特許第6288542号(P6288542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288542
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】含ケイ素ポリマーを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20180226BHJP
   C08L 43/04 20060101ALI20180226BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20180226BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180226BHJP
   C09D 123/26 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 125/00 20060101ALI20180226BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20180226BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C08F290/06
   C08L43/04
   C08L33/04
   C08F2/44 C
   C09D143/04
   C09D4/00
   C09D7/12
   C09D123/26
   C09D133/04
   C09D125/00
   C09D4/02
   B32B27/30 A
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-88676(P2013-88676)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-210885(P2014-210885A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】田中 敬二
(72)【発明者】
【氏名】平井 智康
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−189657(JP,A)
【文献】 特開平08−211220(JP,A)
【文献】 特開2003−292829(JP,A)
【文献】 特開2007−241109(JP,A)
【文献】 特開2005−138339(JP,A)
【文献】 特開2004−002819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
6/00 − 246/00
290/00 − 290/14
299/00 − 299/08
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C09D 1/00 − 10/00
101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)トリアルキルシリル基が炭素原子に結合した構造を有する繰り返し単位構造を含む含ケイ素ポリマー0.01〜20質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜20質量部、
を含む硬化性組成物であって、
前記(a)含ケイ素ポリマーが式[2]で表される繰り返し単位構造を有し、
【化1】
(式中、R乃至Rはそれぞれ独立して炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは2価の有機基を表し、nは1乃至3の整数を表す。)
前記(b)多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれ、少なくとも多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む、
硬化性組成物。
【請求項2】
前記(a)含ケイ素ポリマーが式[3]で表される繰り返し単位構造を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化3】
(式中、R、R、L及びnは前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
前記(a)含ケイ素ポリマーが式[4]で表される繰り返し単位構造を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【化4】
(式中、R乃至R、R及びLは前記と同じ意味を表す。)
【請求項4】
前記Lが式[5]で表される2価の有機基を表す、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【化5】
(式中、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、*は繰り返し単位構造における主鎖の炭素原子への結合端を表す。)
【請求項5】
前記Lがフェニレン基を表す、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記含ケイ素ポリマーが、さらに炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造を含む、請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの脂環構造を有する、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、式[6]で表される、請求項6又は請求項7に記載の硬化性組成物。
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、Mは前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を表す。)
【請求項9】
前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
さらに(d)溶媒を含む、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
【請求項12】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備える積層体の製造方法であって、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の硬化性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程、及び塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化し、ハードコート層を形成する工程を含む積層体の製造方法
