硬化剤(E)は、化合物(A)100重量部に対して、通常0重量部を超えて100重量部以下、好ましくは0重量部を超えて80重量部以下、より好ましくは0重量部を超えて70重量部以下の範囲で含まれる。
また、熱硬化性に優れる組成物が得られ、耐薬品性に優れる硬化膜が得られる等の点から、化合物(A)とエポキシ硬化剤(E)の総和は、エポキシ化合物(B)およびエポキシ化合物(C)の総和100重量部に対して、好ましくは25〜75重量部、より好ましくは30〜70重量部、さらに好ましくは35〜65重量部の範囲で含まれる。
【0086】
酸無水物系硬化剤としては、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、スチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0087】
フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;パラキシリレン変性ノボラック樹脂、メタキシリレン変性ノボラック樹脂、オルソキシリレン変性ノボラック樹脂等の変性ノボラック樹脂;ロジン変性フェノール樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール型樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、トリフェノールアルカン型樹脂およびその重合体等のフェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0088】
アミンアダクトとしては、アミンとエポキシ化合物との反応生成物、ジアミンと酸無水物とエポキシ化合物との反応生成物が挙げられるが、これらに限られない。
アミンとエポキシ化合物との反応性生物の具体例としては、S510(商品名、JNC(株)製)と4−ベンジルピペリジンとの反応生成物、S510(JNC(株)製)と3,5−ジメチルピペリジンとの反応生成物、jER828EL(商品名、三菱化学(株)製)と3,5−ジメチルピペリジンとの反応生成物、jER828EL(三菱化学(株)製)と4−ヒドロキシピペリジンとの反応生成物が挙げられる。
【0089】
ジアミンと酸無水物とエポキシ化合物との反応生成物の具体例としては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン1モルおよび無水マレイン酸1モルの反応物と、S510(JNC(株)製)2モルとの反応生成物、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン1モルおよび3−(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド1モルの反応物と、S510(JNC(株)製)2モルとの反応生成物、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン1モルおよび無水マレイン酸1モルの反応物と、N−グリシジルフタルイミド2モルとの反応生成物、ポレアSL−100A(商品名、イハラケミカル工業(株)製)1モルおよび無水マレイン酸1モルの反応物と、S510(JNC(株)製)2モルとの反応生成物などが挙げられる。
【0090】
ポリカルボン酸系硬化剤としては、オキシジフタル酸無水物1モルとイソロイシン2モルとの反応生成物、オキシジフタル酸無水物1モルとロイシン2モルとの反応生成物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物1モルとロイシン2モルとの反応生成物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物1モルとイソロイシン2モルとの反応生成物などが挙げられる。
【0091】
ポリアミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、イソホロンジアミン、m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジエチルジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
【0092】
触媒型硬化剤としては、例えば3級アミン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
【0093】
1.6. その他の添加剤
本発明の組成物は、目的とする特性に応じて、化合物(A)、エポキシ化合物(B)および(C)、溶媒(D)ならびにエポキシ硬化剤(E)以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、重合性モノマー、帯電防止剤、カップリング剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、界面活性剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマーが挙げられる。また、本発明の組成物は、顔料または染料を含有してもよい。
添加剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0094】
1.6.1. 重合性モノマー
重合性モノマーとしては、例えば、単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレート、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
重合性モノマーは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
