(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<1.装置構成>
図1は、絶縁検査装置1の概略構成を示す概略構成図である。
【0020】
絶縁検査装置1は、被検査基板(回路基板)に設けられた複数の配線パターンの相互間の絶縁検査を行う絶縁検査装置である。被検査基板としては、プリント配線基板、フレキシブル基板、多層配線基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板などの種々の基板が例示される。
【0021】
図1に示すように、絶縁検査装置1は、電源2、電圧計3、電流計5、制御部7および記憶部8を備えて構成される。
【0022】
電源2は、複数の配線パターンの中から順次選択される絶縁検査の対象配線パターン(絶縁検査対象配線パターン)の相互間に対して比較的高い電圧(たとえば200V)を印加する。絶縁検査の対象配線パターンは、絶縁検査における電圧印加時において電源2の上流側(陽極側ないし高電位側)端子に接続される上流側配線パターンPAと、当該電圧印加時において電源2の下流側(陰極側ないし低電位側)に接続される下流側配線パターンPBとの両配線パターンに分類される。なお、上流側配線パターンPAと電源2の上流側端子とはプローブを用いて電気的に接続され、下流側配線パターンPBと電源2の下流側端子とは別のプローブを用いて電気的に接続される。
【0023】
電源2は、ここでは可変電圧源として構成される。また、電源2は、電圧印加時における供給電流を一定値に調整することも可能である。すなわち、電源2は、一定値の電流(供給電流)を供給して配線パターンPA,PB相互間の静電容量を「充電」しつつ、配線パターンPA,PB相互間の電圧を任意の出力電圧値Vαに到達させることが可能である。なお、配線パターンPA,PB相互間の静電容量の充電が完了すると、基本的には電源2からの電流は上記一定値よりも小さな値に低減することから、上記一定値は供給電流の制限値(上限値)であるとも表現される。また、後述するように、電源2からの供給電流(詳細にはその制限値)は、複数の値(たとえば値I1,I2)のいずれかに設定され得る。
【0024】
電圧計3は、電源2による電圧印加に伴って生じる絶縁検査対象配線パターンPA,PB間の電圧(具体的には、上流側配線パターンと下流側配線パターンとの相互間の電圧)の値を検出する。
【0025】
電流計5は、電源2による電圧印加の際に絶縁検査対象配線パターンPA,PB間に流れる電流の値を検出する。
【0026】
記憶部8は、複数の配線パターンのそれぞれに設けられた検査点(特に導通検査用の検査点)(後述)の数を配線パターンごとに記憶する。
【0027】
制御部7は、電流調整部11、電圧降下検出部12、および判定部13等を有するコントローラである。
【0028】
電流調整部11は、電源2による電圧印加の際における電源2からの供給電流を調整する処理部である。
【0029】
電圧降下検出部12は、絶縁検査対象配線パターン間に発生したスパークに起因する電圧降下の発生の有無を検出する処理部である。電圧降下検出部12は、絶縁検査対象配線パターン間に対する電圧印加の開始から絶縁検査対象配線パターン間の電圧が安定する所定のタイミングまでの期間TM(
図3(a)と(b)参照)において、電圧降下の発生の有無を検出する。電圧降下の発生の有無を検出することにより、電圧印加により発生するスパークが検出されることから、電圧降下検出部12は、スパークを検出するスパーク検出部であるとも称される。
【0030】
判定部13は、被検査基板90(
図2参照)の良否を判定する処理部である。たとえば、判定部13は、電圧降下検出部12の検出結果等に応じて、被検査基板90の良否を判定する。より具体的には、電圧降下検出部12により電圧降下が検出されると、被検査基板90が不良品である旨が判定される。また、判定部13は、所定のタイミングにおける絶縁検査対象配線パターンPA,PBに関する電圧および電流に基づいて絶縁検査対象配線パターンPA,PB間の抵抗値を算出し、当該抵抗値に基づく被検査基板の良否判定をも行う。
