(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。
【0012】
<水溶性高分子>
本発明の半導体用濡れ剤は、炭素数2〜20のアルキル基を有する連鎖移動剤の存在下、ビニルエステル化合物を70〜100mol%含む単量体混合物を重合した後、ビニルエステル単位に対する鹸化度が90〜100mol%となるように鹸化して得られる水溶性高分子を含む。
このため、前記水溶性高分子は、以下の式(1)で表される構造単位を主体とし、その末端に炭素数2〜20のアルキル基が導入された構造を有するものとなる。
[−CH
2CH(OH)−] (1)
尚、本発明では、前記単量体混合物は、ビニルエステル化合物の2種以上からなるものであってもよいし、ビニルエステル化合物とその他の単量体を含むものであってもよい。さらに、1種類のビニルエステル化合物のみからなるものも含まれるものとする。
【0013】
ビニルエステル化合物としては、具体的には、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピパリン酸ビニル及びバーサチック酸ビニル等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を併用して用いることができる。上記の内でも、重合安定性が良好であることから酢酸ビニルが好ましい。
本発明では、ビニルエステル化合物に由来する構造単位は、鹸化されることにより前記式(1)で表される
ビニルアルコール構造単位へ変換される。式(1)で表される構造単位は、ウェーハへの吸着性が良好であるとともに、水溶性高分子の水への溶解性を確保する点で重要である。
【0014】
ビニルエステル化合物は、全単量体混合物を基準として70〜100mol%の範囲で用いられることが必要であり、75〜99mol%の範囲が好ましく、80〜98mol%の範囲がより好ましい。ビニルエステル化合物の使用量が70mol%未満の場合、鹸化後の重合体の水溶解性が十分でなく、本発明の半導体用濡れ剤の効果が得られない場合がある。
ここで、上記全単量体混合物とは、必ずしも重合に供する全単量体を予め混合しておくことを要さない。すなわち、重合に供する全単量体を予め混合したものでもよいし、例えば、各単量体を混合せずに別々に添加した場合、又は、各単量体の一部のみを混合して残りを単独で添加するような場合等も含むものとする。
【0015】
本発明では、ビニルエステル化合物以外に、これと共重合可能なその他の単量体を用いても良い。その他の単量体は特に限定されるものではないが、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル及びn−デシルビニルエーテル等の炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル類;スチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸及びフマル酸等の不飽和酸並びにこれらのアルキルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和酸無水物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類等のスルホン酸基含有単量体;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(ジ)アルキルアミノアルキルアミド類;メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(ジ)アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;エチレン、プロピレン、ブチレン等のα―オレフィン類等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
水溶性高分子におけるこれらの単量体の使用量は、0〜30mol%の範囲であり、1〜25mol%の範囲が好ましく、2〜20mol%の範囲がより好ましい。その他の単量体の使用量が30mol%を超えると、前記ビニルエステル化合物の使用量が70mol%未満となるため、水への溶解性が十分でなく、本発明の半導体用濡れ剤の効果が得られない場合がある。
【0016】
その他の単量体の内、以下の式(2)で表される構造単位を与えるものは、ウェーハへの吸着性が向上する点で好ましい。
[−CH
2CH(X)−] (2)
〔式(2)中、Xは炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルエーテル基、炭素数6〜10のアリール基、式(3)若しくは式(4)で表される有機基、炭素数1〜10のアルキル基を有するウレタンアルキル基、炭素数3以上のアルキレン基を有するアルキレンオキシド基、水素又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。〕
−C(=O)O−(CH
2)
m−R
1 (3)
〔式(3)中、R
1は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、mは0〜3の整数を表す。〕
−C(=O)NH−(CH
2)
n−R
2 (4)
〔式(4)中、R
2は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基、nは0〜3の整数を表す。〕
【0017】
