(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6292760
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】固形調味料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20180305BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-50931(P2013-50931)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-176318(P2014-176318A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】松井 直也
(72)【発明者】
【氏名】上林 和幸
【審査官】
中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−176691(JP,A)
【文献】
特開2006−020588(JP,A)
【文献】
特開昭63−301760(JP,A)
【文献】
特開昭56−051967(JP,A)
【文献】
特開2004−049220(JP,A)
【文献】
特開2013−031434(JP,A)
【文献】
特開平05−068507(JP,A)
【文献】
特開昭63−091058(JP,A)
【文献】
特開2011−244712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27/00−27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多
孔質体ブロックを製造する工程、および該多孔質体ブロックに揮発性成分を含有する調味
料液を含浸させる工程を含む、ブロック状の固形調味料の製造方法。
【請求項2】
多孔質体ブロックが、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物を乾燥重量
基準で20重量%以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含むス
ラリー状液を凍結乾燥することにより多孔質体ブロックを製造する、請求項1または2に
記載の方法。
【請求項4】
多孔質体ブロックの乾燥重量の30〜60重量%の調味料液を含浸させる、請求項1〜
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
固形調味料の水分含有量が、19〜32重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に
記載の方法。
【請求項6】
含浸後に乾燥工程を含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
調味料液に含有される揮発性成分が酢、酒、醤油、味噌、乳発酵食品、野菜、または果
実に由来する化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水溶性の多糖類がペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナ
ン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、アガロースまたはアガロペクチンである、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
セルロースを含む原料として、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロ
ース、ビートファイバー、ポテトパルプ、コーンパルプ、または果実パルプを用いる、請
求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
デンプンまたは水溶性の多糖類を含む原料として、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コーンスタ
ーチ、小麦澱粉、米澱粉、餅米澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、もしくはそれらの加工で
ん粉、寒天、または天然ガムを用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
多孔質体ブロックがさらにタンパク質を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項12】
タンパク質を含む原料として、小麦粉、大豆粉、卵白、乾燥卵白、ごまパウダー、海藻
パウダー、ヨーグルトパウダー、粉乳またはチーズパウダーを用いる、請求項11に記載
の方法。
【請求項13】
セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多
孔質体ブロックに、揮発性成分を含有する調味料液が含浸され、水分含有量が19〜32重量%である、ブロック状の固形調味料。
【請求項14】
多孔質体ブロックが、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物を乾燥重量
基準で20重量%以上含む、請求項13に記載の固形調味料。
【請求項15】
調味しようとする食品に対して消費者が削って使用するための、請求項13または14に記載の固形調味料。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の固形調味料と、該固形調味料を削るための器
具とを含む、調味料キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費者が調味しようとする食品に対して削りかける等して使用するための新規な固形調味料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食する際には液体であるスープなどの食品を凍結乾燥するなどして固形のブロック状として提供する技術は広く知られている。そのような技術分野において、ユーザがお湯をかけた際に湯戻りがよくなるようにするための工夫も様々行われている。例えば特許文献1には、フリーズドライ食品を製造する際、DE値5以下の水溶性多糖類であるデキストリンを含ませることにより、湯戻し時の分散性(ブロックの崩壊性)に優れたフリーズドライ食品が製造できることが開示されている。