【0031】
図2は、被検査基板90の一例を示す図である。
図2の被検査基板90においては、基板の上面側と下面側とに複数の電極が設けられている。そして、上面側の電極と下面側の電極とは基板内部の配線パターンによって互いに電気的に接続されている。たとえば、上面側の電極P11と下面側の電極P12とは互いに電気的に接続されている。また、上面側の電極P21と下面側の電極P22,P23とは互いに電気的に接続されている。より詳細には、電極P21,P22,P23は、基板内部に設けられた導体によって、互いに電気的に接続されている。同様に、上面側の電極P31と下面側の電極P32〜P37とは互いに電気的に接続されている。より詳細には、電極P31〜P37は、基板内部に設けられた導体によって、互いに電気的に接続されている。
【0032】
ここにおいて、これらの電極は、後述する絶縁検査および導通検査における検査点として用いられる。
【0033】
たとえば、導通検査においては、上面側の電極P11と下面側の電極P12とが検査点として用いられて、2つの電極P11,P12の相互間の導通状態(良好な導電状態)が確認される。同様に、導通検査においては、電極P21,P22,P23が検査点として用いられて、3つの電極P21,P22,P23の相互間の導通状態(良好な導電状態)が確認される。より多数の電極に関する導通検査についても同様であり、各電極は導通検査における検査点として用いられる。
【0034】
また、絶縁検査においてもこれらの電極の少なくとも一部が検査点として利用される。たとえば、配線パターンPT1に設けられた2つの電極P11,P12のうちの任意の電極と、配線パターンPT2に設けられた3つの電極P21,P22,P23のうちの任意の電極とが検査点として用いられて、2つの配線パターンPT1,PT2の相互間の絶縁検査が行われる。また、配線パターンPT1に設けられた2つの電極P11,P12のうちの任意の電極と、配線パターンPT3に設けられた7つの電極P31〜P37のうちの任意の電極とが検査点として用いられて、2つの配線パターンPT1,PT3の相互間の絶縁検査が行われる。同様に、配線パターンPT2に設けられた3つの電極P21〜P23のうちの任意の電極と、配線パターンPT3に設けられた7つの電極P31〜P37のうちの任意の電極とが検査点として用いられて、2つの配線パターンPT2,PT3の相互間の絶縁検査が行われる。
【0035】
このように、各電極P11,P12,P21〜P23,P31〜P37は、各種検査(導通検査および絶縁検査を含む)における検査点として用いられる。
【0036】
ここにおいて、配線パターンPT1においては2つの検査点P11,P12が設けられており、配線パターンPT1の検査点の数は「2」である。同様に、配線パターンPT2においては3つの検査点P21〜P23が設けられており、配線パターンPT2の検査点の数は「3」である。同様に、配線パターンPT3においては7つの検査点P31〜P37が設けられており、配線パターンPT3の検査点の数は「7」である。
【0037】
また、基板内部に設けられる配線パターンには、各種信号等を伝達するための信号線で構成される配線パターンと、電源グランド用の配線パターンとが存在する。前者の信号線用の配線パターンに設けられる電極(検査点)の数は、比較的少なく、たとえば2個〜10個程度である。一方、後者の電源グランド用の配線パターン(VGライン)に設けられる電極(検査点)の数は、比較的多く、たとえば、100個〜200個程度である。
【0038】
記憶部8には、複数の配線パターンのそれぞれに設けられた上記のような検査点の数が(配線パターンごとに)記憶される。
【0039】
<2.絶縁検査概要>
