(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フェノール系抗酸化剤が、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノール、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されている、請求項8に記載の潤滑剤組成物。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、潤滑剤組成物用のシール適合性添加剤に関する。より具体的には、本発明はシール適合性添加剤を含有する添加剤パッケージ、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物、及びフルオロポリマーシールを含有する潤滑剤組成物によって系を潤滑にする方法に関する。
【0002】
背景技術
性能特性を改善するため、鉱油又は合成油をベースとする潤滑剤組成物に、安定剤を添加することが知られており、また慣用である。アミン化合物の中には、潤滑剤用の安定剤として効果的なものもある。例えば、特定のアミン化合物は、ススを分散させてエンジン部材の清浄さを維持するのに役立ち、別のアミン化合物は、燃焼工程の間に形成される酸を中和するのに役立つ。しかしながらこれら慣用のアミン化合物は、フルオロポリマーシールに対して有害な効果を有する。
【0003】
本発明の目的は、潤滑剤組成物のフルオロポリマーシール適合性を改善させる、新規添加剤を提供することである。
【0004】
発明の概要
本発明によってまた、潤滑剤組成物とフルオロポリマーシールとの適合性を改善させる潤滑剤組成物用の添加剤パッケージが得られる。この添加剤パッケージは、シール適合性添加剤を含有する。
【0005】
本発明によってまた、フルオロポリマーシールとの適合性が改善された潤滑剤組成物が得られる。この潤滑剤組成物は、基油とシール適合性添加剤を含有する。
【0006】
本発明によってまた、フルオロポリマーシールを有する系を潤滑にする方法が得られる。この方法は、基油とシール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物を用意する工程を有する。
【0007】
シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、CEC L-39-T96により示されるフルオロポリマーシールとの適合性が改善されている。
【0008】
発明の詳細な説明
潤滑剤組成物用の添加剤パッケージは、シール適合性添加剤を含有する。或いは、潤滑剤組成物用の添加剤パッケージは、シール適合性添加剤とアミン化合物を含有する。添加剤パッケージは、慣用の潤滑剤組成物に添加されていてよい。添加剤パッケージと生成する潤滑剤組成物(添加剤パッケージが添加されたもの)はともに考慮され、本開示内容に一括して記載される。
【0009】
シール適合性添加剤(例えばヨウ素原子を少なくとも1個有するシール適合性添加剤)は、潤滑剤組成物において有利なシール適合性効果をもたらす。幾つかの態様においてシール適合性添加剤は、アミン化合物との組み合わせで、有利なシール適合性効果を示す。
【0010】
シール適合性添加剤は、ハロゲン原子を少なくとも1個有する。それ以外にも、シール適合性添加剤は、多くの形態を取ることができる。シール適合性添加剤は例えば、炭化水素骨格を有することができる。シール適合性添加剤はさらに、ハロゲン化アルキル化合物を含有することができるか、又は第四級アミン化合物(このアミン化合物に結合されたハロゲン原子を少なくとも1個有するもの)であってよい。或いはまた、シール適合性添加剤は、単体のハロゲン、例えばBr
2及びI
2であり得る。
【0011】
1つ以上の態様において、シール適合性添加剤は、炭化水素骨格と、炭化水素骨格にある炭素原子に結合されたハロゲン原子を少なくとも1個有する。シール適合性添加剤は、直鎖であるか、又は分枝鎖状であってよい。炭化水素骨格は、環状であるか、又は非環状であり得る。炭化水素骨格は、1〜30個、2〜25個、2〜20個、2〜15個、9〜15個、又は9〜12個、炭素原子を有することができる。ここで使用するように「非環状」とは、あらゆる環状構造を有さない炭化水素骨格について述べるものであり、芳香族構造を排除する用語である。
【0012】
幾つかの態様においてシール適合性添加剤は、懸垂基を少なくとも1個有することができる。幾つかの態様において少なくとも1個の懸垂基は、アルコール基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アミン基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アミド基、エーテル基、エステル基、及びこれらの組み合わせから選択され、それぞれ炭素原子を1〜30個、1〜20個、1〜15個、又は3〜12個有する。これらの懸垂基はそれぞれ、シール適合性添加剤の炭化水素骨格に位置している炭素原子に結合していてよい。或いは、炭化水素骨格は、炭化水素骨格にある炭素原子に結合された懸垂基又は官能基を有さなくてもよい。
【0013】
1つの態様において、シール適合性添加剤は環状である。これはつまり、シール適合性添加剤が炭化水素骨格を有し、この炭化水素骨格が、環状懸垂基を少なくとも1個有するか、若しくはこの炭化水素骨格が環状であるか、又はその両方であるということである。別の態様において、シール適合性添加剤は非環状である。これはつまり、炭化水素骨格が非環状であり、シール適合性添加剤が環状懸垂基を有さないということである。
【0014】
炭化水素骨格は、官能基(例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、エポキシ基、オキシド基、チオ基、及びチオール基)を少なくとも1個有することができる。これらの官能基のうち1個以上は、シール適合性添加剤の炭化水素骨格に結合されていてよい。幾つかの態様において、炭化水素骨格はまた、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば酸素、硫黄、及び窒素のヘテロ原子)、又は少なくとも1個のヘテロ基(例えばピリジル、フリル、及びイミダゾリルのヘテロ基)を有することができる。さらに、又は1つの選択肢として、炭化水素骨格は、ヘテロ原子及び/又はヘテロ基不含であってよい。炭化水素骨格は、飽和又は不飽和であり得る。
【0015】
