特許第6291395号(P6291395)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291395
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】光学式位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20180305BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20180305BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   G01D5/347 110X
   G01D5/245 110X
   G01B11/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-204539(P2014-204539)
(22)【出願日】2014年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-75488(P2015-75488A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年10月3日
(31)【優先権主張番号】10 2013 220 196.6
(32)【優先日】2013年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ドレシャー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイスナー
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/038752(WO,A1)
【文献】 特開2012−233883(JP,A)
【文献】 特開2011−3874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/38
G01B 9/00−9/10
G03F 7/20−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定基準器(10;110;210)と、
測定基準器に対して相対的に少なくとも1つの測定方向に沿って移動可能な走査ユニット(20;120;220;320)と、を備え、
変位に応じた信号を生成するために使用される走査光路が測定基準器(10;110;210)と走査ユニット(20;120;220;320)との間に形成されている光学式位置測定装置において、
保護カバー(30;130;230;330)が、測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って移動可能に配置され、それにより、少なくとも1つの作動モードで、前記保護カバー(30;130;230;330)が走査ユニット(20;120;220;320)と測定基準器(10;110;210)との間の走査光路を広範囲に包囲し、
前記保護カバー(30;130;230;330)が、エネルギー供給が停止した場合に前記保護カバーと前記測定基準器との間の最大限に可能な間隔を自動的に設定する戻し手段を含む
ことを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)と前記測定基準器(10;110;210)との間の間隔が、
‐第1作動モードで、少なくとも前記走査光路が屈折率変動に対して敏感である空間領域においては前記保護カバー(30;130;230;330)が前記走査ユニット(20;120;220;320)と前記測定基準器(10;110;210)との間の走査光路を遮蔽する間隔値となるように設定可能であり、
‐少なくとも1つの第2作動モードで、前記第1作動モードよりも大きい間隔値となるように設定可能である位置測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)にエアベアリング(170)が組み込まれており、該エアベアリングにより、前記第1作動モードで前記保護カバー(30;130;230;330)と前記測定基準器との間の間隔値が一定となるように設定可能である位置測定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の位置測定装置において、
前記軸線に沿って前記保護カバー(30;130;230;330)を規定どおりに位置決めするために、磁気式または空圧式のアクチュエータ手段が設けられている位置測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)と前記測定基準器(10;110;210)との間の間隔が、走査ユニット(20;120;220;320)が配置された位置決めステージの位置とは無関係に一定に保持される位置測定装置。
