特許第6291275号(P6291275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291275
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】貼付方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20180305BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20180305BHJP
   B30B 15/34 20060101ALI20180305BHJP
   B30B 15/32 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/02 C
   H01L21/02 Z
   B30B15/34 A
   B30B15/32
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-25858(P2014-25858)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-153885(P2015-153885A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 吉浩
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−239499(JP,A)
【文献】 特開2008−060318(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/016371(WO,A1)
【文献】 特開2011−175016(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/076874(WO,A1)
【文献】 特開平10−166185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B30B 15/32
B30B 15/34
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、接着剤層と、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体に押圧力を加えることにより、上記基板と上記支持体とを上記接着剤層を介して貼り付ける貼付方法であって、
一対のプレート部材に上記積層体を挟み込んで押圧する押圧工程と、
上記積層体を、上記一対のプレート部材のうち上側プレート部材に貼り付けさせながら、上記一対のプレート部材が上下に離間する離間工程と、
上記上側プレート部材の上記積層体に接する面に設けられた送出部から上記積層体に向かって気体を送出し、上記上側プレート部材に設けられた脱離部材によって上記積層体に力を加えることにより、上記上側プレート部材から上記積層体を脱離する脱離工程と、をこの順で包含し
上記脱離工程の後、上記脱離部材を用いて上記積層体を保持することを特徴とする貼付方法。
【請求項2】
基板と、接着剤層と、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体に押圧力を加えることにより、上記基板と上記支持体とを上記接着剤層を介して貼り付ける貼付方法であって、
一対のプレート部材に上記積層体を挟み込んで押圧する押圧工程と、
上記積層体を、上記一対のプレート部材のうち上側プレート部材に貼り付けさせながら、上記一対のプレート部材が上下に離間する離間工程と、
上記上側プレート部材の上記積層体に接する面に設けられた送出部から上記積層体に向かって気体を送出し、上記上側プレート部材に設けられた脱離部材によって上記積層体に力を加えることにより、上記上側プレート部材から上記積層体を脱離する脱離工程と、をこの順で包含し、
上記離間工程では、上記一対のプレート部材の間の距離が、1mm以上、5mm以下の範囲内の距離になるように離間することを特徴とする貼付方法。
【請求項3】
上記脱離部材は、上記上側プレート部材に設けられた上記送出部内に収納されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貼付方法。
【請求項4】
上記積層体に向かって送出する上記気体の量は、0.1m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の貼付方法。
【請求項5】
上記上側プレート部材の、上記積層体が接する面の平面度が、非押圧時において1.0μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の貼付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り付ける貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と支持体とを接着剤層を介して貼り付ける貼付技術として、例えば、特許文献1には、減圧プレス機における所定温度に加熱した上下一対の熱盤間に、半導体或いはセラミックスからなる無機基板を含む積層材と積層加工用の補助材料との組み合わせセットを設置して、上記組み合わせセットに上記一対の熱盤を接触させた後、少なくとも加圧開始から0.05MPaまでの低圧負荷を10秒間以上かけて行なう無機基板のプレス加工法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−192394号公報(2002年7月10日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、例えばウエハ基板等の基板と当該基板を支持する支持体とを接着剤層を介して貼り付けるために、特許文献1に記載されているような従来のプレス加工法を用いた場合には、以下の問題点が生じることが分かった。即ち、上下一対のプレート部材を備えたプレス機を用い、プレート部材で基板及び支持体を挟み込んで押圧すると、プレート部材と支持体又は基板とが密着する。このため、プレート部材及び支持体の平面度が高い場合、基板及び支持体がプレート部材に貼り付いた状態になることがある。
【0005】
