特許第6289862号(P6289862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289862防湿剤、セルロース系樹脂組成物、およびこれを用いたフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289862
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】防湿剤、セルロース系樹脂組成物、およびこれを用いたフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180226BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20180226BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20180226BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C08L1/00
   C08K5/20
   C08J5/18
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-222467(P2013-222467)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-83642(P2015-83642A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 昌希
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 仁昭
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−232444(JP,A)
【文献】 特開2011−162696(JP,A)
【文献】 特開2005−247960(JP,A)
【文献】 特開2005−247961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08L 1/00
C08K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)、
(式(2)中、nは0〜6の整数であり、R〜Rは水素原子、は置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Lで表される連結基は、−NH−C(=O)−である)で表されることを特徴とする防湿剤。
【請求項2】
セルロース系樹脂100質量部に対して、請求項1記載の防湿剤が1〜30質量部含有されてなることを特徴とするセルロース系樹脂組成物。
【請求項3】
前記セルロース系樹脂100質量部に対し、可塑剤が1〜30質量部含有されてなる請求項記載のセルロース系樹脂組成物。
【請求項4】
前記セルロース系樹脂が、セルロースアシレートである請求項2または3記載のセルロース系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2〜4のうちいずれか一項記載のセルロース系樹脂組成物が成形されてなることを特徴とするフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防湿剤、セルロース系樹脂組成物(以下、単に、「樹脂組成物」とも称す)、およびこれを用いたフィルムに関し、詳しくは、セルロース系樹脂組成物に対して優れた防湿効果を付与し得る防湿剤、セルロース系樹脂組成物、およびこれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリオレフィン等の樹脂フィルムが主に液晶表示装置用光学補償フィルムに用いられてきている。その中でも、セルロースアシレートフィルムは偏光子に用いられるポリビニルアルコールへの貼合性が優れている点や、透明度が高く、適度な強度を有していることから広く用いられている。今日、液晶表示装置の薄型化に伴い光学補償フィルムも更なる薄膜化の検討が進められている。
【0003】
しかしながら、セルロースアシレートフィルムは吸水率および透湿性が大きいため、高耐久性のある偏光板を製造するためには耐湿熱性の点で、充分に満足できるものではない。そのため、強度面に優れていることに加えて、セルロースアシレートフィルム自体の吸水率および透湿性を抑制し、耐湿熱性に優れた高耐久高偏光度タイプの偏光板を得ることは工業的に極めて困難である。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1では、トリフェニルホスフェートと低級アルキル置換トリフェニルホスフェートとを併用した添加剤を用いた、可塑化効果と耐透湿性能を有するフィルムが提案されている。また、特許文献2では、ウレタン変性ポリエステルポリオールが、低透湿性と製造工程における低揮散性を発現することが示唆されている。さらに、特許文献3では、セルロースアセテート樹脂にアミド系化合物と難燃剤とを併用することで、射出成型加工性の改善効果に優れること等が開示されている。さらにまた、特許文献4では、アミド結合のカルボニル側または窒素原子側にアリール基を一つ有する化合物は、透湿性が小さい改質剤として有用であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−221465号公報
【特許文献2】特開2010−106058号公報
【特許文献3】特開2011−162696号公報
【特許文献4】特開2005−247960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1おけるトリフェニルホスフェートと低級アルキル置換トリフェニルホスフェートとを併用して添加した場合であっても、耐透湿性能では到底満足のいくものではなかった。また、特許文献2におけるウレタン変性ポリエステルポリオールは、トリフェニルホスフェートと比較して揮散性は優れるものの、透湿性はトリフェニルホスフェートより劣り、防湿剤としては不十分であった。さらに、特許文献3における含水率の指標は、セルロースアセテート樹脂の射出成型時における加工性改良を目的としたものであり、防湿剤としての効果を狙ったものではない。また、特許文献4で提案されている化合物では、透湿性改善効果として不十分であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、セルロース系樹脂組成物に対して優れた防湿効果を付与し得る防湿剤、セルロース系樹脂組成物、およびこれを用いたフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物が、セルロース系樹脂組成物に対して優れた防湿効果を付与し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の防湿剤は、下記式(2)、
(式(2)中、nは0〜6の整数であり、R〜Rは水素原子、Rは置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Lで表される連結基は、−NH−C(=O)−である)で表されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、セルロース系樹脂100質量部に対して、本発明の防湿剤が1〜30質量部含有されてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のセルロース系樹脂組成物においては、前記セルロース系樹脂100質量部に対し、可塑剤が1〜30質量部含有されてなることが好ましく、また、前記セルロース系樹脂は、セルロースアシレートであることが好ましい。