【請求項6】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記戻し手段が、前記保護カバー(30;130;230;330)に機械的に予荷重を加えることのできるばね部材(43)として構成されている位置測定装置。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)の外形が、保護カバーの周囲を流れる空気により空気渦流が生じないように構成されている位置測定装置。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)の外形が、保護カバーの周囲を流れる空気により測定基準器(10;110;210)に力が伝達されないように構成されている位置測定装置。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)に少なくとも1つの流れ部材が配置されており、該流れ部材が、走査ユニット(20;120;220;320)が配置されたウェーハ・ステージの所定の速度で前記流れ部材における動的圧力により前記保護カバー(30;130;230;330)にかかる背圧および吸引圧力が相殺されるように構成されている位置測定装置。
【請求項10】
請求項に記載の位置測定装置において、
前記流れ部材が、前記保護カバー(30;130;230;330)の側方に配置された空気偏向板として構成されている位置測定装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)が前記測定基準器平面に対して垂直方向の前記軸線を中心として回動可能に配置されている位置測定装置。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)が前記測定基準器平面に対して垂直方向の前記軸線に沿って延在し、該軸線に沿って、前記測定基準器(10;110;210)と前記走査ユニット(20;120;220;320)との間の間隔よりもわずかに小さい寸法を有している位置測定装置。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)が円筒状に形成されており、円筒軸線が前記測定基準器平面に対して垂直方向の前記軸線に沿って延在している位置測定装置。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の位置測定装置において、
前記保護カバー(30;130;230;330)が、前記測定基準器(10;110;210)に向いた側に、開口または透光性のカバー部材を備えている位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに移動する2つの物体の相対位置を高精度に決定するために適した光学式位置測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新世代のウェーハ・スキャナでは、格子に基づいた光学式位置測定装置を使用して、固定された、いわゆる「計測フレーム」に対して移動されるウェーハ・ステージの位置を測定する。この場合、適宜な位置測定装置の走査ユニットは、移動されるウェーハ・ステージもしくは位置決めステージ上に位置し、6つの空間的自由度全てにおける位置を測定する。このようなウェーハ・スキャナは極めて動的な機械である。すなわち、移動されるウェーハ・ステージは、移動速度v>1m/sにより移動され、重力加速度の何倍もの加速度により加速される。使用される光学式位置測定装置の測定精度に対する要求は、この場合、極めてわずかな直径範囲である。
【0003】
要求される精度を実現するためには、例えば出願人の欧州特許出願公開第1762828号明細書により既知の干渉式に作動する位置測定装置をウェーハ・ステージで使用する。このような位置測定装置では、変位に応じた信号を生成するために用いられる走査光路が測定基準器と走査ユニットとの間に形成される。このために、走査ユニットから測定基準器へ光が送信され、この光は測定基準器で+/−1の回折次数もしくは回折アームで分割される。空間的に分離された回折次数は、走査ユニットで方向を反転され、再び測定基準器に到達し、そこで干渉する。得られた干渉信号を、互いに対して移動する物体の位置に関して評価することができる。
【0004】
位置情報は、両方の回折次数の位相状態で互いに符号化されている。したがって、測定基準器の回折格子の位相状態の他に、両方の回折アームの相互の位相遅れも、測定された位置値に取り入れられる。この位相遅れは、例えば、測定基準器と走査ユニットとの間の空気の乱流により生じる屈折率変動による影響を受け、乱流の広がりは両方の回折次数の相互間隔よりも小さい。これらの乱流は、一般に複数の走査ユニットが配置されたウェーハ・ステージの移動により主に引き起こされる。空気の乱流により引き起こされるこの位置雑音は、極めて動的な機械では格子に基づいた位置測定装置における補正不可能な最大のエラー部分の原因となる。したがって、このような用途では、位置測定に対するエラーの影響を最小限に留めるか、または完全に除去するという課題が生じる。
【0005】
干渉式に作動する典型的な光学式位置測定装置では、測定基準器が1〜3mmの直径を備えるコリメートされた光線束によって照射される。測定基準器によって反射される一次の回折次数の部分光線束の典型的な回折角度は、15〜30°である。したがって、重要な位相情報を生成するために用いられる両方の回折次数の分離は、次の規則:
d=2×tan(φ)×h
にしたがって、測定基準器との間隔と共に増大し、この場合、
dは、両方の部分光線束の間隔であり、
φは、回折次数の回折角度であり、
hは、測定基準器との間隔である。
【0006】
同じ屈折率を備える個々の領域の大きさ(乱流の大きさ)は、約1m/sの流体速度を備える空気が移動された場合には、一般に2〜5mmである。
【0007】
後に干渉する2つの部分光線束の空間的分離が乱流の大きさよりも大きい場合には、屈折率変動は測定された位相にはっきりと移行する。実質的に重なり、空間的分離が乱流の大きさよりも著しく小さい部分光線束は等しい屈折率変動を示し、したがって位置測定エラーは生じない。
【0008】
したがって、一般的なシステムでは、この変動が測定基準器に隣接する領域に制限されている場合には、測定された位置は屈折率の変動の関数ではない:
d<<r、したがってh<<r/(2×tan(φ))、一般にh<<1.7mm
により、これらの関係では同じ屈折率を備える領域の大きさが示される。
【0009】
間隔d≒1.7mmまでの測定基準器の近傍では、両方の部分光線束の分離は、均一な屈折率を備える領域の大きさrよりも小さく、したがって、この領域では、屈折率安定化のためのさらなる措置は不要である。測定基準器からさらに離れた領域では、測定基準器によって回折された部分光線束は空間的に互いに分離されており、これらは異なる空気の乱流を示し、これらの空気の乱流は屈折率の異なる変動、ひいては測定された位置測定値の変動をもたらす場合もある。
【0010】
したがって、上記問題を解決するためには、測定基準器に対して約1mmの間隔まで走査ユニットとの間の領域の屈折率を均一に保持する必要がある。測定基準器の付近では、均一化は必ずしも必要ではない。
【0011】
このような不都合な影響を減じる簡単な方法は、測定基準器と走査ユニットとの間の走査間隔を最小化することである。これにより、少量の空気のみが影響を及ぼすことになり、蓄積される位相誤差もわずかになる。この場合、自由な空気量を制限し、全ての光線束が走査光路で互いに密接し、この寸法が空気渦流の一般的な大きさを上回るようにすることが目的である。したがって、全ての光線束はほぼ同じ屈折率を示す。しかしながら、これは、例えば、ウェーハ交換などの際にロボットアームのために必要なスペースを確保し、これにより衝突を防止するために、局所的に制限された機械領域において大きい走査間隔が不可避であることと矛盾する。同様に、例えば、機械の一方の位置から他方の位置へウェーハ・ステージを入れ換える際、またはステージを緊急停止させる必要がある場合に、(まだ位置測定装置において調整されていないので)比較的大きい初期傾斜許容差を備える位置決めステージが、測定基準器を備えるプレートの下方を移動される場合などの所定の作動状況では、大きい走査間隔は不可欠である。しかしながら、これら全ての状況は、高精度を必要としない機械の作動モード、またはステージが極めて低い移動速度で移動され、したがって空気渦流が著しく少ない作動モードで生じる。
【0012】
これらの問題を解決するために、いわゆる「空気シャワー」により光路の空気を調整することが従来技術により既知である。これにより、位置測定装置の走査光路にできるだけ均一で、しかも一定の屈折率を生じさせることが試みられる。このような調整は2つの形式で行うことができる。
【0013】
一方では、例えば干渉計で行われるように、ウェーハ・ステージの移動領域全体において空気を調整することができる。格子に基づいた位置測定装置では、走査ユニットと測定基準器との間の測定量を局所的にのみ調整することもできる。この空気シャワーの目的は、緩慢で、大きい、もしくは空間的に広がった屈折率変動を減じ、さらに空気の乱流を防止し、位置決めステージの移動により、空気シャワーによる空気流れによって、走査ユニットと測定基準器との間の位置決めステージの移動により押しのけられる空気のできるだけ層状の流れおよび/または遮蔽をもたらすことである。この目標を達成するためには、空気の比較的大きい流体速度が必要である。このような解決方法では、空気を完全に均一にすることができないことが欠点である。ウェーハ・ステージの移動により、位置ずれをもたらす局所的な乱流、ひいては屈折率変動が常に生じる。さらに、空気シャワーによる高い流体速度により、ウェーハ・ステージの移動速度とは無関係に屈折率変動が生じ、これにより一般に高い測定雑音が生じる。
【0014】
他方では、屈折率が圧力にあまり依存しない特殊なガスを使用して屈折率変動を減じる可能性が既知である;真空中の作動も考慮される。しかしながら、これら2つの解決方法は、極めて大きい技術的手間をかけてようやく可能となる。
【0015】
したがって、空気調整の最新の可能性は、使用される位置測定装置の位置精度を制限しており、位置決定において測定エラーの大部分は残されたままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1762828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、移動に起因する屈折率変動によって走査光路に生じるエラーが位置測定に及ぼす影響を除去するか、または少なくとも最小限に抑えることのできる光学式位置測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を備える光学式位置測定装置により解決される。