前述のように、シール適合性添加剤はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びこれらの組み合わせを含有することができる。或いは、シール適合性添加剤はフッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びこれらの組み合わせを含有することができる。幾つかの態様においてシール適合性添加剤は、塩素原子不含である。これらのハロゲン原子はそれぞれ、シール適合性添加剤の炭化水素骨格にある炭素原子に、又はシール適合性添加剤の炭化水素骨格の懸垂基の1つにある炭素原子に、結合されていてよい。シール適合性添加剤は、1分子当たりハロゲン原子を1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれより多く有することができる。異なるハロゲン原子が2種以上、又は同種のハロゲン原子2個以上が、同じシール適合性添加剤に存在していてよいことも考えられる。例えば、シール適合性添加剤は、少なくとも1個のヨウ素原子と、少なくとも1個の臭素原子を有することができる。
【0016】
1つの態様において、シール適合性添加剤は、ハロゲン化アルキル化合物を含有することができる。このハロゲン化アルキル化合物は、以下の一般式を有する:
【化1】
上記式(I)中、n≧1であり、1≦m≦(2n+2)であり、Xはハロゲン原子である。Xは、フッ素、臭素、ヨウ素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。幾つかの態様においてnは、1〜30、2〜25、2〜20、2〜15、9〜15、又は9〜12の範囲にあり得る:mは、1、2、3、4、5、6、又はこれらより大きい値であり得る。このハロゲン化アルキル化合物は、第一級、第二級、又は第三級であり得る。ハロゲン化アルキル化合物は幾つかの態様において、モノハロゲン化物、ジハロゲン化物、トリハロゲン化物、又はテトラハロゲン化物であり得る。異なるハロゲン原子が2種以上、又は同種のハロゲン原子2個以上が、同じハロゲン化アルキル化合物に存在していてよいことも考えられる。例えば、シール適合性添加剤は、1,4−ジヨードブタン、又は1−ヨード−4−ブロモブタンを含有することができる。
【0017】
第四級ハロゲン化合物は、第四級アミン塩に結合された少なくとも1個のハロゲン原子を有する第四級アミン塩として理解することができる。ハロゲン原子は、第四級アミン塩の本体に沿って結合されていてよいか、又はハロゲン化物対イオンとして第四級アミン塩に結合されていてよい。第四級アミン化合物は、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれより多くの窒素原子を有することができる。第四級アミン化合物はまた、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれより多くのハロゲン原子を有することができる。異なるハロゲン原子が2種以上、又は同種のハロゲン原子2個以上が、同じ第四級アミン化合物に存在していてよいことも考えられる。第四級アミン化合物は、様々な種類の懸垂基を有することができ、それは例えばアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリールアルキル基、又はヘテロアリール基であり、これらはそれぞれ炭素原子を1〜30個、1〜20個、1〜15個、又は3〜12個有するものであり、第四級アミンは少なくとも1種のアミン、イミン、ヒドロキシ、ハロゲン、及び/又はカルボキシ基によってさらに置換されていてよい。第四級アミン化合物は、環状であるか、又は非環状であり得る。
【0018】
例示的なシール適合性添加剤には、以下のものが含まれる:
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【0019】
シール適合性添加剤は質量平均分子量が、50〜1500、50〜1000、100〜500、150〜500、200〜500、又は250〜500の範囲であり得る。
【0020】
シール適合性添加剤は、1気圧における沸点が50〜650℃、100〜450℃、135〜450℃、140〜450℃、145〜450℃、150〜450℃、155〜450℃、又は200〜400℃の範囲であり得る。或いは、シール適合性添加剤は、1気圧における沸点が少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃、又は少なくとも160℃であり、かつこの1気圧における沸点は450℃未満、400℃未満、350℃未満、300℃未満、又は250℃未満である。
【0021】
シール適合性添加剤はまた、引火点が10〜300℃、25〜250℃、50〜250℃、75〜250℃、又は85〜200℃の範囲にあることによっても特徴付けられる。或いは、シール適合性添加剤は、引火点が少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、少なくとも30℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃、少なくとも70℃、少なくとも75℃、少なくとも80℃、又は少なくとも85℃であり、かつこの引火点は250℃未満、225℃未満、200℃未満、175℃未満、150℃未満、又は125℃未満である。
【0022】
幾つかの態様において、シール適合性添加剤は、1気圧で25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、又は100℃において液体である。
【0023】
シール適合性添加剤は、様々な方法で合成できる。シール適合性添加剤は例えば、アルケンをハロゲン化水素(例えば塩化水素若しくは臭化水素)と反応させて、相応するモノハロゲン化アルカンを得ることによって作製できる。或いは、シール適合性添加剤はアルコールをハロゲン化水素と反応させることによって作製できる。或いはまた、シール適合性添加剤はアルキルアルコールを、全てジメチルホルムアミド溶媒中にある四臭化炭素、臭化ナトリウム、及びルテニウム触媒と反応させることによって作製できる。四臭化炭素は、臭素原子以外のハロゲン原子を含有する化合物が望ましい場合、他の化合物で置き換えることができる。
【0024】
幾つかの態様では、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物におけるあらゆる反応の前に添加剤パッケージ及び/又は潤滑剤組成物を形成するために利用されるシール適合性添加剤の全質量に対して、シール適合性添加剤の少なくとも50質量%、少なくとも60質量%、少なくとも70質量%、少なくとも80質量%、少なくとも90質量%が、添加剤パッケージ及び/又は潤滑剤組成物中に未反応のまま残る。或いは、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物におけるあらゆる反応の前にシール適合性添加剤の全質量に対して、シール適合性添加剤の少なくとも95質量%、少なくとも96質量%、少なくとも97質量%、少なくとも98質量%、少なくとも99質量%が、添加剤パッケージ及び/又は潤滑剤組成物中に未反応のまま残る。
【0025】
