特許第6293170号(P6293170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293170
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】紙および板紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/10 20060101AFI20180305BHJP
   D21H 23/14 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   D21H21/10
   D21H23/14
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-552177(P2015-552177)
(86)(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公表番号】特表2016-503842(P2016-503842A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】IB2014058145
(87)【国際公開番号】WO2014108844
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2013/070355
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アラン グレイ
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス モーアマン−シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】フーベアト マイクスナー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ミゲル サンチェス セロ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ミューレンベアント
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ジェンヌ−ランデュ
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0000601(US,A1)
【文献】 特表2008−525668(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0282424(US,A1)
【文献】 特表2005−534824(JP,A)
【文献】 特表2000−514144(JP,A)
【文献】 特開2005−054311(JP,A)
【文献】 特表平06−509851(JP,A)
【文献】 特表2001−504174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙を製造する方法であって、セルロース希薄紙料を提供し、1つまたは複数のせん断工程に供して、次に移動式スクリーンを通して脱水し、シートを形成して、該シートを乾燥させる前記方法において、
前記希薄紙料に適用される歩留まり系が使用され、該歩留まり系が、成分として
i)異なるカチオン性ポリマーのブレンド、および
ii)微粒子材料としてベントナイト
を含んでおり、
前記カチオン性ポリマーのブレンドが、
a)ビニルアミン単位を含むポリマーから選択される、1グラムあたり1〜2mEqの電荷密度、および700,000Da超のモル質量を有するカチオン性ポリマー、
b)1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも7dl/gの固有粘度を有するカチオン性ポリマー
を含んでおり、
i)カチオン性ポリマーのブレンドを、最終せん断工程の前に前記希薄紙料に計量供給し、ii)微粒子材料を、最終せん断工程の後に前記希薄紙料に計量供給する、前記方法。
【請求項2】
a)1グラムあたり1〜2mEqの電荷密度、および700,000Da超のモル質量を有するカチオン性ポリマーが、ポリビニルアミン、および部分的に加水分解されたポリビニルカルボキシアミドからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
b)1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも7dl/gの固有粘度を有するカチオン性ポリマーが、
bi)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの第四級塩または酸性塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの第四級塩または酸性塩、およびジアルキルジアリルアンモニウムハロゲン化物からなる群から選択される水溶性カチオン性のエチレン性不飽和モノマー;
bii)アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される、水溶性非イオン性のエチレン性不飽和モノマー
のコポリマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の歩留まり系を用いる、セルロース懸濁液からの紙および板紙の製造方法に関する。
