(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下式(1)で表される化合物(1)と下式(2)で表される化合物(2)とを反応させて下式(3)で表される化合物(3)(ただし、フッ素含有量が30質量%以上である。
)を得る工程(I)と、
前記化合物(3)を液相中でフッ素化して下式(4)で表される化合物(4)を得る工程(II)と、
前記化合物(4)の切断反応により下式(5)で表される化合物(5)および下式(6)で表される化合物(6)の1種以上を得る工程(III)と、
前記化合物(5)をヘキサフルオロプロピレンオキシドと反応させて、下式(7)で表される化合物(7)を得る工程(IV)と、
該化合物(7)を熱分解して下式(8)で表される化合物(8)を得る工程(V)とを有することを特徴とする含フッ素化合物の製造方法。
HOCH2−RA−CH2OH・・・(1)
X1C(=O)−C(RB)(RC)(RD)・・・(2)
(RD)(RC)(RB)C−C(=O)OCH2−RA−CH2OC(=O)−C(RB)(RC)(RD)・・・(3)
(RDF)(RCF)(RBF)C−C(=O)OCF2−RAF−CF2OC(=O)−C(RBF)(RCF)(RDF)・・・(4)
FC(=O)−RAF−C(=O)F・・・(5)
(RDF)(RCF)(RBF)C−C(=O)F・・・(6)
FC(=O)−CF(CF3)−O−CF2−RAF−C(=O)F・・・(7)
F2C=CF−O−QAF−CF=CF2・・・(8)
ただし、
RA:(CH2)nである(ただし、nは1〜10の整数。)。
RB、RC、RD:RBは、RBFと同一の含フッ素1価有機基、フッ素化反応によってRBFになる1価有機基、水素原子およびハロゲン原子のいずれかであり、RCは、RCFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってRCFになる1価有機基であり、RDは、RDFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってRDFになる1価有機基である。
X1:ハロゲン原子である。
RAF:(CF2)nである(ただし、nは1〜10の整数。)。
RBF:RBが水素原子である場合、RBFはフッ素原子であり、RBがハロゲン原子である場合、RBFはRBと同一のハロゲン原子である。RBが水素原子およびハロゲン原子のいずれでもない場合、RBFはRBと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRBがフッ素置換された基である。
RCF:RCFはRCと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRCがフッ素置換された基である。
RDF:RDFはRDと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRDがフッ素置換された基である。
QAF:(CF2)n−1である(ただし、nは1〜10の整数。)。
下式(1)で表される化合物(1)と下式(2)で表される化合物(2)とを反応させて下式(3)で表される化合物(3)(ただし、フッ素含有量が30質量%以上である。
)を得る工程(I)と、
前記化合物(3)を液相中でフッ素化して下式(4)で表される化合物(4)を得る工程(II)と、
前記化合物(4)の切断反応により下式(5)で表される化合物(5)および下式(6)で表される化合物(6)の1種以上を得る工程(III)と、
前記化合物(5)を下式(9)で表される化合物(9)と反応させて下式(10)で表される化合物(10)を得る工程(VI)を有することを特徴とする含フッ素化合物の製造方法。
HOCH2−RA−CH2OH・・・(1)
X1C(=O)−C(RB)(RC)(RD)・・・(2)
(RD)(RC)(RB)C−C(=O)OCH2−RA−CH2OC(=O)−C(RB)(RC)(RD)・・・(3)
(RDF)(RCF)(RBF)C−C(=O)OCF2−RAF−CF2OC(=O)−C(RBF)(RCF)(RDF)・・・(4)
FC(=O)−RAF−C(=O)F・・・(5)
(RDF)(RCF)(RBF)C−C(=O)F・・・(6)
HO−R・・・(9)
R−OC(=O)−RAF−C(=O)O−R・・・(10)
ただし、
RA:(CH2)nである(ただし、nは1〜10の整数。)。
RB、RC、RD:RBは、RBFと同一の含フッ素1価有機基、フッ素化反応によってRBFになる1価有機基、水素原子およびハロゲン原子のいずれかであり、RCは、RCFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってRCFになる1価有機基であり、RDは、RDFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってRDFになる1価有機基である。
X1:ハロゲン原子である。
RAF:(CF2)nである(ただし、nは1〜10の整数。)。
RBF:RBが水素原子である場合、RBFはフッ素原子であり、RBがハロゲン原子である場合、RBFはRBと同一のハロゲン原子である。RBが水素原子およびハロゲン原子のいずれでもない場合、RBFはRBと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRBがフッ素置換された基である。
RCF:RCFはRCと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRCがフッ素置換された基である。
RDF:RDFはRDと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはRDがフッ素置換された基である。
R:−CH3、−CH2CH3および−CH(CH3)2から選ばれる基である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
【0019】
本明細書における有機基とは、炭素原子を必須とする基であり、炭化水素基とは、炭素原子と水素原子からなる基である。
本明細書における「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素をいう。
本明細書における「ハロゲン化」とは、ハロゲン原子ではない原子(たとえば、炭素原子に結合した水素原子)をハロゲン原子に置換すること、炭素原子に結合した基(たとえば、炭素原子に結合した水酸基)をハロゲン原子に置換すること、および、ハロゲン原子を有しない原子団(たとえば、二重結合や三重結合を形成している2つの炭素原子からなる原子団)にハロゲン原子を付加すること、をいう。なお、ハロゲン原子を別のハロゲン原子に置換することを置換したハロゲン原子の名のハロゲン化ということもある(たとえば、フッ素化とは、塩素原子等をフッ素原子に置換することを意味することもある)。
本明細書における「ハロゲン化されうる」基とは、ハロゲン化反応によりハロゲン化されうる、原子、基および原子団の少なくともいずれかを有する基をいう。
本明細書における「ハロゲン化基」とは、ハロゲン化されうる基を有する有機基がハロゲン化されて生じた有機基をいう。たとえば、ハロゲン化炭化水素基とは、炭化水素基がハロゲン化されて生じた有機基である。
「部分ハロゲン化基」とは、ハロゲン化基であってかつハロゲン化されうる基が存在する基である。
「ペルハロゲン化基」とは、ハロゲン化基であってかつハロゲン化されうる基が存在しない基である。
「含フッ素ペルハロゲン化基」とは、ハロゲン原子の少なくとも一部がフッ素原子であるペルハロゲン化基をいう。
【0020】
以下の本明細書および請求の範囲における「フッ素化反応」とは、本発明における工程(II)のフッ素化反応をいう。
同様に、「フッ素化」とは、本発明における工程(II)のフッ素化反応によるフッ素化をいう。
以下の本明細書における「フッ素化されうる」有機基とは、本発明における工程(II)のフッ素化反応によりフッ素化されうる、原子、基および原子団の少なくともいずれかを有する有機基をいう。
【0021】
本明細書におけるヘテロ原子含有炭化水素基とは、フッ素化反応により変化しないヘテロ原子(たとえば、アルコキシ基の酸素原子、エーテル性酸素原子等。)またはフッ素化反応により変化しないヘテロ原子団(たとえば、カルボニル基、スルホニル基等。)を含む炭化水素基である。
ハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基とは、ヘテロ原子含有炭化水素基がハロゲン化された基である。ペルハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基とは、ハロゲン化されうる基が存在しないハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基であり、部分ハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基とは、ハロゲン化されうる基が存在するハロゲン化(ヘテロ原子含有炭化水素)基である。
【0022】
本発明の含フッ素化合物の製造方法は、下記の工程(I)と工程(II)とを有し、必要に応じて工程(III)〜工程(VI)を有する。
以下、各工程について説明する。
【0023】
〔工程(I)〕
工程(I)は、下記の化合物(1)と下記の化合物(2)とを反応させて下記の化合物(3)(ただし、フッ素含有量が30質量%以上である。)を得る工程である。
【0024】
HOCH
2−R
A−CH
2OH・・・(1)
X
1C(=O)−C(R
B)(R
C)(R
D)・・・(2)
(R
D)(R
C)(R
B)C−C(=O)OCH
2−R
A−CH
2OC(=O)−C(R
B)(R
C)(R
D)・・・(3)
【0025】
(R
A)
R
Aは、2価飽和炭化水素基または部分ハロゲン化2価飽和炭化水素基である。R
Aは、エーテル性酸素原子等のヘテロ原子を有しない。R
Aがエーテル性酸素原子等のヘテロ原子を有しないと、後述の工程(II)において化合物(3)が分解しにくい。そのため、工程(II)の目的物である化合物(4)の収率が優れる。後述の工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性等の点からは、R
Aの炭素数は1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。
【0026】
2価飽和炭化水素基としては、アルキレン基、環構造を有する2価飽和炭化水素基が挙げられる。環構造を有する2価飽和炭化水素基としては、たとえば、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基および脂環式スピロ構造を有する1価基からなる群より選ばれる置換基を有する2価飽和炭化水素基;シクロアルキレン基;ビシクロアルキレン基;シクロアルキレン基またはビシクロアルキレン基を部分構造とする2価飽和炭化水素基;等が挙げられる。
