(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(蓄光性蛍光体)
本実施形態の一実施形態の蓄光性蛍光体は、下記組成式(1):
Sr
1-aMg
bZn
cAl
2O
4;Eu
dM
e・・・(1)
で表される。この蓄光性蛍光体は、酸化物系の蛍光体である。
【0016】
式(1)中、Mは、トラップ準位の形成の点から、ジスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ランタニウム(La)、プラセオジム(Pr)、テルビウム(Tb)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ルテチウム(Lu)、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、ネオジム(Nd)及びセリウム(Ce)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を示す。Mで示される元素は、好ましくは、良好な蛍光輝度及び残光特性を有することから、ジスプロシウム(Dy)である。
【0017】
式(1)中、Srの組成比であるaは、良好な蛍光輝度及び残光特性を有する点から、0.05≦a≦0.8であり、好ましくは0.05≦a≦0.3である。より好ましくは、定比組成からの欠損を導入することで残光輝度や残光時間を長くすることができるため、(b+c+d+e)<a≦0.15であり、(b+c+d+e)<a≦0.13であることがより好ましい。
【0018】
Mgの組成比であるbは、0.01≦b<0.1であり、MgをSrサイトに固溶させことでバンドギャップを制御し、優れた残光輝度が得られる点から、好ましくは0.045≦b≦0.08であり、より好ましくは0.05≦b≦0.07である。Mgの組成比は、定比に対して過剰であると優れた残光特性が得られるため好ましく、この場合、a<(b+c+d+e)であり、かつ、c<bである。
【0019】
Znの組成比であるcは0≦c≦0.2であるが、MgサイトをSrとZnに固溶させことで母結晶のバンドギャップを制御し、優れた残光輝度が得られる点から、好ましくは0.020≦c≦0.08であり、より好ましくは0.04≦b≦0.06である。Znの組成比は、定比に対して過剰であると優れた残光特性が得られるため好ましく、この場合、a<(b+c+d+e)であり、かつ、d<bである。
【0020】
Euの組成比であるdは、良好な輝度を有する点から、0≦d≦0.2であるが、コストや励起後の残光輝度を高くする点から、好ましくは0.04≦d≦0.1である。
【0021】
Mの組成比であるeは、0≦e≦0.15であり、トラップ準位を制御し残光時間を長くする観点から、好ましくは0.01≦e≦0.04である。
【0022】
式(1)中、a、b、c、d及びeは、定比組成からの過剰を導入することでも残光輝度や残光時間を長くすることができることから、0<b+c+d+e−a≦0.3が好ましく、0.21≦a+b+c+d+e≦0.23であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態の蓄光性蛍光体の蛍光輝度は、用途に応じて特に限定されないが、460nmの励起による蛍光強度が350cd/m
2以上であることが好ましく、400cd/m
2以上であることがより好ましく、高輝度を有する蛍光体として用いることができることから、450cd/m
2以上であることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の蓄光性蛍光体の、460nmの光源で励起し、励起停止から10分後の残光輝度は、用途に応じて特に限定されないが、300mcd/m
2以上であることが好ましく、350mcd/m
2以上であることがより好ましい。また、その残光強度は、災害、停電時や消灯後においても優れた残光輝度を有する誘導標識や照明として用いることができることから、400mcd/m
2以上であることがさらに好ましく、よりさらに好ましくは、450mcd/m
2以上である。
【0025】
本実施形態では、組成式Sr
0.90Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02で表される蓄光性蛍光体が、高輝度であるため好ましい。
【0026】
本実施形態では、組成式Sr
0.90Mg
0.05Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02で表される蓄光性蛍光体が、比較的輝度が高く、かつ、励起停止後も適度な輝度で発光し続けるため好ましい。
【0027】
本実施形態では、組成式Sr
0.89Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02で表される蓄光性蛍光体が、高輝度であり、かつ、励起停止後も極めて高い輝度で発光し続ける長残光特性を有するため好ましく、該蓄光性蛍光体が、γ-アルミナを用いて得られた蛍光体であることが、より好ましい。
【0028】
本実施形態では、組成式Sr
0.90Mg
0.05Zn
0.05Al
2O
4;Eu
0.035Dy
0.025で表される蓄光性蛍光体が、高輝度であり、かつ、励起停止後も極めて高い輝度で発光し続ける長残光特性を有するため好ましく、該蓄光性蛍光体が、γ-アルミナを用いて得られた蛍光体であることが、より好ましい。
【0029】
本実施形態では、組成式Sr
0.905Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.01Dy
0.03で表される蓄光性蛍光体が、励起停止後において極めて高い輝度で発光し続ける長残光特性を有するため好ましい。
【0030】
(蓄光性蛍光体の製造方法)