【0003】
また、通常は液体である調味料を粉末状または顆粒状として提供することも従来行われている。例えば特許文献2には、澱粉や小麦粉などの食品粉末に醤油、酢、酒などの液体状の調味料を接触および乾燥させて粉末状食品を製造することが開示されている。特許文献3には、水不溶性カルシウム、酸味料および食塩の微粉末を配合して溶解性をコントロールしたことを特徴とする、サラダ等に用いる顆粒状調味料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−109786号公報
【特許文献2】特開2001−269133号公報
【特許文献3】特開平8−126478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、様々な風味の調味料が市販されているが、その性状は液状、粉末状、あるいはゲル状などの数種類に留まり、いずれも既に消費者にとってはありふれたものとして認識されている。そこで、本発明は従来にない性状を有する調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、調味料における新規の性状について検討するに際し、固形のチーズを削り器などで削って食品にかける、という態様を想起した。そのまま食品にかけて使用できる粉チーズも市販されているが、それでもあえて固形のチーズを購入して自ら削って使用することを好む消費者も多い。その理由としては、市販の粉チーズと比べてしっとり感があること、比較的大きい粒子とすることができ形状も扁平となることでボリューム感がでること、粒の大きさが不均一になることで風味に奥行きを感じられること、粒の大きさを自由に調節できること、などが考えられる。そこで本発明者らは、本来は液体である調味料をチーズのように固形体として提供し、消費者がそれを削って使用する、という新規な調味料の態様に想到した。
【0007】
本来は液体である食品を固形のブロック状として提供する技術としては、即席スープなどの製造における凍結乾燥(フリーズドライ)製法が広く知られている。しかし、食酢や醤油に含まれる香気成分は揮発性が高いため、そのような香気成分を有する調味料を単に凍結乾燥により固形化しようとしても、香気成分の大半が抜けてしまい、元の液体の調味料と比べて風味が著しく劣ることとなる。また、消費者が削って使用することができる固形調味料とするためには、削ることができる程度にしっかり固まっており、削った際にボロボロと崩れることがない、固形チーズのような物性を実現する必要もある。
【0008】
本発明者らは、検討の結果、まず、セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多孔質体を製造し、そこに調味料液を含浸させることにより、所望の物性を有する固形調味料を提供できることを見出した。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多孔質体を製造する工程、および該多孔質体に揮発性成分を含有する調味料液を含浸させる工程を含む、固形調味料の製造方法。
(2)多孔質体が、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物を乾燥重量基準で20重量%以上含む、(1)に記載の方法。
(3)セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含むスラリー状液を凍結乾燥することにより多孔質体を製造する、(1)または(2)に記載の方法。
(4)多孔質体の乾燥重量の30〜60重量%の調味料液を含浸させる、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)調味料液に含有される揮発性成分が酢、酒、醤油、味噌、乳発酵食品、野菜、または果実に由来する化合物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)水溶性の多糖類がペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、アガロースまたはアガロペクチンである、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)セルロースを含む原料として、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース、ビートファイバー、ポテトパルプ、コーンパルプ、または果実パルプを用いる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)デンプンまたは水溶性の多糖類を含む原料として、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、餅米澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、もしくはそれらの加工でん粉、寒天、または天然ガムを用いる、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)多孔質体がさらにタンパク質を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)タンパク質を含む原料として、小麦粉、大豆粉、卵白、乾燥卵白、ごまパウダー、海藻パウダー、ヨーグルトパウダー、粉乳またはチーズパウダーを用いる、(9)に記載の方法。
(11)セルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多孔質体に、揮発性成分を含有する調味料液が含浸された固形調味料。
(12)多孔質体が、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物を乾燥重量基準で20重量%以上含む、(11)に記載の固形調味料。
(13)調味しようとする食品に対して消費者が削って使用するための、(11)または(12)に記載の固形調味料。