【0019】
本発明による光学式位置測定装置の有利な実施形態が、従属請求項に記載の手段により得られる。
【0020】
本発明による光学式位置測定装置は、測定基準器と、測定基準器に対して相対的に少なくとも1つの測定方向に沿って移動可能な走査ユニットとを備え、変位に応じた信号を生成するために使用される走査光路が測定基準器と走査ユニットとの間に形成されている。保護カバーが、測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って移動可能に配置されており、少なくとも1つの作動モードで、保護カバーは走査ユニットと測定基準器との間の走査光路を広範囲に包囲する。
【0021】
好ましくは、保護カバーと測定基準器との間の間隔は、
‐第1作動モードでは、少なくとも走査光路が屈折率変動に対して敏感である空間領域においては保護カバーが走査ユニットと測定基準器との間の走査光路を遮蔽する間隔値となるように設定可能であり、
‐少なくとも1つの第2作動モードでは、第1作動モードよりも大きい間隔値となるように設定可能である。
【0022】
この場合、保護カバーにはエアベアリングが組み込まれており、このエアベアリングにより、第1作動モードでは保護カバーと測定基準器との間の間隔値が一定となるように設定可能である。
【0023】
軸線に沿って保護カバーを規定どおりに位置決めするために磁気式または空圧式のアクチュエータ手段が設けられていることも可能である。
【0024】
この場合、保護カバーと測定基準器との間の間隔は、走査ユニットが配置された位置決めステージの位置とは無関係に一定に保持することができる。
【0025】
有利な実施形態では、保護カバーは戻し手段を備え、エネルギー供給が停止した場合には保護カバーと基準器との間の最大限に可能な間隔を自動的に設定する構成としてもよい。
【0026】
この場合、戻し手段は、保護カバーに機械的に予荷重を加えることのできるばね部材として構成されていてもよい。
【0027】
さらに、保護カバーの外形が、保護カバーの周囲を流れる空気により空気渦流が生じないように構成されていることも可能である。
【0028】
さらに、保護カバーの外形は、保護カバーの周囲を流れる空気が測定基準器に力を伝達しないように構成されていてもよい。
【0029】
有利には、保護カバーには少なくとも1つの流れ部材が配置されており、この流れ部材は、走査ユニットが配置されたウェーハ・ステージの所定の速度で流れ部材における動的圧力により背圧および吸引圧力が相殺されるように構成されていてもよい。
【0030】
この場合、流れ部材は、保護カバーの側方に配置された空気偏向板として構成されていてもよい。
【0031】
さらに、保護カバーが測定基準器平面に対して垂直方向の軸線を中心として回動可能に配置されていることも可能である。
【0032】
さらに保護カバーが測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って延在し、この軸線に沿って、測定基準器と走査ユニットとの間の間隔よりもわずかに小さい寸法を有していることも可能である。
【0033】
さらに、保護カバーが測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って延在し、この軸線に沿って、測定基準器と走査ユニットとの間の間隔よりもわずかに小さい寸法を有していることも可能である。
【0034】
有利には、保護カバーは円筒状に形成されており、円筒軸線が測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って延在している。
【0035】
さらに、保護カバーは、測定基準器に向いた側に、開口または透光性のカバー部材を備えていてもよい。
【0036】
本発明による光学式位置測定装置において、他の作動モードでは拡大された走査間隔が必要とされる用途において、走査部材を備える位置決めステージと測定基準器との間に必要とされる間隔が小さい作動モードでは、空気の屈折率変動による測定エラーを最小限にすることができることが、特に有利であることが明らかである。
【0037】
本発明による光学式位置測定装置の可能な実施形態では、位置決めステージに対して相対的に移動される空気によって生成され、測定基準器および/または位置決めステージに加えられる静的力および動的力を減じることができる;これは、例えば、本発明による保護カバーを適宜に形成された流線型または帆形の外形とすることにより達成することができる。
【0038】
さらに、本発明による手段により、位置測定装置に対する周辺空気の熱による変動の影響、例えば温度ドリフトの影響を減じることができる。
【0039】