ここで、プレート部材に貼り付いた基板及び支持体を、例えばピン等の冶具のみによってプレート部材から脱離させようとすると、ピンにより加えられた力によって基板が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板が破損することを防止しつつ、基板及び支持体をプレート部材から脱離することができる貼付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る貼付方法は、基板と、接着剤層と、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体に押圧力を加えることにより、上記基板と上記支持体とを上記接着剤層を介して貼り付ける貼付方法であって、一対のプレート部材に上記積層体を挟み込んで押圧する押圧工程と、上記押圧工程の後、上記一対のプレート部材のうち少なくとも一方のプレート部材の上記積層体に接する面に設けられた送出部から上記積層体に向かって気体を送出し、上記一対のプレート部材のうち少なくとも一方のプレート部材に設けられた脱離部材によって上記積層体に力を加えることにより、上記送出部が設けられたプレート部材から上記積層体を脱離する脱離工程と、を包含していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板が破損することを防止しつつ、基板及び支持体をプレート部材から脱離することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る貼付方法の概略を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る貼付方法に用いられる貼付装置の概略を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る貼付方法に用いられる一変形例に係る貼付装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る貼付方法は、基板と、接着剤層と、上記基板を支持する支持体とをこの順に積層してなる積層体に押圧力を加えることにより、上記基板と上記支持体とを上記接着剤層を介して貼り付ける貼付方法であって、一対のプレート部材に上記積層体を挟み込んで押圧する押圧工程と、上記押圧工程の後、上記一対のプレート部材のうち少なくとも一方のプレート部材の上記積層体に接する面に設けられた送出部から上記積層体に向かって気体を送出し、上記一対のプレート部材のうち少なくとも一方のプレート部材に設けられた脱離部材によって上記積層体に力を加えることにより、上記送出部が設けられたプレート部材から上記積層体を脱離する脱離工程と、を包含している。
【0011】
上記構成よれば、基板が破損することを防止しつつ、基板及び支持体をプレート部材から脱離することができる。
【0012】
<貼付方法>
図1及び図2を用いて本発明に係る貼付方法の一実施形態についてより詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る貼付方法の概略を説明する図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る貼付方法に用いられる貼付装置の概略を説明する図である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る貼付方法は、基板と、接着剤層と、基板を支持するサポートプレート(支持体)とをこの順に積層してなる積層体50に押圧力を加えることにより、基板と支持体とを接着剤層を介して貼り付ける貼付方法であって、一対のプレート部材2に積層体50を挟み込んで押圧する押圧工程(図1の(b))と、押圧工程の後、上記一対のプレート部材2のうち少なくとも一方のプレート部材の積層体50に接する面に設けられた送出部28から積層体50に向かって気体を送出し、一対のプレート部材2のうち少なくとも一方のプレート部材に設けられた脱離ピン(脱離部材)27によって積層体50に力を加えることにより、送出部28が設けられたプレート部材から積層体50を脱離する脱離工程(図1の(d))と、を包含している。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る貼付方法は、押圧工程の後、脱離工程の前に、一対のプレート部材2を互いに離間する離間工程を包含している(図1の(c))。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る貼付方法は、脱離工程の後、脱離ピン27を用いて積層体50を保持する(図1の(d)及び(f))。
【0016】
図1の(a)〜(f)に示す貼付方法は、図2に示す貼付装置を用いて実施するとよい。図2に示す貼付装置が備えている一対のプレート部材2は上下に離間し、送出部28及び脱離ピン27が上側に位置する上側プレート部材2bに設けられている。
【0017】
また、脱離ピン27は送出部28内に収納されている。ここで、脱離ピン27は、ピン27aとバネ27bとを備えており、バネ27bはピン27aを付勢している。また、送出部28からは気体が積層体50に向かって送出できるようになっている。ここで、気体は、外部から配管26及び供給口25を経て、上側プレート部材2bにおける連通流路24aから送出部28に供給される。
【0018】
また、上側プレート部材2bにおける積層体50が接する面には押圧プレート22が備えられており、下側プレート部材2aにおける積層体50が接する面には載置プレート12が備えられている。ここで、押圧プレート22及び載置プレート12において、積層体50が接する面の平面度は、非押圧時において1.0μm以下となるように設定されている。
【0019】
また、本実施形態に係る貼付方法は、真空条件において行なわれる。
【0020】
貼付装置によってサポートプレートに貼り付けられる基板には微細な回路が形成され得る。ここで、精度よく基板に回路素子を加工するためには、基板とサポートプレートとを接着剤層を介して貼り付けるときに、基板が撓みなく高い平面性を得るようにしてサポートプレートに貼り付けられることが求められる。また、基板とサポートプレートとが均一な厚さになるように貼り付けることが求められる。このため、基板とサポートプレートとの貼り付けによる積層体の形成は、真空条件下において、平面度の高いプレート部材2を用いて行なわれる。
【0021】
ここで、平面度の高いプレート部材2に挟み込むようにして、真空条件において基板とサポートプレートとを接着剤層を介して貼り付けると、プレート部材2と積層体50とにおける高い平面度のために、プレート部材2と積層体50との密着度が高くなる。このため、積層体50への押圧を終え、上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとを離間させても、積層体50が上側プレート部材2bに貼り付いて脱離しないことがある。ここで、冶具を用いてプレート部材から積層体50を脱離させようとすると基板が破損するおそれがある。
【0022】
本実施形態に係る貼付方法では、脱離工程において送出部28から積層体50に向かって気体を送出し、一対のプレート部材2のうち上側プレート部材2bに設けられた脱離ピン27によって積層体50に力を加える。これによって、積層体50に対して冶具によって過度に力を加えなくても、首尾よく積層体50を上側プレート部材2bから脱離することができる。従って、積層体50を上側プレート部材2bから脱離するときに基板が破損することを防止することができる。つまり、本実施形態に係る貼付方法では、平面性の高い積層体を形成するときにおいても、基板が破損することを防止しつつ、積層体50を上側プレート部材2bから脱離することができる。
