特許第6291551号(P6291551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6291551スパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291551
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-196094(P2016-196094)
(22)【出願日】2016年10月4日
(62)【分割の表示】特願2014-159989(P2014-159989)の分割
【原出願日】2014年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-36510(P2017-36510A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】高村 博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 了
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−292465(JP,A)
【文献】 特開2014−129559(JP,A)
【文献】 特開2005−194581(JP,A)
【文献】 特開平08−291382(JP,A)
【文献】 特開2011−190527(JP,A)
【文献】 特開平11−200028(JP,A)
【文献】 特開2001−335925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合したスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体であって、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を融点が600〜3500℃であるワイヤー状材料で覆うものであって、該ワイヤー状の材料の厚みが、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の厚みに対して、(ワイヤー状材料厚み)/(ロウ材厚み)=100〜130%であり、該ワイヤー状材料がスパッタリングターゲットとバッキングプレートとの間に挿入されていることを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項2】
ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合したスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体であって、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を融点が600〜3500℃であり、ロウ材の厚みと同等の厚みのワイヤー材料で覆われており、該ワイヤー状材料がスパッタリングターゲットとバッキングプレートとの間に挿入されていることを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項3】
ワイヤー状材料の軸方向断面形状が、円形、楕円形又は矩形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項4】
スパッタリングターゲットが、半導体材料、酸化物材料、金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項5】
前記半導体材料が、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)であることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項6】
前記酸化物材料が、Al、PZT(Pb(Zr,Ti)O)、HfO、La、MgO、ITO若しくはIGZOであることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項7】
前記金属材料が、インジウム、モリブデン又はタングステンであることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項8】
バッキングプレートが、無酸素銅、銅合金、アルミ合金、チタン、SUS又はモリブデンから選択した材料からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項9】
ロウ材が、インジウム(2N以上)、In−Sn合金(Sn:60〜90at%)又はSn−Ag合金(Ag:3〜20at%)から選択した材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項10】
ワイヤー状材料が、アルミニウム(4N以上)、チタン(4N以上)、モリブデン(3N以上)、銅(4N以上)、銅合金(CuZn、CuCr、C18000(CuNiSiCr))又はタングステン(4N以上)から選択した材料からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項11】
ワイヤー状材料が、半導体材料、酸化物材料、金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の組成を含有する材料であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項12】
ワイヤー状材料の、外表面の表面粗さがRa2〜10μmであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項13】