(14)(11)または(12)に記載の固形調味料と、該固形調味料を削るための器具とを含む、調味料キット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来にない新規な固形調味料を提供することができ、消費者に新たな調味料の選択肢を提供することができる。本発明の方法により製造した固形調味料は、調味料が本来有する香味などの揮発性成分が損なわれておらず、優れた風味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の固形調味料は、まずセルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを含む多孔質体を製造し、次いで該多孔質体に揮発性成分を含有する調味料液を含浸させることにより製造することができる。なお、本明細書において「固形」とは人間の手で把持可能な程度の大きさを有する立体形状を有するもの、例えば少なくとも一辺が1cm以上の長さを有するブロック状のものを意図している。
【0012】
多孔質体は、例えばセルロースまたは難消化性デキストリンと、デンプンまたは水溶性の多糖類とを水に分散または溶解させてスラリー状液を調製し、均一になるまで攪拌した後に容器に入れ、凍結乾燥処理をすることにより製造することができる。凍結乾燥処理の手法は当業者には広く知られており、例えば−30℃程度の温度で急速に水分を凍結させた後、すみやかに真空度200Pa程度以下の減圧下において凍結した水分を昇華させることにより行われる。セルロースと難消化性デキストリンは、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは混合して用いてもよい。同様に、デンプンおよび水溶性の多糖類は、一種のみを用いてもよく、あるいは二種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
セルロースを含有する原料としては、例えば微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース、ビートファイバー、ポテトパルプ、コーンパルプ、リンゴやオレンジなどの果実パルプを使用することができる。中でも、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、粉末セルロース、ビートファイバーまたはリンゴパルプ、とりわけ微結晶セルロースまたは微小繊維状セルロース、粉末セルロースを用いるのが好ましい。セルロースまたは難消化性デキストリンは、多孔質体を構成するベースとなる成分である。セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物の重量が、多孔質体の乾燥重量基準で20重量%以上、特に25重量%以上、とりわけ30重量%以上となるようにすることが好ましい。セルロースまたは難消化性デキストリンは、多孔質体の水への溶解度を低下させると考えられる。セルロースまたは難消化性デキストリンは、調味料液を含浸させた際に多孔質体が過度に軟化せず当初の形状を保持するため、および削ることができる固形チーズのような物性を実現するために必要となる成分である。
【0014】
デンプンと同様に用いることができる水溶性の多糖類の具体例としては、ペクチン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、グルコマンナン、アガロースおよびアガロペクチンが挙げられる。デンプンまたは水溶性多糖類を含む原料としては、例えば馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ(トウモロコシ澱粉)、小麦澱粉、米澱粉、餅米澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、もしくはそれらの加工でん粉、寒天、または天然ガムを使用することができる。中でも、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉またはコーンスターチを用いるのが好ましい。デンプンまたは水溶性の多糖類は、多孔質体に調味料液を含浸させて固形調味料とする際に、保形性向上作用および離水抑制作用を奏する。多孔質体全体に含まれるデンプン、水溶性多糖類またはその混合物の重量は、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物100重量部に対して10重量部以上、特に15重量部以上、とりわけ20重量部以上となるようにすることが好ましく、20〜30重量部となるようにすることがより好ましい。
【0015】
多孔質体は、さらにタンパク質を含んでいてもよい。多孔質体にタンパク質を加えることにより、調味料液を含浸させて固形調味料とした際にボリューム感を出し、固形調味料を削って使用した際に調味料による風味が際立つようになる。多孔質体に加えるタンパク質の具体例としては、小麦タンパク(グリアジン、グルテニン)、大豆タンパク、ごまタンパク、海藻由来のタンパク(レクチン)などの植物性タンパク質、および卵タンパク、乳タンパクなどの動物性タンパク質が挙げられる。タンパク質を含む原料としては、例えば小麦粉、大豆粉、卵白、乾燥卵白、ごまパウダー、海藻パウダー、ヨーグルトパウダー、粉乳、チーズパウダーなどを使用することができる。多孔質体にタンパク質を加える場合、セルロース、難消化性デキストリンまたはその混合物100重量部に対して2〜60重量部、特に2〜10重量部の量となるようにすることが好ましい。
【0016】
多孔質体に含浸させる揮発性成分を含有する調味料液は、酢、酒、醤油、味噌、乳発酵食品、野菜、またはかんきつ類などの果実に由来する化合物である揮発性成分を有する。そのような揮発性成分は、調味料の香味を構成する成分であり、それらが失われると調味料の風味が著しく損なわれる。そのような揮発性成分としては、例えばカルボン酸類(酢酸など)、アルコール類(エタノールなど)、アルデヒド類(アセトアルデヒドなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ペンチル、酪酸メチル、酪酸エチルなど)、モノテルペン類(リモネンなど)、ケトン類、フラン類、フラノン類、硫化アリル類が挙げられる。調味料液の具体例としては、食酢、醤油、ポン酢、つゆ、タレ、ソース、かんきつ類(レモン、ゆず、すだちなど)などの果実の果汁もしくは果皮抽出液、ネギやニンニクなどの野菜抽出液などが挙げられる。
