特許第6293264号(P6293264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293264
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20180305BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   F25B1/00 396Z
   F25B1/00 371A
   F25B1/00 383
   F25B1/00 381D
   F25B1/00 304G
   F25B43/00 G
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-508344(P2016-508344)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2014057046
(87)【国際公開番号】WO2015140884
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓未
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 多佳志
(72)【発明者】
【氏名】松井 繁佳
(72)【発明者】
【氏名】石橋 晃
(72)【発明者】
【氏名】東井上 真哉
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】伊東 大輔
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−190515(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/157764(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099147(WO,A1)
【文献】 特開2010−156524(JP,A)
【文献】 実開昭53−110545(JP,U)
【文献】 特開2001−027460(JP,A)
【文献】 特開2011−094964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 − 1/10
F25B 43/00 − 43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷媒と、同一圧力下において前記第1冷媒よりも沸点の高い特性の第2冷媒と、を含む非共沸混合冷媒を作動冷媒とし、圧縮機と、第1熱交換器と、膨張弁と、気液分離器と、第2熱交換器と、を順次接続したメイン経路を少なくとも備えた冷凍サイクル装置であって、
前記第1冷媒は、HFO−1123であり、
前記第2冷媒は、少なくともR32、HFO−1234yf、HFO−1234zeのうちの1つ以上を含むものであり、
前記圧縮機が起動した後の初期状態では、前記第1冷媒に不均化反応を生じさせないように、前記気液分離器内の液冷媒量に基づいて前記圧縮機の吐出冷媒の温度、または圧力を抑制する初期運転を行う冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記圧縮機の吐出冷媒の温度、または圧力を調整する際に前記圧縮機の回転周波数、前記膨張弁、前記第1熱交換器に対応するファン、前記第2熱交換器に対応するファンのうちのいずれか1つ、もしくは複数を制御する請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記初期運転の間は、前記圧縮機の回転周波数を通常運転より低下させる、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器のうち凝縮器として機能する熱交換器に対応するファンの回転数を通常運転よりも増加させる、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器のうち蒸発器として機能する熱交換器に対応するファンの回転数を通常運転よりも減少させる、前記膨張弁の開度を通常運転より開く、それぞれの制御のうちのいずれか1つ、もしくは複数を行う請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記液冷媒量が閾値を下回ったときに前記初期運転を終了し前記圧縮機の吐出冷媒の温度、または圧力を上昇させて通常運転に移行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記気液分離器を加熱する加熱手段を有し、
前記初期運転の間は、前記加熱手段により前記気液分離器を加熱する請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記圧縮機の吐出冷媒を熱源とする請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記メイン経路から分岐し前記圧縮機の吐出冷媒を前記気液分離器内の液冷媒と熱交換する熱交換部に供給するバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられる開閉弁と、を有する請求項6に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記開閉弁は、前記初期運転の間、前記吐出冷媒を前記バイパス経路に流通させるように開き、通常運転に移行すると閉じる開閉制御を行う請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記開閉弁は、前記メイン経路と前記バイパス経路との分岐部に設けられた三方弁である請求項7または8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
前記開閉弁は、前記バイパス経路に設けられた二方弁である請求項7または8に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項11】
前記加熱手段は、電気ヒータである請求項5に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項12】
前記加熱手段は、前記気液分離器の内部有効高さの下端から5%以上50%以下の箇所に対応して設置される請求項5〜11のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項13】
前記気液分離器内の液冷媒量を、前記バイパス経路における前記熱交換部の出入口冷媒温度差によって検知する請求項7〜10のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項14】
前記気液分離器内の液冷媒量を、前記気液分離器内の液冷媒のレベルを検知する液面検知手段によって検知する請求項7〜11のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項15】