この絶縁検査装置1による絶縁検査においては、被検査基板(回路基板)に設けられた複数の配線パターンのうちの絶縁検査対象配線パターンPA,PB間における絶縁状態の良否が判定される。このような絶縁検査対象配線パターンPA,PB間における絶縁状態の良否判定動作が全ての組み合わせに係る配線パターン対について実行され、全ての組み合わせに係る配線パターン対に関する絶縁状態が良好であることが判定されると、当該基板が良品である旨が判定される。一方、全ての組み合わせのうちいずれかの組み合わせに係る配線パターン対に関する絶縁状態が不良であることが判定されると、当該基板は不良品である旨が判定される。
【0040】
絶縁検査装置1は、一対の配線パターン(上流側配線パターンPAおよび下流側配線パターンPB)に対する電圧の印加が開始された後に電圧が安定した所定時点において、一対の配線パターン(PA,PB)の相互間の電圧Vと一対の配線パターン(PA,PB)の相互間に流れる電流Iとを検出する。絶縁検査装置1は、検出した両値(電圧値および電流値)に基づいて当該一対の配線パターン(PA,PB)の相互間の抵抗値を算出し、当該抵抗値に基づいて被検査基板の良品判定を行う。
【0041】
図3(a)と(b)は、電圧計で測定される電圧の経時変化を示す図である。
図3(a)と(b)を参照しながら、絶縁検査について詳細に説明する。
【0042】
まず、制御部7によりスイッチ4がオン状態にされる(時刻t0)と、電源2によって比較的高い出力電圧Vα(たとえば200V)が一対の配線パターン(PA,PB)の相互間に印加される。また、電圧計3は、一対の配線パターン(PA,PB)の相互間の電圧Vを検出(測定)し、検出結果(電圧測定値)が制御部7に入力され、電流計5は、一対の配線パターン(PA,PB)の相互間に流れる電流Iを検出し、検出結果(電流測定値)が制御部7に入力される。このようにして、制御部7は、一対の配線パターン(PA,PB)の相互間の電圧Vと電流Iとを検出(測定)する。このような検出動作は、少なくとも電圧印加の開始時点t0から時点t2に至るまでの期間TMにおいて行われる。
【0043】
図3(a)は、電圧計3によって測定された電圧Vの経時変化を示す図である。
図3(a)に示すように、電源2による電圧印加に伴って、電圧Vは、急激に上昇して所定電位Vαに到達するとその以後においては所定電位Vαに維持される。なお、
図3(b)は、絶縁抵抗値Rの経時変化を示す図である。
【0044】
そして、判定部13は、絶縁検査対象配線パターン間の電圧Vが安定する所定のタイミング(時点t2)において、電圧計3による電圧測定値Vと電流計5による電流測定値Iとに基づいて、絶縁検査対象配線パターン間の抵抗値(絶縁抵抗値)Rを算出する。そして、判定部13は、絶縁抵抗値Rに基づいて一対の配線パターン(PA,PB)の絶縁状態の良否判定を行う。具体的には、絶縁抵抗値Rが所定の閾値Rrefよりも大きい場合には、一対の配線パターン(PA,PB)の絶縁状態は良好であると判定される。一方、絶縁抵抗値Rが所定の閾値Rrefよりも小さい場合には、一対の配線パターン(PA,PB)の絶縁状態は不良であると判定される。なお、一対の配線パターン(PA,PB)に対する出力印加の開始直後は、電流値が不安定である。そのため、絶縁状態判定動作は、一対の配線パターン(PA,PB)に対する出力印加の開始直後ではなく、一対の配線パターン(PA,PB)の電圧Vが印加電圧Vαに到達して安定した後の時点t2にて、行われることが好ましい。
【0045】
<3.電圧降下検出によるスパーク検出>
つぎに、電圧降下検出によるスパーク検出について説明する。
【0046】
上記のような絶縁検査においては、絶縁検査対象配線パターン間に比較的高い電圧Vαが印加される。そのため、上述のように、絶縁検査対象配線パターン間(より詳細には、不十分な絶縁状態を有していた部分)においてスパークが発生することがある。スパークが発生した部位は大電流の通過によって損傷を受けており、当該部位においては絶縁特定の信頼性が低下している。当該損傷を受けた基板が良品として判定されることは、好ましくない。
【0047】
