特許第6288515号(P6288515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288515
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】評価方法及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20180226BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20180226BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G01B11/00 A
   H01L21/66 P
   G01B11/06 G
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-232858(P2014-232858)
(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公開番号】特開2016-95275(P2016-95275A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】片上 博了
(72)【発明者】
【氏名】大塚 弘明
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝
(72)【発明者】
【氏名】清水 勲
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−280440(JP,A)
【文献】 特開2004−80001(JP,A)
【文献】 特開2003−65724(JP,A)
【文献】 特開平5−28908(JP,A)
【文献】 米国特許第3930150(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
H01L 21/64−21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が形成されたウェーハの面内の点から測定点を選択して、その測定点における前記膜の特性を測定器で測定する第1の測定工程と、
前記ウェーハを、前記ウェーハの表面に垂直な回転軸線周りに、前記第1の測定工程の時とは異なる角度に回転させた後、前記測定器で、前記測定器に設定される座標系において前記第1の測定工程と同一の測定点における前記特性を測定する第2の測定工程と、
前記第1の測定工程で得られた測定値と前記第2の測定工程で得られた測定値との比較に基づき、前記測定器の測定位置ズレを評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする評価方法。
【請求項2】
前記第2の測定工程では、前記ウェーハを、前記回転軸線周りに前記第1の測定工程の時から180°回転させた状態に仕込むことを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記特性は膜厚であり、
前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程では、前記ウェーハの外周部における膜厚を少なくとも測定し、
前記評価工程では、前記第1の測定工程で得られた前記外周部における測定値と、前記第2の測定工程で得られた前記外周部における測定値との比較に基づき、前記測定器の測定位置ズレを評価することを特徴とする請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記膜の外周縁から3mm〜5mmの範囲における平均膜厚をd、その範囲における膜厚の変化量をΔdとしたとき、Δd/dが0.1%以上であることを特徴とする請求項3に記載の評価方法。
【請求項5】
前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程では、それぞれ、前記ウェーハの面内を通る直線のうち直交する2つの直線の一方に沿った第1方向及び他方に沿った第2方向の少なくとも2方向における前記特性の面内分布を測定し、
前記評価工程では、
前記第1の測定工程で得られた前記第1方向における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記第1方向における測定値との比較に基づき、前記測定器の前記第1方向における測定位置ズレを評価し、かつ、
前記第1の測定工程で得られた前記第2方向における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記第2方向における測定値との比較に基づき、前記測定器の前記第2方向における測定位置ズレを評価することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項6】
前記第1方向と前記第2方向の一方は前記ウェーハのノッチを通る直線に沿った方向であることを特徴とする請求項5に記載の評価方法。
【請求項7】
前記特性は膜厚であり、
前記評価工程では、前記第1の測定工程で得られた前記ウェーハの外周部における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記外周部における測定値の差分を求め、その差分に基づいて前記測定器の測定位置ズレの方向及び量を評価することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項8】