前記メイン経路の前記圧縮機の吐出側には、吐出冷媒の流路を前記第1熱交換器側と前記第2熱交換器側とに切り替える四方弁が設けられた請求項1〜14のいずれか1項に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動冷媒として非共沸混合冷媒を使用した冷凍サイクル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響を抑えるため低GWP冷媒が開発されている。従来使用されてきたR410Aは性能がよい冷媒であるが、GWP(地球温暖化係数)が2000程度あるため、GWPがおよそ1/3であるR32が使われつつある。R32はR410Aと比較的物性が近く性能がよい冷媒であるが、GWPが600程度であり、さらなる低GWP化のため、HFO−1234yfなどのフルオロプロペン系(HFO系)冷媒が開発されている。
【0003】
しかしながらこの冷媒は高沸点冷媒であり、性能が低い冷媒である。従来と同等の性能を維持しようとすれば、技術的課題が多く、コスト高となる可能性がある。
これに伴い、地球温暖化係数が小さく、沸点の低い冷媒(例えば、HFO−1123)を採用した冷凍サイクル装置が提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
HFO−1123は、組成に塩素原子が入っていないためオゾン層への影響が少なく、かつ、二重結合を持ち大気寿命が短いため地球温暖化への影響が少なく、さらに、性能(能力)に優れる(低沸点冷媒)ことが知られている。また、ASHRAEによる燃焼区分はランク2L相当(低微燃性)の範疇であり、安全性を有する。
【0005】
そして、HFO−1123にHC、HFC、HCFO、CFO、HFO等の冷媒を混合し、非共沸混合冷媒として部分的にこのような長所を享受することができる。
このような非共沸混合冷媒を作動冷媒とする冷凍サイクル装置では、アキュームレータ等に高沸点冷媒に富む余剰冷媒が液冷媒として貯留されることで循環冷媒の組成比が変化し、性能低下や高圧上昇による不具合を生じる可能性があることが知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/157764号
【特許文献2】特開2002−295915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにHFO−1123(CF2=CHF)は、性能の優れた冷媒であるが、特定の条件下で不均化反応(自己分解反応)を起こすことが知られている。不均化反応とは、同一種類の分子が2個以上互いに反応して2種類以上の異なる種類の生成物を生じる化学反応のことである。
HFO−1123の不均化反応は、以下のような化学反応である。
CF2=CHF→(1/2)CF+(3/2)C+HF+(反応熱)
このような反応は、局所的なエネルギーを冷媒に与えることにより発生する。また、高温、高圧の環境下であれば連鎖的に反応が発生する可能性があるという問題があった。
【0008】
このような不均化反応を抑制するためにHFO−1123を単独で使用せず、非共沸混合冷媒の一つとして組成比を減らして使用することが考えられるが、上記のようにアキュームレータ等に高沸点冷媒に富む余剰冷媒が液冷媒として貯留されると、低沸点冷媒であるHFO−1123の組成比が冷媒回路中に高く存在することになり、高温、高圧条件下で上記の不均化反応が起こる可能性が高まるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、このような不均化反応が発生する冷媒を非共沸混合冷媒の1つとして冷凍サイクル装置に使用しても、冷媒が不均化反応を起こす条件下となることを回避し、安全で性能の高い冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る冷凍サイクル装置は、第1冷媒と、同一圧力下において第1冷媒よりも沸点の高い特性の第2冷媒と、を含む非共沸混合冷媒を作動冷媒とし、圧縮機と、第1熱交換器と、膨張弁と、気液分離器と、第2熱交換器と、を順次接続したメイン経路を少なくとも備えた冷凍サイクル装置であって、第1冷媒は、HFO−1123であり、第2冷媒は、少なくともR32、HFO−1234yf、HFO−1234zeのうちの1つ以上を含むものであり、圧縮機が起動した後の初期状態では、第1冷媒に不均化反応を生じさせないように、気液分離器内の液冷媒量に基づいて圧縮機の吐出冷媒の温度、または圧力を抑制する初期運転を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷凍サイクル装置によれば、圧縮機の起動直後でアキュームレータ内に液冷媒が貯留された状態から早急にサイクル内の第1冷媒と第2冷媒の組成比を適切に改善し、冷凍サイクル内の第1冷媒の分圧を低下させることで不均化反応を抑制するとともに、性能の高い冷凍サイクル装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】実施の形態1に係るアキュームレータ内の断面図である。
図3】実施の形態1に係るアキュームレータ内の別の例の断面図である。
図4】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における冷媒の動作を示した図である。
図5】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の通常運転時の冷媒の動作を示した図である。
図6】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の制御フロー図である。
図7】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のアキュームレータ前後におけるガス冷媒の温度勾配を示した図である。
図8】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における圧縮機吐出冷媒の温度変化を示した図である。
図9】従来の冷凍サイクル装置の通常運転における圧縮機吐出冷媒の温度変化を示した図である。
図10】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図11】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における冷媒の動作を示した図である。
図12】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の通常運転時の冷媒の動作を示した図である。
図13】実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図14】実施の形態4に係る冷凍サイクル装置のホットガスバイパス弁が開いている時の概略構成図である。
図15】実施の形態4に係る冷凍サイクル装置のホットガスバイパス弁が開いている時の別の例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下で説明する構成等は、一例であり、本発明に係る冷凍サイクル装置は、そのような構成等に限定されない。
また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
また、重複又は類似する説明については、適宜簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態1.