2価飽和炭化水素基としては、入手容易性の点からは、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよく、工程(II)における化合物(3)の転化率が優れる点からは、直鎖状が好ましい。
【0027】
部分ハロゲン化2価飽和炭化水素基としては、上述の2価飽和炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子に置換された基が好ましく、アルキレン基の水素原子の一部がハロゲン原子に置換された部分ハロゲン化アルキレン基が特に好ましい。部分ハロゲン化アルキレン基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子または臭素原子が好ましい。
【0028】
R
Aとしては、炭素数が1〜20の直鎖状アルキレン基が好ましく、炭素数が1〜10の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。具体的には、−(CH
2)
2−、−(CH
2)
3−、−(CH
2)
4−等が挙げられる。
【0029】
(R
B、R
CおよびR
D)
R
Bは、R
BFと同一の含フッ素1価有機基、フッ素化反応によってR
BFになる1価有機基、水素原子およびハロゲン原子のいずれかである。
R
Cは、R
CFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってR
CFになる1価有機基である。
R
Dは、R
DFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってR
DFになる1価有機基である。
式(2)中の−C(R
B)(R
C)(R
D)基は、分岐状の基である。分岐状の基は嵩高いため、該基を有する化合物(3)は、工程(II)において分解しにくい。そのため、工程(II)における化合物(4)の収率が優れる。
【0030】
<R
B>
R
BがR
BFと同一の含フッ素1価有機基である場合、R
Bは、フッ素化反応によってフッ素化されない含フッ素1価有機基である。たとえば、含フッ素ペルハロゲン化1価飽和炭化水素基;含フッ素ペルハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基;等が挙げられる。
【0031】
工程(II)のフッ素化反応によってフッ素化されうる有機基としては、下記原子、原子団および基の少なくともいずれかを有する。フッ素化反応によってフッ素化されない有機基はこれらのいずれをも有しない有機基である。
フッ素化反応によってフッ素化されうる原子としては、たとえば炭素原子に結合した水素原子が挙げられる。
フッ素化反応によってフッ素化されうる原子団としては、たとえば、>C=C<、−C≡C−等のフッ素原子が付加しうる原子団が挙げられる。>C=C<がフッ素化されると>CF−CF<に、−C≡C−がフッ素化されると−CF
2−CF
2−になる。また、フッ素化されうる原子団にはフッ素化されうる原子が結合していてもよく、たとえば、−CH=CH−がフッ素化されると−CF
2−CF
2−になる。
フッ素化反応によってフッ素化されうる基としては、たとえば、フッ素化によりフルオロカルボニル基となるカルボキシ基;アルキル基の炭素−炭素結合間にカルボニル基が挿入された基;等が挙げられる。
【0032】
含フッ素ペルハロゲン化1価飽和炭化水素基および含フッ素ペルハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基の元である1価飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、または環構造を有する1価飽和炭化水素基(たとえば、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、またはビシクロアルキル基、脂環式スピロ構造を有する基、またはこれらの基を部分構造とする基。)等が挙げられる。
【0033】
R
BがR
BFと同一の含フッ素1価有機基である場合、R
Bとして具体的には、含フッ素ペルハロゲン化アルキル基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有する含フッ素ペルハロゲン化アルキル基、含フッ素ペルハロゲン化アルコキシ基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有する含フッ素ペルハロゲン化アルコキシ基が好ましく、ペルフルオロアルキル基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルコキシ基が特に好ましい。
R
BがR
BFと同一の含フッ素1価有機基である場合、後述の工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性、工程(II)における化合物(3)の分解抑制等の点からは、R
Bの炭素数は1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。R
Bは、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0034】
R
Bがフッ素化反応によってR
BFになる1価有機基である場合、R
Bとしては、1価飽和炭化水素基;ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基;部分ハロゲン化1価飽和炭化水素基;部分ハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基;1価不飽和炭化水素基;ヘテロ原子含有1価不飽和炭化水素基;部分ハロゲン化1価不飽和炭化水素基;部分ハロゲン化(ヘテロ原子含有1価不飽和炭化水素)基;フッ素化されうる基を有する1価有機基;等が挙げられる。
【0035】
ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基、部分ハロゲン化1価飽和炭化水素基および部分ハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基における1価飽和炭化水素基としては、含フッ素ペルハロゲン化1価飽和炭化水素基および含フッ素ペルハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基における1価飽和炭化水素基として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0036】
フッ素化されうる1価不飽和炭化水素基としては、具体的には、シクロヘキセニル基、フェニル基、アルケニル基、またはアルキニル基等が挙げられる。
【0037】
R
Bがフッ素化反応によってR
BFになる1価有機基である場合、R
Bとしては、1価飽和炭化水素基;ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素基;部分ハロゲン化1価飽和炭化水素基;部分ハロゲン化(ヘテロ原子含有1価飽和炭化水素)基が特に好ましい。具体的には、アルキル基、アルコキシ基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有するアルキル基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有するアルコキシ基、部分ハロゲン化アルキル基、部分ハロゲン化アルコキシ基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有する部分ハロゲン化アルキル基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有する部分ハロゲン化アルコキシ基が好ましい。
【0038】
R
Bがフッ素化反応によってR
BFになる1価有機基である場合、後述の工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性、工程(II)における化合物(3)の分解抑制等の点からは、R
Bの炭素数は1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。R
Bは、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0039】
R
Bがハロゲン原子である場合、R
Bはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0040】
<R
C>
R
CがR
CFと同一の含フッ素1価有機基である場合、R
Cとしては、R
Bについて例示した基と同様の基が挙げられ、同様の基が好ましい。
R
Cがフッ素化反応によってR
CFになる1価有機基である場合、R
Cとしては、R
Bについて例示した基と同様の基が挙げられ、同様の基が好ましい。
【0041】
R
CがR
CFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってR
CFになる1価有機基である場合、後述の工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性、工程(II)における化合物(3)の分解抑制等の点からは、R
Cの炭素数は1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。R
Cは、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0042】
<R
D>
R
DがR
DFと同一の含フッ素1価有機基である場合、R
Dとしては、R
Bについて例示した基と同様の基が挙げられ、同様の基が好ましい。
R
Dがフッ素化反応によってR
DFになる1価有機基である場合、R
Dとしては、R
Bについて例示した基と同様の基が挙げられ、同様の基が好ましい。
【0043】
R
DがR
DFと同一の含フッ素1価有機基またはフッ素化反応によってR
DFになる1価有機基である場合、後述の工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性、工程(II)における化合物(3)の分解抑制等の点からは、R
Dの炭素数は1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。R
Dは、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0044】
<R
B、R
CおよびR
Dの組み合わせ>
R
B、R
CおよびR
Dの組み合わせは、工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性、工程(II)における化合物(3)の分解抑制等の点からは、R
CおよびR
Dのうちの1つが炭素数1〜3の1価有機基であり、R
CおよびR
Dのうちの1つが炭素数1〜10の1価有機基であり、R
Bが水素原子またはハロゲン原子である組み合わせが好ましい。
【0045】
このような組み合わせとしては、たとえば、R
Cが、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2からなる群より選ばれる1つであり、R
