【文献】
Bai YANG et al,A Facile Route to ZnS-Polymer Nanocomposite Optical Materials with High Nanophase Content via γ-Ray Irradiation Initiated Bulk Polymerization,Advanced Materials,2006年,18,1188-1192
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(I)中、Xが−NR1−であり、R1がアリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、又はヘテロアリールC1〜C6アルキルから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状重合性組成物。
式(I)中、Xが−CR2R3−であり、R2およびR3が、同一又は異なり、アリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールC1〜C10アルキルオキシ、ヘテロアリールC1〜C10アルキルオキシ、アリールC1〜C10アルキルチオ、又はヘテロアリー
ルC1〜C10アルキルチオから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状重合性組成物。
ZnSの前記無機ナノ粒子は、3nm〜10nmの結晶の大きさを有し、且つ、前記チオール含有化合物で被覆されたZnSの前記無機ナノ粒子の粒径は、4nm〜80nmである、請求項9〜11のいずれか一項に記載の液状重合性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、アリールは、5〜10個の炭素原子を含み、1つ
の環又はいくつかの縮合環からなる芳香環を意味し、前記アリールの環は、場合により、以下に定義するC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、又はハロゲン原子から独立に選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい。
【0014】
ヘテロアリールは、4〜10個の炭素原子と、O、S、又はNから選択される1から3個のヘテロ原子とを含むヘテロ芳香族複素環を意味し、前記ヘテロ芳香族複素環は、場合により、以下に定義するC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、又はハロゲン原子から独立に選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい。
【0015】
C1〜C6アルキルは、1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基を意味する。アルキル基には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ペンチル、及びヘキシルが含まれる。
【0016】
C1〜C6アルコキシには、C1〜C6アルキル−O−基を意味し、この場合に、C1〜C6アルキルは前述の通り定義される。C1〜C6アルコキシ基には、例えば、メトキシ又はエトキシが含まれる。
【0017】
C1〜C6アルキルチオは、C1〜C6アルキル−S−基を意味し、この場合に、C1〜C6アルキルは前述の通り定義される。C1〜C6アルキルチオには、例えば、メチルチオ又はエチルチオが含まれる。
【0018】
ハロゲン原子には、塩素、臭素、又はヨウ素原子が含まれる。
【0019】
アリールオキシには、アリール−O−基を意味する。アリールオキシには、例えば、フェノキシ又はメチルフェノキシが含まれる。
【0020】
アリールチオは、アリール−S−基を意味する。アリールチオには、例えば、フェニルチオ又はメチルフェニルチオが含まれる。
【0021】
アリールC1〜C6アルキルは、RR’基を意味し、この場合に、Rは、アリールであり、R’は、C1〜C6アルキル、すなわち1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0022】
アリールC1〜C10アルキルオキシは、RR’−O−基を意味し、この場合に、Rは、アリールであり、R’は、C1〜C10アルキル、すなわち1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0023】
アリールC1〜C10アルキルチオは、RR’−S−基を意味し、この場合に、Rは、アリールであり、R’は、C1〜C10アルキル、すなわち1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0024】
ヘテロアリールC1〜C6アルキルは、RR’基を意味し、この場合に、Rは、ヘテロアリールであり、R’は、C1〜C6アルキル、すなわち1〜6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0025】
