特許第6291433号(P6291433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291433
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】受信装置、受信回路及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20180305BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   H04L27/26 410
   H04B1/10 L
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-21614(P2015-21614)
(22)【出願日】2015年2月5日
(65)【公開番号】特開2016-144196(P2016-144196A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増野 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
【審査官】 羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−050557(JP,A)
【文献】 特開2010−130189(JP,A)
【文献】 特開昭64−080135(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0143798(US,A1)
【文献】 増野 淳 、白戸 裕史、杉山 隆利 ,マルチキャリア重畳伝送におけるFEC尤度重み付けの最適化,電子情報通信学会2010年総合大会講演論文集 通信1,2010年 3月19日,p.608
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブキャリアを用いた周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置であって、
干渉波情報として被干渉サブキャリアを検出する干渉検出手段と、
前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御手段と、
前記干渉判定閾値を使用して前記干渉波の強度の判定を行う干渉判定手段と、
前記干渉判定手段による判定結果に基づき干渉波抑圧のための前記サブキャリアの重み付けを決定する重み付け決定手段と
を備え
前記閾値制御手段は、前記被干渉サブキャリアの数が総サブキャリア数に占める割合が予め定められた限界重畳率以下であるか否かを判定し、該判定結果が否であれば、前記干渉判定閾値を所定の増加量上げる制御を前記割合が前記限界重畳率以下となるまで繰り返し行うことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記重み付けを行ったサブキャリアを復調・復号した信号のビット誤り率を推定する誤り測定手段をさらに備え、
前記閾値制御手段は、前記割合が前記限界重畳率以下である場合に、前記ビット誤り率が所定品質を満たしているか否かを判定し、該判定結果が否であれば、さらに該ビット誤り率が前回測定されたビット誤り率と比較して同一または改善したか否かを判定し、同一または改善した場合には、前記干渉判定閾値を所定の減少量下げることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信装置は、OFDM伝送による信号を受信することを特徴とする請求項1または2に記載の受信装置。
【請求項4】
複数のサブキャリアを用いた周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置に備える受信回路であって、
前記受信装置は、
干渉波情報として被干渉サブキャリアを検出する干渉検出手段と、
干渉判定閾値を使用して干渉波の強度の判定を行う干渉判定手段と、
前記干渉判定手段による判定結果に基づき干渉波抑圧のための前記サブキャリアの重み付けを決定する重み付け決定手段とを備え、
前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための前記干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御回路であって、
前記被干渉サブキャリアの数が総サブキャリア数に占める割合が予め定められた限界重畳率以下であるか否かを判定し、該判定結果が否であれば、前記干渉判定閾値を所定の増加量上げる制御を前記割合が前記限界重畳率以下となるまで繰り返し行う閾値制御回路を備えることを特徴とする受信回路。
【請求項5】
前記受信装置は、前記重み付けを行ったサブキャリアを復調・復号した信号のビット誤り率を測定する誤り測定手段をさらに備え、
前記閾値制御回路は、前記割合が前記限界重畳率以下である場合に、前記ビット誤り率が所定品質を満たしているか否かを判定し、該判定結果が否であれば、さらに該ビット誤り率が前回測定されたビット誤り率と比較して同一または改善したか否かを判定し、同一または改善した場合には、前記干渉判定閾値を所定の減少量下げることを特徴とする請求項4に記載の受信回路。