【0023】
また、脱離ピン27は、脱離工程において気体を送出されることにより上側プレート部材2bから脱離した積層体50を、下側プレート部材2aに軽く押さえつけることによって保持する。これによって、積層体50が、下側プレート部材2aの上ですべることなく、位置ずれすることを防止できる。
【0024】
〔押圧工程〕
図1の(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る貼付方法が包含している押圧工程では、一対のプレート部材2に積層体50を挟み込んで押圧する。
【0025】
まず、図1の(a)に示すように、積層体50は、基板とサポートプレートとを接着剤層を介して重ね合わせた後、例えば、ロボットアーム等の搬送装置によって、貼付装置の載置プレート12に載置(セット)される。
【0026】
基板とサポートプレートとは、予め接着剤層を介して重ね合わせられた状態で、基板とサポートプレートとの相対位置がずれないように、仮止めされていることがより好ましい。或いは、基板とサポートプレートとは、例えば、ロボットアーム等の搬送装置によって、貼付装置のプレート部材上で接着剤層を介して重ね合わせられ、貼付装置の載置プレート12の上に載置されてもよい。
【0027】
なお、積層体50を形成する形成方法及び形成装置、つまり、接着剤層の形成方法や接着剤層形成装置、並びに、基板及びサポートプレートの重ね合わせ方法や重ね合わせ装置は、特に限定されるものではなく、種々の方法や装置を採用することができる。図1の(b)に示すように、積層体50は、貼付装置によって押圧力が加えられる時点で、基板と、接着剤層と、サポートプレートとがこの順に積層されて形成されていればよい。
【0028】
次に、図1の(b)に示すように、押圧工程では、貼付装置が備えている下側プレート部材2aに載置された積層体50を、上側プレート部材2bと下側プレート部材2aによって挟み込むようにして押圧する。ここで、押圧力は、図2に示す一対のプレート部材2を支持する支柱部材3によって一対のプレート部材2を介して積層体50に加えられる。
【0029】
押圧工程において、積層体50を直接的に挟み込む押圧プレート22及び載置プレート12は、積層体50が接する面の平面度が非押圧時において1.0μm以下となるように設定されている。このため、一対のプレート部材2に挟み込むようにして押圧される積層体50は、撓みがなく高い平面性を得ることができる。
【0030】
押圧工程では、積層体50に押圧力を加えるときに、積層体50を50℃以上、300℃以下の範囲の温度に積層体が備えている接着剤層を加熱することが好ましい。これによって、接着剤層の流動性を制御することができる。このため、接着剤層が均一な厚さになるように好適に積層体に押圧力を加えることができる。また、ガラス転移温度の高い接着剤を用いて積層体を形成することができるため、耐熱性の高い積層体を形成することができる。
【0031】
押圧工程において、積層体50に加える押圧力は、当該積層体の大きさに応じて適宜調整すればよい。なお、上記押圧力は、加圧装置(図示せず)によって、上側支持部材3b及び上側プレート部材2bを介して、積層体50に加えられる。
【0032】
また、押圧工程は、真空条件において行なうとよい。真空条件において、積層体50に押圧力を加えることで、回路素子等による段差が設けられた基板を用いて積層体50を形成する場合であっても、基板の段差にまで接着剤層を埋め込むことができる。押圧工程における真空条件は、0.1Pa以上、10Pa以下の範囲の条件であることが好ましい。これによって、積層体50における基板の段差にまで接着剤層を好適に埋め込むことができる。
【0033】
〔離間工程〕
図1の(c)及び(e)を用いて、本実施形態に係る貼付方法が包含している離間工程について説明する。図1の(c)は、離間工程の概略を説明する図であり、図1の(e)は、図1の(c)における破線部の領域eを拡大した図である。
【0034】
図1の(c)及び(e)に示すように、本実施形態に係る貼付方法は、上記押圧工程の後、上記脱離工程の前に、上記一対のプレート部材を互いに離間する離間工程を包含している。ここで、「離間」とは、近接する部材同士が、物理的に距離をとって離れることを言う。
【0035】
離間工程では、加圧装置(図示せず)が、上側支持部材3bを介して上側プレート部材2bを上方向に移動させることによって、上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとを離間する(図1の(c)及び図2)。これによって、積層体50は、一対のプレート部材2によって加えられた押圧力から解放される。
【0036】
また、離間工程では、上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとの間の距離が、1mm以上、5mm以下の範囲内の距離になるように上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとが離間されることが好ましく、2mm以上、4mmの範囲内の距離になるように上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとが離間されることがより好ましい。
【0037】
図1の(c)に示すように、この段階で、積層体50は押圧プレート22に貼り付いている。特に、上側プレート部材2bが備えている押圧プレート22の非押圧時の平面度が1.0μm以下である場合、押圧プレート22表面に積層体50が貼り付き易くなる。この場合、上側プレート部材2bが備えている脱離ピン27を付勢するバネ27bの付勢力に抗して、積層体50は上側プレート部材2bに密着している。また、図1の(e)に示すように、送出部28の開口部は、積層体50によって塞がれている。
【0038】
〔脱離工程〕
図1の(d)及び(f)を用いて、本実施形態に係る貼付方法が包含している脱離工程について説明する。図1の(d)は、脱離工程の概略を説明する図であり、図1の(f)は、図1の(d)における破線部の領域fを拡大した図である。
【0039】
図1の(d)に示すように、脱離工程では、上側プレート部材2bの積層体50に接する面に設けられた送出部28から積層体50に向かって気体を送出し、上側プレート部材2bに設けられた脱離ピン27によって積層体50に力を加える。これにより、送出部28が設けられた上側プレート部材2bから積層体50を脱離する(図1の(d))。
【0040】