なお、スパークが発生した場合には、絶縁抵抗は、たとえば曲線LCあるいは曲線LDのように変化する。ここで、絶縁抵抗が曲線LDに示すように変化する場合には、時刻t2における判定結果のみによって絶縁不良を適切に検出することが可能である。しかしながら、絶縁抵抗が曲線LCに示すように変化する場合には、時刻t2における判定結果のみによって絶縁不良を適切に検出することはできない。このように、時刻t2における判定結果のみを利用する場合には、不良基板の検出精度が低下する。
【0048】
ここにおいて、スパークが発生すると、当該スパークに係る電流が流れることに応じて電圧計3による検出値Vが基本的には減少する。このような性質を利用して、絶縁検査装置1においては、上述のような電圧Vの減少(すなわち電圧降下)が電圧降下検出部12によって期間TM(時点t0から時点t2に至る期間)内に検出される場合には、スパークが発生した旨が判定される。そして、スパークが発生した旨が判定される場合には、判定部13は、現在の検査対象の基板が不良品である旨を判定する。
【0049】
このような判定処理によれば、スパークが発生した基板をより確実に不良品として区別することが可能である。
【0050】
ところで、絶縁検査においては、当該絶縁検査に要する時間を短縮するため、期間TM(一対の配線パターンに電圧を印加し始めた時点t0から当該電圧が安定する所定時点t2までの期間)、特に、時点t0から電圧が所定値Vαにほぼ到達する時点t5までの期間、をできるだけ短縮することが好ましい。そのため、当該期間TMにおいて一対の配線パターンに電圧を印加する際には、一対の配線パターンに比較的大きな電流(たとえば数十ミリアンペア)を流すことが行われる。
【0051】
しかしながら、多数の配線パターンから抽出されたいずれの一対の配線パターンについても比較的大きな電流を一律に供給すると、電圧降下を適切に検出できずスパークの発生を適切に検出できないことがあるとの知見が得られた。
【0052】
たとえば、短い信号線で構成される配線パターン(たとえばPT1)に対して、比較的大きな電流を供給しつつ電圧を印加する際には、電圧降下が検出できないことがあることが判明した。
【0053】
一般的には電圧印加中にスパーク電流が流れるとスパーク電流に応じた電圧降下が生じる。たとえば、
図5の破線L1においては、降下量ΔV1の電圧降下が生じている様子が示されている。なお、
図5は、
図3(a)の一部を拡大して示す図である。
【0054】
しかしながら、比較的短い信号線で構成される配線パターン(詳細には上流側配線パターン)に対して比較的大きな電流I1が供給される場合において、その供給電流I1がスパーク電流ISに比較的近い大きさを有することがある。そして、このときには、当該電流I1が更に供給されることよって、
図5の破線L2に示すように、電圧降下における降下量ΔVが比較的小さな値ΔV2(<ΔV1)に止まる。降下量ΔV2が検出精度(検出可能な最小値)よりも小さくなると、スパークに起因する電圧降下を適切に検出することができない。すなわち、スパークの発生を適切に検出することができない。
【0055】
また、供給電流I1がスパーク電流ISよりも大きいときには、比較的大きな電流I1が更に供給されることに起因して、
図5の破線L3に示すように、電圧降下自体が生じないこともある。この場合にも、スパークの発生を適切に検出することができない。
【0056】
ここにおいて、スパーク電流は、期間TMにおける電圧印加時において電源2から上流側配線パターンPAに供給され蓄積された正電荷が絶縁不良部分(銅粉付着部分等)に流れることなどによって発生する。したがって、(電圧が同じであれば、)上流側(陽極側)配線パターンPAの静電容量が大きくなるにつれてスパーク電流は大きくなる。逆に言えば、上流側配線パターンPAの静電容量が小さくなるにつれてスパーク電流は小さくなる。
【0057】
その結果、上流側配線パターンの静電容量が大きくスパーク電流ISが大きい場合には、供給電流I1に対してスパーク電流ISも相対的に十分に大きくなり、電圧降下が検出され易くなる(破線L1参照)。
