(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6290787
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】計量混合機器の駆動装置
(51)【国際特許分類】
B05C 17/01 20060101AFI20180226BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20180226BHJP
A61C 5/64 20170101ALI20180226BHJP
B01F 15/04 20060101ALI20180226BHJP
F16H 19/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
B05C17/01
B05C5/00 A
A61C5/64
B01F15/04 C
F16H19/04 D
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-547850(P2014-547850)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公表番号】特表2015-515359(P2015-515359A)
(43)【公表日】2015年5月28日
(86)【国際出願番号】EP2012075192
(87)【国際公開番号】WO2013092334
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】11194922.8
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル ブック
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−216846(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/025831(WO,A1)
【文献】
米国特許第04306671(US,A)
【文献】
米国特許第05762239(US,A)
【文献】
米国特許第04322022(US,A)
【文献】
米国特許第04180187(US,A)
【文献】
特開昭54−058161(JP,A)
【文献】
特開昭60−147271(JP,A)
【文献】
特表2001−513059(JP,A)
【文献】
特開2006−231217(JP,A)
【文献】
特開2010−127415(JP,A)
【文献】
実開昭63−177352(JP,U)
【文献】
実開平05−008103(JP,U)
【文献】
実開平05−025338(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/62−64、9/00
B01F 15/00−04
B05C 5/00、17/01
F16H 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多剤物質のための計量混合機器(1A)の駆動装置(1B)であって、
前記計量混合機器(1A)が、以下を具備し:
個々の剤を有する交換可能なカートリッジ(2.1,3.1)を保持するための少なくとも2つのカートリッジホルダ(2,3);
前記カートリッジホルダ又はカートリッジに入る放出ピストン(11,16)を用いて剤出口を通して、前記カートリッジから前記剤を同時に放出するための放出装置、ここで、少なくとも1つの放出ピストンは、回転によって前方推進を生じさせることができる、ねじ山を備えた放出ピストン(11)であり;及び
前記放出装置から放出された剤を混合してこれらを混合された形態で放出する、前記剤出口に接続された混合機器(17)、
前記駆動装置(1B)が、以下を具備し:
駆動モータ(9)に連結するための伝動ユニット(8);及び
使用位置を基準として長手方向の後ろ側の部分に、らせん状歯列を有するスピンドル部分(5b)を有し、前記らせん状歯列を有するスピンドル部分(5b)のらせん状歯列のリードが45°〜65°であり、かつ前端部に、前記ねじ山を備えた放出ピストン(11)に係合する係合要素(5a)を有する、前記ねじ山を備えた放出ピストン(11)のスピンドル状放出ロッド(5);
ここで、前記伝動ユニット(8)は、前記らせん状歯列を有するスピンドル部分(5b)のらせん状歯列に適合する駆動ホイール(29)を有している、
駆動装置(1B)。
【請求項2】
前記らせん状歯列を有するスピンドル部分(5b)のらせん状歯列のリードが、50°〜61°である、請求項1に記載の駆動装置(1B)。
【請求項3】
前記スピンドル状放出ロッド(5)が、実質的に鉄鋼で形成されており、そして前記駆動ホイール(29)が、実質的にプラスチックで形成されている、請求項1又は2に記載の駆動装置(1B)。
【請求項4】
前記スピンドル状放出ロッド(5)の前側区分には、前記らせん状歯列を有するスピンドル部分(5b)の外側に、前記スピンドル状放出ロッド(5)の軸方向運動を停止中でも保証する追従制動要素(31,31’)が設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)。