【0002】
高分子の歩留まり向上剤を添加してセルロース希薄紙料(cellulosic thin stock)を凝集させ、次に、この凝集させた懸濁液を移動式スクリーン(moving screen)(多くの場合、機械ワイヤーと呼ばれる)を通して脱水し、次に、湿潤したシートを形成して、その後、このシートを乾燥させることを含む方法により紙を製造することは、充分公知である。
【0003】
紙の生産量を増加させるために、現代の抄紙機の多くは、比較的高速で稼働する。機械速度が増加した結果として、水切れを高める脱水系および歩留まり系がきわめて重要視されている。しかしながら、排水の直前に添加される高分子の歩留まり向上剤の分子量の増大は、水切れを高めるが、地合を損なわせる傾向があることが公知である。高分子の歩留まり向上剤を1種だけ添加して、歩留まり、水切れ、乾燥および地合の最適なバランスを得るのは困難であるため、2種の別個の材料を連続して添加することが一般的である。
【0004】
EP−A−235893は、水溶性の実質的に線状のカチオン性ポリマーを、せん断工程の前に製紙紙料に適用し、次に、前記せん断工程の後にベントナイトを導入することによって再凝集させる方法を提供している。この方法によって、高められた水切れ性、および優れた地合および歩留まりももたらされる。この方法は、BASFによりHydrocol(登録商標)の名称で商品化されており、20年以上の間、成功が証明されている。
【0005】
製紙用の前記Hydrocol(登録商標)系は、ライナーボードおよび折りたたみ箱用板紙の製造を含む広範囲の紙の品種にとってきわめて効果的な微粒子系である。この系の利点には、高い歩留まり度、優れた水切れ性、優れた地合、優れた機械清浄度(machine cleanliness)、優れた印刷適性および費用効率の高い系が含まれる。
【0006】
それ以降、前記成分の1種または複数にわずかな修正を加えることによって、この主題の別形を提供するために種々の試みがなされた。
【0007】
EP−A−335575は、カチオン性デンプンと高分子の水溶性カチオン性ポリマーとから選択される主要ポリマーを、セルロース懸濁液に添加し、その後、この懸濁液を1つまたは複数のせん断工程に通し、続いてベントナイトとコロイドシリカとから選択される無機材料を添加する方法を記載している。前記系では、低分子量のカチオン性ポリマーは、前記主要ポリマーの添加前に前記懸濁液に添加される。前記低分子量ポリマーは、通常、500,000未満、通常、50,000を上回る、多くの場合、100,000を上回る分子量を有することが示される。提案された低分子のカチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ジシアンジアミドホルムアルデヒドのポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのポリマーおよびコポリマー、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのポリマーおよびコポリマー、ならびにジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドのポリマーおよびコポリマー(前記2つとも一般的に、酸添加または第四級アンモニウム塩として)を含む。前記方法は、大量のピッチがある方法、または高カチオンを必要とする方法を改善すると考えられていた。
【0008】
前記方法形式のさらなる展開は、その後、EP−A−910701に開示されており、ここで、2種の異なる水溶性カチオン性ポリマーは連続してパルプに添加され、続いて、前記パルプが少なくとも1つのせん断工程に供されて、続いて、ベントナイト、コロイドシリカまたはクレーが添加される。具体的には、500,000超のモル質量を有するポリエチレンイミンまたは5000〜3,000,000のモル質量を有するビニルアミン基を含むポリマーが、前記パルプに添加されて、次に高分子量のカチオン性ポリアクリルアミドに添加される。
【0009】
EP−A−752496は、700,000未満の分子量を有する低分子量のカチオン性ポリマーならびにカチオン性および/または両性の高分子量ポリマーが、アニオン性無機粒子、例えば、前記希薄紙料懸濁液に計量供給されるシリカまたはベントナイトと同時に前記希薄紙料に添加される製紙方法を開示している。前記低分子量のカチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミンおよびポリビニルアミンを含んでいる。前記ポリマーは、一般的に別個に添加される、しかしながら、前記2種のカチオン性ポリマーは、混合物として添加されてもよいことが示されている。前記ポリマーは、せん断工程の前に添加されてよいことも示されているが、ただし、正確な添加時点は示されていない。この方法が、高分子量のカチオン性または両性のポリマーが、アニオン性無機粒子と併せてのみ使用される方法と比べて、改善された水切れ性および/または歩留まりをもたらすことを述べている。
【0010】
