【課題を解決するための手段】
【0010】
従って本発明は、ポリマーPであって、このポリマーPの末端のうちの1つか又はこのポリマーPの主鎖に結合している式I:
【化1】
[式中、
#は、末端との、及び/又はポリマー主鎖との結合箇所を示しており;
kは、0、1、2、3、又は4であり、特に0、1、又は2であり、特に0、又は1であり;
mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、又は9であり、特に0、1、又は2であり、特に0、又は1であり;
Aは、化学結合であるか、又は、C
1〜C
6アルキレン、−O−(C
2〜C
6アルキレン)、−C(=O)−O−(C
2〜C
6アルキレン)、−NR
3−(C
2〜C
6アルキレン)、及びC(=O)−NR
3−(C
2〜C
6アルキレン)からなる群から選択された二価の部分であり、ここで、C
2〜C
6アルキレン部分はQに結合しており;
Qは、−O−、−NH−、及び−S−からなる群から選択された二価の部分であり;
R
1は、無関係に、−OH、−COOH、−COOCH
3、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、−NO
2、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、ハロゲン、アリールオキシ、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択されており、ここで、アリール、ヘタリール、及びアリールオキシは、非置換であるか、又は、−OH、−COOH、−COOCH
3、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、−NO
2、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択された1、2、3、又は4個の基で置換されており;
R
2は、水素、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
20アルキル、C
3〜C
10シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C
1〜C
4アルキル、及びヘテロアリール−C
1〜C
4アルキルからなる群から選択されており、ここで、直前に記載した4つの基におけるアリール及びヘタリールは、非置換であるか、又は、−OH、−COOH、−COOCH
3、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、−NO
2、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択された1、2、3、又は4個の基で置換されており;
R
3は、水素、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
20アルキル、C
3〜C
10シクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択されており、ここで、アリール及びヘタリールは、非置換であるか、又は、−OH、−COOH、−COOCH
3、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、−NO
2、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択された1、2、3、又は4個の基で置換されており;
R
4は、OH、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、アリール、及びヘテロアリールからなる群から選択されており、ここで、アリール及びヘタリールは、非置換であるか、又は、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、及びハロゲンからなる群から選択された1、2、3、又は4個の基で置換されている]
の官能性部分を少なくとも1つ有しているポリマーPの、分散剤としての、特に例えば有機若しくは無機顔料やフィラーといった固体微粒子を含有する液体組成物における分散剤としての使用に関する。
【0011】
本発明のポリマーPは、固体微粒状材料の液体分散液においてこの微粒状固体材料のための分散剤として作用するものであり、即ちこのポリマーPは、固体微粒状材料の液体組成物において固体微粒状材料の固体粒子を安定化させる。安定化とは、分散剤が固体粒子を分離させ、該粒子の凝結や凝塊形成、また液体組成物からの沈殿を防止することを意味する。こうした利点は、ポリマーPによって、例えば固体粒状材料の濃度が液体組成物の全質量に対して30質量%以上であるような高い固体含有率であっても達成され得る。さらにポリマーPは、通常は高い固体含有率では達成が困難であるそのレオロジー向上をもなし得る。本発明のポリマーPは、このポリマーPと固体粒状材料とを含有する液体組成物を下地にコーティングした際に得られるコーティングの光沢度の改善をももたらす。
【0012】
従って本発明のポリマーは、例えば有機若しくは無機顔料やフィラーといった固体微粒子を含有する液体コーティング組成物、特にポリマーPに加えて慣用のポリマーバインダーを含有するコーティング組成物における分散剤として特に有用である。
【0013】
理論にとらわれることなく、これらの有益な効果は以下の機構に基づくものであると考えられる:アントラニレート/アントラニルアミド部分が固体粒子の表面に対して親和性を示し、それにより分散剤と固体粒子との強力な物理的結合がもたらされる。一方で、ポリマー部分は樹脂相との相互作用により立体環境を構築し、それにより顔料分散液を安定化させる。
【0014】
従って本発明はさらに、分散液の形態の液体組成物であって、顔料及びフィラーからなる群から選択された微粒状固体材料と液体希釈剤とを含有しており、ここで、この微粒状固体材料はこの液体希釈剤中に分散しているものとし、さらに、本願明細書及び特許請求の範囲において定義した通りのポリマーP又はP’’を含有している液体組成物に関する。
【0015】
本発明はさらに、液体コーティング組成物であって、顔料及びフィラーからなる群から選択された微粒状固体材料と液体希釈剤とを含有しており、ここで、この微粒状固体材料はこの液体希釈剤中に分散しているものとし、さらに、本願明細書及び特許請求の範囲において定義した通りのポリマーP又はP’’、並びに任意にポリマーバインダーを含有している液体コーティング組成物に関する。
【0016】
ポリマー主鎖が炭素鎖であり、即ち主鎖を構成する原子が(末端を除いて)ほとんど炭素原子のみであって(以下でこれをC−C主鎖とも称する)、かつ、末端のうちの1つ及び/又はC−C主鎖に結合している式Iの官能基を少なくとも1つ有しており、特に式Iの官能性部分を1〜200個、又は2〜200個、又は3〜200個、又は5〜200個、特に1〜100個、又は2〜100個、又は3〜100個、又は5〜100個有しているポリマーPは新規であり、よってこれも本発明の一部を構成するものである。以下でこのポリマーをポリマーP’’とも称する。
【0017】
以下で、式Iを定義する変項について、アルキル、シクロアルキル、アルキレン、又はハロゲンといった総称を用いる。これらの変項は総称の代表物である個々の基の列挙体と見なされねばならない。
【0018】
本願明細書中で「C
n〜C
m」とは、総称の個々の員が有し得る炭素原子の考え得る数を示している。
【0019】
本願明細書中で「ハロゲン」とは、一般にフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素から、特にフッ素、又は塩素から選択されたハロゲン基と解釈されねばならない。
【0020】
本願明細書中で用いられている「アルキル」という用語、また−NH(C
1〜C
6アルキル)や−N(C
1〜C
6アルキル)
2のアルキル部分は、それぞれ、直鎖状であっても分岐状であってもよく、一般に1〜6個の炭素原子を有し(C
1〜C
6アルキル)、好ましくは1〜4個の炭素原子を有する(C
1〜C
4アルキル)飽和炭化水素基を表す。C
1〜C
4アルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル(sec−ブチル)、イソブチル、及びtert−ブチルである。C
1〜C
6アルキルの例は、C
1〜C
4アルキルについて挙げたもの以外に、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、及び1−エチル−2−メチルプロピルである。C
1〜C
20アルキルの例は、C
1〜C
6アルキルについて挙げたもの以外に、n−ヘプチル、1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、n−オクチル、1−メチルオクチル、2−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、1,2−ジメチルヘキシル、1−プロピルペンチル、2−プロピルペンチル、ノニル、デシル、2−プロピルヘプチル、3−プロピルヘプチル、直鎖ウンデシルとその分岐鎖異性体、ラウリルとその分岐鎖異性体、直鎖トリデシルとその分岐鎖異性体、ミリスチルとその分岐鎖異性体、パルミチルとその分岐鎖異性体、ステアリルとその分岐鎖異性体、並びにエイコセニルとその分岐鎖異性体である。
【0021】
本願明細書中、並びに−O−(C
2〜C
6アルキレン)、−C(=O)−O−(C
2〜C
6アルキレン)、−NR
3−(C
2〜C
6アルキレン)、及びC(=O)−NR
3−(C
2〜C
6アルキレン)において用いられている「アルキレン」(又はアルカンジイル)という用語は、それぞれ上に定義した通りのアルキル基であって、炭素主鎖のいずれかの位置の水素原子1つがもう1つの結合部位で置換されており、それにより二価の部分が形成されているものを表す。好ましいアルキレンは、2〜6個の炭素原子、特に2〜4個の炭素原子を有している。好ましくは、二価部分C
2〜C
6アルキレン又はC
2〜C
4アルキレンの2つの結合部位はそれぞれ、同一の炭素原子の位置ではない。アルキレンの例には、メチレン、1,2−エタンジイル(=CH
2CH
2)、1,2−プロパンジイル(=CH(CH
3)CH
2)、1,3−プロパンジイル(=CH
2CH
2CH
2)、1−メチル−1,3−プロパンジイル(=CH(CH
3)CH
2CH
2)、2−メチル−1,3−プロパンジイル(=CH
2CH(CH
3)CH
2)、1−メチル−1,2−プロパンジイル(=C(CH
3)
2CH
2)、1,4−ブタンジイル(=CH