前記特性は膜厚であり、
前記測定器はFTIR法に基づく膜厚測定器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の評価方法。
【請求項9】
前記膜の膜厚は0.3μm以上、かつ100μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の評価方法。
【請求項10】
前記膜の膜厚は1μm以上、かつ100μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の評価方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の評価方法と、
前記評価工程の評価結果に基づき前記測定器の測定位置を補正する補正工程と、
その補正工程で測定位置が補正された前記測定器を用いてウェーハの特性を測定する補正後測定工程と、
を含むことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの表面に形成された膜の厚さ等の特性を測定する測定器の測定位置ズレを評価する方法、及びその測定器を用いた膜特性の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン半導体デバイスの高集積化は、著しく進んでおり、デバイスを形成する基板のシリコンウェーハ自体の高品質化が一層厳しく要求されている。すなわち、高集積化とともに回路パターンがますます微細化されるため、ウェーハ上のデバイスが形成されるデバイス活性領域では、リーク電流の増大やキャリアのライフタイムの低下原因となる転位等の結晶欠陥および金属系不純物の低減、除去が従来に増して厳しく求められている。かかる要請から結晶欠陥を含まないエピタキシャル層をウェーハ上に成長させたエピタキシャルウェーハが開発され、高集積化デバイスの製造に多く使用されている。
【0003】
シリコンウェーハのエピタキシャル層の膜厚は、一般的に、FTIR(Fourier Transform Infrared、フーリエ変換赤外分光)法によって測定される(例えば特許文献1参照)。これは、ウェーハ表面に照射した赤外光によって、ウェーハとエピタキシャル層との不純物濃度の差からエピタキシャル層の膜厚を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−302133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、エピタキシャルウェーハの品質規格により、エピタキシャルウェーハの外周縁から5mm以内の領域は、外周除外領域として半導体デバイスの製造には用いられなかったが、最近では、品質規格が定める平坦度は厳しくなり、外周部まで平坦で凹凸のないエピタキシャルウェーハが要求される。
【0006】
さらに、品質規格において外周除外領域への要求が厳しくなり、外周除外領域も徐々に縮小されている。その結果、外周除外領域を外周縁から2mm以内の領域とするのが主流となり、その外周除外領域以外の外周部についても要求される平坦度を満たす必要が生じている。それに伴い、測定器もよりタイトな測定位置精度が要求される。
【0007】
FTIR測定器の測定管理法としてウェーハの面内数点の反射されたレーザー強度値により校正を行っている。これは測定器とウェーハの傾き有無の評価・校正する場合には適しているが、測定器の微小な測定位置ズレを評価、校正するには不十分であった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、膜厚等の膜特性を測定する測定器の微小な測定位置ズレを評価できる方法、及び膜特性の測定位置の精度を向上できる膜特性の測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、ウェーハを通常仕込み、180°反転仕込みのそれぞれで所定の角度方向の膜厚測定を行い、同一測定点の膜厚の差分をとることで測定器の測定位置ズレを簡便に検出できることを見出した。さらに、ウェーハ外周部における膜厚分布と、測定器の測定位置ズレの検出感度とに一定の相関があることを見出した。
【0010】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の評価方法は、表面に膜が形成されたウェーハの面内の点から測定点を選択して、その測定点における前記膜の特性を測定器で測定する第1の測定工程と、
前記ウェーハを、前記ウェーハの表面に垂直な回転軸線周りに、前記第1の測定工程の時とは異なる角度に回転させた後、前記測定器で、前記測定器に設定される座標系において前記第1の測定工程と同一の測定点における前記特性を測定する第2の測定工程と、
前記第1の測定工程で得られた測定値と前記第2の測定工程で得られた測定値との比較に基づき、前記測定器の測定位置ズレを評価する評価工程と、
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1の測定工程と第2の測定工程との2つの測定工程を実施し、それら2つの測定工程では、互いに同一の測定点を測定しつつ、ウェーハの円周方向の角度(ウェーハ表面に垂直な回転軸線周りの角度)を異ならせる。このとき、測定器の測定位置ズレが無ければ2つの測定工程で得られた測定値は同じとなる。一方、測定器の測定位置ズレが有る場合には、測定器としては同一測定点を測定しているつもりが、実際は、第2の測定工程では、第1の測定工程の測定点からずれた測定点を測定することになる。つまり、測定器の測定位置ズレが有る場合には、第1の測定工程で得られた測定値と、第2の測定工程で得られた測定値とにズレが発生する。よって、評価工程では、それら2つの測定値を比較することで、測定器の微小な測定位置ズレを評価できる。
