特許第6291726号(P6291726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6291726
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ブレ補正装置、レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20180305BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
   H04N5/225
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-113480(P2013-113480)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-232236(P2014-232236A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】真田 覚
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−249185(JP,A)
【文献】 特開2011−249185(JP,A)
【文献】 特開2007−065334(JP,A)
【文献】 特開2009−038515(JP,A)
【文献】 特開平10−311997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒とカメラ本体とを含む撮像装置のブレを補正するためのブレ補正装置であって、
前記レンズ鏡筒の光軸に沿う長さの中心よりも被写体側に近い位置に配置され、ブレ検出の基準となる複数の検出軸の少なくとも1つの角速度を検出する第1検出部と、
前記レンズ鏡筒の前記中心よりも前記カメラ本体側に近い位置に配置され、前記複数の検出軸の少なくとも1つの角速度を検出する第2検出部と、
前記第1検出部による検出信号と前記第2検出部による検出信号とに基づく信号により、ブレ補正量を算出する演算部と、
前記演算部によって算出されたブレ補正量に基づいてブレ補正レンズを駆動する駆動部と、
を備えるブレ補正装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレ補正装置において、
前記演算部は、前記第1検出部によって検出された第1検出信号と前記第2検出部によって検出された第2検出信号に基づいて、前記第1検出信号と前記第2検出信号のいずれか一方の信号よりも振幅が小さい信号を算出し、算出された前記振幅が小さい信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレ補正装置おいて、
前記演算部は、前記ブレ補正量の算出において、前記第1検出信号と前記第2検出信号を互いに相殺させた信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置。
【請求項4】
請求項2に記載のブレ補正装置において、
前記演算部は、前記ブレ補正量の算出において、前記第1検出信号と前記第2検出信号を平均化した信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のブレ補正装置において、
前記演算部は、前記第1検出部と前記第2検出部によって検出された前記検出信号の少なくとも一つに重み付けしてブレ補正量を算出するブレ補正装置。
【請求項6】
請求項5に記載のブレ補正装置において、
前記演算部は、
前記レンズ鏡筒の長さを示す鏡筒長情報を取得し、該鏡筒長情報に基づいて前記重みの値を決定するブレ補正装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のブレ補正装置を備えたレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレ補正装置及びレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
角速度検出センサ等によって撮像装置の振動(以降「ブレ」とも記す)を検出し、ブレに応じて光学系の一部を変位させることにより、ブレを補正するブレ補正レンズがある。ブレ補正レンズのブレ検出センサから出力される信号のS/N比の向上を図るための手法が、特許文献1に記載されている。