【請求項13】
前記ハードコート層が1nm〜1mmの膜厚を有する、請求項12に記載の積層体の製造方法
【請求項14】
基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備える積層体であって、該ハードコート層が、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の硬化性組成物の硬化物からなる、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ケイ素ポリマーを含む活性エネルギー線硬化性コーティング組成物及びそれらを塗布することで得られる、滑水性を有するハードコート層に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂等のプラスチック材料は、バランスの取れた力学特性を有するとともに、成形性・軽量性・透明性に優れており、その特徴を生かして電子機器や化粧品の筐体等として広く利用されている。こうしたプラスチック材料の表面硬度、バリア性、耐薬品性、難燃性、耐熱性などの諸特性を向上させるために、光重合開始剤を含む多官能アクリレートを用いたUV硬化によるハードコート処理による手法が広く用いられている。
【0003】
近年、プラスチックで形成されている自動車のヘッドランプ及びバックモニターカメラの有機樹脂レンズやバイク用ヘルメットのシールドなどに対して、雨などに濡れた場合の水滴が付着しにくい表面性能の要求が高まっている。近年、こうした表面性能として、従来より水滴を弾く性質として接触角の測定により評価されている“撥水性”のみならず、傾斜表面での水滴の転落挙動により評価される“滑水性”(所謂“動的な濡れ性”)が注目されている。
これまでにもガラス上の撥水性及び滑水性を有する被膜として、パーフルオロアルキル構造を有するシラン化合物及びシリコーン構造を有するシラン化合物等をガラス基材上のシラノール基と反応させることで、形成させたものが提案されている。しかし、シラン化合物はガラスやセラミックスなどのヒドロキシ基を表面に有する基材に対しては化学結合を介して被膜を形成することが可能であるが、上述のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などのプラスチック材料は、ヒドロキシ基を有さないため、シラン化合物を用いたコーティング(被膜形成)には適さない基材である。
【0004】
一方、水滴の付着を抑制する方法の一つとして、シリコーン系材料を表面改質剤として用いて、活性エネルギー線多官能アクリレートに添加し、UV照射により形成された撥水性及び滑水性ハードコートが開示されており、ハードコート層表面に滑水性を付与する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−248200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、プラスチック材料の表面改質においてシリコーン系材料を用いた従来の提案では、一定の撥水性をハードコート表面に付与することが可能であるが、滑水性に関しては、まだ十分といえるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する含ケイ素ポリマーを活性エネルギー線硬化性コーティング液に添加することにより、撥水性のみならず滑水性にも優れるハードコートを形成可能であることが見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、第1観点として、
(a)トリアルキルシリル基が炭素原子に結合した構造を有する繰り返し単位構造を含む含ケイ素ポリマー0.01〜20質量部、
(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、及び
(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤0.1〜20質量部、
を含む硬化性組成物に関する。
第2観点として、前記(a)含ケイ素ポリマーは、その繰り返し単位構造が式[1]で表される基を有する、第1観点に記載の硬化性組成物に関する。
【化1】
(式中、R乃至Rはそれぞれ独立して炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、nは1乃至3の整数を表す。)
第3観点として、前記(a)含ケイ素ポリマーが式[2]で表される繰り返し単位構造を有する、第2観点に記載の硬化性組成物に関する。
【化2】
(式中、R乃至R及びnは前記と同じ意味を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは2価の有機基を表す。)
第4観点として、前記(a)含ケイ素ポリマーが式[3]で表される繰り返し単位構造を有する、第3観点に記載の硬化性組成物に関する。
【化3】
(式中、R、R、L及びnは前記と同じ意味を表す。)
第5観点として、前記(a)含ケイ素ポリマーが式[4]で表される繰り返し単位構造を有する、第3観点に記載の硬化性組成物に関する。
【化4】
(式中、R乃至R、R及びLは前記と同じ意味を表す。)
第6観点として、前記Lが式[5]で表される2価の有機基を表す、第3観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
【化5】
(式中、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、*は繰り返し単位構造における主鎖の炭素原子への結合端を表す。)
第7観点として、前記Lがフェニレン基を表す、第3観点乃至第5観点のうち何れか
一項に記載の硬化性組成物に関する。
第8観点として、前記含ケイ素ポリマーが、さらに炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造を含む、第1観点乃至第7観点のうち何れか1項に記載の硬化性組成物。
第9観点として、前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの脂環構造を有する、第8観点に記載の硬化性組成物。
第10観点として、前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、式[6]で表される、第8観点又は第9観点に記載の硬化性組成物。
【化6】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、Mは前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を表す。)