US6103065は、1グラムあたり4mEqを超過する電荷密度を有する分子量100,000〜2,000,000の、少なくとも1種の高電荷密度のカチオン性ポリマーを、高せん断の最終時点の後に紙料に添加すること、および同時に、または連続的に、1グラムあたり4mEq未満の電荷密度を有する2,000,000超の分子量を有する少なくとも1種のポリマーを添加することを含む製紙法を開示している。前記2種のポリマーに続いて、膨潤性のベントナイト系粘土が前記紙料に添加される。前記高電荷密度のポリマーは、ポリエチレンイミンホモポリマーか、またはビニルアミンから製造されるコポリマーもしくはポリマーであってよい。前記文献は、前記方法が、比較的少ないポリマーを使用すること、およびドライヤーに入る固形物を増加させ、その結果、乾燥の必要性を減らすプレスセクションの脱水を改善することによって、慣用のベントナイトプログラムを改善することを示している。
【0011】
紙および板紙の製造では、抄紙機は、最大の乾燥エネルギーを使用している場合に、プレスセクション後の最終ウェブ中に保持される水分量に制限されるようになることがある。繊維および填料物(filler articles)の歩留まりも、潜在的な紙の品質問題のために、標準の歩留まり向上剤および脱水促進剤の系を使用している場合、制限される。歩留まりおよび水切れ性は、添加剤を比較的多く使用することにより改善でき、この添加剤は、歩留まり向上剤および脱水促進剤の化学薬品、例えば、ポリアクリルアミドおよびベントナイトである。しかし、これらの化学薬品を比較的多く計量供給することは、紙シートの物理的特性に悪影響を及ぼすことがある。
【0012】
数多くの慣用の微粒子系の際立った欠点は、水切れ性が、歩留まりの上昇と同時に高まる傾向があることである。このことは、数年前には利点であると思われていたようであるが、しかし、現代の高速抄紙機では、きわめて高い水切れ性は欠点となりうる。これは、ギャップフォーマー機および多層フォードリニア機(multiply fourdrinier machines)の場合に考えられる。折りたたみ箱用板紙は、通常、多層フォードリニア機で製造され、ここで、主な層(ply)は、中間層(一般的に約150〜400g/cm2)である。これらの品種に必須の要件は、坪量が比較的低い場合に歩留まりが優れていて、坪量が高い場合に水切れ性が優れていることである。それにもかかわらず、ほとんどの場合、坪量が比較的高いシートの場合、その水切れ性限界のため、抄紙機の速度を低下させる必要がある。ほとんどの場合、歩留まり向上剤成分を増加させるだけで、ワイヤー上の水切れ性を改善できるが、圧搾装置における水流出量は、減少する傾向がある。さらに、地合に、不利な影響が及ぼされることもある。
【0013】
紙および板紙を製造するための改善された方法を提供することが望ましい。さらに、前述の欠点を克服することが望ましい。
【0014】
本発明によれば、紙または板紙を製造する方法であって、セルロース希薄紙料を提供し、1つまたは複数のせん断工程に供して、次に、移動式スクリーンを通して脱水し、シートを形成して、このシートを乾燥させる前記方法において、
前記希薄紙料に適用される歩留まり系が使用され、この歩留まり系が、成分として
i)異なるカチオン性ポリマーのブレンド、および
ii)微粒子材料
を含んでおり、
前記カチオン性ポリマーのブレンドが、
a)1グラムあたり0.5〜3mEq未満の電荷密度、および700,000Da超のモル質量を有するカチオン性ポリマーであって、ビニルアミン単位を含むポリマーおよびポリエチレンイミンから選択されるカチオン性ポリマー、
b)1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも3dl/gの固有粘度を有するカチオン性ポリマー
を含んでおり、
前記歩留まり系の成分の1種を、最終せん断工程の後に前記希薄紙料に計量供給し、前記歩留まり系のもう1種の成分を、最終せん断工程の前に前記希薄紙料に計量供給する前記方法が提供される。
【0015】
本発明の方法は、特に、板紙、例えば、折りたたみ箱用板紙を製造する場合に、好適に機械速度を上げることができることが判明した。さらに、前記方法は、水切れ性を必ずしも高めることなく歩留まりを改善することができる。このような改善は、歩留まりと水切れ性とのデカップリング効果と見なしてよい。さらに、前記方法は、印刷適性(runnability)を与えると思われる。本発明の方法により製造される紙および板紙のシートは、改善された地合および強度も示す。さらに、前記方法は、紙および板紙の生産性を高める。
【0016】
板または板紙を製造する方法では、セルロース希薄紙料は、一般的に、まず紙料材料と水とからの濃厚紙料懸濁液を生じさせ、次に、この濃厚紙料懸濁液を希釈水で希釈してセルロース性希薄紙料を形成することによって製造される。前記希薄紙料は、1つまたは複数のせん断工程を通され、次に、移動式スクリーン(多くの場合、機械ワイヤーと呼ばれる)上で脱水されて、湿潤したシートが形成され、このシートは、その後乾燥されてよい。板紙を製造する場合、いくつかの層またはパイルが組み合わされて複合シートが形成されてよい。一般的に、希薄紙料懸濁液は、懸濁液の総量に対して固形物0.1〜3%の紙料濃度を有していてよい。
【0017】
紙または板紙を製造する方法では、混合、圧送(pumping)およびスクリーニングから選択されるいくつかのせん断工程があってよい。通常、せん断工程は、1つもしくは複数のファンポンプ、または1つもしくは複数の加圧型スクリーンを含んでいる。一般的に、最終せん断工程は、加圧型スクリーンであることが多い。この最終せん断工程に続いて、前記希薄紙料は、一般的に、ヘッドボックスまたは定量ボックス(constant flow box)に供給されてよく、前記ボックスは、前記希薄紙料を、多くの場合に機械ワイヤーと呼ばれる移動式スクリーン上に供給する。
