特許第6289945号(P6289945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289945
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】即席乾燥味付肉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/60 20160101AFI20180226BHJP
   A23B 4/03 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A23L13/60 Z
   A23B4/03 501E
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-51692(P2014-51692)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-173621(P2015-173621A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 友宏
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴照
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−032956(JP,A)
【文献】 特開2003−235515(JP,A)
【文献】 特開2011−062142(JP,A)
【文献】 特開2001−054368(JP,A)
【文献】 特開平10−179091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A23B 4/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料肉を成形する成形工程と、
成形した原料肉を加熱する加熱工程と、
加熱した原料肉を乾燥する乾燥工程と、を含む即席乾燥味付肉の製造方法であって、
前記成形工程
複数の原料肉を層状に張り合わせ一体化した後、
一体化した原料肉の外周から中心方向に向けて圧力をかけることで成形する工程であり
脂身部分が連続して半周以上外周部分を覆わないことを特徴とする即席乾燥味付肉の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程における成形方法が糸巻き、ミットネット充填またはケーシング充填の何れかであることを特徴とする請求項1記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程において、原料肉の脂身部分が層状に張り合わせた原料肉の最外面となるように原料肉を張り合わせることを特徴とする請求項1または2何れか一項記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程において、原料肉を張り合わせる面同士が赤身部分であることを特徴とする特請求項1〜3何れか一項記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程において、ケーシング充填により成形し、
層状に張り合わせた原料肉のケーシングに充填する方向に対して垂直の横断面の底辺の長さがケーシングの折径に対し、40〜80%であり、
前記横断面の高さが30〜60%の範囲に入るように原料肉を層状に張り合わせることを特徴とする請求項1〜4何れか一項記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程が真空凍結乾燥であることを特徴とする請求項1〜5何れか一項記載の即席乾燥味付肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスタント食品の具材として使用される即席乾燥味付肉及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタント食品(例えばカップ入りラーメン)が大いに普及しており、その具材として長期常温保存可能な即席乾燥味付肉(例えば乾燥チャーシュー)が用いられている。このような即席乾燥味付肉は、湯掛け調理や鍋炊き調理、電子レンジ調理等により簡単に復元し喫食可能となる。
【0003】
従来、即席乾燥味付肉の内、乾燥チャーシューの製造方法としては、豚バラ肉等の原料肉を適当な塊になるように折り曲げたり、丸めたりした後、糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充填などにより、原料肉の塊の外周から塊の中心方向に向けて圧力をかけて塊が略円柱形となるように成形し、加熱後、カットし、乾燥する方法が一般的であった。
【0004】