【0013】
本発明のフィルムは、本発明のセルロース系樹脂組成物が成形されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、セルロース系樹脂組成物に対して優れた防湿効果を有する防湿剤、セルロース系樹脂組成物、およびこれを用いたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の防湿剤は、下記式(1)、
で表される。ここで、式(1)中、Rは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数7〜20のアリールアルキル基、置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基を表し、R1がアルキル基またはアルケニル基の場合、アルキル基またはアルケニル基はエステル結合で中断されていてもよく、R1がアリールアルキル基の場合、アリール基とアルキル基との間にエステル結合を有していてもよく、Rは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Rがアルキル基またはアルケニル基の場合、アルキル基またはアルケニル基はエステル結合で中断されていてもよく、Lで表される連結基は、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−である。
【0016】
式(1)中、RおよびRで表される置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0017】
式(1)中、RおよびRで表される置換または無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0018】
式(1)中、Rで表される置換または無置換の炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられる。
【0019】
式(1)中、RおよびRで表される置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0020】
式(1)中、Rで表される置換または無置換の炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン−1−イル基、フェナントレン−1−イル基等が挙げられる。
【0021】
以下に、本発明の防湿剤である式(1)で表される化合物を、化合物No.1−1〜1−9に例示するが、本発明の防湿剤は、これによって限定されるものではない。
【0022】
【0023】
また、本発明の防湿剤は、下記一般式(2)、
で表される。ここで、式(2)中、nは0〜6の整数であり、R〜Rは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、Rは置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基を表し、Lで表される連結基は、−NH−C(=O)−または−C(=O)−NH−である。
【0024】
式(2)中、R〜Rで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0025】
式(2)中、R〜Rで表される置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基としては、式(1)で表される化合物のR、Rのアルキル基と同じものが挙げられる。
【0026】
式(2)中、R〜Rで表される置換または無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等、上記アルキル基に対応したアルコキシ基が挙げられる。
【0027】
式(2)中、Rで表される置換または無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、式(1)で表される化合物のR、Rのシクロアルキル基と同じものが挙げられる。
【0028】
式(2)中、Rで表される置換または無置換の炭素数2〜20のアルケニル基としては、式(1)で表される化合物のR、Rのアルケニル基と同じものが挙げられる。
【0029】
以下に、本発明の防湿剤である式(2)で表される化合物を、化合物No.2−1〜2−6に例示するが、これによって限定されるものではない。
【0030】
【0031】
次に、本発明のセルロース系樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、セルロース系樹脂100質量部に対して、本発明の防湿剤が、1〜30質量部含有されてなるものである。本発明の防湿剤含有量が1質量部未満では防湿効果が十分に発揮されず、一方、30質量部を超えて使用した場合には、ブリードを生じるため、好ましくない。なお、本発明の樹脂組成物においては、本発明の防湿剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物に用いられるセルロース系樹脂としては、いずれの種類のものであってもよいが、セルロースの脂肪酸エステル(セルロースアシレート)であることが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルであることがより好ましい。ここで、セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素数が6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0033】
本発明のセルロース系樹脂組成物には、可塑剤を任意に使用することができる。可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート等のホスフェート系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸(酢酸、芳香族酸等)をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤等が挙げられる。
【0034】
上記ポリエステル可塑剤としては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸とからなる化合物、多価アルコールとモノカルボン酸とからなる化合物、多価カルボン酸とモノアルコールとからなる化合物等が挙げられる。
【0035】
以下に、本発明の樹脂組成物において、可塑剤として用いることができる化合物を、下記式(3)、
および式(4)〜(12)を用いて例示するが、これらに限定されるものではない。なお、これらポリエステル系可塑剤は単独で用いてもよく、2種類以上を混合物として用いてもよい。また、下記の可塑剤−1〜4にあっては、混合物のカッコ内はモル比を示す。
【0036】
可塑剤−1:上記式(3)で表され、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)および1,2−プロピレングリコール(50)と、多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)およびテレフタル酸(50)、末端Eがアセチル基からなるn=5のポリエステル化合物。