ワイヤー状材料の挿入部となるバッキングプレートの上面に、溝を設けたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【請求項14】
スパッタリングターゲットとバッキングプレートとをロウ材を使用して接合した後又は接合する時に、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、融点が600〜3500℃であり、軸方向断面形状が円形、楕円形又は矩形であり、スパッタリングターゲットとバッキングプレートの間に挿入されたワイヤー状の材料で覆い、該ワイヤー状の材料の厚みを、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の厚みに対して、(ワイヤー状材料厚み)/(ロウ材厚み)=100〜130%として接合することを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項15】
スパッタリングターゲットとバッキングプレートとをロウ材を使用して接合した後又は接合する時に、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、融点が600〜3500℃であり、軸方向断面形状が円形、楕円形又は矩形であるワイヤー状の材料をターゲットとバッキングプレートの間に塑性変形させながら挿入することを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造方法。
【請求項16】
該ワイヤー状の材料の厚みを、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の厚みに対して、(ワイヤー状材料厚み)/(ロウ材厚み)=100〜130%として挿入することを特徴とする請求項15に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合した場合のアーキングの発生又はパーティクルの発生を抑制することができるスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの薄膜形成方法の一つにスパッタリングがある。しかし近年、ナノ領域への微細化が進み、スパッタリングにおいてはパーティクルの管理が益々厳しくなっている。そのため、長年実施されてきた方法についても改めて見直し、スパッタ中のパーティクル低減に繋がる対策を打つ必要がある。
【0003】
スパッタリングターゲットにおいては、そのターゲット材料とバッキングプレートの接合においては2つに大別される。一つは拡散接合法と呼ばれるもので、真空中で貼り合わせて封入されたターゲット材料とバッキングプレート材料を高圧下で適度な温度で熱処理することにより、両材料を互いに拡散して接合される。
【0004】
もう一方は、InやSn合金等の低融点材料をターゲットとバッキングプレートとの間にロウ材として挿入し、貼り合わせて接合する、すなわちロウ付け(Solder bonding)法である。前者の拡散接合法では、ターゲット材とバッキングプレート材以外の材料が介在することがなくクリーンなうえ、また接合部の耐熱温度が後者のロウ材を用いた場合より高いというメリットがある。そのためハイパワーなスパッタにも適しており、Ti,Al,Cu,Ta,Co等の主に金属材料からならスパッタリングターゲットには既に適用されている。
【0005】
一方、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の半導体材料、PZT(Pb(Zr,Ti)O)、HfO,La,MgO等の酸化物材料においては、脆性材料であることやその他の材料特性上の問題から拡散接合は行えず、現在もロウ付け法でスパッタリングターゲットが作製されている。
バッキングプレートプレート材には、熱伝導度が大きく冷却効率に優れた主に無酸素銅や銅合金、アルミ合金が使用されているが、他の金属(合金を含む)材料も使用される。
【0006】
ロウ付けで作製されたスパッタリングターゲットにおいて、板状のターゲットとバッキングプレートとの側面から観察されるロウ材の層は、従来、そのまま剥き出しになった状態で使用されていた(図1及び図2のa参照)。
この場合、表層にあるロウ材については、スパッタされることや流出の低減を図るために若干削り出すことはあったが、最終的には、ロウ材の層はターゲットとバッキングプレートの外周から(外側)から見える、すなわち外周に露出した状態にあった(図2のb、c参照)。
【0007】
このようなロウ材の層は、一般に厚みが0.1mm〜1.2mmの範囲になるように調整される。特に、ターゲット材料とバッキングプレートの熱膨張差が大きい場合や、ターゲット材料の曲げ強度が小さい場合には、緩衝効果を持たせるために、ロウ材を厚い側に調整することが多い。
以上については、半導体用として用いられるターゲット−バッキングプレート接合体(「組立体」とも言う。)、すなわち円盤(ディスク)状のターゲットを中心に挙げたが、ロウ材の断面構造や厚みについては、ITO,IGZO等のFPDやソーラ用途に使用される角形(矩形)ターゲットにも同様に見られる。
【0008】
板状ターゲットとバッキングプレート接合体(組立体)は、スパッタリング装置(チャンバー)に、そのまま取り付けられる。この結果、板状ターゲットとバッキングプレートとの側面から観察されるロウ材の層の部分は、スパッタリング装置(チャンバー)の中に、位置することになる。
【0009】
一般に、スパッタリングの正常な作動時では、剥きだしになった状態のロウ材の層でも、特に問題となることはなかった。それは、通常ターゲット材がスパッタリングされると、その一部がターゲット−バッキングプレートの側面に回り込み、再析出(リデポ)してロウ材層を覆い、抑えることになるので、薄膜が形成される基板側に悪影響が出ることはないからである。