本発明の組成物中の重合性モノマーの濃度は特に限定されないが、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。この濃度範囲であると、本発明の組成物から形成される硬化膜の耐薬品性および平坦性が良好となる。
【0096】
単官能重合性モノマーは、重合性の不飽和二重結合を1つ有する化合物であり、その具体例としては特に制限されないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、ビニルトルエン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、こはく酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]が挙げられる。
【0097】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0098】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0099】
1.6.2. 帯電防止剤
帯電防止剤は、本発明の組成物の帯電を防止するために使用することができ、本発明の組成物中、0.01〜1重量%含まれることが好ましい。
帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物などの金属酸化物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。
帯電防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0100】
1.6.3. カップリング剤
カップリング剤としては、特に限定されるものではなく、シランカップリング剤などの公知のカップリング剤を用いることができる。カップリング剤は、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶媒を除いた残分)100重量%に対し、10重量%以下になるように添加して用いられることが好ましい。
なお、本発明において、カップリング剤とは、エポキシ基などの反応性官能基とアルコキシ基などの加水分解性基を有する化合物のことをいい、オキシラン環やオキセタン環を有し、アルコキシシラン構造を有する化合物はカップリング剤とする。
カップリング剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0101】
シランカップリング剤としては、例えば、トリアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物が挙げられる。好ましくは、例えば、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0102】
これらの中でも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0103】
1.6.4. 酸化防止剤
本発明の組成物が酸化防止剤を含有することで、該組成物から得られる硬化膜が高温または光に曝された場合の劣化を防止することができる。
酸化防止剤は、該酸化防止剤を除く組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量部に対し、0.1〜3重量部添加して用いることが好ましい。
酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物などが挙げられる。具体的には、IRGAFOS XP40、IRGAFOS XP60、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L(以上商品名、BASF社製)等が挙げられる。
【0105】
1.6.5. 界面活性剤
本発明の組成物が界面活性剤を含有することで、下地基板への濡れ性、レベリング性または塗布性が向上した組成物を得ることができる。
界面活性剤は、本発明の組成物100重量%に対し、0.01〜1重量%となる量で用いられることが好ましい。
界面活性剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0106】
界面活性剤としては、本発明の組成物の塗布性を向上できる等の点から、例えば、商品名「BYK−300」、「BYK−306」、「BYK−335」、「BYK−310」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−370」(ビックケミー・ジャパン(株)製)、「KP−112」、「KP−326」、「KP−341」(以上、信越化学工業(株)製)等のシリコン系界面活性剤;商品名「BYK−354」、「BYK−358」、「BYK−361」(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のアクリル系界面活性剤;商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0107】
1.6.6. 顔料または染料
顔料としては、例えば、炭化珪素、アルミナ、マグネシア、シリカ、酸化亜鉛および黒鉛からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
染料としては、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料が挙げられる。アゾ染料の例としては「VALIFAST BLACK 3810」、「VALIFAST BLACK 3820」、「VALIFAST RED 3304」、「VALIFAST RED 3320」、「OIL BLACK 860」(以上商品名、オリエント化学工業(株)製)が挙げられる。
顔料および染料はそれぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0108】