はじめに、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成について説明する。
図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
実施の形態1係る冷凍サイクル装置は、図1に示すように、圧縮機1と、凝縮器2と、膨張弁3と、蒸発器4と、アキュームレータ5(本発明の気液分離器に相当する)と、を順次接続したメイン経路10を備えている。また、メイン経路10の圧縮機1の吐出側から分岐し、三方弁8を介してアキュームレータ5を通過し、メイン経路10における凝縮器2の入口側に接続するバイパス経路9を備えている。そして、これら各構成要素は冷媒配管で接続されている。
【0015】
また、バイパス経路9には、バイパス経路9とアキュームレータ5との熱交換部9aが設けられ、熱交換部9aを挟んで第1温度検知手段6と、第2温度検知手段7とが設けられている。第1温度検知手段6は圧縮機1の吐出側の温度を検知し、第2温度検知手段7は、圧縮機1から吐出した冷媒がアキュームレータ5を通過し、熱交換部9aで熱交換した後の温度を検知している。
【0016】
次に、実施の形態1に係るアキュームレータ5の構造について説明する。
図2は、実施の形態1に係るアキュームレータ内の断面図を示す。
図3は、実施の形態1に係るアキュームレータ内の別の例の断面図を示す。
蒸発器4からアキュームレータ5内に流入したガス状態、あるいは二相状態の冷媒は、アキュームレータ5内で分離され、ガス成分のみがU字状の配管を通って圧縮機1の吸入口へと流入する構造を備えている。また、圧縮機1から吐出された吐出ガス冷媒は、バイパス経路9を通り、アキュームレータ5内の液冷媒と熱交換部9aにて間接接触し熱交換する構造を備えている。
【0017】
熱交換部9aは、アキュームレータ5の内部有効高さの下端から5%以上50%以下の位置に設けられており、図2に示すようにアキュームレータ5に冷媒配管を貫通させ、配管内のガス冷媒の熱で液冷媒を加熱する構成とすることができる。また、図3に示すようにアキュームレータ5の容器壁面に配管を巻きつけ、容器壁面を介して液冷媒を加熱する構造としてもよい。なお、配管の巻きつけは下部から上部に向かって巻きつけても、上部から下部に向かって巻きつけてもよい。
【0018】
次に、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の動作について説明する。
図4は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における冷媒の動作を示した図である。
図5は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の通常運転時の冷媒の動作を示した図である。
図6は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の制御フロー図である。
図7は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のアキュームレータ前後におけるガス冷媒の温度勾配を示した図である。
図8は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における圧縮機吐出冷媒の温度変化を示した図である。
図9は、従来の冷凍サイクル装置の通常運転における圧縮機吐出冷媒の温度変化を示した図である。
【0019】
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の動作冷媒は、非共沸混合冷媒であり、低沸点冷媒(本発明の第1冷媒に相当)と高沸点冷媒(本発明の第2冷媒に相当)とから構成されている。低沸点冷媒(第1冷媒)は、高温、高圧の条件下になる程、一定のエネルギーを与えると不均化反応を起こしやすい特性を備えている。高沸点冷媒(第2冷媒)は、低沸点冷媒(第1冷媒)と同一条件下で低沸点冷媒(第1冷媒)よりも不均化反応を起こしにくい(または同一条件下で不均化反応を全く起こさない)特性を備えた冷媒である。
【0020】
すなわち、低沸点冷媒(第1冷媒)は、高沸点冷媒(第2冷媒)が不均化反応を全く起こさない圧力及び温度と同一の特定条件下(高温、高圧条件下)において不均化反応が起こる可能性が高い特性を備えた冷媒である。また、高沸点冷媒(第2冷媒)は、低沸点冷媒(第1冷媒)よりも同一圧力下において沸点が高い(蒸発しにくい)特性を有している。
【0021】
低沸点冷媒(第1冷媒)としては、例えばHFO−1123が採用可能であり、不均化反応を想定する必要がある。高沸点冷媒(第2冷媒)としては、例えばR32、HF0−1234yf、HFO−1234zeなどを採用することができる。冷媒の冷凍機油の中には添加剤が一般的に含まれているが、低沸点冷媒(第1冷媒)の反応抑制剤として、単環式モノテルペノイドが含まれている。また、単環式モノテルペノイドには、例えばリモネンが含まれる。