【請求項5】
前記追従制動要素が、追従プラスチック制動要素(31’)として構成されている、請求項4に記載の駆動装置(1B)。
【請求項6】
前記追従制動要素が、追従ラップばねハウジング(31)として構成されている、請求項4に記載の駆動装置(1B)。
【請求項7】
前記スピンドル状放出ロッド(5)には、前記スピンドル状放出ロッド(5)の軸方向位置を検出するために、位置検知要素が設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)。
【請求項8】
前記位置検知要素が、前記追従制動要素(31)によって構成されているか、又は前記追従制動要素(31)に取り付けられている、請求項7に記載の駆動装置(1B)。
【請求項9】
前記係合要素(5a)が、多角形要素、トルクス形要素、又は爪要素として前記スピンドル状放出ロッド(5)の前端部に構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)。
【請求項10】
前記係合要素(5a)が、自己位置設定型として構成されている、請求項9に記載の駆動装置(1B)。
【請求項11】
前記伝動ユニット(8)が、一次駆動ホイール(23)を有する前記駆動モータ(9)の遊星伝動ユニット(22)を含み、かつ
切り換え可能なカップリング装置(24)が、前記一次駆動ホイール(23)と係合する駆動ピニオンを有する第1カップリング要素(24a)と、前記伝動ユニット(8)の前記駆動ホイール(29)として構成された第2カップリング要素(24b)とを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)。
【請求項12】
前記切り換え可能なカップリング装置(24)が、爪カップリングとして構成されている、請求項9又は10に記載の駆動装置(1B)。
【請求項13】
前記伝動ユニット(8)が、前記ねじ山を備えた放出ピストン(11)と、ギアラック(4)を介して駆動される、別の剤のための少なくとも1つの更なる放出ピストン(16)とを駆動するように構成されており、かつ前記別の剤の放出時に反応圧力によって軸方向に移動可能な可動アセンブリ(19)を有しており、
前記切り換え可能なカップリング装置(24)の第2カップリング要素(24b)が、前記可動アセンブリ(19)に対して軸方向に実質的に固定された状態で位置決めされており、前記別の剤の放出時に前記反応圧力によって前記第2カップリング要素(24b)が前記可動アセンブリ(19)と共に移動し、そしてその結果、前記第1カップリング要素(24a)と係合する、請求項11に記載の駆動装置(1B)。
【請求項14】
多剤物質のための塗布装置(1)であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)、電気的駆動モータ(9)及び前記電気的駆動モータ(9)のためのバッテリ電源(15)、並びに動作制御ユニット(13,14)を含む、塗布装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分剤、特に多成分接着剤のための計
量混合機器の駆動装置であって、計
量混合機器は、個々の剤を有する交換可能なカートリッジを保持するための少なくとも2つのカートリッ
ジホルダと、カートリッジから剤を、カートリッ
ジホルダ又はカートリッジに入る放出ピストンによって剤出口を通して同時に放出するための放出装置とを有しており、少なくとも1つの放出ピストンが、回転によってこの放出ピストンの前方推進を生じさせることができるねじ山を有しており、さらに計
量混合機器が、剤出口に接続された混合機器を有しており、混合機器は、放出された剤を混合してこれらを混合された形態で定量供給する、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の構造を有する計
量混合機器は、出願人による特許文献1の対象となっている。
【0003】
歯科用インプレッショ
ンコンパウンドを混合するための同様の計
量混合機器が特許文献2から既に知られている。この装置は、混合チャンバと、インプレッショ
ンコンパウンド剤のために混合チャンバ内に別々に開くいくつかの供給チャネルと、混合されたインプレッショ
ンコンパウンドのための出口とを有する基体とともに、使い捨て部分として構成された攪拌ユニットを含んでいる。攪拌ユニットはまた、駆動装置によって駆動される混合チャンバ内に回転可能に配置された攪拌器を有している。この駆動装置には、攪拌ユニットは取り外し可能に保持されている。インプレッショ
ンコンパウンドの剤はリザー
バシリンダ内に保持されており、ピストンによって混合チャンバ内に押し込まれ、そして混合後、出口を通してインプレッショ
ントレイ内に押し出される。ピストンの作動駆動装置の前進速度を変えることができるので、インプレッショ
ンコンパウンドの硬化時間を決定するピストン前進速度の比も、総前進量又は前進継続時間も、ひいてはインプレッショ
