特許第6289997号(P6289997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289997流量センサの検査方法、検査システム、及び、検査システム用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289997
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】流量センサの検査方法、検査システム、及び、検査システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01F 25/00 20060101AFI20180226BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20180226BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G01F25/00 Z
   G01F1/68 Z
   G01F1/00 X
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-100973(P2014-100973)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-219043(P2015-219043A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】安田 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】白井 隆
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−142015(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/072614(WO,A1)
【文献】 特開平09−016268(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0030390(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0004903(US,A1)
【文献】 米国特許第05307667(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00−9/02
G01F25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するための検査方法であって、
前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた層流素子又は分流素子である流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、を用い、
前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするバルブ制御ステップを備え、
前記バルブ制御ステップが、設定流量値が小さいほど、前記流路構造の圧力が小さくなるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更することを特徴とする流量センサの検査方法。
【請求項2】
上流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するために用いられる検査システムであって、
前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた層流素子又は分流素子である流体抵抗と、
前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、
前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、
前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするように構成されたバルブ開閉制御部と、を備え、
前記バルブ開閉制御部が、設定流量値が小さいほど、前記流路構造の圧力が小さくなるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されたことを特徴とする流量センサの検査システム。
【請求項3】
前記バルブ開閉制御部は、少なくとも前記流路構造に流す流体の流量の目標値である設定流量値に応じて、前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成された請求項2記載の流量センサの検査システム。
【請求項4】
前記検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時系列データと、前記流体センサから出力される圧力又は流量の測定値の時系列データと、に基づいて検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査する流量センサ調整部をさらに備えた請求項2又は3いずれかに記載の流量センサの検査システム。
【請求項5】
前記検査対象の流量センサが、流体の流量に応じた電気信号を出力するセンシング機構と、前記センシング機構から出力される電気信号の示す値、及び、所定の流量算出式に基づいて測定流量値を出力する流量出力部と、を具備し、