ブレ補正装置は、撮像装置を操作する操作者が撮像装置を手に持ったことによって起こる、所謂「手ブレ」を補正するための構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−191316号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで一般的には、望遠レンズ等は、レンズ鏡筒の全長が長くなる。また、開放値F値が小さい明るいレンズでは、レンズ鏡筒に備えられるブレ補正レンズの質量が大きくなる。このようなレンズ鏡筒においてブレ補正レンズが作動すると、レンズ鏡筒に力が加わり、レンズ鏡筒に弾性変形による振動が生じる。
【0005】
このとき、ブレ補正レンズは、弾性変形による振動を手ブレによる振動と認識し、さらにブレを補正するように光学系を変位させる。そして、弾性変形によって生じる角速度とブレ補正レンズによる光学系駆動との位相及び周波数によっては、レンズ鏡筒に生じた振動が発振状態となって、レンズ鏡筒に高い周波数の振動が継続的に生じることになる。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、好適なブレ補正制御が可能なブレ補正装置、レンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、レンズ鏡筒とカメラ本体とを含む撮像装置のブレを補正するためのブレ補正装置であって、前記レンズ鏡筒の光軸に沿う長さの中心よりも被写体側に近い位置に配置され、ブレ検出の基準となる複数の検出軸の少なくとも1つの角速度を検出する第1検出部と、前記レンズ鏡筒の前記中心よりも前記カメラ本体側に近い位置に配置され、前記複数の検出軸の少なくとも1つの角速度を検出する第2検出部と、前記第1検出部による検出信号と前記第2検出部による検出信号とに基づく信号により、ブレ補正量を算出する演算部と、前記演算部によって算出されたブレ補正量に基づいてブレ補正レンズを駆動する駆動部と、を備えるブレ補正装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブレ補正装置において、前記演算部は、前記第1検出部によって検出された第1検出信号と前記第2検出部によって検出された第2検出信号に基づいて、前記第1検出信号と前記第2検出信号のいずれか一方の信号よりも振幅が小さい信号を算出し、算出された前記振幅が小さい信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のブレ補正装置おいて、前記演算部は、前記ブレ補正量の算出において、前記第1検出信号と前記第2検出信号を互いに相殺させた信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置である。
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のブレ補正装置において、前記演算部は、前記ブレ補正量の算出において、前記第1検出信号と前記第2検出信号を平均化した信号に基づいて前記ブレ補正量を算出するブレ補正装置である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のブレ補正装置において、前記演算部は、前記第1検出部と前記第2検出部によって検出された前記検出信号の少なくとも一つに重み付けしてブレ補正量を算出するブレ補正装置である。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のブレ補正装置において、前記演算部は、前記レンズ鏡筒の長さを示す鏡筒長情報を取得し、該鏡筒長情報に基づいて前記重みの値を決定するブレ補正装置である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のブレ補正装置を備えたレンズ鏡筒である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適なブレ補正制御が可能なブレ補正装置、レンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態のブレ補正装置と、ブレ補正装置が設けられるレンズ鏡筒とカメラボディとを示した図である。
図2】弾性変形によってレンズ鏡筒に加わる力と検出される角速度の方向を示した図である。
図3図1に示した補正量演算部において行われるブレ補正量の算出を説明するための図である。
図4図1に示した補正量演算部において行われるブレ補正量の算出を説明するための他の図である。
