特許第6288880号(P6288880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288880帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288880
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20180226BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20180226BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20180226BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180226BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
   C09J7/02 Z
   C09J133/04
   B32B27/18 D
   !G02B5/30
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-210717(P2016-210717)
(22)【出願日】2016年10月27日
(62)【分割の表示】特願2015-238073(P2015-238073)の分割
【原出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2017-61152(P2017-61152A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】春日 充
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佳子
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−75072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C09J 7/20
C09J 133/04
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、融点が30〜80℃であるイオン性化合物とを含む混合物により剥離剤層が形成されてなる、帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムであり、
前記帯電防止表面保護フィルムが、基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された帯電防止表面保護フィルムであって、前記粘着剤層の内部には融点が30〜80℃であるイオン性化合物を含有しておらず、
前記粘着剤層の表面に、前記帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合せることにより、前記剥離剤層の融点が30〜80℃であるイオン性化合物を、前記粘着剤層の表面のみに付与することができることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層が、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなることを特徴とする請求項1に記載の帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムが貼り合わされ、前記剥離剤層の融点が30〜80℃であるイオン性化合物が、前記粘着剤層の表面のみに付与されてなる光学用フィルム用の帯電防止表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の帯電防止表面保護フィルムから、帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルムが、貼合されてなる光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルムなどの光学部品(以下、光学用フィルムと称する場合もある。)の表面に貼合される、表面保護フィルムに関する。さらに詳細には、被着体に対する汚染が少ない表面保護フィルム、さらには、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム、等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を、製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
【0003】
従来から、基材フィルムの片面に、粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0004】
近年、液晶ディスプレイパネルの生産工程において、光学用フィルムの上に貼合された表面保護フィルムを、剥離して取り除くときに発生する剥離帯電圧により、液晶ディスプレイパネルの表示画面を制御するための、ドライバーIC等の回路部品が破壊される現象や、液晶分子の配向が損傷する現象が、発生件数は少ないながらも起きている。
また、液晶ディスプレイパネルの消費電力を低減させるため、液晶材料の駆動電圧が低くなってきており、これに伴って、ドライバーICの破壊電圧も低くなっている。最近では、剥離帯電圧を+0.7kV〜−0.7kVの範囲内にすることが求められてきている。
【0005】
また、近年、3Dディスプレイ(立体視ディスプレイ)の普及に伴い、偏光板等の光学用フィルムの表面に、FPR(Film Patterned Retarder)フィルムを貼合したものがある。偏光板等の光学用フィルムの表面に貼合されていた表面保護フィルムを剥がした後に、FPRフィルムが貼合される。しかし、偏光板等の光学用フィルムの表面が、表面保護フィルムに使用している粘着剤や帯電防止剤で汚染されていると、FPRフィルムが接着し難いという問題がある。このため、当該用途に用いる表面保護フィルムには、被着体に対する汚染の少ないものが求められている。
【0006】
また、いくつかの液晶パネルメーカーにおいては、表面保護フィルムの被着体に対する汚染性の評価方法として、偏光板等の光学用フィルムに貼合されている表面保護フィルムを一度剥がし、気泡を混入させた状態で再貼合したものを所定条件で加熱処理し、その後、表面保護フィルムを剥がして被着体の表面を観察する方法が採用されている。このような評価方法では、被着体の表面汚染が微量であっても、気泡を混入させた部分と、表面保護フィルムの粘着剤が接していた部分とで、被着体の表面汚染の差があると、気泡の跡(気泡ジミと言うこともある)として残る。そのため、被着体の表面に対する汚染性の評価方法としては、非常に厳しい評価方法となる。近年、こうした厳しい評価方法による判定の結果でも、被着体の表面に対する汚染性に問題がない表面保護フィルムが求められている。