送出部28から積層体50に向かって気体を送出することによって、積層体50と上側プレート部材2bとの密着性が低下する。また、積層体50と上側プレート部材2bとの密着性が低下するときに、脱離ピン27が備えているバネ27bの付勢力によって、積層体50は、上側プレート部材2bから離れる方向に力が加えられる。これによって、積層体50に対して脱離ピン27によって過度に力を加えなくても、首尾よく積層体50を上側プレート部材2bから脱離することができる。従って、積層体50を上側プレート部材2bから脱離するときに基板が破損することを防止することができる。つまり、平面性の高い積層体を形成するときにおいても、基板が破損することを防止しつつ、積層体50を上側プレート部材2bから脱離することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る貼付方法では、脱離工程の後、脱離ピン27を用いて積層体50を保持する。つまり、脱離工程において送出部28から気体を送出することにより、上側プレート部材2bから脱離した積層体50を、脱離ピン27によって下側プレート部材2aが備えている載置プレート12の上に軽く押さえつけることで保持する(図1の(d)及び(f))。これによって、上側プレート部材2bから脱離した積層体50が、脱離した衝撃によって位置ずれを起こすおそれを防止することができる。このため、積層体50を下側プレート部材2aの上に好適に保持することができる。
【0042】
また、離間工程において、上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとの間の距離が、1mm以上、5mm以下の範囲内の距離になるように上側プレート部材2bと下側プレート部材2aとが離間されていれば、脱離工程において、積層体50に過度な衝撃を与えることなく、脱離ピン27によって積層体50を下側プレート部材2aの上に好適に保持することができる。
【0043】
脱離工程において、積層体50に向かって送出される気体は、空気あってもよく、N、アルゴン等の不活性ガスであってもよい。また、空気又は不活性ガス等の気体は、大気圧に調整されていてもよく、圧縮(加圧)されていてもよい。また、脱離工程において、送出部28から積層体50に向かって気体を送出するタイミングは、離間工程によって、上側プレート部材2bが上方向に移動し始めた後であればよく、特に限定されない。
【0044】
ここで、積層体50に向かって送出する気体の量は、0.1m以下であることが好ましく、0.01m以下であることがより好ましい。なお、気体の量の下限値については、少しでも送出すればよく、少なければ少ないほど好ましく、0mより大きければよい。これによって、貼付装置が設けられているチャンバー内の減圧条件を好適に維持することができる。つまり、脱離工程の後に、押圧工程を行なうための減圧条件を改めて整える必要がない。従って、脱離工程後、速やかに次に貼り付ける積層体を貼付装置に搬入し、押圧工程を行なうことができる。つまり、速やかに次の積層体を貼り付けることができる。
【0045】
〔積層体50〕
貼付対象となる積層体50は、基板と、例えば熱可塑性樹脂を含む接着剤層と、上記基板を支持するサポートプレートとがこの順に積層されて形成されている。即ち、積層体50は、基板及びサポートプレートの何れか一方に接着剤が塗布されることによって、または、接着剤が塗布されてなる接着テープを貼着することによって接着剤層が形成された後、基板と、接着剤層と、サポートプレートとがこの順に積層されることによって形成されている。
【0046】
基板は、サポートプレートに支持された(貼り付けられた)状態で、薄化、搬送、実装等のプロセスに供される。基板は、ウエハ基板に限定されず、例えば、サポートプレートによる支持が必要なセラミックス基板、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板であってもよい。また、基板の表面には、回路素子等により段差が設けられていてもよい。
【0047】
サポートプレートは、基板を支持する支持体であり、接着剤層を介して基板に貼り付けられる。そのため、サポートプレートは、基板の薄化、搬送、実装等のプロセス時に、基板の破損または変形を防ぐために必要な強度を有していればよく、より軽量であることが望ましい。以上の観点から、サポートプレートは、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂、セラミック等で構成されていることがより好ましい。
【0048】
接着剤層を構成する接着剤は、例えば、加熱することによって熱流動性が向上する熱可塑性樹脂を接着材料として含んでいればよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、炭化水素系樹脂、エラストマー等が挙げられる。
【0049】
接着剤層の形成方法、即ち、基板またはサポートプレートに接着剤を塗布する塗布方法、或いは、基材に接着剤を塗布して接着テープを形成する形成方法は、特に限定されるものではないが、接着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ローラーブレード法、ドクターブレード法、スプレー法、スリットノズルによる塗布法等が挙げられる。
【0050】
接着剤層の厚さは、貼り付けの対象となる基板及びサポートプレートの種類、貼り付け後の基板に施される処理等に応じて適宜設定すればよいが、10〜150μmの範囲内であることが好ましく、15〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0051】
なお、基板からサポートプレートを剥離するときには、接着剤層に溶剤を供給して接着剤層を溶解すればよい。これにより、基板とサポートプレートとを分離することができる。このとき、サポートプレートに、その厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されていれば、この貫通孔を介して接着剤層に溶剤を容易に供給することができるので、より好ましい。
【0052】
また、基板とサポートプレートとの間には、貼り付けを妨げない限り、接着剤層以外の他の層がさらに形成されていてもよい。例えば、サポートプレートと接着剤層との間に、光を照射することによって変質する分離層が形成されていてもよい。分離層が形成されていることにより、基板の薄化、搬送、実装等のプロセス後に光を照射することで、基板とサポートプレートとを容易に分離することができる。
【0053】
〔貼付装置〕
本実施形態に係る貼付方法に用いられる貼付装置について、図2を用いてより詳細に説明する。図2に示すように、貼付装置では、プレート部材2は、円盤状の外観を有し、上下方向に配設された下側プレート部材2a及び上側プレート部材2bで構成されている。また、一対のプレート部材2は、支柱部材3によって支持されている。上側プレート部材2bは、脱離ピン(脱離部材)27及び送出部28を備えている。また、下側プレート部材2aは、搬送用ピン17を備えている。
【0054】
なお、図2に示す貼付装置は、貼付時に密閉することが可能で、吸引装置等を用いてその内部を減圧環境にすることができるチャンバー(図示しない)内に収容されている。これによって貼付方法を真空条件において行なうことができる。