ヘテロアリールC1〜C
10アルキルオキシは、RR’−O−基を意味し、この場合に、Rは、ヘテロアリールであり、R’は、C1〜C10アルキル、すなわち1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0026】
ヘテロアリールC1〜C
10アルキルチオは、RR’−S−基を意味し、この場合に、Rは、ヘテロアリールであり、R’は、C1〜C10アルキル、すなわち1〜10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0027】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、式(I)の2つのカルボニル基は、二座配位の配位子としての機能を果たし、ナノ粒子の分散を助ける。
【0028】
さらに、R1、R2、およびR3は、高屈折率部位を担い得、重合性組成物を硬化させることによって得られる材料の屈折率を高めることを助ける。
【0029】
ナノ粒子は、溶媒和によって、式(I)のモノマー中に均一に分散される。溶媒和には、さまざまな種類の分子間相互作用、例えば、水素結合、イオン−双極子相互作用、双極子−双極子相互作用、又はファンデルワールス力などが関与する。
【0030】
1つの実施形態では、Rと、R’とは同一である。
【0031】
1つの実施形態では、Xは、−O−である。この実施形態によれば、式(I)のモノマーは、メタクリル酸無水物またはアクリル酸無水物である。好ましくは、式(I)のモノマーは、メタクリル酸無水物である。
【0032】
1つの実施形態では、Xは、−S−である。この実施形態によれば、式(I)のモノマーは、アクリル酸チオ無水物又はメタクリル酸チオ無水物である。
【0033】
1つの実施形態では、Xは、−NR1−である。この実施形態によれば、アリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、又はヘテロアリールC1〜C6アルキルから選択される。
【0034】
1つの実施形態では、Xは、−CR2R3−である。この実施形態によれば、R2及びR3は、同一又は異なり、アリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールC1〜C10アルキルオキシ、ヘテロアリールC1〜C10アルキルオキシ、アリールC1〜C10アルキルチオ、又はヘテロアリールC1〜C10アルキルチオから選択される。
【0035】
式(I)のモノマーは、当業者に広く知られた方法によって合成することができるか、あるいは、例えばメタクリル酸無水物、アクリル酸無水物など、商業的に入手可能である。
【0036】
例えば、式(I)のモノマーは、以下のように合成することができる。
【0037】
XがOである場合、式(I)のモノマーは、(メタ)アクリル酸の脱水又は(メタ)アクリル化によって得ることができる。
【0038】
XがNR1である場合、式(I)のモノマーは、相当する第1級アミンのビスアクリル化(bis-acrylation)によって得ることができる(実施例3を参照されたい)。
【化2】
【0039】
本発明の液状重合性組成物は、式(I)のモノマーを1種のみ含んでいても、式(I)のモノマーの混合物を含んでいてもよい。式(I)のモノマーが固体である場合、液状重合性組成物を形成させるために、液体である別の式(I)のモノマー中に可溶化することができる。
【0040】
1つの好ましい実施形態では、本発明の液状重合性組成物は、式(I)のモノマー1種又は式(I)のモノマーの混合物から本質的になる。
【0041】
本発明によれば、無機ナノ粒子は、式(I)のモノマー中に均一に分散される。すなわち、透過型電子顕微鏡法によって測定して、100nmを超える大きさを有する凝集物を形成しない。ナノ粒子を均一に分散することによって、日本工業規格番号K 7136−2000に準拠して測定して、硬化後のヘイズが5%未満である複合材料を得ることが可能になる。更に、この複合材料は透明である。
【0042】
無機ナノ粒子は、ZnS、ZrO
2、TiO
2、又はBaTiO
3から選択することができる。
【0043】
ナノ粒子は、当業者に広く知られた方法によって合成可能であるか、あるいは、粉末又はメタノールなどの溶媒における懸濁物の形態で商業的に入手可能である。
【0044】
例えば、60nmの粒径を有するメタノール中の懸濁液におけるTiO2ナノ粒子は、Sakai chemicalからSRD−2Mの商業上の名称で販売されている。
【0045】
例えば、35nmの粒径を有するメタノール中の懸濁液におけるZrO2ナノ粒子は、Sakai chemicalからSZR−Mの商業上の名称で販売されている。
【0046】
例えば、100nm(BET)未満の粒径を有する粉末の形態(立方結晶相)におけるBaTiO
3ナノ粒子は、Aldrichからチタン酸バリウム(IV)(CAS番号:12047−27−7)の商業上の名称で販売されている。
【0047】