【0018】
紙は、単層シートとして成形されてよい。しかし、前記方法は、多層の、または多数重なったシートの製造、特に、板紙製造の場合に特に好適である。個々の層の坪量は、同一であるか、ほとんど同じであるか、または異なっていてよい。いくつかの場合、例えば、折りたたみ箱用板紙の製造では、中間層は、比較的高い坪量、例えば、150〜400g/m2を有する。本発明の方法は、板紙の製造に特に好適である。
【0019】
本発明の方法によれば、前記歩留まり成分の少なくとも1種は、最終せん断工程の後に添加されてよい一方、もう1種の成分は、この時点より前に添加されるべきである。第一の歩留まり成分を前記希薄紙料に加えて、次に、このようにして処理した希薄紙料を、1つ以上のせん断工程に通して、次に、最終せん断工程の後に、前記歩留まり成分のもう1種を添加することが望ましい。
【0020】
いくつかの場合、前記微粒子材料を、最終せん断工程の前に前記希薄紙料に計量供給して、次にこの工程に続いて、カチオン性ポリマーのブレンドを計量供給することが望ましい。しかし、カチオン性ポリマーのブレンドが、最終せん断工程の前に前記希薄紙料に計量供給され、次に、前記微粒子材料が、最終せん断工程の後に前記希薄紙料に計量供給されるのが好ましい。
【0021】
1グラムあたり0.5〜3mEq未満の電荷密度を有する、ブレンドのカチオン性ポリマー(a)は、多数の種類のカチオン性ポリマーの任意の1種であってよい、ただし、そのカチオン性ポリマーは、700,000Da超のモル質量を有する。モル質量は、3,000,000Daであってよいが、しかし、一般的に、2,000,000Daまたは2,500,000Daまでである。好適には、モル質量は、少なくとも750,000Daであってよく、多くの場合、少なくとも800,000Daである。多くの場合、モル質量は、少なくとも900,000Da、むしろ少なくとも1,000,000Daになり、またはいくつかの場合、少なくとも1,100,000Da、むしろ少なくとも1,500,000Daになる。モル質量は、例えば、1,000,000Da〜2,000,000Daまたは2,500,000Daまたは3,000,000Da、例えば、1,100,000Da〜1,800,000Daであってよい。好ましいモル質量は、1,500,000〜2,500,000Daである。電荷密度は、1グラムあたり少なくとも1mEq、または1グラムあたり少なくとも1.5mEqであってよい。電荷密度は、例えば、1グラムあたり、例えば2.0または2.5または2.7mEqまでの値よりも高い任意の値であってよいが、ただし、1グラムあたり3mEq未満である。好適には、このカチオン性ポリマーは、ポリエチレンイミン、変性ポリエチレンイミン、ビニルカルボキシアミド、例えば、N−ビニルホルムアミドのポリマーと一般に記載される任意のポリマーであってよく、その後、ビニルアミン単位を得るために、部分的または完全な加水分解が続く。好ましいポリマーは、ポリビニルアミン、および部分的に加水分解されたポリビニルカルボキシアミドからなる群から選択される。
【0022】
成分(a)の特に好ましいカチオン性ポリマーは、1グラムあたり1〜2mEqの電荷密度、および1,500,000〜2,500,000Daのモル質量を有するポリビニルアミン(ビニルアミン単位を有する任意のポリマーを含む)を含んでいる。
【0023】
前記モル質量は、例えば、静的光散乱、小角中性子散乱、X線散乱または沈降速度により測定することができる。
【0024】
前記カチオン性ポリマーの電荷密度は、このポリマーの水溶液をポリビニル硫酸カリウム(KPVS)で滴定することにより測定できる。好適な指示薬、例えば、トルイジンブルーoが使用されてよい。
【0025】
1グラムあたりのミリグラム当量で測定される電荷密度(LA)は、以下の通り測定することができる:
【数1】
前記式中、FKは、ポリマー溶液の非揮発性留分の補正係数である。
【数2】
TNは、ポリマー溶液の理論上の非揮発性留分である;
FRは、測定した、ポリマー溶液の非揮発性留分である;
KVは、滴定で使用されるKPVSの容積(ml)である;
CKは、KPVS溶液の濃度(ミリグラム当量/ml)である;
PTは、使用されるポリマーの理論的質量量(グラム)である。
【0026】
ポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンは、ドイツ公開明細書DE2434816に記載の、窒素含有の縮合生成物を含む、以下の定義の通りであってよい。それらは、ポリアミドアミン化合物と、末端のヒドロキシ基が、エピクロロヒドリンと反応しているポリアルキレンオキシド誘導体との反応により得られるものである。別の好適なポリエチレンイミンは、WO97/25367A1、WO94/14873A1、およびWO94/12560A1に記載されている。前記ポリエチレンイミンまたは変性ポリエチレンイミンは、次に、WO00/67884A1およびWO97/23567A1に記載の限外ろ過法に供されてよい。好適なポリエチレンイミンおよび変性ポリエチレンイミンは、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアルキレングリコールポリアミン、エチレンイミンをグラフトして、続いて、少なくとも二官能性の架橋剤と反応させたポリアミドアミン、およびそれらの混合物およびコポリマーである。
【0027】