【0037】
可塑剤−2:上記式(3)で表され、多価アルコール成分Gとして、1,2−プロピレングリコールと、多価カルボン酸成分Aとして、2,6−ナフタレンジカルボン酸、末端Eが水素からなるn=2のポリエステル化合物。
【0038】
可塑剤−3:上記式(3)で表され、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコールと、多価カルボン酸成分Aとして、アジピン酸、末端Eがアセチル基からなるn=10のポリエステル化合物。
【0039】
可塑剤−4:上記式(3)で表され、多価アルコール成分Gとして、1,2−プロピレングリコールと、多価カルボン酸成分Aとして、テレフタル酸、末端Eがトルイル基からなるn=5のポリエステル化合物。
【0040】
可塑剤−5
【0041】
可塑剤−6
【0042】
可塑剤−7
【0043】
可塑剤−8
【0044】
可塑剤−9
【0045】
可塑剤−10
【0046】
可塑剤−11
【0047】
可塑剤−12
【0048】
可塑剤−13
【0049】
その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤等も用いることができる。
【0050】
本発明の樹脂組成物においては、上記可塑剤の配合量は、セルロース系樹脂100質量部に対して1〜30質量部が好適である。可塑剤の配合量が1質量部未満では可塑剤としての効果が十分に得られず、一方、30質量部を超えて使用した場合には、ブリードを生じるため、好ましくない。
【0051】
また、本発明の樹脂組成物には、さらに各種の添加剤、例えば、リン系、フェノール系または硫黄系抗酸化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を配合することもできる。
【0052】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−n―ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニルホスホナイト等が挙げられる。
【0053】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパノイルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0054】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
【0055】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−第三ブチル−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−C7〜9混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エチルオキシ)フェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(2−オクタノイルオキシエチル)フェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、テトラキス(α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリロイルオキシメチル)メタン等のシアノアクリレート類等が挙げられる。
【0056】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(1−ウンデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート等が挙げられる。
【0057】
その他、本発明には、さらに必要に応じてその他添加剤、例えば、充填剤、着色剤、架橋剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性化剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤等を配合することができる。
【0058】
次に、本発明のフィルムについて説明する。
本発明のフィルムは、上記本発明のセルロース系樹脂組成物が成形されてなるものである。本発明のフィルムは、セルロース系樹脂の樹脂フィルムであるが、本発明の防湿剤が添加されているため、優れた防湿効果を示す。以下、本発明のフィルムの製造方法について説明するが、以下の方法により限定されるものではない。
【0059】
本発明のフィルムは、例えば、セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液を塗布、乾燥することにより製造することができる。ドープ液には必要に応じて各種添加剤を混合する。ドープ液中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これ等を両立する濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは15〜25質量%である。
【0060】
本発明に係るドープ液の調製に用いる溶剤は、単独でも併用でもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤とを混合して用いることが生産効率の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が30〜2質量%である。本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独では膨潤するのみかあるいは溶解し得ないものを貧溶剤と定義する。そのため、セルロースの平均酢化度によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えば、アセトンは、平均酢化度55%のセルロースエステルでは良溶剤になり、平均酢化度60%のセルロースエステルでは貧溶剤となってしまう。このように、良溶剤、貧溶剤はすべての場合に一義的に決まるものではない。本発明において好ましいセルロースエステルの場合には、良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル等が挙げられる。一方、貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0061】
上記ドープ液を調製するときのセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止することができるため、好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合し、湿潤あるいは膨潤させた後、さらに良溶剤と混合して溶解する方法も好ましく用いられる。さらも、公知の冷却溶解法を用いてもよい。冷却溶解法を用いる場合には、良溶剤として酢酸メチル、アセトンを用いることができる。加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶剤の蒸気圧の上昇によって行ってもよい。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えば、ジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるため、好ましい。