なお、低沸点冷媒(第1冷媒)がモル比率で70%以下なら反応が抑制されやすいことが知られている。また、高沸点冷媒(第2冷媒)は1種に限らず、2種以上であってもよい。
【0022】
非共沸混合冷媒(例えばHFO−1123とHFO−1234yfの混合冷媒)を用いる場合において、冷凍サイクル装置の停止時には、冷媒回路の液冷媒中に高沸点冷媒であるHFO−1234yfが富んだ状態で存在している。この液冷媒は冷媒回路内の低圧側の熱交換器内や圧縮機1内、またはアキュームレータ5内に貯留されている。また、ガス冷媒中には低沸点冷媒であるHFO−1123が富んだ状態で存在する。
【0023】
この状態から圧縮機1を起動し冷凍サイクル装置の運転を開始すると、ガス冷媒内で組成比の高いHFO−1123が主に圧縮機1から吐出されることになる。
HFO−1123に富んだ混合冷媒の状態で局所的なエネルギーを冷媒に与えると上記のように不均化反応を誘発する可能性があるが、特に圧縮機1内は高温、高圧になるため、反応が起きる可能性が高い。
【0024】
そこで、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置では、図6に記載されているような制御フローのように運転開始の初期状態で以下のような初期運転を行う。
はじめに、step1にて冷凍サイクル装置の運転開始が指示されると、step2にて、三方弁8を図4に示すように切り替え、圧縮機1を出た高温、高圧のガス冷媒がバイパス経路9を介してアキュームレータ5側の熱交換部9aを通過するように制御する。同時にstep2では、圧縮機1の回転周波数を通常運転時よりも低周波数に低下させるように制御する。なお、通常運転とは、冷凍サイクル装置の目標能力(冷房又は暖房定格運転など)に対応した目標吐出冷媒温度、圧力となるように圧縮機1の回転数をはじめ、凝縮器2の凝縮器ファン2aの回転数や、膨張弁3の開度、または、蒸発器4の蒸発器ファン4aの回転数などを制御する運転である。
【0025】
この状態でstep3に進み、冷凍サイクル装置の初期運転を開始する。
すると、高温、高圧のガス冷媒は三方弁8を介してアキュームレータ5の熱交換部9aに供給され、アキュームレータ5内に貯留された液冷媒と熱交換して高沸点冷媒に富んだ液冷媒を加熱し気化させる。また、圧縮機1の回転周波数を低周波数(例えば通常定格運転時の2/3以下)に低下させることで、図8に示すように運転開始の初期状態において、圧縮機1の吐出冷媒を低温、低圧に抑制する。
【0026】
ここで、低沸点冷媒であるHFO1123は、非共沸混合冷媒中の組成比が高い程、不均化反応を起こす可能性が高まるため、運転開始の初期状態でアキュームレータ5内に高沸点冷媒であるHFO1234yfが多量に液冷媒として存在する間(冷媒回路内に低沸点冷媒であるHFO1123の組成比が高い運転開始の初期状態の間)は、圧縮機1の吐出冷媒温度を低温、低圧に抑制することで低沸点冷媒であるHFO1123の不均化反応を防ぐことが可能となる。
【0027】
この図4に示す運転開始の初期状態の冷凍サイクル装置では、低温、低圧状態で圧縮機1から吐出された冷媒が三方弁8からアキュームレータ5を経由して凝縮器2へと流入し、熱交換により凝縮する。凝縮後、膨張弁3により減圧され、液または二相状態で蒸発器4へと流入し、熱交換により蒸発する。蒸発後、アキュームレータ5を介してガス冷媒が圧縮機1へと戻るサイクルを形成する。
なお、このとき圧縮機1の回転周波数を通常定格運転時の2/3以下と少ない冷媒吐出量で運転させるため、吐出冷媒をメイン経路10とバイパス経路9とに分流するとバイパス経路9の流速が遅く冷凍機油が滞留してしまう。したがって、運転開始の初期状態においては三方弁を用いて吐出冷媒の全量をバイパス経路9側に流すことが望ましい。
【0028】
次にstep4に進み、アキュームレータ5内に液冷媒が存在するか否かを判断する。
すなわち、アキュームレータ5に供給される圧縮機1の吐出ガス冷媒の温度を第1温度検知手段6にて検知するとともに、アキュームレータ5にて熱交換をした後の吐出ガス冷媒の温度を第2温度検知手段7にて検知し、図7に示すようにそれらの温度差(図7に示す温度勾配)を演算する。
【0029】
この吐出ガス冷媒のアキュームレータ5における出入り口温度差が大きいときには、アキュームレータ5内に高沸点成分に富んだ液冷媒(熱容量が大きい)が貯留されており、熱交換後の吐出ガス冷媒は温度が大きく下がる傾向にある。これに対して、吐出ガス冷媒のアキュームレータ5の出入り口温度差が小さいときには、アキュームレータ5内の高沸点成分に富んだ液冷媒が気化(熱容量が小さい)し終わり、熱交換効率が低下するため、熱交換後のガス冷媒の温度は下がらない傾向にある。
【0030】
そこで、step4では、この温度変化の低下の勾配が図7に示すような特定の勾配の閾値より大きいか小さいかを判断し、閾値となる勾配より温度低下の勾配が大きい場合にはアキュームレータ5内に液冷媒が存在するため、アキュームレータ5の加熱を継続する。反対に、閾値となる勾配より温度低下の勾配が小さい場合にはアキュームレータ5内の液冷媒が気化したと判断しstep5に進む。