【0007】
表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時に、剥離帯電圧が高いことによる不具合を防止するため、剥離帯電圧を低く抑えるための、帯電防止剤を含む粘着剤層を用いた表面保護フィルムが、提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、水酸基含有アクリル系ポリマー、ポリイソシアネートからなる粘着剤を用いた、表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、イオン性液体と酸価が1.0以下のアクリルポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着シート類が開示されている。
また、特許文献3には、アクリルポリマー、ポリエーテルポリオール化合物、アニオン吸着性化合物により処理したアルカリ金属塩からなる粘着組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
また、特許文献4には、イオン性液体、アルカリ金属塩、ガラス転移温度0℃以下のポリマーからなる粘着剤組成物、及びそれを用いた表面保護フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−131957号公報
【特許文献2】特開2005−330464号公報
【特許文献3】特開2005−314476号公報
【特許文献4】特開2006−152235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1〜4では、粘着剤層の内部に帯電防止剤が添加されている。しかし、粘着剤層の厚みが厚くなる程、また、被着体に貼り合せた後の経過時間が経つにつれて、表面保護フィルムの貼合された被着体に対して、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなる。被着体へ移行する帯電防止剤の量が多くなると、被着体である光学用フィルムの外観品位が低下したり、FPRフィルムを貼合する時に、FPRフィルムの接着性が低下する可能性がある。
【0011】
こうした、粘着剤層から被着体へ移行する帯電防止剤の経時変化を少なくするために、粘着剤の厚さを薄くすると、別の問題が生じる。例えば、ギラツキ防止のためアンチグレア処理した偏光板など、表面に凹凸のある光学用フィルムに使用した場合に、光学用フィルム表面の凹凸に粘着剤が追従できずに気泡が混入したり、光学用フィルムと粘着剤の接着面積が減ることにより粘着力が低下し、使用中に表面保護フィルムが浮いたり剥がれたりする問題がある。
【0012】
このため、光学用フィルムに使用する表面保護フィルムであって、表面に凹凸がある光学用フィルムに対しても使用でき、被着体に対する汚染が非常に少なく、かつ、経時でも被着体に対する汚染性が変化しない表面保護フィルムで、かつ、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えた表面保護フィルムが求められている。
【0013】
本発明者らは、この課題について鋭意検討を行なった。
被着体に対する汚染が少なく、かつ汚染性の経時変化も少なくするためには、被着体を汚染していると推測される帯電防止剤の成分を減量する必要がある。しかし、帯電防止剤の成分を減量した場合には、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧が高くなってしまう。そこで、帯電防止剤の成分の絶対量を増加しないで、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑える方法について検討した。
その結果、粘着剤組成物の中に、帯電防止剤を添加し混ぜて粘着剤層を形成するのではなく、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に、適量の帯電防止成分を付与することにより、表面保護フィルムを、被着体である光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えられることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面に凹凸がある光学用フィルムに対しても使用でき、被着体に対する汚染が少なく、経時しても被着体に対する低汚染性が変わらない表面保護フィルムであって、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の表面保護フィルムは、粘着剤組成物を塗工・乾燥して粘着剤層を積層した後に、粘着剤層の表面に適量の帯電防止剤を付与することにより、被着体に対する汚染性を低く抑えた上、被着体である光学用フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑えることを技術思想としている。
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明は樹脂フィルムの片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、融点が30〜80℃であるイオン性化合物とを含む混合物により剥離剤層が形成されてなる、帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムであり、前記帯電防止表面保護フィルムが、基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された帯電防止表面保護フィルムであって、前記粘着剤層の内部には融点が30〜80℃であるイオン性化合物を含有しておらず、前記粘着剤層の表面に、前記帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを、前記剥離剤層を介して貼り合せることにより、前記剥離剤層の融点が30〜80℃であるイオン性化合物を、前記粘着剤層の表面のみに付与することができることを特徴とする帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムが貼り合わされ、前記剥離剤層の融点が30〜80℃であるイオン性化合物が、前記粘着剤層の表面のみに付与されてなる光学用フィルム用の帯電防止表面保護フィルムを提供する
【0018】
また、前記粘着剤層が、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなることが好ましい。
【0019】