【請求項6】
複数のサブキャリアを用いた周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置が行う受信方法であって、
干渉波情報として被干渉サブキャリアを検出する干渉検出ステップと、
前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御ステップと、
前記干渉判定閾値を使用して前記干渉波の強度の判定を行う干渉判定ステップと、
前記干渉判定ステップによる判定結果に基づき干渉波抑圧のための前記サブキャリアの重み付けを決定する重み付け決定ステップと
を有し、
前記閾値制御ステップでは、前記被干渉サブキャリアの数が総サブキャリア数に占める割合が予め定められた限界重畳率以下であるか否かを判定し、該判定結果が否であれば、前記干渉判定閾値を所定の増加量上げる制御を前記割合が前記限界重畳率以下となるまで繰り返し行うことを特徴とする受信方法。
【請求項7】
前記重み付けを行ったサブキャリアを復調・復号した信号のビット誤り率を測定する誤り測定ステップをさらに有し、
前記閾値制御ステップでは、前記割合が前記限界重畳率以下である場合に、前記ビット誤り率が所定品質を満たしているか否かを判定し、該判定結果が否であれば、さらに該ビット誤り率が前回測定されたビット誤り率と比較して同一または改善したか否かを判定し、同一または改善した場合には、前記干渉判定閾値を所定の減少量下げることを特徴とする請求項6に記載の受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数共用型の無線通信における受信装置、受信回路及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種無線通信システムの普及により周波数資源の枯渇が問題となっており、複数の無線信号による周波数共用化を図ることで周波数利用効率を向上する重畳伝送技術の検討が進められている。たとえば、図7は、周波数帯域を共用する無線通信システムの組合せの一例として、周波数チャンネルが異なる2つの無線LAN(Local Area Network)システム全体を示す概念図である。同図において、無線通信システムは、無線LAN基地局100a、100bと、パソコン等で構成する受信装置200aとを備えている。無線LAN基地局100aは、中心周波数faであるCH1の周波数帯域を用いて通信する。一方、無線LAN基地局100bは、中心周波数fb(ただし、fa<fb)であるCH5の周波数帯域を用いて通信する。
【0003】
受信装置200aは、無線LAN基地局100aと無線LAN基地局100bとの双方の無線信号が到達する位置に配置され、中心周波数faの無線信号と中心周波数fbの無線信号との2つの無線信号が部分的に互いに干渉した信号を受信する(図7下図)。なお、周波数帯域を共用する他の例として、無線LANシステムと、bluetooth(登録商標)と、WiMAX(登録商標)との組合せなど、異なる通信方式のシステム同士が周波数共用する場合も考えられる。
【0004】
このように、例えば、図7に示す受信装置200aが無線LAN基地局100aを通信対象とする場合、中心周波数faである希望波の送信周波数帯域と、中心周波数fbである無線LAN基地局100bからの干渉波の送信周波数帯域とが、部分的にオーバーラップ(重複)する周波数共用型の無線通信において、受信装置200aは、希望波を正確に受信することが必須となる。
【0005】
一般に干渉波が存在する場合、通信特性が著しく劣化するが、この干渉の影響を抑圧しながら分散配置されたFECブロックを復号し、正確な伝送を実現する非特許文献1に示される技術がある。具体的には所望波の復調前に、受信信号のうち干渉波の存在する周波数成分をRF段やIF段においてフィルタリング処理、あるいはベースバンド領域において被干渉サブキャリアに対する重み付け処理あるいはゼロ置換処理を施すことで、干渉波の影響を抑圧して復調、復号することを特徴としている。
【0006】
しかし、上記の処理を実現するためには干渉波情報、すなわち被干渉サブキャリアや干渉電力を検出する必要がある。非特許文献2、3では、仮復調復号結果から得られる所望波の受信レプリカ信号を受信電力から差し引いた残留電力を閾値判定し、被干渉サブキャリアを特定するとともに、干渉電力を求め、非特許文献1と同様に被干渉サブキャリアを重み付けしている。これにより所望波の通信を行いながら干渉帯域を検出し、かつ干渉を抑圧することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】増野ほか,“マルチキャリア重畳伝送による周波数利用効率向上効果,”信学技報,vol.108,no.188,RCS2008−67,pp.85−90,2008年8月.
【非特許文献2】依田ほか、“OFDM伝送における干渉推定に基づく繰り返し復号法”,信学技報,vol.113,no.301,RCS2013−194,pp.117−121,2013年11月.