1グラムあたり0.5〜3mEq未満の電荷密度、および700,000Da超のモル質量を有する好ましいカチオン性ポリマー(a)は、ビニルアミン単位を含むポリマーである。このポリマーは、部分的に加水分解されたポリビニルカルボキシアミドを含む。これらのカチオン性ポリマーは、N−ビニルホルムアミドのホモポリマーまたはコポリマーであるのがより好ましい。これらは、ホモポリマーを提供するために、N−ビニルホルムアミドの重合により得られるか、またはN−ビニルホルムアミドと、少なくとも1種の別のエチレン性不飽和モノマーとの共重合により得られてよい。これらのポリマーのビニルホルムアミド単位は、ビニルアミン単位を含むポリマーの作製と比べて加水分解されていない。前記コポリマーは、カチオン性、アニオン性、または両性であってよい。カチオン性ポリマーは、例えば、N−ビニルホルムアミドと、少なくとも1種の別の、相溶性の水溶性エチレン性不飽和モノマー、例えば、アクリルアミドとの共重合により得られる。このようなポリマーは、例えば、水溶液として、粉末として、逆相エマルションもしくは分散液として、または水性分散液として製造されてよい。
【0028】
ビニルホルムアミド単位を含むポリマーは、公知である。例えば、EP−A−0071050は、ビニルアミン単位90〜10モル%とビニルホルムアミド単位10〜90モル%とを含む線状の基本ポリマーを記載している。これらのポリマーは、水中での水溶液重合法、逆懸濁液重合法、油中水型エマルション重合法または沈殿重合法によるN−ビニルホルムアミドの重合により製造されて、それに続いて、それぞれの場合、ホルミル基がポリビニルホルムアミドから部分的に脱離してビニルアミン単位が形成される。
【0029】
N−ビニルホルムアミド水溶液、および適切な場合、別のモノマーを遊離ラジカル重合して、ポリマーを乾燥させることによって、ビニルホルムアミド単位を含むポリマー粉末を製造することも好適である。一般的に、これは、N−ビニルホルムアミドと、少なくとも1種の重合開始剤とを含む水性モノマー溶液を含んでおり、この水性モノマー溶液は、加熱可能な塔形状の反応器の頂部でエアロゾルとして噴霧分配されるか、または滴下される。その後、このエアロゾルまたは液滴は、不活性ガス雰囲気中で重合されて、微粉固形物が形成され、それに続いて、この微粉ポリマーが前記反応器から排出される。これは、例えば、EP1948648に記載されている。
【0030】
前記ポリビニルカルボキシアミドの別の特に望ましい形態は、水性分散液を含む。このようなN−ビニルカルボキシアミドの水溶性ポリマーの水性分散液は、実質的に塩を含んでいないこと、およびくし形分子構造を有するアニオン性の高分子安定化剤を含んでいることを特徴としていてよい。前記水性分散液は、マクロモノマーを含むモノマー混合物の共重合により得られ、および重合条件下にアニオンとして存在している、くし形分子構造を有する、少なくとも1種の高分子安定化剤を含んでいてよい。前記安定化剤の構造は、例えば、アニオン基および非極性のポリアルキレングリコール側鎖を有する炭化水素骨格として表すことができる。水性重合溶媒中では、前記安定化剤は、例えば、安定化剤として作用する、および/またはポリマー粒子を形成するための沈殿剤として作用する。これらのポリマーは、例えば、EP1945683に記載のマクロモノマーを含むモノマー混合物の共重合により得られてよい。
【0031】
N−ビニルホルムアミド25または50〜100質量%と、1種または複数の前記コモノマー0〜50または75質量%とからの混合物は、水溶性N−ビニルカルボキシアミドポリマーの作製に好適である。前記水性分散液は、実質的に塩を含んでいなくてよい。ここで、「実質的に塩を含んでいない」とは、前記分散液中にまだ存在している無機塩の任意の量が、総じて、それぞれ前記水性分散液の総質量に対してきわめて少量、好ましくは約1質量%未満、特に好ましくは0.5質量%未満、殊に好ましくは0.3質量%未満であることを意味する。N−ビニルカルボキシアミドの水溶性ポリマーの水性分散液は、ポリマー含有量が高いのが好ましく、モル質量が高いと同時に低い粘度を有するポリマーを有しているのが好ましい。
【0032】
1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも4dl/gの固有粘度を有するカチオン性ポリマー(b)は、望ましくは、水溶性エチレン性不飽和モノマー、または前記モノマーの少なくとも1種がカチオン性である、複数の水溶性エチレン性不飽和モノマーのブレンドを使用して作製されてよい。前記ポリマーが、1種以上のモノマーから形成されている場合、別のモノマーは、カチオン性であっても、非イオン性であっても、または混合物であってもよい、しかしながら、前記モノマーは、1種または複数のアニオン性モノマーを含んでおり、その結果、両性のポリマーが生じるのが望ましい、ただし、全体の電荷はカチオン性である。それにもかかわらず、前記2種の高分子の歩留まり向上剤が、全体的に、カチオン性モノマー、または少なくとも1種のカチオン性モノマーと少なくとも1種の非イオン性モノマーとを含む複数のモノマーの混合物から形成されているのが好ましい。
【0033】
