(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多結晶シリコン製支持棒部材が、四角柱形状であり、その多結晶シリコンロッド底部に対する支持部になる上部角部が、R加工されていることにより曲面形状である、請求項1または請求項2記載の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台。
多結晶シリコン製支持棒部材が、四角柱形状であり、その多結晶シリコンロッド底部に対する支持部になる上部角部が、面取り加工されていることにより平面形状である、請求項1または請求項2記載の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台。
多結晶シリコン製支持棒部材が、円柱形状、または上部側が弧状の略半円柱形状であることにより、前記多結晶シリコンロッド底部に対する支持部が曲面形状である、請求項1または請求項2記載の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台。
多結晶シリコンロッドが載置された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台を、加熱炉に収装して500〜1000℃に加熱した後、直ぐに取り出して冷却装置に収装して急冷して、上記多結晶シリコンロッドを脆弱化させ、さらに、得られた脆弱化した多結晶シリコンロッドを粉砕処理する、ことを特徴とする多結晶シリコン粉砕物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや太陽電池の製造に使用されるシリコンウェーハは、シーメンス法によって製造された多結晶シリコンロッドを用いて、次の方法により製造されるのが普通である。すなわち、このシリコンロッドを拳大の小片に粉砕後に分級し、得られた多結晶シリコンロッド粉砕物を原材料としてチョクラルスキー法によって円柱形状のシリコンインゴットを生成し、かかるシリコンインゴットをスライスし研削する方法である。
【0003】
上記における多結晶シリコンロッドの粉砕は、ハンマーを用いて人手によって実施することが多い。また、多量のシリコンの粉砕物を生産性良く得るために、ハンマーによる手粉砕に代えて、鉱石の粉砕に一般に用いられるジョークラッシャーと呼ばれる粉砕機等を使用して粉砕を実施することもある。
【0004】
こうした多結晶シリコンロッドの粉砕を円滑に行うために、その粉砕前に、これを脆弱化しておくことが好ましく、多結晶シリコンロッドを加熱した後、水に浸す等して急冷し熱歪みを生じさせ、顕著にはクラックを生じせしめて脆弱化させることが提案されている(例えば、特許文献1の請求項1、
図3参照)。こうした多結晶シリコンロッドの加熱・急冷では、ロッドを加熱炉や水槽中に収装するための載置台が必要になる。例えば、上記特許文献1には、内部を冷却水が流れる一対のパイプ部材と、これらパイプ部材と、台に載置する多結晶シリコンロッドとの間に介在させられる多結晶シリコン製のレール部材(支持棒部材)とを有する構造のものが提案されている。
【0005】
上記構造の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台において、支持の基礎部になる一対のパイプ部材は、例えば、ステンレス(SUS)等の不銹鋼製であり、その内部に冷却水を流すことで、加熱時における温度上昇を抑え、熱拡散によるシリコンロッドの金属汚染が防止されるように構成されている。半導体デバイスや太陽電池の製造に使用されるシリコンウェーハにおいて、金属による汚染は可能な限り抑制することが求められるからである。
【0006】
そして同様に多結晶シリコンロッドの金属汚染を防止する目的で、上記パイプ部材は、多結晶シリコンロッド底部を直接に支持する構造ではなく、共材として、多結晶シリコン製支持棒部材を介在させて支持する構造に工夫されている。ここで、この多結晶シリコン製支持棒部材の形状は、具体的には、