【0010】
しかし、スパッタリング装置のチャンバー内のプラズマの密度が揺らいだ場合に、ごく稀ではあるが、板状のターゲットとバッキングプレートとの間のロウ材層がスパッタされることがあった。また、ターゲット中の不純物やエロージョン時に形成された突起部の存在等が原因で不測に発生するアーキングがロウ材層を直撃することもあり、これらが基板側でパーティクルとなることがあった。
【0011】
従来は、パーティクル発生の主たる要因が、他の理由が主(支配的)であったこと、またスパッタ膜の配線幅が広い場合には、前記の頻度が低く、少量のパーティクルでは影響が少ないので、特に問題となるものではなかった。しかし、今日のように、半導体の微細化が進むと共に、ターゲット材料の高純度化や高密度化が進んでいるため、パーティクルの発生を厳格に抑制する必要が生じてきた。この点、従来延長線上にあるターゲット−バッキングプレート構造と製造方法では、この点の解決が十分になされていなかったと言える。
【0012】
下記に示す特許文献1には、ボンディング材4を介して互いに接合される高周波スパッタリング用ターゲット3とターゲット電極5が、それらの外周縁より、間隔をおいて内側の領域に接合面11を有し、ターゲット電極は、接合面11の外側に段差10を有し、それによりターゲットとの間に形成される隙間に、導電性材料からなる環状部材が、ターゲット又はターゲット電極とそれぞれ接するように嵌合している高周波スパッタリング用ターゲットのボンディング構造が開示されている。
しかし、この場合、ターゲットに段差10を作製する必要があるため、ターゲットの使用効率が悪くなる問題を有する。また、円環状の段差10を加工する際に、均一な加工が行われなければ、エッジ部に空隙が発生し、エッジ部が多くなるのでパーティクル発生の原因となる欠点がある。
【0013】
また、下記特許文献2には、「複数のターゲット部材を低融点ハンダ材により接合して形成される多分割スパッタリングターゲットにおいて、隣り合ったターゲット材で形成される分割部の底部に沿って、バッキングプレート表面からターゲット材表面の高さの1 / 1 0 以下の高さであるワイヤー状の保護材をハンダ材が露出しないように設置したことを特徴とする多分割スパッタリングターゲット」(請求項1参照)が記載されている。
しかし、この場合は、ワイヤー状の保護材が、ターゲット上にむき出しになっているため、保護材による汚染の影響が少なからずあり、これはスパッタリングが進行するに従って強くなると考えられる。また、保護材と分割ターゲットの隙間が発生した場合には、ハンダ材の漏れの可能性もあるという問題もある。
以上の点に鑑み、本発明は、ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合した場合のパーティクルの発生を、効果的に抑制することができるスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平8−291382号公報
【特許文献2】特開2014−129559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
半導体用途では、微細化が進みスパッタリング時の安定性やパーティクルの管理が非常に厳しくなっている。本願発明は、ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合した場合に発生する問題を解決し、パーティクルの発生を、効果的に抑制する共に、スパッタ装置(チャンバー)内環境を汚染させないスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、以下の発明を提供するものである。
1)ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合したスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体であって、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、融点が600〜3500℃であるワイヤー状材料で覆うことを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
2)ワイヤー状材料の軸方向断面形状が、円形、楕円形又は矩形であることを特徴とする上記1)に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0017】
3)スパッタリングターゲットが、半導体材料、酸化物材料、金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の材料であることを特徴とする上記1)〜2)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
4)前記半導体材料が、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)であることを特徴とする上記3)に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0018】
5)前記酸化物材料が、Al、PZT(Pb(Zr,Ti)O)、HfO、La、MgO、ITO若しくはIGZOであることを特徴とする上記3)に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