ンコンパウンド量も制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願第10 196 972.3号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3 233 366号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 057 465号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/025831号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/039113号明細書
【特許文献6】国際公開第2008/076941号パンフレット
【特許文献7】欧州特許出願公開2 279 379号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上述の形式の計
量混合機器のための信頼性高く正確に動作する駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、
下記の態様1の特徴を有する駆動装置によって解決される。本発明の構想の有利な別の発展形が、従属
的態様の対象となっている。
本発明の態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
多剤物質、特に多剤接着剤物質のための計量混合機器(1A)の駆動装置(1B)であって、
前記計量混合機器(1A)が、以下を具備し:
個々の剤を有する交換可能なカートリッジ(2.1,3.1)を保持するための少なくとも2つのカートリッジホルダ(2,3);
前記カートリッジホルダ又はカートリッジに入る放出ピストン(11,16)を用いて剤出口を通して、前記カートリッジから前記剤を同時に放出するための放出装置、ここで、少なくとも1つの放出ピストン(11)は、回転によってこの駆動ピストンの前方推進を生じさせることができるねじ山を有している;及び
前記放出された剤を混合してこれらを混合された形態で放出する、前記剤出口に接続された混合機器(17)、
前記駆動装置(1B)が、以下を具備し:
駆動モータ(9)、特に電気的な駆動モータ(9)に連結するための伝動ユニット(8);及び
使用位置を基準として長手方向の後ろ側の部分に、らせん状歯列を有する非セルフロック型のスピンドル部分(5b)を有し、かつ前端部に、前記放出ピストンに係合する係合要素(5a)を有する、ねじ山を備えた前記放出ピストンのスピンドル状放出ロッド(5);
ここで、前記伝動ユニットは、前記スピンドル部分のらせん状歯列に適合する駆動ホイール(29)を有している、
駆動装置(1B)。
《態様2》
前記らせん状歯列スピンドル部分(5b)のらせん状歯列のリードが、45°〜65°、特に50°〜61°である、態様1に記載の駆動装置。
《態様3》
前記スピンドル状放出ロッド(5)が、実質的に鉄鋼で形成されており、そして前記内歯駆動ホイール(29)が、実質的にプラスチックで形成されている、態様1又は2に記載の駆動装置。
《態様4》
前記放出ロッド(5)の前側区分には、らせん歯列状のスピンドル部分(5b)の外側に、前記放出ロッドの軸方向運動を停止中でも保証する追従制動要素(31,31’)が設けられている、態様1から3のいずれか一項に記載の駆動装置。
《態様5》
前記追従制動要素(31’)が、追従プラスチック制動要素として構成されている、態様4に記載の駆動装置。
《態様6》
前記追従制動要素が、追従ラップばねハウジング(31)として構成されている、態様4に記載の駆動装置。
《態様7》
前記スピンドル状放出ロッド(5)には、前記放出ロッドの軸方向位置、ひいては間接的には、前記放出ロッドと係合する放出ピストン(11)の軸方向位置を、特に光学的に検出するために、位置検知要素(31)が設けられている、態様1から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
《態様8》
前記位置検知要素が、前記追従制動要素(31)によって構成されているか、又は前記追従制動要素(31)に取り付けられている、態様7及び態様4から6のいずれか一項に記載の駆動装置。
《態様9》
前記係合要素(5a)が、多角形要素、トルクス形要素、又は爪要素として前記駆動ロッド(5)の端部に構成されている、態様1から8のいずれか一項に記載の駆動装置。
《態様10》
前記放出ピストンに設けられた係合要素に対応する前記係合要素(5a)が、自己位置設定型として構成されている、態様9に記載の駆動装置。
《態様11》
前記伝動ユニット(8)が、一次駆動ホイール(23)を有する前記駆動モータの遊星伝動ユニット(22)を含み、かつ
切り換え可能なカップリング装置(24)が、前記一次駆動ホイールと係合する駆動ピニオンを有する第1カップリング要素(24a)と、前記伝動ユニットの内歯駆動ホイール(29)として構成された第2カップリング要素(24b)とを含む、態様1から10のいずれか一項に記載の駆動装置。
《態様12》
前記切り換え可能なカップリング装置が、爪カップリング(24)として構成されている、態様9又は10に記載の駆動装置。