「未反応」という用語は、シール適合性添加剤の未反応の量が、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物におけるあらゆる成分と反応しないという事実を表す。従って、未反応のシール適合性添加剤の部分量は、潤滑剤組成物が最終的な用途(例えば内燃エンジン)において使用される前に、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物に存在する場合、未使用の状態で残る。
【0026】
「あらゆる反応の前」という表現は、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物におけるシール適合性添加剤の量の基準を言う。この表現は、シール適合性添加剤が、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物において他の成分と反応することを要求するものではない。すなわち、シール適合性添加剤が、添加剤パッケージ及び/又は潤滑剤組成物におけるあらゆる反応の前にシール適合性添加剤の全質量に対して100質量%、添加剤パッケージ及び/又は潤滑剤組成物中に未反応のまま残ってもよい。
【0027】
1つの態様において、未反応のまま残るシール適合性添加剤のパーセンテージは、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物中に存在する全ての成分が、相互に平衡状態に達した後に特定される添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物中で平衡に達するのに必要となる時間は、大きく変わり得る。例えば、平衡に達するのに必要な量は、一分から数日、又は数週間にわたる。幾つかの態様において、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物中で未反応のまま残るシール適合性添加剤のパーセンテージは、1分後、1時間後、5時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後、1週間後、1ヶ月後、6ヶ月後、又は1年後に特定される。
【0028】
幾つかの態様において、シール適合性添加剤はアミン化合物と反応して、反応生成物、又は他の反応中間体(例えば塩)を形成する。シール適合性添加剤の組成に応じて、塩はハロゲン化アンモニウムであり得る。或いは、シール適合性添加剤は、アミン化合物と相互作用を起こして、反応錯体を形成してもよい。そこで幾つかの態様では、潤滑剤組成物又は添加剤パッケージは、シール適合性添加剤とアミン化合物との反応若しくは相互作用によって形成される反応生成物、反応中間体、又は反応錯体を含有していてよい。
【0029】
シール適合性添加剤(例えばヨウ素原子を少なくとも1個有するシール適合性添加剤)は、潤滑剤組成物において有利な抗酸化作用をもたらすとも考えられている。VIT(粘度上昇試験)が、この有利な抗酸化作用を定量化するために使用できる。抗酸化作用は、KV40が初期のKV40と比較して150%になった時に測定された時間が上昇する程度によって定量化される。KV40は、ASTM D445の方法によって特定される。特定の態様においてシール適合性添加剤は、KV40が150%に達するまでの時間数を、シール適合性添加剤無しの場合の同じ潤滑剤組成物により示される時間数に比較して、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、又は400%増加させる。
【0030】
TAN、TBNのクロスオーバー点もまた、有利な抗酸化作用の指標として測定される。潤滑剤組成物が老化するにつれて、TANが増加する一方、TBNは減少する。TANとTBNが相互に交差する点を、TAN、TBNのクロスオーバー点と言う。特定の態様においてシール適合性添加剤は、TAN、TBNのクロスオーバー点に達するまでの時間数を、シール適合性添加剤無しの場合の同じ潤滑剤組成物により示される時間数に比較して、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、又は400%増加させる。
【0031】
シール適合性添加剤は、潤滑剤組成物において有利な抗堆積作用をもたらすと考えられてもいる。シール適合性添加剤とアミン化合物とを含有する潤滑剤組成物もまた、潤滑剤組成物において有利な抗堆積作用をもたらすことができる。TEOST(熱酸化エンジンオイルシミュレーション試験)が、この有利な抗堆積作用を定量化するために使用できる。1つの態様ではTEOST MHT(登録商標)(ASTM D 7097)が、この利点を評価するために使用できる。MHT試験では、試料オイル8.5gを触媒とともに、事前に秤量した鋼製の堆積用ロッドに24時間、285℃で連続的に通す。ロッドの重さが堆積で増加することにより、オイルの性能を測定した。特定の態様において、シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物の添加により堆積物の質量は、シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物無しの同じ潤滑剤組成物を試験した場合に生じる堆積物の量と比較して、少なくとも0.5mg、1.5mg、10mg、15mg、20mg、30mg、40mg、又は50mg減少する。
【0032】
特定の態様においてシール適合性添加剤は、潤滑剤組成物において有利な抗腐食作用をもたらすとも考えられている(特に銅との関連で)。シール適合性添加剤とアミン化合物とを含有する潤滑剤組成物もまた、潤滑剤組成物において有利な抗腐食作用をもたらすことができる。ASTM D 6594準拠の高温腐食ベンチ試験(HTCBT)は、この有利な腐食効果を定量化するために使用できる。
【0033】
添加剤パッケージという文脈においてシール適合性添加剤は、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜100質量%、5〜50質量%、又は10〜40質量%の量で存在していてよい。潤滑剤組成物という文脈においてシール適合性添加剤は、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜10質量%、0.05〜5質量%、0.1〜3質量%、0.1〜2質量%、又は0.3〜1.5質量%の量で存在していてよい。添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物は、異なるシール適合性添加剤の混合物を含有することができる。添加剤パッケージは例えば、1種以上のシール適合性添加剤から成るか、又は実質的に、1種以上のシール適合性添加剤から成っていてよい。
【0034】
シール適合性添加剤は、潤滑剤組成物又は添加剤パッケージにおいてアミン化合物と合することができる。異なるアミン化合物の混合物もまた、潤滑剤組成物又は添加剤パッケージにおいてシール適合性添加剤と合することができると理解されるべきである。