6)前記金属材料が、インジウム、モリブデン又はタングステンであることを特徴とする上記3)に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0019】
7)バッキングプレートが、無酸素銅、銅合金、アルミ合金、チタン、SUS又はモリブデンから選択した材料からなることを特徴とする上記1)〜6)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
8)ロウ材が、インジウム(2N以上)、In−Sn合金(Sn:60〜90at%)又はSn−Ag合金(Ag:3〜20at%)から選択した材料からなることを特徴とする上記1)〜7)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0020】
9)ワイヤー状材料が、アルミニウム(4N以上)、チタン(4N以上)、モリブデン(3N以上)、銅(4N以上)、銅合金(CuZn、CuCr、C18000(CuNiSiCr))又はタングステン(4N以上)から選択した材料からなることを特徴とする上記1)〜8)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
10)ワイヤー状材料が、半導体材料、酸化物材料、金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の組成を含有する材料であることを特徴とする上記1)〜9)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0021】
11)ワイヤー状材料の、外表面の表面粗さがRa2〜10μmであることを特徴とする上記1)〜10)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
12)ワイヤー状材料の挿入部となるバッキングプレートの上面に、溝を設けたことを特徴とする上記1)〜11)のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体。
【0022】
13)スパッタリングターゲットとバッキングプレートとをロウ材を使用して接合した後又は接合する時に、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、融点が600〜3500℃であり、軸方向断面形状が円系、楕円形又は矩形であるワイヤー状の材料で覆うことを特徴とするスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造方法。
【0023】
14)融点が600〜3500℃であり、軸方向断面形状が円形、楕円形又は矩形であるワイヤー状の材料の厚みを、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の厚みに対して、(ワイヤー状材料厚み)/(ロウ材厚み)=100〜130%として接合することを特徴とする上記13)に記載のスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上記の通り、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとをロウ材を使用して接合した後又は接合する時に、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、ロウ材よりも融点の高い紐状又はワイヤー状の材料で覆う構造を有するものであるが、これによって、薄膜が形成される基板の方向へロウ材が飛散することを防止し、パーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
これにより、従来よりハイパワーでのスパッタリングにおいても、均一な成膜を可能とし、不良率を低減し、かつ生産効率を上げることができるという大きな効果を有する。また、スパッタ装置内の環境を汚染させない高清浄度のスパッタリングターゲットの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ロウ付けで接合したターゲットとバッキングプレート接合体の、一部断面構造を示す概略説明図である。
図2】従来のターゲット(TG)とバッキングプレート(BP)接合体の、ロウ付け部の様子を示す説明図である。
図3】本発明のターゲット(TG)とバッキングプレート(BP)接合体の、ロウ付け部の一例を示す説明図である。
図4】実施例1の1kWhrから10kWhrにおけるパーティクル数の結果を示す図(図のa)であり、比較例1の1kWhrから10kWhrにおけるパーティクル数の結果を示す図(図のb)である。
図5】実施例2の1kWhrから10kWhrにおけるパーティクル数の結果を示す図(図のa)であり、比較例2の1kWhrから10kWhrにおけるパーティクル数の結果を示す図(図のb)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
Arガスを導入したスパッタリング装置において、ターゲット側をカソードとし基板側をアノードとして、双方に電圧を印加し、Arイオンによるターゲットへの衝撃によりターゲット材を叩き出し、その飛来による基板への被覆方法、又はターゲットからスパッタされた原子がイオン化し、さらにスパッタを行ういわゆる自己スパッタによる被覆方法が、スパッタリング方法として既に知られている。
【0027】
多くの場合、スパッタリングターゲットはバッキングプレートに接合し、かつ該バッキングプレートを冷却して、ターゲットの異常な温度上昇を防止し、安定したスパッタリングが可能なように構成されている。このようなスパッタ装置において通常、バッキングプレートは熱伝導性の良い材料であり、かつ一定の強度を持つ材料が使用される。
【0028】