また、前記剥離フィルムの、前記粘着剤層からの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記の帯電防止表面保護フィルムから、帯電防止表面保護フィルム用剥離フィルムを剥がした状態の帯電防止表面保護フィルムが貼合されてなる光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の表面保護フィルムは、被着体に対する汚染が少なく、経時しても被着体に対する低汚染性が経時変化しない。また、本発明の表面保護フィルムは、被着体が、AG偏光板などの表面に凹凸がある光学用フィルムであっても、使用できる。また、本発明によれば、被着体である光学用フィルムから剥離する時に発生する剥離帯電圧を低く抑えることができ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する表面保護フィルム、及びそれを用いた光学部品を提供できる。
本発明の表面保護フィルムによれば、光学用フィルムの表面を確実に保護することができるから、生産性の向上と歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。
図2】本発明の表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の表面保護フィルムの、概念を示した断面図である。この表面保護フィルム10は、透明な基材フィルム1の片面の表面に、粘着剤層2が形成されている。この粘着剤層2の表面には、樹脂フィルム3の表面に剥離剤層4が形成された剥離フィルム5が、貼合されている。
【0024】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルムを、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる透明性を有する樹脂からなるフィルムは、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムが用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の粘着剤層2が形成された面の反対側の面に、表面の汚れを防止する防汚層、帯電防止層、傷つき防止のハードコート層などを設けることができる。また、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0025】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい粘着剤であれば特に限定されるものではないが、光学用フィルムに貼合後の耐久性などを考慮すると、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させてなる粘着剤を用いるのが一般的である。
【0026】
(メタ)アクリレート共重合体としては、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマー、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のポリオキシアルキレン基を含有するモノマーを共重合した共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリレート共重合体は、主モノマー及び他のモノマーがすべて(メタ)アクリレートであってもよく、主モノマー以外の他のモノマーとして、(メタ)アクリレート以外のモノマーを1種又は2種以上含んでもよい。主モノマー以外の他のモノマーは、上記のコモノマー、官能性モノマー、ポリオキシアルキレン基を含有するモノマーなどから特に限定することなく選択できる。
【0027】
粘着剤層2に添加する硬化剤としては、(メタ)アクリレート共重合体を架橋させる架橋剤として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。また、粘着付与剤としては、ロジン系、クマロンインデン系、テルペン系、石油系、フェノール系などが挙げられる。
【0028】
本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される粘着剤層2の厚みは、特に限定はないものの、例えば、5〜40μm程度の厚みが好ましく、10〜30μm程度の厚みがより好ましい。また、表面保護フィルムの、被着体の表面に対する剥離強度(粘着力)が、0.03〜0.3N/25mm程度の、微粘着力を有する粘着剤層2であることが、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の操作性に優れることから好ましい。また、表面保護フィルム10から剥離フィルム5を剥がす時の操作性に優れることから、剥離フィルム5の粘着剤層2からの剥離力が、0.2N/50mm以下であることが好ましい。
【0029】
また、本発明に係わる表面保護フィルム10に使用される剥離フィルム5は、樹脂フィルム3の片面に、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、該剥離剤と反応しない帯電防止剤とを含有する剥離剤層4が積層されている。
【0030】
樹脂フィルム3としては、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられるが、透明性に優れていることや価格が比較的に安価であることから、ポリエステルフィルムが特に好ましい。樹脂フィルムは、無延伸フィルムであっても、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率や、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度を、特定の値に制御してもよい。
樹脂フィルム3の厚みは、特に限定はないが、例えば、12〜100μm程度の厚みが好ましく、20〜50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、樹脂フィルム3の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0031】