Dが、−CF
3、−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3、−OCF
3、−OCF
2CF
3、−OCF
2CF
2CF
3、−OCF
2CF
2CFClCF
2Cl、−OCF
2CF
2Br、−OCF(CF
3)CF
2CFClCF
2Cl、−OCH
2CH
2CH
3からなる群より選ばれる1つであり、R
Bが、水素原子またはハロゲン原子である組み合わせが挙げられる。
【0046】
R
B、R
CおよびR
Dの組み合わせは、R
Cが炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基または炭素数1〜3のペルフルオロアルコキシ基であり、R
Dが炭素数1のペルフルオロアルキル基、1つ以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜10のペルフルオロアルコキシ基または1つ以上のエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜10のペルフルオロアルコキシ基であり、R
Bがフッ素原子である組み合わせがより好ましい。
特に好ましいR
B、R
CおよびR
Dの組み合わせは、R
Cが炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基であり、R
Dが炭素数1のペルフルオロアルキル基、炭素数2〜6のペルフルオロアルコキシ基またはエーテル性酸素原子を1つ有する炭素数4〜8のペルフルオロアルコキシ基であり、R
Bがフッ素原子である組み合わせである。
【0047】
このようなより好ましいまたは特に好ましい組み合わせとしては、たとえば、R
Cが、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2からなる群より選ばれる1つであり、R
Dが、−CF
3、−OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3、−OCF
2CF
2CF
3からなる群より選ばれる1つであり、R
Bが、フッ素原子である組み合わせが挙げられる。
【0048】
(X
1)
X
1はハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられ、工程(1)における反応性に優れる点から、フッ素原子、塩素原子または臭素原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0049】
(化合物(1))
化合物(1)としては、具体的には、以下の化合物(1−1)が挙げられる。
HOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OH・・・(1−1)
nは、R
Aの炭素数であり、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8がさらに好ましく、2〜8が特に好ましい。
【0050】
(化合物(2))
化合物(2)としては、具体的には、以下の化合物(2−1)〜(2−7)が挙げられ、化合物(2−1)〜(2−3)が特に好ましい。
(CF
3)
2CFC(=O)F・・・(2−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−3)
CF
2ClCFClCF
2CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−4)
CF
2BrCF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−5)
CF
2ClCFClCF
2CF(CF
3)OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−6)
CH
3CH
2CH
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(2−7)
【0051】
化合物(2)の沸点は−10〜200℃が好ましく、0〜170℃が特に好ましい。化合物(2)の沸点が上記範囲内であると、工程(I)の後、未反応の化合物(2)を回収する際の回収操作が容易である。たとえば化合物(2)の沸点が上記範囲の下限値以上であると、冷凍機等の大規模な設備を用いずに、未反応の化合物(2)を回収できる。上記範囲の上限値以下であると、特別な加熱装置を用いずにスチーム等の汎用の加熱装置を用いて、未反応の化合物(2)を回収できる。化合物(2−1)〜(2−7)の沸点は、いずれも0〜170℃である。
化合物(2)は、市販品を入手する方法、公知の方法で合成する方法等により得ることができる。
【0052】
(化合物(1)と化合物(2)との組み合わせ)
化合物(1)と化合物(2)は、工程(I)で得られる化合物(3)のフッ素含有量が30質量%以上となるように、組み合わせる。化合物(3)のフッ素含有量が30質量%以上であると、工程(II)における化合物(3)の液相への溶解性が優れる。そのため、工程(II)のフッ素化反応を均一な系で実施しやすくなり、工程(II)における化合物(4)の収率も向上する。化合物(3)のフッ素含有量は30〜86質量%が好ましく、30〜76質量%が特に好ましい。
なお、フッ素含有量とは、化合物の分子量に占めるフッ素原子の質量割合をいう。
【0053】
化合物(1)と化合物(2)との組み合わせは、化合物(1)および(2)の入手容易性の点では、これらのうちの一方にフッ素原子を含まない化合物を用い、他方にフッ素原子を含む化合物を用いることが好ましい。なかでも、化合物(1)としてフッ素原子を含まない化合物を用い、化合物(2)としてフッ素原子を含む化合物を用いることが特に好ましい。
【0054】
(化合物(3))
化合物(3)としては、フッ素化されうる原子、原子団および基として炭素原子に結合した水素原子のみを有する化合物であることが好ましい。この場合、工程(II)におけるフッ素化反応は、炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換される反応のみとなる。−CH
2−R
A−CH
2−がフッ素化されうる原子、原子団および基として炭素原子に結合した水素原子のみを有することより、R
B、R
C、R
Dがいずれもフッ素化されうる基や原子ではない場合には、化合物(3)のフッ素化は−CH
2−R
A−CH
2−中の水素原子がフッ素原子に置換される反応のみとなる。
化合物(3)としては、具体的には、化合物(1−1)と化合物(2−1)を反応させて得られた下記化合物(3−1)、化合物(1−1)と化合物(2−2)を反応させて得られた下記化合物(3−2)、化合物(1−1)と化合物(2−3)を反応させて得られた下記化合物(3−3)、化合物(1−1)と化合物(2−4)を反応させて得られた下記化合物(3−4)、化合物(1−1)と化合物(2−5)を反応させて得られた下記化合物(3−5)、化合物(1−1)と化合物(2−6)を反応させて得られた下記化合物(3−6)、化合物(1−1)と化合物(2−7)を反応させて得られた下記化合物(3−7)が挙げられる。
【0055】
(CF
3)
2CFCOOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)
2・・・(3−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3・・・(3−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3・・・(3−3)
CF
2ClCFClCF
2CF
2OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CFClCF
2Cl・・・(3−4)
CF
2BrCF
2OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2Br・・・(3−5)
CF
2ClCFClCF
2CF(CF
3)OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCF(CF
3)CF
2CFClCF
2Cl・・・(3−6)
CH
3CH
2CH
2OCF(CF
3)COOCH
2−(CH
2)
n−CH
2OCOCF(CF
3)OCH
2CH
2CH
3・・・(3−7)
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
【0056】
(化合物(1)と化合物(2)との反応)
化合物(1)と化合物(2)との反応はエステル化反応であり、公知の方法で実施できる。エステル化反応は、溶媒(以下、「エステル化反応溶媒」とも記す。)の存在下に実施しても不存在下に実施してもよい。エステル化反応溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、トリエチルアミン、または、トリエチルアミンとテトラヒドロフランとの混合溶媒が好ましい。エステル化反応溶媒の使用量は、化合物(1)と化合物(2)との合計の100質量部に対して、50〜500質量部が好ましい。エステル化反応をバッチ式反応器で行う場合、該反応器の単位容積あたりの化合物(1)および化合物(2)の仕込み量が向上し、生産性が優れる点からは、エステル化反応溶媒の不存在下にエステル化反応を行うことが好ましい。
【0057】
エステル化反応において、化合物(1)に対する化合物(2)の量は1.5〜10倍モルが好ましく、2〜5倍モルが特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)との反応温度の下限は−50℃が好ましい。上限は、反応をエステル化反応溶媒の存在下で行う場合、100℃およびエステル化反応溶媒の沸点のうち、低い温度とすることが好ましく、エステル化反応溶媒の不存在下に実施する場合、100℃が好ましい。反応温度は、−50〜100℃が特に好ましい。
化合物(1)と化合物(2)との反応時間は、原料の供給速度と、反応に用いる化合物量に応じて適宜変更できる。反応圧力は0〜2MPa(ゲージ圧)が好ましい。
【0058】
化合物(1)と化合物(2)との反応により、HX
1で表される酸が発生する。X
1がフッ素原子である場合には、HFが発生するため、反応系中にHF捕捉剤を存在させることが好ましい。HF捕捉剤としては、アルカリ金属フッ化物、トリアルキルアミン等が挙げられる。アルカリ金属フッ化物としては、NaFまたはKFが好ましい。HF捕捉剤を使用しない場合には、HFが気化しうる反応温度で反応を行い、かつ、HFを窒素気流に同伴させて反応系外に排出することが好ましい。HF捕捉剤の使用量は、化合物(2)に対して1〜10倍モルが好ましい。
【0059】
化合物(1)と化合物(2)との反応で生成した化合物(3)を含む粗生成物は、精製を行っても、そのまま、工程(II)での反応に用いてもよい。工程(II)におけるフッ素化反応を円滑に行う点からは、精製することが好ましい。