【0055】
(下側プレート部材2a)
下側プレート部材(プレート部材)2aは、積層体と接する部位であって例えば基板側を下にして積層体が載置される載置プレート12と、支柱部材3の下側支持部材3aの中心支持部材31に固定される部位である支持プレート14と、載置プレート12と支持プレート14との間に設けられた中間プレート13とで構成されている。
【0056】
載置プレート12及び中間プレート13は、アルミナ等のセラミックスで形成されている。また、載置プレート12と中間プレート13との間には、下側プレート部材2aを加熱する、例えば面ヒータやリボンヒータ等の加熱装置(図示しない)が挟み込まれている。つまり、下側プレート部材2aは、加熱装置を内蔵している。また、下側プレート部材2aは、載置プレート12の表面の温度を測定する、例えば熱電対等からなる温度計16を備えている。
【0057】
上記支持プレート14は、ステンレス等の金属またはセラミックスや石等で形成されている。中間プレート13は、加熱装置と支持プレート14との短絡を防止する絶縁体としての機能を有している。また、支持プレート14が金属で形成されている場合は下側プレート部材2aの下側支持部材3aへの固定が容易となっている。なお、載置プレート12、中間プレート13及び支持プレート14は、複数のボルト及びナットで互いに固定されている。
【0058】
載置プレート12は、非押圧時の平面度が1.0μm以下となるように、その表面が形成されている。ここで、上記平面度とは、平面に対する凹凸の度合いを示す数値であり、「平面度が1.0μm以下」とは、非押圧時の載置プレート12(及び後述する押圧プレート22)表面の凹凸が±1.0μm以下であることを指す。また、載置プレート12は、押圧時の撓み量を低減することができるように、例えば35mm以上の厚さ(上下方向の厚さ)を有している。載置プレート12はセラミックスで形成されているので、その表面の平面度を1.0μm以下となるように容易に加工することができる。また、セラミックスは、金属と比較して、熱膨張率が小さいので加熱状態での押圧時の載置プレート12表面及び押圧プレート22表面の湾曲やゆがみ等を小さくすること、つまり、湾曲やゆがみ等が生じ難いので上記各表面の平面性(水平性)を維持することができる。
【0059】
(搬送用ピン17)
下側プレート部材2aは、さらに、積層体50の搬送時に積層体50を持ち上げる複数の搬送用ピン17を備えている。搬送用ピン17は、載置プレート12における積層体と接する部位に、搬送装置による搬送動作を容易にするために設けられている。
【0060】
搬送用ピン17は、押圧工程の前後において、搬送装置による積層体50の搬送動作を容易にするために、搬送時に積層体50を持ち上げる部材である。搬送用ピン17は、先端が丸く形成されたステンレス等の金属で構成されており、載置プレート12内部に移動可能に設置されている。そして、搬送用ピン17は、例えば制御部によって、積層体50を押圧しているときに載置プレート12内部に収容され、積層体50の押圧が解除されると載置プレート12表面から突出するように、その動作が制御されている。これにより、搬送用ピン17は、基板に疵を付けることなく、積層体50の搬送時に積層体50を載置プレート12表面から持ち上げることができる。
【0061】
(上側プレート部材2b)
上側プレート部材(プレート部材)2bは、積層体50と接する部位であって例えばサポートプレートを押圧する押圧プレート22と、支柱部材3の上側支持部材3bの中心支持部材41に固定される部位である支持プレート24と、押圧プレート22及び支持プレート24間に設けられた中間プレート23とで構成されている。
【0062】
押圧プレート22及び中間プレート23は、アルミナ等のセラミックスで形成されている。また、押圧プレート22と中間プレート23との間には、例えば面ヒータやリボンヒータ等の加熱装置(図示しない)が挟み込まれている。つまり、上側プレート部材2bは、加熱装置を内蔵している。また、上側プレート部材2bには、押圧プレート22の表面の温度を測定する、例えば熱電対等からなる温度計16が備えられている。
【0063】
上記支持プレート24は、ステンレス等の金属またはセラミックスや石等で形成されている。中間プレート23は、加熱装置と支持プレート24との短絡を防止する絶縁体としての機能を有している。また、支持プレート24が金属で形成されている場合は上側プレート部材2bの上側支持部材3bへの固定が容易となっている。なお、押圧プレート22、中間プレート23及び支持プレート24は、複数のボルト及びナットで互いに固定されている。
【0064】
また、支持プレート24には、連通流路24aが設けられている。連通流路24aは、供給口25を通じて配管26によってチャンバー(図示せず)の外部に連通している。連通流路24aは、貼付装置の外部から配管26及び供給口25を通じて供給された気体を、送出部28に供給することができる。これによって、貼付装置は、送出部28から積層体50に向かって気体を送出することができる。
【0065】
連通流路24aは、支持プレート24の中間プレート23が接する側の面に設けられ、押圧プレート22と中間プレート23とが互いに固定されることによって上側プレート部材2bの外部、つまり、チャンバーの内部と隔離されている。
【0066】
押圧プレート22は、非押圧時の平面度が1.0μm以下となるように、その表面が形成されている。また、押圧プレート22は、押圧時の撓み量を低減することができるように、例えば35mm以上の厚さ(上下方向の厚さ)を有している。押圧プレート22はセラミックスで形成されているので、その表面の平面度を1.0μm以下となるように容易に加工することができる。
【0067】
(脱離ピン27)
上側プレート部材2bは、押圧プレート22における積層体50と接する部位に、上側プレート部材2bへの積層体50の貼り付きを防止する複数の脱離ピン(脱離部材)27を備えている。
【0068】
脱離ピン27は、ステンレス等の金属で形成されており、図1の(e)及び(f)に示すように、ピン27aと、このピン27aを押圧プレート22表面から突出するように弾性的に付勢するバネ27bとを備えている。これにより、積層体50を押圧した後、下側プレート部材2a及び上側プレート部材2bを離間させたときに、積層体50に対し、上側プレート部材2bから離れる方向に力を加えることができる。
【0069】
また、ピン27aの積層体と接触する側の先端Aは、積層体に疵を付けないように丸められていることがより好ましい。また、脱離ピン27の配置数は特に限定されないが、積層体を安定して押圧し得る数が配置されていることが好ましく、一例において、押圧プレート22上に3箇所設けることができる。
【0070】
〔送出部28〕
送出部28は、押圧プレート22に設けられた孔であって、連通流路24aから供給された気体を積層体50に向かって送出する。送出部28が押圧プレート22から積層体に向かって気体を送出することにより、押圧プレート22に貼り付いた積層体50を首尾よく脱離することができる。