ここでスパッタリングターゲットは、スパッタリングに供される材料であって、本発明においては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)の半導体材料、Al、PZT(Pb(Zr,Ti)O)、HfO,La,MgO、ITO若しくはIGZOの酸化物材料、インジウム、モリブデン若しくはタングステンの金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の材料を含むものとする。
バッキングプレートの材質は、スパッタリングターゲットに合わせて適宜選択するが、無酸素銅、銅合金、アルミ合金、チタン、SUS、モリブデンが使用されているが、他の金属(合金を含む)材料を用いることもある。
【0029】
図1に、一般的なロウ付けで接合したターゲットとバッキングプレート接合体の構造の例を示す。図1では、バッキングプレートの上にロウ材があり、その上にターゲットがある構造を示す。ロウ材の層の厚みは、通常0.1mm〜1.2mm程度である。
ここで、ロウ材とはスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合するための材料であって、純In(2N以上)、In−Sn合金(Sn60〜90at%)、Sn−Ag合金(Ag3〜20at%)が主に用いられる。これらの融点は、状態図により把握でき、純Inは156℃、In−Sn合金は150℃〜220℃、Sn−Ag合金は220〜350℃程度と把握できる。
【0030】
図2に、従来型のターゲットとバッキングプレート接合体の周縁部付近の代表的な断面構造を示す。図1の破線部で示した接合界面周辺の拡大図になる。図2のa)は、最も一般的な構造になり、ターゲットとバッキングプレートでアーキングの起点となり得る段差や突起部がなく、ロウ材が同一の直径で充填され表面がフラットになったケースである。図1の台形の空間にはO−リングが入るが、そのO−リングより内側はスパッタ時に同一の環境になるため、上記ロウ材の外周は、スパッタリング装置(チャンバー)内で露出していることになる。
【0031】
そこでロウ材がスパッタリングされたり、ごく稀に発生するアーキングがロウ材に直撃することを低減させるために図2のb)や図2のc)に示すようにロウ材をターゲットの直径よりも小さく充填する場合もあった。しかし、この方法ではロウ材が剥き出しになっている問題の根本的な解決にはなっておらず、またターゲットとスパッタリングの角部において、アーキングやリデポ膜の剥離が生じやすく究極のパーティクル低減策ではなかった。
【0032】
本発明は、このようなロウ材に起因するパーティクル発生を抑制するための方策を示すものである。すなわち、ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合したスパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体において、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、ロウ材よりも融点の高い材料で覆うことを提案するものである。この様子を、図3に示す。
【0033】
ここで、このロウ材の外周を覆う融点の高い材料を、ロウ材の周囲に配置することにより、低融点材料の飛散を抑制しスパッタリングにおけるパーティクルを低減できる。ロウ材の融点は前述した通り、130〜350℃程度であり、ロウ材を覆う材料としては、これら融点より100℃高いと良い。好ましくは融点が600℃以上、より好ましくは1000℃以上とし、融点が600〜3500℃のものを選定する。
【0034】
スパッタリングターゲットと同質の材料を選定する場合には、半導体材料、酸化物材料、金属材料、炭化ケイ素(SiC)材料から選択した一種以上の組成を含有する材料を使用することができる。酸化物焼結体のように、種々の組成を含み得る場合には、1以上の組成を選択して含有させた材料を用いることができる。
バッキングプレートと同質の材料を選定する場合には、アルミニウム(4N以上)、チタン(4N以上)、モリブデン(3N以上)、銅(4N以上)、銅合金(CuZn、CuCr、C18000(CuNiSiCr))、タングステン(4N以上)等から選択することができる。
【0035】
ここで、ロウ材を覆うワイヤー状材料の寸法は、その目的上からロウ材厚み方向の厚み(本願では0.1〜1.2mm)と同等もしくはそれ以上、すなわち、(ロウ材を覆うワイヤー状材料の厚み)/(ロウ材厚み)=100〜130%、が好ましい。ここで厚みとは、ターゲットとバッキングプレートをロウ材で接合した状態で、ターゲット上面から見た方向の長さを厚みと定義する。一方、ワイヤー状材料の軸方向断面において、上記厚みと直交するロウ材から外部に向けての厚さはパーティクル発生防止のためには、0.1〜1.2mm、さらに好ましくは0.2〜1.5mmは必要である。
これらを満たす形状としては、ロウ材厚み方向の厚みと同等もしくはそれ以上の直径を有する円形上、もしくは楕円形上(長径がロウ材厚みと同等もしくはそれ以上)、矩形(少なくとも一方の径はロウ材厚みと同等もしくはそれ以上)であっても良い。
【0036】
本発明において、ターゲットの外周縁は、ほぼ平坦とし、融点の高い材料を組み入れるための空間部(段差部)をターゲットに形成することはしない。これは、ターゲットに段差部を作製すると、ターゲットの使用効率が悪くなるからである。また、円環状の段差を作製すると、均一な加工が行われなかった場合に、エッジ部に空隙が発生すること、さらにエッジ部が多くなるので、パーティクル発生の原因となるからである。
【0037】