本発明のさらなる詳細および利点を、以下の本発明による装置の実施例および図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による光学式位置測定装置の第1実施例を示す概略図である。
図2】第1実施例の第1実施態様を示す概略図である。
図3】第1実施例の第2実施態様を示す概略図である。
図4】第1実施例の第3実施態様を示す概略図である。
図5】第1実施例の第4実施態様を示す概略図である。
図6】本発明による光学式位置測定装置の第2実施例を示す概略図である。
図7】第2実施例の一実施態様を示す概略図である。
図8】本発明による光学式位置測定装置の第3実施例の一実施態様を示す概略的な部分図である。
図9】本発明による光学式位置測定装置の別の実施態様を示す概略的な部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明による光学式位置測定装置の基礎をなす思想は、少なくとも1つの作動モードで保護カバーにより位置測定装置の光線量全てを広範囲にカプセル化し、これにより周辺大気から遮蔽することである。したがって、測定基準器と走査ユニットとの間の走査光路は、少なくとも走査光路が屈折率変動を受けやすい空間領域では遮蔽されており、保護カバーにより包囲されている。好ましくは測定基準器の表面手前までカプセル化が行われ、測定基準器の表面手前には、屈折率変動が生じた場合に著しい位置誤差が生じないように小さい隙間のみが残されている。測定基準器と走査ユニットとの間で保護カバーによりカプセル化され、遮蔽された走査光路の領域内には、この作動モードでは空気渦流は生じない;光線量における屈折率はほぼ一定であり、したがって高周波の位置雑音は生じない。
【0042】
本発明による光学式位置測定装置において大きい走査間隔が必要とされる分野および作動状況では、保護カバーを下げ、測定基準器と走査ユニットとの間で保護カバーをスライドさせることなしに適宜な他の作動モードで位置測定装置を作動することができる。
【0043】
機械の動力が大きいか、または、例えば急ブレーキの場合のように突然に生じた作動状態により、大きい走査間隔を素早く形成する必要がある場合には、適切な戻し手段、例えば、保護カバーのベアリングにおける機械的な予荷重により、保護カバーを素早く下ろすことができる。さらに、保護カバーと測定基準器との間に最大限に可能な間隔を自動的に設定することができ、例えば、エネルギー供給が停止した場合に保護カバーは測定基準器から自動的に取り外される。
【0044】
本発明による光学式位置測定装置の第1実施例が図1に極めて概略的に示されている。この光学式位置測定装置は、少なくとも1つの測定装置に沿って互いに相対移動可能な機械部材に配置された測定基準器10と走査ユニット20とを備える。走査ユニット20によって、測定基準器10は光学式に走査され、このようにして、機械制御部(図示しない)のために変位に応じた信号を生成する。光学的走査もしくは使用された走査光路について、図1には側方を制限する2つの部分光線束TS1,TS2のみが示されている;適切な走査に関しては、冒頭に挙げた出願人の欧州特許出願公開第1762828号明細書を参照されたい。この場合、走査ユニット20には、例えば、光源や、レンズ、格子などの種々異なる光学素子、ならびに変位に応じた信号を生成するための走査光路を形成するための検出装置が設けられていてもよい;代替的には、光ファイバによって光源および/または検出装置と走査ユニットとを結合することも可能である。基本的には、本発明は所定の光学式走査に制限されていない。
【0045】
本実施例では、本発明による光学式位置測定装置は、半導体を製造するための機械、例えばウェーハ・スキャナで使用される。この場合、走査ユニット20は、不動の機械部材に配置された測定基準器10に対して少なくとも1つの測定装置に沿って移動可能な位置決めステージもしくはウェーハステージ1に配置されている。位置測定装置の測定方向は、図示の実施例では水平方向に図平面に延在する。
【0046】
本発明による光学式位置測定装置は、既に述べたように、測定基準器平面に対して垂直方向の軸線に沿って移動可能に配置された保護カバー30を含む。図面では、この軸線は符号zにより示されている。第1作動モードでは、保護カバー30は図示のように測定基準器10と走査ユニット20もしくは光線量Sとの間の走査光路をこの領域で包囲しており、これにより、場合によって生じる空気の屈折率の変動に対して走査光路を遮蔽している。第1実施例では、測定基準器10に向いた側に、保護カバー30は、この側で保護カバー30を閉じる透明なカバーガラスとして形成されたカバー部材31を備える。
【0047】
保護カバー30のためには、好ましくは、異なる作動モードで保護カバーが軸線zに沿ってとることができる少なくとも2つの可能な位置が設定されている。
【0048】
第1位置もしくは第1作動モードで、保護カバー30は図示のように最大限に上方に向けて測定基準器10の方向に移動もしくはスライドされ、走査ユニット20と測定基準器10との間の走査光路もしくは光線量Sは広範囲に遮蔽され、屈折率変動に起因する上記雑音は最小限になる。したがって、第1作動モードでは、軸線zに沿って保護カバー30の上縁部と測定基準器10との間の間隔ができるだけ最小値に設定される。