《態様13》
前記伝動ユニット(8)が、前記ねじ山を有する放出ピストン(11)と、ギアラック(4)を介して駆動される、別の剤のための少なくとも1つの更なる放出ピストン(16)とを駆動するように構成されており、かつ前記別の剤の放出時に反応圧力によって軸方向に移動可能な可動アセンブリ(19)を有しており、
前記切り換え可能なカップリング装置(24)の第2カップリング要素(24b)が、前記可動アセンブリに対して軸方向に実質的に固定された状態で位置決めされており、前記他の剤の放出中に前記反応圧力によって前記第2カップリング要素(24b)が前記アセンブリと共に移動し、そしてその結果、前記第1カップリング要素(24a)と係合する、態様11又は12に記載の駆動装置。
《態様14》
多剤物質、特に多剤接着剤のための塗布装置(1)であって、態様1から13のいずれか一項に記載の駆動装置(1B)、一体化された電気的駆動モータ(9)及び前記駆動モータのためのバッテリ電源(15)、並びに動作制御ユニット(13,14)を含む、塗布装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明には、セル
フカッティング駆動ピストンを使用して計
量混合機器を推進する際に、このピストンを連続して駆動モータと正の力伝達による連結(positive force−transferring connection)の状態とすることを保証するという思想がある。本発明にはまた、このことを、らせん状歯列を有する非セル
フロック型のスピンドル駆動装置によってこれを実現するという思想がある。本発明にはまた、伝動ユニットの駆動ホイールが、スピンドル部分を有する放出ロッドの歯列に適合された歯列を有する、伝動ユニットを提供するという思想がある。加えて、本発明には、放出ピストンと係合するために前記放出ロッドの(使用位置において)前端部に係合
要素を設けるという思想がある。示唆された解決手段によって、特に、駆動力はピストン(特にセル
フカッティン
グピストン)内に独立してカップリングされ、このピストンは独立して前方駆動をもたらす。このことは具体的には、そして有利には、通常型の放出ピストンによって(少なくとも)1つの他の剤を並行して放出する事例において、所定の圧力(対圧)閾値を超えた場合にのみ達成される。数多くの種類の用途の必要条件に応じて、このように、最初に述べた剤と混合されるべき別の剤が同時に放出されない場合、そして放出されない限り、セル
フカッティン
グピストンによる剤の放出は抑制される。加えて、計
量混合機器の再ローディング時に、セル
フカッティン
グピストンの放出ロッドは、(さほどの抵抗なしに、また更なる操作もなしに)押し戻すだけで再び出発位置に戻される。
【0008】
ここに具体的に示唆された駆動装置は、考察されているタイプの計
量混合機器において、(少なくとも)1つの放出ピストンが、回転によって前方推進を自動的にもたらすので、このために顕著な軸方向力の供給が必要とならず、ただ十分な回転運動量が供給されればよい。原則的には軸方向の力は、放出ロッドが放出ピストンとの接触状態を失わない程度の大きさであってよい。
【0009】
前述の考察及び有利な効果から見て、らせん状歯列スピンドル部分のらせん状歯列のリードが高く、45°〜65°、特に50°〜61°であると有利であるように思われる。
【0010】
更なる有利な実施態様において、放出ロッドの端部に設けられた係合
要素は多角形
要素、トルクス(Torx)
形要素、又は爪
要素として構成されている。もちろん、少なくとも使用時に必要となるトルクレベルを伝達するのに必要である範囲で、係合
要素の形状が、駆動ピストンの(使用位置において)後ろ側の対応突起又は挿入成形物の形状に対応することが保証されなければならない。これを目的として、係合
要素及び係合開口の幾何学的形状は必ずしも同一でなくてもよい。有利な実施態様では、放出ピストンに設けられた係合器具に対応する係合
要素が自己位置設定型(self−locating)であるように構成されている。こうして、駆動装置の「
停止(idling)」段階、及び放出ピストンの係合領域に対する損傷を大幅に回避することができる。
【0011】
コスト的に有利であり、また機能的にも有利である実施態様の場合、スピンドル状放出ロッドは実質的に鋼鉄から成っており、そして放出ピストンの係合領域は実質的にプラスチックから成っている、しかしながら他の材料対も考えられ、これらが特定の用途にとって妥当である場合もある。例えばスピンドルは全体的又は部分的に非鉄合金、例えば真鍮又は青銅又はアルミニウム合金から成っていてもよく、そして通常実質的にプラスチックから形成された通常の放出ピストンの場合にも、スピンドル係合
要素のためにやはり金属から成る対向片を任意に使用してもよい。
【0012】
同様に、更なる実施態様において、スピンドル状放出ロッドは実質的に鋼鉄から形成されており、内歯駆動ホイールは実質的にプラスチックから形成されている。ここでもまた、例えば上述の例のような他の材料対が考えられ、これらが好都合な場合がある。
【0013】