前記流量算出式が、前記センシング機構から出力される電気信号の示す値の微分値と、当該微分値に対して乗じられる係数である微分係数との積の項を有しており、
前記流量センサ調整部が、前記検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時系列データと、前記流体センサで測定される測定値の時系列データとの間の位相差がゼロとなるように前記微分係数を変更するように構成されている請求項4記載の流量センサの検査システム。
【請求項6】
前記検査対象の流量センサが、熱式の流量センサであり、
前記流体センサが、圧力式の流量センサである請求項2乃至5いずれかに記載の流量センサの検査システム。
【請求項7】
流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するために用いられるものであり、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた層流素子又は分流素子である流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、を備えた流量センサの検査システムに用いられるプログラムであって、
前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするように構成されたバルブ開閉制御部としてのコンピュータに発揮させ、
前記バルブ開閉制御部が、設定流量値が小さいほど、前記流路構造の圧力が小さくなるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されていることを特徴とする流量センサの検査システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量センサで測定される流量値に含まれる少なくとも時間遅れについて検査するための流量センサの検査方法、検査システム、及び、検査システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流量センサから出力される測定流量値には、実流量値に対して時間遅れが発生している場合がある。このような時間遅れの有無について検定する、あるいは、時間遅れが無くなるように流量センサを調整するといった流量センサの検査作業が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
流量センサの時間遅れに関する検査は具体的には以下のように行われている。まず検査対象の流量センサ、基準となる流量センサ、流路内に所定の圧力を発生させるための流体抵抗を同一の流路上に設けて検査システムを構成し、その流路に流れる流体の流量を変化させる。次に流量が変化している際に検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時系列データと、基準となる流量センサで測定される基準流量値の時系列データとを比較し、位相差の有無で検定を行ったり、各時系列データの位相差が無くなるように例えば前記検査対象の流量センサに設定されている微分係数等のパラメータが調整されたりする。
【0004】
ところで、上述したような検査を行う場合には、各流量センサの出力とは無関係なノイズ等を含まないようにするために、流路内に圧力が十分にチャージされて流路内の流体が安定した状態にしたうえで検査が開始される。
【0005】
しかしながら、前記検査対象の流量センサの測定レンジが小流量域に設定されたものの場合、当該検査対象の流量センサを介して前記流路内に流入させることができる流体の流量は流路の容積と比較して非常に小さい。このため流路内の圧力を時間遅れの検査を開始するのに適した圧力までチャージするのに時間がかかる。
【0006】
また、前記検査対象の流量センサが安定的に動作可能な流路の圧力は、その測定レンジによって異なっているが、現状の検査システムでは検査対象の流量センサによらず、略同じ圧力にチャージした上で検査がされており、前記検査対象の流量センサに応じて最適化されているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−16268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、検査対象の流量センサに応じて流路内に適切な圧力をチャージできるとともに、検査の開始までの待ち時間を大幅に短縮できる流量センサの検査方法、検査システム、及び、検査システム用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するための検査方法であって、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、を備えた検査システムを用い、前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするバルブ制御ステップを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するために用いられる検査システムであって、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするように構成されたバルブ開閉制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、前記各分岐流路上にはそれぞれ流体抵抗とバルブが設けられているので、前記検査対象の流量センサを検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にすることで、前記流路構造に流れる流体の流量が少量であったとしても、短時間で検査を開始するのに適した圧力までチャージすることができる。