2CH
2CH
2CH
2)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジイル(=CH
2C(CH
3)
2CH
2)等が含まれる。
【0022】
本願明細書中で、(並びに、例えばシクロアルコキシやシクロアルキルアルキルといった、シクロアルキル基を含む他の基のシクロアルキル部分において)用いられている「シクロアルキル」という用語は、それぞれ、通常3〜10個の炭素原子を有する(「C
3〜C
10シクロアルキル」)、好ましくは3〜8個の炭素原子を有する(「C
3〜C
8シクロアルキル」)、また特に3〜6個の炭素原子を有する(「C
3〜C
6シクロアルキル」)、単環式若しくは二環式の脂環式基を表す。3〜6個の炭素原子を有する単環式基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれる。3〜8個の炭素原子を有する単環式基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが含まれる。7又は8個の炭素原子を有する二環式基の例には、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、及びビシクロ[3.2.1]オクチルが含まれる。
【0023】
本願明細書中で用いられている「アルコキシ」という用語は、それぞれ、酸素原子を介して分子の残りの部分に結合している、通常1〜4個の炭素原子を有する(「C
1〜C
4アルコキシ」)直鎖又は分岐鎖アルキル基を表す。C
1〜C
2アルコキシは、メトキシ又はエトキシである。C
1〜C
4アルコキシはさらに、例えばn−プロピル、1−メチルエトキシ(イソプロポキシ)、ブトキシ、1−メチルプロポキシ(sec−ブトキシ)、2−メチルプロポキシ(イソブトキシ)、又は1,1−ジメチルエトキシ(tert−ブトキシ)である。
【0024】
本願明細書中で用いられている「アリール」という用語(並びに、アリールC
1〜C
4アルキル、及びアリールオキシにおけるアリール部分)は、それぞれ、フェニル環を少なくとも1つ含み、このフェニル環に1つ若しくは2つのさらなる飽和若しくは不飽和の5員若しくは6員の炭化水素環が融合していてよい、単環式、二環式、若しくは三環式の炭化水素基を表す。アリールの例には、フェニル、ナフチル、インダニル、インデニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−5−ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ナフチル、アントラセニル、9,10−ジヒドロアントラセン−1−イル、及び9,10−ジヒドロアントラセン−2−イルが含まれる。
【0025】
本願明細書中で用いられている「ヘテロアリール」という用語(並びに、ヘテロアリールC
1〜C
4アルキルにおけるヘテロアリール部分)は、それぞれ、環員としてN、O、及びSから選択された1、2、3個のヘテロ原子を有する5員若しくは6員の芳香族複素環式基を少なくとも1つを含み、この基に、1つ若しくは2つのさらなる飽和若しくは不飽和の5員若しくは6員の炭化水素環か、又は、環員としてN、O、及びSから選択された1、2、3個のヘテロ原子を有する複素環式環が融合していてよい、単環式、二環式、若しくは三環式の複素環式基を表す。5員若しくは6員の複素環式基(単環式ヘテロアリール)の例には、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びトリアジニルが含まれる。1つ若しくは2つのさらなる飽和若しくは不飽和の5員若しくは6員の炭化水素環か、又は、環員としてN、O、及びSから選択された1、2、3個のヘテロ原子を有する複素環式環が融合している5員若しくは6員の複素環式基(二環式及び三環式ヘテロアリール)の例には、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾイソチアゾル等が含まれる。
【0026】
「アリールC
1〜C
4アルキル」という用語は、本願明細書中に定義した通りのC
1〜C
4アルキレン部分を介して残りの部分に結合している、本願明細書中に定義した通りのアリール基を表す。
【0027】
「アリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して残りの部分に結合している、本願明細書中に定義した通りのアリール基を表す。
【0028】
「ヘテロアリールC
1〜C
4アルキル」という用語は、本願明細書中に定義した通りのC
1〜C
4アルキレン部分を介して残りの部分に結合している、本願明細書中に定義した通りのヘテロアリール基を表す。
【0029】
式(I)の部分の変項(置換基)の好ましい実施態様に関して付す以下の注釈は、単独でも、好ましくは互いに組み合わせても有効である。k=2、3、又は4である場合に置換基R
1が同一であっても異なっていてもよいことは、当業者にとって自明である。m>0の場合にそれぞれの繰返し単位における記号k、R
1、及びR
2が同一であっても異なっていてもよいことも当業者にとって自明であるが、一般には同一である。
【0030】
さらに、ポリマーP、P’、及びP’’の好ましい実施態様に関して付す以下の注釈は、単独でも、好ましくはポリマーP、P’、及びP’’に関して互いに組み合わせても有効であり、また、使用、組成物、及び本発明による方法に関しても有効である。
【0031】
特に、変項k、m、A、Q、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、単独で、又は組み合わせて、好ましくは以下の意味を有する:
kは、0、1、又は2であり、特に0、又は1であり;
mは、0、1、又は2であり、特に0、又は1であり;
Aは、化学結合であるか、又は、−C(=O)−O−(C
2〜C
4アルキレン)、及びC(=O)−NH−(C
2〜C
4アルキレン)からなる群から選択された二価の部分であり、ここで、アルキレン部分はQに結合しているものとし、特に、化学結合であるか、又は、二価の部分−C(=O)−O−(C
2〜C
4アルキレン)であり、ここで、アルキレン部分はQに結合しているものとし;
Qは、−O−、及び−NR
3−、特にO、又はNHからなる群から選択された二価の部分であり;
R
1は、存在する場合には、無関係に、−OH、−COOH、−COOCH
3、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、−NO
2、−S(=O)
2R
4、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、ハロゲン、フェニル、及びピリジルからなる群から選択されており、ここで、直前に記載した2つの基は、非置換であるか、又は、ハロゲン、C
1〜C
4アルキル、及びC
1〜C
4アルコキシから選択された基を有しており;
R
2は、水素、C
1〜C
4アルキル、及びフェニルからなる群から選択されており、特にR
2は水素であり;
R
3は、存在する場合には、水素、及びC
1〜C
4アルキルからなる群から選択されており;
R
4は、存在する場合には、−NH
2、−NH(C
1〜C
6アルキル)、−N(C
1〜C
6アルキル)
2、及びC
1〜C
4アルキルからなる群から選択されている。
【0032】
別段の記載がない限り、本発明のポリマーPは、式Iの官能性部分を少なくとも1つ、特に式Iの官能性部分を1〜200個、又は2〜200個、又は3〜200個、特に1〜100個、又は2〜100個、又は3〜100個有する。式Iのこれらの官能性部分は、ポリマー主鎖の1つ以上の末端に結合していてもよいし、ポリマー主鎖のいずれか他の位置に結合していてもよい。
【0033】
好ましくは、ポリマーPは、ポリエステル、特に脂肪族ポリエステル、ポリエーテル、特にポリC
2〜C
4アルキレンオキシド、ポリカーボネート、特に脂肪族ポリカーボネート、ポリエーテルエステル、特に、少なくとも1つの脂肪族ポリエステルブロックと、例えばポリC
2〜C
6アルキレンオキシド部分のような少なくとも1つの脂肪族ポリエーテルブロックとを有する脂肪族ポリエーテルエステル、並びに、C−C主鎖を有するポリマー、特に以下に定義する通りの重合モノエチレン系不飽和モノマーM1の繰返し単位M1を含むポリマー、特に、繰返し単位M1が、重合C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、重合C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族炭化水素化合物から選択されているポリマー、特に繰返し単位M1の量がポリマーPの全質量に対して10〜90質量%、特にポリマーPの全質量に対して30〜80質量%を占めているポリマーからなる群から選択されている。
【0034】
本願明細書中で用いられている「C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート」という用語は、アクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステルと、メタクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステルの双方を指す。
【0035】
本願明細書中で用いられている「C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート」という用語は、モノC
1〜C
10アルキル末端ポリC
2〜C
4アルキレングリコール、特にモノC
1〜C
10アルキル末端ポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル、並びに、メタクリル酸との相応するエステルの双方を指す。
【0036】
上記のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、及びC−C主鎖を有するポリマーは、これらが式Iの官能性部分を少なくとも1つ、特に式Iの官能性部分を1〜200個、又は2〜200個、又は3〜200個、特に1〜100個、又は2〜100個、又は3〜100個有するように変性されており、その際、式Iの官能性部分は、ポリマー主鎖の1つ以上の末端に結合していてもよいし、ポリマー主鎖のいずれか他の位置に結合していてもよい。
【0037】
「脂肪族ポリエーテル」という用語は、ポリマー主鎖における繰返し単位中の炭素原子の大部分、特にポリマー主鎖における繰返し単位中の炭素原子の少なくとも90%が、酸素原子を介して結合しているアルキレン単位、特にC
2〜C