本実施形態の蓄光性蛍光体の製造方法は、ストロンチウム元素を含む原料と、マグネシウム元素を含む原料と、必要に応じてユーロピウム元素を含む原料と、酸化アルミニウムと、必要に応じて、ジスプロシウム、サマリウム、ランタニウム、プラセオジム、テルビウム、ホルミウム、ツリウム、ルテチウム、イッテルビウム、エルビウム、ガドリニウム、ネオジム及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む原料と、必要に応じて亜鉛元素を含む原料と、を混合して混合物を得る工程と、その混合物を1200℃〜1700℃の範囲で焼成する工程とを含むものである。
【0031】
本実施形態の蓄光性蛍光体は、特に限定されないが、後述する溶媒を用いない乾式混合や、溶媒を用いた湿式混合などによって製造することができる。蓄光性蛍光体を作製するためには、上記各原料として、無機材料及び金属有機化合物を先駆体(前駆体)に用いることが可能である。無機材料としては、例えば、金属炭酸塩、金属酸化物、金属水酸化物及び/又は金属水酸化酸化物が挙げられる。また、上記各原料としては、適宜乳鉢や、遊星ボールミル、ビーズミル、ハンマーミル、ジェットミル、ローラーミルなどの粉砕機で均一に微細化(ナノサイズ化)した原料を用いることが、高結晶化の点から好ましい。各原料を混合することで、蓄光性蛍光体の原料である混合物を得ることができる。なお、原料の均一性を表す指標としては、下記の数式(2)を用いることができる。
【0032】
均一性 = ΣXi|D50−Di|/D50ΣXi・・・(2)
ここで、Xiは粒子iのヒストグラム値、D50は体積基準のメジアン径、Diは粒子iの体積基準径を示す。該指標では値が大きくなるほど分布が広いことを示す。
上記各原料の上記数式(2)で示される均一性は、通常0.40以下、好ましくは0.30以下、より好ましくは、0.27以下、さらに好ましくは0.25以下である。
また、体積統計値での中位径D50が0.01〜1μmの範囲であることが好ましい。体積統計値での中位径D50は、たとえば、レーザー回折・散乱法により求めることができる。
【0033】
また、金属有機化合物溶液を所定比に混合したものや、多段階で焼成して合成した金属酸化物を原料として用いることが、よりナノ粒子を含む原料となり、金属組成の制御、高結晶性材料合成の観点から好ましい。
蓄光蛍光体の合成では、合成反応中の高結晶化及び金属組成制御とともに混合原子価をもつEuの価数を制御することも重要である。無機材料原料と有機金属化合物を混合した前駆体原料は、焼成過程でカーボンの生成によるEu
2+の生成を促進するなどの効果から有効である。還元反応には、水素を含むAr(アルゴン)ガス、N
2(窒素)ガスなどを用いることが好ましく、材料中にカーボンや有機材料を含ませることも有効である。
【0034】
上記材料を混合するに際し、酸化ホウ素をも混合することが、430〜480nmの波長域の励起光によって励起停止後も高輝度に発光する蓄光性蛍光体を好適に得られることから、好ましい。酸化ホウ素の混合物中での含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、全原料(混合物)100質量%に対して、0.1〜10質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
【0035】
酸化アルミニウムとしては、例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ及び水酸化酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中では、特に、γ‐アルミナ(γ酸化アルミニウム)を原料として用いて焼成した場合、輝度が比較的高く、より長残光な蛍光体が得られるため好ましい。
【0036】
また、金属有機化合物としては、例えば、金属有機酸塩、βジケトナート、金属アルコキシド、金属酢酸塩、金属2−エチルヘキサン酸塩、金属アセチルアセトナート、金属ナフテン酸塩などが挙げられるが、溶媒に溶解する金属有機化合物であれば、特に制限なく用いることができる。
【0037】
溶媒は、金属有機化合物を溶解する溶媒であれば特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセチルアセトナート、エチレングリコール、水などが好ましい。また、溶媒等に解けない金属を含む化合物、例えば、金属オレイン酸塩、金属ステアリン酸塩などの固体材料も、先駆体として用いることができる。
【0038】
このように各原料を混合する方法が、溶媒を用いた湿式混合の場合、その後に溶媒を除去するために、本実施形態の製造方法は、混合物を乾燥する工程を有してもよい。また、金属を含む有機金属化合物や硝酸塩を原料に用いた場合、本実施形態の製造方法は、混合する工程の後に、500℃以下の温度において溶媒及び有機成分の除去を行う工程を有していてもよい。
【0039】
次いで、得られた混合物を、1200℃以上、好ましくは1200℃以上1800℃以下、より好ましくは、高結晶成長とEu価数制御の点から、1400℃以上1700℃以下で焼成する工程を経ることで、蓄光性蛍光体を得ることができる。本実施形態では、温度を多段階で変化させながら混合物を焼成する工程を含むことが好ましい。このように温度を多段階で変化させた焼成は、それによって分解蒸発による組成ずれや不純物相の生成がより有効かつ確実に防止されるので、長残光特性を得る上で望ましい。なお、各温度での焼成の間において、被焼成体の粉砕、混合、及び錠剤成形(加圧成形)を行うと、組成ずれや不純物相の生成をより有効且つ確実に防止する上でより望ましいが、各温度での焼成の間において、被焼成体の粉砕や錠剤成形(加圧成形)を行うことなく、温度を多段階で変化させた焼成を行っても長残光特性を得る上で有効である。
【0040】