式(2)において、Xは炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルエーテル基、炭素数6〜10のアリール基、式(3)若しくは式(4)で表される有機基、炭素数1〜10のアルキル基を有するウレタンアルキル基、炭素数3以上のアルキレン基を有するアルキレンオキシド基、水素又は炭素数1〜3のアルキル基である。Xは、これらの内の1種でもよく、又2種以上を併用してもよい。上記の内、ウェーハに対する吸着性が良好であり、かつ、対応する原料が入手し易い点から、炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルエーテル基、式(3)若しくは式(4)で表される有機基が好ましい。また、耐アルカリ加水分解性が良好である点から炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルエーテル基がさらに好ましい。
【0018】
式(2)で表される構造単位を与える単量体の具体的な化合物としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル及びn−デシルビニルエーテル等の炭素数1〜10のアルキル基を有するアルキルビニルエーテル類;スチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、n−ブチル(メタ)アクリルアミド及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(ジ)アルキルアミノアルキルアミド類;メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(ジ)アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;エチレン、プロピレン、ブチレン等のα―オレフィン類等が挙げられる。
【0019】
炭素数2〜20のアルキル基を有する連鎖移動剤としては、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−メチルヘプタン−2−チオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、2−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、2−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、3−メチル−3−ウンデカンチオール、5−エチル−5−デカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の直鎖又は分岐アルキル基を有する化合物が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。上記の内でも、ウェーハへの吸着性が良好となる点で、炭素数4〜20のアルキル基を有するものが好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有するものがより好ましい。
本発明では、炭素数2〜20のアルキル基を有する連鎖移動剤を用いることにより、水溶性高分子の末端に炭素数2〜20のアルキル基が導入される。これによりウェーハ表面等への吸着性が向上する。アルキル基の炭素数が1の場合は得られる水溶性高分子のウェーハへの吸着性が十分でない場合がある。また、アルキル基の炭素数が20を超えると、得られる高分子の水への溶解性が不足する場合がある。
【0020】
本発明では、上記した連鎖移動剤以外にも、本発明の効果を奏する範囲でその他の連鎖移動剤を用いてもよい。具体的な例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。
連鎖移動剤を用いる際、その好ましい使用量は、全単量体の量に対して0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0021】
水溶性高分子の数平均分子量は、1,000〜50,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは1,000〜30,000の範囲であり、さらに好ましくは1,000〜10,000の範囲である。数平均分子量が1,000未満の場合、ウェーハの濡れ性が不十分となることがあり、50,000を超えると、末端に導入されるアルキル基の量が減少する為、ウェーハ表面への吸着性が低下する。
【0022】
<水溶性高分子の製造方法>
本発明における水溶性高分子は、重合溶媒中、前記炭素数2〜20のアルキル基を有する連鎖移動剤及び重合開始剤等の存在下、ビニルエステル化合物を70〜100mol%含む単量体混合物を重合してポリビニルエステルを得た後、該ビニルエステルに対する鹸化度が90〜100mol%となるように鹸化することにより得ることができる。
【0023】
重合方法は特に制限されるものではないが、溶液重合法が好ましい。溶液重合によれば、本発明の前駆体であるポリビニルエステルを均一な溶液として得ることができる。
溶液重合の際の重合溶媒には、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、及びN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類等が挙げられ、これらの内の1種、又は2種以上を併用して用いてもよい。上記の中でも、重合後のポリマー溶液をそのまま後述する鹸化反応に用いることができる点からメタノールが好ましい。
【0024】