より具体的には、前記各分岐流路に設けられた各バルブを複数開放して、前記上流側流路に対する流路抵抗を小さくすると、前記流路構造における流体の状態を低い圧力で安定させることができる。
【0012】
したがって、例えば前記検査対象の流量センサの測定レンジが小流量域のものであり、設定流量値が小さく前記上流側流路に流入する流量が流路の容積と比較して小さい場合には、前記バルブ開閉制御部が、前記流路抵抗が小さくなるように各バルブのうち開放されているバルブの数を多くし、低圧で流体が安定するようにして時間遅れの検査が開始できる圧力が前記流路構造においてチャージされる時間を短縮できる。
【0013】
前記検査対象の流量センサの測定レンジがどのようなものであったとしても短時間で時間遅れの検査を開始できるようにするには、前記バルブ開閉制御部は、少なくとも前記流路構造に流す流体の流量の目標値である設定流量値に応じて、前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されたものであればよい。
このようなものであれば、前記バルブ開閉制御部が、その開閉状態の組み合わせを変更することで、前記上流側流路に対する流路抵抗の大きさを自由に変更し、流体の状態が安定し、検査を開始できる圧力を変化させることができる。
【0014】
例えば、前記検査対象の流量センサの測定レンジが大流量域のものであり、設定流量値が大きい場合には、前記検査対象の流量センサの出力が安定する高圧で流体が安定するように前記上流側流路に対する流路抵抗が大きくなるように各バルブのうち閉止されているバルブの数を多くすればよい。一方、前記検査対象の流量センサの測定レンジが小流量域の場合には、開放されている前記各バルブの数を多くして、前記流路構造が低圧で流体の状態が安定するようにもできる。
【0015】
そして、前記流路構造において時間遅れの検査に必要な圧力がチャージされているので、前記検査対象の流量センサから出力される流量値の時系列データと、前記流体センサから出力される流量又は圧力の測定値の時系列データを比較することで、前記検査対象の流量センサにおける時間遅れを把握し、精度よく調整することができる。
【0016】
このように、時間遅れに関する検査を開始できるまでの待ち時間を短縮するとともに、流量センサの出力が安定する圧力に調整することができ、全流量域に対して短時間で精度のよい時間遅れの検査を実現できる。
【0017】
時間遅れの検査を開始するまでにかかる時間を従来と比較して短縮できるとともに、検査精度も担保できるようにするには、前記バルブ開閉制御部が、設定流量が小さいほど、前記流路構造の圧力が小さくなるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されていればよい。
【0018】
時間遅れの検査は、基準となる前記流体センサから出力される測定値が実際の値と寸分違わず一致している必要はなく、実際の流量の変化と同じような挙動さえ示していればよい。そこで、時間遅れの検査を実行するのに必要十分な出力が前記流体センサから得られる圧力までチャージするようにし、時間遅れの検査を開始するまでにかかる時間を必要最小限にして検査にかかる全体の検査時間を短縮できるようにするには、前記バルブ開閉制御部が、前記流路構造における圧力が、前記流体センサが流体の実圧力又は実流量と略同じ測定値を出力可能な推奨使用圧力よりも低い圧力となるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されていればよい。
【0019】
例えば、前記バルブ開閉制御部により時間遅れの検査に適した圧力がチャージされた上で、自動的に前記検査対象の流量センサの時間遅れを検査できるようにするには、前記検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時系列データと、前記流体センサから出力される圧力又は流量の測定値の時系列データと、に基づいて検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査する流量センサ調整部をさらに備えたものであればよい。
【0020】
前記検査対象の流量センサの時間遅れを調整するための具体的な実施の態様としては、前記検査対象の流量センサが、流体の流量に応じた電気信号を出力するセンシング機構と、前記センシング機構から出力される電気信号の示す値、及び、所定の流量算出式に基づいて測定流量値を出力する流量出力部と、を具備し、前記流量算出式が、前記センシング機構から出力される電気信号の示す値の微分値と、当該微分値に対して乗じられる係数である微分係数との積の項を有しており、前記流量センサ調整部が、前記検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時系列データと、前記流体センサで測定される測定値の時系列データとの間の位相差がゼロとなるように前記微分係数を変更するように構成されているものが挙げられる。
【0021】
前記検査対象の流量センサの近傍で前記上流側流路を流れる流体の流量を制御し、時間遅れの検査のために必要な流量の変化を実現できるようにし、時間遅れの検査の精度をより高められるようにするには、前記検査対象の流量センサと、前記流路構造上に設けられた流量制御バルブと、設定流量値と前記検査対象の流量センサから出力される測定流量値との偏差が小さくなるように前記流量制御バルブを制御する流量制御部と、が流量制御装置を構成していればよい。