外周を覆うロウ材よりも融点の高い材料は、通常はワイヤー状の材料を使用するが、これは単に取扱い易いために、このような形状の材料を使用するのであって、外周を覆う材料の形状を、特に制限するものではない。図3に、本発明のワイヤー状の材料の代表例を示す。
【0038】
図3のd)は、断面がほぼ円形の材料を示す。これが本発明の紐状又はワイヤー状の材料の代表的な構造である。ターゲットの全周にロウ材層を窪ませた後、ロウ材よりも融点の高い材料を詰め込んだ構造になる。
インジウム等のロウ材は室温でも変形能を有するため窪みの形状は多少不均一でも紐状又はワイヤー状の材料を押し込むことによって、その表面の位置はターゲットやバッキングプレートの直径と同一にすることが可能である。
紐状又はワイヤー状の材料の端末は、周回させた時に過不足のない長さで切断し、そのままロウ材層に沿って入れても良い。またロウ材層に穴をあけ、端末の一部をターゲットの中心方向へ差し込んで固定しても良い。
【0039】
図3のe)は、ワイヤー状の材料の断面が、ほぼ円形の材料を持いたものであるが、当該ワイヤー状材料の挿入箇所のバッキングプレートに、飛び出し防止用の溝を設けたものである。ターゲット材料はスパッタリングのオンオフで温度が昇降温するため膨張と収縮が繰り返される。一般にこの挙動は直接に冷却されているバッキングプレートより大きくなるためワイヤー状材料が外側に押し出される力が働く。
このような構造は、ワイヤー状材料を、より安定して保持できる効果があり、その端末は周回させた時に過不足のない長さで切断し、そのままロウ材層に詰め込むシンプルな構造でもスパッタリング処理中に飛び出すリスクを十分に低減できる。
【0040】
また、図3のf)は、縦長の楕円形(平たい麺状)の材料を使用したものである。この場合は、ターゲット及びバッキングプレートのエッジ部を少なくできるので、アーキングの発生を、より効果的に抑制できる効果がある。
この場合の例は、縦方向(ターゲットとバッキングプレート方向)に長い楕円形の材料を使用しているが、逆にロウ材厚より1割以上大きい直径を有する、断面がほぼ円形の材料を紐状又はワイヤー状の材料をターゲットとバッキングプレートの間に塑性変形させながら挿入し、飛び出しを抑制することもできる。この場合は、円形の材料が横方向に歪むので、ターゲットとバッキングプレートの間で、やや横長の楕円形となる。本発明は、このようなケースを包含する。
【0041】
このようなロウ材の外周を覆う融点の高い材料としては、バッキングプレートと同様の材料、すなわち無酸素銅、銅合金、アルミ合金、チタン、SUS、モリブデン等を使用することができる。そして、このロウ材の外周を覆う融点の高い材料を、ロウ材の周囲に配置することにより、低融点材料の飛散を抑制しスパッタリングにおけるパーティクルを低減できる。またバッキングプレートと同様の材料を選定することにより、ロウ材層も外観上はバッキングプレートの一部として解釈することが可能となり、スパッタリングの効率を上げる装置設計においても有効活用できるメリットがある。
【0042】
また、ロウ材の外周を覆う融点の高い材料は、ターゲット材料と同一の材料を使用することもできる。この場合、スパッタリング時のプラズマ密度に揺らぎが生じ、ロウ材の部分が蒸発するあるいはスパッタされるような異変が生じた場合でも、ロウ材の周囲がターゲットと同一材料で覆われているので、それがスパッタリングされても、パーティクル増加になりにくいことは容易に理解できるものである。
【0043】
ターゲット材料と同一のワイヤー状の材料の入手が困難な場合は、組成や純度が近似していれば良い。ターゲット材料が半導体や酸化物の場合は、ワイヤー状の材料は皆無であり、また一般的な金属の場合(Ti,Al,Cu,Ta)は拡散接合のケースが多いが、特にWやMoにおいては必ずしもそうでないケースがあり、ターゲット材料と同一の材料が適用される例になる。
【0044】
外周を覆うロウ材よりも融点の高い材料の、外表面の表面粗さをRa2〜10μmとし表面粗さを大きくすることが望ましい。これは、スパッタリング時にターゲットから、側方に飛散して形成されたスパッタ材のリデポ膜が剥離すること抑制するためである。多くの場合、このようなターゲットから側方に飛散するというような事象は発生しないのであるが、そのような僅かなリスクも、このような表面構造を持たせることにより、パーティクルの発生頻度を低減できる。
【0045】
スパッタリングターゲット−バッキングプレート接合体の製造に際しては、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとをロウ材を使用して接合した後又は接合する際に、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、ロウ材よりも融点の高いワイヤー状の材料で覆うことによって達成できる。
【0046】
ロウ材よりも融点の高いワイヤー状の材料の厚みを、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の厚みの1割以上として塑性変形させながら隙間に差し込むことで製造することが可能である。
また低熱膨張材料や曲げ強度が低い材料のターゲット作製においては、ターゲットとバッキングプレート間のロウ材層を、緩衝効果が出るように厚くするので、ロウ材の露出面積が広く、その分、パーティクル発生の高いリスクを従来は伴っていた。
しかし、ワイヤー状の材料が、ロウ材厚と同等以上の幅でロウ材の周囲を覆う限り、パーティクルの発生を抑制する効果がより顕著に現れる。本願発明は、このようなケースを包含するものである。
【実施例】
【0047】
本願発明を、実施例及び比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。すなわち、本発明に含まれる他の態様または変形を包含するものである。
【0048】