【0031】
step5では、三方弁8を図5に示すように切り替え、圧縮機1から吐出したガス冷媒をアキュームレータ5には供給せずに直接凝縮器2に供給する。
図5に示す通常運転状態の冷凍サイクル装置では、圧縮機1の回転周波数を冷凍サイクル装置の目標能力に対応した値まで上昇させ、吐出冷媒の状態が目標温度または目標圧力になるよう制御される。この吐出冷媒は、三方弁8から凝縮器2へと流入し熱交換により凝縮する。凝縮後、膨張弁3により減圧され、液または二相状態で蒸発器4へと流入し、熱交換により蒸発する。蒸発後、アキュームレータ5を介してガス冷媒が圧縮機1へと戻るサイクルを形成する。
なお、上記勾配の閾値を複数設け、閾値毎に圧縮機周波数を上昇させてもよい。
【0032】
次に図8、9を用いて運転経過時間に対する圧縮機吐出冷媒の温度変化を説明する。
図中の二点鎖線は、作動冷媒がHFO−1123単体の組成における不均化反応発生温度を示す。鎖線は、通常運転時の非共沸混合冷媒(HFO−1123及びHFO−1234yf)の組成比における不均化反応発生温度を示す。一点鎖線は、通常運転時の圧縮機1の吐出冷媒温度を示す。図9に示す通常運転の制御では、運転開始後、圧縮機1の吐出冷媒が直ちに目標温度、圧力となるよう制御されるが、運転開始の初期状態はHFO−1123が冷媒回路内に富む状態のため、圧縮機1の吐出温度、圧力が目標値となる前に不均化反応が生じる可能性がある。
【0033】
一方で、本実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、図8に示すように運転開始の初期状態は、安全性を考慮してHFO−1123単体の組成比であっても不均化反応が生じないように圧縮機吐出冷媒温度を不均化反応発生温度を示す二点鎖線以下として運転する。
そして、吐出ガス冷媒のアキュームレータ5の出入り口温度差が、閾値となる温度勾配より小さくなると、アキュームレータ5内の高沸点冷媒(HFO−1234yf)が気化し、冷媒回路内の低沸点冷媒(HFO−1123)の組成比が低下したと判断して、図5に示すように三方弁8を切り替え、圧縮機1の回転周波数を上昇させて吐出温度及び圧力を上げ、通常運転状態へと移行する。
【0034】
なお、第1温度検知手段6の温度は冷凍サイクル装置内で最も高温、高圧下となるため、圧縮機1の起動時は、不均化反応を生じる冷媒(例えばHFO−1123)単体の状態であっても不均化反応が生じない温度以下となるよう第1温度検知手段6の検知温度を抑制するように冷凍サイクル装置を制御する。このとき、圧縮機1の回転周波数を抑制するだけではなく、凝縮器2の凝縮器ファン2aの回転数を増加させる、膨張弁3の開度を開く、または、蒸発器4の蒸発器ファン4aの回転数を低下させる制御のうちのいずれか、またはそれらを組み合わせて初期運転を行うことができる。
【0035】
次に、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の効果について説明する。
低沸点冷媒であるHFO−1123と、高沸点冷媒であるHFO−1234yfとの非共沸混合冷媒の場合、運転開始時において沸点の違いによりHFO−1123が冷媒回路内で富む状態となり、通常運転時と比べ低温、低圧の条件でも不均化反応を生じやすい。 このため、運転開始の初期状態において圧縮機1の回転周波数を低くして運転することで吐出冷媒温度及び圧力を抑制し、不均化反応を防止することができる。
【0036】
また、運転開始の初期状態に圧縮機1から吐出されたガス冷媒の熱によりアキュームレータ5内に液冷媒として寝込んでいる高沸点冷媒(HFO−1234yf)の気化を促進させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させることができる。
さらに、非共沸混合冷媒の組成を通常運転状態に変化させ後、三方弁8を切り替え、アキュームレータ5を経由させずに吐出冷媒を凝縮器2へと流入させることで、アキュームレータ5内の過剰な加熱を防止することができる。
【0037】
また、アキュームレータ5内の内部有効高さの下端から5%以上50%以下の位置にガス冷媒が通る熱交換部9aを設けることで高沸点冷媒(HFO−1234yf)に富む液冷媒を確実に加熱し気化させるとともに必要以上の加熱を防止することができる。また、アキュームレータ5内の液冷媒を効率的気化させることができるため、冷房運転または暖房運転などの通常運転に短時間で移行することが可能となる。
そして、第1温度検知手段6と、第2温度検知手段7との温度差による温度勾配の変化を検知して、アキュームレータ5内に貯留された液冷媒のレベルを判断するため、レベルセンサーを設けることがない簡易な構成で初期状態から通常運転への移行制御が可能になる。