更なる有利な実施態様の場合、放出ロッドの前側区分には、らせん歯列状のスピンドル部分の外側に、追従制動
要素が設けられている。示唆された駆動装置が対象とする計
量混合装置の具体的な特徴は、負荷を受けた状態で、ひいては放出ピストン内に放出スピンドルがカップリングされている状態で、軸方向力(放出力)の供給を保証する。しかしながら、軸方向運動を
停止状態でも保証するように付加的な手段が設けることもできる。この手段も最終的には、放出ロッドがいずれにしても放出ピストンを位置付けすることを意味する。上述の制動
要素はこのことを保証する。
【0014】
第1の実施態様において、移動制動
要素は、移動プラスチック
制動要素として構成されている更なる実施態様は、移動制動
要素が追従ラップばねハウジングとして構成されていることを特徴とする。
【0015】
計
量混合装置の実際の作業に際して、ねじ山を備えた放出ピストンが正しく作業しているかどうか、ひいては実際に前方に向かって移動しているかどうか、そしてその結果として適切な剤を放出しているかどうかを見極めることが可能でなければならないので、付加的な実施態様では、ねじ山を備えた放出ピストンの放出ロッドに、特に放出ロッドの軸方向位置、ひいては間接的には放出ピストンの軸方向位置を光学的に検出するために、位置
検知要素を有している。上記実施態様を速やかに組み合わせる変更実施態様の場合、位置
検知要素は、制動
要素とともに構成されているか、又は制動
要素に取り付けられている。
【0016】
本発明の更なる実施態様では、伝動ユニットは一次駆動ホイールを有する(駆動モータの)遊星伝動ユニットとして構成されている。切り換え可能なカップリング装置が設けられており、このカップリング装置はこの場合有利には、一次駆動ホイールと係合する駆動ピニオン歯車を有するカップリング
要素を含み、そして伝動ユニットの内側らせん歯列として構成された更なるカップリング
要素を含む。
【0017】
セル
フカッティング放出ピストンで放出された剤の放出を、(少なくとも)1種の更なる剤の同時放出と上述のように望ましい形で関連づけることは、本発明の更なる実施態様において、特に信頼性高く達成される。この実施態様では、伝動ユニットは、ねじ山を有する放出ピストンと、ギ
アラックを介して駆動される、別の剤のための少なくとも1つの更なる放出ピストンとを駆動するように構成されており、そして、別の剤の放出中に反応圧力下で軸方向に移動可能な可動伝動アセンブリを有している。これと関連して、切り換え可能なカップリング装置の一方のカップリング
要素が、可動アセンブリに対して軸方向に実質的に固定された状態で位置決めされて、他の剤の放出中に反応圧力下で前記一方のカップリング
要素がこのアセンブリと一緒に移動する。その結果、前記一方のカップリング
要素は、装置ハウジングに固定的に配置された他方のカップリング
要素と係合する。
【0018】
最後になるが、多成分剤、特に多成分接着剤のための塗布装置であって、
上記態様のうちのいずれか1項に記載の駆動装置、一体化された電気的駆動モータ及び駆動モータのためのバッテリ電源、並びに動
作制御ユニットを含む、塗布装置も本発明の範囲に含まれる。
【0019】
図面を参照しながら、好ましい例示的な実施態様に基づいて以下に本発明を詳説する。図面には、本発明を理解するのに必要な特徴だけを示している。もちろん、本発明は、図示して記述する実施態様に限定されるものではない。具体的には図面は次のものを示している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、2剤接着剤のための本発明による塗布装置を側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の塗布装置の伝動ユニット8の構造を示す図である。
【
図3】
図3A及び3Bは、ギ
アラック4を駆動するのに役立つ伝動構成部分の実施態様を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ギ
アラック4の駆動装置の更なる変更形を示す概略図(斜視図)である。
【
図5】
図5は、
図1の塗布装置の第2放出ロッド5の1実施態様を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の塗布装置の伝動ユニット8の1実施態様を示す断面図である。
【
図7】
図7A及び7Bは、
図5の第2放出ロッドの詳細を示す概略図(斜視図)である。
【
図8】
図8は、
図1の塗布装置の駆動装置1Bの一部を構成するセンサの1実施態様を示すブロッ
クダイヤグラムである。
【
図9】
図9A及び9Bは、駆動制御装置の制御シーケンスの2つの実施態様を示すモータ電流−時間のダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による塗布装置1を示す側面図(概略的に示す)である。計
量混合機器1Aと、対応する駆動装置1Bと、最後に装置本体1Cとが主要構成部分として別々の符号を有している。
【0022】
計
量混合機器1Aは一例として示されているように、管状袋2.1及び硬質カートリッジ3.1のための異なる直径及び長さを有する2つのカートリッ