第11観点として、前記(b)多官能モノマーが、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第12観点として、前記(c)重合開始剤がアルキルフェノン化合物である、第1観点乃至第11観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第13観点として、さらに(d)溶媒を含む、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物に関する。
第14観点として、第1観点乃至第13観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第15観点として、基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備える積層体であって、該ハードコート層が、第1観点乃至第13観点のうち何れか一項に記載の硬化性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程、及び塗膜に活性エネルギー線を照射し硬化する工程を含む方法により形成されている、積層体に関する。
第16観点として、前記ハードコート層が1nm〜1mmの膜厚を有する、第15観点に記載の積層体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、プラスチック材料の表面上に撥水性のみならず滑水性にも優れるハードコートを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、合成例1で得られた含ケイ素モノマー(SiCSt)のH NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、合成例2で得られた含ケイ素モノマー(SiCMA)のH NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例における滑落角測定の概念図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、(a)含ケイ素ポリマー、(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー、(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤を含有し、
所望により(d)溶媒をさらに含みて構成される。
以下にまず各(a)乃至(d)成分を詳述する。
【0012】
[(a)含ケイ素ポリマー]
上記(a)含ケイ素ポリマーは、必須の単位構造としてトリアルキルシリル基が炭素原子に結合した構造を有する繰り返し単位構造を含むポリマー(以下、単に(a)含ケイ素ポリマーとも称する)である。ここで含ケイ素ポリマー中、トリアルキルシリル基を有する繰り返し単位構造は、トリアルキルシリル基を有する繰り返し単位構造一種のみからなるものであってもよいし、トリアルキルシリル基を有する二種以上の異なる繰り返し単位構造を含むものであってもよい。二種以上の繰り返し単位構造を含む場合、それらの結合はランダム結合、ブロック結合、またはそれらの組合せのいずれであってもよい。
【0013】
好ましくは、(a)含ケイ素ポリマーは、下記式[1]で表される基を有する繰り返し単位構造を含むポリマーであることが望ましい。
【化7】
上記式[1]中、R乃至Rはそれぞれ独立して炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、nは1乃至3の整数を表す。
【0014】
上記R乃至Rが表す炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらのなかでもメチル基が好ましい。
上記Rは水素原子又は炭素原子数1乃至6のアルキル基を表すが、ここで炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、前述のR乃至Rで例示した炭素原子数1乃至6のアルキル基と同じ基が挙げられる。中でもRは、水素原子であることが好ましい。
またnは、好ましくは1である。
【0015】
また(a)含ケイ素ポリマーは、特に下記式[2]で表される繰り返し単位構造を有することが好ましい。
【化8】
上記式[2]中、R乃至R及びnは前記と同じ意味を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは2価の有機基を表す。
【0016】
上記式[2]で表される繰り返し単位構造の中でも、特に下記式[3]で表される繰り返し単位構造或いは下記式[4]で表される繰り返し単位構造であることが好ましい。
【化9】
【化10】
上記式[3]又は式[4]中、R、R、L及びnは前記と同じ意味を表す。
【0017】
上記Lが表す2価の有機基としては、下記式[5]で表される2価の有機基或いはフェニレン基であることが好ましい。
【化11】
上記式[5]中、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、*は繰り返し単位構造における主鎖の炭素原子への結合端を表す。
【0018】
が表す炭素原子数1乃至6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基等の鎖状又は分枝状アルキレン基;シクロプロパン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等の環状アルキレン基等が挙げられる。
中でもLはメチレン基又はエチレン基であることが好ましい。
【0019】
本発明における(a)含ケイ素ポリマーは、上述の炭素原子に結合したトリアルキルシリル基を有する繰り返し単位構造のみから構成されるポリマーであってもよいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の繰り返し単位構造、例えばトリアルキルシリル基を有していない(メタ)アクリル酸及びその誘導体由来の繰り返し単位構造や、ビニル化合物及びその誘導体由来の繰り返し単位構造などの一種以上の他の繰り返し単位構造をさらに有していてもよい。
こうしたその他の繰り返し単位構造と、前述のトリアルキルシリル基を有する繰り返し単位構造の結合は、ランダム結合、ブロック結合、またはそれらの組合せのいずれであってもよい。
【0020】
上記その他の繰り返し単位構造の好適なものとして、炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造を挙げることができる。中でも、炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環からなる群から選ばれる少なくとも1つの脂環構造を有するものであることが好ましい。
そして、前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造が、(メタ)アクリル酸由来の構造、すなわち下記式[6]で表される構造を有することが好ましい。