しかしながら、このように原料肉を折り曲げたり、丸めたりしたりした後、糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充填などにより成形され、製造された乾燥チャーシューをお湯等により復元した場合、肉が湾曲するなどの問題があり、喫食時の見栄えが悪いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、お湯等による復元時の肉の湾曲を防止し、喫食時の見栄えのよい即席乾燥味付肉及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは鋭意研究した結果、赤身部分と脂身部分の復元性の違い、復元の方向性に着目し、原料肉を層状に張り合わせて一体化した後、糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充填などにより、一体化した原料肉の外周から中心方向に向けて圧力をかけて成形し、即席乾燥味付肉を製造することで、復元時の肉の湾曲を防止できることを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、原料肉を成形する成形工程と、成形した原料肉を加熱する加熱工程と、加熱した原料肉を乾燥する乾燥工程と、を含む即席乾燥味付肉の製造方法であって、前記成形工程において、複数の原料肉を層状に張り合わせ一体化した後、一体化した原料肉の外周から中心方向に向けて圧力をかけることで成形することを特徴とする。
【0008】
また、本発明における成形工程は、糸巻き、ミットネット充填またはケーシング充填が好ましい。
【0009】
また、本発明における乾燥工程は、真空凍結乾燥であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、復元時の湾曲が抑えられ、見栄えのよい即席乾燥味付肉及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における原料肉を糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充 填するときの実施方法の一例を示した図である。
図2】原料肉を糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充填するとき一般的な充填方法を示した図である。
図3】本実施形態で作製した即席乾燥味付肉の復元前後の状態を説明した図である。
図4】一般的な充填方法で製造した即席乾燥味付肉の復元前後の状態を説明した図である。
図5】実施例1、比較例1の代表的なサンプルの復元後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る即席乾燥味付肉の製造方法を工程順に具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
1.原料配合
本実施形態に係る原料肉については、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉などの畜肉を使用することができる。即席乾燥味付肉が乾燥チャーシューの場合は、豚肉を用いる。使用する部位については、特に限定されず、バラ、ヒレ、ロース、かた、かたロース、もも、そともも等を使用できる。
【0014】
2.前処理
原料肉の前処理として、始めに脂身や、筋膜、筋、骨等をトリミングする。次にトリミングした原料肉に対してジャガードやミートハンマー等を用いてテンダライズを行う。テンダライズすることで後述するインジェクション工程においてピックル液が肉全体に行渡り易くなる。
【0015】
3.インジェクション工程
前処理した原料肉にピックル液をインジェクションする。ピックル液の原料としては、調味材料として、食塩、醤油、みりん、グルタミン酸ナトリウム等の他、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール、水あめなどの糖類、胡椒、シナモン、グローブ、フィンネル、スターアニス、ナットメグなどの香辛料、しょうが、にんにく、ねぎ、たまねぎ等の摩り下ろしや絞り汁や、結着材料として、食塩、ピロリン酸ナトリウムやポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのリン酸塩、大豆蛋白や卵白、乳蛋白などの動植物性タンパク質、小麦粉、澱粉、加工澱粉、デキストリン、増粘多糖類、食物繊維、トランスグルタミナーゼなどの酵素、その他の材料として、酢酸、ワイン等の醸造酒、パパインなどの蛋白分解酵素、重曹などの炭酸塩、アスコルビン酸ナトリウムやトコフェロールなどの保存料、亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウムなどの発色剤、香料等が挙げられる。ピックル液のインジェクション量としては、原料肉の重量に対して20〜80重量%となるように添加することができる。
【0016】
4.浸透工程