【0058】
一方、上流側配線パターンの静電容量が小さくスパーク電流ISが小さい場合には、供給電流I1に対してスパーク電流ISが相対的に十分に大きくならず(たとえば、供給電流I1とスパーク電流ISとが比較的近い大きさを有し)、電圧降下が検出され難くなる(破線L2,L3参照)。
【0059】
上記の現象は、このような事情により発生していると考えられる。
【0060】
そこで、この実施形態においては、全ての一対の配線パターンの絶縁検査において、比較的大きな電流を一律に流すのではなく、検査対象の配線パターン(詳細には上流側配線パターンPA)の特質に応じて、期間TMにおける電源2からの供給電流を調整する。
【0061】
また、ここでは、検査対象の配線パターン(詳細には上流側配線パターンPA)の特質を、配線パターン(詳細には上流側配線パターンPA)に設けられた検査点の数Nを用いて表現する。
【0062】
上述のような配線パターンに設けられた検査点の数Nは、配線パターンの静電容量(配線パターンの長さないし面積等)との間に一定程度の相関関係を有する。一般に、比較的少ない検査点(たとえば、N=「2」)を有する配線パターンの長さ(ひいては面積)は、比較的多数の検査点(たとえば、N=「100」)を有する配線パターンの長さ(ひいては面積)よりも小さい。したがって、比較的少ない検査点(たとえば、N=「2」)を有する配線パターンの静電容量は、比較的多数の検査点(たとえば、N=「100」)を有する配線パターンの静電容量よりも小さい。そこで、この実施形態においては、配線パターンの静電容量を、配線パターンに設けられた検査点の数Nで判断するものとする。
【0063】
なお、各配線パターンの実際の長さ(面積)を求めることは必ずしも容易ではない。これに対し、各配線パターンに設けられた検査点の数を用いることによれば、比較的簡易に配線パターンの静電容量を考慮することが可能である。特に、検査点の数に関してオーダー(10個レベルなのか100個レベルなのか等)が異なるような差異が存在する場合には、上記のような検査点の数は配線パターンの面積等を非常に良好に反映し得る。
【0064】
そして、絶縁検査装置1は、検査対象の配線パターン(詳細には上流側配線パターンPA)に設けられた検査点の数Nに応じて、期間TMにおける電源2からの供給電流を調整する。より詳細には、電圧印加時における電源2からの供給電流の設定値(換言すれば、その供給電流の制限値(上限値))が検査点の数Nに応じて変更される。
【0065】
より具体的には、配線パターンPAに設けられた検査点の数Nが所定数Nr(たとえば50個)よりも大きい場合には、電流調整部11は、供給電流(より詳細にはその制限値)を比較的大きな電流値I1(たとえば、I1=数十ミリアンペア)に設定する。一方、検査点の数Nが所定数Nrよりも小さい場合には、電流調整部11は、供給電流(より詳細にはその制限値)を比較的小さな電流値I2(<I1)(たとえば、I2=数ミリアンペア)に設定する。
【0066】
検査点の数Nが所定数Nr(たとえば80個)よりも大きい場合には、電源2からの供給電流が比較的大きな電流値I1に設定されることによって、期間TMが長大化することを防止できる。換言すれば、期間TMを短縮することによって、絶縁検査における所要時間を低減することができる。
【0067】
また、検査点の数Nが所定数Nrよりも小さい場合には、電源2からの供給電流が比較的小さな電流値I2(<I1)に設定されるので、上述の現象(スパーク電流の発生時において電源からの過剰な電流供給により電圧降下が生じにくくなる現象)を抑制することが可能である。したがって、スパークの発生をさらに確実に検出することが可能である。
【0068】
なお、
図3(a)および
図5においては、上流側配線パターンの電位がゼロから所定電位Vαに向けて上昇する期間においてスパークが発生する態様が例示されているが、これに限定されない。時点t5(上流側配線パターンの電位がほぼ所定値Vαにまで上昇した時点)から所定時点t2までの期間にでスパークが発生することもある。電源2からの供給電流を上述のようにして調整することによれば、そのようなスパーク(詳細には当該スパークに起因する電圧降下)をも好適に検出することが可能である。