【0012】
また、本発明において、前記第2の測定工程では、前記ウェーハを、前記回転軸線周りに前記第1の測定工程の時から180°回転させた状態に仕込むとするのが好ましい。このように、第2の測定工程では、第1の測定工程の時からウェーハを反転仕込みすることで、測定器の測定位置ズレを、第2の測定工程の測定値に反映しやすくできる。よって、測定器の測定位置ズレを高感度に評価できる。
【0013】
また、本発明において、前記特性は膜厚であり、
前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程では、前記ウェーハの外周部における膜厚を少なくとも測定し、
前記評価工程では、前記第1の測定工程で得られた前記外周部における測定値と、前記第2の測定工程で得られた前記外周部における測定値との比較に基づき、前記測定器の測定位置ズレを評価するのが好ましい。このとき、前記膜の外周縁から3mm〜5mmの範囲における平均膜厚をd、その範囲における膜厚の変化量をΔdとしたとき、Δd/dが0.1%以上であるとするのが好ましい。
【0014】
これによれば、通常、ウェーハ外周部では、ウェーハ内側部に比べて膜厚変化が大きくなっているので、外周部の膜厚を少なくとも測定することで、測定器の測定位置ズレを、第1、第2の測定工程の測定値に反映しやすくできる。よって、測定器の測定位置ズレを高感度に検出できる。特に、外周部における膜厚分布Δd/dが0.1%以上のウェーハを用いることで、微小な測定位置ズレであっても高感度に検出できる。
【0015】
また、本発明において、前記第1の測定工程及び前記第2の測定工程では、それぞれ、前記ウェーハの面内を通る直線のうち直交する2つの直線の一方に沿った第1方向及び他方に沿った第2方向の少なくとも2方向における前記特性の面内分布を測定し、
前記評価工程では、
前記第1の測定工程で得られた前記第1方向における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記第1方向における測定値との比較に基づき、前記測定器の前記第1方向における測定位置ズレを評価し、かつ、
前記第1の測定工程で得られた前記第2方向における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記第2方向における測定値との比較に基づき、前記測定器の前記第2方向における測定位置ズレを評価するのが好ましい。このとき、前記第1方向と前記第2方向の一方は前記ウェーハのノッチを通る直線に沿った方向とすることができる。
【0016】
これによれば、直交する2方向のそれぞれの測定位置ズレを評価するので、2次元平面のどの方向に測定位置ズレが生じたとしても、その測定位置ズレを評価できる。
【0017】
また、本発明において、前記特性は膜厚であり、前記評価工程では、前記第1の測定工程で得られた前記ウェーハの外周部における測定値と前記第2の測定工程で得られた前記外周部における測定値の差分を求め、その差分に基づいて前記測定器の測定位置ズレの方向及び量を評価することができる。これによれば、測定位置ズレの方向及び量を得ているので、測定器の測定位置を簡便に補正することができる。
【0018】
また、本発明において、前記特性は膜厚であり、前記測定器はFTIR法に基づく膜厚測定器である。これによって、膜厚測定器の測定位置ズレを評価できる。
【0019】
このとき、前記膜の膜厚は0.3μm以上、かつ100μm以下とするのが好ましく、より好ましくは1μm以上、かつ100μm以下とするのが好ましい。これはFTIR法では0.3μmの深さまで、最外表面からの反射によって、内部での測定結果が影響を受ける。結果的に、不純物濃度差の存在する界面位置を正確に検出することができない。したがって、FTIR法による膜厚の検出限界は0.3μm程度となる。さらに、不純物濃度の界面位置を正確に検出するにはウェーハの膜厚は1μm以上が好ましい。また、エピタキシャルウェーハの膜厚を100μm以上作製しようとすると、サセプタとウェーハの間に副生成物が堆積し、サセプタ上にウェーハが貼り付いて、ウェーハが取り出せなくなる現象が頻発する。そのため、ウェーハの膜厚は100μm以下が好ましい。
【0020】
本発明の測定方法は、本発明の評価方法と、前記評価工程の評価結果に基づき前記測定器の測定位置を補正する補正工程と、その補正工程で測定位置が補正された前記測定器を用いてウェーハの特性を測定する補正後測定工程と、を含むことを特徴とする。これによれば、測定位置の精度を向上した膜特性測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】膜厚測定器の概略構成を示した図である。
図2】本発明の測定器の測定位置ズレの評価及び膜厚測定の方法の手順を示したフローチャートである。
図3】通常仕込みにおけるX方向の膜厚測定の様子を示した図である。
図4】通常仕込みにおけるY方向の膜厚測定の様子を示した図である。
図5】反転仕込みにおけるX方向の膜厚測定の様子を示した図である。
図6】反転仕込みにおけるY方向の膜厚測定の様子を示した図である。
図7】ノッチを下にしてX方向の1)通常仕込みの膜厚、2)反転仕込みの膜厚、3)それら膜厚の差分を示した図である。