精製方法としては、粗生成物をそのまま蒸留する方法、粗生成物を希アルカリ水等で処理して分液する方法、粗生成物を適当な有機溶媒で抽出した後に蒸留する方法、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等が挙げられる。
【0060】
〔工程(II)〕
工程(II)は、化合物(3)を液相中でフッ素化して下式(4)で表される化合物(4)を得る工程である。化合物(4)は、化合物(3)中のフッ素化されうる原子、原子団および基のすべてがフッ素化された化合物である。上記の化合物(1)および化合物(2)を反応させて得られた化合物(3)は、工程(II)において分解しにくい。そのため、該化合物(3)をフッ素化の原料に用いることにより、化合物(4)を高収率で得ることができる。
【0061】
(R
DF)(R
CF)(R
BF)C−C(=O)OCF
2−R
AF−CF
2OC(=O)−C(R
BF)(R
CF)(R
DF)・・・(4)
【0062】
(R
AF)
R
AFは、R
Aの水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。
【0063】
(R
BF、R
CFおよびR
DF)
R
Bが水素原子である場合、R
BFはフッ素原子であり、R
Bがハロゲン原子である場合、R
BFはR
Bと同一のハロゲン原子である。R
Bが水素原子およびハロゲン原子のいずれでもない場合、R
BFは、R
Bと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはR
Bがフッ素化された基(R
B中の、フッ素化されうる原子、原子団および基のすべてがフッ素化された基。)である。
R
CFは、R
Cと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはR
Cがフッ素化された基(R
C中の、フッ素化されうる原子、原子団および基のすべてがフッ素化された基。)である。
R
DFは、R
Dと同一または異なる含フッ素1価有機基であり、異なる場合にはR
Dがフッ素化された基(R
D中の、フッ素化されうる原子、原子団および基のすべてがフッ素化された基。)である。
【0064】
(化合物(4))
化合物(4)としては、具体的には、化合物(3−1)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−1)、化合物(3−2)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−2)、化合物(3−3)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−3)、化合物(3−4)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−4)、化合物(3−5)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−5)、化合物(3−6)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−6)、化合物(3−7)のフッ素化反応により得られた下記化合物(4−7)が挙げられる。
【0065】
(CF
3)
2CFCOOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)
2・・・(4−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3・・・(4−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3・・・(4−3)
CF
2ClCFClCF
2CF
2OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CFClCF
2Cl・・・(4−4)
CF
2BrCF
2OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2Br・・・(4−5)
CF
2ClCFClCF
2CF(CF
3)OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF(CF
3)CF
2CFClCF
2Cl・・・(4−6)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCF
2−(CF
2)
n−CF
2OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3・・・(4−7)
ただし、ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
【0066】
(化合物(3)のフッ素化反応)
化合物(3)のフッ素化反応は、液相中で行う。溶媒(以下、「フッ素化反応溶媒」とも記す。)を含む液相中で行うことが好ましい。フッ素源としては、フッ素ガスを用いることが好ましい。フッ素ガスは、不活性ガスで希釈したフッ素ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等の希ガスや、窒素ガスが挙げられ、窒素ガス、ヘリウムガスが好ましく、経済的に有利である点から窒素ガスが特に好ましい。フッ素ガスの割合(以下、「フッ素ガス量」とも記す。)は、フッ素ガスと不活性ガスとの合計100体積%中、30〜60体積%が好ましい。フッ素ガス量が上記範囲の下限値以上であると、フッ素化反応に必要な所定量のフッ素ガスを短時間で反応器に供給でき、生産性に優れる。化合物(3)の転化率が高く、かつ、化合物(4)の選択率が高くできる。フッ素ガス量が上記範囲の上限値以下であると、安全性に優れる。
上記の化合物(1)および化合物(2)を反応させて得られた化合物(3)は、フッ素ガス量が比較的大きい条件下においても、化合物(3)の転化率が高く、かつ、化合物(4)の選択率が高い。そのため、フッ素ガス量が大きく生産性に優れる条件下において、高収率で化合物(4)を得られる。
【0067】
フッ素化反応溶媒としては、フッ素化反応によってフッ素化されない、含フッ素溶媒が好ましく、たとえば、ペルフルオロアルカン類、または、塩素原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる1種以上の原子を構造中に有する公知の有機溶媒をペルフルオロ化した有機溶媒が挙げられる。
フッ素化反応溶媒としては、常圧下で、−100〜300℃で液体として存在する溶媒が好ましく、−80〜200℃で液体として存在する溶媒が特に好ましい。
フッ素化反応溶媒としては、化合物(3)の溶解性が高い溶媒を用いることが好ましく、特に化合物(3)を20℃において、1質量%以上溶解しうる含フッ素溶媒が好ましく、5質量%以上溶解しうる溶媒が特に好ましい。
【0068】
フッ素化反応溶媒としては、具体的には、ペルフルオロアルカン類(商品名:FC−72等。)、ペルフルオロエーテル類(商品名:FC−75、FC−77等。)、ペルフルオロポリエーテル類(商品名:クライトックス、フォンブリン、ガルデン、デムナム等。)、クロロフルオロエーテル類、クロロフルオロカーボン類(商品名:フロンルーブ)、クロロフルオロポリエーテル類、ペルフルオロアルキルアミン(たとえば、ペルフルオロトリアルキルアミン等。)、不活性流体(商品名:フロリナート)等が挙げられる。
【0069】
フッ素化反応溶媒としては、エーテル性酸素原子を含む含フッ素溶媒がより好ましく、たとえば上述のペルフルオロエーテル類、ペルフルオロポリエーテル類、クロロフルオロエーテル類等が挙げられる。なかでも、塩素原子を含まない含フッ素溶媒が好ましく、ペルフルオロエーテル類、ペルフルオロポリエーテル類が特に好ましい。
【0070】
フッ素化反応溶媒としては、後述の工程(III)の生成物である化合物(5)および化合物(6)のうちの1種以上を用いることも好ましい。化合物(5)および化合物(6)のうちの1種以上を用いると、工程(III)の後の溶媒回収が不要となり、後処理が簡便になる。通常、化合物(5)は目的物となることより、フッ素化反応溶媒としては化合物(6)が好ましい。
【0071】
フッ素化反応溶媒の使用量は、化合物(3)に対して、5倍質量以上が好ましく、特に10〜100倍質量が好ましい。
【0072】
フッ素化反応の反応形式は、バッチ方式または連続方式が好ましい。フッ素化反応は、下記の<方法1>または<方法2>により実施することが好ましく、化合物(4)の反応収率と選択率の点からは、<方法2>が特に好ましい。フッ素ガスは、バッチ方式で実施する場合および連続方式で実施する場合のいずれにおいても、窒素ガス等の不活性ガスで希釈して使用することが好ましい。
【0073】
<方法1>
反応器に、化合物(3)とフッ素化反応溶媒とを仕込み、撹拌を開始する。所定の反応温度と反応圧力下で、不活性ガスで希釈したフッ素ガスをフッ素化反応溶媒中に連続的に供給しながら反応させる方法。
<方法2>
反応器にフッ素化反応溶媒を仕込み、撹拌する。次に所定の反応温度と反応圧力下で、不活性ガスで希釈したフッ素ガスと化合物(3)とフッ素化反応溶媒とを所定のモル比で連続的にフッ素化反応溶媒中に供給しながら反応させる方法。
<方法3>
管状反応器にフッ素化反応溶媒を連続的に導入して管状反応器内を流通させる。次に、不活性ガスで希釈したフッ素ガスと、化合物(3)を溶解したフッ素化反応溶媒とを、フッ素ガスと化合物(3)とが所定のモル比となる割合でそれぞれ連続的に管状反応器内のフッ素化反応溶媒の流れに供給して混合し、管状反応器内でフッ素ガスと化合物(3)とを接触させて反応させ、反応生成物を含むフッ素化反応溶媒を管状反応器から取り出す方法。この方法において、フッ素化反応溶媒を循環させ、循環されているフッ素化反応溶媒から反応生成物を取り出すことにより、連続方式でフッ素化反応を行うことができる。
【0074】
方式3の場合と同様に、方法2において、化合物(3)を供給する際には、フッ素化反応溶媒で希釈した化合物(3)を供給することが、化合物(4)の選択率を向上させ、副生成物量を抑制させる点で好ましい。また、化合物(3)を溶媒で希釈する際には、化合物(3)に対するフッ素化反応溶媒の量を5倍質量以上とすることが好ましく、10倍質量以上とすることが特に好ましい。
【0075】
フッ素化反応においては、バッチ方式においても連続方式においても、化合物(3)中のフッ素化されうる原子、原子団および基のすべてに対して、これらをフッ素化するフッ素(F
2)の量が常に過剰量になるようにすることが好ましい。その量は、フッ素化されうる原子、原子団および基のすべてをフッ素化するために必要な理論量の1.1倍当量以上が好ましく、1.3倍当量以上が特に好ましい。
たとえば、化合物(3)が、フッ素原子に置換されうる原子、原子団および基のうち、フッ素原子に置換されうる原子のみを有し、該原子が水素原子である場合、該水素原子に対して、フッ素(F