【0022】
流量だけでなく、流れている流体の特性まで考慮して時間遅れの検査を行えるようにしつつ、検査を開始するまでにかかる時間を短縮できるようにするには、前記バルブ開閉制御部が、設定流量値と流路を流れる流体のガス種に応じて前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成されていればよい。
【0023】
前記検査対象の流量センサには時間遅れが発生しやすいものとして、基準となる前記流体センサには時間遅れがなく、ほぼ実流量の変化を反映するものにし、時間遅れの検査を精度よく行えるようにするには、前記検査対象の流量センサが、熱式の流量センサであり、前記流体センサが、圧力式の流量センサであればよい。
【0024】
例えば既存の半導体製造システム等の分岐流路上にそれぞれ設けられている流量制御装置等を利用して、本発明の流量センサの検査システムを後付けで構築するには、流側流路、及び、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路を具備する流路構造に設けられた検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するために用いられるものであり、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられた流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記流路構造における流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、を備えた流量センサの検査システムに用いられるプログラムであって、前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするように構成されたバルブ開閉制御部としてのコンピュータに発揮させることを特徴とする流量センサの検査システム用プログラムを、既存のシステムにイントールすればよい。なお、このプログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0025】
このように本発明によれば、検査対象の流量センサについて時間遅れの検査を行う際に、複数の分岐流路上に設けられた各バルブを複数開放して前記上流側流路に対する流体抵抗を小さくし、時間遅れに関する検査を開始するのに必要な流体の安定状態における圧力を小さく設定することができる。したがって、前記流路構造に流す流量が小さい場合でも、流体が安定状態となる圧力が低いので、圧力のチャージが完了し時間遅れの検査が開始できるようになるまでにかかる時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体製造システム、及び、検査システムの全体を示す模式図。
図2】同実施形態における前記半導体製造システム内に構成された流量センサの検査システム部分を示す模式図。
図3】同実施形態における時間遅れの調整前と調整後の状態を示す模式的グラフ。
図4】同時実施形態における流量センサの検査システムの動作について示すフローチャート。
図5】本発明の別の実施形態に係る半導体製造システムの全体、及び、検査システムを示す模式図。
図6】前記別の実施形態における前記半導体製造システム内に構成された流量センサの検査システム部分を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態に係る流量センサの検査システム100について図面を参照しながら説明する。
【0028】
本実施形態の流量センサの検査システム100は、図1に示すように、例えば、半導体製造装置Pの一部として、そのプロセスチャンバCに供給する各種ガスの流量制御を行う流量制御装置中の流量センサの時間遅れに関する検査に用いられるものである。
【0029】
具体的にこの半導体製造装置Pは、例えばプロセスガスやエッチングガスなどの半導体製造用の各種ガスが流れるガス供給ライン1a、1b、・・・(以下、「ガス供給ライン1」と総称する)と、このガス供給ライン1が合流する合流点より下流側に並列して分岐させて設けたチャンバ用ラインCL及び検査用ライン3a、3b、3c(以下、「検査用ライン3」と総称する)と、ガス供給ライン1上にそれぞれ設けた検査対象となる流量センサFSを有する流量制御装置2a、2b、・・・(以下、「検査対象となる流量制御装置2」と総称する)と、検査用ライン3上にそれぞれ設けた基準となる流量制御装置4a、4b、4c(以下、「基準となる流量制御装置4」とも総称する)と、各流量制御装置を所定動作させ検査対象となる流量センサFSの時間遅れに関する検査を実行する情報処理装置5と、を具備しているものである。なお、検査用ライン3及び基準となる流量制御装置4は、検査対象となる流量制御装置2で正確な流量制御が行われているかどうかや、流量制御装置2の流量センサFSが正確な流量の値を示しているかどうかについて検定又は校正するためにも用いられる。このような流量の値に関する検定や校正時は、前記検定対象となる流量制御装置2のうちの1つと、前記基準となる流量制御装置4のうちの1つのみが、一対一で接続されて一本の流路をなすようにした状態で行われる。
【0030】
前記検査対象となる流量制御装置2はいわゆる熱式のマスフローコントローラであり、前記検査対象となる流量センサFSは熱式の流量センサである。