【0035】
アミン化合物は、窒素原子を少なくとも1個有する。さらにアミン化合物は幾つかの構成において、環状環の本体に窒素原子が3個以上ある場合、トリアゾール、トリアジン、又はこれらの類似化合物を含有しない。アミン化合物は、脂肪族であり得る。
【0036】
特定の態様においてアミン化合物は、ASTM D4739により測定した合計塩基数(TBN)が少なくとも10mgKOH/gである。或いは、アミン化合物は、ASTM D4739により試験したTBNの値が少なくとも15mgKOH/g、少なくとも20mgKOH/g、少なくとも25mgKOH/g、少なくとも90mgKOH/g、少なくとも100mgKOH/g、少なくとも110mgKOH/g、少なくとも120mgKOH/g、少なくとも130mgKOH/g、少なくとも140mgKOH/g、少なくとも150mgKOH/g、又は少なくとも160mgKOH/gである。
【0037】
幾つかの態様においてアミン化合物は、潤滑剤組成物の合計塩基数(TBN)に対して、否定的な影響をもたらさない。或いはアミン化合物は、潤滑剤組成物のTBNを、それぞれアミン化合物1g当たり、少なくとも0.5mgKOH、少なくとも1mgKOH、少なくとも1.5mgKOH、少なくとも2mgKOH、少なくとも2.5mgKOH、少なくとも3mgKOH、少なくとも3.5mgKOH、少なくとも4mgKOH、少なくとも4.5mgKOH、少なくとも5mgKOH、少なくとも10mgKOH、又は少なくとも15mgKOH改善させることができる。潤滑剤組成物のTBN値は以下に記すように、ASTM D2896に従って測定できる。
【0038】
幾つかの態様においてアミン化合物は、水素、炭素、窒素、及び酸素から成るか、又は実質的に成る。或いは、アミン化合物は、水素、炭素、及び窒素から成るか、又は実質的に水素、炭素、及び窒素から成っていてよい。アミン化合物の文脈において、「実質的に・・・から成る」という言葉は、アミン化合物の少なくとも95mol%が、言及された原子(すなわち、水素、炭素、窒素、及び酸素;又は水素、炭素、及び窒素)であることを表す。例えば、アミン化合物が実質的に水素、炭素、窒素、及び酸素から成る場合、アミン化合物の少なくとも95mol%が、水素、炭素、窒素、及び酸素である。特定の構成において、アミン化合物の少なくとも96mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、若しくは少なくとも99.9mol%が、水素、炭素、窒素、及び酸素であるか、又は別の態様において、アミン化合物の少なくとも96mol%、少なくとも97mol%、少なくとも98mol%、少なくとも99mol%、若しくは少なくとも99.9mol%が、炭素、窒素、及び酸素である。
【0039】
アミン化合物は、共有結合から成っていてよい。「共有結合から成る」という表現は、少なくとも1個のイオン原子又は化合物とのイオン結合によってアミン化合物に結合する化合物を排除するものである。これはつまり、アミン化合物が共有結合から成る構成では、アミン化合物から、アミン化合物の塩(例えばホスフェートアミン塩、及びアンモニウム塩)が排除されるということである。よって特定の態様において潤滑剤組成物は、アミン化合物の塩を含有しない。より具体的には、潤滑剤組成物はホスフェートアミン塩、アンモニウム塩、及び/又はアミンスルフェート塩を含有しない。
【0040】
アミン化合物は、質量平均分子量が500未満のモノマー状非環状アミン化合物であり得る。或いは、モノマー状環式アミン化合物は、質量平均分子量が450未満、400未満、350未満、300未満、250未満、200未満、又は150未満である。或いはまた、環式アミン化合物は、質量平均分子量が少なくとも30、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、又は少なくとも250であり得る。
【0041】
「非環状」とは、あらゆる環状構造を有さないアミン化合物について述べるものであり、芳香族構造を排除する用語である。例えば、モノマー状環状アミン化合物は、環状構造内で相互に結合した原子を少なくとも3個有する環を備える化合物、及びベンジル基、フェニル基、若しくはトリアゾール基を含有する化合物を含まない。
【0042】
モノマー状環式アミン化合物は、下記一般式(II)によって例示できる:
【化3】
上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又はヒドロカルビル基である。Rで示されるヒドロカルビル基はそれぞれ独立して、置換若しくは非置換で直鎖若しくは分枝鎖のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル基、又はこれらの組み合わせである。Rで示されるヒドロカルビル基はそれぞれ独立して、炭素原子を1〜100個、1〜50個、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個有することができる。或いは、Rで示されるヒドロカルビル基はそれぞれ独立して、炭素原子を20個未満、15個未満、12個未満、又は10個未満、有することができる。
【0043】
「非置換」とは、示されたヒドロカルビル基又は炭化水素基が、置換官能基(例えばアルコキシ基、アミド基、アミン基、ケト基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、オキシド基、チオ基、及びチオール基)を有さないこと、及び示されたヒドロカルビル基又は炭化水素基がヘテロ原子及び/又はヘテロ基を有さないことを意味する。
【0044】
或いは、Rで示されたヒドロカルビル基はそれぞれ独立して置換されていてよく、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば酸素、窒素、硫黄、塩素、フッ素、臭素、若しくはヨウ素)、及び/又は少なくとも1個のヘテロ基(例えばピリジル、フリル、及びイミダゾリルのヘテロ基)を有することができる。或いは、又はヘテロ原子とヘテロ基を含むことに代えて、Rで示されたヒドロカルビル基はそれぞれ独立して、アルコキシ基、アミド基、アミン基、カルボキシ基、エポキシ基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、ケト基、金属塩、スルフリル基、及びチオール基から選択される置換基を少なくとも1個有することができる。或いは、Rで示されたヒドロカルビル基はそれぞれ独立して、非置換であってよい。
【0045】
例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、及びドデシルといった基が含まれる。例示的なシクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基である。例示的なアリール基には、フェニル基、及びナフタレニル基が含まれる。例示的なアリールアルキル基には、ベンジル、フェニルエチル、及び(2−ナフチル)−メチルが含まれる。