図8】ノッチを下にしてY方向の1)通常仕込みの膜厚、2)反転仕込みの膜厚、3)それら膜厚の差分を示した図である。
図9】測定器位置調整後におけるノッチを下にしてX方向の1)通常仕込みの膜厚、2)反転仕込みの膜厚、3)それら膜厚の差分を示した図である。
図10】測定器位置調整後におけるノッチを下にしてY方向の1)通常仕込みの膜厚、2)反転仕込みの膜厚、3)それら膜厚の差分を示した図である。
図11】各膜厚分布ごとに、測定器の位置ズレ量に対する外周部における膜厚差分の変化量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。本実施形態では、シリコン基板の表面に、シリコン単結晶薄膜(エピタキシャル層)が気相成長により形成されたシリコンエピタキシャルウェーハ(以下、単にウェーハということもある)の膜厚測定に本発明を適用した例を説明する。図1は、本発明で用いられる膜厚測定器1(以下、単に測定器という)の概略構成を示している。測定器1は、ロードポート2とロボットハンド3とアライナー4と測定部5とを備えている。
【0023】
ロードポート2は、膜厚の測定対象となるウェーハが収容された容器が取り付けられて、その容器からウェーハを測定器1内に取り込むための装置である。ロボットハンド3は、ウェーハを吸着により把持するハンド部31及びそのハンド部31を先端に接続して測定器1内の各部に移動可能なアーム部32を備える。また、ロボットハンド3(ハンド部31)は測定部5での膜厚測定の際にウェーハが載置される測定ステージも兼ねている。
【0024】
アライナー4は、ウェーハを測定部5に搬送する前にウェーハの位置決めを行うものである。詳しくは、アライナー4は、例えばウェーハに赤外レーザーを当てながらウェーハを回転させ、ノッチ位置を基準にしてウェーハが何度ずれているか、X、Y方向にどれくらいずれているかを測定し、補正することができる。なお、ウェーハにオリエンテーションフラット(オリフラ)が形成されている場合には、オリフラを基準にして位置決めを行うことができる。ウェーハを搬送する際、このようなアライナー4を介することで、ウェーハをロボットハンド3上の同じ位置かつ同じ向きに載せて搬送することができる。
【0025】
測定部5は、FTIR法によりウェーハの表面に形成されたエピタキシャル層の膜厚を測定する部分である。ここで、FTIR法とは、ウェーハの主表面に赤外光を照射し、エピタキシャル層の表面で反射される反射光と、エピタキシャル層と基板との界面で反射される反射光とを検出し、それら反射光の光路差を測定してエピタキシャル層の膜厚を算出する方法である。そのため、測定部5は、ウェーハが配置される空間部、赤外光をウェーハに照射する照射部、各反射光を検出する検出器、反射光の光路差を測定して膜厚を算出する算出部などから構成されている。
【0026】
測定器1による膜厚測定の従来の手順を説明すると、先ず、ロボットハンド3により、ロードポート2からウェーハが水平に把持されて、そのウェーハがアライナー4まで搬送される。次に、アライナー4により、ウェーハの位置決めが行われる。このとき、例えばウェーハの中心から見てノッチが12時の方向に位置するように、ウェーハの位置が補正される。
【0027】
次に、ロボットハンド3により、位置決めされたウェーハが把持されて、位置決めされた状態を保持しながら測定部5まで搬送される。このとき、アライナー4でノッチの位置が12時方向に補正された場合には、その12時方向にノッチの位置が保持されるように、ウェーハが搬送される。以下では、ノッチが12時方向に位置した状態で測定部5に搬送する(仕込む)ことを、通常仕込みという。また、例えばウェーハの中心が測定部5に予め設定された原点に位置するように、測定部5におけるウェーハの初期搬送位置が定められる。このため、ロボットハンド3は、数値制御により、その初期搬送位置にウェーハを搬送する。
【0028】
次に、ウェーハの面内の点から膜厚測定を行う測定点を選択して、その測定点における膜厚が測定部5により測定される。例えば、外周除外領域(例えばウェーハの外周縁から2mm以内の領域)を除く、ウェーハの直径方向に沿った複数の測定点を選択する。例えば、ウェーハの直径が200mm、ウェーハ中心の座標をゼロとすると、外周除外領域を除く−98mmから+98mmの座標範囲に亘って、膜厚測定が行われる。また、上述したようにロボットハンド3は、測定部5においてウェーハが載置される測定ステージも兼ねているので、膜厚測定の際にはウェーハはロボットハンド3に載せられたまま、ロボットハンド3がX方向、Y方向に移動することで、任意の測定点における膜厚測定が可能となっている。
【0029】
ところで、ロボットハンド3による測定部5へのウェーハ搬送位置がずれることがある。例えば測定部5におけるウェーハの初期搬送位置がずれると、図3に示すように、測定部5に設定される座標系における原点Oと、ウェーハWの中心O’とにズレが生じる。このズレにより、膜厚の測定位置にもズレが生じる。すなわち、図3に示すように、実際の膜厚測定範囲102(例えば、測定部5の座標系における−98mmから+98mmの座標範囲)と、所望する膜厚測定範囲101(例えば、ウェーハ面内の−98mmから+98mmの範囲)とにズレ(図3の場合はX方向のズレΔx)が生じる。
【0030】
そこで、本発明では、測定器1の測定位置ズレの有無、ズレ量、ズレ方向を評価するとともに、その評価結果に基づいて測定器1の測定位置を補正し、補正後の測定器1を用いて膜厚測定を行う。以下、測定器1の測定位置ズレの評価及び膜厚測定の方法の詳細を説明する。図2は、その方法の手順を示したフローチャートである。