【0031】
また、前記基準となる流量制御装置4はいわゆる圧力式のマスフローコントローラであって、バルブVa、Vb、Vc、流体抵抗たる層流素子Ra、Rb、Rc、層流素子Ra、Rb、Rcの上流側に設けられた上流側圧力センサP1、層流素子Ra、Rb、Rcの下流側に設けられた下流側圧力センサP2、を具備している。なお、図2では圧力センサについては、時間遅れの検査に使用されるもののみを図示しているが、実際には各検査用ライン3にはそれぞれ2つの圧力センサが前記各層流素子Ra、Rb、Rcの上流側と下流側に設けてある。
【0032】
そして、前記流量センサの検査システム100は、各基準となる流量制御装置5a、5b、5cを利用して、前記ガス供給ライン1に対する流路抵抗調整機構FRとして構成してある。言い換えると、流量センサの検査システム100は、検査対象となる流量制御装置2及び検査対象となる流量センサFSを含まず、時間遅れの検査時には前記検査対象となる流量制御装置2a、2b、2c、2d、2eのうちの一つのみが前記各基準となる流量制御装置5a、5b、5cとが接続されるように前記情報処理装置5が図示しない流路接続切替用の開閉バルブの制御を行う。
【0033】
すなわち、図1における半導体製造システムPから、1つの検査対象となる流量センサFSと、前記流量センサの検査システム100にのみ抜き出して記載すると図2のようになる。図2から分かるように本実施形態の流量センサの検査システム100は、上流側流路たるガス供給ライン1と、前記上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路たる検査用ライン3a、3b、3cを具備する流路構造FMに設けられた検査対象の流量センサFSを検査するためのものである。そして、前記流路構造FMに時間遅れの検査以外の目的で設けられた各機器を共用しながら、時間遅れを好適に実施できるように本実施形態の検査システム100を構成してある。
【0034】
別の表現をすると、図2に示すように前記検査システム100は、上流側流路たるガス供給ライン1の1つに設けられた熱式の流量制御装置2における熱式の流量センサFSについて時間遅れに関する検査をするためのものである。この流量制御装置2は、検査対象となる流量センサFSと、ガス供給ライン1に流れる流体の流量を制御するための流量制御バルブ24と、前記流量センサFSから出力される測定流量値と、前記ガス供給ライン1に流す流体の流量の目標値である設定流量値SETとの偏差が小さくなるように前記流量制御バルブ24の開度を制御する流量制御部23とからなる。この流量制御部23は、時間遅れの検査時に必要な流体の流量変化を形成するために前記流量制御バルブ24の開度を制御するものである。なお、流量出力部22及び流量制御部23は例えばマイコン等によりプログラムが実行されることによりその機能が実現されるものである。
【0035】
また、前記検査対象の流量センサFSは、流体の流量に応じた電気信号を出力するセンシング機構21と、前記センシング機構21から出力される電気信号の値と、予め設定されている流量算出式とに基づいて測定流量値を出力する流量出力部22とからなる。前記センシング機構21は、図示しないが流路から分岐するように設けられたU字状の細管に2つの感熱抵抗素子を巻き回しておき、各感熱抵抗素子の温度が一定となるように電圧を印加する2つのブリッジ回路からなり、流体の流量に応じて変化する各感熱抵抗素子に印加される電圧値を前記流量出力部22へと出力するように構成してある。
【0036】
前記流量出力部22は、前記センシング機構21からの出力である各電圧値に基づいて所定の流量算出式により、流量を出力するものである。前記センシング機構21から出力される電圧値と流体の実流量との間には大きな時間遅れが存在するため、現時点で得られる電圧値をそのまま測定流量値に変換するのではなく、現時点で得られる値から現在の実流量値に近い値を予測して出力できるように構成してある。
【0037】
すなわち、前記流量出力部22で使用される流量算出式は、微分項を有しており、時間遅れが回復するようにしてある。より具体的には、前記流量算出式が、前記センシング機構21から出力される電気信号の示す値の微分値と、当該微分値に対して乗じられる係数である微分係数との積の項を有している。本実施形態の検査システム100ではこの微分係数が適切な値に設定されるように構成してある。
【0038】
そして、本実施形態における前記検査システム100は、前記ガス供給ライン1の下流側で分岐する複数の分岐流路たる各検査用ライン3a、3b、3c上に設けられた前記各バルブVa、Vb、Vc、前記各層流素子Ra、Rb、Rc、前記上流側圧力センサP1のうちの少なくとも1つ、前記下流側圧力センサP2のうちの少なくとも1つ、前記情報処理装置5とを備えたものである。なお、本実施形態では図2に示す上流側圧力センサP1が請求項における流体センサに相当する。
【0039】
前記情報処理装置5は、CPU、メモリ、入出力手段、A/D、D/Aコンバータ等を備えたいわゆるコンピュータであって、前記メモリに格納されている流量センサの検査システム用プログラムが実行されることにより、図2に示すようにバルブ開閉制御部51、基準流量算出部52、流量センサ調整部53としての機能を少なくとも発揮するように構成してある。
【0040】