【0069】
<4.動作詳細>
つぎに、
図4を参照しながら、絶縁検査装置1における動作についてさらに詳細に説明する。
図4は、絶縁検査装置1の動作を示すフローチャートである。
【0070】
図4のステップS11に示すように、まず電源2からの供給電流(詳細にはその制限値)が設定される。具体的には、上述のように、検査対象の配線パターン(詳細には上流側配線パターンPA)に設けられた検査点の数Nに応じて、期間TMにおける電源2からの供給電流が設定される。たとえば、N=3のときには、電源2からの供給電流は比較的小さな電流値I2(<I1)に設定される。なお、ステップS11においては、一対の配線パターン(PA,PB)の相互間に印加されるべき電圧(たとえば200V)も設定される。
【0071】
そして、ステップS12においては、スイッチ4がオン状態にされ、電源2による電圧印加が開始される。また、制御部7内のカウンタ(不図示)によるカウントも開始される(ステップS13)。
【0072】
ステップS14において、カウント値が所定値に到達(換言すれば、電圧印加開始からの時間が値t2に到達)したことが判定されると、ステップS15に進む。
【0073】
ステップS15では、電圧計3により電圧が測定されるとともに、電流計5により電流が測定される。さらに、これらの測定値(電圧値、電流値)に基づいて、絶縁抵抗値Rが算出される(ステップS16)。
【0074】
ステップS17では、上述のような電圧降下が期間TM(電圧印加開始時点t0から所定時点t2までの期間)内に検出されたか否か、すなわちスパークが検出されたか否かが判定される。
【0075】
スパークが検出された場合には、検査対象の一対の配線パターン(PA,PB)に関して絶縁不良が存在すると判定され、その被検査基板は不良品であると判定される(ステップS18)。
【0076】
一方、スパークが検出されない場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、絶縁抵抗値Rが所定の閾値Rrefよりも大きいか否かが判定される。絶縁抵抗値Rが所定の閾値Rrefよりも小さい場合には、検査対象の一対の配線パターン(PA,PB)に関して絶縁不良が存在すると判定され、その被検査基板は不良品であると判定される(ステップS18)。また、絶縁抵抗値Rが所定の閾値Rrefよりも大きい場合には、検査対象の一対の配線パターン(PA,PB)に関して絶縁不良は存在しないと判定(ステップS20)されて、ステップS21に進む。
【0077】
ステップS21においては、被検査基板に設けられた複数の配線パターンに関する全ての組み合わせに係る一対の配線パターンについて、ステップS11〜S20の処理が終了したか否かが判定される。当該処理が終了していない組み合わせが存在する場合には、ステップS11に戻り、未終了の一対の配線パターン(PA,PB)に対して当該処理が引き続き実行される。一方、全ての組み合わせについて上記処理が終了した場合には、その被検査基板は良品であると判定され(ステップS22)、絶縁検査は終了する。
【0078】
<5.その他>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0079】