【化12】
上記式[6]中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Lは単結合又は炭素原子数1乃至6のアルキレン基を表し、Mは前記炭素原子数3乃至30の脂環式基を表す。
ここで炭素原子数1乃至6のアルキレン基は上述のLにおける基と同様の基が挙げられ、炭素原子数3乃至30の脂環式基としては、好ましくはシクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環から選択される基が望ましい。
【0021】
本発明に使用する含ケイ素ポリマーにおける炭素原子に結合したトリアルキルシリル基を有する繰り返し単位構造と炭素原子数3乃至30の脂環式基を有する繰り返し単位構造との構造比率(モル比)は、例えば10:1乃至1:10とすることができる。
【0022】
このような(a)含ケイ素ポリマーとしては、例えば、ポリ(2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(3−(トリメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート)、ポリ(2,2−ビス(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(2,2,2−トリス(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(4−((トリメチルシリル)メチル)スチレン)、ポリ(4−(ビス(トリメチルシリル)メチル)スチレン)、ポリ(4−(トリス(トリメチルシリル)メチル)スチレン)、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(メチル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(tert−ブチル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(ステアリル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(シクロヘキシル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(1−アダマンチル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(2−メチルアダマンタン−2−イル(メタ)アクリレート))、ポリ((2−(トリメチルシリル)エチル(メタ)アクリレート)−co−(イソボルニル(メタ)アクリレート))等が挙げられる。
なおこれら含ケイ素ポリマーは一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
本発明の硬化性組成物に使用する(a)含ケイ素ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜100,000である。
【0024】
[(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー]
上記(b)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー(以下、単に(b)多官能モノマーとも称する)としては、ウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリル基を2個以上含有する多官能モノマー等が挙げられる。
好ましくは、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーであることが望ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0025】
このような活性エネルギー線硬化性多官能モノマーのうち、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレングリコール付加物テトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレングリコール付加物(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレングリコール付加物(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレングリコール付加物トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレングリコール付加物トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、変性ε−カプロラクトントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレングリコール付加物トリス(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレノキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
これらの例示の中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を3個以上含有する化合物が好ましく、さらにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を4個以上含有する化合物がより好ましい。
【0026】
また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、エチレン性不飽和結合の部位を有する(メタ)アクリル基を2個以上有するウレタン化合物が挙げられる。なお、本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート或いは芳香族ウレタン(メタ)アクリレートの何れであってもよい。これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応により得られる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアネート或いはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のジイソシアネート化合物あるいはポリイソシアネート化合物や、これらを多量化させて得られる多量化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