本発明によれば、「粒径」は、動的光散乱(DLS)による測定で、最も高い粒子群の直径である。
【0048】
無機ナノ粒子の粒径は、好ましくは50nm未満、より好ましくは30〜5nmである。この大きさの範囲によって、最終的な高分子材料におけるヘイズを制限することができる。粒径は、例えば、Horiba SZ−100粒径測定装置を使用して、動的光散乱(DLS)によって測定可能である。
【0049】
好ましくは、ZnSのナノ粒子は、1種以上のチオール含有化合物で被覆される。好ましくは、ZnSのナノ粒子は、メルカプトエタノール、チオフェノール、メルカプトフェノール、又はこれらの混合物で被覆される。
【0050】
通常、ナノ粒子の屈折率は、以下の通りである。
− ZnS、せん亜鉛鉱、立方晶、n(589nm)=2.3691(Landolt−Bornstein Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology,III/30A,High Frequency Properties of Dielectric−Crystals.Piezooptic and Electrooptic Constants,Springler−Verlag,Berlin 1996):
【0051】
− BaTiO3、正方晶、常光線:n(589nm)=2.4405(Shannon,R.D.,Shannon,R.C.,Medenbach,O.,and Fischer,R.X.,“Refractive Index and Dispersion of Fluorides and Oxides”,J.Phys.Chem.Ref.Data 31,931,2002);
【0052】
− TiO2、ルチル、正方晶、常光線:n(589nm)=2.562(Shannon,R.D.,Shannon,R.C.,Medenbach,O.,and Fischer,R.X.,“Refractive Index and Dispersion of Fluorides and Oxides”,J.Phys.Chem.Ref.Data 31,931,2002);
【0053】
− ZrO2、正方晶、常光線:n(589nm)=2.20(Polymer Journal,2008,40,1157−1163)。
【0054】
ZnSナノ粒子の粒径は、10nm未満、好ましくは3〜6nmである。この大きさの範囲によって、最終的な高分子材料におけるヘイズを制限することができる。
【0055】
チオール含有化合物などのキャッピング剤を用いてZnSナノ粒子を調製する方法は、当業者に広く知られている。
【0056】
例えば、Zn(OAc)
2(Zn源)、キャッピング剤、及びチオ尿素(硫黄源)を、DMF(ジメチルホルムアルデヒド)、N,Nジメチルアセトアミド、又はDMSO(ジメチルスルホキシド)などの溶媒に溶解する(例えば、Zn(OAc)
22.5gを30mlDMFに溶解)。次いで、溶液を、窒素雰囲気下、加熱により還流させる。加熱プロセスの終了の際、透明な溶液を得る。粒子の特性に応じて、エタノール、アセトン、アセトニトリル、トルエン、又は水などの溶媒を、溶液に加えて、被覆されたZnSナノ粒子の沈殿を誘発する。沈殿させることによって、溶媒及び反応しなかったキャッピング剤からの粒子の分離が可能になる。溶媒は、カップリング剤に応じて選択される。典型的には、チオフェノールがカップリング剤として使用される場合、水を使用して被覆した粒子を沈殿させる。粒子を、遠心分離によって溶液から分離し、メタノール、アセトニトリル、又はトルエンを用いて洗浄することができる。例えば、Changli Lue、Yuanrong Cheng、Yifei Liu、Feng Liu、及びBai Yang(“A Facile Route to ZnS−Polymer Nanocomposite Optical Materials with High Nanophase Content via Gamma−Ray Irradiation Initiated Bulk Polymerization”,Adv.Mater.,2006,18,1188−1192.)に記載の方法を参照されたい。
【0057】
都合のよいことに、モノマー組成物への導入前にナノ粒子を溶媒中に分散させることを必要とするその他の方法とは対照的に、前述の方法は、モノマー組成物中に粉末形態のナノ粒子を分散させることを可能にする。
【0058】
適切なチオール含有化合物には、小さい分子、例えば、250g/モル未満のモル質量を有し、1つのチオール基を含み、且つ、(594nmにて)1.5を超える高屈折率を有する分子が含まれる。
【0059】
好ましくは、本発明のチオール含有化合物は、メルカプトエタノール、チオフェノール、メルカプトフェノール、又はこれらの混合物から選択される。
【0060】
ZnSの被覆されたナノ粒子を調製する場合、Zn源、チオール含有化合物、及びS源の相対的なモル量は、調製のプロセスの間、自己沈殿が発生しないように選択される。典型的には、Znに対するチオール含有化合物のモル比は、0.5〜3、好ましくは0.8〜2である。このモル比は、酢酸亜鉛の1モルに対するチオール含有化合物のモル数である。