前記カチオン性モノマーは、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、それらの酸付加塩および第四級アンモニウム塩を含め、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドを含んでいる。好ましいカチオン性モノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩を含む。好適な非イオン性モノマーは、非イオン性の不飽和モノマー、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドンを含む。特に好ましいポリマーは、アクリルアミドと、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩とのコポリマーを含む。
【0034】
前記カチオン性ポリマーは、カチオン性モノマー単位を少なくとも5モル%、カチオン性モノマー単位を60モル%まで、より好ましくはカチオン性モノマー単位を5〜40モル%、特に5〜20モル%含んでいるのが好ましい。特に好ましい第一の高分子の歩留まり向上剤は、アクリルアミドと、少なくとも1種の水溶性カチオン性のエチレン性不飽和モノマー、好ましくはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはN−置換されたアクリルアミドの第四級アンモニウム塩、特にジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩とを含むカチオン性ポリアクリルアミドでもある。
【0035】
前記第一の高分子の歩留まり向上剤は、少なくとも5、多くの場合、少なくとも6dl/gの固有粘度を示すのが好ましい。多くの場合、固有粘度は、少なくとも7、むしろ少なくとも8.5または9dl/g、多くの場合、少なくとも10dl/g、より好ましくは少なくとも12dl/g、特に少なくとも14または15dl/gであってよい。1グラムあたり3mEq未満の電荷密度の前記カチオン性ポリマーに必要な最大モル質量はなく、したがって、固有粘度の上限値も特にない。実際、固有粘度は、30dl/gと同じくらいか、またはそれよりも高くてよい。一般的に、前記第一の高分子の歩留まり向上剤は、多くの場合、25dl/gまで、例えば、20dl/gまでの固有粘度を有している。
【0036】
ポリマーの固有粘度は、このポリマーの活性含有量を基準とするポリマーの水溶液(0.5〜1質量%)を作製することによって測定されてよい。この0.5〜1%のポリマー溶液2gを、2Mの塩化ナトリウム溶液50mlを有する容量フラスコ内で希釈して100mlにし、(脱イオン水1リットルあたりリン酸二水素ナトリウム1.56g、およびリン酸水素二ナトリウム32.26gを使用して)pH7.0に緩衝して、全体を脱イオン水で100mlの標線まで希釈した。前記ポリマーの固有粘度は、1Mの緩衝塩溶液中で、25℃にて、第1懸濁レベル粘度計(Number 1 suspended level viscometer)を使用して測定される。示された固有粘度の値は、特に記載がない限り、前記方法により測定される。
【0037】
望ましくは、第一および/または第二の高分子の歩留まり向上剤のどちらか1種、または両方のポリマーが、逆相エマルション重合により作製された逆相エマルションとして提供されてよく、任意に、減圧下および下げられた温度下での脱水が続き、多くの場合、油中のポリマー粒子の分散液を形成するための共沸脱水と呼ばれる。代替的に、前記ポリマーは、ビーズの形態で提供され、逆相懸濁液重合により作製されるか、または水溶液重合に、粉砕、乾燥、および次に研削が続くことにより粉末として準備されてよい。前記ポリマーは、懸濁液重合によりビーズとして製造されるか、または油中水型エマルション重合による油中水型エマルションまたは分散液として、例えば、EP−A−150933、EP−A−102760またはEP−A−126528に記載された方法により製造されてよい。
【0038】
一般に、カチオン性ポリマーブレンドを形成する、前記2種の異なるカチオン性ポリマーは、混合される前に、それぞれ別個に水溶液にされてよい。代替的に、望ましくは、場合によっては、前記2種の異なるカチオン性ポリマーを一緒に溶解することによりポリマーブレンドが製造されてよい。一般的に、前記2種の高分子の歩留まり向上剤の水溶液は、個々のポリマーを水にそれぞれ溶解することによって達成されてよい。これは、例えば、好適なポリマー溶液調合装置(polymer solution make up device)で実現されてよい。このような装備は、先行技術に記載されており、例えば、BASFによって、Jet Wet(登録商標)の名称で商品化されている。
【0039】
前記ブレンドを作製する1つの好都合の方法は、前記カチオン性ポリマーの1種をもう1種のカチオン性ポリマーを運搬する供給ラインに流入させて、前記2種のポリマーのブレンドを形成することであり、このブレンドは、その後、セルロース希薄紙料懸濁液に供給される。代替的に、望ましくは、前記2種のポリマーを混合して、次に、このブレンドを前記希薄紙料懸濁液にその後供給するために貯蔵器内で貯蔵されてよい。
【0040】