【非特許文献3】Yoda, Naotoshi; Hayashi, Genji; Ohtsuki, Tomoaki; Mashino, Jun; Sugiyama, Takatoshi, "Interference detection technique using robust LLR for superposed multicarrier transmission," Personal Indoor and Mobile Radio Communications (PIMRC), 2013 IEEE 24th International Symposium on , vol., no., pp.1092,1096, 8-11 Sept. 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献2、非特許文献3では干渉波検出のための閾値を各サブキャリアで計算される残留電力の時間・周波数方向の平均値として定義されている。残留電力は熱雑音と干渉波の和で構成される。干渉波がバースト的に発生することを想定すると、干渉波が存在しない瞬時OFDMシンボルに対しては、前述したように導出された残留電力は、周波数特性を有さない熱雑音が支配的であるにも関わらず、閾値判定により半数程度のサブキャリアが干渉サブキャリアとして誤検出されてしまうことになる。これにより被干渉サブキャリアと誤検出されるサブキャリアが多数生じ、非特許文献1の手法ではゼロ置換処理等によって所望波の受信電力が減少される。また、非特許文献2の手法では尤度の計算過程において雑音が2倍に強調される問題が生じ、いずれも干渉波が無いにも関わらず受信特性は劣化するという問題がある。
【0009】
複数のサブキャリアに異なる受信強度の干渉を受ける場合、たとえば複数の無線局からの干渉波が到来したり、伝送路の影響で干渉波が周波数特性を持ったりする場合は、従来の残留電力の平均値や中央値を閾値とする手法では、強度の小さな干渉を受ける干渉サブキャリアが未検出となる問題がある。すなわち非特許文献1、2に記載されるような信号処理が期待できず受信特性は劣化することになる。図8は、干渉判定回路における干渉波と閾値との関係を示す図である。図8に示すように、従来の干渉判定回路では、残留電力の平均値や中央値を閾値として使用していた。そのため、干渉波がない場合は総サブキャリアの約半数が干渉サブキャリアとして誤検出されてしまう(図8下図)。一方、干渉波がある場合は受信強度の弱い干渉サブキャリアが未検出となってしまう(図8上図)。すなわち従来手法では適切な干渉判定閾値を決定することができないため、所望波の受信特性を高めることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、所望波の受信特性を向上させることができる受信装置、受信回路及び受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置であって、干渉波情報を検出する干渉検出手段と、前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御手段と、前記干渉判定閾値を使用して前記干渉波の強度の判定を行う干渉判定手段と、前記干渉判定手段による判定結果に基づき干渉波抑圧のための重み付けを決定する重み付け決定手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記閾値制御手段は、前記干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を所定の条件を満たすまで繰り返し行うことを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記受信装置は、OFDM伝送による信号を受信することを特徴とする。
【0014】
本発明は、前記指標は、干渉サブキャリア数またはビット誤り率であることを特徴とする。
【0015】