【0038】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の構成について説明する。
図10は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
本実施の形態2の冷凍サイクル装置は、基本的な構成が実施形態1と同様であるが、三方弁8の下流側に四方弁11を備え、冷媒の流れ方向を切替え可能としている点で異なっているため、この点のみを説明する。なお、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の符号を付している(実施の形態1では熱交換器を凝縮器2及び蒸発器4としているが、実施の形態2では、四方弁11の切替えにより凝縮器2が蒸発器として機能し、蒸発器4が凝縮器として機能することがある)。
【0039】
次に、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の動作について説明する。
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1と同様の非共沸混合冷媒を作動冷媒として採用している。
四方弁11により冷媒の流通方向を切り替えることにより、空調対象空間に対して冷房運転及び暖房運転を実施することが可能となる。
【0040】
図11は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の運転開始の初期状態における冷媒の動作を示した図である。
図12は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の通常運転時の冷媒の動作を示した図である。
実施の形態1と同様に運転開始の初期状態は、図11に示すように圧縮機1から吐出されたガス冷媒の熱によりアキュームレータ5内に液冷媒として寝込んでいる高沸点冷媒(HFO−1234yf)の気化を促進させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させることができる。その後、図12のように三方弁8を切り替え、通常運転に移行する。
この移行制御における制御フローは実施の形態1と同様に図6に示す通りである。
【0041】
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の効果について説明する。
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置と同様にアキュームレータ5内を加熱する経路を有し、特に圧縮機1の運転開始の初期状態においてアキュームレータ5内に貯留された高沸点冷媒(HFO−1234yf)に富む液冷媒を加熱により気化させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させることができる。そして、このアキュームレータ5の加熱中に圧縮機1の回転数を低くすることで吐出冷媒温度及び圧力を抑え、低沸点冷媒(HFO−1123)の不均化反応を抑制することができる。また、図10に示すように四方弁11を設けることで、空調対象空間の冷房運転及び暖房運転を実施することが可能となる。
【0042】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の構成について説明する。
図13は、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
本実施の形態3に係る冷凍サイクル装置は、基本的な構成が実施形態1と同様であるが、運転開始の初期状態において、圧縮機1の吐出冷媒をアキュームレータ5に供給する構成に加えて、圧縮機1やアキュームレータ5等、停止時に冷媒が貯留しやすい箇所に圧縮機加熱手段13やアキュームレータ加熱手段14を備え、加熱を可能としている点が異なっている。
【0043】
圧縮機加熱手段13は、例えば、圧縮機1内部のモータを駆動することなくモータ巻線に通電(拘束通電)して発熱させ、圧縮機1を加熱する加熱手段を用いることができる。
また、圧縮機1の外面に電気ヒータ等を取り付ける構成とすることもできる。電気ヒータは、抵抗加熱や誘導加熱など様々な加熱方式を採用することができる。
アキュームレータ加熱手段14は、圧縮機加熱手段13と同様に例えば、アキュームレータ5の外面に電気ヒータ等を取り付ける加熱手段を用いることができる。
【0044】
次に、実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の動作について説明する。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1と同様の非共沸混合冷媒を作動冷媒として採用している。