【0071】
また、図2に示すように、本実施形態に係る貼付方法に用いられる貼付装置では、脱離ピン27は、プレート部材2に設けられた送出部28内に収納されている。送出部28に脱離ピン27を収納し、送出部28から気体を送出することができるようにすることによって、貼付装置を簡素に構成することができる。また、押圧プレート22に設ける孔を少なくすることができる。
【0072】
(支持部材3)
支柱部材3は、上下方向に配設され、下側プレート部材2aを支持する下側支持部材3a、及び、上側プレート部材2bを支持する上側支持部材3bで構成されている。これら下側支持部材3a及び上側支持部材3bは、ステンレス等の金属またはセラミックスや石等で形成されている。
【0073】
下側支持部材3aは、土台30に固定され、下側プレート部材2aの少なくとも中心部を支持する中心支持部材31と、土台30に固定され、下側プレート部材2aの中心部以外を支持する複数の周辺支持部材32とで構成されている。そして、下側支持部材3aは、下側プレート部材2aを、載置プレート12の表面が水平になるように固定している。中心支持部材31の直径は、押圧時において下側プレート部材2aを支持するのに必要な強度を有していればよいが、下側プレート部材2aの熱を逃がさないように、より細い方が望ましい。下側支持部材3aが有する周辺支持部材32の個数は、下側プレート部材2aの熱を逃がすことなく、また、下側プレート部材2a全体をバランスよく支持するために、3〜10個の範囲内であることが好ましく、6個または8個であることがより好ましい。これら複数の周辺支持部材32は、下側プレート部材2a全体をバランスよく支持するために、つまり、載置プレート12の表面の水平を維持することができるように、互いに等間隔に配置されている。周辺支持部材32の直径は、押圧時において下側プレート部材2aの撓み量を低減するのに必要な強度を有していればよいが、下側プレート部材2aの熱を逃がさないように、より細い方が望ましい。
【0074】
上側支持部材3bは、積層体50を押圧する押圧力を付与する(荷重を掛ける)加圧装置(図示しない)に接続され、上側プレート部材2bの少なくとも中心部を支持する中心支持部材41によって構成されている。そして、上側支持部材3bは、上側プレート部材2bを、押圧プレート22の表面が水平になるように固定している。中心支持部材41の直径は、押圧時において上側プレート部材2bを支持するのに必要な強度を有していればよい。中心支持部材41は、加圧装置によって駆動されることにより、上下方向に移動可能となっている。従って、上側支持部材3bは、上側プレート部材2bを、積層体50に押圧力を加えるために移動自在に支持している。
【0075】
周辺支持部材32は、筒状部32aと、筒状部32aに収容された支持部32bとで構成されている。支持部32bは、筒状部32aに出入りすることにより、上側プレート部材2bの移動方向、即ち、上下方向に相対的に伸縮自在となっている。具体的には、支持部32bは、その先端部が支持プレート14に固定され、上側プレート部材2bによる押圧力に抗して下側プレート部材2aを押圧して、下側プレート部材2aの撓み量を低減することができるように、例えば、0.1μm単位で伸縮自在となっている。
【0076】
支持部32bは、載置プレート12表面の平面度が、例えば、1.0μm以下となるように、つまり、載置プレート12表面の湾曲やゆがみ等を補正して当該載置プレート12表面の平面性(水平性)を維持するようになっている。例えば、工具等を用いた手動でその伸縮動作が行なわれ、載置プレート12表面の湾曲やゆがみ等を補正して当該載置プレート12表面の平面性を維持することができる。なお、非押圧時における載置プレート12表面の湾曲やゆがみ等を補正する構成や方法は、特に限定されるものではなく、載置プレート12表面の平面性を維持することができるのであれば、種々の構成や方法を採用することができる。
【0077】
なお、手動による支持部32bの伸縮動作は、様々な基準に基づいて行なうことができる。例えば、載置プレート12の下側にマイクロメーターを配設し、当該マイクロメーターの測定値に基づいて、載置プレート12の湾曲やゆがみ等を補正するように支持部32bを伸縮させてもよい。また、プレート部材2に圧力分布測定器(センサシート)を押圧させ、当該圧力分布測定器の測定結果に基づいて、圧力分布に偏りが無くなるように支持部32bを伸縮させてもよい。また、プレート部材2によって基板にサポートプレートが貼り合わされてなる積層体を実際に押圧した後に、当該積層体の平面度を測定し、その測定結果に基づいて、押圧して得られる積層体の平面度が向上するように支持部32bを伸縮させてもよい。
【0078】
〔貼付装置における変形例〕
本発明に係る貼付方法に用いられる貼付装置は、図2に示す貼付装置の構成に限定されない。例えば、以下に挙げる構成の貼付装置を用いることもできる。
【0079】
(変形例1)
図3の(a)に示すように、貼付装置の一変形例(変形例1)では、図2に示す貼付装置と異なり、供給口25及び配管26が、支持プレート24の側面部ではなく、上面部に設けられている。また、配管26は、中心支持部材41の上部に設けられた連通流路を介して、チャンバーの外部に連通している。これによって、支持プレート24に設けられた連通流路24aを介して、送出部28に気体を送出することができる。このため、図3に示す貼付装置では、チャンバーの内部における配管26の長さを短縮することができる。従って、貼付装置が設けられているチャンバー内の空間をより広くすることができる。また、図3に示す貼付装置では、上側プレート部材2bの昇降に連動して、配管26も昇降するため、配管26が伸縮しない。つまり、図3に示す貼付装置では、上側プレート部材2bの昇降によって配管26に負荷がかかることを防止できる。
【0080】
ここで、図3の(b)に示すように、連通流路24aは、支持プレート24の中間プレート23が接する側の面に設けられている。また、連通孔aによって供給口25及び配管26に連通している。また、連通孔bによって、中間プレート23を経て押圧プレート22に設けられた送出部28に連通している。これによって、チャンバーの外部から送出部28から気体を送出することができるようになっている。
【0081】
支持プレート24に設けられた連通流路24aを構成する溝は、深さが0.5mm以上、1mm以下の範囲内であることが好ましい。また、連通流路24aを構成する溝の幅は、5mm以上、12mm以下の範囲内であることが好ましい。また、連通流路24aから供給口25及び配管26に連通する連通孔aの直径は、2mm以上、4mm以下の範囲内であることが好ましい連通流路24aの深さ及び幅、並びに連通孔aの直径を上記の範囲に設定することによって、脱離工程において、過剰な量の気体が積層体に向かって送出されることを防止することができる。なお、図2に示す貼付装置の連通流路24aにおいても、連通流路24aの溝の深さ及び幅並びに連通孔aの直径について図3に示す貼付装置と同じ条件を適用することができる。