【0017】
本発明の方法では、予め製造しておいた多孔質体に、揮発成分を含有する調味料液を含浸させる。含浸は、多孔質体に調味料液を噴霧、塗布、注入することにより、または多孔質体を調味料液中に浸漬させることにより行うことができる。本発明の方法においては、多孔質体に調味料液を噴霧することが好ましい。このようにすることで、調味料液は含有する揮発成分が失われてしまう高温下または減圧下などの環境に晒されることがなく、元来有している香味をそのまま固形調味料中に残すことができる。また、固形調味料中の水分含有量の調節も容易になる。調味料液は、多孔質体の特性や調味料液の性質にも依存するが、多孔質体の乾燥重量に対して30〜60重量%、特に35〜55重量%となるような量を含浸させるのが好ましい。そのような量の調味料液を含浸させることにより、本発明の固形調味料の水分含有量は19〜32重量%、特に22〜30重量%となるようにすることが好ましい。
【0018】
多孔質体には、含浸させる調味料液の風味をより向上させる目的で、さらに添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば食塩、クエン酸、香料、香辛料、調味料添加物、醸造調味料、香味油などが挙げられる。
【0019】
上述したような方法により得られる本発明の固形調味料は、従来知られたブロック状のフリーズドライ即席スープや固形スープの素とは異なり、水分含有量が多く、かつセルロースまたは難消化性デキストリンを多く含み、固形チーズのようなしっとりとした性状を有することを特徴とする。また、スライサーやおろし器のような削り器で削ってもボロボロと崩れることがない。本発明の固形調味料は、削り器で削ることにより粒子状、薄膜状、シート状など任意の形状の調味料として調味対象の食品に用いることができる。
【0020】
本発明の固形調味料は、消費者が調味しようとする食品に対して直接削りかけて使用することができる。例えば、食酢を含浸させた固形調味料であれば、削り器で削ってサラダなどの上にかけて調味することができる。サラダに用いた場合、従来の液体調味料と比べて、具材から水分を浸出させにくい上、従来にない食味食感を提供することができる。また、液体調味料と比べて量の調節が容易であり、個々の好みによる味の調節を行いやすい。また、食品を調味する効果が高く、少量用いただけでも十分な風味を食品に付与することができる。
【0021】
本発明の固形調味料は、市販のスライサーやおろし器などで削ることができるが、消費者の利便性向上のために固形調味料とそれを削るための器具とを含む調味料キットとして提供してもよい。キットには、固形調味料を削り器を用いて削って使用するという使用方法を記載したパッケージまたは説明書が含まれることが好ましい。キットには、他の液体または粉末調味料が含まれていてもよい。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
セルロース(天然木材セルロースを微細化した微小繊維状セルロース)を19.61重量%、デンプンを含む原料としての精製乾燥殺菌馬澱(馬鈴薯澱粉)を5.88重量%、添加剤としてのクエン酸を1.96重量%、および水を72.55重量%含有する混合液を調製し、均一になるまで攪拌した後にトレーに入れた。75℃以上の蒸気で殺菌した後、−30℃で8時間以上凍結させ、次いですみやかに乾燥機に入れて、真空度200Pa以下、加熱温度60℃で24時間凍結乾燥し、食用多孔質体を得た。得られた多孔質体から10cm×5cm×3cmの直方体のブロックを切り出し、そこに醸造酢6.8mL(多孔質体ブロックの乾燥重量の50重量%に相当)を噴霧した。噴霧後24時間静置し、醸造酢を内部に浸透させて、本発明の固形調味料を得た。得られた固形調味料の水分含有量は28重量%であった。
【0024】
得られた固形調味料を削り板を用いて削ってみたところ、しっとりとしたチーズのような物性を有しており、ボロボロと崩れることなく問題なく削ることができた。サラダの上に該固形調味料を削りかけてみたところ、ドロドロになることもなく、サラダに食酢の味や香りを付与することができた。
【0025】
(実施例2〜11)
食用多孔質体の原料組成を変更し、食酢の配合量を減量した以外は実施例1と同様にして固形調味料を製造した。各実施例における原料組成を表1に示す。表1中、食酢以外の成分が食用多孔質体の製造のための原料に相当する。いずれの実施例においても、実施例1で製造した固形調味料と同様に使用することができる固形調味料が得られた。得られた固形調味料の水分含有量は22〜30重量%の範囲であった。
【0026】
実施例2〜11では、タンパク質を含む原料として小麦粉を加えた。実施例3では小麦粉に加えて脱臭大豆粉も加えた。タンパク質を含む原料を加えることにより、固形調味料の重量感を増すことができた。タンパク質を含む原料として小麦粉または大豆粉を加える場合、セルロースまたは難消化性デキストリンを含む原料に対する重量比は12%〜58%の範囲とすることが好ましいと判断された。
【0027】
実施例4、5、10、11では、微小繊維状セルロースの一部または全部をビートファイバー、難消化性デキストリン、またはリンゴパルプ(リンゴパルプは一部水分を含むものを使用)に置き換えた。ビートファイバーを用いた場合は多孔質体が茶色く着色する傾向がみられたものの、いずれの場合も固形調味料の風味等には大きな影響はなかった。また、実施例2では精製乾燥殺菌馬澱の一部をトウモロコシでん粉とサツマイモでん粉の混合物をα化したもの(表中では単にでん粉と記載)に置き換えたが、やはり風味等には大きな影響はなかった。
【0028】
実施例6〜11では、添加剤として食塩を追加した。食塩を加えることにより固形調味料の風味が向上したが、食塩の含有量が多いほど得られる固形調味料が軟化する傾向がみられた。
【0029】
実施例1〜11で得られた固形調味料のうち、保形性、固形チーズのようなしっとり感、食酢の含浸の程度などの観点から総合的に評価すると、実施例1、4、5、10および11の組成が特に優れており、実施例1、4および5の組成がとりわけ優れていた。
【0030】
【表1】