図5】本発明の第1実施形態でいうPitch方向、Yaw方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態を説明する。
【0011】
本明細書では、第1実施形態、第2実施形態の説明に先だって、弾性変形によって生じる振動を解消することの困難性について説明する。
弾性変形によって生じる振動は、本来撮像装置自体の振れではない。このため、撮像装置にとっては外乱ノイズに相当するものとなるが、所謂ホワイトノイズではない。このようなノイズは、上記した特許文献1記載の手法によって低減することは困難である。
【0012】
以上のことから、公知のレンズ鏡筒では、弾性変形によって生じる振動に起因して発生する発振現象を抑えるため、ブレ補正レンズを駆動する制御演算のゲイン(PIDゲイン)を下げる、または、ローパスフィルタを挿入する等の対応を行っていた。
これらの対応は、発振現象の防止には有効であるが、比較的高い周波数の防振性能を犠牲とするものであった。
【0013】
また、理論上は、曲げ一次モードの腹に当たるレンズ鏡筒の部分に角速度センサを配置すれば振動による角速度が発生しないことになる。しかし、腹の位置は振動周波数や撮像装置の姿勢等によって若干変化するので、角速度センサの配置位置によって発振を抑えることは困難であった。
[第1実施形態]
【0014】
[全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態のブレ補正装置と、ブレ補正装置が設けられるレンズ鏡筒100と、レンズ鏡筒100が着脱自在に取り付けられているカメラボディ200とを示した図である。
図1においては、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸Aを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
図1において、カメラボディ200及びレンズ鏡筒100は、YZ平面で切断された縦断面として示される。
【0015】
[発明の特徴部の構成]
ブレ補正装置は、カメラ等の撮像装置1のブレを補正するためのブレ補正装置である。そして、ブレ検出の基準となる複数の検出軸の少なくとも1つに設けられ、検出軸に関する振動を表す振動信号s1、s2をそれぞれ出力する少なくとも2つの角速度センサ1a、1bと、角速度センサ1a、1bによって出力された振動信号s1、s2に基づいて、ブレ補正量を算出する補正量演算部5と、補正量演算部5によって算出されたブレ補正量に基づいてブレ補正レンズ10を駆動するブレ補正レンズ駆動回路8と、を備えている。
【0016】
以上の構成のうち、補正量演算部5は、後述するA/D変換器3a、3b、13、フィルタ処理回路4a、4b、PID位相補償部6、駆動パルス生成部7と共に、レンズマイコン20として一体的に構成される。第1実施形態のブレ補正装置は、レンズマイコン20と角速度センサ1a、1bと、ブレ補正レンズ駆動回路8を含む構成である。
【0017】
第1実施形態のブレ補正装置は、レンズ鏡筒100に設けられる。レンズ鏡筒100は、カメラボディ200に着脱可能に取り付けられている。レンズ鏡筒100において、角速度センサ1aはレンズ鏡筒の光軸Aに沿う長さの中心よりもカメラボディ200に近い位置に設けられ、角速度センサ1bは、この中心よりも被写体に近い位置に設けられている。
【0018】
レンズ鏡筒100は、角速度センサ1a、1bの他、ブレ補正レンズ駆動回路8から出力される駆動信号にしたがってブレ補正レンズ10を駆動させるボイスコイルモータ(VCM)9と、ブレ補正レンズ10の位置を検出するレンズ位置検出センサ11を備えている。
ブレ補正レンズ10は、光軸Aに垂直な平面を移動することで2軸(Pitch方向に沿う軸及びYaw方向に沿う軸)のブレを補正することが可能である。ただし、図1では、説明の簡単のため、Pitch方向の振動を検出するための構成についてのみ示している。
【0019】
図2図4は、図1に示した補正量演算部5において行われるブレ補正量の算出を説明するための図である。図2図3(a)、図4(a)は、いずれもカメラボディ200及びレンズ鏡筒100をYZ平面で切断した縦断面図である。
図2は、弾性変形によってレンズ鏡筒に加わる力と検出される角速度の方向を示している。図示したように、レンズ鏡筒100に弾性変形が生じると、レンズ鏡筒100は、長さ方向の中央付近(腹)でたわみ、振動が発生する。このとき、腹を中心にしたレンズ鏡筒100の両端部においては、方向が反対の角速度が検出される。
【0020】