本発明は、周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置に備える受信回路であって、前記受信装置は、干渉波情報を検出する干渉検出手段と、干渉判定閾値を使用して干渉波の強度の判定を行う干渉判定手段と、前記干渉判定手段による判定結果に基づき干渉波抑圧のための重み付けを決定する重み付け決定手段とを備え、前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための前記干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御回路を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明は、周波数共用型の無線通信における干渉波を抑圧する受信装置が行う受信方法であって、干渉波情報を検出する干渉検出ステップと、前記干渉波情報を指標として用いて前記干渉波を判定するための干渉判定閾値を上げるまたは下げる制御を行う閾値制御ステップと、前記干渉判定閾値を使用して前記干渉波の強度の判定を行う干渉判定ステップと、前記干渉判定ステップによる判定結果に基づき干渉波抑圧のための重み付けを決定する重み付け決定ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、測定誤り率に応じて干渉判定閾値を増減させ、受信強度の小さな干渉波の影響を受けた干渉サブキャリアも検出することで、所望波の受信特性を向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態における受信装置の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態による閾値設定の動作を示す説明図である。
図3図1に示す受信装置が行う閾値設定動作を示すフローチャートである。
図4】従来方法と本発明との閾値設定の違いを示す説明図である。
図5】本発明の第2実施形態における受信装置の構成を示すブロック図である。
図6】第2実施形態による閾値設定の動作を示す説明図である。
図7】周波数帯域を共用する無線通信システムの組合せの一例として、周波数チャンネルが異なる2つの無線LANシステム全体を示す概念図である。
図8】干渉判定回路における干渉波と閾値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による受信装置を説明する。始めに、本発明の動作原理について説明する。本実施形態による受信装置は、干渉判定閾値を干渉サブキャリア数やBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)を指標として調整(閾値を上下させる)することで、干渉波の有無や受信強度に依らず適切な干渉判定閾値を決定し、良好な受信特性を得るものである。
【0020】
所望信号はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)伝送を想定し、瞬時OFDMシンボルごとに干渉波情報(被干渉サブキャリア、干渉電力)の検出を行う。干渉判定閾値Aの初期値A0[dBm]を定め、干渉波情報の検出を行う。具体的な初期値としては残留電力または受信電力の周波数方向の平均値(dBm)等が有用であるが、特にこれらに限定するものではない。後段の処理によって受信品質が良好になるように閾値は順次補正されていくためである。干渉判定閾値を越える残留電力を持つサブキャリアを被干渉サブキャリアとして同定し、このサブキャリアの残留電力を測定値を干渉電力とする。
【0021】
そして、全サブキャリア数に占める被干渉サブキャリア数が過多の場合、具体的には(被干渉サブキャリア数/サブキャリア数)>B(所定の閾値で限界重畳率を用いる)となる場合、干渉判定閾値の設定が過小であると判断し、閾値A(干渉検出閾値電力)をΔA1(所定の増加量で、閾値の補正オフセット値)だけ増やし再度検出を行う。このとき、閾値Bの値は、伝送に使用する変調方式や誤り訂正符号化方式、符号化率などに依存して決定される限界重畳率(所望波の周波数帯域幅に対する干渉許容可能な周波数帯域幅の総量の割合)に相当する。少なくとも閾値Bは1/2または(1−符号化率)のうち小さい方の値以下の値に設定する。
【0022】
次に、検出された干渉波情報(被干渉サブキャリア、干渉電力)に基づき、被干渉サブキャリアの重み付けまたは置換処理を実施し測定BERの変化を評価する。そして、前回測定したBERと比較して今回測定したBERが劣化していた場合は、干渉判定閾値の設定が過小であると判断し、オフセット値−AをΔA1だけ増やし再度干渉波情報の検出を行い、被干渉サブキャリアの重み付けまたは置換処理を実施して再び測定したBERの変化を評価する。