また、重合の際には公知の重合開始剤を使用出来るが、特にラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、過酸化水素等の水溶性過酸化物、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類等の油溶性の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
前記ラジカル重合開始剤の中でも、重合反応の制御が行い易い点より過硫酸塩類やアゾ化合物が好ましく、特に好ましくはアゾ化合物である。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、水溶性高分子全体を構成する全単量体の合計重量に基づいて、0.1〜10質量%の割合で使用することが好ましく、0.1〜5質量%の割合がより好ましく、0.2〜3質量%の割合がさらに好ましい。
【0025】
前記の通り、重合は、炭素数2〜20のアルキル基を有する連鎖移動剤存在下で行われる。これにより、水溶性高分子の末端にアルキル基が導入されると共に、水溶性高分子の分子量を適度に調整することができる。
【0026】
重合時における反応温度としては、30〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、50〜80℃がさらに好ましい。
【0027】
上記重合反応の後、得られた重合体を、有機溶媒中において、触媒の存在下で鹸化する。この鹸化工程で使用する有機溶媒(以下、鹸化溶媒という。)としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びジエチレングリコールなどのアルコール類を使用することができるが、特に、メタノールが好ましい。
【0028】
また、鹸化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコラート及び炭酸ナトリウムなどのアルカリ触媒、硫酸、燐酸及び塩酸などの酸触媒が挙げられる。これら鹸化触媒の中でも、アルカリ触媒を使用することが好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用することがより好ましい。これにより、鹸化速度を早くして、生産性を向上させることができる。
【0029】
この鹸化により、重合体におけるビニルエステル単位の一部又は全部が鹸化されて、ビニルアルコール
構造単位となる。なお、鹸化度は、90〜100mol%の範囲であり、92〜99mol%の範囲が好ましく、95〜98mol%の範囲がより好ましい。鹸化度が90mol%未満の場合、水への溶解性が十分でなく、本発明の半導体用濡れ剤の効果が得られない場合がある。
【0030】
本発明では、鹸化により得られたビニルアルコール
構造単位の一部を炭素数1〜7のアルデヒド化合物によりアセタール化し、以下の一般式(5)で表される構造単位に変性してもよい。
ビニルアルコール
構造単位の一部をアセタール化することにより、ウェーハに対する吸着性をより高めることができる。
【化1】
〔式中、Yは、水素又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であって、該アルキル基は官能基によって置換されていてもよい。〕
【0031】
上記アセタール化を行う場合、水溶性高分子は、分子中にビニルアルコール構造単位を70〜99mol%及びアセタール化された構造単位を1〜30mol%有することが好ましい。
ビニルアルコール
構造単位が99mol%以下、すなわちアセタール化された構造単位が1mol%以上である場合、ウェーハへの吸着性が向上する。また、
ビニルアルコール
構造単位が70mol%以上、すなわちアセタール化された構造単位が30mol%以下であれば、水への溶解性が十分確保される。
【0032】
アセタール化は従来公知の方法を利用することが可能であるが、一般には、ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物とを塩酸等の酸触媒の存在下で脱水縮合させて行われる。例えば、ポリビニルアルコールを1〜30質量%含む水溶液を調整し、−5〜60℃程度の温度範囲で酸触媒及びアルデヒド化合物を接触させて20分〜6時間反応を進行させる。その後、必要に応じて温度を10〜50℃上昇させて更に30分〜5時間熟成反応させて反応を完了し、好ましくは冷却することによりアセタール化ポリビニルアルコールを得る方法が挙げられる。
【0033】
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、並びにアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、t−ブチルアルデヒド及びヘキシルアルデヒド等の直鎖または分岐アルキルアルデヒド類;シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒド等の脂環式又は芳香族アルデヒド類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ホルムアルデヒドを除き、1以上の水素原子がハロゲン等により置換されたものであってもよい。これらの内でも、水に対する溶解性が高くアセタール化反応が容易である点から、直鎖または分岐アルキルアルデヒド類であることが好ましく、その中でもn−プロピルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒドであることがより好ましい。