剥離剤層4を構成するジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤には、付加反応型、縮合反応型、カチオン重合型、ラジカル重合型などの、公知のシリコーン系剥離剤が挙げられる。付加反応型シリコーン系剥離剤として市販されている製品には、例えば、KS−776A、KS−847T、KS−779H、KS−837、KS−778、KS−830(信越化学工業(株)製)、SRX−211、SRX−345、SRX−357、SD7333、SD7220、SD7223、LTC−300B、LTC−350G、LTC−310(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。縮合反応型として市販されている製品には、例えば、SRX−290、SYLOFF−23(東レダウコーニング(株)製)などが挙げられる。カチオン重合型として市販されている製品には、例えば、TPR−6501、TPR−6500、UV9300、VU9315、UV9430(モメンティブ・パーフォーマンス・マテリアルズ社製)、X62−7622(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合型として市販されている製品には、例えば、X62−7205(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0032】
剥離剤層4を構成する帯電防止剤としては、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤溶液に対して分散性の良いもので、かつ、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の硬化を阻害しないものが好ましい。また、剥離剤層4から粘着剤層2の表面に転写して、粘着剤層に帯電防止の機能を付与するため、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と反応しない帯電防止剤が良い。こうした帯電防止剤としては、融点が30〜80℃であるイオン性化合物が好適である。
【0033】
融点が30〜80℃であるイオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF)、チオシアン酸塩(SCN)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RCSO)、過塩素酸塩(ClO)、四フッ化ホウ酸塩(BF)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が30〜80℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1−アルキルピリジニウム(2〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオン、や1,3−ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に対する帯電防止剤の添加量は、帯電防止剤の種類や剥離剤との親和性の度合いにより異なる。帯電防止剤の添加量は、表面保護フィルムを被着体から剥離する時の、望まれる剥離帯電圧、被着体に対する汚染性、粘着特性などを考慮して設定すればよい。
【0034】
剥離剤層4は、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、該剥離剤と反応しない帯電防止剤との混合物からなる剥離剤層4であってもよい。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合方法には、特に限定はない。ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤に、帯電防止剤を添加して、混合した後に剥離剤硬化用の触媒を添加・混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤を、あらかじめ有機溶剤で希釈したのちに帯電防止剤と剥離剤硬化用の触媒を添加、混合する方法、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤をあらかじめ有機溶剤に希釈後、触媒を添加・混合し、その後帯電防止剤を添加、混合する方法など、いずれの方法でも良い。また、必要に応じて、シランカップリング剤などの密着向上剤や、ポリオキシアルキレン基を含有する化合物などの帯電防止効果を補助する材料、を添加しても良い。
【0035】
ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤と、帯電防止剤との混合比率は、特に限定はないが、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して、帯電防止剤を固形分として5〜100程度の割合が好ましい。帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して5の割合より少ないと、粘着剤層の表面への帯電防止剤の転写量も少なくなり、粘着剤に帯電防止の機能が発揮され難くなる。また、帯電防止剤の固形分換算の添加量が、ジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤の固形分100に対して100の割合を越えると、帯電防止剤とともにジメチルポリシロキサンを主成分とする剥離剤も、粘着剤層の表面に転写されてしまうため、粘着剤の粘着特性を低下させる可能性がある。
【0036】
本発明に係わる表面保護フィルム10の基材フィルム1に、粘着剤層2を形成する方法、及び剥離フィルム5を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層を形成した後に、剥離フィルム5を貼合する方法、(2)剥離フィルム5の表面に、粘着剤層2を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層を形成した後に、基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0037】
また、基材フィルム1の表面に、粘着剤層2を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0038】
また、同様に、樹脂フィルム3に、剥離剤層4を形成するのは、公知の方法で行えばよい。具体的には、グラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0039】
上記の構成を有する、本発明に係わる表面保護フィルム10は、被着体である光学用フィルムから剥離する際の表面電位が、+0.7kV〜−0.7kVであることが好ましい。さらに、表面電位が、+0.5kV〜−0.5kVであることがより好ましく、表面電位が、+0.1kV〜−0.1kVであることが特に好ましい。この表面電位は、剥離剤層に含有される帯電防止剤の種類、添加量等を加減することによって調整できる。
【0040】
図2は、本発明の表面保護フィルムから、剥離フィルムを剥がした状態を示す断面図である。