2. 熱硬化性樹脂組成物の調製方法
本発明の組成物は、化合物(A)およびエポキシ化合物(B)と、必要に応じてエポキシ化合物(C)、溶媒(D)、エポキシ硬化剤(E)およびその他の添加剤などとを混合することによって調製することができる。
【0109】
また、本発明の組成物は、化合物(A)の合成時に得られた反応液あるいは混合液をそのまま、エポキシ化合物(B)および、必要に応じて用いられるエポキシ化合物(C)、溶媒(D)、エポキシ硬化剤(E)や、その他の添加剤などと混合することによって調製することもできる。
【0110】
3. 硬化膜の形成方法
本発明の硬化膜は、前記本発明の組成物から得られる膜であれば特に制限されない。本発明の硬化膜は、例えば、本発明の組成物を、基板上に塗布し、加熱することにより得ることができる。
以下、本発明の組成物について、塗布方法および硬化方法について説明する。
【0111】
3.1. 熱硬化性樹脂組成物の塗布方法
基板上への本発明の組成物の塗布は、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、スリットコート法、バーコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法およびインクジェット印刷法など従来から公知の方法により行うことができる。
【0112】
例えば、本発明の組成物から、パターン状の導体回路を保護する絶縁膜を形成する場合、パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法およびインクジェット印刷法などの印刷法が好ましい。
【0113】
前記基板としては、特に限定されるものではなく公知の基板を用いることができるが、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3またはE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジン基板;銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロムまたはステンレス等の金属からなる基板(これらの金属からなる層を表面に有する基板であってもよい);酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネルまたはスポジュメン等の無機物からなる基板(これらの無機物を含む層を表面に有する基板であってもよい);PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマーまたは液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(これらの樹脂含む層を表面に有する基板であってもよい);シリコン、ゲルマニウムまたはガリウム砒素等の半導体基板;ガラス基板;酸化スズ、酸化亜鉛、ITOまたはATO(酸化アンチモンスズ)等の電極材料(配線)が表面に形成された基板;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)またはγGEL(ガンマゲル)(以上、(株)タイカの登録商標)等のゲルシート;が挙げられる。
【0114】
本発明の組成物は、好ましくはガラス基板、ITO基板、樹脂製フィルム基板またはこれらの基板上に導体回路が形成された基板上に塗布され、本発明の効果がより発揮できる等の点から、より好ましくは、フレキシブル配線板に多く使用されているポリイミド基板や銅からなる回路が形成されたポリイミド基板上に塗布される。
【0115】
3.2. 熱硬化性樹脂組成物の硬化方法
前記塗布工程の後に、基板上に塗布された組成物を加熱することで硬化膜を得ることができる。このようにして硬化膜を形成する方法としては、好ましくは、塗布工程の後にホットプレートまたはオーブンなどで加熱することにより、溶媒を気化などさせて除去し(乾燥処理)、その後、さらに加熱する(硬化処理)方法が用いられる。
【0116】
乾燥処理の条件は、用いる組成物に含まれる各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常、加熱温度は70〜120℃であり、加熱時間は、オーブンなら5〜15分間、ホットプレートなら1〜10分間である。このような乾燥処理により、基板上に形状を保持できる程度の塗膜を形成することができる。
【0117】
前記塗膜を形成した後、通常100〜300℃、好ましくは120〜250℃で硬化処理をする。このとき、オーブンを用いた場合では、通常10〜120分間、ホットプレートを用いた場合では、通常5〜30分間加熱処理することによって最終的な硬化膜を得ることができる。
なお、硬化処理は、加熱処理に限定されず、紫外線、イオンビーム、電子線またはガンマ線照射などの処理でもよい。
【0118】
本発明の組成物を用いれば、前記乾燥処理および硬化処理を低温条件下で行っても、前記効果を有する硬化膜を得ることができる。このため、本発明の組成物を用いれば、該組成物を塗布する対象(基板など)に影響を受けず、優れた物性を有する硬化膜、さらには絶縁膜を形成することができる。従って、本発明の組成物は、比較的耐熱温度の低い樹脂材料上に硬化膜を形成したい時に特に有効な組成物である。
前記低温条件としては、特に制限されないが、例えば、150℃以下の温度であり、好ましくは120〜150℃である。
【0119】
4. 硬化膜付き基板
本発明の硬化膜付き基板は、本発明の硬化膜を有すれば特に制限されないが、前記基板、特に、ガラス基板、ITO基板、ポリイミドなどの樹脂製フィルム基板およびこれらの基板上に導体回路が形成された基板からなる群より選ばれる少なくとも1種類の基板上に上述の硬化膜を有することが好ましい。