4アルキレン単位として存在しているポリエーテルと解釈され、その際、このアルキレン単位はヒドロキシル基を有していてよい。特に、脂肪族ポリエーテルのポリマー主鎖は、例えばフェニルのような芳香環を含んでいない。
【0038】
「脂肪族ポリエステル」という用語は、ポリマー主鎖における繰返し単位中の炭素原子の大部分、特にポリマー主鎖における繰返し単位中の炭素原子の少なくとも90%が、アルキレン単位及びカルボニル基、特にC
2〜C
6アルキレン単位及びカルボニル基として存在しているポリエステルと解釈され、その際、このアルキレン単位はヒドロキシル基を有していてよい。特に、脂肪族ポリエステルのポリマー主鎖は、例えばフェニルのような芳香環を含んでいない。
【0039】
「脂肪族ポリエーテルエステル」という用語は、少なくとも1つの、例えば1、2、3、又は4つのポリエーテルブロックと、少なくとも1つの、例えば1、2、3、又は4つのポリエステルブロックとの双方を有するポリエーテル−コ−ポリエステルのブロックと解釈される。ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの質量比は、通常1:100〜100:1の範囲内、特に1:10〜10:1の範囲内である。ポリエステルブロック中の炭素原子の大部分、特にポリエステルブロック中の繰返し単位の炭素原子の少なくとも90%は、アルキレン単位及びカルボニル基、特にC
2〜C
6アルキレン単位及びカルボニル基として存在しており、一方でポリエーテルブロック中の炭素原子は、アルキレン単位、特にC
2〜C
6アルキレン単位又はC
2〜C
3アルキレン単位として存在している。脂肪族ポリエステルブロック中のアルキレン単位も、脂肪族ポリエーテルエステルのポリエステルブロック中のアルキレン単位も、どちらもヒドロキシル基を有していてよい。特に脂肪族ポリエーテルエステルのポリマー主鎖は、例えばフェニルのような芳香環を含んでいない。脂肪族ポリエーテルエステルの特定の実施態様は、厳密に1つのポリエーテルブロックと、厳密に1つのポリエステルブロックとを有する。
【0040】
「脂肪族ポリカーボネート」という用語は、ポリマー主鎖における繰返し単位中の炭素原子の大部分、特にポリマー主鎖における繰返し単位の炭素原子の少なくとも90%が、アルキレン単位及びカルボニル基、特にC
2〜C
6アルキレン単位及びカルボニル基として存在しているポリカーボネートと解釈され、その際、このアルキレン単位はヒドロキシル基を有していてよい。特に脂肪族ポリエステルのポリマー主鎖は、例えばフェニルのような芳香環を含んでいない。
【0041】
分散剤としての、特に顔料及びフィラーのための分散剤としての作用の性能に関して、250〜100,000ダルトン、特に500〜80,000ダルトン、特に1000〜50,000ダルトンの範囲内の数平均分子量M
Nを有しているポリマーPが好ましい。ポリマーPの重量平均分子量M
Wは、一般に300〜500,000ダルトン、特に700〜300,000ダルトン、特に1200〜150,000ダルトンの範囲内である。多分散度M
W/M
Nは、一般に1.05〜5、好ましくは1.1〜4、特に1.2〜3の範囲内である。
【0042】
分散剤としての、特に顔料及びフィラーのための分散剤としての作用の性能に関して、3〜500mgKOH/gポリマーP、特に10〜300mgKOH/gポリマーPの範囲内のアミン価を特徴としているポリマーPが好ましい。
【0043】
分散剤としての、特に顔料及びフィラーのための分散剤としての作用の性能に関して、式Iの官能性部分に加えて1つ以上のポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基を有しているポリマーPであって、この基はポリマー主鎖中に位置していてもよいしポリマー主鎖にグラフトされていてもよいものとするポリマーPが好ましい。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基において、C
2〜C
4アルキレンオキシド繰返し単位は、好ましくはエチレンオキシド繰返し単位を少なくとも50質量%含む。特に、このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基はポリエチレンオキシド基である。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基の数平均分子量は、一般に150〜5,000ダルトンの範囲内である。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基は、末端OH基を有していてもよいし、「エンドキャップ」されていてもよく、即ち、末端OH基の水素原子が、例えばC
1〜C
10アルキル、ベンジル、又はC
5〜C
10シクロアルキルといった炭化水素基で置換されていてもよい。
【0044】
本発明の特定の実施態様において、ポリマーPは脂肪族ポリエーテル、特にポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であり、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよい。ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)は式Iの部分を少なくとも1つ有しており、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特に式Iの部分を1、2、3、又は4個有している。ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)の末端若しくはポリマー主鎖に結合している式Iの部分において、変項Aは好ましくは単結合である。Qは、好ましくはO、又はNHである。脂肪族ポリエーテルは、直鎖状であっても分岐状であっても超分岐状であってもよい。
【0045】
本発明の他の特定の実施態様において、ポリマーPは脂肪族ポリエステル、特に直鎖状若しくは分岐状又は超分岐状の脂肪族ポリエステルであり、以下のものから選択される:
a)脂肪族ポリエステルであって、ポリエステル主鎖の繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
2〜C
10ジカルボン酸と、C
2〜C
10脂肪族ジオールと、任意に、3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールとから誘導されているもの;及び
b)脂肪族ポリエステルであって、ポリエステル主鎖の繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンか、又は、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンと、C
2〜C
10ジカルボン酸、C
2〜C
10脂肪族ジオール、及び3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールから選択された少なくとも1つの他の成分との組み合わせから誘導されているもの。
【0046】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーPは脂肪族ポリエーテルエステル、特に直鎖状若しくは分岐状又は超分岐状の脂肪族ポリエーテルエステルであり、以下のものから選択される:
a)脂肪族ポリエーテルエステルであって、ポリエステルブロックの繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
2〜C
10ジカルボン酸と、C
2〜C
10脂肪族ジオールと、任意に、3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールとから誘導されており、かつ、ポリエーテルブロックが、ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であるもの。ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする;及び
b)脂肪族ポリエーテルエステルであって、ポリエステルブロックの繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンか、又は、このラクトンと、C
2〜C
10ジカルボン酸、C
2〜C
10脂肪族ジオール、及び3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールから選択された1つ以上、例えば1、2、又は3つの他の成分との組み合わせから誘導されており、かつ、ポリエーテルブロックが、ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であるもの。ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。
【0047】
ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの質量比は、通常1:100〜100:1の範囲内、特に1:10〜10:1の範囲内である。
【0048】
ポリエステル及びポリエーテルエステルに関して、脂肪族C
2〜C
10ジカルボン酸の例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、及びジグリコール酸が含まれる。
【0049】
C
2〜C
10脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコールが含まれる。
【0050】
3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールの例には、グリセロール、トリメチルプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、イノシトール、ペンタヒドロキシシクロペンタン、ヘキサヒドロキシシクロヘキサン等が含まれる。
【0051】
C
4〜C
10ラクトンの例には、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンが含まれる。
【0052】
本発明の特に好ましい実施態様は、ポリマー主鎖が脂肪族ポリエステルであり、かつ、ポリエステル主鎖の繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
4〜C
10ラクトン、特にγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、又はこれらの混合物から誘導されているポリマーPである。