【0061】
好ましくは、ZnSのナノ粒子は、メルカプトエタノール(ME)及びチオフェノール(PhS)の混合物で被覆される。Znに対するME及びPhSのモル比は、2.0〜0.1、より好ましくは0.6〜0.3である。ZnSナノ粒子がMEのみで被覆される場合、MEのZnに対するモル比は、1.3〜1.6である。
【0062】
好ましくは、PhSのMEに対するモル比は、0.5〜1、好ましくは0.5〜0.7,より好ましくはおよそ0.5である。
【0063】
ZnSのナノ粒子は、3〜10nm、より好ましくは3〜6nmである結晶の大きさを有する。結晶の大きさは、ウィリアムソン−ホール(Williamson−Hall)法に従って、XR回折によって求めることができる。
【0064】
前記チオール含有化合物で被覆されたZnSのナノ粒子は、4〜80nmである粒径を有する。被覆されたナノ粒子の粒径は、動的光散乱装置(HoribaのSZ−100)を用いる測定によって求めることができ、この装置を用いて求められる最も高い固体群の大きさに対応する。
【0065】
重合性組成物中の(必要な場合には被覆され、必要でない場合には被覆されていない)無機ナノ粒子の量は、液状重合性組成物の総質量に基づいて、5〜60%w/w、好ましくは10〜50質量%である。
【0066】
本発明の液状重合性組成物は、重合性組成物において通常使用されるその他の成分、例えば、他のモノマー、離型剤、光安定剤、抗酸化剤、染料抗着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、又は光学増白剤などを含むことができる。
【0067】
前述により定義したように、本発明の別の対象は、液状重合性組成物で被覆された光学基材である。
【0068】
本発明において、「被覆」又は「被覆する」は、通常の被覆のみならず、非球面効果を得るために、球面又は非球面ガラスレンズに設けられた非球面形状を有する樹脂層をも網羅すると解釈すべきである。典型的なこうした樹脂層は、米国特許第7,070,862号明細書において開示されている。
【0069】
光学基材は、光学分野で広く知られており使用されている任意の有機ガラスであってよい。これは、熱可塑性ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、又は、CR(登録商標)、ポリウレタン、又はポリチオウレタンなどの熱硬化性又は光硬化性樹脂であってよい。
【0070】
液状重合性被覆の厚さは、1μm〜1mmであり得る。
【0071】
本発明の別の対象は、
(a)光学基材と、
(b)前述で定義したとおりの、液状重合性組成物の熱及び/又は紫外線硬化によって得られた被覆と、
を含む光学物品である。
【0072】
本発明の別の対象は、液状重合性組成物を、光学物品のためのバルク材料として硬化することである。バルク材料としての硬化した液状重合性組成物の厚さは、1mm〜2cmであり得る。
【0073】
光学物品は、好ましくは、眼科用レンズ、サングラスレンズなどの光学レンズ、又は光学装置のためのその他の光学レンズ、最も好ましくは眼科用レンズである。光学物品には、偏光層、反射防止コーティング、可視光及び紫外線吸収コーティング、抗衝撃コーティング、耐摩耗性コーティング、抗汚れコーティング、抗霧コーティング、抗塵コーティング、調光コーティングなどの、機能性層が含まれ得、これらのすべては、当業者に馴染みのあるものである。
【0074】
液状重合性組成物の被覆は、浸漬コーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、又はスピンコーティングなどの、任意の適切な被覆方法によって、光学基材上に適用することができる。
【0075】
得られた層の硬化は、被覆された基材を紫外線及び/又は熱に曝すことによって行われる。硬化した層の屈折率は、例えば、0.01〜0.20高められ得る。
【0076】
本発明の別の対象は、
− 式(I)
【化3】
[式中、
RおよびR’は、同一又は異なり、水素原子又はメチル基を表し、
Xは、−O−、−S−、−NR1−、又は−CR2R3−であり、
R1は、アリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、又はヘテロアリールC1〜C6アルキルから選択され、
R2およびR3は、同一又は異なり、アリール、ヘテロアリール、アリールC1〜C6アルキル、ヘテロアリールC1〜C6アルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アリールC1〜C10アルキルオキシ、ヘテロアリールC1〜C10アルキルオキシ、アリールC1〜C10アルキルチオ、又はヘテロアリールC1〜C10アルキルチオから選択される]
のモノマーを含む液状モノマー組成物の熱及び/又は紫外線硬化によって得られる高分子材料の屈折率を高めるための、式(I)のモノマーの屈折率より高い屈折率、好ましくは2を超える屈折率を有する無機ナノ粒子の使用であって、