図1に示した表面保護フィルム10から、剥離フィルム5を剥がすことにより、剥離フィルム5の剥離剤層4に含まれる帯電防止剤(符号7)の一部が、表面保護フィルム10の粘着剤層2の表面に、転写される(付着する)。そのため、図2においては、表面保護フィルムの粘着剤層2の表面に転写された帯電防止剤を、符号7の斑点で模式的に示している。帯電防止剤7の成分が、剥離フィルム5から粘着剤層2の表面に転写されることにより、粘着剤層2を被着体から剥離するときの剥離帯電圧が低減される。なお、粘着剤層を被着体から剥離する際の剥離帯電圧は、公知の方法で測定可能である。例えば、表面保護フィルムを偏光板などの被着体に貼り合せた後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、被着体表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)として測定する。
本発明に係わる表面保護フィルムでは、図2に示した剥離フィルムを剥がした状態の表面保護フィルム11を、被着体に貼合するに当たり、この粘着剤層2の表面に転写された、帯電防止剤が、被着体の表面に接触する。そのことにより、再度、被着体から表面保護フィルムを剥がす時の、剥離帯電圧を低く抑えることができる。
【0041】
図3は、本発明の光学部品の実施例を示した断面図である。
本発明の表面保護フィルム10から、剥離フィルム5が剥がされて、粘着剤層2が表出した状態で、その粘着剤層2を介して被着体である光学部品8に貼合される。
すなわち、図3には、本発明の表面保護フィルム10が貼合された光学部品20を示している。光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
本発明の光学部品によれば、表面保護フィルム10を、被着体である光学部品(光学用フィルム)から剥離除去するとき、剥離帯電圧を充分に低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊する恐れがなく、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
(表面保護フィルムの作製)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)5重量部、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート 0.75重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、実施例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、実施例1の剥離フィルムを得た。一方、2−エチルヘキシルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを、100:4の重量比で共重合した、重量平均分子量47万のアクリレート共重合体30重量部を、酢酸エチル70重量部に溶解した粘着剤(固形分30%の酢酸エチル溶液)100重量部に対して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製。品名:コロネートHX)1.2重量部を添加、混合した塗付液を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、実施例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを、40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0043】
(実施例2)
実施例1の剥離剤層を形成する塗料の、乾燥後の厚さを0.1μmにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0044】
(実施例3)
実施例1の付加反応型のシリコーンを、東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−211にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを得た。
【0045】
(比較例1)
付加反応型のシリコーン(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−345)5重量部、トルエンと酢酸エチルの1:1の混合溶媒95重量部、白金触媒(東レダウコーニング(株)製、品名:SRX−212)0.05重量部を混ぜ合わせて撹拌・混合して、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を調整した。厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、比較例1の剥離剤層を形成する塗料を、乾燥後の厚さが0.2μmになるようにメイヤバーにて塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥し、比較例1の剥離フィルムを得た。一方、実施例1の粘着剤(固形分30%の酢酸エチル溶液)100重量部に対して、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート3重量部、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製。品名:コロネートHX)1.2重量部を添加、混合した塗付液を、厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、乾燥後の厚さが20μmとなるように、塗布した後、100℃の熱風循環式オーブンにて2分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、この粘着剤層の表面に、上記にて作製した、比較例1の剥離フィルムの剥離剤層(シリコーン処理面)を貼合した。得られた粘着フィルムを、40℃の環境下で5日間保温し、粘着剤を硬化させて、比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0046】
(比較例2)
N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェートを0.1重量部にした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0047】
(実施例4)
実施例1の塗付液の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレートと、ブチルアクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを、60:40:4の重量比で共重合した、重量平均分子量48万のアクリレート共重合体30重量部を、酢酸エチル70重量部に溶解した粘着剤(固形分30%の酢酸エチル溶液)100重量部に対して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製。品名:コロネートHX)1.2重量部を添加、混合した塗付液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の表面保護フィルムを得た。