【0046】
モノマー状非環式アミンには、モノアミンとポリアミン(アミン基を2個以上有するものを含む)が含まれる。幾つかの態様において、Rで表される少なくとも1個の基は、置換されていない。或いは、Rで表される2個又は3個の基は、置換されていない。或いはまた、R
13で表される1個、2個又は3個の基が、置換されていることも考えられる。
【0047】
モノマー状慣用アミン化合物の例には、第一級、第二級、及び第三級アミンが含まれるが、これらに限られるわけではなく、例えば以下のものである:
【化4】
【0048】
或いは、モノマー状非環式アミン化合物は、以下のもの一種以上であり得る:
・第一級アミン、例えばエチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ペンチルアミン、及びヘキシルアミン、
・下記式の第一級アミン:CH
3−O−C
2H
4−NH
2、C
2H
5−O−C
2H
4−NH
2、CH
3−O−C
3H
6−NH
2、C
2H
5−O−C
3H
6−NH
2−、C
4H
9−O−C
4H
8−NH
2、HO−C
2H
4−NH
2、HO−C
3H
6−NH
2、及びHO−C
4H
8−NH
2、
・第二級アミン、例えばジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−s−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、
・下記式の第二級アミン:(CH
3−O−C
2H
4)
2NH、(C
2H
5−O−C
2H
4)
2NH、(CH
3−O−C
3H
6)
2NH、(C
2H
5−O−C
3H
6)
2NH、(n−C
4H
9−O−C
4H
8)
2NH、(HO−C
2H
4)
2NH、(HO−C
3H
6)
2NH、及び(HO−C
4H
8)
2NH、並びに
・ポリアミン、例えばn−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びこれらのアルキル化生成物、例えば3−(ジメチルアミノ)−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、及びN,N,N’,N’,−テトラメチレンジエチレントリアミン。
【0049】
或いはアミン化合物は、モノマー状環式アミン化合物であり得る。モノマー状環式アミン化合物は、質量平均分子量が100〜1200、200〜800、又は200〜600の範囲である。或いは、モノマー状環式アミン化合物は、平均分子量が500未満、又は少なくとも50であり得る。幾つかの態様では、モノマー状環式アミン化合物は、芳香族基(例えばフェニル環、及びベンジル環)不含である。別の態様では、モノマー状環式アミン化合物は、脂肪族である。
【0050】
モノマー状環式アミン化合物は、1分子当たり窒素原子を2個以下有することができる。或いは、モノマー状環式アミン化合物は、1分子当たり窒素を1個だけ有することができる。「1分子当たりの窒素」とは、分子全体(分子の本体と、あらゆる置換基を含む)における窒素原子の総数を言う。幾つかの態様では、モノマー状の環式アミン化合物は、モノマー状の環式アミン化合物の環状環に、窒素原子を1個又は2個有する。
【0051】
モノマー状の環式アミン化合物は、下記一般式(III)又は(IV)によって例示できる:
【化5】
【化6】
【0052】
一般式(III)及び(VI)においてYは、一般式(III)又は(IV)の環状環を完成させるために必要な原子の種類と数を表す。Yで表される環は、2〜20個、3〜15個、5〜15個、又は5〜10個の炭素原子を有する。Yで示される環は置換若しくは非置換で直鎖状若しくは分枝鎖状の二価炭化水素基であってよく、この基はヘテロ原子(例えば酸素若しくは硫黄)を少なくとも1個有し、少なくとも1個のヘテロ基を有することができる。ヘテロ原子及び/又はヘテロ基を有することに加えて、Yで示される環は、ヒドロカルビル置換基を少なくとも1個有することができる(一般式(II)におけるRについて記載した通り)。幾つかの態様においてYで示される環は、窒素のヘテロ原子、又はあらゆるヘテロ原子を含まない。ヘテロ原子、ヘテロ基、及び/又は置換基は、Yで示される二価の炭化水素基における異なる元素に結合していてよい。一般式(IV)における置換窒素原子は、少なくとも1個の水素原子に結合していてよく、又は1個若しくは2個のヒドロカルビル基に結合していてよい。
【0053】
式(III)において、R
1は水素原子であるか、又はヒドロカルビル基である。R
1で示されるヒドロカルビル基は、式(II)に関して前述のRと意味と同じであってよい。R
1は例えば、アルコール基、アミノ基、アルキル基、アミド基、エーテル基、又はエステル基であり得る。R
1は炭素原子を、1〜50個、1〜25個、1〜17個、1〜15個、1〜12個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個有することができる。R
1は、直鎖状又は分枝鎖状であり得る。例えば、R
1はそれぞれ、アルコール基、アミノ基、アルキル基、アミド基、エーテル基、若しくは特定の官能基(アルコールなど)を有する炭素原子数が1〜50のエステル基、ヘテロ原子、又は骨格にある炭素原子の様々な位置で結合されたヘテロ基であり得る。一般式(IV)における置換窒素原子は、少なくとも1個の水素原子に結合していてよく、又は1個若しくは2個のヒドロカルビル基に結合していてよい(例えば、R
1に関して前述のように)。
【0054】
1つの態様において、モノマー状環式アミン化合物は、下記一般式(V)によって例示できる:
【化7】
一般式(V)において、R
2はそれぞれ独立して、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜17のヒドロカルビル基である。R
2で示されるヒドロカルビル基は、一般式(II)におけるRと意味と同じであってよい。例えばR
2はそれぞれ独立して、アルコール基、アミノ基、アミド基、エーテル基、又はエステル基で置換されていてよい。R
2はそれぞれ独立して、炭素原子を1〜17個、1〜15個、1〜12個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個有することができる。幾つかの態様において、R
2で表される少なくとも1個の基は、置換されていない。或いは、R
2で表される少なくとも2個、3個、4個、5個、又は6個の基は、置換されていない。或いはまた、R