図6に示すように四角柱形状であり、その尖った角部で、多結晶シリコンロッド底部を支持するものになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記構造の載置台では、多結晶シリコンロッドを載置して加熱・急冷すると、多結晶シリコンロッドと共に、当然ながら前記支持棒部材も同じ熱履歴に曝される。しかしながら、該支持棒部材は、共材として、シリコンロッドと同じ多結晶シリコンロッドで製造されているにも関わらず細長い棒形状であるため、急冷時に外部と内部との間に温度差が生じ難く、熱歪みは穏やかにしか生じず、クラックも発生し難い。従って、この支持棒部材は、一回の加熱・急冷処理で自然に崩壊するほどに激しく脆弱化するものではないため、操作性やコストを勘案して複数回繰り返して使用されるのが普通であった(特許文献1 〔0025〕参照)。
【0009】
ところが、近年、シリコンウェーハに対する金属汚染低減の要求はさらに強まっており、上記多結晶シリコンロッドを加熱・急冷して脆弱化させてから粉砕して得た多結晶シリコン粉砕物に対しても、その金属汚染をさらに高度に防止することが求められている。こうした中にあって、本発明者等の検討によれば、その主要な汚染原因として、前記多結晶シリコン製支持棒部材の破砕片のシリコンロッドへの付着があることが発覚した。
【0010】
すなわち、多結晶シリコン製支持棒部材は、前記したように細長い四角柱形状であり、その尖った角部で、多結晶シリコンロッド底部を支持するものであるところ、その細長い本体部は、従来の考えどおり簡単には脆弱化せず破断し難いものであるが、他方で、多結晶シリコンロッドの底部と接触する支持部は強度の弱い尖った角部になるため、この部分に加熱・急冷の脆弱化作用が少しでも加わると、多結晶シリコンロッドからの負荷で比較的簡単に欠けてしまうものであった。そして、このような角部の破砕片の一部には、加熱後の急冷工程において、水に浸される等する中で、下部の不銹鋼製のパイプ部材と一旦接触した後に浮流して多結晶シリコンロッドの表面に付着する物が生じるリスクがあり、これが無視できない金属汚染を引き起こす原因になっていた。而して、この多結晶シリコン製支持棒部材の角部の欠けは、該支持棒部材の取り替えを短期間、具体的にはたとえ一回の加熱・急冷処理ごとに行ったとしても十分には防止できないレベルであった。
【0011】
従って、上記多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台において、こうした多結晶シリコン製支持棒部材の破砕片のシリコンロッドへの付着に起因した金属汚染を、高度に防止できるものを開発することが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記問題に鑑み、種々検討を重ねた結果、前記多結晶シリコン製支持棒部材の角部が欠けて発生する破砕片の付着によるシリコンロッドの金属汚染を防止するためには、該多結晶シリコン製支持棒部材の支持部の形状を工夫すれば有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、多結晶シリコンロッドを載置した状態で、加熱炉及び冷却装置に収装可能な、多結晶シリコンロッドを加熱・急冷して脆弱化する際に使用する載置台であって、
内部に冷却水が流通するパイプ部材の複数本が、その長さ方向が、前記載置する多結晶シリコンロッドの軸方向に略平行で、且つ夫々の並びが、該多結晶シリコンロッドの底部湾曲形状に沿うように列設されてなり、
これら列設されるパイプ部材の少なくとも2本の上部には、該多結晶シリコンロッドの底部を支持する、多結晶シリコン製支持棒部材が敷設されてなり、
係る多結晶シリコン製支持棒部材の上記多結晶シリコン
ロッドとの接触点が、曲面または平面形状である、
ことを特徴とする多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台である。
【0014】