【0082】
なお、図3に示す貼付装置において、図2に示す貼付装置と同じ部材番号を有する他の部材については、同じ機能を有するためその説明を省略する。
【0083】
(変形例2)
また、さらに別の貼付装置の一変形例(変形例2)として、積層体50に押圧力を加えたときに生じるプレート部材2の撓み量を検知する検知部(図示しない)と、検知部が検知した撓み量が相殺されるように周辺支持部材32を伸縮させる制御部(図示しない)とを備えた貼付装置を用いてもよい。
【0084】
具体的には、検知部は、例えばCCDやCOMS等の撮像素子を複数備え、プレート部材2、つまり、載置プレート12及び押圧プレート22を撮像することにより、その撓み量を非接触で検知することができるように構成され得る。CCDやCOMS等の撮像素子を用いることにより、検知部の検知限界を1.0μmにすることが可能である。上記撓み量は、載置プレート12の中心部または押圧プレート22の中心部を基準として検知することができる。また、検知部は、撮像素子を複数備える構成の替わりに、プレート部材2に内蔵された例えば圧力センサ等のセンサを複数備え、載置プレート12及び押圧プレート22に掛かる圧力分布を測定することにより、その撓み量を検知することができるように構成されていてもよい。
【0085】
制御部は、検知部の検知結果(測定結果)に基づき、載置プレート12の中心部または押圧プレート22の中心部を基準として、載置プレート12の周辺部及び押圧プレート22の周辺部の撓み量が1.0μm以下となるように、即ち、撓み量が検知部による例えば検知限界以下となるように、周辺支持部材32の支持部32bの伸縮動作を高ギア比でパルス制御するように構成することができる。つまり、検知部及び制御部を備えた本変形例に係る貼付装置を用いれば、積層体50への押圧時、つまり、基板と支持体との貼り付け時に、載置プレート12の周辺部及び押圧プレート22の周辺部の撓み量をフィードバック制御して補正することができる。このため、基板と支持体とを接着剤層を介して均一に貼り付けることが可能となる。なお、支持部32bの伸縮動作の制御は、上述したパルス制御に限定されず、例えば、パルス制御以外の方法でモータ制御してもよいし、ロードセルを配置してフィードバック制御してもよい。
【0086】
また、制御部は、非押圧時においても、周辺支持部材32の支持部32bの伸縮動作を制御するように構成してもよい。つまり、支持部32bは、押圧動作に関係無く、常時、載置プレート12表面及び押圧プレート22表面の湾曲やゆがみ等を補正して当該載置プレート12表面及び押圧プレート22表面の平面性(水平性)を維持するように、その伸縮動作が制御部によって制御されるように構成してもよい。なお、制御部は、非押圧時には、例えば工具等を用いた手動で支持部32bの伸縮動作を行なうことができるように、当該支持部32bの伸縮動作のパルス制御を解除する構成となっていてもよい。
【0087】
(変形例3)
また、さらに別の貼付装置の一変形例(変形例3)では、上側支持部材3bも、下側支持部材3aと同様に、周辺支持部材を備えていてもよい。即ち、複数の周辺支持部材が、中心支持部材41に設けられ、上側プレート部材2bの中心部以外を支持するように構成されていてもよい。
【0088】
上側支持部材3bが有する周辺支持部材の個数は、上側プレート部材2bの熱を逃がすことなく、また、上側プレート部材2b全体をバランスよく支持(押圧)するために、3〜10個の範囲内であることが好ましく、6個または8個であることがより好ましい。これら複数の周辺支持部材は、上側プレート部材2b全体をバランスよく支持(押圧)するために、つまり、押圧プレート22の表面の水平を維持することができるように、互いに等間隔に配置されている。これらの周辺支持部材の直径は、押圧時において上側プレート部材2bの撓み量を低減するのに必要な強度を有していればよいが、上側プレート部材2bの熱を逃がさないように、より細い方が望ましい。
【0089】
また、上記の周辺支持部材は、周辺支持部材32と同様、筒状部と、筒状部に収容された支持部とで構成され得る。支持部は、筒状部に出入りすることにより、上側プレート部材2bの移動方向、即ち、上下方向に相対的に伸縮自在となっている。具体的には、支持部は、その先端部が支持プレート24に当接され(必要に応じて固定され)、上側プレート部材2bによる押圧力に抗して当該上側プレート部材2bの撓み量を低減することができるように、例えば、0.1μm単位で伸縮自在となっている。支持部は、例えば工具等を用いた手動でその伸縮動作が行なわれ、押圧プレート22表面の湾曲やゆがみ等を補正して当該押圧プレート22表面の平面性を維持することができる。
【0090】
なお、非押圧時における押圧プレート22表面の湾曲やゆがみ等を補正する構成や方法は、特に限定されるものではなく、押圧プレート22表面の平面性を維持することができるのであれば、種々の構成や方法を採用することができる。例えば、上記変形例のように貼付装置が検知部及び制御部を備え、制御部が、周辺支持部材32の支持部32bに加えて、上側支持部材3bが有する周辺支持部材の支持部の伸縮動作を同様に制御するように構成してもよい。
【0091】
(変形例4)
また、さらに別の貼付装置の一変形例(変形例4)では、貼付装置は脱離工程において積層体50の位置ずれを生じたとき、積層体の位置ずれを検知する位置ずれ検知手段(図示せず)を備えていてもよい。これにより、脱離工程において積層体が位置ずれすることによる不具合を迅速に検知することができる。
【0092】
位置ずれ検知手段としては、例えば、光ファイバーセンサを挙げることができる。光ファイバーセンサは上側プレート部材2bにおける押圧時に積層体が接する位置の端部から外側に向かって0.5mm以上、5mm以下の範囲内の幅で複数設けるとよい。また、下側プレート部材2aには、複数の光ファイバーセンサが照射する光を反射する反射鏡を複数設けるとよい。ここで、上側プレート部材2bに設けられた複数の光ファイバーセンサと下側プレート部材2aに設けられた複数の反射鏡とは、それぞれ一対一で対向するように設けるとよい。
【0093】
これによって、光ファイバーセンサが照射した光が反射鏡によって反射され、全ての光ファイバーセンサにおいて検知されれば、光ファイバーセンサは積層体50が所定の位置からずれていないと判断する。また、複数の光ファイバーセンサが照射した光が、少なくとも1箇所において積層体50により遮断されれば、光ファイバーセンサは積層体50が所定の位置からずれていると判断する。これによって、脱離工程における積層体50の位置ずれを検知し、積層体製造時の不具合を防止することができる。
【0094】