【0053】
この脂肪族ポリエステルは、式Iの部分を少なくとも1つ有しており、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特に式Iの部分を1〜50個有している。この脂肪族ポリエステルのポリマー主鎖に結合している式Iの部分において、変項Aは好ましくは単結合である。Qは、好ましくはO、又はNHである。
【0054】
本発明の特に好ましい実施態様は、脂肪族ポリエーテルエステルであるポリマーPであって、ここで、少なくとも1つのポリエステルブロックにおいて、このポリエステルブロックの繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
4〜C
10ラクトン、特にγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、又はこれらの混合物から誘導されており、かつ、少なくとも1つの脂肪族ポリエーテルブロックが上で定義された通りであり、かつ、このポリエーテルブロックが、好ましくはポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であるポリマーPに関し、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。この特定の実施態様のポリエーテルエステルのポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの質量比は、通常1:100〜100:1の範囲内、特に1:10〜10:1の範囲内である。
【0055】
ポリエーテルエステルは式Iの部分を少なくとも1つ有しており、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個、又は1〜50個有しており、特にポリエーテルエステルは式Iの部分を1、2、3、又は4個有している。ポリエーテルエステルの末端若しくは主鎖に結合している式Iの部分において、変項Aは好ましくは単結合である。Qは、好ましくはO、又はNHである。脂肪族ポリエーテルエステルは、直鎖状であっても分岐状であっても超分岐状であってもよい。
【0056】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーPは脂肪族ポリカーボネートであり、特に、ポリ(C
2〜C
4アルキレンカーボネート)、特にポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンカーボネート)であるポリマー主鎖を有する直鎖状若しくは分岐状若しくは超分岐状の脂肪族ポリカーボネートであり、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンカーボネート繰返し単位とプロピレンカーボネート繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。ポリ(C
2〜C
4アルキレンカーボネート)は、式Iの部分を少なくとも1つ有しており、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特に式Iの部分を1、2、3、又は4個有している。ポリ(C
2〜C
4アルキレンカーボネート)のポリマー主鎖に結合している式Iの部分において、変項Aは好ましくは単結合である。Qは、好ましくはO、又はNHである。脂肪族ポリカーボネートは、直鎖状であっても分岐状であっても超分岐状であってもよい。
【0057】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーPは、ポリマー主鎖が主に炭素原子からなるポリマー、即ちC−C主鎖を有するポリマーであり、その際、このポリマー主鎖の炭素原子のうち少なくとも1つ及び/又は末端原子のうち少なくとも1つは、本願明細書中に定義した通りの式Iの官能性部分を1つ以上有する。以下で、このポリマーをポリマーP’’とも称する。ポリマーP’’は新規であり、本発明の一部を構成するものである。
【0058】
ポリマーP’’において、式Iの官能性部分の少なくとも1つはしばしばポリマー鎖内のC−C主鎖の炭素原子に結合している。しかしながら、ポリマーP’’はC−C主鎖の末端炭素原子に結合している式Iの官能性部分の少なくとも1つも含み得る。
【0059】
本発明によれば、ポリマーP’’は、式Iの部分を少なくとも1つ、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特に式Iの部分を2〜200個、又は3〜100個、又は5〜50個有している。
【0060】
ポリマーP’’は、通常、重合エチレン系不飽和モノマーMから誘導された繰返し単位(以下、C−C繰返し単位)からなる。このC−C繰返し単位の少なくとも1つは式Iの官能性部分を有しており、この官能性部分は、ポリマー主鎖の一部を形成するC−C繰返し単位の炭素原子に、部分Aを介して結合している。
【0061】
原則的に、ポリマー主鎖を形成するモノマーMは、重合性C=C二重結合を有するいずれの重合性エチレン系不飽和モノマーから選択されてもよいが、但しこれは、ポリマー主鎖を形成するモノマーの少なくとも1つが、重合性C=C二重結合に結合している式Iの基を有しているか、又は、重合性C=C二重結合に結合している少なくとも1つの官能性部分Fを有していて、この官能性部分Fが後続の工程において重合類似反応により式Iへと転化されていることが前提である。好ましくは、ポリマー主鎖を形成するモノマーMは、厳密に1つの重合性C=C二重結合を有する重合性エチレン系不飽和モノマーのみを有するか、又は、この重合性エチレン系不飽和モノマーをポリマーP’’の全質量に対して少なくとも95%、特に少なくとも99%有している。
【0062】
従ってポリマーP’’は、重合性C=C二重結合に結合している式Iの基か、又は、重合性C=C二重結合に結合している少なくとも1つの官能性部分を有しているモノマーに由来する、式Ia
【化2】
[式中、
R、R’、及びR’’は、例えば水素、又はC
1〜C
4アルキルのような不活性基を表す]
の繰返し単位を少なくとも1つ含む。
【0063】
式Iaにおいて、変項k、m、A、Q、R
1、R
2、R
3は上に定義した通りである。記号*は、隣接するC−C繰返し単位の炭素原子との結合箇所を表し、R、R’、及びR’’は、例えば水素、又はC
1〜C
4アルキルのような不活性基を表し、特に好ましくは、R、及びR’は水素であり、R’’は水素、又はC
1〜C
4アルキル、特に水素、又はメチルである。
【0064】
特定の実施態様は、式I及びIaにおける部分Aが、好ましくは化学結合であるか、又は、C
1〜C
6アルキレン、−O−(C
2〜C
6アルキレン)、−C(=O)−O−(C
2〜C
6アルキレン)、及び−NR
3−(C
2〜C
6アルキレン)からなる群から選択された二価の部分であり、ここで、C
2〜C
6アルキレン部分がQに結合しているものとするポリマーP’’に関し、特に、式I及びIaにおける部分Aが化学結合であるか、又は二価の部分−C(=O)−O−(C
2〜C
6アルキレン)であり、ここで、C
2〜C
6アルキレン部分がQに結合しているものとするポリマーP’’に関する。
【0065】
本発明の特定の実施態様は、式Iの官能性部分に加えて、ポリマー主鎖にグラフトされている1つ以上のポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基を有しているポリマーP’’に関する。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基において、C
2〜C
4アルキレンオキシド繰返し単位は、好ましくはエチレンオキシド繰返し単位を少なくとも50質量%含む。特に、このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基はポリエチレンオキシド基である。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基の数平均分子量は、一般に150〜5,000ダルトンの範囲内である。このポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基は、末端OH基を有していてもよいし、「エンドキャップ」されていてもよく、即ち、末端OH基の水素原子が、例えばC
1〜C
10アルキル、ベンジル、又はC
5〜C
10シクロアルキルといった炭化水素基で置換されていてもよい。
【0066】
本発明の好ましい実施態様は、式Iの官能性部分を有していない重合性モノエチレン系モノマーから選択された繰返し単位を含むポリマーP’’に関する。
【0067】
式Iの官能性部分を有していない好適なモノマーは、以下のものを含むモノエチレン系不飽和モノマーである:
− C
3〜C
6モノカルボン酸のC
1〜C
10アルキルエステル、C
4〜C
6ジカルボン酸のジ(C
1〜C
10アルキル)エステル、C
3〜C
6モノカルボン酸のC
5〜C
10シクロアルキルエステル、C
4〜C
6ジカルボン酸のジ(C
5〜C
10シクロアルキル)エステル、モノC
1〜C
10アルキル末端ポリC
2〜C
4アルキレングリコール、特にモノC
1〜C
10アルキル末端ポリエチレングリコールとC
3〜C
6モノカルボン酸とのエステル、及び、ビニル芳香族炭化水素化合物(ビニル芳香族炭化水素)からなる群から選択された、中性の非官能性モノエチレン系不飽和モノマーM1;
− 重合性C=C二重結合に加えて、ヒドロキシル基、第1級若しくは第2級アミノ基、カルボキサミド基、及びニトリル基から選択された中性若しくは塩基性の官能基を少なくとも1つ含む、中性及び塩基性の官能性モノエチレン系不飽和モノマーM2;
− 重合性C=C二重結合に加えて、カルボキシル基、及びヒドロキシスルホニル基から選択された酸性の官能基を少なくとも1つ含む、酸性の官能性モノエチレン系不飽和モノマーM3。
【0068】
モノC
1〜C
10アルキル末端ポリC
2〜C
4アルキレングリコール、特にモノC
1〜C
10アルキル末端ポリエチレングリコールと、C
3〜C
6モノカルボン酸、特にアクリル酸又はメタクリル酸とのエステルは、C
2〜C
4アルキレンオキシド繰返し単位の数に応じて、通常は200〜5,000ダルトンの範囲内の(数平均)分子量を有する。
【0069】
C
3〜C
6モノカルボン酸の例は、アクリル酸、及びメタクリル酸である。C
4〜C