ジホルダ2及び3を含んでいる。より大きいカートリッ
ジホルダ2は、軸方向に運動可能な第1駆動ピストン(「直線ピストン(linear piston)」16によって作動させられ、第1駆動ピストン16は第1駆動ロッド(ギ
アラック)4に連結されていて、第1駆動ロッドによってカートリッ
ジホルダ2内へ直線的に前進させられる。カートリッ
ジホルダ2よりも実質的に小さな直径を有し、またこれよりも実質的に短いカートリッ
ジホルダ3は、第2駆動ピストン(「回転ピストン」)によって本発明に基づき作動させられる。第2駆動ピストンは、外側にねじ山を有している。このねじ山は、カートリッ
ジホルダ3又はこれに挿入されたカートリッジ3.1の内壁と係合し、その回転によって前方駆動を生じさせる。
【0023】
駆動ユニット1Bは伝動ユニット8を含んでいる。伝動ユニットは駆動入力側が単一であるのに対して、3つの異なる駆動出力側を有している。これらの出力側は一方では、直線的に前進するギ
アラック4のための出力部であり、他方では第2駆動ロッド5のための出力部であり、そして最後に、回転ミキサ7を操作する、同様に回転する駆動シャフト10のための出力部である。2つのカートリッ
ジホルダ2及び3は放出側でカートリッ
ジカップリング6に連結されている。このカートリッ
ジカップリングを通って、カートリッ
ジホルダ2及び3内に存在する材料も剤出口から回転ミキサ7へ搬送される。回転ミキサもカートリッ
ジカップリング6に連結されている。このような回転ミキサの構成は知られている。回転ミキサの前面には駆出チップ7aが取り付けられており、駆出チップを通って、混合された材料が最終的に放出される。
【0024】
伝動ユニット8は、ここで示された計
量混合機器1の実施態様では、電動モータ9によって駆動される。さらに、ここにはマイクロスイッチ12が設けられている。マイクロスイッチの機能をここでさらに説明することはしない。装置本体1Cは主として、手動で作動可能なオンオ
フスイッチ13aを備えた操作ユニット13と、操作制御ユニット14と、バッテ
リパック15とを含んでいる。
【0025】
図2は、伝動ユニット8の1つの実施態様の構造をさらに詳細に示している。このために
図6及び更なる実施態様も参照することができる。なお、
図2及び付加的な図面に示された方法は、
図2ではギ
アラック4の一部を構成する伝動構成部分が、下側に位置し、また第2放出ロッド5に属する構成部分が、上側に配置されている点で、
図1とは異なる。
【0026】
伝動ユニット8は、塗布装置の装置ハウジング17の壁に対して定置の第1アセンブリ18と、装置ハウジング内に運動可能に支持された第2アセンブリ19とを含んでいる。2つの伝動アセンブリ18及び19は、対圧ばね20(ここでは象徴的に示されている)によって弾性的に互いに締め付けられ、可動アセンブリ19は付加的なばね
要素21によって装置ハウジング17に弾性的に支持されている。このばね
要素21は、本明細書の他の個所では圧縮ばね
要素とも呼ばれている。第1アセンブリ18は、駆動モータの駆動ピニオンと接触した遊星歯車伝動装置22と、スピンドル状第2駆動ロッド(同様にここでは示されていない)を駆動するための出力部23と、第1放出ロッド(ギ
アラック)及びミキサの駆動シャフトのための駆動歯車(やはりここでは別個には符号を有しておらず、又は図示されていない)とを含んでいる。
【0027】
第2放出ロッドのための出力部には、切り換え可能なカップリング(爪クラッチ)24が設けられており、このカップリングは、第1アセンブリ18に対して定置の第1カップリング
要素24aと、第2アセンブリ19に対して定置の第2カップリング
要素24bとを含んでいる。第1放出ロッド(ギ
アラック)を駆動するために第2アセンブリ19内に配置された伝動構成部分25について以下に説明する。
【0028】
マイクロスイッチ12は第1アセンブリ18に固定されており、これは、第2アセンブリ19のプリセットされた運動位置で作動させられるように構成され、位置決めされている。
【0029】
上述のばね支持体とマイクロスイッチとを有する伝動ユニット8の2部分構成の機能を以下に簡単に説明する。
【0030】
塗布装置のスイッチオフ状態では、第2アセンブリ19は、対圧ばね20の力によって伝動ユニット8の第1アセンブリ18に対して前方へ向かって移動しているので、切り換え可能なカップリング24の第1及び第2
要素24a,24bは連結されておらず、第2アセンブリはまたマイクロスイッチ12に接触していない。第2アセンブリ19の正確な休止位置は、互いに適合された背圧ばね20と前方圧縮ばね21とを適切に選択すること、そして装置の始動時における第2アセンブリのマウンティングの応答挙動を適切に選択することによって調節される。
【0031】
始動時には、駆動力は駆動モータから遊星歯車伝動装置22及び伝動構成部分25を介してギ
アラック4に達し、ギ
アラックを計
量混合機器の駆動方向に(
図1及び
図2において左へ)動かす。第1放出ピストン16が、これに面した充填済カートリッジ2.1の端部に接すると直ぐに、カートリッジ内に含有される剤の粘度に基づいて反応圧力が構築され、この反応圧力はギ