【0049】
これに対して、第2位置もしくは少なくとも1つの第2作動モードでは、保護カバー30は完全に下方に向けて走査ユニット20の方向に移動もしくはスライドされ、走査ユニット20の上方の光線量Sは解放される。したがって、この作動モードでは、測定基準器10と保護カバー30の上縁部との間に第1作動モードの場合よりも大きい間隔が設定される。
【0050】
それぞれの作動モードにおいて保護カバー30と測定基準器との間に必要な間隔の設定は、本発明による位置測定装置の本実施例では制御ユニット(図示しない)により行うことができる。
【0051】
少なくとも第1作動モードで保護カバー30をスライドさせるためには、本発明による光学位置測定装置は適切なアクチュエータ手段を含み、アクチュエータ手段は、以下の実施態様で図示するように、種々異なる形式で形成されていてよい。
【0052】
図2には、本発明による光学式位置測定装置の第1実施例の第1実施態様が概略的に示されており、軸線zに沿って保護カバーを位置決めするために、保護カバー30の磁気ホルダもしくは磁気式アクチュエータ手段が設けられている。電磁石42がウェーハ・ステージ1に配置されており、例えば強磁性体または常磁性体として形成された図示の磁石部材41と相互作用する。これらの電磁石42を介して、上述の第1作動モードで保護カバー30を上方へ移動し、走査光路にスライドした状態に保持することができる。このようにして、この作動モードでは周辺空気の屈折率変動に対して走査光路を遮蔽することができる。
【0053】
随意に、例えばエネルギー供給装置が故障した場合または緊急停止した場合に保護カバー30が測定基準器10を損傷しないように保護カバー30を測定基準器10から素早く引き離すために、さらに保護カバー30に対してz方向に沿って機械的予荷重を生成してもよい。本発明による光学位置測定装置の第1実施例の適宜な第2実施態様が図3に示されている。図3には符号43によりばね部材が示されている。ばね部材43は、保護カバー30と、z方向に不動のウェーハ・ステージ1との間に配置されており、そこで保護カバー30に機械的に予荷重を加えることができる戻し手段として機能する。この実施態様は、エネルギー供給装置が故障した場合または緊急停止した場合に、保護カバー30を自動的かつ迅速に測定基準器10から引き離し、保護カバー30と測定基準器10との間に最大限に可能な間隔を自動的に設定するという利点をもたらす。
【0054】
本発明による光学式位置測定装置の第1実施形態の別の実施態様が図4に示されている。この実施態様では、保護カバー40を素早く降下させるか、もしくは走査光路から取り除くために、別の電磁アクチュエータ手段としてウェーハ・ステージ1に付加的な電磁石44を設けてもよい。電磁石42の他に保護カバー30をスライドさせるために付加的に設けられた電磁石44は、この実施態様ではz方向、すなわち保護カバー30の移動方向に沿って、電磁石42に対して離間して配置されている;保護カバー30の面には、異なる電磁石42,44と相互作用するように適切に構成された磁石部材41が配置されている。
【0055】
本発明による光学式位置測定装置の第1実施例の別の実施態様が図5に示されている。この実施態様で使用される空圧式アクチュエータ手段により、第1作動モードで測定基準器10の方向に保護カバー30の真空吸引が行われ、第2作動モードで空気圧により保護カバー30が降下される。この場合、保護カバー30は、適切な圧縮空気ラインもしくは真空ライン51に接続された1つ以上の空圧シリンダ50に接続される。
【0056】
本発明による光学式位置測定装置の第2実施例を図6に基づいて説明する。
【0057】
位置決めステージもしくはウェーハ・ステージ101は、一般に鉛直方向にも移動される、すなわち、z方向に沿って測定基準器110に向けて移動されるか、または測定基準器110から離れるように移動されるので、設定位置を2つしか備えていない保護カバー130の場合には、極端な位置(例えば、ウェーハ・ステージ101が傾斜した場合)においても保護カバー130が測定基準器110に接触しない程度に保護カバー130と測定基準器110との間の間隔を小さく選択することしかできない。しかしながら、ウェーハ・ステージ101の通常位置における間隔は最適ではなく、残されるエアギャップはウェーハ・ステージ101の状態に応じて異なる。これにより、作動時に測定される位置に対して空気が不安定な影響をもたらす。したがって、保護カバー130の上縁部と測定基準器110との間の間隔が第1作動モードで最小限かつ一定の間隔値に設定することが特に有利であることが明らかになった。このようにして、走査光路に加えられる妨害の影響は常に等しく、特にウェーハ・ステージ101の全ての移動状態において最小限となる。このように一定の間隔値を設定するためには、本発明による位置測定装置のこの実施例では、特に測定基準器110と保護カバー130との間の境界領域において保護カバー130にエアベアリング170が組み込まれている。この実施形態では、保護カバー130の上縁部と測定基準器110との間の間隔は、エアベアリング170の寸法に基づいて自動的に付与され、上方への保護カバー130の押圧力にはわずかにしか依存しない。