貼付装置は、光ファイバーセンサ及び反射鏡を、少なくとも3組設けることによって、積層体の位置ずれを検知できるようにすればよい。なお、下側プレート部材2aに光ファイバーセンサを設け、上側プレート部材2bに反射鏡を設ける構成にしてもよいことは言うまでもない。
【0095】
<貼付方法における別の実施形態>
本発明に係る貼付方法は、上記実施形態に限定されない。例えば、別の実施形態に係る貼付方法が包含している脱離工程では、例えば、下側プレート部材2aに貼り付いた積層体50を脱離工程において脱離してもよい。
【0096】
この場合、一例として、下側プレート部材2aに設けられた搬送用ピン17にバネを設け、搬送用ピン17を収納する凹部に外部から気体を送出するようにしてもよい。これによって、搬送用ピン17を収納する凹部を送出部として用いることができ、搬送用ピン17を脱離ピンとして用いることができる。このため、上側プレート部材2bに積層体50が貼り付いたときと同様に、下側プレート部材2aから積層体50を脱離することができる。なお、下側プレート部材2aに送出部28と脱離ピン27とを備えた貼付装置を用いて脱離工程を行ない、下側プレート部材2aに貼り付いた積層体50を脱離してもよいことは言うまでもない。
【0097】
また、さらに別の実施形態に係る貼付方法が包含している脱離工程では、例えば、上側プレート部材2bに貼り付いた積層体50に向かって、上側プレート部材2bに設けられた送出部から気体を送出し、下側プレート部材2aに設けられた脱離ピンを用いて積層体50に力を加えてもよい。本実施形態に係る貼付方法においては、図1の(e)及び(f)に示す下側プレート部材2aに設けられた脱離ピンの先端Aに、例えば、吸盤等の吸着部材を設け、この吸着部材を用いて、上側プレート部材2bから離れる方向に向かって積層体50に力を加えてもよい。また、脱離工程後、吸着部材によって積層体50を吸着することにより下側プレート部材2aの上に積層体50を保持してもよい。
【0098】
なお、下側プレート部材2aに積層体50が貼り付く場合には、下側プレート部材2aに、積層体50に向かって気体を送出する送出部を設け、上側プレート部材2bに吸着部材を備えた脱離ピンを設ける構成にしてもよい。これによって、下側プレート部材2aから積層体50に向かって気体を送出することができる。また、上側プレート部材2bに設けられた吸着部材を備えた脱離ピンによって、下側プレート部材2aから離れる方向に積層体50に力を加えることができる。従って、本発明に係る貼付方法が包含している脱離工程を好適に行なうことができる。
【0099】
また、一実施形態に係る押圧工程及び脱離工程では、上側プレート部材2bを固定し、加圧装置によって下側プレート部材2a及び下側支持部材3aを上下方向に駆動させることによって当該両工程を行なってもよい。また、押圧工程及び脱離工程は、下側プレート部材2a及び上側プレート部材2bを上下方向に駆動させることによって行なわれてもよい。
【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例】
【0101】
〔積層体の脱離性の評価〕
本発明に係る貼付方法により、上側プレート部材に貼り付いた積層体の脱離性の評価を行なった。なお、貼付装置としては、図2に示す構成を備えた貼付装置を用いた。
【0102】
半導体ウエハ基板(12インチ、シリコン)にTZNR(登録商標)−A4017t(東京応化工業株式会社製)をスピン塗布し、90℃、160℃、220℃の温度で各4分間ベークし、接着剤層を形成した(膜厚50μm)。
【0103】
次いで、サポートプレートとして、ベアガラス支持体(12インチ、厚さ700μm)を用い、フルオロカーボンを用いたプラズマCVD法によりサポートプレートの上に分離層を形成した。分離層形成工程の条件として、流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてCを使用したCVD法を行なうことによって、分離層であるフルオロカーボン膜(厚さ1μm)をサポートプレート上に形成した。
【0104】
次に、サポートプレート、分離層、接着剤層、及びウエハ基板がこの順になるように重ね合わせ、真空下、4000kgfの貼付圧力で50秒間押圧することでサポートプレートとウエハ基板とに押圧力を加えた(押圧工程)。
【0105】
その後、上側プレート部材を上方に移動させることによって、上側プレート部材と下側プレート部材とを離間させた(離間工程)。なお、ここで、上側プレート部材に貼り付いた積層体と下側プレート部材との間の距離が2mmとなるように、離間工程を行なった。
【0106】
その後、上側プレート部材に設けられた送出部から大気圧の空気を0.1m送出し、脱離工程を行なった。上記貼付方法を10回行ない、上側プレート部材への積層体の貼り付きの有無と、上側プレート部材に積層体が貼り付いたときの脱離工程による積層体の脱離性とを評価した。また、脱離工程においては、積層体が2mm以上の位置ずれを生じるか否かについて、貼付装置が備えている光ファイバーセンサを用いて評価を行なった。
【0107】
〔結果〕
上側プレート部材への積層体の貼り付きの有無と、上側プレート部材に積層体が貼り付いたときの脱離工程による積層体の脱離性とについての結果を表1に示す。表1における上側プレート部材への積層体の貼り付きについては、脱離工程前に積層体が上側プレート部材に貼り付いていた場合を(×)として、積層体が上側プレート部材に貼り付かなかった場合を(○)として評価した。また、積層体の脱離性については、脱離工程によって基板の破損がなくかつ基板の位置ずれもなく積層体が脱離した場合を(○)として評価した。なお、表1の積層体の脱離性の欄における(−)は、離間工程を行なった段階において、積層体が上側プレート部材に貼り付いていなかったため、脱離工程を行なわなかったことを意味する。
【0108】
【表1】
【0109】
上記の評価結果から、上側プレート部材に積層体が貼り付いても、脱離工程を行なうことによって、基板を破損することなく上側プレート部材から積層体を首尾よく脱離できることが確認できた。
【0110】
また、脱離工程を行なったときに、積層体の位置ずれ検出エラーも発生しなかった。従って、下側プレート部材の上に、上側プレート部材2bから脱離した積層体50が位置ずれを起こすことなく保持されていることが確認できた。
【0111】
また、脱離工程を行なった後の、チャンバーの内部の真空条件は、10Pa程度に維持されており、連続的に積層体を貼り付けることができる条件に維持されていることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る貼付方法は、例えば、微細化された半導体装置の製造工程において広範に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
2 プレート部材
2a 下側プレート部材(プレート部材)
2b 上側プレート部材(プレート部材)
27 脱離ピン(脱離部材)
27a ピン(脱離部材)
27b バネ(脱離部材)
28 送出部
50 積層体
図1
図2
図3