(実施例1)
直径330mmの円盤状の単結晶シリコン(Si)ターゲットと、円盤状の無酸素銅(OFC)のバッキングプレートとを、ロウ材となるインジウム(In)の平均層厚が0.28mmtになるように接合(ボンディング)した。
次に、ターゲットとバッキングプレート間に存在するインジウムのロウ材を、ターゲットの側面から片側0.28mm削り取りながら、全周にわたって窪みをつけた。
【0049】
次に、直径0.3mmで純度4Nの銅線を樹脂製のヘラを用いてその窪みに嵌め込み、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体とした。次に、この組立体をスパッタ装置に装着し、スパッタリングを実施し、パーティクルの発生量を調べた。
パーティクルの評価は、出力2000Wでダミーウエハに成膜させながら、1kWhr経過する毎に、モニターウエハを入れて、その時は500Wで50秒間の条件でスパッタリングを行い、そのウエハをパーティクルカウンターで0.2ミクロンより大きいパーティクルの数を調べた。
【0050】
図4のa)に、1kWhrから10kWhrにおけるそのパーティクル数の結果を示す。ロウ材層を4Nの銅線で覆った本条件では、10kWhr間の平均パーティクル数は8.6個であり、スパッタ面の初期の表面状態の影響を低減できる後半7kWhr(積算スパッタリング4〜7kWhr)での平均パーティクル数は、6.0個であった。
【0051】
(比較例1)
直径330mmの円盤状の単結晶シリコン(Si)ターゲットと、円盤状の無酸素銅(OFC)のバッキングプレートとを、ロウ材となるインジウム(In)の平均層厚が0.28mmtになるように接合(ボンディング)した。
次に、インジウム層は円盤状のターゲットと同一の直径になるように調整し、バッキングプレートとも段差がないように処理した。
【0052】
そしてスパッタ装置に装着し、実施例1と同様に、パーティクルの評価は、1kWhr毎に、モニターウエハを入れて、パーティクル数を調べた。
図4のb)に、パーティクル発生数の結果を示す。10kWhr間の平均パーティクル数は14.1個であり、後半7kWhrでの平均パーティクル数は、16.3個であった。以上から、実施例1は、比較例1より成膜されたウエハ上のパーティクル数を低減させる効果があり、特に初期の表面状態の影響を取り除いたスパッタ条件ではその効果が顕著に現れた。
【0053】
(実施例2)
直径330mmの円盤状の単結晶シリコン(Si)ターゲットと、円盤状のモリブデン製のバッキングプレートとを、ロウ材となるインジウム(In)の平均層厚が0.45mmtになるように接合(ボンディング)した。
バッキングプレートの上面には、事前に周縁から0.3mm内側に入ったところを基点に幅0.2mm、深さ0.1mmの溝を加工しておいた。
次に、ターゲットとバッキングプレート間に存在するインジウムのロウ材を、ターゲットの側面から上記溝に入ったインジウムの掻き出しを含め、片側0.5mm削り取りながら、全周にわたって窪みをつけた。
【0054】
次に、エメリー紙でRa5μmに表面粗化した直径0.6mmで純度3N5のモリブデン線を樹脂製のヘラを用いてその窪みに嵌め込み、スパッタリングターゲット−バッキングプレート組立体とした。次に、この組立体をスパッタ装置に装着し、スパッタリングを実施し、パーティクルの発生量を調べた。
パーティクルの評価は、出力2000Wでダミーウエハに成膜させながら、1kWhr経過する毎に、モニターウエハを入れて、その時は500Wで50秒間の条件でスパッタリングを行い、そのウエハをパーティクルカウンターで0.2ミクロンより大きいパーティクルの数を調べた。
【0055】
図5)のa)は、1kWhrから10kWhrにおけるそのパーティクル数の結果を示す図である。ロウ材層を3N5のモリブデン線で覆った条件では、10kWhr間の平均パーティクル数は8.9個であり、スパッタ面の初期の表面状態の影響を低減できる後半7kWhrでの平均パーティクル数は、6.7個であった。
【0056】
(比較例2)
直径330mmの円盤状の単結晶シリコン(Si)ターゲットと、円盤状のモリブデン製のバッキングプレートとを、ロウ材となるインジウム(In)の平均層厚が0.45mmtになるように接合(ボンディング)した。次に、インジウム層は円盤状のターゲットと同一の直径になるように調整し、バッキングプレートとも段差がないように処理した。
【0057】
そしてスパッタ装置に装着し、実施例2と同様に、パーティクルの評価は、1kWhr毎に、モニターウエハを入れて、パーティクル数を調べた。その結果、10kWhr間の平均パーティクル数は16.6個であり、後半7kWhrでの平均パーティクル数は、17.4個であった。図5のb)に、パーティクル発生数の結果を示す。
以上から、実施例2は比較例2より成膜されたウエハ上のパーティクル数を低減させる効果があり、特に初期の表面状態の影響を取り除いたスパッタ条件ではその効果が顕著に現れた。
【0058】
(実施例3−11、比較例3−11)
その他に、表1に記載する組合せにより、スパッタ試験で同様に成膜された基板上のパーティクル数を比較した。
実施例3は、ターゲット材料として円形の6N−Siターゲットを、バッキングプレートと材料としてMo(3N)材料を、ワイヤー状材料としてMo(3N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は7.8個となった。
比較例3は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例3と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は12.1個となった。
【0059】