2で表される1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の基が、置換されていることも考えられる。例えば、R2はそれぞれ、炭素原子数が1〜17のアルコール基、アミノ基、アルキル基、アミド基、エーテル基、又はエステル基であってよく、炭素鎖の様々な位置で結合した所望の官能基(アルコールなど)を有することができる。
【0055】
モノマー状環式アミン化合物の例には、以下のものが含まれる:
【化8】
【0056】
幾つかの態様では、アミン化合物、例えばモノマー状の非環式アミン化合物、又はモノマー状の環式アミン化合物は、立体障害性アミン化合物であり得る。立体障害性アミン化合物は、質量平均分子量が100〜1200であり得る。或いは、立体障害性アミン化合物は、質量平均分子量が200〜800、又は200〜600である。或いはまた、立体障害性アミン化合物は、質量平均分子量が500未満であり得る。
【0057】
ここで使用する「立体障害性アミン化合物」とは、第二級若しくは第三級窒素原子に対して少なくとも1個のα炭素に結合した水素原子を2個未満しか有さない有機分子である。別の態様において「立体障害性アミン化合物」とは、第二級若しくは第三級窒素原子に対して少なくとも1個のα炭素に結合した水素原子を有さない有機分子である。さらなる別の態様において「立体障害性アミン化合物」とは、第二級若しくは第三級窒素原子に対して少なくとも2個のα炭素にそれぞれ結合した水素原子を有さない有機分子である。
【0058】
立体障害性アミン化合物は、一般式(VI)又は(VII)のものであり得る:
【化9-1】
【化9-2】
一般式(VI)においてR
3はそれぞれ独立して、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜17のヒドロカルビル基であり、ここで1分子内でR
3のうち少なくとも2個は、アルキル基であり、R
4は独立して、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜17のヒドロカルビル基である。一般式(VII)においてR
5はそれぞれ独立して、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜17のヒドロカルビル基であり、ここで1分子内でR
5のうち少なくとも2個は、アルキル基であり、R
5はそれぞれ独立して、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜17のヒドロカルビル基である。
【0059】
R
3、R
4、R
5、及びR
6で示される基は、一般式(II)に関して前述のRと意味と同じであってよい。例えば、R
3、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立して、アルコール基、アミド基、エーテル基、又はエステル基であってよく、例えば、R
3、R
4、R
5、及びR
6はそれぞれ独立して、炭素原子を1〜17個、1〜15個、1〜12個、1〜8個、1〜6個、1〜4個有することができる。
【0060】
幾つかの態様において、R
5、R
6、R
7、及びR
6で表される少なくとも1個の基は、置換されていない。或いは、R
5、R
6、R
7、及びR
6で表される少なくとも2個、3個、4個、5個、又は6個の基は、置換されていない。別の態様において、R
3、R
4、R
5、及びR
6で表される基はいずれも、置換されていない。或いはまた、R
3、R
4、R
5、及びR
6で表される1個、2個、3個、4個、5個、又は6個の基が、置換されていることも考えられる。
【0061】
R
3、R
4、R
5、及びR
6の基は例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、又はn−オクタデシルから独立して選択できる。
【0062】
一般式(VI)において、R
3で表される基のうち少なくとも2個、少なくとも3個、又は4個の基が全て、それぞれ独立してアルキル基である。同時に、一般式(VII)中、R
5で表される基の少なくとも2個が、アルキル基である。或いは、R
5で表される基の少なくとも3個、又は4個の基が全て、アルキル基である。
【0063】
式(VI)の立体障害性アミン化合物は、以下の化合物によって例示できる:
【化10-1】
【化10-2】
【0064】
一般式(VII)の立体障害性アミン化合物は、非環状である。「非環状」とは、一般式(VII)の立体障害性アミン化合物が、あらゆる環状構造と、芳香族構造を有さないということである。式(VII)の立体障害性アミン化合物は、以下の化合物によって例示できる:
【化11】
【0065】
或いは立体障害性アミン化合物は、下記一般式(VIII)によって例示できる:
【化12】
【0066】
一般式(VIII)において、R
3及びR
4はそれぞれ前述の通りであり、ここでR5のうち少なくとも3個が、それぞれ独立してアルキル基である。式(VII)の立体障害性アミン化合物は、以下の化合物によって例示できる:
【化13-1】
【化13-2】
【0067】
立体障害性アミン化合物は、エステル基を1個だけ有することができる。しかしながら立体障害性アミン化合物はまた、エステル基を含有しないこともあり得る。幾つかの態様において、立体障害性アミン化合物は、少なくとも1個、又は1個だけ、ピペリジン環を有することができる。
【0068】
使用する場合、潤滑剤組成物はアミン化合物を、潤滑剤組成物の全質量に対して0.1〜25質量%、0.1〜20質量%、0.1〜15質量%、又は0.1〜10質量%の範囲の量で含有することができる。或いは、潤滑剤組成物はアミン化合物を、潤滑剤組成物の全質量に対して0.5〜5質量%、1〜3質量%、又は1〜2質量%の量で含有することができる。
【0069】
アミン化合物が添加剤パッケージ中に含まれている場合、添加剤パッケージはアミン化合物を、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜50質量%の量で含有する。或いは、添加剤パッケージはアミン化合物を、添加剤パッケージの全質量に対して1〜25質量%、0.1〜15質量%、1〜10質量%、0.1〜8質量%、又は1〜5質量%の量で含有することができる。様々なアミン化合物の組み合わせも考慮される。
【0070】
潤滑剤組成物又は添加剤パッケージは、シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物に加えて、さらに分散剤を含有することができる。この分散剤は、ポリアルケンアミン、又は他のアミン系分散剤であり得る。このため分散剤の組成に応じて、分散剤は、上記アミン化合物の処方少なくとも1種に包含されることがある。
【0071】
アミン系分散剤のTBN値は、それぞれアミン系分散剤1g当たり、少なくとも15mgKOH、少なくとも25mgKOH、又は少なくとも30mgKOHであり得る。或いは、アミン系分散剤のTBN値は、それぞれアミン系分散剤1g当たり、15〜100mgKOH、15〜80mgKOH、又は15〜75mgKOHであり得る。ポリアルケンアミンは、ポリアルケン部分を有する。ポリアルケン部分は、同一若しくは異なる、直鎖状若しくは分枝鎖状のC