6ジカルボン酸の例は、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸である。従ってモノマーM1は、特に上記のアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸のエステルである。好適なアクリル酸及びメタクリル酸のエステルM1の例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルポリエチレングリコールアクリレート、及びメチルポリエチレングリコールメタクリレートである。
【0070】
ビニル芳香族炭化水素M1の例には、スチレン、ビニルトルエン、及びα−メチルスチレンが含まれ、特にスチレンが好ましい。
【0071】
好ましいモノマーM1は、アクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステル、メタクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステル、モノC
1〜C
10アルキル末端ポリC
2〜C
4アルキレングリコール、特にモノC
1〜C
10アルキル末端ポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル、モノC
1〜C
10アルキル末端ポリC
2〜C
4アルキレングリコール、特にモノC
1〜C
10アルキル末端ポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル、及びビニル芳香族炭化水素、特にスチレンから選択される。
【0072】
好適なモノマーM2の例には、以下のものが含まれる:
− C
3〜C
6モノカルボン酸のヒドロキシC
2〜C
4アルキルエステル、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸のヒドロキシC
2〜C
4アルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び4−ヒドロキシブチルメタクリレート;
− C
3〜C
6モノカルボン酸のN−(ヒドロキシC
2〜C
4アルキル)アミド、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸のN−(ヒドロキシC
2〜C
4アルキル)アミド、例えばN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−若しくは3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−若しくは3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、及びN−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド;
− C
3〜C
6モノカルボン酸のアミノC
2〜C
4アルキルエステル、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸のアミノC
2〜C
4アルキルエステル、例えば2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、2−若しくは3−アミノプロピルアクリレート、2−若しくは3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノブチルアクリレート、及び4−アミノブチルメタクリレート;
− C
3〜C
6モノカルボン酸のN−(アミノC
2〜C
4アルキル)アミド、特にアクリル酸若しくはメタクリル酸のN−(アミノC
2〜C
4アルキル)アミド、例えばN−(2−アミノエチル)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)メタクリルアミド、N−(2−若しくは3−アミノプロピル)アクリルアミド、N−(2−若しくは3−アミノプロピル)メタクリルアミド、N−(4−アミノブチル)アクリルアミド、及びN−(4−アミノブチル)メタクリルアミド;
− C
3〜C
6モノカルボン酸の第1級アミド、例えばアクリルアミド、及びメタクリルアミド;
− モノエチレン系不飽和C
3〜C
6モノニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル。
【0073】
好適なモノマーM3の例には、以下のものが含まれる:
− C
3〜C
6モノカルボン酸、例えばアクリル酸、及びメタクリル酸;
− C
4〜C
6ジカルボン酸、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、又はシトラコン酸、
− モノエチレン系不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸。
【0074】
本発明の特に好ましい実施態様は、モノマーM1から誘導された繰返し単位、特にC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族炭化水素化合物から選択されたモノマーM1から誘導された繰返し単位を含むポリマーP’’に関する。
【0075】
本発明の特に好ましい実施態様は、モノマーM1から誘導された繰返し単位、特にC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族炭化水素化合物から選択されたモノマーM1から誘導された繰返し単位と、モノマーM2から誘導された繰返し単位、特にC
3〜C
6モノカルボン酸のヒドロキシC
2〜C
4アルキルエステル、C
3〜C
6モノカルボン酸のN−(ヒドロキシC
2〜C
4アルキル)アミド、C
3〜C
6モノカルボン酸のアミノC
2〜C
4アルキルエステル、及びC
3〜C
6モノカルボン酸のN−(アミノC
2〜C
4アルキル)アミドからなる群から選択されたモノマーM2から誘導された繰返し単位とを含むポリマーP’’にも関する。
【0076】
ポリマーP’’のうち特に好ましいものは、モノマーM1から誘導された繰返し単位が、該ポリマーP’’の10〜90質量%、特に30〜80質量%を占めているものである。
【0077】
特に好ましいポリマーP’’は、以下のものを含む:
− モノマーM1から誘導された繰返し単位 該ポリマーP’’の10〜90質量%、特に30〜80質量%;
− 式Iaの繰返し単位 該ポリマーP’’の10〜80質量%、特に20〜60質量%;
− モノマーM2から誘導された繰返し単位 該ポリマーP’’の0〜80質量%、特に0〜50質量%;
− モノマーM3から誘導された繰返し単位 該ポリマーP’’の0〜20質量%、特に0〜10質量%。
【0078】
分散剤としての作用の性能に関して、500〜100,000ダルトン、特に800〜80,000ダルトン、特に1,000〜50,000ダルトンの範囲内の数平均分子量M
Nを有しているポリマーP’’が好ましい。ポリマーP’’の重量平均分子量M
Wは、一般に600〜500,000ダルトン、特に1,000〜300,000ダルトン、特に1,200〜150,000ダルトンの範囲内である。多分散度M
W/M
Nは、一般に1.05〜5、好ましくは1.1〜4、特に1.2〜3の範囲内である。
【0079】
分散剤としての作用の性能に関して、3〜500mgKOH/gポリマーP’’、特に10〜300mgKOH/gポリマーP’’の範囲内のアミン価を特徴としているポリマーP’’が好ましい。
【0080】
分散剤としての使用の他に、本発明のポリマーP’’は、架橋剤として、レオロジー調整剤として、耐衝撃性改良剤として、連鎖延長剤として、又はブロック共重合体若しくはグラフト共重合体を製造するための構成単位としても使用可能である。
【0081】
本発明によるポリマーPは、ポリマーP’’を除き、本願明細書の冒頭部分で引用されている従来技術から公知であるか、若しくはその中で記載されている方法と類似の方法により製造可能である。
【0082】
脂肪族ポリエーテル、特にポリ(アルキレンオキシド)であるポリマーPは、例えばUS4,180,644号、US4,191,706号、US4,191,835号、US4,247,677号、US4,260,729号、及びUS2003212291号から公知である。
【0083】
脂肪族ポリエステルであるポリマーPは、例えばEP21569号から公知である。
【0084】
脂肪族ポリカーボネートであるポリマーPは、例えばUS5,231,149号から公知である。
【0085】
それとは別に、ポリマーPは好ましくは、式A−Q−Hの官能性部分を少なくとも1つ有しているポリマーP’であってこの官能性部分がこのポリマーP’の末端のうちの1つ及び/又はこのポリマーP’の主鎖に結合しているものとするポリマーP’と、式II又はIII
【化3】
の化合物との反応により得られたものであり、
ここで、A、Q、k、R
1、及びR
2は、本願明細書中に定義した通りであり、かつ、
ポリマーP’は式Iの官能基を有していないものとする。
【0086】
式IIの好適な化合物の例は、イサト酸無水物、N−メチルイサト酸無水物、N−エチルイサト酸無水物、アミノイサト酸無水物、フルオロイサト酸無水物、クロロイサト酸無水物、ブロモイサト酸無水物、カルボン酸イサト酸無水物、ニトロイサト酸無水物、ヒドロキシイサト酸無水物、メトキシイサト酸無水物、1−(メチルスルホニルメチル)イサト酸無水物、(4−ピリジニル)イサト酸無水物、1−フェニル−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2,4(1H)−ジオン、クロロ−1−エチル(メチル)−2H−3,1−ベンゾオキサジン−2,4(1H)−ジオン、イサト酸無水物カルボン酸メチルエステルである。
【0087】
式IIIの好適な化合物の例は、イサト酸無水物(アントラニル酸無水物)である。
【0088】
ポリマーPは、式A−Q−Hの官能性部分を少なくとも1つ有しているポリマーP’であってこの官能性部分がこのポリマーP’の末端のうちの1つ及び/又はこのポリマーP’の主鎖に結合しているものとするポリマーP’と、アントラニル酸、又は式II’
【化4】
のそのエステルとの反応により製造可能であり、ここで、A、Q、k、R
1、及びR
2は、本願明細書中に定義した通りであり、そしてこのポリマーP’は式Iの官能基を有しておらず、かつR
Lは、水素、又は1〜8個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばC
1〜C
6アルキル、フェニル、C
3〜C
6シクロアルキル、又はベンジルであり、ここで、R
Lは好ましくは、水素、又はC
1〜C
4アルキルであり、特に水素、メチル、又はエチルであるものとする。
【0089】
ポリマーP’はポリマーPの主鎖を形成している。従って、ポリマーP’は好ましくは、ポリエステル、特に脂肪族ポリエステル、ポリエーテル、特にポリC