また活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのラクトン付加物(例えば、(株)ダイセル製のプラクセル(登録商標)FAシリーズ、同FMシリーズ等)も使用することができる。また、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」等)も使用可能である。
【0028】
これら多官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の具体例としては、共栄社化学(株)製:AH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、UF−8001G、DAUA−167等;ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL(登録商標)204、同205、同210、同215、同220、同6202、同230、同244、同245、同264、同265、同270、同280/15IB、同1259、同5129、同8210、同8301、同8307、同8411、同8804、同8807、同9227EA、同9260、同284、同285、同294/25HD、同4820、同4858、同8402、同8405、同9270、同8311、同8701、KRM8200、KRM8200AE、KRM7735、KRM8296、KRM8452;日本合成化学(株)製:紫光(登録商標)UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620E、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−7650B等を挙げることができる。
【0029】
また(b)多官能モノマーは、上記多官能(メタ)アクリレート化合物と上記官能ウレタン(メタ)アクリレートを混合して使用してもよい。
【0030】
[(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
上記(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に(c)重合開始剤とも称する)は、例えば紫外線(光)等の活性エネルギー線照射時に活性ラジカルを生成する化合物(光ラジカル重合開始剤)であれば特に限定されることなく使用できる。
このような光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系化合物、アルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アジド系化合物、ジアゾ系化合物、o−キノンジアジド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、有機過酸化物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合
物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。
これら重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
【0032】
上記アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1オン、フェニルグリオキシル酸メチル、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0033】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0034】
上記アジド系化合物としては、例えば、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0035】
上記ジアゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼンクロリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0036】
上記o−キノンジアジド系化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−ジアジド
(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0037】
上記アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0038】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0039】
上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、ベンジル等を挙げることができる。
【0040】
上記ビスクマリンとしては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)(みどり化学(株)でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている)等を挙げることができる。
【0041】
上記ビスイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0042】
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル等を挙げることが出来る。
【0043】
上記チタノセン化合物は、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0044】
上記(c)重合開始剤の中でも、特にアルキルフェノン化合物が好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤として市販の光重合開始剤を使用することができ、例えば、BASF社製:IRGACURE(登録商標)651、同184、同2959、同127、同907、同369、同379EG、DAROCUR(登録商標)1173、同MBF等を挙げることができる。
【0045】
[(d)溶媒]
本発明の硬化性組成物は、さらに(d)溶媒を含みてワニスの形態としていてもよい。
この時用いられる溶媒としては、前記(a)〜(c)成分並びに後述するその他成分を溶解又は分散するものであればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、γ−ブチロラクトン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ−n−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類などの有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
【0046】