2)の量が常に過剰量になるようにすることが好ましい。具体的には、水素原子に対して、フッ素量は1.1倍当量以上(すなわち1.1倍モル以上。)であることが好ましく、1.3倍当量以上(すなわち、1.3倍モル以上。)が選択率の点から特に好ましい。フッ素の量は、反応の最初から最後まで過剰量であることが好ましい。よって、反応当初に反応器にフッ素化反応溶媒を仕込む際には、該フッ素化反応溶媒に充分量のフッ素を溶解させておくことが好ましい。
【0076】
フッ素化反応の液相温度は、化合物(4)の収率、選択率、安全性および工業的な実施しやすさの点から、10〜50℃が好ましく、10〜30℃が特に好ましい。
フッ素化反応の反応圧力は、特に限定されず、化合物(4)の収率、選択率、安全性および工業的な実施しやすさの点から、大気圧〜2MPa(ゲージ圧)が好ましい。
【0077】
フッ素化反応を効率的に進行させるためには、反応系中に化合物(3)以外のC−H結合含有化合物を添加する、または、反応系に紫外線を照射することが好ましい。これらはフッ素化反応後期に行うことが好ましい。これにより、反応系中に存在する化合物(3)を効率的にフッ素化でき、化合物(3)の収率を飛躍的に向上させうる。
C−H結合含有化合物としては、芳香族炭化水素が好ましく、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。該C−H結合含有化合物の添加量は、化合物(3)中の水素原子に対して0.1〜10モル%である量が好ましく、0.1〜5モル%である量が特に好ましい。
C−H結合含有化合物は、フッ素ガスが存在する反応系中に添加することが好ましい。さらに、C−H結合含有化合物を加えた場合には、反応系を加圧することが好ましい。加圧時の圧力としては、0.01〜5MPa(ゲージ圧)が好ましい。
紫外線を照射する場合、照射時間は、0.1〜3時間が好ましい。
【0078】
炭素原子に結合した水素原子がフッ素原子に置換されるフッ素化反応においては、HFが副生する。副生したHFを除去するには、HF捕捉剤を用いることが好ましい。具体的には、HF捕捉剤を反応系中に共存させる方法、HF捕捉剤を反応器ガス出口で出口ガスに接触させる方法が挙げられる。該HF捕捉剤としては、先に例示したものを同様に使用でき、NaFが好ましい。
反応系中にHF捕捉剤を共存させる場合、HF捕捉剤の量は、化合物(3)中に存在する水素原子に対して1〜20倍モルが好ましく、1〜5倍モルが特に好ましい。反応器ガス出口にHF捕捉剤を配置する場合には、HF捕捉剤であるNaFをペレット状に成形、充填したNaFペレット充填層を採用することが好ましい。具体的には、(a)冷却器(10℃〜室温に保持することが好ましく、特には約20℃に保持することが好ましい。)、(b)NaFペレット充填層、および(c)冷却器(−78〜10℃に保持することが好ましく、−30〜0℃に保持することが特に好ましい。)を(a)−(b)−(c)の順に直列に設置することが好ましい。なお、(c)の冷却器には、該冷却器から凝集した液を反応器に戻すための液体返送ラインを設置してもよい。
【0079】
フッ素化反応で得た化合物(4)を含む粗生成物は、そのまま次の工程に用いてもよく、精製して高純度のものにしてもよい。精製方法としては、粗生成物をそのまま常圧または減圧下に蒸留する方法等が挙げられる。
【0080】
〔工程(III)〕
工程(III)は、化合物(4)の切断反応により下式(5)で表される化合物(5)および下式(6)で表される化合物(6)の1種以上を得る工程である。
FC(=O)−R
AF−C(=O)F・・・(5)
(R
DF)(R
CF)(R
BF)C−C(=O)F・・・(6)
【0081】
(化合物(5))
化合物(5)としては、化合物(4−1)〜(4−7)の切断反応により得られる下記化合物(5−1)が挙げられる。
FC(=O)−(CF
2)
n−C(=O)F・・・(5−1)
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
【0082】
(化合物(6))
化合物(6)としては、化合物(4−1)の切断反応により得られる下記化合物(6−1)、化合物(4−2)の切断反応により得られる下記化合物(6−2)、化合物(4−3)の切断反応により得られる下記化合物(6−3)、化合物(4−4)の切断反応により得られる下記化合物(6−4)、化合物(4−5)の切断反応により得られる下記化合物(6−5)、化合物(4−6)の切断反応により得られる下記化合物(6−6)、化合物(4−7)の切断反応により得られる下記化合物(6−7)が挙げられる。
【0083】
(CF
3)
2CFC(=O)F・・・(6−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−3)
CF
2ClCFClCF
2CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−4)
CF
2BrCF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−5)
CF
2ClCFClCF
2CF(CF
3)OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−6)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)C(=O)F・・・(6−7)
【0084】
(化合物(4)の切断反応)
化合物(4)の切断反応は、化合物(4)のエステル結合の分解反応である。該分解反応は、熱分解反応、または、求核剤もしくは求電子剤の存在下に行う分解反応により行うことが好ましく、求核剤もしくは求電子剤の存在下に行う分解反応が特に好ましい。
【0085】
化合物(4)を液相中で求核剤または求電子剤と反応させ、エステル結合の分解反応を行う場合、該反応は、分解反応溶媒の存在下に行っても不存在下に行ってもよい。化合物(4)自身が溶媒としても作用し、反応生成物中から溶媒を分離する必要がない点で、分解反応溶媒の不存在下で行うことが好ましい。求核剤としてはF
−が好ましく、アルカリ金属のフッ化物由来のF
−が特に好ましい。アルカリ金属のフッ化物としては、NaF、NaHF
2、KF、CsFが好ましく、反応性の点から、KFが特に好ましい。
【0086】
F
−を求核剤とするエステル結合の分解反応を行う場合には、化合物(4)のエステル結合中に存在するカルボニル基にF
−が求核的に付加し、次いで、−OCF
2−R
AF−CF
2O−が脱離するとともに化合物(6)が生成する。−OCF
2−R
AF−CF
2O−からはさらにF
−が脱離して化合物(5)が生成する。脱離したF
−は別の化合物(4)分子と同様に反応する。したがって、反応の最初に用いる求核剤は触媒量であっても、過剰量であってもよい。F
−等の求核剤の量は、化合物(4)に対して0.1〜500モル%が好ましく、0.1〜100モル%がより好ましく、0.5〜50モル%が特に好ましい。
反応温度は、−30℃以上、かつ、溶媒または化合物(4)の沸点以下の温度が好ましく、−20〜250℃が特に好ましい。
分解反応は、蒸留塔をつけた反応装置で蒸留をしながら実施することが好ましい。
【0087】
なお、以上説明した方法において、工程(III)で生成した化合物(6)と、工程(I)で用いる化合物(2)とが同一の化合物である場合には、工程(III)で生成した化合物(6)を工程(I)で化合物(2)として用いる(リサイクル)ことにより、化合物(5)を連続製造できる。たとえば、生成した化合物(6)の一部または全部を化合物(2)として用いて化合物(1)と反応させる方法が挙げられる。
また、前記のように、化合物(6)はフッ素化反応溶媒として使用することもできる。したがって、化合物(1)を過剰量の化合物(6)と混合し、両者を反応させて化合物(3)を生成させることによって、化合物(3)とそれを溶解した化合物(6)とからなる溶液を形成することができる。この溶液を化合物(3)を溶解したフッ素化反応溶媒として工程(II)に使用することができる。
【0088】
〔工程(IV)および工程(V)〕
工程(IV)は、化合物(5)をヘキサフルオロプロピレンオキシド(以下、「HFPO」とも記す。)と反応させて、下式(7)で表される化合物(7)を得る工程である。工程(V)は、化合物(7)を熱分解して下式(8)で表される化合物(8)を得る工程である。化合物(8)は、環化重合が可能な含フッ素モノマーであり、フッ素樹脂の原料として有用である。化合物(5)から化合物(8)を製造する場合において、このように化合物(7)を経由する製造方法を採用することにより、化合物(8)を工程数が少なく効率よく得られる。
【0089】
FC(=O)−CF(CF
3)−O−CF
2−R
AF−C(=O)F・・・(7)
F
2C=CF−O−Q
AF−CF=CF
2・・・(8)
【0090】
(R
AF)
上記と同じ意味、すなわち、R
Aの水素原子のすべてがフッ素化された基を示す。
【0091】
(Q
AF)
Q
AF:R
AFの炭素数が1の場合、Q
AFは単結合である。R
AFの炭素数が2以上の場合、Q
AFはR
AFよりも炭素数が1つ少なく、2価飽和炭化水素基または部分ハロゲン化2価飽和炭化水素基の水素原子のすべてがフッ素置換された基である。
【0092】
(化合物(7))
化合物(7)としては、化合物(5−1)にHFPOを反応させて得られる下記化合物(7−1)が挙げられる。
FC(=O)−CF(CF
3)−O−CF
2−(CF
2)
n−C(=O)F・・・(7−1)
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
【0093】
(化合物(8))
化合物(8)としては、化合物(7−1)を熱分解して得られる下記化合物(8−1)が挙げられる。
F
2C=CF−O−(CF
2)
n−1−CF=CF
2・・・(8−1)
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
なかでも、nが3であるF
2C=CF−O−(CF
2)
2−CF=CF
2とnが2であるF
2C=CF−O−CF
2−CF=CF
2は、環化重合が可能な含フッ素モノマーとして特に有用である。得られる重合体としては、旭硝子社製CYTOP(登録商標)が挙げられる。
【0094】
化合物(5)とHFPOとを反応させて化合物(7)を得る反応は、溶媒の存在下に実施しても不存在下に実施してもよい。溶媒を使用する場合、溶媒としてはテトラグライムが好ましい。反応温度は、−50〜0℃が好ましく、反応制御のしやすさ、化合物(7)の選択率の点からは、−15〜−5℃が特に好ましい。反応は、常圧で実施することが好ましく、具体的には、−0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)が特に好ましい。反応は、水分、酸性成分の不存在下に行う。
【0095】
化合物(7)を熱分解する反応は、気相において触媒の存在下で行うことが好ましい。たとえば、流動層型の反応装置を用い、触媒としてガラスビーズを充填した反応器で反応を実施する方法が挙げられる。この方法によれば、化合物(7)を一旦金属塩にすることなく、化合物(7)から直接一段階で、化合物(8)を得られる。