アルデヒド化合物としては、上記の他にも、2−エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド等の炭素数8以上のアルデヒド化合物を用いてもよい。
【0034】
鹸化により得られた水溶性高分子は、有機溶媒及び水等を公知の方法により乾燥除去し、固体の状態で扱うこともできる。乾燥後、必要に応じて粉砕及び分級等の工程を経てもよい。
また、乾燥前に、例えば酢酸メチル、メタノール及び水等を洗浄液として洗浄することにより、塩類や揮発成分等を低減することもできる。
【0035】
<半導体用濡れ剤>
本発明の半導体用濡れ剤は、前記水溶性高分子及び水を含んでなる。水は、濡れ剤としての効果を損なわないよう、純度の高いものを用いることが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂により不純物イオンを除去した後、濾過により異物を除去した純水若しくは超純水、又は、蒸留水を使用することが好ましい。濡れ剤には、この他に、水との混和性が高いアルコール及びケトン類等の有機溶剤等を含んでいてもよい。
半導体用濡れ剤中の水溶性高分子の割合は、水溶液として扱いやすい粘度であれば特に限定されないが、1〜50質量%の範囲が好ましく、3〜40質量%の範囲がより好ましく、5〜30質量%の範囲がさらに好ましい。
【0036】
本発明における水溶性高分子は、ウェーハ表面等への吸着性に優れ、特に完全に酸化膜が除去された状態のウェーハ表面に対して高い吸着性を示す。このため、ウェーハの表面処理工程に本発明の半導体用濡れ剤を用いた場合、研磨後のウェーハ表面の平滑性を高め、COP及びパーティクル付着による汚染等を低減することができる。これらの効果が得られる理由として、以下のメカニズムを想定している。
ウェーハ表面の平滑性に関しては、半導体用濡れ剤中の水溶性高分子がウェーハ表面に吸着することで、CMPのメカニカル研磨においてウェーハ表面と砥粒との間の摩擦が緩和される。このため、メカニカル研磨によりウェーハ表面に形成される微小な凹凸が低減され、平滑性が向上すると考えられる。
【0037】
また、上述した通り、メカニカル研磨では、ウェーハ表面に研磨用組成物が供給されるとともに研磨パッドがウェーハ表面に押し付けられて回転することにより、ウェーハ表面を物理的に研磨する。よって、ウェーハ表面ではCOP以外の箇所に研磨パッドが押し付けられ、ウェーハ表面に対して垂直方向に研磨されることとなる。メカニカル研磨の進行に伴いCOPは次第に小さくなり、その深さ以上にウェーハ表面が研磨されたときにCOPは消滅することとなる。したがって、メカニカル研磨は、COPの数を減少させ、又その大きさを低減する効果を示すと考えられる。
一方、ケミカル研磨では、研磨の際にCOP内に研磨用組成物が入り込み、塩基性化合物がCOP内部を腐食又はエッチングする。このように、COP内部では、その内部壁に対して垂直方向に研磨されるため、ケミカル研磨の進行に伴いウェーハ表面のCOPは大きくなると考えられる。
本発明では、ウェーハ表面に吸着した水溶性高分子は、メカニカル研磨以上にケミカル研磨を抑制する働きを有するものと想定している。ウェーハに対する水溶性高分子の吸着性が高いほどこの傾向は強くなり、結果として平滑性が高くCOPの少ないウェーハ表面を得ることができると推察される。
【0038】
さらに、ウェーハ表面に水溶性高分子が吸着することにより、その表面が親水化される。これにより、研磨の際のパーティクルの付着による汚染も防止することができる。
【0039】
<研磨用組成物>
本発明の研磨用組成物は、上記半導体用濡れ剤、水、砥粒及びアルカリ化合物を含んでなるものである。研磨用組成物中の半導体用濡れ剤の割合は、特に限定されるものではないが、研磨用組成物がCMPにおける扱い上、又ウェーハ表面に吸着するにあたり適度な粘度とすることが好ましい。研磨用組成物の具体的な粘度は、0.1〜10mPa・sの範囲であることが好ましく、0.3〜8mPa・sの範囲であることがより好ましく、0.5〜5mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。
また、上記水溶性高分子は、研磨剤用組成物全体の0.001〜10質量%の範囲となるよう用いることが好ましく、0.005〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0040】
砥粒としてはコロイダルシリカ等を用いることができる。砥粒としてコロイダルシリカを用いる場合、研磨用組成物におけるその含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましい。コロイダルシリカの使用量が0.1質量%以上であればメカニカル研磨の研磨速度が良好なものとなる。また、50質量%以下であれば、砥粒の分散性が保持され、ウェーハ表面の平滑性が良好なものとすることができる。
【0041】
コリダルシリカの平均粒子径は、必要とする研磨速度と研磨後のウェーハ表面の平滑性から適宜選択されるが、一般的には、2〜500nmの範囲であり、5〜300nmの範囲が好ましく、5〜200nmの範囲がより好ましい。
【0042】
アルカリ化合物としては、水溶性のアルカリ化合物であれば特に制限はなく、アルカリ金属水酸化物、アミン類又はアンモニア若しくは4級水酸化アンモニウム塩等を使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等が挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルペンタミン及びテトラエチルペンタミン等が挙げられる。4級水酸化アンモニウム塩としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。これらの内では、半導体基板に対する汚染が少ないという点からアンモニア又は4級水酸化アンモニウム塩が好ましい。