2〜C
6オレフィンモノマーの重合生成物である。適切なオレフィンモノマーの例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチルブテン、1−ヘキセン、2−メチルペンテン、3−メチルペンテン、及び4−メチルペンテンである。ポリアルケン部分は、質量平均分子量が200〜10000、500〜10000、又は800〜5000である。
【0072】
1つの態様においてポリアルケンアミンは、ポリイソブテンから誘導される。特に適切なポリイソブテンは、「高反応性」ポリイソブテンとして知られ、これは末端二重結合の含分が高いことを特徴とする。末端二重結合は、下記一般式(IX)に見られる種類のα−オレフィン二重結合である:
【化14】
一般式(IX)に示される結合は、ビニリデン二重骨格として知られる。適切な高反応性ポリイソブテンは例えば、ビニリデン二重結合の割合が70mol%超、80mol%超、85mol%超のものである。特に、均一なポリマー骨格を有するポリイソブテンが好ましい。均一なポリマー骨格は特に、少なくとも85質量%、90質量%、又は95質量%のイソブテン単位から構成されるポリイソブテンを有する。 このような高反応性ポリイソブテンは好ましくは、数平均分子量が、上記範囲にある。加えて、高反応性ポリイソブテンは、多分散性が1.05〜7、又は1.1〜2.5である。高反応性ポリイソブテンは、多分散性が1.9未満、又は1.5未満であり得る。多分散性とは、質量平均分子量Mwを、数平均分子量Mnで割った商のことである。
【0073】
アミン分散剤は、無水コハク酸から誘導される分子であって、ヒドロキシ基及び/又はアミノ基及び/又はアミド基及び/又はイミド基を有する分子を含むことができる。分散剤は例えば、ポリイソブテニル無水コハク酸から誘導され、これは質量平均分子量が500〜5000の慣用の又は高反応性ポリイソブテンを、熱的な経路で、又は塩素化されたポリイソブテンを介して、無水マレイン酸と反応させることによって得られるものである。例えば、脂肪族ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、又はテトラエチレンペンタミン)との誘導体が使用できる。
【0074】
ポリアルケンアミンを製造するために、ポリアルケン成分は、公知の方法でアミン化できる。例示的な方法は、ヒドロホルミル化によるオキソ中間体の製造を介して、続いて適切な窒素化合物の存在下でのアミノ化によって進行する。
【0075】
分散剤は、下記一般式(X)のポリ(オキシアルキル)基、又はポリアルキレンポリアミン基であり得る:
【化15】
上記式中、mは1〜5の整数であり、R
7は水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜6のヒドロカルビル基であり、C
1〜C
6アルキレンは、アルキル基の対応する架橋類似体を表す。分散剤は、1〜10個のC
1〜C
4アルキレンイミン基から構成されるポリアルキレンイミン基であり得る。分散剤は或いは、結合している窒素原子とともに、置換若しくは非置換の5員〜7員の複素環であって、この複素環は、非置換であるか、又は1〜3個のC
1〜C
4アルキル基によって置換されていてよく、さらなる環ヘテロ原子(例えば酸素又は窒素)を有していてよい。
【0076】
適切なアルケニル基の例は、炭素原子数が2〜18のモノ不飽和、若しくはポリ不飽和の、好ましくはモノ不飽和若しくはジ不飽和のアルキル基類似体であって、炭化水素鎖中のあらゆる位置において二重結合が存在し得る。C
4〜C
18シクロアルキル基の例には、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが含まれ、また1〜3個のC
1〜C
4アルキル基で置換されたこれらの類似体も含まれる。C
1〜C
4アルキル基は例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、又はt−ブチルから選択される。アリールアルキル基の例には、C
1〜C
18アルキル基及びアリール基であって、単環式若しくは二環式の縮合型、若しくは非縮合型の4員〜7員、特に6員の芳香族若しくはヘテロ芳香族基(例えばフェニル、ピリジル、ナフチル、及びビフェニル)から誘導されるものが含まれる。
【0077】
上記分散剤以外のさらなる分散剤を用いる場合、これらの分散剤は様々な種類のものであり得る。分散剤の適切な例には、ポリブテニルコハク酸アミド、ポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルホスホン酸誘導体、及び塩基性のスルホン酸マグネシウム、スルホン酸カルシウム、及びスルホン酸バリウム、フェノール酸マグネシウム、フェノール酸カルシウム、フェノール酸バリウム、コハク酸エステル、及びアルキルフェノールアミン(マンニッヒ塩基)、並びにこれらの組み合わせである。
【0078】
使用する場合、分散剤は様々な量で使用できる。分散剤は潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜15質量%、0.1〜12質量%、0.5〜10質量%、又は1〜8質量%の量で含有されていてよい。或いは分散剤は、潤滑剤組成物の全質量に対して15質量%未満、12質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、又は1質量%未満の量で、存在していてよい。これらの量は、使用するアミン化合物の量に加えて、潤滑剤組成物及び/又は添加剤パッケージ中に存在していてよい。
【0079】
添加剤パッケージ中、分散剤とシール適合性添加剤の全質量は、添加剤パッケージの全質量に対して、添加剤パッケージの50質量%未満、45質量%未満、40質量%未満、35質量%未満、又は30質量%未満である。
【0080】
潤滑剤組成物は基油を含有することができる。基油は、American Petroleum Institute (API) Base Oil Interchangeability Guidelinesに従って分類される。すなわち基油は、五種類の基油のうち1つ以上として記載できる。第I群:硫黄分0.03質量%超、かつ/又は飽和炭化水素90質量%未満、粘度指数80〜119)、第II群(硫黄含分0.03質量%以下、飽和炭化水素90質量%以上、粘度指数80〜119)、第III群(硫黄分0.03質量%以下、飽和炭化水素90質量%以上、粘度指数119以上)、第IV群(全てのポリα−オレフィン(PAO))、及び第V群(第I群、第II群、第III群、又は第IV群に含まれないもの全て)。
【0081】