2〜C
4アルキレンオキシド、ポリカーボネート、特に脂肪族ポリカーボネート、及びC−C主鎖を有しているポリマー、特に、重合C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、重合C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族炭化水素化合物から選択された繰返し単位M1を含むポリマー、特に、繰返し単位M1の量がポリマーP’の全質量に対して10〜90質量%、特にポリマーP’の全質量に対して30〜80質量%を占めているポリマーからなる群から選択されている。上記のポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、及びC−C主鎖を有しているポリマーは、式A−Q−Hの官能性部分を少なくとも1つ、特にA−Q−Hの官能性部分を1〜200個、又は2〜200個、又は3〜200個、特に1〜100個、又は2〜100個、又は3〜100個有しており、その際、このA−Q−Hの官能性部分は、ポリマー主鎖の1つ以上の末端に結合していてもよいし、ポリマー主鎖のいずれか他の位置に結合していてもよい。
【0090】
本発明の特定の一実施態様において、ポリマーP’は、脂肪族ポリエーテル、特にポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であり、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよい。ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)P’は、A−Q−H部分、特にOH基、又はNH
2基を少なくとも1つ有しており、例えば式Iの部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特にA−Q−H部分を1、2、3、又は4個有している。ポリエーテルP’において、A−Q−H部分は、好ましくはOH基、又はNH
2基である。脂肪族ポリエーテルP’は、直鎖状であっても分岐状であっても超分岐状であってもよい。
【0091】
ポリマーP’は市販されており、例えばHuntsman社製Jeffamine
(R)グレード、Perstorp社製Boltorn
(R)グレード、BASF社製Pluriol
(R)グレード、BASF社製Pluronic
(R)グレード、及びBASF社製Lutensol
(R)グレードである。
【0092】
本発明の他の特定の実施態様において、ポリマーP’は、脂肪族ポリエステル、特に直鎖状若しくは分岐状又は超分岐状の脂肪族ポリエステルP’であり、以下のものから選択される:
a)脂肪族ポリエステルであって、ポリエステル主鎖の繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
2〜C
10ジカルボン酸と、C
2〜C
10脂肪族ジオールと、任意に、3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールとから誘導されているもの;及び
b)脂肪族ポリエステルであって、ポリエステル主鎖の繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンか、又は、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンと、C
2〜C
10ジカルボン酸、C
2〜C
10脂肪族ジオール、及び3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールから選択された少なくとも1つの他の成分との組み合わせから誘導されているもの。
【0093】
脂肪族ポリエステルP’はA−Q−H部分を少なくとも1つ有しており、例えばA−Q−H部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特にA−Q−H部分を1〜50個有している。ポリエステルP’において、A−Q−H部分は、好ましくはOH、又はNH
2である。
【0094】
ポリエステルP’は市販されており、例えばPerstorp社製Boltorn
(R)グレードであり、また、脂肪族C
2〜C
10脂肪族ジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体と、C
2〜C
10脂肪族ジオールと、任意に、3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールとの共縮合によっても製造可能であり、ラクトンと、1、2、3、4、5、又は6個、又はそれを上回るヒドロキシル基を有するヒドロキシル化合物との反応によっても製造可能である。
【0095】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーP’は脂肪族ポリエーテルエステル、特に直鎖状若しくは分岐状又は超分岐状の脂肪族ポリエーテルエステルであり、以下のものから選択される:
a)脂肪族ポリエーテルエステルであって、ポリエステルブロックの繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、脂肪族C
2〜C
10ジカルボン酸と、C
2〜C
10脂肪族ジオールと、任意に、3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールとから誘導されており、かつ、ポリエーテルブロックが、ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であるもの。ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする;及び
b)脂肪族ポリエーテルエステルであって、ポリエステルブロックの繰返し単位の大部分、特に少なくとも70%が、1つ以上、例えば1、2、又は3つの脂肪族C
4〜C
10ラクトンか、又は、このラクトンと、C
2〜C
10ジカルボン酸、C
2〜C
10脂肪族ジオール、及び3、4、5、又は6個のヒドロキシル基を有するC
3〜C
10脂肪族若しくはC
5〜C
10脂環式ポリオールから選択された少なくとも1つの他の成分との組み合わせから誘導されており、かつ、ポリエーテルブロックが、ポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)であるもの。ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。
【0096】
ポリエステルブロックとポリエーテルブロックとの質量比は、通常1:100〜100:1の範囲内、特に1:10〜10:1の範囲内である。
【0097】
脂肪族ポリエーテルエステルP’はA−Q−H部分を少なくとも1つ有しており、例えばA−Q−H部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特にA−Q−H部分を1〜50個有している。ポリエーテルエステルP’において、A−Q−H部分は、好ましくはOH、又はNH
2である。
【0098】
脂肪族ポリエーテルエステルP’は、上記エステル形成性モノマーと、OH末端脂肪族ポリエーテル、例えばポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)との共縮合により製造可能であり、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンオキシド繰返し単位とプロピレンオキシド繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。
【0099】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーP’は脂肪族ポリカーボネートであり、特に、ポリ(C
2〜C
4アルキレンカーボネート)、特にポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、又はポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンカーボネート)であるポリマー主鎖を有する直鎖状若しくは分岐状若しくは超分岐状の脂肪族ポリカーボネートであり、ここで、直前に記載したものにおいて、エチレンカーボネート繰返し単位とプロピレンカーボネート繰返し単位は、ランダムに配置されていてもよいしブロック状に配置されていてもよいものとする。ポリ(C
2〜C
4アルキレンカーボネート)P’はA−Q−H部分を少なくとも1つ有しており、例えばA−Q−H部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特にA−Q−H部分を1、2、3、又は4個有している。ポリカーボネートP’において、A−Q−H部分は、好ましくはOH、又はNH
2である。脂肪族ポリカーボネートP’は、直鎖状であっても分岐状であっても超分岐状であってもよい。
【0100】
ポリカーボネートP’は市販されており、例えばPerstorp社製Oxymer
(R)グレードである。
【0101】
本発明の他の特定の一実施態様において、ポリマーP’は、ポリマー主鎖が主に炭素原子からなるポリマー、即ちC−C主鎖を有しているポリマーであり、その際、このポリマー主鎖及び/又は末端原子のうち少なくとも1つは、本願明細書中に定義した通りの官能性部分A−Q−Hを1つ以上有する。本発明によれば、ポリマーP’はA−Q−H部分を少なくとも1つ有しており、例えばA−Q−H部分を1〜200個、又は1〜100個有しており、特にA−Q−H部分を2〜200個、又は3〜100個、又は5〜50個有している。
【0102】
ポリマーP’は、通常、重合エチレン系不飽和モノマーMから誘導された繰返し単位(以下、C−C繰返し単位)からなる。このC−C繰返し単位の少なくとも1つは官能性部分A−Q−Hを有しており、この官能性部分は、ポリマー主鎖の一部を形成するC−C繰返し単位の炭素原子に、部分Aを介して結合している。
【0103】
原則的に、ポリマー主鎖を形成するモノマーMは、重合性C=C二重結合を有するいずれの重合性エチレン系不飽和モノマーから選択されてもよいが、但しこれは、ポリマー主鎖を形成するモノマーの少なくとも1つが、重合性C=C二重結合に結合しているA−Q−H基を有していることが前提である。好ましくは、ポリマー主鎖を形成するモノマーMは、厳密に1つの重合性C=C二重結合を有する重合性エチレン系不飽和モノマーのみを有するか、又は、この重合性エチレン系不飽和モノマーをポリマーP’’の全質量に対して少なくとも95%、特に少なくとも99%有している。