本発明の硬化性組成物は、上記(a)〜(c)成分を(b)多官能モノマー100質量部に対して(a)含ケイ素ポリマーを0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、(c)重合開始剤を0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部の配合比にて含む。
また(d)溶媒を含む場合には、全成分(a)〜(d)の総質量(合計質量)に対して、(a)〜(c)成分の総質量の濃度(固形分濃度)が0.5〜80質量%であり、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは1〜60質量%とすることが好ましい。ここで固形分とは硬化性組成物の全成分から溶媒成分を除いたものである。
【0047】
[その他添加剤]
さらに、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0048】
<硬化膜>
本発明の上記硬化性組成物は、基材上にコーティングして光重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。こうして得られる硬化膜もまた、本発明の対象である。
前記基材としては、例えば、プラスチック材料[ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS(アク
リロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)樹脂、ノルボルネン系樹脂等]、金属、木材、紙、ガラス、二酸化ケイ素、スレート等を挙げることができ、中でも好ましくはプラスチック材料である。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0049】
本発明の硬化性組成物のコーティング方法は、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択し得、中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。ここで用いる硬化性組成物は、前述のワニスの形態にあるものを好適に使用できる。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて硬化性組成物を濾過した後、コーティングに供することが好ましい。
【0050】
コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用できる。
なお、コーティングによる膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常1nm〜50μm、好ましくは1nm〜20μmである。
【0051】
<ハードコート層を備える積層体>
また本発明の上記硬化性組成物を前記基材上に塗布し塗膜を形成する工程、そして塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射し硬化する工程とを含む方法により形成されている、基材の少なくとも一部の面にハードコート層を備える積層体もまた本発明の対象である。
ここで使用する基材や塗膜方法、紫外線等のエネルギー線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、紫外線照射の通りである。
また、前記積層体における基材は、ポリ(メタ)アクリレート樹脂やポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂であることが好ましい。
なお、前記積層体において、ハードコート層の膜厚が1nm〜1mmであることが好ましく、より好ましくは1nm〜50μm、特に好ましくは1nm〜20μmである。
【0052】
前述したように、本発明の硬化性組成物は、表面改質剤として前記(a)含ケイ素ポリマーを添加することにより、プラスチック材料の表面上に撥水性とともに滑水性にも優れるハードコートを形成することができる。
本明細書において滑水性とは、単に傾斜表面に対する液滴の安定性(転落角)を評価したものではなく、傾斜表面での水滴の転落挙動により評価される表面性能を指し、撥水表面における水滴の除去性能とその際の挙動を意味するものである。したがって滑水性は、例えば、所定の傾斜角において一定重量の液滴が移動する(転落する)速度やその加速度の測定、移動する際の液滴の形状変化や内部流動の観察により評価することができる。
本発明では、一定重量の液滴を載せた試料基板を水平の位置より傾斜させた際、液滴の表面が傾斜面(試料基板)と接触する部位のうち最も下位の点が、傾斜面の下方に向かって変位した時点の、水平の位置に対する試料基板の傾斜角度を滑落角と定義して測定し、滑水性の指標として評価する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0054】
(1)H NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
基準:CDCl(7.24ppm)
(2)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(3)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:NETZSCH社製 DSC204 F1 Phoenix(登録商標)
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:5℃/分(25−200℃)
(4)5%重量減少温度(Td5%)測定
装置:(株)リガク製 TG8120
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25−400℃)
(5)ワイヤーバーコーター
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
ワイヤーバー:No.9
塗布速度:4m/分
(6)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(7)オーブン
装置:アドバンテック東洋(株)製 DRC433FA
(8)UV照射装置
装置:アイグラフィックス(株)製 H02−L41
(9)接触角及び滑落角測定
装置:協和界面科学(株)製 DM−501、DM−SA01(滑落法キット)
測定温度:20℃
傾斜速度(滑落角測定):2度/秒
【0055】
また、略記号は以下の意味を表す。
DCP:トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレート[日立化成(株)製 ファンクリル(登録商標)FA−513M]
IB:イソボルニルメタクリレート[共栄社化学(株)製 ライトエステルIB−X]