本発明の研磨用組成物は、前記アルカリ化合物を添加することにより、そのpHが8〜13となるように調整されるのが好ましい。pHの範囲は8.5〜12に調整するのがより好ましい。
【0043】
研磨剤用組成物には、上記以外にも、必要に応じて有機溶剤、各種キレート剤及び界面活性剤等を添加することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例で得られた水溶性高分子の分析方法並びに、実施例及び比較例における半導体用濡れ剤又は研磨用組成物の評価方法について以下に記載する。
【0045】
<鹸化度>
JIS K6726に従って測定した。
【0046】
<数平均分子量(Mn)>
各製造例で得られた鹸化前の共重合体について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC−8220、東ソー製)を用いて、ポリスチレン換算により測定した。
【0047】
<耐エッチング性(E.R.)>
ガラスカッターで3×6cmに切出したウェーハの重量を測定後、3%フッ酸水溶液に20秒浸漬してウェーハ表面の酸化膜を除去し、その後純水で10秒洗浄した。この工程をウェーハの表面が完全撥水になるまで繰り返した。次いで、アンモニア:水の重量比が1:19であるアンモニア水に、水溶性高分子の濃度が0.18wt%となるように半導体用濡れ剤を加えて、エッチング薬液を調整した。ウェーハをエッチング薬液に完全に浸漬させ、25℃、12時間静置してエッチングした。エッチング前後のウェーハ重量変化から、次式に従いエッチングレート(E.R.)を算出した。
【数1】
【0048】
<濡れ性>
耐エッチング性と同様の方法にてウェーハ表面の酸化膜を除去後、0.18wt%の水溶性高分子溶液中に5分間浸漬した。浸漬後、ピンセットを用いて、ウェーハの表面が液面に対して垂直になるように引き上げ、10秒経過時点におけるウェーハ端部からの撥水距離を目視で確認し、以下の基準により判定した。
○:撥水距離 5mm未満
△:撥水距離 5〜10mm
×:撥水距離 10mm超
【0049】
<ウェーハ外観>
耐エッチング性と同様の方法でエッチングを行った後の、ウェーハ表面を目視で確認し、以下の基準により判定した。
○:表面に荒れが認められない
△:表面がやや荒れている
×:表面が著しく荒れている
【0050】
<耐アルカリ性>
50ccのスクリュー瓶に水酸化ナトリウムを水に溶かして調整したpH10のアルカリ水溶液40gに水溶性高分子5.0gを加え、蓋をして良く混合した。アルミブロックヒーター内で50℃、1ヶ月静置後の加水分解率をGC、(ガスクロマトグラフィー GC−2014、島津製作所製)で評価し、以下の基準より判定した。
○:水溶性高分子の加水分解率が5%未満
×:水溶性高分子の加水分解率が5%以上
【0051】
<シリカ分散性>
9ccスクリュー瓶にコロイダルシリカ(1次粒子径:30〜50nm)5.0gに樹脂固形分20%の水溶性高分子水溶液を0.5g加えて、良く混合した。一晩静置後のシリカの粒子径(A)を動的光散乱法(ELSZ−1000、大塚電子製)により測定し、水溶性高分子を加えていないコロイダルシリカの粒子径(B)からの変化率を下式に従って算出し、以下の基準より判定した。
変化率(%)={(A−B)/B}×100
○:変化率が10%未満
△:変化率が10%以上〜30%未満
×:変化率が30%以上
【0052】
製造例1
≪ポリ酢酸ビニルの合成≫
攪拌翼、還流冷却管、温度計、各種導入管を備えた5Lの4つ口フラスコを用意し、重合溶剤としてメタノール1500部を仕込み、窒素導入管から10ml/minの流量にて窒素を吹き込みつつ、40minかけて60℃に昇温した。
昇温を確認後、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬工業製、商品名「V−65」)1.0部をメタノール50部に溶解した開始剤溶液を一括で加え、重合を開始した。
重合の開始と共に、モノマーとして酢酸ビニル(日本酢ビ・ポバール社製、以下「VAc」という)1,000部、連鎖移動剤として1−ドデカンチオール(和光純薬工業社製、以下「DM」という)6.0部をメタノール250部に溶解した連鎖移動剤溶液、V−65の4.0部をメタノール200部に溶解した開始剤溶液をそれぞれ導入管から6時間かけて滴下した。6時間重合させた後、フラスコを室温まで冷却し、4−メトキシフェノールを1.5部加えて重合を停止し、重合体1Aを得た。この重合体1Aの数平均分子量(Mn)は15,000であり、重合収率は86%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用下連鎖移動剤は全て重合体1Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体1Aに含まれる残モノマーは、真空ポンプをフラスコに繋いで、減圧下、50℃で加熱することでメタノールと共に除去した。
≪水溶性高分子の合成(重合体の鹸化)≫