一般に、水性のブレンドとして存在しているカチオン性ポリマーのブレンドは、1グラムあたり0.5〜3mEq未満の電荷密度、および(ブレンドの総質量に対して)少なくとも0.05%、多くの場合、10%または20%または30%まで、またはそれ以上、例えば、少なくとも1%または少なくとも2%の濃度で、700,000Da超のモル質量を有するカチオン性ポリマー(a)と、1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、または少なくとも0.2%、および多くの場合、1%または2%までの濃度で少なくとも4dl/gの固有粘度を有し、ただし、いくつかの場合、(ブレンドの総質量に対して)5%と同程度の濃度に望ましいカチオン性ポリマー(b)とを含んでいてよい。前記2種の異なるカチオン性ポリマーの正確な割合は、それぞれ個々のカチオン性ポリマーに必要な所望の計量供給量による。一般に、1グラムあたり0.5〜3mEq未満の電荷密度、および少なくとも700,000のモル質量のカチオン性ポリマー(a)の計量供給量は、少なくとも50ppmおよび、多くの場合、少なくとも100ppmであってよい。しばしば、この計量供給量は、少なくとも200ppmであり、いくつかの場合、少なくとも500ppmである。この計量供給量は、3000ppmと同程度か、またはそれより多くてよいが、多くの場合、2500ppmまで、およびいくつかの場合、2000ppmまでになる。
【0041】
通常、1グラムあたり3mEq未満の電荷密度、および少なくとも4dl/gの固有粘度のカチオン性ポリマー(b)の計量供給量は、少なくとも50ppm、およびしばしば少なくとも100ppmであってよい。一般的な計量供給量は、1000ppmまでであってよい、しかし、少なくとも150ppmまたは少なくとも200ppm、最大600ppmまでの範囲の計量供給量は、多くの場合、特に好適であってよい。前記それぞれのカチオン性ポリマーの投入量はすべて、セルロース希薄紙料懸濁液の乾燥重量とした場合のカチオン性ポリマーの活性重量(active weight)を基準としている。
【0042】
本発明で使用する微粒子材料は、任意の好適な細分化された粒子材料であってよい。好適には、シリカ系粒子、シリカミクロゲル、コロイドシリカ、シリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸塩、カチオン性シリカ、アルミノケイ酸塩、ポリアルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、ポリホウケイ酸塩、ゼオライト、ベントナイト、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイト、セピオライト、750nm未満の粒径のアニオン性架橋ポリマー微粒子、およびナノセルロースからなる群から選択されてよい。
【0043】
前記シリカは、例えば、WO−A−8600100に記載の、例えば、任意のコロイドシリカであってよい。前記ポリケイ酸塩は、US−A−4,388,150に記載のコロイドケイ酸であってよい。ポリケイ酸塩は、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を酸性化することによって作製されてよい。 前記ポリアルミノケイ酸塩は、例えば、US−A−5,176,891に記載のとおり、例えば、まずポリケイ酸微粒子を形成して、次に、アルミニウム塩で後処理することによって製造されるアルミナ化されたポリケイ酸であってよい。このようなポリアルミノケイ酸塩は、アルミニウムが優先的に表面に位置するケイ素を含む微粒子からなる。
【0044】
代替的に、ポリアルミノケイ酸塩は、例えば、US−A−5,482,693に記載の、アルカリ金属ケイ酸塩と酸および水溶性アルミニウム塩との反応により形成される、1000m2/gを超える表面積のポリ粒子状ポリケイ酸ミクロゲルであってよい。一般的に、ポリアルミノケイ酸塩は、1:10〜1:1500のアルミナ:シリカのモル比を有していてよい。
【0045】
前記ケイ酸系の材料は、例えば、WO−A−9916708に記載の通り、コロイドホウケイ酸塩であってよい。
【0046】
前記膨潤性粘土は、例えば、一般的にベントナイト系粘土であってよい。好ましい粘土は、水に膨潤性であり、自然に水膨潤性の粘土、または例えば、イオン交換により水膨潤性に変性することができる粘土を含む。しかし、好適な水膨潤性粘土は、多くの場合、ヘクトライト、スメクタイト、モンモリロナイト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ホルマイト、アタパルジャイトおよびセピオライトと呼ばれる粘土だけに限定されるものではない。一般的なアニオン性膨潤粘土は、EP−A−235893およびEP−A−335575に記載されている。
【0047】
前記粘土が、ベントナイト系粘土であるのがより好ましい。ベントナイトは、アルカリ金属ベントナイトとして提供されてよい。ベントナイトは、アルカリ性ベントナイト、例えば、ベントナイトナトリウムとしてか、またはアルカリ土類金属塩、通常、カルシウム塩またはマグネシウム塩として、天然に存在する。一般に、アルカリ土類金属ベントナイトは、炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムによる処理により活性化される。活性化された膨潤性ベントナイト系粘土は、多くの場合、乾燥粉末として製紙工場に供給される。代替的に、ベントナイトは、例えば、EP−A−485124、WO−A−9733040およびWO−A−9733041に記載の、高固体、例えば少なくとも15または20%の固体の流動性スラリーとして提供されてよい。
【0048】