図3(a)は、図2に示した両端部に角速度センサ1a、1bを設けた状態を示している。図3中に示した矢線Fは、ブレ補正レンズ10の移動方向を示している。図3(b)は角速度センサ1aによって検出された角速度(振動信号)と時間との関係を示している。図3(c)は角速度センサ1bによって検出された角速度と時間との関係を示している。図3(d)は、角速度センサ1aによって検出された角速度と、角速度センサ1bによって検出された角速度とを平均化して得られる角速度を示している。図3(b)〜(d)の縦軸はいずれも角速度を示し、横軸は時間を示している。
【0021】
図3(a)に示したように、レンズ鏡筒100の腹を挟んだ両端部に角速度センサ1a、1bを設けると、角速度センサ1a、1bから出力された角速度は、位相が略逆転した振動信号となる。このため、角速度センサ1aから出力された振動信号と、角速度センサ1aから出力された振動信号とを平均化すると、図3(d)のように、平均化された振動信号は検出された振動信号に比べて小さくなる。
【0022】
第1実施形態の補正量演算部5は、図3(d)に示した振動信号に基づいてブレ補正量を算出する。このとき、振動信号が十分小さくなっているから、レンズ鏡筒100が振動していない、あるいは許容される程度に振動が小さい場合と同様にブレ補正レンズ10の駆動を停止させることができる。
このような構成によれば、レンズ鏡筒100に弾性変形が生じても、ブレ補正レンズ10が弾性変形に追従して駆動し続けることがなく、レンズ鏡筒100の振動が発振することを防ぐことができる。
【0023】
図4(a)は、撮像装置1が、所謂手ブレによってPitch方向に振動している状態を示している。図4(b)は角速度センサ1aによって検出された角速度(振動信号)と時間との関係を示している。図4(c)は角速度センサ1bによって検出された角速度と時間との関係を示している。図4(d)は、角速度センサ1aによって検出された角速度と、角速度センサ1bによって検出された角速度とを平均化して得られる角速度を示している。図4(b)〜(d)の縦軸はいずれも角速度を示し、横軸は時間を示している。
【0024】
撮像装置1が手ブレによって振動する場合、レンズ鏡筒100の両端部には方向が同じ角速度が発生する。このため、角速度センサ1aから出力された振動信号と角速度センサ1aから出力された振動信号とを平均化すると、図4(d)のように、平均化された振動信号は検出された振動信号と略同様の信号となる。
第1実施形態の補正量演算部5は、図4(d)に示した振動信号に基づいてブレ補正量を算出するから、レンズ鏡筒100が角速度センサ1aまたは角速度センサ1bによって検出された角速度で振動している場合と同様にブレ補正レンズ10を駆動させることができる。
このような構成によれば、撮像装置1に手ブレが発生している場合には、ブレ補正レンズ10によって手ブレを補正し、手ブレによる画像品質の低下を防ぐことができる。
【0025】
[動作の説明]
撮像装置1のPitch方向のブレを検出するために、角速度センサ1a、1bがレンズ鏡筒100の両端位置、すなわち、カメラボディ200の側と図示しない被写体の側とに配置されている。角速度センサ1aによって出力された振動信号s1、角速度センサ1bによって出力された振動信号s2は、それぞれアナログ信号処理回路(増幅器及びローパスフィルタ)2a、2bに入力される。振動信号s1、s2は、いずれも角速度センサによって検出された角速度の大きさを示す信号である。
振動信号s1は、アナログ信号処理回路2aに入力される。また、振動信号s1は、アナログ信号処理回路2aに入力される。アナログ信号処理回路2a、2bにおいて、振動信号1s、2sは、それぞれホワイトノイズが除去された後増幅される。
【0026】
アナログ信号処理回路2a、2bにおいてノイズが除去された後増幅された振動信号s1、s2は、レンズマイコン20のA/D変換器3a、3bにおいてデジタル信号に変換される。なお、A/D変換器3a、3bにおいて振動信号がデジタル変換されるタイミングは、同時であることが望ましい。
デジタルデータとして取り込まれた振動信号は、フィルタ処理回路4a、4bに入力される。フィルタ処理回路4a、4bは、振動信号に対して各種デジタルフィルタ処理、例えばセンサのドリフト成分を除去するためのハイパスフィルタ処理等を実行する。
【0027】
フィルタ処理が施された角速度信号は、図3(b)〜(d)、図4(b)〜(d)で説明したように、補正量演算部5において平均化される。角速度信号を平均化することにより、弾性変形によって生じた角速度成分はキャンセルされ、手ブレによって生じた角速度信号は検出値のまま保持される。