反応は、化合物(7)の過度な分解と化合物(7)の異性化を抑制する点からは、常圧において、反応温度が100〜350℃、化合物(7)の通過時間が1〜30秒間の条件下で行うことが好ましい。なお、通過時間とは、化合物(7)が、触媒が充填されている部分である触媒充填層と接触している時間である。
【0096】
〔工程(VI)〕
工程(VI)は、化合物(5)を下式(9)で表される化合物(9)と反応させて下式(10)で表される化合物(10)を得る工程である。化合物(10)は、R
AF基を有するジイソシアネート化合物に変換することができ、R
AF基を有するジイソシアネート化合物は含フッ素ポリウレタン樹脂原料や医療用接着材の中間体等として有用である。
【0097】
HO−R・・・(9)
R−OC(=O)−R
AF−C(=O)O−R・・・(10)
【0098】
(R)
Rは、−CH
3、−CH
2CH
3および−CH(CH
3)
2から選ばれる基である。
【0099】
(R
AF)
上記と同じ意味、すなわち、R
Aの水素原子のすべてがフッ素置換された基を示す。
【0100】
(化合物(9))
化合物(9)としては、CH
3OH、CH
3CH
2OHおよび(CH
3)
2CHOHのいずれかである。
【0101】
(化合物(10))
化合物(10)としては、化合物(5−1)に化合物(9)を反応させて得られる下記化合物が挙げられる。
R−OC(=O)−(CF
2)
n−C(=O)O−R
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
【0102】
化合物(5)と化合物(9)との反応は、溶媒の存在下に行っても不存在下に行ってもよい。溶媒としては、化合物(10)と反応性がなく、かつ、化合物(10)と蒸留分離、カラム分離等の方法で分離可能な溶媒が好ましい。化合物(9)自身が溶媒としても作用するため、溶媒の不存在下で行うことができる。反応温度の下限値は−20℃が好ましい。反応温度の上限値は、100℃および溶媒の沸点のうち、低い温度とすることが好ましい。反応温度は0〜40℃が特に好ましい。圧力は、0〜2MPa(ゲージ圧)が好ましい。
【0103】
化合物(5)と化合物(9)との反応においては、HFが副生する。副生したHFを除去するには、HF捕捉剤またはアルカリ水溶液を用いることが好ましい。該HF捕捉剤としては、先に例示したものを同様に使用できる。アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。HF捕捉剤を使用しない場合には、HFが気化しうる反応温度で反応を行い、かつ、HFを窒素気流に同伴させて反応系外に排出することが好ましい。HF捕捉剤またはアルカリ水溶液の使用量は、化合物(5)に対して1〜10倍モルが好ましい。
【0104】
〔工程(IV)および工程(VII)〕
工程(IV)は、前述の通り、化合物(5)をHFPOと反応させて、下式(7)で表される化合物(7)を得る工程である。工程(VII)は、化合物(7)を熱分解してR
1OHと反応させて下式(11)で表される化合物(11)を得る工程である。化合物(11)は、フッ素樹脂の原料として有用である。化合物(5)から化合物(11)を製造する場合において、このように化合物(7)を経由する製造方法を採用することにより、化合物(11)を工程数が少なく効率よく得られる。
【0105】
FC(=O)−CF(CF
3)−O−CF
2−R
AF−C(=O)F・・・(7)
F
2C=CF−O−R
AF−C(=O)OR
1・・・(11)
【0106】
(R
AF)
上記と同じ意味、すなわち、R
Aの水素原子のすべてがフッ素置換された基を示す。
(R
1)
R
1:炭素数1〜10のアルキル基。
【0107】
(化合物(11))
化合物(11)としては、化合物(7−1)を熱分解してR
1OHと反応して得られる下記化合物(11−1)が挙げられる。
F
2C=CF−O−(CF
2)
n−C(=O)OR
1・・・(11−1)
ただし、nは式(1−1)中のnと同じである。
なかでも、R
1がCH
3である(すなわちR
1OHはメタノール)F
2C=CF−O−(CF
2)
n−C(=O)OCH
3は、含フッ素モノマーとして含フッ素重合体の製造に有用であり、nは特に3が好ましい。
化合物(7)を熱分解して(11)を合成する反応は、気相において触媒の存在下で行うことが好ましい。たとえば、流動層型の反応装置を用い、触媒としてガラスビーズを充填した反応器で反応を実施する方法が挙げられる。触媒層を通過後、メタノールと反応させることで、化合物(7)を一旦単離することなく、化合物(7)から直接化合物(11)を得られる。
反応は、化合物(7)の過度な分解を抑制する点からは、常圧において、反応温度が100〜350℃、好ましくは150〜250℃で、化合物(7)の通過時間が1〜20秒間の条件下で行うことが好ましい。なお、通過時間とは、化合物(7)が、触媒が充填されている部分である触媒充填層と接触している時間である。
【0108】
以上説明したように本発明の製造方法では、工程(II)において、工程(I)で化合物(1)および化合物(2)を反応させて得られた化合物(3)をフッ素化するため、化合物(4)を高収率で得ることができる。
そして、工程(III)〜(V)を行うことにより、化合物(4)から化合物(5)および化合物(6)を得て、化合物(5)から化合物(7)を経て化合物(8)を得ることができる。化合物(8)は、環化重合が可能な含フッ素モノマーとして有用である。
また、工程(VI)において、化合物(5)から化合物(10)を得ることができる。化合物(10)は、医療用接着材の中間体等として有用である。
また、工程(VII)において、化合物(5)から化合物(11)を得ることができる。化合物(11)は、含フッ素モノマーとして有用である。
化合物(8)と化合物(11)は、含フッ素モノマーとして単独で重合して含フッ素重合体を得ても、併用して重合して含フッ素重合体を得てもよい。
【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。例1〜5および例11、12は実施例、例6〜10は比較例である。
【0110】
例中の略号は以下を意味する。
(HFPO)
3:CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)C(=O)F
TMS:テトラメチルシラン
【0111】
〔GC純度〕
ガスクロマトグラム(GC)のピーク面積比より求めた粗液中の化合物(3)の割合を百分率で表した値(モル%)。
〔
19F−NMRおよび
1H−NMRの測定〕
内部基準試料として、
19F−NMRでの測定にはペルフルオロベンゼン(C
6F
6)を用い、
1H−NMRでの測定にはTMSを用いた。
NMRスペクトルデータは、見かけの化学シフト範囲として示した。
〔
19F−NMR転化率〕
フッ素化反応に供給する化合物(3)の量のうち、転化した化合物(3)の量をモル基準の百分率で表した値(モル%)であり、計算式:100−(回収未反応化合物(3)量/供給化合物(3)量)×100により求められる。
具体的には、フッ素化反応に供給する化合物(3)の量は実測値であり、回収された未反応化合物(3)の量は、オートクレーブから取り出された回収物の
19F−NMR測定により求めた値である。
〔
19F−NMR収率〕
フッ素化反応に供給する化合物(3)の量に対する、回収された化合物(4)の量(生成量)をモル基準の百分率で表した値(モル%)であり、計算式:(回収化合物(4)量/供給化合物(3)量)×100により求められる。
具体的には、フッ素化反応に供給する化合物(3)の量は実測値であり、回収された化合物(4)の量は、オートクレーブから取り出された回収物の
19F−NMR測定により求めた値である。
【0112】
〔例1〕
(例1−1)(CF
3)
2CFCOO(CH
2)
5OCOCF(CF
3)
2(化合物(3−1)に相当。)の製造
5Lのフラスコに、HO(CH
2)
5OH(化合物(1−1)に相当。)の1,000gを加え、窒素ガスをバブリングしながら攪拌した。次に、(CF
3)
2CFC(=O)F(化合物(2−1)に相当。)の4,400gを、該フラスコの内温を25〜30℃に保ちながら2.5時間かけて液相中に供給(バブリング)した。供給終了後、室温で15時間攪拌し、得られた粗液を回収した。
該粗液のGC純度は95%であった。
また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し、主成分は標記化合物(フッ素含有量=53.6質量%)であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、2H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−74.3(12F)、−181.9(2F)。
【0113】
(例1−2)(CF
3)
2CFCOO(CF
2)
5OCOCF(CF
3)
2(化合物(4−1)に相当。)の製造
3,000mLのニッケル製オートクレーブに、フッ素化反応溶媒として(HFPO)
3の2,800gを加えて攪拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には−20℃に保持した冷却機を設置した。窒素ガスを1.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで希釈したフッ素ガス量が50体積%の希釈フッ素ガス(以下、「50%フッ素ガス」と記す。)を吹き込み速度36L/時間で1時間吹き込んだ。
次に、50%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1−1で得た(CF
3)
2CFCOO(CH
2)
5OCOCF(CF
3)
2の40gを2時間かけて注入した。さらに、50%フッ素ガスを同じ流速で1時間吹き込み、さらに窒素ガスを1時間吹き込んだ。
オートクレーブからの回収物中の生成物は標記化合物を主生成物とし、
19F−NMR収率は96%、
19F−NMR転化率は98%であった。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−74.3(s、12F)、−86.1(4F)、−122.6(2F)、−125.7(4F)、−181.9(2F)。
【0114】
〔例2〕(CF
3)
2CFCOO(CF
2)
5OCOCF(CF
3)
2(化合物(4−1)に相当。)の製造
例1−1と同様にして(CF
3)
2CFCOO(CH
2)
5OCOCF(CF
3)
2を得た。次に、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
【0115】
〔例3〕
(例3−1)(CF
3)
2CFCOO(CH
2)
6OCOCF(CF
3)
2(化合物(3−1)に相当。)の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は96%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物(フッ素含有量=52.2質量%)であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、4H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−74.3(12F)、−181.9(2F)。