焼成工程終了後に、あるいは、温度を多段階で変化させた焼成においては、いずれかの焼成工程の後に、好ましくは最後の焼成工程の後に、被焼成体(蛍光体)を適宜の形状に成型して焼結成型体(蓄光性製品)とすることができる。また、得られた焼結成型体を適宜微粉化して、微粉状の蓄光性蛍光体とすることもできる。
【0041】
該微粉状の蓄光性蛍光体は、固体状バインダーや液状媒体等と共に種々の物体表面に塗布したり、プラスチックス、ゴム、塩化ビニ−ル、合成樹脂又はガラス等と混合して、各色の蓄光性成型体、好ましくは赤色蓄光性成型体や、蛍光膜などとすることもできる。
【0042】
本実施形態によれば、430〜480nmの波長域の光源により励起することで発光すると共に、励起停止後も蓄光特性を有する蓄光性蛍光体、該蓄光性蛍光体を含んでなる蓄光性製品、及び蓄光性蛍光体の製造方法を提供することができる。
そのため、その蓄光性蛍光体を省エネルギーのLED照明技術に好適に適用でき、災害、停電時や消灯後においても誘導標識や照明としての機能を保持することが可能である。その結果、本実施形態の蓄光性蛍光体は、安全、安心な社会に資する優れた白色発光照明装置用の蛍光体として用いることができる。
【0043】
本実施形態によれば、特に、ブルーLEDの波長である460nm付近の励起光源で高輝度を示し、かつ励起光源を停止後も高輝度、長残光を示す。そのため、460nmの励起光源が必要な従来型のLEDに用いられているYAG(セレン系蛍光体)に比べて、広い用途への利用も可能である。例えば、励起時において高い輝度を示し、停電時においても発光するため、安全な避難誘導が行える照明器具への展開が可能である。
更に、本実施形態の蓄光性蛍光体を種々の物品の表面に塗布することや、プラスチックス、ゴム、塩化ビニ−ル、合成樹脂又はガラス等に混合し、成型体もしくは蛍光膜とすることで、道路標識、視認表示、装飾品、レジャー用品、時計、OA機器、教育機器、安全標識及び建築材等に利用することができる。また、本実施形態の蓄光性蛍光体を蛍光ランプの蛍光膜として用いることで、残光性の優れた蛍光ランプとして使用することができる。
【0044】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の特徴を実施例に基づいて、さらに詳しく説明する。なお、以下の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本発明に含まれるものである。
【0046】
<試験方法>
(1)蛍光強度(輝度、cd/m
2)及び残光強度(輝度、mcd/m
2)の測定
得られた試料の蛍光強度は、朝日分光(株)社製の光源(製品名「MAX−302」)を用いて460nmの波長で励起して、(株)トプコン社製の輝度計(製品名「SR−UA1」)で測定した。
残光強度は、暗所で1時間放置後、朝日分光(株)社製の光源(製品名「MAX-302」)を用いて460nmの波長で1分間励起した後、励起を停止した。その5分後及び10分後の残光輝度を(株)トプコン社製の輝度計(製品名「SR−UA1」)で測定した。
【0047】
<原料>
蓄光性蛍光体の合成に際して、以下の原料(試薬)を用いた。
(1)炭酸ストロンチウム((株)レアメタリック社製、純度:99.9%)
(2)α酸化アルミニウム((株)レアメタリック社製、純度:99.9%)
(3)γ酸化アルミニウム((株)レアメタリック社製、純度:99.99%)
(4)酸化マグネシウム((株)レアメタリック社製、純度:99.99%)
(5)酸化ユウロピウム((株)レアメタリック社製、純度:99.99%)
(6)酸化ジスプロシウム((株)レアメタリック社製、純度:99.9%)
(7)酸化ホウ素((株)高純度化学研究所製、純度:99.9%)
【0048】
(実施例1)
Sr
0.90Mg
0.03Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように上記各原料を秤量し、さらに、酸化ホウ素を全原料100質量%に対して1.25質量%になるように該原料に添加して、自動乳鉢を用いて2時間混合して混合物の粉末を得た。なお、酸化アルミニウムとしては、α−アルミナを用いた。また、上記各原料は、予め遊星ミルで均一に微細化した。得られた粉末をアルミナ製の焼成ボードに充填し、アルゴン−水素混合ガス(アルゴン量:3%)中、1400℃にて3時間焼成した。焼成後、乳鉢で粉砕し、均一混合することで粉末を得、さらにこの粉末を錠剤成形して、蛍光体の試料とした。
【0049】
該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。なお、表1及び2中、「欠損」とはAB
2O
4のスピネル構造のAサイトが定比組成より少ないことを意味し、「定比」とはAB
2O
4のスピネル構造のAサイトが1.00、Bサイトが2.00の金属組成を持つことを意味し、「過剰」とはAB
2O
4のスピネル構造のAサイトが定比組成より多い金属組成を含むことを意味する。
【0050】
(実施例2)
Sr
0.90Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例1と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0051】
(実施例3)
Sr
0.90Mg
0.05Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例1と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0052】
(実施例4)
Sr
0.90Mg
0.06Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例1と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
比較例1として、SrAl
2O
4;Eu