アラック4を介してその駆動ピニオン(
図3A参照)に伝達され、そのマウンティングを介して第2構成部分19に伝達される。これにより、第2アセンブリ19が対圧ばね20のばね力に抗して第1アセンブリ18に対して動かされる。所定の変位量に達すると直ぐに、カップリング
要素24a,24bが係合し、駆動モータからの力の流れはスピンドル状第2放出ロッド5にも達し、これを回転させ、そしてセル
フカッティン
グピストンを駆動する。同時にマイクロスイッチ12が第2アセンブリ19の運動によって作動させられる。このプロセスと関連する機能に関しては下記を参照されたい。
【0032】
このような構成及び結果として生じるシーケンスにより、カートリッジ3.1内に含有されたB剤の放出は、カートリッジ2.1内に含有された多剤系のA剤も放出される場合のみ行われることが保証される。このことはまた、部分的に空にされたA剤を有するカートリッジが装置内に点1において配置され、ギ
アラック4の完全に引き込まれた出発位置において操作が開始されるときにも当てはまる。具体的に述べるならばこの場合ギ
アラック4は
停止中で前方へ向かって移動し、そして第2伝動アセンブリ19は、第1放出ピストン16が部分充填されたカートリッジの端部に接するまで、第1アセンブリ18に対してシフトされた出発位置状態に留まる。この時点で初めて、反力が構築され、この反力は第1アセンブリ18に第2アセンブリ19を押し付け、ひいては切り換え可能なカップリング24を閉じるので、駆動力が第2放出ロッド(スピンドル)5内にも導入される。したがって、この使用事例においても、B剤が正しい時点でのみ放出される。
【0033】
図3A及び3Bは、第1放出ロッド(ギ
アラック4)の駆動に役立つ伝動構成部分の実施態様として、カップリング可能なねじ駆動装置25をカップリング状態(
図3A)及びカップリング解除状態(
図3B)で示している。このねじ駆動装置は、スプライ
ンシャフトを有するねじ25aを含む。スプライ
ンシャフトは、軸方向軸受け25b内に支持され、遊星歯車伝動装置の駆動歯車(図示せず)を介して駆動される。ねじれ歯を有する2つのウォームギア25cがねじ25aと係合し、爪カップリング25dがこれらのウォームギアのそれぞれと連携する。このカップリング25dの変位可能なカップリング
要素にはいずれにも、直歯駆動ピニオン25eが取り外せないように連結されている。直歯駆動ピニオン25eは、カップリング25dの係合状態において、ウォームギア25cに沿って運動し、そしてここには示されていない、ウォームギアと噛み合うギ
アラック(
図1の符号4)に駆動力を伝達する。
図3Bに示された係合解離状態では、ピニオン25eは本質的に自由に回転するので、ピニオン間に支持されてこれらと係合するギ
アラックを、実際には抵抗なしに軸方向運動させることができる。このことにより、完全充填されたカートリッジ2.1(
図1)を塗布装置に再ローディングするために容易に引き戻すことが可能になる。
【0034】
図4は、上記実施態様の変更形を、具体的には
図1に示された図面の態様を利用しながら示している。ここではギ
アラック4は、平歯車伝動装置26と2つのねじ27とを介して駆動される。これらのねじはガイ
ドバー28に旋回可能に支持されている。このねじ27を作動レバー(図示せず)によって旋回させることによって、ギ
アラック4とのねじの係合関係は取り消されるので、ギ
アラックをほとんど抵抗なしに引き込むことがここでもやはり可能になる。この伝動部分の構成の更なる変更形において、ギ
アラック4は、ラック側面で直接に噛み合う2つのピニオンを介して駆動されるようになっていてよく、この場合、ピニオンの回転軸はギ
アラックの長さに対して垂直方向に延びる。この駆動装置の構想は当業者によく知られているので、ここで詳しく図示又は説明することはしない。
【0035】
図5は、第2放出ロッド5の例示的実施態様を示す斜視図である。第2放出ロッドの端部(図面左)は、係合
要素5aを有している。この係合
要素はここでは、放出ピストン11(
図1)に設けられた、対応して成形された係合装置内に係合するための多角体として形成されている。この放出ピストンは、放出ロッドとは別個の部分であり、例えばカートリッジ3.1の部分であってよく、これと一緒に送達することができる。放出ロッド5の反対側の端部5bはらせん状歯列システムを有している。らせん歯列システムはそのリードが高いことによって、非セル
フロック挙動をもたらす。スピンドル状第2放出ロッドの端部5bは、端部5bの雄ねじ山に対応する伝動ユニットの内歯駆動歯車29と係合する。内歯駆動歯車29は、前述の
図2に示された切り換え可能なカップリング24の第2カップリング
要素24bに固定されるか、又はこれと一体的に構成されている。
【0036】
駆動ロッド又はスピンドル5は、軸受け点30で支持される。係合
要素5aを備えた端部と、らせん歯列を備えた端部5bとの間では、駆動ロッドは円筒形軸として形成されており、そしてこの領域内に、最小制動トルク(0.5〜1.0Nm)を発生させるための追従制動装置31を有している。追従制動装置はまた、