【0023】
前回測定BERと比較してBERが同一または改善した場合、かつ所定の誤り率を満足できていない場合には、干渉判定閾値の設定が過大であると判断し、オフセット値AをΔA2(所定の減少量)だけ減らし再度干渉波情報の検出を行い、被干渉サブキャリアの重み付けまたは置換処理を実施し再び測定したBERの変化を評価する。
【0024】
以上の動作を、BERが所定品質を満足するか、総復号回数が所定回数Xに到達するまで実施し直す(繰り返す)。
【0025】
次に、図1を参照して、前述した動作原理に基づく受信装置の構成を説明する。図1は同実施形態における受信装置の構成を示すブロック図である。受信装置はBPF(バンドパスフィルタ)1を備え、希望波の伝送周波数帯域に合わせ入力信号の帯域制限を行う。図1の符号aで示す図に希望波と干渉波とBPF1の関係を示す。図1の符号bで示す図に干渉波がある場合のBPF後に得られる信号を示す。
【0026】
そして、その出力(図1の符号b)を信号バッファ2に保存しつつ、OFDM復調回路3によりサブキャリア毎に信号を抽出し、パイロット信号やトレーニング信号等の既知信号を使用して、伝送路推定部9にて伝送路推定を実施し、後続の振幅位相歪み補正回路4によって、伝送路歪みを補償する。伝送路歪みの補償は、例えばZero Forcing法によって伝送路歪みの逆数をサブキャリア毎に乗算する。
【0027】
続いて復調回路5により送信側で施されたQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直角位相振幅変調)やPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)等のマッピング処理に対応するデマッピング処理が実施される。そして、受信信号点から最も近い正規の信号点とのユークリッド距離を元にビット毎にLLR(Log Likelihood Ratio:対数尤度比)が求められる。続いてサブキャリア重み付与回路6にてサブキャリア毎に適切な重みを与えるが、重みの生成については後述する。サブキャリア重み付与回路6は、非特許文献1の構成に対応する。干渉判定回路18は被干渉サブキャリアのサブキャリア位置と干渉電力を出力しサブキャリア重み演算回路19は非特許文献1等記載の重みを演算しサブキャリアに乗算する。初回の重みは1である。
【0028】
これらを並直列変換回路7により直列化しFEC復号器8で誤り訂正処理を行う。FEC復号器8の出力を元にFEC再符号化器11により送信機と同一パラメータで符号化し直並列変換回路12によってサブキャリア毎にデータを振り分ける。その後、再変調回路13によって、送信機と同一の変調マッピング法によって一次変調を施し、伝送路推定部9による伝送路推定によって得られた伝送路歪みを振幅位相歪み付与回路14によって与え、OFDM変調回路15によって二次変調を施し、受信レプリカ信号(図1の符号C)を生成する。
【0029】
次に、信号バッファ2に蓄積した受信信号から、受信レプリカ信号(OFDM変調回路15の出力)を減算器16で差し引き、残留信号(理想的には熱雑音と干渉信号で構成される)を求め、サブキャリア毎に導出した残留電力(I・I)を干渉判定回路18へ入力する。
【0030】
これと平行してFEC復号器8の出力から誤り測定器10にて誤り(BER等)の観測を行う。具体的には、FECのパリティビットにより誤りビット数を測定してもよいし、伝送パケット毎にCRCヘッダを付加し、受信側でその整合性を確認しパケット単位での正誤判定(すなわちパケット誤りの観測)をしてもよい。誤り測定器10の出力は閾値制御回路20に対して出力される。閾値制御回路20は、閾値Aを干渉判定回路18に出力し、干渉判定回路18は、干渉の判定を行い、被干渉サブキャリアと干渉電力とをサブキャリア重み演算回路19に出力する。そして、サブキャリア重み演算回路19は、重み係数を求めてサブキャリア重み付与回路6へ出力する。
【0031】
一方、復号ビット抽出回路21は、FEC復号器8の出力から復号ビットを抽出して出力する。また、繰り返し処理制御回路22は、誤り測定器10が測定した誤り情報をから繰り返し処理の実施、終端を繰り返し処理対象回路23に対して指示する。
【0032】
図2は、第1実施形態による閾値設定の動作を示す説明図である。前述した構成の受信装置は、図2に示すように、干渉波がある場合は、閾値Aを押し下げるように動作し、干渉波がない場合は、閾値Aを押し上げるように動作することになる。