【0058】
それぞれの用途においてエアベアリング170が重力方向に作用した場合、すなわち、エアベアリング170の圧力が重力と同じ方向に加えられた場合、エアベアリング170にさらに付加的に機械的な予荷重を加える必要がある。このために、図6には保護カバー130の機械的な予荷重部材160が概略的に示されている。エアベアリング170を介して、保護カバー130と測定基準器110との間;例えば、保護カバー130の上縁部と測定基準器110との間に一定の間隔値が自動的に設定される。
【0059】
エアベアリング170が設けられていることにより、本発明による位置測定装置のこの実施例では、保護カバー130は、ウェーハ・ステージ101もしくは測定基準器110の動き、すなわちz方向に沿った適宜な傾斜運動および/または変位に自動的に追従する。この場合、保護カバー130のエアベアリングによって、保護カバー130と測定基準器110との間の間隔を保持することができるだけではなく、ウェーハ・ステージ101が傾斜した場合に、保護カバー130と測定基準器110との間の角度を一定に保持することもできる。したがって、保護カバー130は、軸線もしくは方向Zに沿って移動可能に配置されているだけではなく、軸線Zに対して垂直方向に配向された2つの軸線XおよびYを中心としてわずかに回動可能に配置されている。ウェーハ・ステージ101が傾斜した場合、保護カバー130は予荷重に基づいて自動的に回動され、これにより、エアベアリング170は保護カバー130に沿って、測定基準器110に対して一定の間隔を備える。
【0060】
この場合、エアベアリング170を介した測定基準器110への保護カバー130の押圧力は、例えば磁石またはばねによる適切な予荷重によって一定に保持することができる。これらの予荷重手段と、図6に概略的に示した保護カバー130の予荷重部材160とは相互作用する。このようにして、測定基準器110に作用する力を一定に保持することができる。さもなければ、測定基準器110に対してZ方向の保護カバー130の押圧力は保護カバー130の変形をもたらし、これに応じて測定エラーが生じる場合もある。予荷重が能動的な予荷重手段、例えば電磁石によって生成された場合、この予荷重手段は、同時に第2作動モードで保護カバー130を素早く降下させるためにアクチュエータ手段として使用することもできる。このような予荷重によって、測定基準器110が走査ユニット120の上方に取り付けられた場合に、第1作動モードで測定基準器110の方向に保護カバー130を持ち上げることも可能である。
【0061】
代替的には、本発明による光学式位置測定装置の第2実施形態の一実施態様では、図7に示すように、第1作動モードで空圧式アクチュエータ手段を用いて、空気圧によって保護カバー130を持ち上げることもできる。この場合、適切な構成により、持上げおよび予荷重のために使用された空気Lを同時にエアベアリングにおいて使用することもできる。この場合、保護カバー130の構成は、不動の状態が得られるように構成される。これにより、屈折率の変動は最小化され、測定エラーもしくは位置雑音が低減される。ベアリングのこのような形式により、特に局所的な熱源による外的な影響が防止される。
【0062】
次に本発明による光学式位置測定装置の第3実施例を説明する。
【0063】
所定の用途では、例えば、ウェーハ・ステージが移動した際に生じた背圧および吸引圧力によりウェーハ・ステージから測定基準器に力が伝達されないことが重要である。測定基準器との間隔が最小限となった場合にのみ取り除かれる付加的なカバーは、この場合にはネガティブに作用することもある。したがって、保護カバーにより押しのけられた空気により保護カバーを介して測定基準器に加えられる力ができるだけ最小限となるようにした方が有利である。
【0064】
一方では、これは、保護カバーが流線型に構成されており、このような流線型の構成によりウェーハ・ステージの移動に起因する背圧および吸引圧力が最小限に抑えられることにより実現できる。このような流線型の構成によりさらに渦流を防止することができる。こうした渦流は、移動方向に保護カバーの後方に形成される場合があり、これにより生じた変わりやすい圧力がウェーハ・ステージおよび測定基準器に変化する力を加える。
【0065】
他方では、保護カバーの側方に取り付けられた構造部の形式で適切に形成された流れ部材により、ウェーハ・ステージが移動した場合に、空気は、測定基準器に向けて、および測定基準器から離れるように伝達され、全体として、移動した空気によって測定基準器に加えられた力が補正される。
【0066】
ウェーハ・ステージにより押しのけられた空気により生じる力が、最大限の精度が必要とされるウェーハ・ステージの主移動方向に最小限となるように、上述のような保護カバーの構造部および/または流線型の構成を取り付け、最適化することができる。代替的に、保護カバーを回動可能に配置し、保護カバーの向きをウェーハ・ステージの移動方向に適合させてもよい。
【0067】