フラスコから重合体1Aを抜出さずに、引き続き鹸化反応を行った。窒素導入管から10ml/minの流量にて窒素を吹き込みつつ、30minかけて混合液を60℃に昇温した。昇温を確認後、水酸化ナトリウム19.8部をメタノール350部に溶かしたアルカリ溶液を一括で加えて鹸化反応を開始した。4時間後、温度を下げて反応を停止した。溶剤をロータリーエバポレーターにてカット後、60℃で一晩真空乾燥して、黄褐色固体の水溶性高分子1Bを得た。水溶性高分子1Bの鹸化度は98.0mol%であった。
【0053】
製造例2
製造例1において、使用した連鎖移動剤の量を2.0部に変更した以外は同様にして、重合体2Aを得た。重合体2AのMnは42,000であり、重合収率は80%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体2Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体2Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子2Bを得た。水溶性高分子2Bの鹸化度は98.0mol%であった
【0054】
製造例3
製造例1において、使用した連鎖移動剤の量を25.0部に変更した以外は同様にして、重合体3Aを得た。重合体3AのMnは5,000であり、重合収率は85%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体3Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体3Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子3Bを得た。水溶性高分子3Bの鹸化度は98.0mol%であった
【0055】
製造例4
製造例1において、使用した連鎖移動剤の量を50.0部に変更した以外は同様にして、重合体4Aを得た。重合体4AのMnは2,300であり、重合収率は81%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体4Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体4Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子4Bを得た。水溶性高分子4Bの鹸化度は98.3mol%であった。
【0056】
製造例5
製造例1において、使用した連鎖移動剤を1−オクタンチオール(花王社製、商品名「チオカルコール08」)30.0部に変更した以外は同様にして、重合体5Aを得た。重合体5AのMnは3,000であり、重合収率は77%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用下連鎖移動剤は全て重合体5Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体5Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子5Bを得た。水溶性高分子5Bの鹸化度は98.7mol%であった。
【0057】
製造例6
製造例1において、使用した連鎖移動剤を1−ブタンチオール(和光純薬工業社製)30.0部に変更した以外は同様にして、重合体6Aを得た。重合体6AのMnは1,900であり、重合収率は75%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体6Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体6Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子6Bを得た。水溶性高分子6Bの鹸化度は98.8mol%であった。
【0058】
製造例7
製造例1において、使用した連鎖移動剤を1−オクタデカンチオール(和光純薬工業社製)30.0部に変更した以外は同様にして、重合体7Aを得た。重合体7AのMnは6,000であり、重合収率は86%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体7Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体7Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子7Bを得た。水溶性高分子7Bの鹸化度は98.3mol%であった。
【0059】
製造例8
攪拌翼、還流冷却管、温度計、各種導入管を備えた3Lの4つ口フラスコを用意し、初期モノマーとしてVAc350部及びn−プロピルビニルエーテル(日本カーバイド社製、以下「NPVE」という)150部、重合溶剤としてメタノール250部を仕込み、攪拌混合した。さらに窒素導入管から10ml/minの流量にて窒素を吹き込みつつ、40minかけて混合液を60℃に昇温した。
昇温を確認後、V−65の2.0部をメタノール50部に溶解した開始剤溶液を一括で加え、重合を開始した。
重合の開始と共に、滴下モノマーとしてVAc500部をモノマー導入管から6時間かけて滴下しながら重合した。一方で、DM40.0部をメタノール150部に溶解した連鎖移動剤溶液、及びV−65の8.0部をメタノール120部に溶解した開始剤溶液も、重合開始共にそれぞれの導入管から6時間かけて滴下した。6時間重合させた後、フラスコを室温まで冷却し、4−メトキシフェノールを0.3部加えて重合を停止し、重合体8Aを得た。この重合体8AのMnは2,500であり、重合収率は83%であった。重合体8Aに含まれる残モノマーは、真空ポンプをフラスコに繋いで、減圧下、50℃で加熱することでメタノールと共に除去した。