:Dyの組成を有する蓄光性蛍光体(ネモトルミマテリアル社製、製品名「GLL300FF」)を実施例1と同様に錠剤成形して、蛍光体の試料とした。その試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
比較例2として、SrAl
2O
4;Eu
:Dyの組成を有する蓄光性蛍光体(ネモトルミマテリアル社製、製品名「GLL300M」)を実施例1と同様に錠剤成形して、蛍光体の試料とした。その試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
(実施例5)
焼成温度を1450℃とした以外は、実施例1と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0056】
(実施例6)
焼成温度を1450℃とした以外は、実施例2と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0057】
(実施例7)
焼成温度を1450℃とした以外は、実施例3と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0058】
(実施例8)
焼成温度を1450℃とした以外は、実施例4と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1及び2に示す結果から明らかなように、本発明の蓄光性蛍光体は、460nmの波長域の励起光によって発光し、励起停止後も発光することが分かる。
特に、表1に示す結果から、定比組成を有する実施例2の蓄光性蛍光体の10分後の残光輝度が118mcd/m
2であるのに対して、Mgの含有量が過剰である実施例3及び4の10分後の残光輝度がそれぞれ271mcd/m
2と135mcd/m
2であることから、Mgの含有量が過剰であると残光特性が向上することが分かる。
【0062】
(実施例9)
酸化アルミニウムとして、γ−アルミナを用いた以外は、実施例6と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を実施例6の結果と共に表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示す結果から、α−アルミナを用いて得られた蓄光性蛍光体の10分後の残光輝度が129mcd/m
2であるのに対して、γ-アルミナを用いて得られた蓄光性蛍光体の10分後の残光輝度が、355mcd/m
2であることから、γ‐アルミナを用いて焼成した場合、高い輝度を有しながら、顕著な残光特性を有することが分かる。
【0065】
(実施例10)
Sr
0.89Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例9と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を実施例9の結果と共に表4に示す。
【0066】
(実施例11)
Sr
0.87Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.04Dy
0.02の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例9と同様にして、試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を実施例9の結果と共に表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
表4に示す結果から、γ-アルミナを用いた場合でも、欠損を有する蓄光性蛍光体が、極めて高輝度の残光特性を有することが分かる。この輝度は、表1の比較例に示す結果との対比から、従来品と比べても極めて顕著な残光特性を有することが分かる。
【0069】
(実施例12)
Sr
0.905Mg
0.04Al
2O
4;Eu
0.01Dy
0.03の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例9と同様にして、試料を調製し、1500℃、N
2:H
2=97:3の雰囲気で5時間焼成した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【0071】
(実施例13)
Sr
0.90Mg
0.05Zn
0.05Al
2O
4;Eu
0.035Dy
0.025の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例12と同様にして試料を調製し、1500℃、N
2:H
2=97:3の雰囲気で5時間焼成した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を表6に示す。
【0072】
(実施例14)
Sr
0.90Mg
0.05Al
2O
4;Eu
0.035Dy
0.025の組成比になるように各原料を秤量した以外は、実施例13と同様にして試料を調製した。該試料について、蛍光強度及び残光強度を測定した。その結果を実施例13の結果と共に表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
表6に示す結果から、Zn(亜鉛)をドーピングすることにより、高い残光強度(輝度)を有する蓄光性蛍光体が得られることが分かる。
(式中、a、b、c、d及びeは、それぞれ0.05≦a≦0.8、0.01≦b<0.1、0≦c≦0.2、0≦d≦0.2、0≦e≦0.15であり、Mは、ジスプロシウム、サマリウム、ランタニウム、プラセオジム、テルビウム、ホルミウム、ツリウム、ルテチウム、イッテルビウム、エルビウム、ガドリニウム、ネオジム及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を示す。)で表され、430〜480nmの波長域の励起光によって発光する、