前記バルブ開閉制御部51は、各検査用ライン3a、3b、3cに設けられている各バルブVa、Vb、Vcの開閉を制御するものであり、前記ガス供給ライン1に対して流体抵抗として作用する層流素子Ra、Rb、Rcの数を制御するものである。ここで、各層流素子Ra、Rb、Rcの流体抵抗としての特性は少なくとも1つは異ならせてあり、様々な測定レンジを有した検査対象となる流量センサから出力される測定流量値自体の検定や校正にも対応できるようにしてある。
【0041】
より具体的には、時間遅れの検査時に前記ガス供給ラインに流す流体の流量の目標値である設定流量値SETと、流路を流れるガスの種類に応じて前記バルブ開閉制御部51は、前記各バルブVa、Vb、Vcの開閉状態の組み合わせを変更するように構成してある。言い換えると、前記バルブ開閉制御部51は、前記各バルブVa、Vb、Vcが開閉状態の組み合わせを制御することにより、前記各層流素子Ra、Rb、Rcのうち前記ガス供給ラインに流体抵抗として作用する層流素子Ra、Rb、Rcの組み合わせを変更し、前記ガス供給ラインに対して作用する流体抵抗の大きさを変更している。本実施形態では、前記バルブ開閉制御部51は、設定流量値SETとガス種に対応する各バルブVa、Vb、Vcの開閉状態の組み合わせについて予め設定したテーブルを有しており、このテーブルを参照してどのバルブVa、Vb、Vcを開放するか、あるいは、閉止するかを決定している。
【0042】
設定流量値SETに注目した場合、前記バルブ開閉制御部51は、時間遅れの検査ための設定流量値SETが小さいほど、前記ガス供給ライン1に作用する流体抵抗を小さくし、低圧でガス供給ライン内の流体の状態が安定するように各バルブVa、Vb、Vcの開閉状態を制御するようにしてある。ここで、流体の状態が安定するとは、例えば前記流量制御バルブ24の開度変化と流体の実流量が所定の相関関係を有しており、所望の波形で実流量を変化させることができることをいう。この際、実流量が設定流量値SETで正確に追従している必要はなく、あくまでもバルブ開度と実流量の時間変化をグラフにした場合の形状が同じ、もしくは、時間軸方向への平行移動と、出力軸方向への拡大縮小でグラフが一致するようなものであればよい。
【0043】
前記基準流量算出部52は、上流側圧力センサP1と下流側圧力センサP2から出力される圧力値に基づいて圧力式の流量算出式により、前記ガス供給ラインに流れている流体の流量を算出するものである。この流量算出式は圧力に基づいたものであることから、ほとんど時間遅れが発生しておらず、実流量に対して位相差は発生していないと見なせる。
【0044】
前記流量センサ調整部53は、前記基準流量算出部52で算出される基準流量値と、前記検査対象となる流量センサFSから出力される測定流量値とを比較し、前記検査対象となる流量センサFSの時間遅れを検出し、その時間遅れがゼロとなるように調整を行うものである。より具体的には、前記流量センサ調整部53は図3のグラフに示すように、前記検査対象の流量センサFSから出力される測定流量値の時系列データと、前記流体センサで測定される測定値の時系列データとの間の位相差がゼロとなるように前記微分係数を変更するように構成してある。
【0045】
このように構成された流量センサの検査システム100による前記検査対象の流量センサFSにおける微分係数の調整時の動作について図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
まず、前記検査対象となる流量センサFSの測定レンジに応じた設定流量値SETが設定される。この設定流量値SETはユーザが設定してもよいし、例えば流量センサの形式等を取得して前記情報処理装置5が自動的に設定するようにしてもよい(ステップST1)。
【0047】
次に前記バルブ開閉制御部51が、設定されている設定流量値SETの大きさ、及び、流路に流される流体の種類に応じて、前記各バルブVa、Vb、Vcの開閉状態の組み合わせを決定し、変更する。例えば、設定流量値SETが小流量域内に設定されている場合には、前記バルブ開閉制御部51は、全てのバルブVa、Vb、Vcを開放して各検査ラインを流体が流れるようにし、前記ガス供給ラインに対する流体抵抗の大きさを最も小さくする。また、前記バルブ開閉制御部51は、設定流量値SETが中流量域内に設定されている場合にはバルブVa、Vb、Vcのうちの2つを開放し、設定流量値SETが大流量域に設定されている場合にはバルブVa、Vb、Vcのうちの1つのみを開放して、流体抵抗が大きくなるようにしてある。この結果、設定流量値SETに応じて流体が安定状態となる圧力の大きさが調節される(ステップST2)。
【0048】
前記検査対象となる流量センサFSと各層流素子Ra、Rb、Rcとの間に流体が流入して、圧力がチャージされ、流体が安定状態なるまで待機し(ステップST3)、流体が安定状態となった後には、正弦波状の設定流量に追従するように前記流量制御バルブ24による流量制御が開始される(ステップST4)。
【0049】
前記流量センサ調整部53は、基準となる流体センサたる前記上流側圧力センサP1と、前記下流側圧力センサP2で測定される圧力に基づいて算出される基準流量値の時系列データが描く正弦波と、前記検査対象となる流量センサFSから出力される測定流量値の時系列データが描く正弦波とから時間遅れを示す位相差を取得する(ステップST5)。
【0050】
次に前記流量センサ調整部53は、取得された位相差がゼロとなるように前記流量出力部22に設定されている微分係数を調節し、位相を進ませて基準流量値と測定流量値を一致させる(ステップST6)。
【0051】