また、本発明は、多結晶シリコンロッドが載置された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台を、加熱炉に収装して500〜1000℃に加熱した後、直ぐに取り出して冷却装置に収装して急冷して、上記多結晶シリコンロッドを脆弱化させ、さらに、得られた脆弱化した多結晶シリコンロッドを粉砕処理する、ことを特徴とする多結晶シリコン粉砕物の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明における、前記構造の載置台に多結晶シリコンロッドを載置して、これを加熱・急冷による脆弱化処理に供しても、得られる脆弱化した多結晶シリコンロッドに、多結晶シリコン製支持棒部材の破砕片が付着することが大幅に抑制される。従って、この脆弱化した多結晶シリコンロッドを粉砕しても、得られる粉砕物に金属汚染が生じるリスクが大きく低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の載置台は、シーメンス法等によって製造された多結晶シリコンロッドを粉砕する前に、これを加熱・急冷して脆弱化させるために使用する。ここで、シーメンス法とは、トリクロロシランやモノシラン等のシラン原料ガスを加熱されたシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)法により気相成長(析出)させる方法である。こうした多結晶シリコンロッドの直径は、通常100〜160mmである。
【0018】
以下、本発明に係る多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台、及びこれを用いた多結晶シリコン粉砕物の製造方法を
図1〜5を参照しながら説明する。
【0019】
この実施形態の載置台1は、多結晶シリコンロッド2を載せて使用され、複数本のパイプ部材3が、その長さ方向が、上記載置される多結晶シリコンロッド2の軸方向に略平行で、且つ夫々の並びが、該多結晶シリコンロッド2の底部周方向における湾曲形状に沿うように列設されている。これらパイプ部材3は、ステンレス(SUS)等の不銹鋼製であり、内部には冷却水が流通している。斯様にパイプ部材3の内部に冷却水が流通する構造であるため、多結晶シリコンロッド2を載置して加熱処理しても、該パイプ部材の過度な温度上昇は抑えられ、金属材料の熱拡散による、前記多結晶シリコンロッド2の汚染が良好に防止される。
【0020】
係るパイプ部材3の直径は、通常、15〜25mmであり、内空部の割合は、40〜70%であるのが好ましい。このパイプ部材3の内部に流す冷却水の温度は5〜35℃が好ましく、10〜25℃であるのがより好ましい。
【0021】
これらパイプ部材3の列設本数は、載置する多結晶シリコンロッド2の底部の左右両側を支持するための2本は必要であり、さらに、載置の安定性を高めるために、多結晶シリコンロッドの底部湾曲形状に沿って、総数で20本程度まで増やして設けても良い。これら複数本のパイプ部材3は、夫々、その長さ方向が、前記載置する多結晶シリコンロッド2の軸方向と平行に、隣接するもの同士、所定間隔を空けて設置する。この場合、各パイプ部材3の並びは、その長さ方向が、必ずしも多結晶シリコンロッド2の軸方向と完全に平行である必要はなく、該多結晶シリコンロッド2の軸方向から多少ずれた(好適には、完全に平行な状態から±3度以内でずれた)、略平行状態であっても構わない。
【0022】
なお、載置台に載せる多結晶シリコンロッド2は、通常は1本であるが、複数本の載置が可能なものとしても良い。この場合、各多結晶シリコンロッドの底部に沿って、それぞれ複数本のパイプ部材が列設され、これらが連ねられた大型台の態様になる。
【0023】
載置台1において、多結晶シリコンロッド2は、該パイプ部材3の上部に直接載せるのではなく、パイプ部材3の少なくとも2本の上部に敷設された、多結晶シリコン製支持棒部材4により支持されて載置する。これにより前記金属製のパイプ部材3が多結晶シリコンロッド2の表面と接触することによる、シリコンロッドの汚染が防止できる。
【0024】
而して、本発明の最大の特徴は、この多結晶シリコン製支持棒部材4 が、その多結晶シリコンロッド2
との接触点である支持部5 が、曲面または平面形状になっていることにある。すなわち、前記したとおり多結晶シリコンロッド2 の加熱・急冷において、多結晶シリコン製支持棒部材4 に破砕が生じる大きな原因は、その四角柱形状によるところが大きく、その尖った角部で多結晶シリコンロッド2 の底部を支持しているため、この部分が欠け易いことにある。これに対して、この支持部5 を、前記曲面や平面形状にすれば、この強度の弱さは解消され、該支持棒部材4 を一回の加熱・急冷処理は無論のこと、複数回繰り返して使用しても、破断片が生じて多結晶シリコンロッド2 に付着して金属汚染を引き起こすことが大幅に抑制できる。