STA:ステアリルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 STA]
TB:tert−ブチルメタクリレート[共栄社化学(株)製 ライトエステルTB]
MAIB:2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)[大塚化学(株)製 MAIB]
KRM8200:6官能脂肪族ウレタンアクリレート[ダイセル・サイテック(株)製 KRM8200]
M403:5〜6官能脂肪族アクリレート[東亞合成(株)製 アロニックス(登録商標
)M403]
UV7600B:多官能ウレタンアクリレート[日本合成化学(株)製 紫光(登録商標)UV−7600B]
EB350:ジメチルシリコーンジアクリレート系表面改質剤[ダイセル・サイテック(株) EBCRYL350]
FM0721:ジメチルシリコーンアクリレート系表面改質剤[JNC(株)製 サイラプレーン(登録商標)FM−0721]
UV3500:ポリエーテル変性ジメチルシリコーンアクリレート系表面改質剤[ビックケミー・ジャパン(株)製 BYK(登録商標)−UV3500]
Irg.184:1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]
PET:ポリエチレンテレフタレート
PMMA:ポリメタクリル酸メチル
IPE:ジイソプロピルエーテル
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
【0056】
[合成例1]含ケイ素モノマー(SiCSt)の合成
1Lの4つ口フラスコに、マグネシウム[関東化学(株)製]5.09g(0.21mol)とTHF300gを入れ窒素置換し、0℃にて撹拌しながら、クロロトリメチルシラン[東京化成工業(株)製]28.1g(0.18mol)とクロロメチルスチレン[AGCセイミケミカル(株)製]28.1g(0.26mol)をTHF419gに溶解した溶液を4時間かけて滴下した。滴下後、室温(およそ25℃)まで昇温し撹拌しながら12時間反応させた。得られた反応溶液を塩化アンモニウム水溶液中に滴下し、クエンチ後、IPEで抽出、ブラインで洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒を留去することで、粗生成物を36.7g得た。この粗生成物をアルミナカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン:トルエン=4:1)により精製することで目的物(SiCSt)33.
1g(H NMRスペクトル測定よりトルエン30質量%含有)を得た(収率89%)。
得られたSiCStのH NMRスペクトルを図1に示す。
【0057】
[合成例2]含ケイ素モノマー(SiCMA)の合成
100mLの四つ口フラスコに、2−トリメチルシリルエタノール[東京化成工業(株)製]2.37g(20mmol)、トリエチルアミン[関東化学(株)製]2.23g(22mmol)、及びクロロホルム11gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、氷浴で冷却した。この中へ、メタクリル酸クロリド[東京化成工業(株)製]2.30g(22mmol)をクロロホルム11gに溶解させた溶液を、30分間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外し、室温(およそ25℃)で12時間撹拌した。
この反応混合物に水11gを加え、クロロホルム層を分液した。残った水層をクロロホルム11gで2回抽出し、クロロホルム層を全て合わせ硫酸マグネシウムで乾燥した。このクロロホルム層を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン)により精製した。得られた溶液を濃縮、減圧乾燥し、油状の目的物(SiCMA)1.50gを得た(収率40%)。
得られたSiCMAのH NMRスペクトルを図2に示す。
【0058】
[合成例3]含ケイ素ポリマー1(PSiCSt)の合成
20mLの二つ口フラスコに、合成例1で得られた70質量%SiCStトルエン溶液2.77g(SiCStとして1.94g(10mmol))、MAIB0.16g(0.7mmol)、及びMIBK2.9gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、こ
の混合物を90℃で2時間撹拌した。反応溶液にMIBK2.2gを加え、これをメタノール70gに添加して生成物を沈殿させた。得られたスラリーを吸引ろ過し、白色固体の目的物(PSiCSt)0.35gを得た(収率18%)。
得られたPSiCMAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,300、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.2であった。
【0059】
[合成例4]含ケイ素ポリマー2(PSiCMA)の合成
20mLの二つ口フラスコに、合成例2に従って製造したSiCMA2.63g(14mmol)、MAIB0.16g(0.7mmol)、及びMIBK4gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、この混合物を80℃で3時間撹拌した。反応溶液にMIBK15gを加え、これをメタノール−水混合溶液(質量比1:1)143gに添加して生成物を析出させた。デカンテーションにより上澄みを除去した後、その残渣をアセトン20gに溶解させた。このアセトン溶液を減圧留去、減圧乾燥し、油状の目的物(PSiCMA)2.21gを得た(収率84%)。
得られたPSiCMAのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは21,100、分散度:Mw/Mnは2.0であった。
【0060】
[合成例5]含ケイ素コポリマー1(P(SiCMA−TB))の合成
50mLの二つ口フラスコに、合成例2に従って製造したSiCMA1.86g(10mmol)、TB1.42g(10mmol)、MAIB0.92g(4mmol)、及びMEK10gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、この混合物を80℃で2時間撹拌した。反応溶液にMEK3gを加え、これを冷メタノール66gに添加して生成物を沈殿させた。得られたスラリーを吸引ろ過し、白色固体の目的物(P(SiCMA−TB))2.91gを得た(収率89%)。
得られたP(SiCMA−TB)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4,900、分散度:Mw/Mnは2.3であった。また、H NMRスペクトルから算出した単位構造組成(モル比)は、SiCMAユニット:TBユニット=1:1であった。