停止時に、すなわち放出ロッドと対応放出ピストンとの非係合状態において軸方向前進運動を生じさせる。制動
要素31は、作業者の視界内の、又は光学検出装置に対する放出ロッドの軸方向位置をラベリングするための位置マーカとして役立つこともでき、或いは、このような
検知要素を支持することもできる。こうして、第2放出ロッド(第1放出ロッドと同様に)前方へ向かって移動しているかどうか、ひいてはB剤が正しく放出されているかどうかを検出することができる。したがって、(例えば放出ロッドと別個の放出ピストンとの正しい係合が行われないことによって引き起こされる)故障を直ちに認識することができ、そして誤った接着点の発生を抑制することができる。
【0037】
図6は放出ロッド4及び5を所定の位置に有する伝動ユニット8の更なる主要部分を、これらの位置対応関係を明らかにするために示す断面図である。第1放出ロッド4を駆動するためのねじ駆動装置25’に関連して、この構造は、
図2並びに
図3A及び3Bに示された伝動構成部分25に対してある程度変更されているが、このことは、駆動装置構造のこのような特徴を理解する上でさほど重要ではない。
【0038】
図7A及び7Bは一方では、既に
図5に示された制動
要素31をさらに詳細に示している。制動
要素はここでは追従ラップばねハウジングとして構成されており、ラップばね31aを見ることもできる。
図7Bは、追従プラスチック
制動要素31’として構成された制動
要素の1実施態様を示している。両方の制動
要素の構成が当業者に既に知られており、したがってさらに説明することはしない。
【0039】
図8は、セン
サシステムの構造、及び提案された駆動装置の連携する制御手段をブロッ
クダイヤグラムで概略的に示している。セン
サシステムは前述のマイクロスイッチ12に加えて、もちろん一次作動
要素として役立つオンオ
フスイッチ(「トリガ」)13a上に、或いはこれに加えて、又はそのセンサ代替物として、駆動モータ9のモータ電流を検出するための電流検出ユニット32を含む。モータ電流はモータ制御装置33を介してモータに供給される。駆動制御ユニット14は、センサ信号処理ステップ14aと、遅延
要素14bと、制御信号出力ステップ14cとを含んでいる。
【0040】
センサ信号処理ユニット14a内で実施される処理アルゴリズムを通して、A剤の放出に関する情報を最終的に含むマイクロスイッチ12からの信号は、オンオ
フスイッチ13a、又は電流検出ユニット32に由来するデータと適切な関係にあり、そしてモータの動作状態に関する情報を最終的に提供する。処理結果にはまた、遅延
要素14b内で(やはり記憶されたアルゴリズムに基づいて)適宜の経時的評価が施され、結果として好適なモータ制御信号が、塗布装置の全ての動作状況において制御信号出力ユニット14cによって発せられる。
【0041】
例えば
図9A及び9Bは、モータ電流−時間ダイヤグラムに基づく時系列を示している。これらの時系列は点Aで始まるとともに、オンオ
フスイッチ13aのターンオン動作に基づいて、検出モータ電流Iが増大する。
図9Aの点Bでは、オンオ
フスイッチがゆっくりと解放される。点Cで、電流検出ユニット32はモータ電流値0を検出し、その後、短い段階Dの間に、センサ信号処理ユニット14aが、モータ電流の値が0のままであるかどうかを試験することによって、オンオ
フスイッチの解放が意図的なものか不慮のものかを見極める。意図的な解放の場合には、点Eにおいて、まだ押されているマイクロスイッチ12からの信号を処理して、制御信号出力ユニット14cがモータ9の戻り行程をもたらす信号を最終的に発するようにすることができる。
【0042】
図9Bは、比較可能な制御シーケンスの別の実施態様を示す。ここでは、センサ信号処理ユニット14aにおいて時間B(オンオ
フスイッチの解放)前の段階AB*中に、モータ電流値が検出され、記憶され、そして時点Cにおいて測定された電流値との比較のために使用される。ここでは処理ユニットは、比較結果に基づいてオンオ
フスイッチが意図的に解放されたかどうかを認識し、そしてマイクロスイッチ12から対応した信号が入手できるならば、事実上同時にモータの戻り行程を開始する。
【0043】
両実施態様において説明した手順によって、トリガが不慮に解放されるか、又は極めて短時間解放される場合のモータの不必要な戻り行程を防止することができ、しかしこれとともに意図的な駆動プロセス終了による適切な戻り行程を開始することもできるので、多成分剤、特に(モータが単純にターンオフされるならば、まだ駆動圧力作用下にあるはずである)A剤の「オーバーシュート」放出を抑制することができる。これとともに、(僅かな)戻り行程によって、そしてA剤に由来する反力の影響の終了によって、第2伝動アセンブリ19は第1アセンブリ18から最大距離を置いた出発位置に戻され、ひいてはカップリング24とマイクロスイッチ12とを解放する。このことは塗布装置の好適なシャットオ
フ非使用状態である。
【0044】
本発明の実施態様はこれらの例には限定されることはなく、商業的利用の枠内で数多くの変更も可能である。