【0116】
(例3−2)(CF
3)
2CFCOO(CF
2)
6OCOCF(CF
3)
2(化合物(4−1)に相当。)の製造
オートクレーブに注入する化合物を例3−1で得た(CF
3)
2CFCOO(CH
2)
6OCOCF(CF
3)
2とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−74.3(s、12F)、−86.1(4F)、−122.6(4F)、−125.7(4F)−181.9(2F)。
【0117】
〔例4〕
(例4−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
6OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(3−2)に相当。)の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は97%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物(フッ素含有量=60.1質量%)であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、4H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.9(4F)、−80.5(6F)、−83.1(16F)、−130.7(4F)、−132.7(2F)、−145.2(2F)。
【0118】
(例4−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CF
2)
6OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(4−2)に相当。)の製造
オートクレーブに注入する化合物を例4−1で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
6OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.9(4F)、−80.5(6F)、−83.1(16F)、−86.1(4F)、−122.6(4F)、−125.7(4F)、−130.7(4F)、−132.7(2F)、−145.2(2F)。
【0119】
〔例5〕
(例5−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(3−2)に相当。)の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は95%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物(フッ素含有量=60.9質量%)であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、2H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.9(4F)、−80.5(6F)、−83.1(16F)、−130.7(4F)、−132.7(2F)、−145.2(2F)。
【0120】
(例5−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CF
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(4−2)に相当。)の製造
オートクレーブに注入する化合物を例5−1で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.9(4F)、−80.5(6F)、−83.1(16F)、−86.1(4F)、−122.6(2F)、−125.7(4F)、−130.7(4F)、−132.7(2F)、−145.2(2F)。
【0121】
〔例6〕
(例6−1)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
4OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(3−3)に相当。)の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は97%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物(フッ素含有量=58.5質量%)であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm)1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.5(6F)、−80.9(4F)、−83.1(6F)、−130.7(4F)、−145.2(2F)。
【0122】
(例6−2)
CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO(CF
2)
4OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(4−3)に相当。)の製造
オートクレーブに注入する化合物を例6−1で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO(CH
2)
4OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.5(6F)、−80.9(4F)、−83.1(6F)、−122.6(4F)、−126.6(4F)−130.7(4F)、−145.2(2F)。
【0123】
〔例7〕
(例7−1)CF
3CF
2COO(CH
2)
5OCOCF
2CF
3の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は97%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、2H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.0(6F)、−121.4(4F)。
【0124】
(例7−2)CF
3CF
2COO(CF
2)
5OCOCF
2CF
3の製造
オートクレーブに注入する化合物を例7−1で得たCF
3CF
2COO(CH
2)
5OCOCF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行ったが、燃焼反応が起こり、オートクレーブから回収できた回収物中には多種の生成物が確認された。該回収物中の標記化合物の
19F−NMR収率を表1に示す。NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.0(6F)、−86.1(4F)、−121.4(4F)、−122.6(2F)、−125.7(4F)。
【0125】
〔例8〕
(例8−1)CF
3CF
2COO(CH
2)
6OCOCF
2CF
3の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は96%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.42−1.53(m、4H)、1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.0(6F)、−121.4(4F)。
【0126】
(例8−2)CF
3CF
2COO(CF
2)
6OCOCF
2CF
3の製造
オートクレーブに注入する化合物を例8−1で得たCF
3CF
2COO(CH
2)
6OCOCF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.0(6F)、−86.1(4F)、−121.4(4F)、−122.6(4F)、−125.7(4F)。
【0127】
〔例9〕
(例9−1)CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCH
2CH(CH
3)O(CH
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は95%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm):1.19(3H)、1.39−1.49(2H)、1.54−1.63(2H)、1.71−1.80(2H)、3.39−3.53(2H)、3.66−3.72(1H)、4.21−4.46(4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−80.9(2F)、−82.3(6F)、−83.1(6F)、−87.4(2F)、−130.7(4F)、−132.7(2F)。
【0128】
(例9−2)CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3の製造
オートクレーブに注入する化合物を例9−1で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCH
2CH(CH
3)O(CH
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3とし、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例1−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
NMRスペクトル
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−79.2〜−80.7(7F)、−81.5〜82.0(12F)、−85.9〜−87(6F)、−122,4(2F)、−125.3(4F)−129.6(4F)、−131.4(2F)、−144.9(1F)。
【0129】
〔例10〕CF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCF
2CF(CF
3)O(CF
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3の製造
例9−1と同様にしてCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COOCH
2CH(CH
3)O(CH
2)
5OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3を得た。そして、フッ素化反応の条件を表1の条件とした以外は、例9−2と同様に操作を行った。オートクレーブからの回収物中の生成物の主生成物は標記化合物であった。
19F−NMR収率および
19F−NMR転化率を表1に示す。
【0130】
〔例11〕
(例11−1)CF