【0033】
次に、図3を参照して、図1に示す受信装置が行う閾値設定動作を説明する。図3は、図1に示す受信装置が行う閾値設定動作を示すフローチャートである。まず、閾値制御回路20には誤り測定器10から出力される誤り率または誤りの有無の情報、干渉判定回路18から出力される被干渉サブキャリア番号の情報が入力される。
【0034】
次に、閾値制御回路20は、各変数に初期値を与える(ステップS1)。具体的には、Xに0、AにA0、BにB0を代入する。図3において←は代入を表す。
【0035】
次に、閾値制御回路20は、総復号回数が予め規定した上限値Xmaxに達したか(終了条件を満たしたか)否かを判定する(ステップS2)。そして、閾値制御回路20は、総復号回数が予め規定した上限値に達するまで下記の処理を繰り返し実施する。終了した段階で復号ビット抽出回路21は最終復号ビットを抽出し出力する。
【0036】
一方、閾値制御回路20は、総復号回数が予め規定した上限値に達していなければ、干渉検出閾値をA[dBm]として干渉判定回路18に閾値を与える(ステップS3)。そして、閾値判定により被干渉サブキャリアおよび該当サブキャリアの残留電力を測定し干渉電力と見なす(ステップS4)。
【0037】
次に、閾値制御回路20は、被干渉サブキャリアの数が、総サブキャリア数に占める割合を評価し、伝送方式に対応し予め定められた限界重畳率B以下であるか否かを判定する(ステップS5)。この判定の結果、被干渉サブキャリア数/総サブキャリア数≦Bでなければ、干渉判定閾値AをA+ΔA1に増やし(ステップS11)、ステップS2に戻るように制御を行う。
【0038】
一方、被干渉サブキャリア数/総サブキャリア数≦Bであれば、ステップS4で得られた)干渉波情報に基づき、サブキャリア重み演算回路19で重み係数を算出し、サブキャリア重み付与回路に該当値を与え、繰り返し処理制御回路22の指示により再度復調回路5に後続する繰り返し処理対象回路23の信号処理を実施する(ステップS6)。そして、繰り返し処理制御回路22は、復号回数Xを1増加させる(ステップS7)。
【0039】
次に、閾値制御回路20は、誤り測定器10で測定された誤り(BER等)が所定品質を満たしているか否かを判定する(ステップS8)。この判定の結果、誤り測定器10で測定された誤り(BER等)が所定品質を満たしていれば、処理を終了させ復号ビット抽出回路21で復号ビットを出力する。
【0040】
一方、ステップS8において、所定品質を満たしていなければ、前回BERが存在するか否かを判定する(ステップS9)。この判定の結果、前回BERが存在しない場合、閾値制御回路20は、現在の干渉判定閾値AをA+ΔA1に増やし(ステップS11)、ステップS2に戻るように制御を行う。また、前回BERが存在する場合、前回測定BERと比較してBERは同一または改善したか否かを判定する(ステップS10)。この判定の結果、改善していない場合、閾値制御回路20は、現在の干渉判定閾値AをA+ΔA1に増やし(ステップS11)、ステップS2に戻るように制御を行う。
【0041】
一方、BERが同一または改善した場合、閾値制御回路20は、現在の干渉判定閾値AをA−ΔA2に減らし(ステップS12)、ステップS2に戻るように制御を行う。なお、ΔA1,ΔA2の値は必ずしも固定である必要はなく同じ値でも異なる値でもよい。たとえば繰り返し処理ごとに減らしてもよいし、あるいは、ステップS10においてBERの変化量に応じて可変させてもよい。
【0042】
すなわち、前回BERが存在し、BERが改善した場合は、BERが所定品質を満たしていないものの干渉波検出が良好に機能しBERが改善方向に向かっていると判断し、干渉判定閾値AをA−ΔA2と押し下げ、未検出の被干渉サブキャリアを検出できるように制御を行い、繰り返し処理制御回路22の指示により同様に再度復調回路5に後続する繰り返し処理対象回路23の信号処理を実施する。また、前回BERが存在し、BERが改善しない場合は、過剰な数のサブキャリアが被干渉サブキャリアとして誤検出されていると判断し、干渉判定閾値AをA+ΔA1と押し上げ、繰り返し処理制御回路22の指示により同様に再度復調回路5に後続する繰り返し処理対象回路23の信号処理を実施する。前回BERが存在しない場合も同様である。
【0043】