【0061】
[合成例6]含ケイ素コポリマー2(P(SiCMA−ST))の合成
50mLの二つ口フラスコに、合成例2に従って製造したSiCMA3.73g(20mmol)、STA0.65g(2mmol)、MAIB1.01g(4.4mmol)、及びMEK13gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、この混合物を80℃で2時間撹拌した。反応溶液にMEK4gを加え、これを冷メタノール88gに添加して生成物を沈殿させた。得られたスラリーを吸引ろ過し、白色固体の目的物(P(SiCMA−ST))3.96gを得た(収率90%)。
得られたP(SiCMA−ST)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,400、分散度:Mw/Mnは1.8であった。また、H NMRスペクトルから算出した単位構造組成(モル比)は、SiCMAユニット:STAユニット=10:1であった。
【0062】
[合成例7]含ケイ素コポリマー3(P(SiCMA−DCP))の合成
50mLの二つ口フラスコに、合成例2に従って製造したSiCMA1.86g(10mmol)、DCP2.21g(10mmol)、MAIB0.92g(4mmol)、及びMEK12gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、この混合物を80℃で2時間撹拌した。反応溶液にMEK4gを加え、これを冷メタノール82gに添加して生成物を沈殿させた。得られたスラリーを吸引ろ過し、白色固体の目的物(P(SiCMA−DCP))3.55gを得た(収率87%)。
得られたP(SiCMA−DCP)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量
平均分子量Mwは11,000、分散度:Mw/Mnは2.4であった。また、H NMRスペクトルから算出した単位構造組成(モル比)は、SiCMAユニット:DCPユニット=1:1であった。
【0063】
[合成例8]含ケイ素コポリマー4(P(SiCMA−IB))の合成
50mLの二つ口フラスコに、合成例2に従って製造したSiCMA1.86g(10mmol)、IB4.45g(20mmol)、MAIB1.38g(6mmol)、及びMEK19gを仕込んだ。フラスコ内を窒素で置換した後、この混合物を80℃で2時間撹拌した。反応溶液にMEK6gを加え、これを冷メタノール126gに添加して生成物を沈殿させた。得られたスラリーを吸引ろ過し、白色固体の目的物(P(SiCMA−IB))5.22gを得た(収率83%)。
得られたP(SiCMA−IB)のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5,700、分散度:Mw/Mnは2.0であった。また、H NMRスペクトルから算出した単位構造組成(モル比)は、SiCMAユニット:IBユニット=1:2であった。
【0064】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
多官能モノマーとしてM403 60質量部及びKRM8200 40質量部、重合開始剤としてIrg.184 5質量部、及び表面改質剤として表1に記載される合成例3及び合成例4で調製した含ケイ素ポリマー1〜2又は市販のシリコーン系表面改質剤 1質量部(比較例1は添加せず)を、MIBK106質量部(比較例1のみ105質量部)に溶解し、固形分濃度50質量%の硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、PETフィルム[東洋紡(株)製 コスモシャイン(登録商標)A4100]上に、ワイヤーバー(溝厚20μm)を用いてバーコート塗布(塗布スピード4m/分)し塗膜を得た。得られた塗膜を100℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。この塗布膜に、積算露光量400mJ/cmのUV光を照射することで、ハードコートフィルムをそれぞれ作製した。
得られた各ハードコートフィルムに対して、水(1μL)の静的接触角及び60μLの水滴の滑落角を測定した。各測定値は、同一フィルムの異なる3地点の測定値を相加平均して算出した。結果を表1に併せて示す。なお、滑落角は以下の手順で測定した。
【0065】
[滑落角測定]
測定するフィルム上に、マイクロシリンジを用いて60μLの水道水を滴下した。このフィルムを2度/秒の速度で傾斜させていき、水滴が転がり始めたとき(傾斜方向に変位したとき)の傾斜角を滑落角とした。
具体的には図3に示すように、まず、水滴1を載せたフィルム2を水平面Xより徐々に傾斜させ、水滴の表面が傾斜させたフィルム2と接触する部位のうち最も下位の点Aを観察する。点Aにおいて、水滴1の接線Yとフィルム2の表面は角度θaをなしている。そして点Aが、傾斜面の下方(矢印方向)に向かって変位した時点の、水平面Xからフィルム2を傾斜させた角度αを滑落角として測定する。
【0066】
[実施例3〜6、比較例5]
多官能モノマーとしてUV7600B 100質量部、重合開始剤としてIrg.184 6質量部、及び表面改質剤として表1に記載される合成例5〜8で調製した含ケイ素コポリマー1〜4 1質量部(比較例5は添加せず)を、トルエン428質量部(実施例3)、MIBK161質量部(実施例4〜6)又はMIBK159質量部(比較例5)に溶解し、固形分濃度40質量%(実施例3のみ20質量%)の硬化性組成物を調製した。
この硬化性組成物を、PMMA基板上にスピンコーティング(slope5秒間、1,500rpm×30秒間、slope5秒間)し、100℃のオーブンで3分間加熱乾燥することで成膜した。この塗布膜に、積算露光量400mJ/cmのUV光を照射する
ことで、ハードコートをそれぞれ作製した。
得られた各ハードコートフィルムに対して、水(1μL)の静的接触角及び60μLの水滴の滑落角を前述の手順に従い測定した。なお、各測定値は、同一フィルムの異なる3地点の測定値を相加平均して算出した。結果を表1に併せて示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、表面改質剤を使用していない比較例1及び比較例5のハードコートと比べ、実施例1乃至実施例6のハードコートにおいては接触角が大きく、また滑落角が小さくなるとする結果が得られ、すなわち、撥水性及び滑水性の何れもが向上するという結果を得た。
一方、滑水性を付与することが知られている表面改質剤を添加した比較例2、並びに汎用のシリコーン系表面改質剤を添加した比較例3及び比較例4のハードコートにあっては、比較例1のハードコートと比べて撥水性は向上するものの、滑水性は悪化する(滑落角が大きくなる)とする結果を得た。
図1
図2
図3