たとえば、上記実施形態においては、電圧降下検出部12等がコントローラ内に設けられる態様が例示されているが、これに限定されず、電圧降下検出部12等はコントローラとは別のハードウエア回路で構成されてもよい。電圧降下検出部12は、たとえば、サンプルホールド回路および比較器等を有して構成されればよい。より詳細には、電圧降下検出部12は、電圧計3から出力される電圧信号を所定周期でサンプリングし、前回のサンプリング時点の電圧信号と今回のサンプリング時点の電圧信号とを比較して、電圧波形の立ち下がりを検出すると、スパーク発生検出信号を出力するように構成されればよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、1組のプローブを用いて1組の配線パターンの絶縁検査を行う絶縁検査装置1が例示されているが、これに限定されない。たとえば、絶縁検査装置において、複数のプローブを用いて複数組の配線パターンの絶縁検査が連続的に実行されるようにしてもよい。具体的には、N個のプローブをN個の配線パターンに個別に予め接続するとともに、N個のプローブのうちの任意のプローブを検査対象として選択するスイッチング回路を設け、N個の配線パターンの中から上流側配線パターンPAと下流側配線パターンPBとを抽出する複数個の組み合わせについて、順次に切り換えて検査を行うようにすればよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、絶縁検査対象の配線パターンである、上流側配線パターンPAと下流側配線パターンPBとの両配線パターンが、それぞれ単独の配線パターンで構成される態様を例示したが、これに限定されない。たとえば、下流側配線パターンPBが複数の配線パターンで構成されるようにしてもよい。より詳細には、5つの配線パターンPT1〜PT5のうち、配線パターンPT1を電源2の上流側端子に接続し、他の配線パターンPT2〜PT5を電源2の下流側端子に接続するようにしてもよい。このように、(上流側配線パターンPAが単独の配線パターンPT1で構成され、)下流側配線パターンPBが複数の配線パターンPT2〜PT5で構成されるようにしてもよい。また、同様に、上流側配線パターンPAが複数の配線パターンで構成されるようにしてもよい。
【0082】
このように、絶縁検査対象の2以上の配線パターンのうち、電源2の上流側端子に電気的に接続された少なくとも1つの配線パターンが上流側配線パターンPAとして機能し、電源2の下流側端子に電気的に接続された少なくとも1つの配線パターンが下流側配線パターンPBとして機能すればよい。
【0083】
また、上記実施形態においては、上流側配線パターンPAに設けられた検査点の数Nに応じて、電源2からの供給電流(詳細にはその制限値)が2段階の値I1,I2のいずれかに設定される態様が例示されているが、これに限定されない。電源2からの供給電流(詳細にはその制限値)が多段階の値Ij(j=1,2,...,K;Kは3以上の自然数)
のいずれかに設定されるようにしてもよい。より詳細には、記憶部8に記憶される検査点の数(複数の配線パターンのそれぞれに設けられた検査点の数)を所定数のグループに区分し、検査対象の上流側配線パターンPAに設けられた検査点の数Nが属するグループに応じた電流値が供給電流として設定されればよい。また、比較的少ない検査点数に対応するグループに対しては、比較的多い検査点数に対応する他のグループに対して設定される電流値よりも小さな電流値が設定されればよい。
【0084】
たとえば、K=3の場合において、100以上の検査点の数Nを第1のグループGP1に分類し、10以上且つ100未満の検査点の数Nを第2のグループGP2に分類し、2以上且つ10未満の検査点の数Nを第3のグループGP3に分類する。そして、検査対象の上流側配線パターンPAに設けられた検査点の数Nが第1のグループGP1に属するとき(たとえばN=200のとき)には、第1のグループGP1に対応する電流値I1が供給電流として設定されればよい。同様に、当該検査点の数Nが第2のグループGP2に属するとき(たとえばN=50のとき)には、第2のグループGP2に対応する電流値I2(<I1)が供給電流として設定されればよい。また、当該検査点の数Nが第3のグループGP3に属するとき(たとえばN=3のとき)には、第3のグループGP3に対応する電流値I3(<I2)が供給電流として設定されればよい。このように、検査点の数Nが小さくなるにつれて、電源2からの供給電流が比較的小さな値に設定されるようにすればよい。