図4は、従来方法と本発明との閾値設定の違いを示す説明図である。図4に示すように、従来方法は、干渉波あり、なしに関係なく、閾値を残留電力の平均値等を用いている。これに対して、本発明は、干渉波なしの場合、閾値を押し上げるように動作し、干渉波ありの場合、閾値を押し下げるように動作するように制御したため、所望波の受信特性を高めることができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に、図面を参照して、本発明の第2実施形態による受信装置を説明する。図5は同実施形態における受信装置の構成を示すブロック図である。この図において、図1に示す装置と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。この図に示す装置が図1に示す装置と異なる点は、サブキャリア重み付与回路6とサブキャリア重み演算回路19が省略されている点である。また、復調回路5が、繰り返し処理対象回路23内に含まれている。
【0045】
復調回路5で算出する尤度が、第1実施形態では雑音電力のみを考慮した対数尤度比(LLR:Log Likelihood Ratio)であるのに対し、第2実施形態では被干渉サブキャリアとして判定されたサブキャリアに対応する尤度は雑音電力と、干渉電力の双方を考慮してロバストLLR(非特許文献2、3参照)を求める。すなわち、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、干渉波情報に基づく受信重みを与える回路にある。
【0046】
図6は、第2実施形態による閾値設定の動作を示す説明図である。前述した構成の受信装置は、図6に示すように、干渉波がある場合は、閾値Aを押し下げるように動作し、干渉波がない場合は、閾値Aを押し上げるように動作する。
【0047】
なお、OFDM変調回路15では、周波数領域に配置されたサブキャリア毎の変調データを離散フーリエ変換により時間領域信号に変換し、遅延波対策のガードタイムとしてCyclic Prefixを付与する処理を行うが、図中では説明を省略している。OFDM復調回路3は逆の操作を行うが、同様に省略している。
【0048】
このように、干渉波検出により同定される被干渉サブキャリアの数に制約を設けることで、干渉波が存在しない瞬時OFDMシンボルに対して、被干渉サブキャリアの誤検出を回避しながら、測定誤り率に応じて干渉判定閾値を増減させ、受信強度の小さな干渉波の影響を受けた干渉サブキャリアも検出することで受信特性を向上させることができる。
【0049】
以上説明したように、周波数共用型の無線通信における干渉波抑圧技術において、干渉波検出のための閾値として各サブキャリアで計算される残留電力の平均値を用いる従来技術では、バースト的に発生する干渉波の存在する環境における干渉波が存在しない時間帯では、熱雑音の平均化など、誤った閾値算出による誤判定により、所望波の受信電力の減算処理や干渉波の増算処理が生じるという問題がある。本実施形態では、干渉サブキャリア数やビット誤り率を指標として、閾値を調整することにより、干渉波の有無や受信強度に依存しない適切な閾値を決定するようにした。この構成により、所望波の受信特性を高めることができる。
【0050】
前述した実施形態における受信装置をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
周波数共用型の無線通信において、所望波の受信特性を高めることが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・BPF(バンドパスフィルタ)、2・・・信号バッファ、3・・・OFDM復調回路、4・・・振幅位相歪み補正回路、5・・・復調回路、6・・・サブキャリア重み付与回路、7・・・並直列変換回路、8・・・FEC復号器、9・・・伝送路推定部、10・・・誤り測定器、11・・・FEC再符号化器、12・・・直並列変換回路、13・・・再変調回路、14・・・振幅位相歪み付与回路、15・・・OFDM変調回路、16・・・減算器、17・・・I・I、18・・・干渉判定回路、19・・・サブキャリア重み演算回路、20・・・閾値制御回路、21・・・復号ビット抽出回路、22・・・繰り返し処理制御回路、23・・・繰り返し処理対象回路
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8