【0062】
溶剤を添加した後の加熱温度は、使用溶剤の常圧での沸点以上で、かつ溶剤が沸騰しない範囲の温度が、セルロースエステルの溶解度の観点から好ましい。加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり、生産性が悪くなる。好ましい加熱温度の範囲は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70〜105℃が更に好ましい。また、圧力は、設定温度で溶剤が沸騰しないように調整する。加熱後は、得られたセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾材を用いて濾過する。濾材としては、不要物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾材の目詰まりが発生しやすいという問題点が生じる。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの範囲の濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、例えば、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材やステンレス等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく、好ましい。
【0063】
ドープ液の濾過は通常の方法で行うことができるが、加圧下で、溶剤の常圧での沸点以上でかつ溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾材前後の差圧(以下、濾圧ということがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい濾過の温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃が更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6×10Pa以下であることが好ましく、1.2×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。
【0064】
流延(キャスト)工程に用いる支持体は、無端ベルト状またはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましい。キャスト工程の支持体の温度は0℃から溶剤の沸点未満の温度までが好ましい。温度が高い方が乾燥速度を速くできるが、あまり高過ぎると発泡し、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜50℃であり、5〜30℃が更に好ましい。支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水バットを支持体に接触させる方法がある。これらの方法のうち、温水バットを用いる方法が、熱の伝達が効率的に行われ、支持体の温度が一定になる時間が短くなるため、好ましい。温風を用いる場合は、目的の温度よりも高い温度の風を使う必要がある。セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残存溶剤量は、10〜120質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜120質量%であり、特に好ましくは20〜30質量%または70〜115質量%である。
【0065】
本発明においては、残留溶剤量は下記式で定義される。
残留溶剤量=〔(加熱処理前のフィルム質量−加熱処理後のフィルム質量)/(加熱処理後のフィルム質量)〕×100(%)
なお、残留溶剤量を測定する際の加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間加熱することをいう。また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶剤量を3質量%以下にすることが好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、テンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式を採ることができる。
【0066】
支持体より剥離した直後の残留溶剤量の多い間に、テンター方式で幅保持または延伸を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため、好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができる。簡便さの点では、熱風で行うことが好ましい。この場合、乾燥温度は40〜150℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、寸法安定性を良くするためには50〜140℃で行うことが更に好ましい。
【0067】
フィルムの膜厚は、薄い方が液晶ディスプレイの薄膜化が容易になるため好ましいが、薄過ぎると、透湿度が増大し、引き裂き強度等が不足する。これ等を両立するセルロースエステルフィルムの膜厚としては、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によりなんら制限を受けるものではない。
【0069】
<実施例1、実施例2、参考例1〜6および比較例1〜8>
セルローストリアセテート100質量部(酢化度61%、重合度260)、および下記の表1〜4記載の化合物15質量部を、メチレンクロライド400質量部とメチルアルコール100質量部とからなる混合溶剤に撹拌しながら均一に溶解させ、各種揮散性評価用およびフィルム作成用ドープ液を調製した。次いで、得られたドープ液をガラス板上に約80μmになるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で1時間乾燥させ、さらに120℃で1時間乾燥させ、各種評価フィルムを得た。得られたフィルムの膜厚はいずれも約80μmであった。
【0070】
<実施例3、4>
セルローストリアセテートを100質量部(酢化度61%、重合度260)、表5記載の化合物および可塑剤を同表中の質量部で、メチレンクロライド400質量部とメチルアルコール100質量部とからなる混合溶剤に撹拌しながら均一に溶解させ、各種揮散性評価用およびフィルム作成用ドープ液を調製した。以下、上記と同様の手法でフィルムを同膜厚で作製した。
【0071】
<透湿性の評価方法>
上記の方法で得られたフィルムを、JIS Z 0208に記載の方法に従い、透湿度を測定した。測定条件は40℃、相対湿度80%である。得られた評価結果を下記の表1〜表5に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
比較化合物1:トリフェニルホスフェート
【0078】
上記表1〜4から明らかなように、従来公知であって防湿性がある比較例1または比較例2〜8と比較して、本発明に係る化合物を使用したいずれの実施例も防湿能が極めて優れる。さらに、上記表5から明らかなように、本発明の防湿剤は、可塑剤と併用しても防湿能が優れている。