補正量演算部5は、平均化処理された角速度センサ出力を基に撮像装置のブレ補正量を算出する。ブレ補正量を算出するための演算には、平均化された振動信号を積分する工程が含まれる。演算後、算出されたブレ補正量を補正するためのブレ補正レンズ10の位置が計算され、ブレ補正レンズ駆動目標位置として出力される。
【0028】
一方、ブレ補正レンズ10の現在位置は、PSD(Position
Sensitive Detector)等のレンズ位置検出センサ11によって検出される。レンズ位置検出センサ11によって検出された現在位置を示す信号は、増幅器及びローパスフィルタを含むアナログ信号処理回路12に入力される。アナログ信号処理回路12は、入力された信号のノイズを除去し、増幅して出力する。
アナログ信号処理回路12から出力された信号は、レンズマイコン20内のA/D変換器13に入力されてデジタル信号に変換される。デジタル変換された信号は、ブレ補正レンズ位置算出部14に入力される。ブレ補正レンズ位置算出部14は、デジタル信号に各種補正処理をし、現在のブレ補正レンズ位置を算出する。
【0029】
ブレ補正レンズ駆動目標位置とブレ補正レンズ位置は、減算回路15において減算され、その差分がPID位相補償部6に入力される。PID位相補償部6は、ブレ補正レンズ10の駆動操作量を算出するPID制御器である。すなわち、PID位相補償部6は、補正量演算部5で演算されたブレ補正レンズ駆動目標位置と現在のブレ補正レンズ位置との差である位置偏差を基にPID制御演算を行い、位置偏差がゼロとなるように駆動操作量を決定する。
PID位相補償部6で決定された駆動操作量は、駆動パルス生成部7に入力される。駆動パルス生成部7は、駆動操作量を表すPWMパルス信号を生成する。PWMパルス信号は、ブレ補正レンズ駆動回路8に出力される。ブレ補正レンズ駆動回路8は、VCM9を駆動するためのPWMドライバである。VCM9は、PWMパルス信号に基づいてブレ補正レンズ10を補正目標位置に移動させる。以上の動作により、一連のブレ補正処理が完了する。
【0030】
以上が、Pitch方向のブレ補正処理に関する説明である。しかし、第1実施形態のブレ補正装置は、Yaw方向のブレについても同様に補正することができる。
図5(a)、(b)は、Pitch方向、Yaw方向を説明するための図である。図5(a)は、カメラボディ200とレンズ鏡筒100とをYZ平面で切断した縦断面図である。図5(b)は、カメラボディ200とレンズ鏡筒100とをXZ平面で切断した横断面図である。
Pitch方向の補正は、X軸を検出軸とし、X軸周りの回転方向、すなわち撮像装置1の矢線Dで示した回動方向のブレを補正する。また、Yaw方向の補正は、Y軸を検出軸とし、Y軸周りの回転方向、すなわち撮像装置1の矢線Eで示した回動方向のブレを補正する。
【0031】
Pitch方向のブレを補正するためには、前記したように、一対の角速度センサ1a、1bがレンズ鏡筒100のカメラボディ側と被写体側とに設けられる。第1実施形態では、Yaw方向のブレを補正するためにも、一対の角速度センサ1c、1dをレンズ鏡筒100のカメラボディ側と被写体側とに設けている。そして、角速度センサ1c、1dから出力された振動信号を、図1で説明したブレ補正装置と同様の装置に入力させる。
角速度センサ1c、1dから出力された振動信号は、ブレ補正装置の補正量演算部5において平均化され、平均化された信号に基づいて補正量演算部5がブレ補正量を算出し、ブレ補正レンズ10の目標位置を決定する。
【0032】
以上、第1実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)角速度センサを1つの検出軸について2つ設け、この角速度センサをレンズ鏡筒の両端部に配置している。このため、角速度センサによって検出された角速度を示す2つの振動信号の位相が反転していて、振幅が等しい場合には両者を平均化して打ち消すことができる。
このため、第1実施形態は、レンズ鏡筒の「腹」の部分を中心にして起こる弾性変形に起因する振動にずれ補正レンズが追従して動作することを防ぐことができる。