【0048】
(実施例5)
実施例1の塗付液の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレートと、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレートと、2−ヒドロキシエチルアクリレートとを、90:10:4の重量比で共重合した、重量平均分子量38万の(メタ)アクリレート共重合体30重量部を、酢酸エチル70重量部に溶解した粘着剤(固形分30%の酢酸エチル溶液)100重量部に対して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製。品名:コロネートHX)1.2重量部を添加、混合した塗付液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の表面保護フィルムを得た。
【0049】
(実施例6)
実施例1の塗付液の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレートと、アクリル酸とを、100:4の重量比で共重合した、重量平均分子量52万のアクリレート共重合体30重量部を、酢酸エチル70重量部に溶解した粘着剤(固形分30%の酢酸エチル溶液)100重量部に対して、エポキシ系硬化剤(三菱瓦斯化学(株)製。品名:TETRAD−C)1.0重量部を添加、混合した塗付液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の表面保護フィルムを得た。
【0050】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
〈剥離フィルムの剥離力の測定方法〉
表面保護フィルムのサンプルを、幅50mm、長さ150mmに裁断する。23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、剥離フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを剥離フィルムの剥離力(N/50mm)とした。
【0051】
〈表面保護フィルムの粘着力の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて300mm/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを粘着力(N/25mm)とした。
【0052】
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分40mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0053】
〈表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法〉
ガラス板の表面に、アンチグレア低反射処理偏光板(AG−LR偏光板)を、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日および30日保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を(○)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を(×)とした。
【0054】
得られた実施例1〜6及び比較例1〜2の表面保護フィルムについて、測定した測定結果を表1〜2に示した。「2EHA」は、2−エチルヘキシルアクリレートを、「HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを、「BA」はブチルアクリレートを、「#400G」はメトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレートを、「AA」はアクリル酸を、「AS剤」は、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェートを、それぞれ意味する。粘着剤層及び剥離剤層の組成は、粘着剤の全量、又は剥離剤層を形成する塗料の全量が、それぞれ約100重量部となるように、重量部で表している。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1および表2に示した測定結果から、以下のことが分かる。
本発明に係わる実施例1〜6の表面保護フィルムは、適度な粘着力があり、被着体の表面を汚染することがなく、かつ、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低い。
一方、帯電防止剤を粘着剤層に添加した比較例1の表面保護フィルムは、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が低く良好であるが、剥離した後の、被着体に対する汚染が多くなった。また、帯電防止剤を減量した比較例2では、被着体に対する汚染性は改善したが、表面保護フィルムを被着体から剥離した時の剥離帯電圧が高くなった。
すなわち、粘着剤に帯電防止剤を混合させた比較例1、2では、剥離帯電圧の低減と被着体に対する汚染性を両立することが難しい。他方、剥離剤層に帯電防止剤を添加した後、粘着剤層の表面に帯電防止剤を転写させた実施例1〜6では、少量の添加量で剥離帯電圧の低減効果があるため、被着体に対する汚染もなく、剥離帯電防止性能も良好な表面保護フィルムが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、レンズフィルム、などの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等に貼合して表面を保護するために用いることができる。また、本発明の表面保護フィルムは、被着体から剥離する時に発生する静電気の量を低くでき、かつ、剥離帯電防止性能の経時変化および被着体に対する汚染が少なく、生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0059】
1…基材フィルム、2…粘着剤層、3…樹脂フィルム、4…剥離剤層、5…剥離フィルム、7…帯電防止剤、8…被着体(光学部品)、10…表面保護フィルム、11…剥離フィルムを剥がした表面保護フィルム、20…表面保護フィルムを貼合した光学部品。
図1
図2
図3