重合体8Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子8Bを得た。水溶性高分子8Bの鹸化度は98.0mol%であった。水溶性高分子8Bについて
1H−NMRで組成を測定したところ、ポリビニルアルコール/NPVE=85/15mol%の共重合体であり、鹸化度は98.0mol%であった。
【0060】
製造例9
攪拌翼、還流冷却管、温度計、各種導入管を備えた1Lの4つ口フラスコを用意し、製造例3で得られた重合体3Bを100部、純水400部を仕込み、攪拌翼を150rpmで撹拌させながら90℃に昇温して完全に溶解させた。次いで、内温を60℃まで冷却した後、攪拌を継続しながら98%硫酸11.0部を加えた。さらに、n−ブチルアルデヒド(和光純薬工業社製)6.6部を純水150部で希釈した水溶液を30分間で滴下した。60℃で4時間反応させた後、25%アンモニア水7.7部を加えて反応を終了させた。GCによる分析から、n−ブチルアルデヒドは全量反応していることが確認された。その後、80℃で一晩真空乾燥することにより、黄褐色固体の水溶性高分子9Bを得た。
【0061】
製造例10
製造例1において、使用した連鎖移動剤の量を0.1部に変更した以外は同様にして、重合体10Aを得た。重合体10AのMnは60,000であり、重合収率は85%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体10Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体10Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子10Bを得た。水溶性高分子10Bの鹸化度は98.0mol%であった。
【0062】
製造例11
製造例1において、使用した連鎖移動剤の量を120部に変更した以外は同様にして、重合体11Aを得た。重合体11AのMnは800であり、重合収率は80%であった。GC並びにNMRによる分析から、使用した連鎖移動剤は全て重合体11Aの末端に導入されていることが確認された。
重合体11Aを製造例1と同様に鹸化して、水溶性高分子11Bを得た。水溶性高分子11Bの鹸化度は98.2mol%であった。
【0063】
製造例12
製造例7において、初期モノマーをVAc180部及びNPVE400部とし、滴下モノマーをVAc420部に変更した以外は同様にして、重合体12Aを得た。仕込み量に基づく計算では、全単量体に占めるVAcの割合は、60mol%となる。重合体12AのMnは2,200であり、重合収率は72%であった。
重合体12Aを製造例1と同様に鹸化して、高分子12Bを得た。高分子12Bの組成はポリビニルアルコール/NPVE=65/35mol%の共重合体であり、鹸化度は96.5mol%であった。
【0064】
実施例1
水溶性高分子1Bの濃度が15質量%となるように水を加え、半導体用濡れ剤を調整した。得られた半導体用濡れ剤について、耐エッチング性、濡れ性、ウェーハ外観及び耐アルカリ性の評価を行った。得られた結果について表1に示した。
また、アンモニア水を加えてpHを10.0に調整したコロイダルシリカ分散液(1次粒子系30〜50nm、シリカ固形分10%)10.0g、上記半導体用濡れ剤を0.1g添加して、研磨剤用組成物を得た。得られた研磨剤用組成物についてシリカ分散性を評価し、表1に結果を示した。
【0065】
実施例2〜9及び比較例1〜6
表1に示された水溶性高分子を用いた以外は実施例1と同様に半導体用濡れ剤及び研磨剤組成物を調製した。ただし、比較例3では、鹸化後の高分子が水に溶解しないため、濡れ剤及び研磨剤組成物としての評価ができなかった。各試料の評価結果について表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示された水溶性高分子の詳細は以下の通り。
PVA505:低鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「クラレポバール
PVA505」、鹸化度73.5mol%、重合度500)
HEC:ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業社製、重量平均分子量90,000)
PVP K30:ポリビニルピロリドン(東京化成工業社製)
【0068】
実施例1〜9は、本発明で規定する水溶性高分子を用いた実験例であり、ウェーハへの吸着性が高いため、耐エッチング性、濡れ性及びウェーハへの外観に優れる結果が得られている。また、研磨剤組成物とした場合のシリカ分散性にも優れることが確認された。中でも、水溶性高分子中にアルキルビニルエーテルに由来する構造単位を有する実施例8、及び鹸化により得られたビニルアルコール単位の一部をアセタール化した実施例9は、他の実施例よりも耐エッチング性に優れる結果であった。これらは、ウェーハ表面への吸着性により優れるためと推定される。
一方、水溶性高分子の分子量が本願で規定する上限値よりも高い比較例1は、耐エッチング性に劣るものであった。逆に水溶性高分子の分子量が本願の下限値に満たない比較例2は、ウェーハへの濡れ性が不十分な結果であった。また、鹸化度の低いポリビニルアルコールを用いた比較例4は、酢酸ビニル由来のユニットの加水分解が生じるため、耐アルカリ性が不足するものであった。比較例5及び6は、従来の研磨用組成物に用いられる水溶性高分子であるセルロース誘導体等を用いた例であるが、ウェーハ表面への吸着性及びシリカ分散性の点で、満足するものではなかった。