前記架橋ポリマー微粒子は、カチオン性またはアニオン性のモノマーおよび架橋剤;飽和炭化水素を含む油;および非膨潤状態での数平均粒子径が約0.75ミクロン未満の粒子を製造するのに充分な有効量の界面活性剤を含む水溶液を使用する方法によってマイクロエマルションとして製造されてよい。マイクロビーズは、Ying Huangら(Makromol.Chem.186、273〜281(1985))により記載される方法によりマイクロゲルとして製造されるか、またはマイクロラティス(microlattice)として商業的に得られてよい。本願で使用される「微粒子」という用語は、これらの形状のすべて、つまり、マイクロビーズそれ自体、マイクロゲルおよびマイクロラティスを含むと理解される。
【0049】
本発明のポリマー微粒子は、出願EP−484617に開示の通り、エマルションにおけるモノマーの重合により作製されるのが好ましい。マクロエマルションおよび逆エマルションにおける重合は、先行技術で公知の通り、使用されてよい。本発明におけるパルプの製造に使用されるセルロース懸濁液は、慣用の方法で、例えば、木材または別の原料(feedstock)から製造されてよい。脱インキされた古紙または板紙は、その一部を提供するために使用されてよい。例えば、木材は、皮が剥がされて、次に、例えば、機械パルプ、サーモメカニカルパルプまたは化学パルプを製造するために、研削、化学的または熱によるパルプ化技術に供されてよい。繊維は、例えば、慣用の漂白プロセス、例えば、亜硫酸水素マグネシウムまたはヒドロ亜硫酸マグネシウムを用いる漂白プロセスを使用することによって漂白されてよい。前記パルプは、パルプ製造機で最終脱水工程に到達する前に、洗浄、脱水、および水または別の水性洗浄液で再度洗浄されていてよい。
【0050】
前記セルロース希薄紙料懸濁液は、機械的繊維を含んでいてよい。機械的繊維とは、前記セルロース懸濁液が、砕木パルプ(SGW)、加圧砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)または漂白ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)を含めた、機械的プロセスにより全部または一部が製造された任意の木材パルプを示す、機械パルプを含むことを意味する。中質紙の品種は、異なる量の機械パルプを含んでおり、この機械パルプは、通常、所望の視覚特性および機械特性を提供するために含まれる。いくつかの場合、填料配合紙の製造に使用されるパルプは、1種または複数の前述の機械パルプだけで形成されていてよい。機械パルプに加えて、多くの場合、その他のパルプが、前記セルロース懸濁液に含まれている。一般的に、前記その他のパルプは、繊維含有量全体の少なくとも10質量%を形成していてよい。前記紙の配合に含まれるその他のパルプは、脱インキパルプおよび硫酸塩パルプ(多くの場合、クラフトパルプと呼ばれる)を含む。
【0051】
以下の例は、本発明を説明するものである。
【0052】

例1
製紙プロセスにおける秘密試験(confidential trial)
製紙工場は、ギャップフォーマー上で上質塗工紙を製造する。完成紙料は、カバ材25%とマツ材75%とからなる漂白化学パルプ100%である。カバ材(短繊維)のカナダ標準ろ水度は、350〜450であり、マツ材(長繊維)のカナダ標準ろ水度は、500〜560である。新たな填料は、PCC(precipitated calcium carbonate(沈殿炭酸カルシウム))であり、10%の量で前記紙料中に含まれていた。このPCCは、現場で製造されて、平均粒径2.3μmを有していた。ヘッドボックス(head box)での前記紙料の濃度は、0.8%である。
【0053】
機械速度および歩留まり度は、坪量によって異なり、比較的高い坪量(75gsm超)は、蒸気(ドライヤー)の制限のために比較的低い速度で動作するが、歩留まり値は比較的高い。使用される歩留まり向上剤は、スクリーンの前に添加されるPAM(カチオン性モノマー単位10モル%を含むカチオン性ポリアクリルアミド)であるPolymin1830と、スクリーンの後に添加されるベントナイトとを有するHydrocol系である。ベントナイトは、(乾燥した完成紙料における乾燥したベントナイトに対して)2.4kg/tの一般的な計量供給速度で添加される。3dl/g超の固有粘度、および1グラムあたり3mEq未満の電荷密度を有するPolymin1830は、(乾燥した完成紙料における乾燥したポリマーに対して)0.2〜0.4kg/tの一般的な計量供給速度で添加される。これらの添加速度は、完成紙料の条件および紙特性によって異なる。比較的大量のPolymin1830が、慣用の方法で適用された場合、シートの地合および強度特性の双方における悪影響が明らかであろう。
【0054】
本発明によれば、Polymin VZ(1グラムあたり0.5mEqより高いが、1グラムあたり3mEqより低い電荷密度、および700,000Da超のモル質量を有するポリビニルアミン)を、前述のカチオン性ポリアクリルアミドの最後の希釈水に、0.75kg/t(乾燥した完成紙料における乾燥したポリマーを基準とする)で追加的に添加して、前述の試験を繰り返し、本発明によるカチオン性ポリマーブレンド(ポリミックス)を形成した。プレスセクションの湿分は、0.7%まで低下し、蒸気消費量は減少した。前述のカチオン性ポリマーブレンドは、カチオン性ポリアクリルアミドを25%少なく添加して、同一の地合および強度値で、全/灰歩留まり(total/ash retention)も増加させた。これらの結果は、最終塗工紙の約75gsmを上回る坪量で得られた。