そして、各ガス供給ライン1a、1b、1c、1d、1eに設けられている全ての検査対象となる流量センサFSの検査が終了したかどうかの判定が行われ(ステップST7)、終わっていない場合には別の検査対象となる流量センサFSと検査ライン1とが接続されて(ステップST8)、ステップST1〜ステップST7が繰り返される。
【0052】
このように本実施形態の流量センサの検査システム100によれば、複数の並列に設けられた分岐流路上にそれぞれバルブVa、Vb、Vcと、層流素子Ra、Rb、Rcが設けられた流体抵抗調整機構FRを構成しているので、各バルブVa、Vb、Vcの開閉の組み合わせを変更することで、流体が安定状態となる圧力を変更することができる。
【0053】
また、検査対象となる流量センサFSの測定レンジが小流量域のものであり、設定流量値SETが小さい場合には、例えば前記各バルブVa、Vb、Vcを開放して低圧で流体が安定するようにしてある。このため、検査対象となる流量センサFSと前記各層流素子Ra、Rb、Rcとの間に流入する流体の流量が小さくても検査が開始できる圧力まで短時間でチャージすることができ、検査の待ち時間を大幅に短縮することができる。
【0054】
一方、検査対象となる流量センサFSの測定レンジが大流量域のものの場合には、各バルブVa、Vb、Vcの開放数を減らし、流体抵抗の大きくして、流体が安定する圧力を高くしている。このようにすることで、大流量域においても検査対象となる流量センサFSから出力される測定流量値にノイズ等が発生しにくくし、時間遅れの検査を精度よく行うことができる。
【0055】
その他の実施形態について説明する。
【0056】
前記実施形態では、分岐流路が3つある場合を示したが分岐流路は2つ以上あればよい。また、流量制御装置が備えている構成を利用して前記検査システムを構成したが、例えば、複数の並列な分岐流路と、各分岐流路にバルブ及び流体抵抗をそれぞれ備えた流体抵抗調整装置を用いても構わない。また、バルブについては開閉のみが制御できるものであってもよいし、その開度を自由に調節できるものであってもよい。層流素子についても流体抵抗として作用するものであれば、他のものを用いてもよい。
【0057】
前記実施形態では、前記検査対象となる流量センサの時間遅れを調整する事まで行っていたが、検査としては時間遅れがあるかどうかだけを検定するものであってもよい。すなわち、本明細書では時間遅れの検査とは、時間遅れの検定、又は、時間遅れの調整の少なくとも一方を行うことを言う。また、全ての検査を自動化する必要はなく、例えば時間遅れの検査時に設定すべき各バルブの開閉状態の組み合わせのみの決定及び実行のみ前記情報処理装置で自動的に行われるようにし、時間遅れの有無の判定や調整作業についてはユーザが自分で行うようにしてもよい。
【0058】
前記各層流素子の特性については全て揃っていてもよいし、異なっていてもよい。各層流素子の特性が異なっていれば、前記各バルブの開閉状態の順列によっても前記上流側流路であるガス供給路に対する流体抵抗の大きさを変更することができ、時間遅れの検査における圧力をより細やかに設定することができる。
【0059】
前記実施形態では、前記検査対象となる流量センサの時間遅れを調整するために流量値同士を比較していたが、流体センサとして圧力センサを用い、その圧力値の時系列データと、前記検査対象となる流量センサから出力される測定流量値の時系列データとを比較して時間遅れに関する調整を行ってもよい。このように単位の異なるもの同士を比較してもよいのは、時間遅れについては、各時系列データの示す波形が分かればよく、位相差さえ正確には取得できれば時間遅れを調整する事が可能であるからである。同様の理由から、前記基準となる測定流量値や圧力値は、流体の実流量の実圧力と一致している必要はない。したがって、前記バルブ開閉制御部が、前記上流側流路における圧力が、前記流体センサが流体の実圧力又は実流量と略同じ測定値を出力可能な推奨使用圧力よりも低い圧力となるように前記各バルブの開閉状態の組み合わせを変更するように構成してもよい。このようなものであれば、圧力がチャージされるまでの時間をさらに短縮し、時間遅れの検査にかかる時間をより短縮できる。
【0060】
加えて、時間遅れを得るために正弦波状の設定流量値SETを使用したが、その他の波形であっても構わない。例えば一次応答の時系列データを利用して時間遅れの調整を行ってもよいし、設定流量値SETが階段状に変化するものであっても構わない。要するに流量変化があるようなものであり、時間遅れを取得できるようなものであれば構わない。また、前記実施形態ではある特定の周波数の正弦波における時間遅れを調整しているが、例えば、周波数掃引を行い、所定の帯域における位相遅れが略無くなるように微分係数等の調整作業を行っても構わない。また、前記バルブ開閉制御部が、設定流量値を用いずに前記検査対象の流量センサの測定レンジに応じて前記各バルブの開放、又は、閉止数を制御するものであってもよい。例えば、測定レンジが大きい場合には、各バルブの開放数を減らし、閉止数を増やすようにして高圧で流体が安定するようにし、測定レンジが小さい場合には各バルブの開放数を多くして低圧で流体が安定するようにすればよい。
【0061】
前記実施形態では、時間遅れの検査対象となる流量センサは上流側流路に設けられており、基準となる流体センサは分岐流路上に設けられていたが、検査対象となる流量センサが分岐流路に設けられており、基準となる流体センサが上流側流路に設けられていてもよい。要するに、検査対象となる流量センサは前記流路構造に設けられていればよく、同様に前記流体センサも前記流路構造に設けてあればよい。
【0062】