このような硬化膜付き基板は、例えば、ガラス、ITO、ポリイミド、PET、PEN等からなる基板およびこれらの基板上に導体回路が形成された基板上に、本発明の組成物を前記塗布法等によって全面または所定のパターン状(ライン状など)に塗布し、その後、前記で説明したような、乾燥処理および硬化処理を経ることで、形成することができる。
【0120】
5. 電子部品
本発明の電子部品は、上述の硬化膜または硬化膜付き基板を有する電子部品である。この際に基板としてフレキシブル基板を用いることで、フレキシブルな電子部品を得ることができる。また、基板として、シリコンウエハーを用いることで、半導体電子部品を得ることができる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いる、アミノ化合物(a1)、酸無水物(a2)、酸無水物(a2’)、反応溶媒(a3)、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)、エポキシ化合物(C)、溶媒(D)およびエポキシ硬化剤(E)の名称ならびにその略号を示す。以下の記述にはこの略号を使用する。
【0122】
<アミノ化合物(a1)>
AEE:2−(2−アミノエトキシ)エタノール
P−1074:プリアミン1074(商品名、クローダジャパン社製)
<酸無水物(a2)>
MA:マレイン酸無水物
<酸無水物(a2’)>
TMA:トリメリット酸無水物
<反応溶媒(a3)>
EDM:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0123】
<フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)>
CG−500:OGSOL CG−500(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
EG−200:OGSOL EG−200(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
EG−280:OGSOL EG−280(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
【0124】
<エポキシ化合物(C)>
VG3101:TECHMORE VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)
【0125】
<溶媒(D)>
EDM:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
MTM:トリエチレングリコールジメチルエーテル
【0126】
<エポキシ硬化剤(E)>
TMA:トリメリット酸無水物
【0127】
まず、カルボキシル基含有化合物(A)溶液を以下に示すように合成した(合成例1〜4)。表1に、合成例1〜4についてまとめた。
【0128】
[合成例1]
温度計、撹拌羽根、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlのセパラブルフラスコに、EDM 480.0g、およびAEE 111.7gを仕込み、乾燥窒素気流下、撹拌、氷冷しながら酸無水物(a2)としてMA 104.2gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、さらに酸無水物(a2’)としてMA 104.2gを加え、室温で10分間撹拌して、MAが完全に溶解した反応溶液を110℃で3時間撹拌して、式(ii−1−1)で表される化合物および式(ii−3−1)で表される化合物を含む混合液(A)−1を得た。
【0129】
E型粘度計(TOKYO KEIKI製 VISCONIC ELD、以下同様)を用いて25℃で測定した、混合液(A)−1の回転粘度は17.6mPa・sであった。固形分濃度は40%であった。なお、ここでいう固形分濃度とは、得られた混合液中の反応溶媒を除く成分の濃度のことである。以下の合成例における同様の記載も同様の意味である。
【0130】

【化8】
【0131】
[合成例2]
温度計、撹拌羽根、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlのセパラブルフラスコに、EDM 480.0g、およびAEE 85.1gを仕込み、乾燥窒素気流下、撹拌、氷冷しながら酸無水物(a2)としてMA 79.4gを加え、室温で1時間撹拌した。その後、さらに酸無水物(a2’)としてTMA 155.5gを加え、室温で30分間撹拌して、TMAが完全に溶解した反応溶液を110℃で3時間撹拌して、式(ii−1−2)で表される化合物および式(ii−3−2)で表される化合物を含む混合液(A)−2を得た。
【0132】
E型粘度計を用いて25℃で測定した、混合液(A)−2の回転粘度は45.0mPa・sであった。固形分濃度は40%であった。
【0133】
【化9】
【0134】
[合成例3]
温度計、撹拌羽根、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlのセパラブルフラスコに、EDMを480.0g、およびP−1074を234.5g仕込み、乾燥窒素気流下、撹拌、氷冷しながら酸無水物(a2)としてMAを85.5g加え、室温で3時間撹拌して、P−1074のアミン末端がMAの酸無水物基と反応して生成されるアミド酸を含む混合液(A)−3を得た。
【0135】
E型粘度計を用いて25℃で測定した、混合液(A)−3の回転粘度は16.5mPa・sであった。固形分濃度は40%であった。
【0136】
[合成例4]
合成例4において、表1に示すとおりに反応溶媒の種類および仕込み量を変更したこと以外は合成例3と同様に合成して、P−1074のアミン末端がMAの酸無水物基と反応して生成されるアミド酸を含む混合液(A)−4を得た。