【0025】
上記多結晶シリコン製支持棒部材4において、前記多結晶シリコンロッド2底部に対する支持部5を曲面または平面形状とする具体的態様は、この状態が実現できる形状である限り特に制限されるものではないが、一般には以下の3態様が好適である。すなわち、
1)多結晶シリコン製支持棒部材が、四角柱形状で有り、その多結晶シリコンロッド底部に対する支持部になる上部角部が、R加工されていることにより曲面形状である態様(
図2)
2)多結晶シリコン製支持棒部材が、四角柱形状で有り、その多結晶シリコンロッド底部に対する支持部になる上部角部が、面取り加工されていることにより平面形状である態様(
図3)
3)多結晶シリコン製支持棒部材が、円柱形状、または上部側が弧状の略半円柱形状であることにより、前記多結晶シリコンロッド底部に対する支持部が曲面形状である態様(
図4及び
図5)
である。
【0026】
このうち1)態様において、四角柱形状の角部のR加工は、角部を切削して丸加工すれば良く、そのR半径は1〜9mmの範囲、より好適には1〜5mmの範囲であるのが、破砕片の発生を抑制する観点から望ましい。また、2)態様において、四角柱形状の角部の面取り加工は、角部を斜めに削除加工すれば良く、その面取り角度は30〜60度の範囲、特に45度であり、面取り幅は1〜9mmの範囲、より好適には1〜5mmの範囲であるのが、破砕片の発生を抑制する観点から望ましい。さらに、3)態様において、円柱形状は必ずしも真円柱である必要は無く、多少の楕円形柱であっても許容できる。また、上部側が弧状の略半円柱形状の場合、横幅が上下幅よりも長い所謂、カマボコ状であっても良い。
【0027】
これら3態様の中でも、2)の面取り加工は、面取りの両側部が鈍角ではあるが、強度的にやや弱い屈曲部になるため、急冷工程で水に浸漬した際等に、台に載置される多結晶シリコンロッドにぐらつきが生じると該屈曲部が破砕する虞が残る。このため、多結晶シリコンロッドとの接触部近傍の全体が滑らかな弧状である、1)及び3)の態様が特に好ましい。
【0028】
こうした多結晶シリコン製支持棒部材4の上下幅および横幅は、一般には5〜20mmから採択される。また、その長さは、載置する多結晶シリコンロッド2と同じか、それを上回る長さであるのが好ましいが、多結晶シリコンロッド2が載置台1のパイプ部材3に接触しないように支持できていれば、ロッド長よりも短くても許容でき、長さ2〜20cm程度の短尺として、所定間隔を空けて複数本配置する態様であっても構わない。
【0029】
これら支持棒部材4の材質となる多結晶シリコンは、シーメンス法等によって製造された多結晶シリコンロッドから切り出して適用すれば良い。斯様に切り出した棒状物に対して、上記支持部5の構造を満足するように加工して用いれば良い。
【0030】
なお、こうした多結晶シリコン製支持棒部材4は、複数本列設するパイプ部材3に対して、多結晶シリコンロッド2の支持を安定化させるために、少なくとも2本、好適には、多結晶シリコンロッド2の底部の左右両側を支持可能な位置の2本に敷設すれば良い。無論、多結晶シリコンロッド2の支持をより安定化させる観点からは、多数に設けるのが好ましく、その全てのパイプ部材3に対して設けても良い。
【0031】
本発明において、上記多結晶シリコン製支持棒部材4のパイプ部材3上への敷設は、底面に、上記パイプ部材3との係合構造を有し、且つ上面に、上記多結晶シリコン製支持棒部材4の下部を外嵌する凹部6を有する、多結晶シリコン製支持棒部材の敷設用固定部材7を介在させることにより実施するのが好ましい。係る敷設用固定部材7において、その底面に設けられた、上記パイプ部材3との係合構造は、一般には、
図1に示したような、パイプ部材3の上部を外嵌する凹部8を設けた構造が適している。凹部ではなく、パイプ部材3の外面全体を密に環囲する管部として設けても良い。
【0032】