実施の形態1と同様に運転開始の初期状態にアキュームレータ5に圧縮機1から吐出ガス冷媒を供給して加熱するとともに、圧縮機1やアキュームレータ5内に液冷媒として寝込んでいる高沸点冷媒(HFO−1234yf)を各加熱手段で加熱して気化を促進させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させる。その際に圧縮機1の回転周波数を低く抑える点は、実施の形態1と同様である。その後、三方弁8を切り替え、通常運転に移行する。なお、アキュームレータ5内の内部有効高さの下端から5%以上50%以下の位置にアキュームレータ加熱手段14を設けることで高沸点冷媒(HFO−1234yf)に富む液冷媒を確実に加熱し気化させるとともに必要以上の加熱を防止することができる。また、アキュームレータ5内の液冷媒を効率的気化させることができるため、冷房運転または暖房運転などの通常運転に短時間で移行することが可能となる。
【0045】
これらの圧縮機加熱手段13やアキュームレータ加熱手段14の駆動制御は、実施の形態1と同様に図6の制御フローに倣ってアキュームレータ5内の液冷媒が気化した段階(step5)にて加熱を終了することができる。また、圧縮機1やアキュームレータ5の底部における外表面の温度や、それぞれから排出される冷媒の温度を検出し、所定の温度に上昇するまで加熱駆動する制御を適用することができる。さらに、圧縮機1の起動からの時間を計測するタイマーなどの計時手段を設け、起動から所定時間、加熱手段を駆動する制御を採用することもできる。その際に外気の温度を検出し、外気温度が低いときには寝込み液冷媒の量が多いと判断して加熱手段の駆動時間を増加するよう補正してもよい。
【0046】
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置の効果について説明する。
実施の形態3に係る冷凍サイクル装置は、運転開始の初期状態において、圧縮機1内やアキュームレータ5内に貯留された高沸点冷媒(HFO−1234yf)に富む液冷媒を圧縮機1の吐出ガス冷媒と各加熱手段とにより気化させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させることができる。そして、これらの加熱手段の駆動中に圧縮機1の回転数を低くすることで吐出冷媒温度及び圧力を抑え、低沸点冷媒(HFO−1123)の不均化反応を抑制することができる。
【0047】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る冷凍サイクル装置の構成について説明する。
本実施の形態4に係る冷凍サイクル装置は、基本的な構成が実施形態1と同様であるが、圧縮機1からの吐出ガス冷媒をアキュームレータ5に供給する際に三方弁に代えて冷媒の流通を制御するホットガスバイパス弁15(本発明の二方弁に相当する)を設けた点と、アキュームレータ5内の液冷媒のレベルを測定する液面検知手段16を備える点が異なっている。そして、アキュームレータ5を加熱した後の吐出冷媒を、図14に示すように蒸発器4の出口側、あるいは、図15に示すように凝縮器2の入口側に合流させる。
【0048】
また、アキュームレータ5に設けた液面検知手段16は、実施の形態1に記載の図7に示す吐出ガス冷媒の温度勾配による液冷媒レベルの検知手段に代えて設けるものである。
液面検知手段16は、例えば、液部分とガス部分の温度差から液面を計測するサーミスタ方式等、発光部と受光部から構成され、光の透過状態により液面を測定する光方式、液冷媒や冷凍機油の静電容量を検出し液面を計測する静電容量プローブ方式、超音波が反射して戻ってくる時間を測定して液面を計測する超音波方式などを採用することができる。
【0049】
次に、実施の形態4に係る冷凍サイクル装置の動作について説明する。
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置は、実施の形態1と同様の非共沸混合冷媒を作動冷媒として採用している。
実施の形態1と同様に運転開始の初期状態にアキュームレータ5に圧縮機1から吐出ガス冷媒をバイパス経路9のホットガスバイパス弁15を介して供給し、アキュームレータ5内に液冷媒として寝込んでいる高沸点冷媒(HFO−1234yf)を加熱して気化を促進させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させる。その際に圧縮機1の回転周波数を低く抑える点は、実施の形態1と同様である。
【0050】
また、運転開始の初期状態において、凝縮器2の凝縮器ファン2aの回転数を通常運転(冷房又は暖房定格運転時)に対して増加させる、もしくは、蒸発器4の蒸発器ファン4aの回転数を通常運転(冷房又は暖房定格運転時)に対して低下させてもよい。
凝縮器2の凝縮器ファン2aの回転数を通常運転(冷房又は暖房定格運転時)の4/3以上の回転数で高速運転させる、もしくは、蒸発器4の蒸発器ファン4aの回転数を通常運転(冷房又は暖房定格運転時)の2/3以下の回転数で低速運転させるものである。
【0051】