ピックル液を添加した原料肉を低温・減圧下にて数時間回転させながらピックル液を原料肉に浸透させるタンブリング処理を行う。タンブリング処理後、原料肉を10℃以下で12〜24時間冷置し、ピックル液を原料肉全体に浸透させる。
【0017】
5.成形工程
ピックル液を浸透させた原料肉をケーシングの折径に合わせて層状となるように張り合わせる。このとき、必要に応じて原料肉をカットして形状を整えてから張り合わせることができる。また、大豆蛋白や乳タンパクなどのタンパク質成分や澱粉、食塩、アルカリ土類の塩、リン酸塩、トランスグルタミナーゼ等を単独または組み合わせて、粉末または液体の状態で原料肉の張り合わせる面に付着させることで原料肉同士の結着を強固にすることもできる。
【0018】
層状に張り合わせる原料肉の層数としては、2層以上であればよく、特に限定しない。張り合わせる層数が多ければ多いほど接着面が多くなり、製造過程において千切れたり、復元時に千切れたりし易くなるため、好ましくは2層〜4層となるように層状に張り合わすことが好ましい。また、1層が複数の原料肉より構成されても良いが、最外層は1つの原料肉より構成されることが好ましい。
【0019】
原料肉脂身部分は風味がよいが、復元性が悪く見栄えも外側の方が好ましいため、原料肉の脂身部分が最外面になるように層状に張り合わせることが好ましい。また、原料肉同士を張り合わせる面が脂身部分の場合、肉同士の結着が弱くなるため、より好ましくは、原料肉同士を張り合わせる面は赤身部分同士であることが好ましい。
【0020】
原料肉をケーシングに充填する場合は、層状に張り合わせて一体化した後の形状が、ケーシングに充填する方向に対して垂直方向の横断面の底辺の長さがケーシングの折径に対し、40〜80%であり、横断面の高さが30〜60%の範囲に入るように原料肉を層状に張り合わせることが好ましい。この範囲より横断面の底辺、高さが小さくなるとケーシングに空間ができてしまい、原料肉をケーシングに詰め込む際に原料肉が折り曲がり易くなるため好ましくない。また、この範囲より横断面の底辺、高さが大きくなるとケーシングに詰め込みにくくなるため好ましくない。より好ましくは、ケーシングに充填する方向に対して垂直の横断面の底辺の長さがケーシングの折径に対し、50〜70%であり、横断面の高さが40〜50%の範囲に入るように原料肉を層状に張り合わせることが好ましい。
【0021】
層状に張り合わせて一体化した原料肉を一体化した原料肉の外周から中心方向に向けて圧力をかけて成形する。成形方法としては、例えば糸巻き、ミートネット充填またはケーシング充填があげられる。図2は、原料肉を糸巻きまたはミートネットやケーシングに充填するとき一般的な成形方法を示した図である。図2で示すように、一般的な成形方法には、原料肉を丸めたり折り曲げたりして、糸で巻いたり、原料肉を充填機にセットし、ミートネットやケーシングに充填する。それに対し、図1は、本実施形態における原料肉を糸巻きまたはミートネットやケーシングに充填するときの実施方法の一例であるが、図1で示すように原料肉を丸めたり、折り曲げたりせずに糸で巻いたり、充填機に原料肉をセットし、ミートネットやケーシングに充填する。ここでいう、丸めたり、折り曲げたりしないとは、図1で示したような方法で意図的に極度に原料肉を曲げた状態で原料肉を糸で巻いたり、ミートネットやケーシングに充填しないという意味であり、糸で巻いたり、ミートネットやケーシングに充填する際におきる意図的でない曲がりのことではない。このような意図的でない曲がりは、湾曲防止効果に影響のない範囲であれば問題ない。このように原料肉を層状に張り合わせて一体化した後、成形することで、極度に原料肉が屈曲することなく、赤身が復元する際の拡張を脂身部分が妨害することなく拡張でき、即席乾燥味付肉の湾曲を防止できる。
【0022】
6.加熱工程
成形した原料肉を加熱する。加熱方法は特に限定しないが、ボイル、蒸気、熱風等により中心温が70℃以上となるように加熱すればよい。加熱時間長くしたり、中心温を高くし、原料肉のタンパクを変性させることで、即席乾燥味付肉を熱湯等により復元した際には、肉の湾曲が少なくなるが、本実施形態のように原料肉を層状に張り合わせて一体化した後成形することにより、加熱時間が短い場合や中心温が低い場合でも湾曲を抑えることができ、加熱にかかるエネルギーを低く抑えることができる。
【0023】
7.カット工程
加熱工程にて加熱処理した原料肉を冷却し、凍結する。凍結した原料肉を−5℃前後まで半解凍した後、スライサーやギロチンカッターにて目的の形状にカットする。カット形状は、特に限定なく、ダイス状や平板状など当業者が適宜設定できる。
【0024】
8.調味液工程
カット工程においてカットされた原料肉を調味液に浸漬して味付けを行う。ピックル液添加工程において、原料肉に対して下味を付与しているため、ここでは主に全体的な味を調え、保存性、柔軟性を保つための糖類の付与を目的とする。調味液に浸漬した原料肉を液切りし、原料肉に付着した余分な調味液を落とす。調味液工程を行わずにピックル液に調味液材料を混合し、味付け工程を1回に簡略化する場合は、この工程を省略することができる。