前記無機ナノ粒子が、前記モノマー組成物中に均一に分散され、かつ、
前記無機ナノ粒子が、式(I)のモノマーの屈折率より高い屈折率、好ましくは2を超える屈折率を有する、使用である。
【0077】
好ましくは、無機ナノ粒子は、ZnS、ZrO
2、TiO
2、又はBaTiO
3から選択される
【0078】
本発明を、以下の実施例において更に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するために提供されるものであり、本発明を限定するものと見なされるべきものでは決してない。
【実施例】
【0079】
1)チオール含有化合物で被覆されたZnSナノ粒子の調製
Zn(OAc)
2、キャッピング剤、及びチオ尿素(TUA)を、DMFに溶解する。次いで、この溶液を、窒素雰囲気下で160℃にて加熱により還流させる。加熱プロセスの終了の際、透明な溶液が得られる。この溶液を、メタノール、アセトニトリル、又は水に注ぎ、ZnSナノ粒子の沈殿を誘発させる。ZnSのナノ粒子を、遠心分離によって溶液から分離し、メタノール又はアセトニトリルを用いて2回洗浄する。粉末を、10時間、真空下にて乾燥する。
【0080】
この実験において使用するキャッピング剤は、メルカプトエタノール(ME)(60−24−2)およびチオフェノール(PhS)(108−98−5)である。
【0081】
Zn(OAc)
2、キャッピング剤、及びチオ尿素の相対モル量を表1に示す。
【0082】
キャッピング剤の量は、還流の間、及び混合物を冷却した後に、自己沈殿が発生しないように選択される。安定な分散をもたらす相対モル量を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
ZnSナノ粒子(被覆なし)の平均の結晶の大きさを、ウィリアムソン−ホール法に従って求めた。ZnSナノ粒子の平均の結晶の大きさを、4.5%の相対分散(XR回折によって測定)で3.58nmにて評価した。
【0085】
被覆されたZnSナノ粒子の粒径を、DMF中の分散物を冷却した後、Horiba SZ−100粒径測定装置を使用して測定した。結果は、4〜14nmの狭い粒径分布を有する約7nmの粒径を示している。この小さい粒径及び狭い粒径分布によって、最終的な複合物における光散乱を制限することが可能である。
【0086】
2)メタクリル酸無水物モノマー中に分散されたチオール含有化合物で被覆されたZnSナノ粒子を含む液状重合性組成物の調製
PhSおよびMEで被覆されたZnSナノ粒子を、超音波下にて60℃、バイアル内のメタクリル酸無水物(Aldrichから、CAS: 760−93−0、商品名メタクリル酸無水物で販売されている)に、1日の間に、さまざまな量(10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%)で導入した。均一な分散物が、最高で60質量%まで得られた。70質量%では、分散物は完全には均一ではなかった。実際に、100nmより大きなサイズを有するいくらかの凝集体が観察された。
【0087】
得られた組成物を、500μmのスペーサで隔てられた2つのガラス板の間に適用した。光重合を、1質量%のラジカル光開始剤(Irgacure184、BASF)の添加、及び、10分間(450mW.cm
−2)のHgランプによる照射を経て実施した。光重合を、2つのガラス基材の間で誘発させて、酸素による抑制を回避させた。500μmのシリコンスペーサを、2つのガラス基材の間に使用した。硬化した材料の得られた厚さは、500μmであった。60質量%および70質量%の組成物については、光重合をバイアル内で直接実施した。これは、組成物の粘度がガラス板を使用するためには高すぎたからである。
硬化した材料の屈折率(n)を、Metricon 2010M(プリズム結合法)を使用して離型後に測定した。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2のデータは、ポリマーの屈折率を、70質量%のZnS粒子を添加することによって、粒子を含まない同一のポリマーと比較して594nmで0.197高めることができることを示している。
【0090】
さらに、各波長において、ポリマーの屈折率は、ZnSナノ粒子の量の増加によって高められる。得られた最大の屈折率は、70質量%のZnS粒子の添加によって473nmにおいて1.746である。
【0091】
400nmにおける透過率を、紫外線可視分光光度計(Hitachi U−4100)を用いて測定した。
【0092】
ヘイズを、日本工業規格番号7136−2000に準拠して、紫外線可視分光光度計(Hitachi U−4100)を用いて離型後に測定した。
【0093】
前方拡散を、紫外線可視分光光度計(Hitachi U−4100)を用いて測定した。
【0094】
透過率、前方拡散、およびヘイズを、表3に示す。
【表3】
【0095】
表3のデータは、ナノ粒子の添加量(loading)が50質量%未満である場合、ヘイズが5%未満であり、メタクリル酸無水物へのZnSナノ粒子の良好な分散挙動を示すことを明らかにしている。ナノ粒子の添加量が50質量%を超える場合、ナノ粒子がいくらか凝集することによって、ヘイズが5%を超える。