【0104】
従ってポリマーP’は、重合性C=C二重結合に結合しているA−Q−H基を有しているモノマーに由来する、式Ib
【化5】
[式中、
R、R’、及びR’’は、例えば水素、又はC
1〜C
4アルキルのような不活性基を表す]
の繰返し単位を少なくとも1つ含む。
【0105】
式Ibにおいて、変項A、及びQは上に定義した通りである。記号*は、隣接するC−C繰返し単位の炭素原子との結合箇所を表し、R、R’、及びR’’は、例えば水素、又はC
1〜C
4アルキルのような不活性基を表し、特に好ましくは、R、及びR’は水素であり、R’’は水素、又はC
1〜C
4アルキル、特に水素、又はメチルである。
【0106】
本発明の好ましい実施態様は、式Ibの繰返し単位に加えて、官能性部分A−Q−Hを有しない重合モノエチレン系モノマーから誘導された繰返し単位を含むポリマーP’に関する。
【0107】
官能性部分A−Q−Hを有しない好適なモノマーは、上記モノマーM1及びM3を含むモノエチレン系不飽和モノマー、及びモノマーM2であり、その際、官能基はOH、又はNH
2以外のものである。
【0108】
ポリマーP’における好ましいモノマーM1は、アクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステル、メタクリル酸のC
1〜C
10アルキルエステル、C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及びビニル芳香族炭化水素、特にスチレンから選択される。
【0109】
本発明の特に好ましい実施態様は、モノマーM1から誘導された繰返し単位、特に、C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、重合C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族化合物から選択されたモノマーM1から誘導された繰返し単位と、第1級アミノ基若しくはヒドロキシル基を有するモノマーM2から誘導された繰返し単位とを含むポリマーP’に関する。第1級アミノ基若しくはヒドロキシル基を有しているモノマーM2を以下でモノマーM2aと称し、一方で、第1級アミノ基もヒドロキシル基も有していないモノマーM2を以下でモノマーM2bと称する。
【0110】
本発明の特に好ましい実施態様は、さらに、モノマーM1から誘導された繰返し単位、特にC
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート、重合C
1〜C
10アルキル(ポリC
2〜C
4アルキレングリコール)(メタ)アクリレート、及び例えばスチレンのような重合ビニル芳香族炭化水素化合物から選択されたモノマーM1から誘導された繰返し単位と、モノマーM2aから、特にC
3〜C
6モノカルボン酸のヒドロキシC
2〜C
4アルキルエステル、C
3〜C
6モノカルボン酸のN−(ヒドロキシC
2〜C
4アルキル)アミド、C
3〜C
6モノカルボン酸のアミノC
2〜C
4アルキルエステル、及びC
3〜C
6モノカルボン酸のN−(アミノC
2〜C
4アルキル)アミドからなる群から選択されたモノマーM2aから誘導された繰返し単位とを含むポリマーP’に関する。
【0111】
ポリマーP’のうち特に好ましいものは、モノマーM1から誘導された繰返し単位が、該ポリマーP’の10〜90質量%、特に30〜80質量%を占めているものである。
【0112】
特に好ましいポリマーP’は、以下のものを含む:
− モノマーM1から誘導された繰返し単位 該ポリマーP’の10〜90質量%、特に30〜80質量%;
− モノマーM2aから誘導された繰返し単位 該ポリマーP’の10〜80質量%、特に20〜60質量%;
− モノマーM2bから誘導された繰返し単位 該ポリマーP’の0〜80質量%、特に0〜50質量%;
− モノマーM3から誘導された繰返し単位 該ポリマーP’の0〜20質量%、特に0〜10質量%。
【0113】
500〜100,000ダルトン、特に800〜80,000ダルトン、特に1,000〜50,000ダルトンの範囲内の数平均分子量M
Nを有しているポリマーP’が好ましい。ポリマーP’の重量平均分子量M
Wは、一般に600〜500,000ダルトン、特に1,000〜300,000ダルトン、特に1,200〜150,000ダルトンの範囲内である。ポリマーP’の多分散度M
W/M
Nは、一般に1.05〜5、好ましくは1.1〜4、特に1.2〜3の範囲内である。
【0114】
C−C主鎖を有しておりかつ少なくとも1つのA−Q−H基を有しているポリマーP’は、公知であって市販されており、例えばLyondell Chem社製Acryflowグレードであり、また、好適な開始剤と任意に調節剤との存在下でのモノマーM1とM2aとのラジカル共重合によって製造可能である。好適なポリマーP’は、例えばWO00/40630号、WO03/046029号、WO2006/074969号、WO2011/120947号から公知である。
【0115】
化合物II又はIIIの量は、一般に、化合物II又はIII対ポリマーP’中のA−Q−H基の量のモル比が10:1〜1:10、特に5:1〜1:5、特に3:1〜1:3となるように選択される。
【0116】
ポリマーP’と式II又はIIIの化合物との反応は、一般に、A−Q−H基とII又はIII中のカルボニル基との反応を促進する好適な触媒の存在下に行われる。好適な触媒には、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、又は炭酸カリウム、第3級アミン、例えばトリC
1〜C
6アルキルアミン、例えばトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、ジC
1〜C
6アルキルC
5〜C
6シクロアルキルアミン、例えばジメチルシクロヘキシルアミン、ジC
1〜C
6アルキルピリジン、例えば4−ジメチルアミノピリジン、錫化合物触媒、例えばジブチル錫ジオクトエート、及びジブチル錫ジラウレートが含まれる。
【0117】
触媒の量は、一般にポリマーPと式II又はIIIの化合物の全量に対して0.01〜2質量%、特に0.1〜1質量%である。
【0118】
ポリマーP’と式II又はIIIの化合物との反応は、一般に60〜180℃、特に80〜140℃の範囲の温度で行われる。
【0119】
ポリマーP’と式II又はIIIの化合物との反応は、塊状で行われてもよいし溶剤中で行われてもよい。好適な溶剤は、反応条件下で不活性である溶剤であり、これには例えばエステル、炭化水素、及びそれらの混合物が含まれる。好ましくは、この反応は塊状で行われ、即ち、反応物の濃度は反応混合物の質量に対して少なくとも90質量%である。
【0120】
ポリマーP、特に、式Iの官能性部分に加えて、ポリマー主鎖にグラフトされているポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基を1つ以上有するポリマーP’’は、ポリマー主鎖にグラフトされているポリ(C
2〜C
4アルキレンオキシド)基を1つ以上有する好適なポリマーP’を用いることにより製造可能である。好ましくは、そのようなポリマーP又はP’’はそれぞれ、C
1〜C
10アルキルエステル部分、例えば重合C
1〜C
10アルキル(メタ)アクリレート部分を有するポリマーP又はP’’と、ポリ(C
2〜C
4アルキレングリコール)、特に「エンドキャップ」されているポリ(C
2〜C
4アルキレングリコール)、特にモノC
1〜C
10アルキルポリ(C
2〜C
4アルキレングリコール)との反応により製造される。それにより、C
1〜C
10アルキルエステル部分のうち少なくとも幾分かが、ポリ(C
2〜C
4アルキレングリコール)エステル部分、即ち、ポリ(C
2〜C
4アルキレングリコール)がカルボニル基を介してポリマー主鎖に結合している部分へと転化される。
【0121】
上で指摘した通り、このようにして得られたポリマーPは、分散剤として、特に例えば顔料やフィラーといった微粒状固体のための分散剤として特に好適である。
【0122】
本発明は、少なくとも1種のポリマーPを分散剤として含有する微粒状固体の液体組成物にも関する。
【0123】
ポリマーPは、例えばコーティング、インキ、電子材料といった広範な適用分野において、特に低温及び低粘度での適用において、分散剤として使用可能である。ポリマーPは、例えば溶剤系有機及び無機顔料分散液、例えばアルキド塗料系、CAB(セルロースアセテートブチレート)塗料系、UV(紫外線)塗料系、及びTPA(熱可塑性アクリレート)塗料系といった溶剤系体において、一般工業用コーティングにおいて、特に自動車用コーティングにおいて、また、印刷インキやグラフィックアートにおいて使用可能である。
【0124】
本発明は特に、液体希釈剤中に分散している微粒状固体材料、特に顔料又はフィラーを含有する分散液の形態の液体組成物であって、本願明細書中に定義した通りのポリマーPをさらに含有する液体組成物に関する。
【0125】
本発明は特に、液体希釈剤中に分散している微粒状固体材料、特に顔料又はフィラーを含有する液体コーティング組成物の形態の液体組成物であって、本願明細書中に定義した通りのポリマーPとバインダーポリマー若しくはプレポリマーとをさらに含有する液体組成物にも関する。
【0126】
本発明は特に、液体希釈剤中に分散している微粒状固体材料、特に顔料又はフィラーを含有する液体インキ組成物の形態の液体組成物であって、本願明細書中に定義した通りのポリマーPとバインダーポリマー若しくはプレポリマーとをさらに含有する液体組成物にも関する。
【0127】
好適な微粒状固体材料には、これに限定されるものではないが、顔料及びフィラーからなる群が含まれる。顔料は、無機であっても有機であってもよい。顔料には着色顔料及び真珠光沢物が含まれる。
【0128】
微粒状材料のサイズは、好ましくはマイクロメートル範囲であり、例えば重量平均粒子径は1μm〜2000μm、特に2μm〜1000μm、又は5μm〜500μmの範囲であってよい。重量平均粒子径は、篩分析により測定可能である。重量平均粒子径は光散乱法によっても測定可能である。
【0129】