【0025】
9.乾燥工程
カットされた原料肉または、カット後調味液に浸漬した原料肉を水分が14%以下になるように乾燥する。乾燥方法は、熱風乾燥、マイクロウェーブ乾燥、真空凍結乾燥を行うことができる。熱風乾燥やマイクロウェーブ乾燥と比較して、真空凍結乾燥は、乾燥時の原料肉の収縮が少ないため、乾燥時の湾曲も少なく、また、お湯等による復元時の復元性もよく好ましい。
【0026】
真空凍結乾燥を行う場合には、調味液を液切りした原料肉をトレーに並べて再度凍結した後真空凍結乾燥を行う。調味液工程を行わずにピックル液に調味液材料を混合し、味付け工程を1回に簡略化する場合は、カットした原料肉をトレーに並べて再度凍結した後、真空凍結乾燥を行う。真空凍結乾燥した原料肉は、水分が3%以下と低く脆いため、湿度を調整した庫内で水分が4〜14重量%となるように調湿し、柔軟性を持たせた後、即席乾燥味付肉とすることができる。
【0027】
10.その他工程
乾燥した即席乾燥味付肉は、異物検査、微生物検査等の検査を経て、バルク状にケース梱包されるか、個食用にパックされてケースに梱包され、インスタント食品の製造工場に輸送され、インスタント食品に使用される。
【0028】
図3は、本実施形態で作製した即席乾燥味付肉の復元前後の状態を説明した図であり、
図4は、一般的な充填方法で製造した即席乾燥味付肉の復元前後の状態を説明した図である。図4で示すように一般的な成形方法である、原料肉を丸めたり、折り曲げたりした後、外周から中心方向に向けて圧力をかけて成形する方法で製造した即席乾燥味付肉は、原料肉が屈曲した状態で成形されている。脂身部分は、赤身部分よりも復元性が悪く、復元速度が遅い。このため赤身部分が復元する際に即席乾燥味付肉の外周方向に伸張しようとするが、赤身部分を覆うように脂身部分が存在するため、伸張が妨害され、逆に内部方向に伸張が進む。その結果、即席乾燥味付肉の中央部付近が即席乾燥味付肉の平面に対して垂直方向に移動することで湾曲する。それに対し、図3で示すように本実施形態で製造した即席乾燥味付肉は、原料肉を層状に配置することで極度に原料肉が屈曲することなく成形されており、脂身部分が連続して半周以上外周部分を覆わない。その結果、復元時に赤身部分が伸張しても脂身部分が赤身部分の伸張を妨害しないため、即席乾燥味付肉の湾曲を防止できる。
【0029】
以上のように、原料肉を層状に張り合わせて一体化した後、原料肉を丸めたり、折り曲げたりせずに糸巻きまたはミートネット充填もしくはケーシング充填し、即席乾燥味付肉を製造することで、復元時の肉の湾曲を防止できる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
【0031】
(実施例1)
豚バラ肉ブロックをトリミングし、ジャガードで筋を切断した後、注射針を用いて表1で示したピックル液を豚バラ肉の重量に対して50重量%となるようにインジェクションした。
【0032】
インジェクションした豚バラ肉ブロックを温度10〜14℃、−0.08MPa以下の減圧条件で6時間タンブリングを行い、10℃以下で12時間静置した。
【0033】
静置した豚バラ肉ブロックを長手方向に約450mm、短手方向に長さが50±10mmとなるように切断した後、皮側から1番目の赤身と2番目の脂身部分の境界部分で再び切断した。2枚に分けた豚バラ肉を脂身が外側、赤身が内側となるように向き合わせ、トランスグルタミナーゼと大豆蛋白粉末を2:8で混ぜて軽く水で溶かした接着液を、豚バラ肉の重量に対して約0.6重量%程度となるように2枚の豚バラ肉の接着面に塗布し、接着させた。このとき、2枚張り合わせたときの厚みが薄い部分には、豚バラ肉の赤身部分のカット片に接着液を付着したものを2枚の豚バラ肉の間に挿入し、長さ約450mm、幅50±10mm、厚み45±10mmの成形肉を2本作成した。
【0034】
作成した成形肉を充填機に折り曲げずにそのまま入れ、折径93mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材のケーシングに長手方向に35g/cmとなるように充填した。
【0035】
充填した豚ばら肉を上記により加熱温度が98℃で50分、中心音が80℃になるまで加熱処理を行った。
【0036】
加熱処理した豚バラ肉を冷却し、−25℃の凍結庫にて10時間凍結した。凍結した豚バラ肉を−5℃程度になるまで解凍し、スライサーを用いて肉厚が2.0mmとなるようにスライスした。
【0037】
スライスした豚バラ肉をトレーに並べ、再びー25℃の凍結庫にて品温が−20℃になるまで凍結した。凍結した豚バラ肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が一定になるまで真空凍結乾燥し、即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0038】
(実施例2)