この敷設用固定部材7の材質も、前記パイプ部材3と同様に、ステンレス(SUS)等の不銹鋼製であるのが好ましい。また、こうした鋼材は、熱拡散が大きく、多結晶シリコン製支持棒部材4や多結晶シリコンロッド2を汚染させる虞があるため、チタン等の熱拡散性が低い材料により製造しても良い。さらに、上記不銹鋼で製造する場合においては、多結晶シリコン製支持棒部材4の下部を外嵌する凹部6を含めて、少なくともその上面および両側面上部を、前記チタン箔9で被覆するのが、金属汚染防止の観点から好ましい。なお、こうしたチタンによる被覆を、パイプ部材3の表面に施すのも好適な態様である。
【0033】
次に 以上の構造を備えた多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台を用いて、該多結晶シリコン粉砕物を製造する方法について説明する。
【0034】
すなわち、多結晶シリコン粉砕物は、多結晶シリコンロッドが載置された、前記構造の多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台を、加熱炉に収装して500〜1000℃に加熱した後、直ぐに取り出して冷却装置に収装して急冷して、上記多結晶シリコンロッドを脆弱化させ、さらに、得られた脆弱化した多結晶シリコンロッドを粉砕処理することにより製造することができる。
【0035】
多結晶シリコンロッドが載置された加熱・急冷用載置台を、加熱炉に収装しての加熱温度は、500℃より低いと、急冷時に多結晶シリコンロッドに生じる熱歪みが小さくなり、その脆弱化が十分でなくなる。他方で、加熱温度は、1000℃より高いと、加熱炉内の不純物の拡散による多結晶シリコンロッドの汚染の影響が大きくなる。これらを考慮すると、加熱温度は、600〜950℃であるのが特に好ましい。
【0036】
加熱処理において、上記加熱温度での保持時間は、特に制限されるものではないが、多結晶シリコンロッドに熱歪みを十分に生じさせる観点からは20分以上、特に、30〜120分が好適である。
【0037】
上記加熱処理に供する加熱炉としては、本発明の加熱・急冷用載置台を収装可能な炉内構造である限り特に制限されない。具体的には、炉材に含まれる金属不純物が拡散するのを抑制できる石英ガラスなどで炉内部を覆うようにしたものを用いるのが好ましい。
【0038】
多結晶シリコンロッドの急冷は、上記加熱処理が終了後、多結晶シリコンロッドの温度が前記加熱温度内に保持されている間に、直ちに行う。具体的には、加熱処理が終了した多結晶シリコンロッドが載置された多結晶シリコンロッドの加熱・急冷用載置台を、加熱炉から取り出して冷却装置に収装する。上記加熱されていた多結晶シリコンロッドは、この急冷時の熱衝撃により熱歪みが生じ脆弱化する。
【0039】
ここで、冷却装置は、多結晶シリコンロッドを急冷できるものであれば特に制限されないが、冷却効率や簡便性を勘案すると、通常は水槽が用いられる。水槽に充填する水は、汚染防止の観点から純水であるのが好ましい。この水の温度は、5〜30℃であるのが好ましく、10〜25℃であるのがより好ましい。載置台を、水槽中に浸す時間は、通常、2〜10分から採択される。なお、冷却装置は、水で冷却する他の装置として、シャワー等により、加熱・急冷用載置台上の多結晶シリコンロッドに水を噴射させる構造のもの等であっても良い。
【0040】
上記急冷処理の後、加熱・急冷用載置台を冷却装置から搬出後、必要に応じて乾燥させた後、台から取り出した多結晶シリコンロッドを粉砕処理する。この多結晶シリコンロッドの粉砕処理は、ハンマーを用いて人手による方法や、ジョークラッシャー等の粉砕機を用いた公知の方法により適宜に実施すれば良い。上記方法によれば、多結晶シリコンロッドが良好に脆弱化しているため、少ない外力で簡単に作業できることは前述したとおりである。粉砕の粒度は、一般には長径が2〜120mmから採択されるのが一般的である。
【0041】
以上説明した、本発明の載置台は、多結晶シリコンロッドを脆弱化する際に、これを加熱・急冷するために使用するものであるが、多結晶シリコンロッドに代えて、その粗割物や大粒径粉砕物を粉砕して細粒化する際に使用しても一向に構わず、これら被細粒化対象を載置台に載せて加熱・急冷処理を施して使用すれば良い。
【実施例】
【0042】
以下、実施例、及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明における支持棒部材の欠け性評価は、下記の方法により行った。
【0043】
1)欠け性評価