これは、保護カバーの外形を適切に構成することによって行うことができ、または適宜に形成された流れ部材、例えば適切に形成され、保護カバーの側方に取り付けられた構造部によって行うことができる。好ましくは、流れ部材もしくは構造部は、ウェーハ・ステージの所定の速度で空気が押しのけられることにより、保護カバーにおける背圧および吸引圧力が流れ部材における動的圧力により相殺されるように形成されている。流れ部材は、ウェーハ・ステージが移動される場合に「気流」が流れ部材の周囲を流れるように取り付けられている。
【0068】
本発明による光学式位置測定装置の第3実施形態における空気偏向板として形成された流れ部材の作用原理が図8に示されている。空気偏向板281は、測定基準器210を押圧する空気を捕らえ、この力をウェーハ・ステージ201に導くために使用される。このようにして、測定基準器210に作用する力が減じられる。
【0069】
ウェーハを高精度に位置決めする必要がある用途では、ウェーハ・ステージは2部材により構成されていることが多い。第1の位置決めステージは、おおまかな位置決めを行うためのおおまかな移動のために用いられる。この第1位置決めステージには、ウェーハの精確な位置決めを行う第2の位置決めステージが配置されている。この場合、第2位置決めステージは、第1ステージに対してわずかにのみ移動することができ、これにより、おおまかな位置決めを行う第1の位置決めステージの調整ずれを補正する。2部材の位置決めステージの場合には、保護カバーは、好ましくは第1位置決めステージに取り付けてもよい。これにより、保護カバーの移動および保護カバーの周囲を流れる空気によって生じる力は第1位置決めステージにそらされ、正確な位置決めを行う第2の位置決めステージには影響を及ぼさない。
【0070】
具体的に説明した実施例の他にも、当然ながら本発明の範囲内で他の構成可能性もある。このような個々の可能性を説明する前に、本発明による位置測定装置の様々な実施例および実施態様に基づいて説明した手段を必要に応じて適宜に組み合わせることも当然ながら可能であることを明示的に述べておく。
【0071】
さらに、測定基準器のための保護カバーは、実施例でそれぞれ設けられている透明なカバー部材の代わりに、開口またはシェードを備えていてもよい。光線量がカバー部材によって閉じられていることは、保護カバーの内部スペースにおいて空気ができるだけ不動な状態となるためには好ましいことが明らかであり、保護カバーの位置が2つのみ必要な場合には好ましい実施態様である。
【0072】
図9の平面図に示すように、さらに保護カバー330の外形は、ウェーハ・ステージ301の主移動方向Yに沿って流線型に構成されていてもよい。これにより、ウェーハ・ステージ301には最小限の力もしくは最小限の傾斜を引き起こすトルクしか作用しない。保護カバー330の流線型の形状もしくは外形は、よりわずかな渦流しかもたらさず、したがって、保護カバー330、ひいてはウェーハ・ステージ301への影響力が著しく減じられる。理想的には、保護カバー330の形状によって、保護カバー330に沿った薄層状の流れが可能となる。保護カバー330の形状もしくは外径の最適化は、好ましくは、ウェーハ・ステージ301の主移動方向に関してのみ行われる。
【0073】
ウェーハ・ステージ301の2つの主運動方向が高い測定精度を必要とする場合には、ウェーハ・ステージ301の縦軸線もしくは測定基準器平面に対して垂直方向の軸線を中心として保護カバー330を回動可能に支承してもよい。保護カバー330の形状により、保護カバー330はそれぞれの移動方向もしくは位置決め方向に自動的に追従し、全ての移動方向に対して、ウェーハ・ステージ301に対する渦がもたらす影響力を最小化する。
【0074】
一般に、保護カバーは、ウェーハ・ステージもしくは光学的な走査光路が変動する熱負荷にさらされる場合には有利であり得る。保護カバーにより得られる遮蔽により、移動する空気を光線量の外側に保持し、例えば、断熱を施すことにより熱放射を防ぐこともできる。保護カバーの内部の空気は、一定の不動状態に留まり、測定される信号の位置雑音および位置ドリフトが著しく低減される。
【0075】
例えば、ウェーハの積載および/または取外しのために保護カバーを降下させる場合の不要な待機時間を防止するために、積載ステーションへの移動時に保護カバーをあらかじめ降下させておいてもよい。
【0076】
上述のように位置決めステージもしくはウェーハ・ステージが2部材から構成されており、第1位置決めステージと第2位置決めステージとからなっている場合には、保護カバーは、好ましくはより低い精度を要する第1位置決めステージに取り付けてもよい。これにより、空気による保護カバーへの力の作用は高精度を要する第2ステージに直接には作用しない。さらに保護カバーがなければ空気によって走査ユニットに作用する力は保護カバーによって遮られる。
【符号の説明】
【0077】
1,101,201,301 ウェーハ・ステージ
10,110,210 測定基準器
20、120 走査ユニット
30,40,130,330 保護カバー
41 磁石部材
42,44 電磁石
43 ばね部材
50 空圧シリンダ
51 真空ライン
160 予荷重部材
170 エアベアリング
281 偏光板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9