【0137】
E型粘度計を用いて25℃で測定した、混合液(A)−4の回転粘度は14.8mPa・sであった。固形分濃度は37%であった。
【0138】
【表1】
【0139】
[実施例1]
撹拌羽根を備えた300mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られた混合液(A)−1を20.8g、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)としてEG−280を15.6g、EG−200を11.0g、溶媒(D)としてEDMを47.5g、エポキシ硬化剤(E)としてTMAを5.0g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。その後、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0140】
[実施例2〜7および比較例1〜4、7〜8]
表2に示すとおりに各成分の種類および仕込み量を変更したこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0141】
[比較例5および6]
比較例5および6はそれぞれ、合成例3および4で得られた混合液(A)−3および(A)−4と同一である。
【0142】
以上の、実施例1〜7および比較例1〜8を表2にまとめた。
【0143】
【表2】
【0144】
前記で得られた熱硬化性樹脂組成物を以下のポリイミドフィルム上および銅箔の光沢面上に、硬化膜の膜厚が表3に示すような厚みとなるようスピンコートした後、ホットプレート上で80℃5分乾燥して塗膜を形成した。
ポリイミドフィルム:60×60mm、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン100H)
銅箔:40×40mm、厚さ35μmの圧延銅箔(JX日鉱日石金属(株)製、BHY−22B−T)
【0145】
その後、オーブンを用い、150℃で30分加熱して塗膜を硬化させた。このようにして得られた硬化膜について、はんだ耐熱性、基板との密着性、耐屈曲性、耐薬品性、反りの評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。なお、硬化膜の厚さは、触針式膜厚計XP−200(ケイエルエー・テンコール社製)を用いて測定した。
【0146】
[評価方法]
(i)はんだ耐熱性
得られた硬化膜付き銅箔について、はんだ耐熱性を評価するために、該銅箔の硬化膜表面にロジン系フラックス(商品名:NS−829、(株)日本スペリア製)を塗布した後、得られた積層体を260℃のはんだ浴中に30秒浸漬させた。その後、はんだ浴から積層体を取り出し、基板と硬化膜との間に剥離や膨れが生じたか否かを目視により調べた。剥離と膨れが全く生じなかった場合を「○」、剥離または膨れが僅かでも生じた場合を「×」とした。
【0147】
(ii)基板との密着性
得られた硬化膜付きポリイミドフィルムおよび硬化膜付き銅箔を、60℃の超純水に60分間浸漬させた後、テープ剥離による碁盤目試験(JIS−K−5400)を行い、残存数を数えることで、ポリイミドフィルムまたは銅箔と硬化膜との密着性を評価した。残存数/100が、100/100である場合を○、99/100以下である場合を×とした。
【0148】
(iii)耐屈曲性
得られた硬化膜付き銅箔について、硬化膜の面が外側にくるように180°に折り曲げ、折り曲げ部に3kg/cm2の荷重をかけ、その後、折り曲げ部を広げて3kg/cm2の荷重をかけた。これを3回繰り返し、折り曲げ部にクラックや剥離が生じたか否かを光学顕微鏡にて観察した。クラックや剥離が発生せず、異常が見られなかった場合を「○」、クラックや剥離が発生した場合を「×」とした。
【0149】
(iv)耐薬品性
得られた硬化膜付きポリイミドフィルムおよび硬化膜付き銅箔を、それぞれ2規定のNaOH水溶液中に、室温で15分間浸漬した後水洗し、次いで、60℃で30分乾燥させた後、光学顕微鏡により耐薬品性を以下の評価基準で評価した。また、同様の評価を2規定のNaOH水溶液の代わりに2規定のHCl水溶液を用いて行った。
○:硬化膜と基板との界面に、染込みの発生や剥離等の異常は観察されない
×:硬化膜と基板との界面に、染込みの発生や剥離等の異常が観察された
【0150】
(v)反り
得られた硬化膜付きポリイミドフィルムの中央部40×40mmが残るように切り取り、これを水平面上に置き、平坦面からの4隅の平均高さを測定し、その相加平均値を平均反りとした。大きく反った結果、筒状になったものは「カール」とした。
【0151】

【表3】
【0152】
表3に示した結果から明らかなように、実施例1〜7で得られた熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜は、はんだ耐熱性、銅やポリイミドフィルムに対する密着性、耐屈曲性、耐薬品性に優れ、さらに、得られた硬化膜付き基板は、反りが5mm以下であった。一方、比較例1〜8で得られた熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜は耐屈曲性が悪く、得られた硬化膜付き基板は、反りが大きかった。
以上のように、特定のカルボキシル基含有化合物およびフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を含む組成物から得られた硬化膜のみ、所望の全ての特性を満足させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の組成物は、前記効果を有する硬化膜を形成できるため、例えば、フレキシブルプリント配線板用、リジッド配線板用または半導体用などの絶縁膜や、該絶縁膜含む電子部品形成用の材料として好適に用いることができる。