好適な有機顔料の例は、アゾ顔料、ジスアゾ顔料、ナフトール顔料、ベンズイミダゾロン顔料、縮合アゾ顔料、金属錯体顔料、イソインドリノン顔料、及びイソインドリン顔料からなる群から選択された顔料及び真珠光沢フレーク、及び、キノフタロン顔料、ジオキサジン顔料、並びに、インジゴ、チオインジゴ、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系、ペリノン系、アントラキノン系、例えばアミノアントラキノン系、又はヒドロキシアントラキノン系、アントラピリミジン系、インダントロン系、フラバントロン系、ピラントロン系、アンタントロン系、イソビオラントロン系、ジケトピロロピロール系、及びカルバゾール系、例えばカルバゾールバイオレット等からなる多環顔料群である。有機顔料のさらなる例は、モノグラフW. Herbst, K. Hunger“Industrielle Organische Pig-mente”2
nd Edition, 1995, VCH Verlagsgesellschaft, ISBN: 3-527-28744-2に記載されている。
【0130】
好適な無機顔料の例は、例えば金属フレーク、例えばアルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、ケイ酸塩、酸化鉄(III)、酸化クロム(III)、酸化チタン(IV)、酸化ジルコニウム(IV)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、複合酸化物リン酸塩系顔料、硫化モリブデン、硫化カドミウム、カーボンブラック、又はグラファイト、バナジン酸塩、例えばバナジン酸ビスマス、クロム酸塩、例えばクロム酸鉛(IV)、及びモリブデン酸塩、例えばモリブデン酸鉛(IV)、並びにそれらの混合物、結晶形、又は変態、例えばルチル、アナターゼ、マイカ、タルク、又はカオリンである。
【0131】
好適なフィラーは、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、金属酸化物、金属水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、木材粉末、他の天然物の粉末や繊維、合成繊維である。
【0132】
分散液中に存在する液体希釈剤は、公知の方法での適用分野に依存する。本発明の分散剤は、希釈剤がコーティング技術における常用の溶剤から選択されている分散液において特に有用である。水系配合物に関しては、希釈剤は水を含有しており、かつ、水の他にさらに、極性の水混和性溶剤、例えばC
1〜C
4アルカノール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、又はn−ブタノール、グリコールエーテル、例えばブチルグリコール、又はメトキシプロピレングリコール、ポリオール、例えばグルセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン、トリエチレングリコール、又はプロピレングリコールを含有してよい。溶剤系配合物に関しては、好ましくは低極性溶剤、例えば脂肪族炭化水素、エステル、例えば酢酸ブチル、又はグリコールエーテル、例えばメトキシプロピレングリコール、又はグリコールエーテルエステル、例えばメトキシプロピレングリコールアセテートを使用し、その混合物を液体希釈剤として使用する。
【0133】
好ましくは、該液体組成物中での微粒状固体材料対ポリマーPの質量比は、100:1〜1:50、特に30:1〜1:10の範囲であってよい。
【0134】
本発明の特定の一実施態様において、該液体組成物は、以下のものを含有している:
i)顔料及びフィラーからなる群から選択された少なくとも1種の微粒状固体材料 該液体組成物の全質量に対して1〜70質量%、特に2〜50質量%;
ii)本願明細書中に定義した通りの少なくとも1種のポリマーP 該液体組成物の全質量に対して0.5〜50質量%、特に1〜30質量%;
iii)少なくとも1種の液体希釈剤 該液体組成物の全質量に対して10〜98.5質量%、特に20〜97質量%。
【0135】
用途に応じて、該液体組成物はさらに、バインダー及び/又は用途に応じた1種以上の常用の添加剤を含有してよい。常用の添加剤には、例えば可塑剤、滑剤、乳化剤、湿潤剤、レオロジー添加剤、触媒、流動助剤、蛍光増白剤、難燃剤、保存剤、帯電防止剤、又は発泡剤が含まれる。
【0136】
該液体分散液は、ミルベースの形態であってよい。そのようなミルベースは、微粒状固体と、ポリマーPと、液体希釈剤と、任意に添加剤とを含有するが、一般にはミルベースはバインダーを含有しない。
【0137】
該液体分散液は、コーティング組成物の形態であってもよい。そのようなコーティング組成物は、微粒状固体と、ポリマーPと、液体希釈剤と、さらには1種以上のバインダー、例えば硬化時に皮膜を形成する皮膜形成性ポリマー若しくはプレポリマーとを含有する。コーティング組成物は、コーティング技術における常用の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、乳化剤、レオロジー添加剤、触媒、流動助剤、蛍光増白剤、難燃剤、保存剤、帯電防止剤、又は発泡剤を適宜含有してよい。
【0138】
該液体分散液は、インキ、例えば印刷インキやグラビアインキの形態であってもよい。そのようなインキは、微粒状固体と、ポリマーPと、液体希釈剤と、さらにはインキ技術における常用の1種以上のバインダー、例えば硬化時に皮膜を形成する皮膜形成性ポリマー若しくはプレポリマーとを含有する。コーティング組成物は、常用の添加剤、例えば可塑剤、滑剤、乳化剤、湿潤剤、レオロジー添加剤、湿潤剤、保存剤、及び帯電防止剤を適宜含有してよい。
【0139】
好適なバインダーは常用のバインダーであり、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th Edition, Vol.A18, pp.368-426, VCH, Weinheim 1991, Germanyに記載されているバインダーである。一般に、皮膜形成性バインダーは熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂、主に熱硬化性樹脂をベースとしている。その例は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂、並びにその混合物である。放射線硬化性樹脂や空気乾燥硬化性樹脂も使用可能である。バインダーは、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールから誘導されたものであってもよい。
【0140】
低温若しくは高温硬化性のバインダーを使用する場合、硬化触媒の添加が好ましい場合がある。バインダーの硬化を促進する好適な触媒は、例えばUllmann's, Vol.A18, loc. cit., p.469に記載されている。
【0141】
ポリマーPと架橋性樹脂とを含有するコーティング組成物が好ましい。特定のバインダーを含有するコーティング組成物の例は、以下の通りである:
・低温若しくは高温架橋性アルキド、アクリレート、ポリエステル、エポキシ、又はメラミン樹脂、又はそのような樹脂の混合物をベースとし、所望の場合には硬化触媒を添加した塗料;
・ヒドロキシル含有アクリレート、ポリエステル、又はポリエーテル樹脂と、脂肪族若しくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレート、又はポリイソシアネートとをベースとする、二成分系ポリウレタン塗料;
・焼付時に脱ブロックされるブロックイソシアネート、イソシアヌレート、又はポリイソシアネートをベースとし、所望の場合にはメラミン樹脂を添加した、単一成分ポリウレタン塗料;
・トリスアルコキシカルボニルトリアジン架橋剤と、ヒドロキシル基含有樹脂、例えばアクリレート、ポリエステル、又はポリエーテル樹脂とをベースとする、単一成分ポリウレタン塗料;
・ウレタン構造内に遊離アミノ基を有する脂肪族若しくは芳香族ウレタンアクリレート、又はポリウレタンアクリレートと、メラミン樹脂若しくはポリエーテル樹脂とをベースとし、所望の場合には硬化触媒を添加した、単一成分ポリウレタン塗料;
・(ポリ)ケチミンと、脂肪族若しくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレート、又はポリイソシアネートとをベースとする、二成分系塗料;
・(ポリ)ケチミンと、不飽和アクリレート樹脂若しくはポリアセトアセテート樹脂若しくはメタクリルアミドグリコレートメチルエステルとをベースとする、二成分系塗料;
・カルボキシル若しくはアミノ含有ポリアクリレートとポリエポキシドとをベースとする、二成分系塗料;
・無水物基含有アクリレート樹脂と、ポリヒドロキシ若しくはポリアミノ成分とをベースとする二成分系塗料;
・アクリレート含有無水物とポリエポキシドとをベースとする、二成分系塗料;
・(ポリ)オキサゾリンと、無水物基含有アクリレート樹脂、又は不飽和アクリレート樹脂、又は脂肪族若しくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレート若しくはポリイソシアネートとをベースとする、二成分系塗料;
・不飽和ポリアクリレートとポリマロネートとをベースとする二成分系塗料;
・エーテル化メラミン樹脂と組み合わせた熱可塑性アクリレート樹脂又は外部架橋性アクリレート樹脂をベースとする、熱可塑性ポリアクリレート塗料;及び
・シロキサン変性若しくはフッ素変性アクリレート樹脂をベースとする塗料系。
【0142】
該コーティング組成物は、好ましくは、成分i)とii)を組み合わせたもの、つまり該組成物中の微粒状固体とポリマーPとを、固体バインダー100質量部当たり0.01〜100.0質量部、特に0.05〜50.0質量部、特に0.1〜20.0質量部含有する。
【0143】
本発明の液体組成物の調製のために、顔料を、一般にポリマーP分散剤の存在下に液体希釈剤中に分散させる。この分散は、例えば高速混合、ボールミル処理、サンドグラインディング処理、アトライターグラインディング処理、又は2本若しくは3本ロールミル処理といった慣用の技術を用いて達成可能である。生じる顔料分散液は、上記範囲内の顔料−分散剤比を有し得る。そのようにして得られた分散液はミルベースとも称される。
【0144】
コーティング組成物又はインキの調製のために、ミルベースを、一般に例えば混合によりバインダーの液体組成物へ混和させる。しかしながら、微粒状固体材料をポリマーPの溶液中に分散させ、生じる混合物を溶剤及び/又は水の留去により、好ましくは蒸留乾固により濃縮し、生じる濃縮物を適宜さらに熱処理及び/又は機械処理して、顔料と変性コポリマーとを含有する混合物を調製し、次いでこれを液体バインダー配合物中に分散させることも可能である。この方法によれば、微粒状固体とポリマーPとの固体組成物の分散が容易であり、かつ、例えば塗料配合物へ混和するための時間やエネルギーのかかるグラインディング処理が不要である。
【0145】
以下に本発明を実施例により説明する。