3CF
2COO(CH
2)
4OCOCF
2CF
3の製造
表1に記載のように出発原料を変更した以外は、例1−1と同様の操作を行った。回収された粗液のGC純度は98%であった。また、
1H−NMRおよび
19F−NMRスペクトルを測定し主成分は標記化合物であることを確認した。
NMRスペクトル
1H−NMR(399.78MHz、溶媒:CDCl
3、基準:TMS)δ(ppm)1.70−1.84(m、4H)、4.20−4.50(m、4H)。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.0(6F)、−121.4(4F)。
【0131】
(例11−2)CF
3CF
2COO(CF
2)
4OCOCF
2CF
3の製造
3,000mLのニッケル製オートクレーブに、(HFPO)
3の2,800gを加えて攪拌し、25℃に保った。オートクレーブ出口には、−20℃に冷却した冷却器を設置した。なお、−20℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。窒素ガスを2時間吹き込んだ後、50%フッ素ガスを、流速7.8L/時間で1時間吹き込んだ。次に、50%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例11−1で得たCF
3CF
2COO(CH
2)
4OCOCF
2CF
3(25g)を6時間かけて注入した。さらに、50%フッ素ガスを同じ流速で1時間吹き込み、さらに窒素ガスを1時間吹き込んだ。オートクレーブからの回収物中の生成物は標記化合物を主生成物とし、
19F−NMR収率51%、19F−NMR転化率は80%であった。
さらに、50%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例11−1で得たCF
3CF
2COO(CH
2)
4OCOCF
2CF
3(25g)を6時間かけて注入した。さらに、50%フッ素ガスを同じ流速で1時間吹き込み、さらに窒素ガスを1時間吹き込んだ。生成物は標記化合物を主生成物とし、
19F−NMR収率83%、
19F−NMR転化率は100%であった。
19F−NMR(376.17MHz、溶媒:CDCl
3、基準:C
6F
6)δ(ppm):−83.8(6F)、−87.3(4F)、−122.6(4F)、−126.6(4F)。
【0132】
【表1】
【0133】
例1〜6では、フッ素化反応により、目的物を高収率で得ることができた。なかでも、例1、3〜6では、フッ素ガス量が高い条件(50体積%)において、目的物を高収率で得ることができた。これに対して例7〜11では、目的物を高収率で得ることができなかった。たとえば、フッ素ガス量が高い条件でフッ素化反応を行った例7〜9では、転化率は高いものの目的物の選択率が低く、そのため収率は低かった。フッ素ガス量が低い条件でフッ素化反応を行った例10では、目的物の選択率はやや向上したが、充分な収率は得られなかった。例11では、フッ素化される化合物の注入時間(反応時間)を延長して転化率を高めたが、選択率は低く、充分な収率は得られなかった。
【0134】
〔例12〕
(例12−1)FC(=O)(CF
2)
3C(=O)Fの製造(化合物(5−1)に相当。)
1Lのフラスコに、例1−2で得た(CF
3)
2CFCOO(CF
2)
5OCOCF(CF
3)
2(化合物(4−1)に相当。)の500gを仕込み、次いでKF粉末の4.1gを仕込み、激しく攪拌を行いながら、オイルバス中で100℃で5時間加熱した。フラスコ上部には、20℃に温度調節した還流器およびガス捕集用フッ素樹脂容器を直列に設置した。加熱後に冷却し、液状サンプルとガス状サンプルを回収し、液状サンプルを蒸留精製した。GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。収率は82モル%であった。該収率は、仕込み組成より理論上得られる目的化合物のモル数を100%とした時の、蒸留精製で得られた回収フラクション中に含まれる目的化合物のモル%を意味する。
【0135】
(例12−2)FC(=O)CF(CF
3)O(CF
2)
4C(=O)Fの製造(化合物(7−1)に相当。)
2Lのオートクレーブに、例12−1で得たFOC(CF
2)
3COFの360g、フッ化セシウムの11.4g、テトラグライムの56.8gを仕込み、−10℃にオートクレーブを保ちながら、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの260gを添加した。反応終了後、下層を回収し、蒸留精製し、GC−MSにより、標記化合物が主生成物であることを確認した。例12−1と同様の定義による目的化合物の収率は60モル%であった。
【0136】
(例12−3)F
2C=CFO(CF
2)
2CF=CF
2の製造(化合物(8−1)に相当。)
インコネル製1インチ反応管に、充填高が20cmになるようにガラスビーズを充填し、330℃に熱した。例12−2で得たFC(=O)CF(CF
3)O(CF
2)
4C(=O)Fの500gを、窒素ガスで10体積%になるように希釈して、反応管に導入した。線速を2.0cm/秒に制御し、反応ガスのガラスビーズ層中での通過時間を10秒に保ちながら反応を行った。反応出口ガスはドライアイス−エタノールトラップで捕集した。トラップ捕集液を蒸留精製し、GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。例12−1と同様の定義による目的化合物の収率は48モル%であった。
【0137】
(例12−4)F
2C=CFO(CF
2)
2CF=CF
2(化合物(8−1)に相当。)の重合
1Lセパラブルフラスコに、例12−3で得たF
2C=CFO(CF
2)
2CF=CF
2の150g、メタノールの28.0g、開始剤([(CH
3)
2CHOCO]
2の10質量%1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン溶液。)の3.8g、分散剤(日本乳化剤社製、商品名:ニューコール714SN)の5.7g、超純水の800gを仕込み、40℃にて20時間、50℃にて6時間の計26時間攪拌し、懸濁重合を行った。得られたポリマー粒子(環化重合体)の収率は88%であり、固有粘度は0.34であった。環化重合体はパーフルオロトリブチルアミンなどのパーフルオロ溶媒に溶解し、シリコンウエハやガラス上に薄膜コーティングを形成でき、透明でタフなポリマーであった。
ポリマー粒子の収率は、仕込んだ単量体の質量を100%とした時の、得られたポリマー粒子の質量%である。
固有粘度は、下式(A)で定義される。固有粘度の測定は、以下のように行った。ポリマー粒子を1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタンに溶解した溶液を調製し、濃度cを希釈しながら、その流下速度をウベローデ型粘度管で計測した。固有粘度は、ηsp/cとcを両対数プロットし、その濃度cを0に外挿入した外挿値である。
固有粘度[η]=lim(ηsp/c)…(A)
ただし、c=ポリマー濃度(g/dL)、ηsp=t1/t0−1(t0:溶媒の流下時間、t1:溶液の流下時間)。
【0138】
〔例13〕
(例13−1)FC(=O)(CF
2)
4C(=O)Fの製造(化合物(5−1)に相当。)の製造
1Lのフラスコに、例4−2で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COO(CF
2)
6OCOCF(CF
3)OCF
2CF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3の500g、KF粉末の2.1gを仕込み、激しく攪拌しながら、オイルバス中で100℃で5時間加熱した。フラスコ上部には20℃に温度調節した還流器を設置した。冷却後液状サンプルを回収し、蒸留精製した。GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。収率は85モル%であった。該収率は、例12−1と同様にして求めた。
【0139】
(例13−2)H
3COC(=O)(CF
2)
4C(=O)OCH
3の製造(化合物(10)に相当。)
500mLのフラスコに、例13−1で得たFC(=O)(CF
2)
4C(=O)Fの300gを仕込み、10℃に保ちながら、メタノール(化合物(9)に相当。)の110gを添加した。2時間攪拌した後、水酸化カリウム水溶液を加えて下層を回収し、蒸留精製した。GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。例12−1と同様の定義による目的化合物の収率は87モル%であった。
【0140】
〔例14〕
(例14−1)FC(=O)(CF
2)
2C(=O)Fの製造(化合物(5−1)に相当。)
1Lのフラスコに、例6−2で得たCF
3CF
2CF
2OCF(CF
3)COO(CF
2)
4OCOCF(CF
3)OCF
2CF
2CF
3(化合物(4−3)に相当。)の1,000gを仕込み、次いでKF粉末の6.5gを仕込み、激しく攪拌を行いながら、オイルバス中で100℃で5時間加熱した。フラスコ上部には、20℃に温度調節した還流器およびガス捕集用フッ素樹脂容器を直列に設置した。加熱後に冷却し、液状サンプルとガス状サンプルを回収し、液状サンプルを蒸留精製した。GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。収率は85モル%であった。該収率は、仕込み組成より理論上得られる目的化合物のモル数を100%とした時の、蒸留精製で得られた回収フラクション中に含まれる目的化合物のモル%を意味する。
【0141】
(例14−2)FC(=O)CF(CF
3)O(CF
2)
3C(=O)Fの製造(化合物(7−1)に相当。)
2Lのオートクレーブに、例14−1で得たFOC(CF
2)
2COFの500g、フッ化セシウムの39.1g、テトラグライムの115gを仕込み、−10℃にオートクレーブを保ちながら、ヘキサフルオロプロピレンオキシドの470gを添加した。反応終了後、下層を回収し、蒸留精製し、GC−MSにより、標記化合物が主生成物であることを確認した。例14−1と同様の定義による目的化合物の収率は62モル%であった。
【0142】
(例14−3)F
2C=CFO(CF
2)
3C(=O)OCH
3の製造(化合物(9−1)に相当。)
インコネル製1インチ反応管に、充填高が20cmになるようにガラスビーズを充填し、250℃に熱した。例14−2で得たFC(=O)CF(CF
3)O(CF
2)
3C(=O)Fの500gを、窒素ガスで10体積%になるように希釈して、反応管に導入した。線速を2.0cm/秒に制御し、反応ガスのガラスビーズ層中での通過時間を10秒に保ちながら反応を行った。反応出口ガスはメタノールを張り込んだドライアイス−エタノールトラップで捕集した。トラップ捕集液を蒸留精製し、GC−MSにより分析した結果、標記化合物が主生成物であることを確認した。例14−1と同様の定義による目的化合物の収率は42モル%であった。