(2)また、第1実施形態によれば、手ブレ等によって撮像装置1が振動している場合には、一方の角速度センサによって検出された振動信号の値に基づいてブレ補正レンズの位置を算出することができる。このため、手ブレに関しては、既存の構成と同様にブレ補正レンズを移動させ、ブレを解消することができる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図3(b)〜(d)に示したように、振動信号を平均化して検出された角速度よりも小さい値を得るためには、位相が反転していて、かつ、振幅が等しい角速度が検出される位置に一対の角速度センサを設けることが望ましい。
しかし、レンズ鏡筒100における部品レイアウトや振動の状態により、このような角速度センサの配置が困難である場合もある。
【0034】
第2実施形態は、上記した課題を、振動信号に重み付けを行うことにより解消するものである。
なお、「重み」とは、例えば、一対の角速度レンズのうち、大きい角速度が検出される側の角速度センサから出力される振動信号に「1」以上の値を乗じるものであってもよい。また、例えば、一対の角速度レンズのうち、小さい角速度が検出される側の角速度センサから出力される振動信号に「1」以下の値を乗じるものであってもよい。
さらに、角速度センサの取り付け方により、一対の角速度センサから出力される振動信号の正負が異なる場合、角速度センサの一方から出力される振動信号に「−1」を乗じるものであってもよい。
【0035】
[第3実施形態]
次に、本発明の実施形態3について説明する。
レンズ鏡筒は、撮像装置1のズーム動作やオートフォーカスの動作により、その長さが変化する。このため、振動信号を平均化して検出された角速度よりも小さい値を得るために望ましい角速度センサの取り付け位置も変化することになる。
第3実施形態は、レンズ鏡筒100の長さの変化に応じて振動信号に付けられた重みを変更することにより、レンズ鏡筒100の長さの変化によらず、一対の角速度センサの振動信号の平均化された値を小さくするものである。
【0036】
レンズ鏡筒100の長さに関する情報は、撮像装置1のオートフォーカス機能やズーム機能を制御する制御部から得ることができる。なお、オートフォーカス機能やズーム機能、これを制御する制御部は公知の構成であるから、これ以上の説明は行わない。
第3実施形態では、撮像装置1の焦点距離あるいは撮像倍率に関する情報を、図1に示した補正量演算部5が取得する。そして、取得された情報に対応する重みを決定し、振動信号に重みを乗じた上で平均化するようにしてもよい。
なお、焦点距離あるいは撮像倍率に応じた重みは、補正量演算部5に予め記憶させておくものであってもよいし、焦点距離あるいは撮像倍率と重みとの関係を示す演算式を補正量演算部5に予め記憶させておくものであってもよい。
[変形形態]
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)例えば、上記した実施形態では、角速度センサを1対設ける構成について説明したが、角速度センサはレンズ鏡筒の設計や弾性振動の状況に応じて幾つ設けるものであってもよい。
(2)また、上記した実施形態では、角速度センサから出力された振動信号を単純平均する例を示したが、本実施形態は、このような構成に限定されるものではない。
すなわち、振動信号の処理は、平均化に限定されるものでなく、レンズ鏡筒の弾性変形によって生じる振動に応じて振動信号が出力された場合、2つの角速度センサによって出力された振動信号に基づいて、1つの角速度センサによって出力された振動信号よりも振幅が小さい信号を算出し、算出された信号に基づいてブレ補正量を算出する処理であればよい。
この具体的な処理としては、2つの角速度センサによって出力された振動信号を互いに相殺させることが考えられる。なお、相殺とは、2つの角速度センサのうちの一方の振動信号の値(例えばv1とする)が他方の振動信号の値(例えばv2とする)を完全に打ち消すものでなく、値v1が、値v2を値v1の分だけ打ち消すものであってもよい。
また、平均化の処理は、上記した単純平均の他、角速度センサ1a、1bから出力された振動信号を加重平均することも考えられる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0037】
1:撮像装置、1a,1b,1c,1d:角速度センサ、2a、2b:アナログ信号処理回路、3a、3b:A/D変換器、4a、4b:フィルタ処理回路、5:補正量演算部、6:PID位相補償部、7:駆動パルス生成部、8:ブレ補正レンズ駆動回路、9:VCM、10:ブレ補正レンズ、11:レンズ位置検出センサ、12:アナログ信号処理回路、13:A/D変換器、14:ブレ補正レンズ位置算出部、15:減算回路、20:レンズマイコン、100:レンズ鏡筒、200:カメラボディ
図1
図2
図3
図4
図5