【0031】
先ず、測定位置ズレの評価用のエピタキシャルウェーハを準備する(S1)。この際、FTIR法では基板とエピタキシャル層との界面で光線を反射させる必要があるため、基板とエピタキシャル層との間にはFTIR法によって検出可能な不純物の濃度差を有することが必要である。具体的には、基板はp++タイプ又はp+タイプ、エピタキシャル層はp−タイプとするのが好ましい。ここで、p++タイプとは不純物濃度が1019atoms/cm程度で、抵抗値が10(mΩ・cm)以下の低抵抗のものをいう。また、p+タイプとは不純物濃度が1018atoms/cm程度で、抵抗値が10〜100(mΩ・cm)程度のものをいう。また、p−タイプとは不純物濃度が1015atoms/cm程度で、抵抗値が0.1(Ω・cm)以上のものをいう。なお、基板、エピタキシャル層にドーピングする不純物はホウ素(B)等である。また、ウェーハの直径は特に限定されないが、ここでは直径が200mmのウェーハを準備するものとする。
【0032】
また、ウェーハの外周部における膜厚変化が大きいほど測定器1の測定位置ズレの検出に有効である。具体的には、ウェーハの外周部(外周縁から3mm〜5mmの範囲)における平均膜厚をd、その範囲における膜厚変化量をΔdとしたとき、外周部の膜厚分布Δd/dが0.1%以上のエピタキシャル層が形成されたウェーハを準備するのが好ましい。膜厚分布が0.1%以上の場合には、後述する通常仕込み、反転仕込みで得られた膜厚の測定値を、同一測定点で差分をとったときに、測定位置のズレ量に対するその差分の変化量が大きくなり、結果、微小な測定位置ズレも感度良く検出できる。反対に、膜厚分布が0.1%未満の場合には、同一測定点での膜厚差分の変化量が小さくなり、微小な測定位置ズレが検出しにくくなる。
【0033】
さらに、エピタキシャル層の膜厚は0.3μm以上、できれば1μm以上、かつ100μm以下とするのが好ましい。これは、上述したように、FTIR法による膜厚の検出限界は0.3μm程度であること、及び、100μm以上の膜厚ではサセプタとウェーハの間に堆積する副生成物によりサセプタ上にウェーハが貼り付いてしまうことを考慮したものである。
【0034】
次に、S1で準備したウェーハをアライナー4にて通常仕込み(ノッチを12時の方向)にセットし、ロボットハンド3により、そのウェーハを測定部5における予め定められた初期搬送位置にセットする(S2)。そして、ウェーハを上側から見た紙面において、ノッチを下にして見たときに左側から右側にいくほど座標値が大きくなる、原点を通る左右に伸びた座標軸であるX軸と、下側から上側にいくほど座標値が大きくなる、原点を通る上下に伸びた座標軸であるY軸とで定まる座標系を設定する。そして、その座標系におけるX軸に沿った方向(X方向)及びY軸に沿った方向(Y方向)の膜厚測定を測定部5により行う(S2)。なお、ノッチの位置を0°としたとき、Y方向は0°方向、X方向は90°方向となる。
【0035】
ここで、図3は、通常仕込みにおけるX方向の膜厚測定の様子(測定範囲など)を示している。図3では、ノッチ10が12時方向にセットされたウェーハWと、図3の左側にいくほど座標値が大きくなるX軸(図3の左方向に向いた座標軸)とを示している。S2では、X方向の膜厚測定として、X軸に沿って例えば−98mm≦X座標≦+98mmの座標範囲に亘って所定間隔おきに膜厚測定を行う。図7には、通常仕込みにおけるX方向の膜厚測定の結果(X座標に対する膜厚変化)を菱形のプロット線で例示している。
【0036】
上述したように、ウェーハの初期搬送位置のズレにより測定部5の原点OとウェーハWの中心O’との間でX方向にズレが生じると、実際の膜厚測定範囲102は、想定している膜厚測定範囲101からΔxだけずれてしまう。図3では、X方向のプラス側にズレΔxが生じている例を示している。
【0037】
また、図4は、通常仕込みにおけるY方向の膜厚測定の様子(測定範囲など)を示している。図4では、ノッチ10が12時方向にセットされたウェーハWと、図4の下側にいくほど座標値が大きくなるY軸(図4の下方向に向いた座標軸)とを示している。S2では、Y方向の膜厚測定として、Y軸に沿って例えば−98mm≦Y座標≦+98mmの座標範囲に亘って所定間隔おきに膜厚測定を行う。図8には、通常仕込みにおけるY方向の膜厚測定の結果(Y座標に対する膜厚変化)を菱形のプロット線で例示している。
【0038】
図4においても、測定部5の原点OとウェーハWの中心O’との間でY方向にズレが生じることで、実際の膜厚測定範囲104が、想定している膜厚測定範囲103からΔyだけずれていることを示している。図4では、Y方向のマイナス側にズレΔyが生じている例を示している。なお、S2の工程が本発明の第1の測定工程に相当する。
【0039】
次に、ロボットハンド3により、S2で膜厚測定したウェーハを測定部5からアライナー4に搬送する(S3)。そして、アライナー4においてウェーハの向きを反転させる。すなわち、ウェーハを、ウェーハの表面に垂直な回転軸線周りに180°回転させることで、ノッチが6時方向の位置するようにウェーハの位置決め(ノッチのアライメント)を行う。その後、ロボットハンド3により、ウェーハをアライナー4から測定部5の初期搬送位置(S2の初期搬送位置と同じ位置)にセット(反転仕込み)する。そして、S2と同様の座標系、つまりノッチを下にして見たときに右側にいくほど座標値が大きくなる左右に伸びたX軸と上側にいくほど座標値が大きくなる上下に伸びたY軸とで定まる座標系を設定する。この座標系は、S2の座標系を原点回りに180°回転させた座標系であり、言い換えると、S2の座標系の各座標値のプラスマイナスを逆にした座標系である。その座標系において、S2と同一の座標点(測定点)における膜厚測定を行う(S3)。つまり、ノッチを0°として、90°方向(X方向)、0°方向(Y方向)の膜厚測定を行う。