加熱急冷処理後の多結晶シリコン支持棒部材の支持部近傍(多結晶シリコンロッドとの接触点から支持棒部材の周方向に±2mmの範囲)を目視観察し、欠けの発生程度を支持棒部材の軸方向長さに対する欠けの総長さの比率によって評価した。
【0044】
実施例1
図1に示した載置台を用いて、多結晶シリコンロッドの加熱・急冷を実施し、得られた脆弱化した多結晶シリコンロッドを粉砕して多結晶シリコン粉砕物を製造した。多結晶シリコンロッドとしては、シーメンス法によって製造された直径120〜140mmであり、ロッド長が400mmのものを使用した。
【0045】
図1の載置台1において、パイプ部材3は、SUS製であり、直径は19mmであり、長さは1000mmであり、内空部の割合は47%であった。内部には、25℃の冷却水を流速25cm/分で流した。パイプ部材3の列設本数は7本であり、ロッドを支持するパイプ同士は40mmの間隔を空けた態様であった。
【0046】
また、多結晶シリコン製支持棒部材4は、シーメンス法によって製造された多結晶シリコンロッドから切り出された、一辺の幅が8mmで、長さが1000mmの四角柱において、その上部の左右角部を共に、R半径が2mmの条件でR加工したものを用いた(
図2)。こうした多結晶シリコン製支持棒部材4は、列設される7本のパイプ材3のうち載置される多結晶シリコンロッドを支持する4本に対して、
図2に示すような構造の敷設用固定部材7を介在させて設けた。この敷設用固定部材7は、SUS製であり、凹部6を含めてその上面および両側面上部は、チタン箔により被覆して使用した。
【0047】
こうした載置台1に多結晶シリコンロッド2を載置しての加熱は、石英ガラス被覆加熱炉にこれを収装し、900℃で50分保持して実施した。加熱後、多結晶シリコンロッド2が載置された状態で載置台1を取り出し、直ちに、容量が500Lで20℃の純水が充填され、30L/分の供給・排出量で該水が給排水されている水槽に5分間浸漬した。
【0048】
上記急冷処理が終了後、水槽から載置台1を引き上げ、乾燥させた後、載置台から多結晶シリコンロッド2を取り出し、ハンマーによる手粉砕で、長径8〜50mmの粒度の粉砕物に粉砕した。
【0049】
以上の後、使用した多結晶シリコン支持棒部材4について、欠けの程度を評価した。結果を表1に示した。
【0050】
実施例2
実施例1において、
図1の載置台に装備される、
図2に示した形状の多結晶シリコン製支持棒部材4に代えて、
図3に示した形状のものを用いる以外は同様に実施して多結晶シリコン粉砕物を製造した。
図3の多結晶シリコン製支持棒部材4は、シーメンス法によって製造された多結晶シリコンロッドから切り出された、一辺の幅が8mmで、長さが1000mmの四角柱において、その上部の左右角部を共に、面取り角度45度で、面取り幅2mmの条件で面取り加工したものを用いた。
【0051】
得られた多結晶シリコンロッドについて、実施例1同様、ハンマーによる手粉砕で、長径8〜50mmの粒度の粉砕物に粉砕した。以上の後、使用した多結晶シリコン支持棒部材4について、欠けの程度を評価した。結果を表1に示した。
【0052】
実施例3
実施例1において、
図1の載置台に装備される、
図2に示した形状の多結晶シリコン製支持棒部材4に代えて、
図5に示した形状のものを用いる以外は同様に実施して多結晶シリコン粉砕物を製造した。
図5の多結晶シリコン製支持棒部材4は、シーメンス法によって製造された多結晶シリコンロッドから切り出された、一辺の幅が8mmで、長さが1000mmの四角柱において、その上部側が半円柱形状のものを用いた。
【0053】
得られた多結晶シリコンロッドについて、実施例1同様、ハンマーによる手粉砕で、長径8〜50mmの粒度の粉砕物に粉砕した。以上の後、使用した多結晶シリコン支持棒部材4について、欠けの程度を評価した。結果を表1に示した。
【0054】
比較例1
実施例1において、
図1の載置台に使用される多結晶シリコン製支持棒部材4として、その上部の左右角部をR加工せず、尖った直角のままのものを使用する以外は同様に実施して多結晶シリコン粉砕物を製造した。
【0055】
以上の後、使用した多結晶シリコン支持棒部材4について、欠けの程度を評価した。結果を表1に示した。
【0056】
【表1】