蒸気による加熱条件を98℃で72分、中心温が90℃になるまで加熱処理を行う以外は、実施例1の方法に従って即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0039】
(実施例3)
蒸気による加熱条件を98℃で110分、中心温が100℃になるまで加熱処理を行う以外は、実施例1の方法に従って即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0040】
(比較例1)
ピックル液をインジェクションし、静地した豚バラ肉ブロックを長手方向に約450mm、短手方向に85±10mmとなるように切断した後、脂身側を下にして、接着液を赤身側の面に塗布し、接着液を付着させた豚バラ肉の赤身部分のカット片を赤身側の面の上に載せ、カット片を巻き込むように豚バラ肉を丸めたものを2本用意し、充填機に入れ、折径93mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材のケーシングに長手方向に35g/cmとなるように充填する以外は、実施例1の方法に従って即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0041】
(比較例2)
蒸気による加熱条件を98℃で72分、中心温が90℃になるまで加熱処理を行う以外は、比較例1の方法に従って即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0042】
(比較例3)
蒸気による加熱条件を98℃で110分、中心温が100℃になるまで加熱処理を行う以外は、比較例1の方法に従って即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0043】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器にいれて500mlの熱湯を注加し、蓋をし
て3分放置して復元した。各サンプル20枚復元し、目視にて即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)の湾曲を評価した。湾曲の基準としては、中心部と外周部との高さの差が3mmあるものを湾曲とみなし、3mm以上の湾曲が認められないものを○、3mm以上の湾曲が1部認められるものを△、外周約1/2以上の範囲が少なくとも3mm以上湾曲しているもの×とし評価した。また、湾曲防止としての総合評価として○を3点、△を1点、×を0点とし、20枚の総合得点が50点以上を◎、40〜49点を○、30〜39点を△、30点未満を×とした。
【0044】
実施例1に使用したピックル液の配合を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
湾曲数の測定結果について表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
上記の結果より、原料肉を層状に張り合わせて一体化した後成形することにより、原料肉を巻いた状態で成形する方法に比べ、復元時の湾曲を抑えることができることがわかる。比較例3で示すように加熱時間を延ばして中心温を100℃にしタンパク質を変性しきることで湾曲を抑制することはできるが、原料肉を層状に張り合わせて一体化した後成形することにより、このように高温で長時間加熱しなくても湾曲を抑制することができる。
【0049】
また、図5は、実施例1、比較例1の代表的なサンプルを撮影した写真である。写真左が実施例1のサンプルであり、写真右が比較例1のサンプルである。写真で示すように比較例1のサンプルは、外周部が湾曲し、中心部が窪んだ形状となっているのに対し、実施例1のサンプルでは、湾曲なく平板状であることがわかる。
【0050】
上記の試験結果より、原料肉を層状に張り合わせて一体化した後、原料肉を丸めたり、折り曲げたりせずにケーシング充填し、即席乾燥味付肉を製造することで、復元時の肉の湾曲を防止できることがわかる。
【0051】
なお、本願発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を
逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記実施形態には種々の段
階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより
種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要
件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決
しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が
得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出さ
れ得るものである。
図1
図2
図3
図4
図5