【0040】
ここで、図5図6は、反転仕込みにおける膜厚測定の様子(測定範囲など)を示しており、図5はX方向の膜厚測定を、図6はY方向の膜厚測定を示している。図5図6では、ウェーハWが反転仕込みされているので、ノッチ10は通常仕込みから反転した位置(6時方向の位置)にセットされている。そのノッチ10の位置を基準にX方向、Y方向が設定されるので、図5のX方向は図3のX方向と反対方向となっており、図6のY方向は図4のY方向と反対方向となっている。
【0041】
通常仕込みと反転仕込みとで、ウェーハの搬送位置が同じ方向、同じ量だけズレがあるとすると、反転仕込みでの膜厚測定では、通常仕込みにおける測定位置のズレ方向と反対方向に測定位置ズレが発生する。つまり、図5のX方向の膜厚測定では、実際の膜厚測定範囲105が、想定している膜厚測定範囲101からΔxだけずれていることを示しているが、図3ではズレΔxがX方向のプラス側に発生しているのに対し、図5ではズレΔxがX方向のマイナス側に発生している。同様に、図6のY方向の膜厚測定では、実際の膜厚測定範囲106が、想定している膜厚測定範囲103からΔyだけずれていることを示しているが、図4ではズレΔyはY方向のマイナス側に発生しているのに対し、図6ではズレΔyはY方向のプラス側に発生している。
【0042】
このように、測定位置ズレがあると、通常仕込みの膜厚測定と反転仕込みの膜厚測定とで、測定器1の座標としては同一であるにもかかわらず、実際は、ウェーハ上の異なる測定点の膜厚を測定してしまう。図7図8には、反転仕込みにおけるX方向、Y方向の膜厚測定の結果を△のプロット線で例示している。図7図8に示すように、測定位置ズレがあると、通常仕込みにおける膜厚の測定値THKと、反転仕込みにおける膜厚の測定値THKとで差異が生じ、特に、位置変化に対する膜厚変化が大きいウェーハ外周部でその差異が大きくなっている。なお、S3の工程が本発明の第2の測定工程に相当する。
【0043】
次に、S2で得られた測定値THK1と、S3で得られた測定値THK2の同一測定点(同一座標)での差分ΔTHKを求める(S4)。このとき、S2の測定値THK1からS3の測定値THK2を引くことで差分ΔTHKを求めても良いし、S3の測定値THK2からS2の測定値THK1を引くことで差分ΔTHKを求めても良い。図7図8では、菱形のプロット線と△のプロット線との膜厚差分ΔTHKを求める。図7図8には、その膜厚差分ΔTHK(S2の測定値THK1からS3の測定値THK2を引いた値)を○のプロット線で示している。このプロット線で示されるように、測定位置ズレがあると、ウェーハ外周部(X座標、Y座標が±95mm〜98mm程度の範囲)で膜厚差分ΔTHKが大きくなる。また、ウェーハの内側部では、位置変化に対する膜厚変化が小さいので、測定位置ズレがあったとしても膜厚差分ΔTHKは小さい。
【0044】
次に、S4で求めた膜厚差分ΔTHKに基づいて測定位置ズレを評価する(S5)。具体的には、図7の膜厚差分THKに基づいてX方向の測定位置ズレを評価し、図8の膜厚差分THKに基づいてY方向の測定位置ズレを評価する。より具体的には、例えば、全ての測定点で膜厚差分ΔTHKの絶対値が所定の閾値より小さければ測定位置ズレは無いと評価し、一つでも閾値より大きい測定点があれば測定位置ズレが有ると評価する。図7図8の場合では、どちらも外周部における膜厚差分ΔTHKが大きくなっているので、X方向、Y方向それぞれに測定位置ズレが有ると評価する。
【0045】
また、図7では、X座標がプラス側の外周部(X=+100mm付近)における膜厚差分ΔTHKはマイナス側に大きい値となっているのに対し、X座標がマイナス側の外周部(X=−100mm付近)における膜厚差分ΔTHKはプラス側に大きい値となっている。図8では、Y座標がプラス側の外周部(Y=+100mm付近)における膜厚差分ΔTHKはプラス側に大きい値となっているのに対し、Y座標がマイナス側の外周部(Y=−100mm付近)における膜厚差分ΔTHKはマイナス側に大きい値となっている。S5では、外周部における膜厚差分ΔTHKのプラス、マイナスの傾向に基づいて、測定位置ズレの方向を評価する。
【0046】
具体的には、図7の場合では、X座標がプラス側の外周部における膜厚差分ΔTHKがマイナスの値となっているので、通常仕込みの時のほうが反転仕込みの時よりも、X方向のプラス側に寄って膜厚測定をしていることになる(図3図5参照)。これを、図3の通常仕込み時における想定している膜厚測定範囲101に対する実際の膜厚測定範囲102のズレ方向で考えると、そのズレ方向はX軸のプラス側の方向であると評価することができる。つまり、ロボットハンド3によって、ウェーハは、通常仕込み時におけるX方向のプラス側に寄った位置に初期搬送されていると評価できる。
【0047】
また、図8の場合では、Y座標がプラス側の外周部における膜厚差分ΔTHKがプラスの値となっているので、通常仕込みの時のほうが反転仕込みの時よりもY方向のマイナス側に寄って膜厚測定をしていることになる(図4図6参照)。これを、図4の通常仕込み時における想定している膜厚測定範囲103に対する実際の膜厚測定範囲104のズレ方向で考えると、そのズレ方向はY軸のマイナス側の方向であると評価することができる。つまり、ロボットハンド3によって、ウェーハは、通常仕込み時におけるY方向のマイナス側に寄った位置に初期搬送されていると評価できる。