実施例4は、ターゲット材料として円形の6N−Siターゲットを、バッキングプレートと材料としてTi材料を、ワイヤー状材料としてTi(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は9.5個となった。
比較例4は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例4と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は17.2個となった。
【0060】
実施例5は、ターゲット材料として楕円形の6N−Siターゲットを、バッキングプレートと材料としてCuCr(Cr.1%)材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は11.2個となった。
比較例5は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例5と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は19.9個となった。
【0061】
実施例6は、ターゲット材料として円形のLaターゲットを、バッキングプレートと材料としてOFC材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は128個となった。
比較例6は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例6と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は137個となった。
【0062】
実施例7は、ターゲット材料として円形のMgOターゲットを、バッキングプレートと材料としてCuZn(Zn:30%)材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は150個となった。
比較例7は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例7と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は162個となった。
【0063】
実施例8は、ターゲット材料として円形のW(4N)ターゲットを、バッキングプレートと材料としてOFC材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は22個となった。
比較例8は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例8と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は29個となった。
【0064】
実施例9は、ターゲット材料として円形のW(4N)ターゲットを、バッキングプレートと材料としてOFC材料を、ワイヤー状材料としてW(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は24個となった。
比較例9は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例9と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は33個となった。
【0065】
実施例10は、ターゲット材料として楕円形のITOターゲットを、バッキングプレートと材料としてOFC材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は87個となった。
比較例10は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例10と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は96個となった。
【0066】
実施例11は、ターゲット材料として矩形のIGZOターゲットを、バッキングプレートと材料としてC18000(Ni:2〜3、Si:0.4〜0.8、Cr:0.1〜0.6)材料を、ワイヤー状材料としてCu(4N)を用いた場合である。この結果、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は103個となった。
比較例11は、ワイヤー状材料を配置せずにスパッタリングした場合で、他の条件は実施例11と同一とした場合であるが、スパッタリングの1〜10kWhの平均パーティクル数は114個となった。
【0067】
上記の実施例と比較例の対比から明らかなように、ターゲット材料によってパーティクル数の大小があるけれども、いずれの条件でもワイヤー状材料がある方が、ワイヤー状材料がない場合よりもパーティクル数が小さくなる傾向が得られた。以上から、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、ロウ材よりも融点の高い材料で覆うことによる、著しい効果が確認できる。
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
上記の通り、ロウ材を使用してスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを接合する場合、スパッタリングターゲットとバッキングプレート間のロウ材の外周を、ロウ材よりも融点の高い材料で覆うことにより、ロウ材がスパッタリングターゲットとバッキングプレートの間にむき出しになっていることに起因するパーティクルの発生を効果的に抑制できる優れた効果が得られる。
図1
図2
図3
図4
図5