より具体的には、図5に示すように前記実施形態とは検査対象と基準の配置が入れ替わっているものであってもよい。すなわち、基準となる流量制御装置4が上流側流路たるガス供給ライン1上に設けてあり、検査対象となる流量制御装置2が分岐流路たる検査用ライン3に設けてあるものとして、前記検査システム100を構成してもよい。以下では、このような検査システム100の別の実施形態の詳細について説明する。なお、前記実施形態に対応する部材には同じ符号を付すものとする。
【0063】
図5における検査システム100のみを抽出して記載した図6に示すように、この別の実施形態の検査システム100では、ガス供給ライン1上に基準となる流量制御装置4である圧力式のマスフローコントローラが配置してあり、複数の分岐流路となっている検査用ライン3上にはそれぞれ検査対象となる流量制御装置2a、2b、2c、2d、2eである熱式のマスフローコントローラが設けてある。なお、図6では前記検査対象となる流量制御装置2aの熱式の流量センサを検査対象の流量センサFSとし、時間遅れについて検査する場合を示している。
【0064】
この別の実施形態におけるバルブ開閉制御部51は、時間遅れの検査を開始する場合に例えば流量センサFSの測定レンジに応じて、検査対象となる流量制御装置2a、2b、2c、2d、2eのバルブVa、Vb、Vc、Vd、Veの開閉状態の組み合わせを制御するように構成してある。特に測定レンジが小さい場合には前記バルブ開閉制御部51は、バルブVa、Vb、Vc、Vd、Veの少なくとも2以上を開放する。すなわち、この実施形態では、検査対象となる流量制御装置2a、2b、2c、2d、2eの熱式の流量センサにおける巻き線の設けられた細管や分流素子Ra、Rb、Rc、Rd、Reを流体抵抗として用いており、バルブVa、Vb、Vc、Vd、Veのいずれを開放するかによって、前記流路構造FMにおいて作用するものを変えられるようにしてある。
【0065】
また、前記バルブ開閉制御部は設定流量値やガス種、測定レンジ等を取得せずに、検査対象の流量センサについて時間遅れの検査を行う場合には、前記各バルブを2つ以上開放するように構成したものであってもよい。加えて、前記バルブ開閉制御部が、ガス種のみに応じて前記各バルブの開放数を制御するようにしても構わない。
【0066】
前記各実施形態では、検査対象の流量センサが熱式の流量センサであり、基準となる流体センサが圧力式の流量センサであったが、検査対象の流量センサが圧力式の流量センサであり、基準となる流体センサが熱式の流量センサであっても構わない。また、検査対象となる流量センサ及び基準となる流体センサの測定原理は、圧力式、熱式に限られるものではなく、超音波式等の様々な測定原理を用いたセンサであっても構わない。
【0067】
また、前記分岐流路上に設けられたバルブと流体抵抗の位置関係は、各実施形態に示したものに限られない。すなわち、流体抵抗に対してバルブは上流側、又は、下流側のいずれに設けられていても構わない。流体抵抗は、層流素子や分流素子を設けるといった手段により実現されるものに限られず、例えば、分岐流路自体の長さや材質、表面形状等により実現される抵抗を利用してもよい。すなわち、流体抵抗として分岐流路上に部材を配置するのではなく、何も配置せずに分岐流路自体の形状、特性等により所望の流体抵抗を実現しても構わない。
【0068】
本明細書における分岐流路とは、前記バルブ及び前記流体抵抗が少なくとも一対設けられているものであればよく、分岐流路と並列して前記バルブ及び前記流体抵抗が設けられていない通過流路等が設けられていても構わない。すなわち、上流側流路の下流において分岐している流路の全てにバルブと流体抵抗が設けられている必要はない。
【0069】
これらのようなものであっても、前記流路構造に上流から流入する流体の流量が少ない場合でも低圧で流体の状態を安定させることができ、短時間で時間遅れの検査を開始できるという効果を奏し得る。
【0070】
加えて、前記流路構造内における流量変化を生じさせるのは、前記検査対象の流量センサの近傍にあるバルブに限られるものではない。例えば、上流側流路ではなく、分岐流路に設けられたバルブによって流量制御を行い、検査対象の流量センサについて時間遅れの検査を行うように構成しても構わない。
【0071】
なお、図1に示した実施形態について別の表現をすると、本発明は、検査対象の流量センサから出力される測定流量値の時間遅れを検査するために用いられる検査システムであって、前記検査対象の流量センサが設けられた上流側流路の下流において分岐した複数の分岐流路に対してそれぞれ設けられた流体抵抗と、前記各分岐流路に対してそれぞれ設けられたバルブと、前記各流体抵抗よりも上流側に少なくとも一部が設けられ、流体の圧力又は流量を測定する流体センサと、前記検査対象の流量センサを前記流体センサの出力に基づいて検査する際に前記各バルブを複数開放した状態にするように構成されたバルブ開閉制御部と、を備えたものである。
【0072】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0073】
P・・・半導体製造装置
1・・・ガス供給ライン(上流側流路)
2・・・検査対象となる流量制御装置
FS・・・検査対象となる流量センサ
21・・・センシング機構
22・・・流量出力部
23・・・流量制御部
24・・・流量制御バルブ
3・・・検査用ライン(分岐流路)
4・・・基準となる流量制御装置
P1・・・上流側圧力センサ
V・・・バルブ
R・・・層流素子(流体抵抗)
P2・・・下流側圧力センサ
FR・・・流体抵抗調整機構

図1
図2
図3
図4
図5
図6