【0048】
以上のズレ方向評価をまとめると、例えば膜厚差分ΔTHKがマイナスの値になる外周部がX座標、Y座標のプラス側の場合(図7の場合)には、想定している初期搬送位置に対してX方向又はY方向のプラス側に寄った位置にウェーハが初期搬送されていると評価する。反対に、膜厚差分ΔTHKがマイナスの値になる外周部がX座標、Y座標のマイナス側の場合(図8の場合)には、想定している初期搬送位置に対してX方向又はY方向のマイナス側に寄った位置にウェーハが初期搬送されていると評価する。これは、X座標又はY座標がプラス側の外周部(X、Y=+100mm付近)における膜厚差分ΔTHKがマイナスの値の場合には、X方向又はY方向のプラス側に寄った位置にウェーハが初期搬送されており、その膜厚差分ΔTHKがプラスの値の場合には、X方向又はY方向のマイナス側に寄った位置にウェーハが初期搬送されていると評価することと同義である。
【0049】
さらに、測定位置のズレ量が大きいほど膜厚差分ΔTHKが大きくなるので、S5では、膜厚差分ΔTHKの大きさに基づいて測定位置のズレ量を評価する。具体的には、図7に示すX方向の膜厚差分ΔTHKに基づいてX方向の測定位置のズレ量を評価する。より具体的には、例えば、図7の膜厚差分ΔTHKの外周部における変化量を求める。この変化量は、測定点の中で端に位置する点201、202での膜厚差分の値に相当する。この場合、変化量は約0.06μmとなる。そして、得られた変化量に基づいてX方向のズレ量を評価する。例えば、その膜厚差分の変化量(約0.06μm)を0にするためには、通常仕込みにおける外周部の測定点(図7の菱形の点)と、反転仕込みにおける外周部の測定点(図7の△の点)とをX方向に何点ずらせばよいかを評価する。そして、得られた測定点のズレ数と、外周部における測定点のピッチ(間隔)とを乗算することで、X方向の測定位置のズレ量が得られる。例えば、測定点のズレ数が約2.5、外周部における測定点のピッチが1mmとすると、ズレ量は約2.5mmとなる。
【0050】
Y方向の測定位置のズレ量についても、X方向のズレ量の評価と同様に評価する。すなわち、図8の膜厚差分ΔTHKの外周部における変化量(端の測定点203、204での膜厚差分の値に相当)に基づいて、Y方向のズレ量を評価する。具体的には、通常仕込みにおける外周部の測定点と、反転仕込みにおける外周部の測定点とをY方向に何点ずらせば膜厚差分が0になるかを評価し、そのズレ数と、外周部における測定点のピッチとを乗算することで、Y方向のズレ量が得られる。例えば、測定点のズレ数が約1、外周部における測定点のピッチが1mmとすると、ズレ量は約1mmとなる。結局、図2図3に基づいて測定位置ズレを評価すると、X方向に約+2.5mm、Y方向に約−1mmの測定位置ズレが有ると評価できる。
【0051】
なお、膜厚差分ΔTHKの外周部における変化量と、測定位置のズレ量との関係を予め調べておき、その関係に基づいて、ズレ量を評価しても良い。S4及びS5の工程が本発明の評価工程に相当する。
【0052】
このように、S1〜S5の工程を実施することで、測定器1の測定位置のズレ量及びズレ方向が簡便に評価できる。
【0053】
次に、S5で得られた測定位置ズレの評価結果(測定位置のズレ量及びズレ方向)に基づいて、測定器1の測定位置を補正する(S6)。具体的には、例えばロボットハンド3によるウェーハの初期搬送位置を、得られた測定位置のズレ方向と逆方向に、得られた測定位置のズレ量の分だけ補正する。これによって、測定部5の原点とウェーハの中心とが一致した位置にウェーハを搬送できる。なお、S6の工程が本発明の補正工程に相当する。
【0054】
以降、補正後の測定器1を用いて、ウェーハの膜厚測定を行う(S7)。この膜厚測定は、S2の通常仕込みの膜厚測定と同様である。これによって、測定位置の精度が良好な膜厚の測定値を得ることができ、エピタキシャルウェーハの外周部の形状をより正確に評価できる。なお、S7の工程が本発明の補正後測定工程に相当する。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
直径200mmのエピタキシャルウェーハを用いて、図2のS1〜S4の工程を実施、つまり1)通常仕込み、2)180°反転仕込みでX方向、Y方向の膜厚を測定し、同一測定点の差分を求めた。測定の際、外周95mmから98mmまでは1mmピッチで測定を行った。その結果を図7及び図8に示す。図7図8の結果に基づいて、図2のS5の工程を実施して測定位置ズレを評価したところ、ノッチを下にして、X方向では約2.5mm、Y方向では約−1mm程度の測定位置ズレがあった。
【0057】
次に、得られた測定器の位置ズレ量及び位置ズレ方向を元にそれぞれの測定位置を調整した後に再度上記と同じ条件で測定器の位置ズレ量及びズレ方向を求めた。図9は、X方向における通常仕込みの膜厚、反転仕込みの膜厚、及び、それら膜厚の差分ΔTHKを示している。図10は、Y方向における通常仕込みの膜厚、反転仕込みの膜厚、及び、それら膜厚の差分ΔTHKを示している。図9図10に示すように、ノッチを下にしてX、Y方向それぞれほぼ位置ズレ無し(膜厚差分ΔTHKがほぼゼロ)に改善された。
【0058】
(実施例2)