実施の形態1では、図6に示すようにアキュームレータ5で熱交換した吐出ガス冷媒の温度勾配の変化により三方弁8を切り替え、通常運転に移行するが、本実施の形態4では、液面検知手段16によりアキュームレータ5内の液冷媒のレベルを測定し、液面が閾値以下に低下した段階でホットガスバイパス弁15を閉じて通常運転に移行する。この移行の際には、アキュームレータ5内の液冷媒量の減少に基づいて圧縮機1の回転周波数を上昇させる、または、凝縮器ファン2aをアキュームレータ5内の液冷媒量の減少に基づいて回転数を低下させる、もしくは、蒸発器ファン4aをアキュームレータ5内の液冷媒量の減少に基づいて回転数を上昇させるなどの制御で通常運転に移行することができる。
【0052】
図14は、実施の形態4に係る冷凍サイクル装置のホットガスバイパス弁が開いている時の概略構成図である。
運転開始の初期状態において、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、凝縮器2とホットガスバイパス弁15へとそれぞれ分かれて流入する。凝縮器2へと流入した冷媒は膨張弁3、蒸発器4の順に流れる。また、ホットガスバイパス弁15へと流入した冷媒は、アキュームレータ5内の液冷媒を加熱し気化させる。アキュームレータ5を出た冷媒は蒸発器4の出口側で合流し、アキュームレータ5内を経由して圧縮機1へと吸引される。
その後、液面検知手段16により検出されたアキュームレータ5内の液冷媒のレベルが閾値を下回ったときには、ホットガスバイパス弁15を閉じ、圧縮機1の回転周波数を上昇させて通常運転に移行する。
【0053】
図15は、実施の形態4に係る冷凍サイクル装置のホットガスバイパス弁が開いている時の別の例の概略構成図である。
図14と同様に運転開始の初期状態において、圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、凝縮器2とホットガスバイパス弁15へとそれぞれ分かれて流入する構成であるが、アキュームレータ5を出た冷媒は凝縮器2の入口側に合流する構成となる。液面検知手段16の検出結果による通常運転への移行は図14の例と同様である。
なお、圧縮機1の起動初期はホットガスバイパス弁15の開度を大きくし、アキュームレータ5内の液面レベルが下がってくるに従って、複数の閾値を設けてホットガスバイパス弁15の開度を小さくし、アキュームレータ5の加熱量を調整してもよい。
【0054】
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置の効果について説明する。
実施の形態4に係る冷凍サイクル装置は、運転開始の初期状態において、圧縮機1内やアキュームレータ5内に貯留された高沸点冷媒(HFO−1234yf)に富む液冷媒を圧縮機1の吐出ガス冷媒により気化させ、非共沸混合冷媒の組成比を短時間で通常運転状態に変化させることができる。また、ホットガスバイパス弁15には一部の吐出冷媒が流れており、その他の吐出冷媒は凝縮器2側に流れるため、アキュームレータ5の加熱と併行して冷暖房運転等を継続することができる。
【0055】
さらに、運転開始の初期状態において、ホットガスバイパス弁15が開いている間、圧縮機1の回転数を低くすることで吐出冷媒温度を抑え、低沸点冷媒(HFO−1123)の不均化反応を抑制することができる。
または、凝縮器ファン2aの回転数を通所運転(冷房又は暖房定格運転時)に対して増加させる、もしくは、蒸発器ファン4aの回転数を通常運転(冷房又は暖房定格運転時)に対して低下させることで、冷凍サイクルの高圧側及び低圧側の圧力を低下させ、圧縮機1の吐出圧力、吐出温度を小さくすることで、非共沸混合冷媒の不均化反応を防止することができる。
【0056】
また、アキュームレータ5内の液冷媒のレベルを液面検知手段16にて正確に検出し、非共沸混合冷媒の組成比が通常運転状態になってから通常運転へ移行するため、不均化反応を確実に防止することができる。ホットガスバイパス弁15の開度をアキュームレータ5内の液冷媒のレベルの低下に基づいて絞る方向に調整することでアキュームレータ5の過剰な加熱を防止することができる。
【0057】
以上、実施の形態1〜4について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されず、各実施の形態の全て又は一部を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 圧縮機、2 凝縮器、2a 凝縮器ファン、3 膨張弁、4 蒸発器、4a 蒸発器ファン、5 アキュームレータ(本発明の気液分離器に相当)、6 第1温度検知手段、7 第2温度検知手段、8 三方弁、9 バイパス経路、9a 熱交換部、10 メイン経路、11 四方弁、13 圧縮機加熱手段、14 アキュームレータ加熱手段、15 ホットガスバイパス弁、16 液面検知手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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