【0096】
60質量%および70質量%では、透過率およびヘイズを測定することができなかった。
【0097】
図1は、ZnSナノ粒子の添加量(質量%)による屈折率(n)の変化を、それぞれ473nm、594nm、および654nmにおいて示す。
【0098】
図2は、各ZnS添加(質量%)についての波長(nm)による透明性(T)の変化を示す。
【0099】
図3は、各ZnS添加(質量%)についてのポリマーの前方拡散を示す。
【0100】
3)メタクリル酸無水物中に分散されたZrO
2ナノ粒子を含む液状重合性組成物の調製
5つの組成物を、メタクリル酸無水物(Aldrichから、CAS: 760−93−0、商品名メタクリル酸無水物で販売されている)に、ZrO
2/MeOHの懸濁液(MeOH中30質量%、Sakai chemicalから市販されている)から、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、及び50質量%のZrO
2をそれぞれ加え、次いで、この混合物に、3質量%のIrgacure184(BASFによって販売されているラジカル光開始剤)を加えることによって調製した。得られた組成物のメタノールを、減圧下にて蒸発させた。メタクリル酸無水物は、ZrO
2ナノ粒子を、最高で60質量%まで均一に分散させることができた。
【0101】
次いで、組成物をそれぞれ、500μmのスペーサで隔てられた2つのガラス板の間に適用した。光重合を、10分間(15mW.cm
−2)のHgランプによる照射によって実施した。光重合を、2つのガラス基材の間で誘発させて、酸素による抑制を回避させた。500μmのシリコンスペーサを、2つのガラス基材の間に使用した。
【0102】
得られた材料の屈折率及びアッベ数を表4に示す。
【0103】
【表4】
【0104】
表4のデータは、ポリマーの屈折率を、50質量%のZrO
2ナノ粒子を添加することによって、ナノ粒子を含まない同一のポリマーと比較して594nmで0.104高めることができることを示している。
【0105】
さらに、いずれの波長においても、ポリマーの屈折率は、ZnO
2ナノ粒子の量の増加によって高められる。得られた最大の屈折率は、50質量%のZnO
2粒子の添加によって473nmにおいて1.642である。
【0106】
表2のデータと表4のデータを比較から、ポリマーの屈折率の増大は、ZnO
2ナノ粒子を使用する場合よりZnSナノ粒子を使用する場合により大きいようである。
【0107】
400nmでの透過率、前方拡散、及びヘイズを、表5に示す。
【0108】
【表5】
【0109】
表5のデータは、ナノ粒子の添加量が50質量%未満である場合、ヘイズが5%未満であり、メタクリル酸無水物へのZnO
2ナノ粒子の良好な分散挙動を示すことを明らかにしている。
【0110】
4)N−フェニルジアクリルアミド中に分散されたZrO
2ナノ粒子を含む液状重合性組成物の調製
以下の化合物:
【化4】
を、文献(Org.Biomol.Chem.,2006,4,3973−3979)に記載のプロトコルに従って合成した。
【0111】
7つの組成物を、新たに調製したN−フェニルジアクリルアミドに、ZrO
2/MeOHの懸濁液(MeOH中30質量%、Sakai chemicalから市販されている)から、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、及び60質量%のZrO
2をそれぞれ加え、次いで、この混合物に、3質量%のIrgacure184(BASFによって販売されているラジカル光開始剤)を加えることによって調製した。得られた組成物のメタノールを、減圧下にて蒸発させた。N−フェニルジアクリルアミドは、ZrO
2ナノ粒子を、最高で30質量%まで均一に分散させることができた。
【0112】
次いで、組成物をそれぞれ、500μmのスペーサで隔てられた2つのガラス板の間に適用した。光重合を、10分間(15mW.cm
−2)のHgランプによる照射によって実施した。光重合を、2つのガラス基材の間で誘発させて、酸素による抑制を回避させた。500μmのシリコンスペーサを、2つのガラス基材の間に使用した。
【0113】
得られた材料の屈折率、アッベ数、透過率、及びヘイズを表6に示す。
【0114】
【表6】
【0115】
表6のデータは、ZrO
2が、重合性組成物中に最高で30質量%まで均一に分散されることを示している。より高い濃度では、凝集物が形成される。
【0116】
5)比較例
実施例1で調製したとおりのZnSナノ粒子を、以下の化合物に導入した。
− 2,5−ジペンタノン:分散が全く観察されなかった。これは、ナノ粒子への良好なキレート化を妨げる、カルボニル基間の電子的反発による可能性がある。
【化5】
− アセチルアセトン:分散が全く観察されなかった。これは、優勢な化学種が、分子内水素結合を形成した互変異性体であることによる可能性がある。
【化6】