ウェーハの外周部における膜厚分布が、測定位置ズレの検出にどのように影響するかを調べるため、以下の実験を行った。
【0059】
P++基板上に膜厚4μmでその外周縁から5mm〜3mmの膜厚分布が0.40%、0.18%、0.10%、0.03%となるよう調整したエピタキシャルウェーハを準備した。測定器の位置を0.3mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmずらし、各々のエピタキシャルウェーハを図2の手順で測定器の位置ズレ評価を行い、位置ズレ検出有無を評価した。表1及び図11はその評価結果を示している。詳しくは、表1は、各位置ズレ量、各膜厚分布ごとに、位置ズレ検出の有無を○、×で示している。図11は、各膜厚分布ごとに、測定器の位置ズレ量に対する外周部における膜厚差分の変化量を示している。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示すように、外周部の膜厚分布が0.1%以上のエピタキシャルウェーハでは、0.3mm〜2mmの位置ズレ量の範囲内でいずれも位置ズレ量を検出できた。これは、外周部膜厚分布が0.1%以上(実施例2−1、2−2、2−3)では、図11に示すように、外周部の膜厚差分の変化量が、いずれの位置ズレ量であっても、ある程度大きい値となるためである。これに対し、外周部の膜厚分布が0.03%のエピタキシャルウェーハ(実施例2−4)では、外周部の膜厚変化が小さいため、0.5mm以下の位置ズレをうまく検出できなかった。
【0062】
実施例1(図7図10)の結果から、本発明は測定器の位置ズレの評価に有効であることが確認された。また、実施例2(表1及び図11)の結果から、本発明の測定器の位置ズレ評価には、外周部の膜厚分布が0.1%以上のエピタキシャルウェーハが有効であることが分かった。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、通常仕込みと反転仕込みの膜厚を比較することで測定位置ズレを評価するので、微小な測定位置ズレも正確に検出できる。また、反転仕込みの膜厚測定では、ウェーハを通常仕込みから180°反転させるので、通常仕込みにおける位置ズレ方向と反対方向の位置ズレを反映させた膜厚を得ることができる。これにより、通常仕込みと反転仕込みの膜厚差分を大きくすることができ、測定方向(X方向又はY方向)の測定位置ズレを簡便に検出できる。
【0064】
また、本実施形態では、直交する2方向(X方向、Y方向)の測定位置ズレを評価するので、2次元平面のどの方向に測定位置ズレが生じたとしても、その測定位置ズレを検出できる。また、本実施形態では、ノッチを基準として、X方向、Y方向を定めているので、通常仕込み、反転仕込みで同一の測定点を簡便に測定することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。例えば、上記実施形態では、シリコンエピタキシャルウェーハを用いて測定器の測定位置ズレを評価していたが、シリコン以外のエピタキシャルウェーハを用いてその評価を行っても良い。
【0066】
また、上記実施形態では、X方向、Y方向の2方向の膜厚差分を測定することで2方向の測定位置ズレを評価した例を説明したが、X方向、Y方向に加えて又は代えて他の方向(例えば、ノッチを0°として45°の方向や135°の方向など)の膜厚差分を測定しても良い。X方向、Y方向に加えて他の方向の膜厚差分も測定することで、測定位置ズレの検出精度を向上できる。
【0067】
また、上記実施形態では、通常仕込みの膜厚測定に続いて実施される第2の測定工程では、ウェーハを通常仕込みから180°回転させた反転仕込みで膜厚測定を実施したが、180°以外の角度(例えば90°)にウェーハを回転させた状態で通常仕込みと同一測定点の膜厚測定を実施しても良い。これによっても、測定位置ズレが有る場合には、第2の測定工程で得られる膜厚と、通常仕込みの膜厚とに差異が生じるので、その差異に基づき測定位置ズレを検出できる。
【0068】
また、上記実施形態では、通常仕込み、反転仕込みの膜厚測定では、ウェーハの外周部に加えてウェーハ内側部の膜厚も測定していたが、ウェーハ内側部では測定位置ズレが有ったとしても通常仕込みと反転仕込みとの間で膜厚差分が出にくいので、外周部のみ膜厚測定をして外周部のみの膜厚差分を得るようにしても良い。これによって、より簡便に測定位置ズレを評価できる。また、外周部のうちの一点(例えば、X=98mmの点、Y=98mmの点)のみ、膜厚測定をしても良い。これによって、より簡便に測定位置ズレを評価できる。
【0069】
また、上記実施形態では、測定部におけるウェーハの載置部である測定ステージをロボットハンドが兼ねた例を説明したが、ロボットハンドとは別に測定ステージを備えた測定器の測定位置ズレ評価に本発明を適用しても良い。
【0070】
また、上記実施形態では、FTIR法に基づく膜厚測定器の位置ズレ評価に本発明を適用した例を説明したが、FTIR法以外の方式に基づく膜厚測定器に本発明を適用しても良い。また、膜厚以外のエピタキシャル層の特性(例えばエピタキシャル層の表面凹凸に相関する指標(例えばFront−ZDD)など)を測定する測定器の測定位置ズレ評価に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 膜厚測定器
2 ロードポート
3 ロボットハンド
4 アライナー
5 測定部
10 ノッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11