幾つかの態様において基油は、API第I群の基油、API第II群の基油、API第III群の基油、API第IV群の基油、API第V群の基油、及びこれらの組み合わせから選択される。別の態様において潤滑剤組成物は、第I群、第II群、第III群、第IV群、若しくは第V群の基油、又はこれらの組み合わせを含有しない。1つの態様において、基油はAPI第II群の基油を含有する。
【0082】
基油は、ASTM D445に従って100℃で試験した粘度が1〜50cSt、1〜40cSt、1〜30cSt、1〜25cSt、又は1〜20cStであり得る。或いは、ASTM D445に従って100℃で試験した基油の粘度は、3〜17cSt、又は5〜14cStであり得る。
【0083】
基油はさらに、火花点火式、及び圧縮着火式内燃エンジン用のクランクケース潤滑剤として規定することもでき、これには自動車及びトラックのエンジン、2サイクル式エンジン、航空機用ピストンエンジン、船舶用エンジン、及び軌道車両用ディーゼルエンジンが含まれる。或いは、基油はさらに、ガス式エンジン、ディーゼルエンジン、定置型発電用エンジン、及びタービンで使用するためのオイルとして規定できる。基油はさらに、高負荷用、又は低負荷用のエンジンオイルとして規定できる。
【0084】
幾つかの態様において潤滑剤組成物は、液体成分を少なくとも1種含有する「湿潤」潤滑剤組成物である。適切な潤滑をもたらすためには、液状成分が少なくとも1種必要となるため、潤滑剤組成物は乾燥した潤滑剤ではない。
【0085】
さらなる別の態様において、基油はさらに、1種以上のアルキレンオキシドポリマー、コポリマー、及びこれらの誘導体を含有する合成オイルとして規定できる。アルキレンオキシドポリマーの末端ヒドロキシ基は、エステル化、エーテル化、又はこれらに似た反応によって変性できる。通常、これらの合成オイルは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドを重合させて、ポリオキシアルキレンポリマーにすることによって作製され、これをさらに反応させて、合成オイルにする。例えば、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルエーテルとアリールエーテルが使用できる。例えば、質量平均分子量が1000のメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、質量平均分子量が500〜1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、又は質量平均分子量が1000〜1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル、及び/又はこれらのモノカルボン酸エステルとポリカルボン酸エステル、例えば酢酸エステル、混合型のC
3〜C
8脂肪酸エステル、及びテトラエチレングリコールのC
13オキソ酸ジエステルもまた、基油として利用できる。或いは、基油は実質的に不活性の、通常は液状の有機希釈剤、例えば鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエン、又はキシレンを含有することができる。
【0086】
基油は、潤滑剤組成物の全質量に対して90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満、10未満、5未満、3未満、1未満、エストリド化合物(すなわち、エストリド基を少なくとも1個有する化合物)含有するか、又は全く含有しない。
【0087】
基油は潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全質量に対して1〜99.9質量%、50〜99.9質量%、60〜99.9質量%、70〜99.9質量%、80〜99.9質量%、90〜99.9質量%、75〜95質量%、80〜90質量%、又は85〜95質量%、存在していてよい。或いは、基油は潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全質量に対して1質量%超、10質量%超、20質量%超、30質量%超、40質量%超、50質量%超、60質量%超、70質量%超、75質量%超、80質量%超、85質量%超、90質量%超、95質量%超、98質量%超、又は99質量%超、存在していてよい。様々な態様において、完全に調製された潤滑剤組成物(存在する場合には希釈剤、又はキャリアオイルを含む)中における基油の量は、潤滑剤組成物の全質量に対して50〜99質量%、60〜90質量%、80〜99.5質量%、85〜96質量%、又は90〜95質量%である。或いは、基油は潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全質量に対して0.1〜50質量%、1〜25質量%、又は1〜15質量%、存在していてよい。様々な態様において、添加剤パッケージ(存在する場合には希釈剤、又はキャリアオイルを含む)中における基油の量は、含有されているのであれば、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜50質量%、1〜25質量%、又は1〜15質量%である。
【0088】
1つ以上の態様において潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全質量に対して、硫酸灰分が3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、又は0.5質量%以下の低SAPS潤滑剤として分類され得る。「SAPS」とは、硫酸灰(Sulfated Ash)、リン(P)、及び硫黄(S)を言う。
【0089】
潤滑剤組成物はTBN値が、ASTM D2896に従って試験した場合、潤滑剤組成物1g当たり少なくとも1mgKOH、少なくとも3mgKOH、少なくとも5mgKOH、少なくとも7mgKOH、又は少なくとも9mgKOHである。或いは、潤滑剤組成物はTBN値が、ASTM D2896に従って試験した場合、潤滑剤組成物1g当たり3〜100mgKOH、3〜75mgKOH、50〜90mgKOH、3〜45mgKOH、3〜35mgKOH、3〜25mgKOH、3〜15mgKOH、又は9〜12mgKOHである。
【0090】
特定の態様において潤滑剤組成物は、粘度計SAE15WX、SAE 10WX、SAE 5WX、又はSAE 0WXによって特定されるマルチグレード潤滑剤組成物である(ここでXは、8、12、16、20、30、40、又は50である)。異なる粘度グレードの少なくとも1つの特性は、SAE J300の分類に見られる。
【0091】
潤滑剤組成物は、リン含分が1500ppm未満、1200ppm未満、1000ppm未満、800ppm未満、600ppm未満、400ppm未満、300ppm未満、200ppm未満、若しくは100ppm未満、又は0ppm未満であり得る(ASTM D5185標準、又はASTM D4951に従って測定)。潤滑剤組成物は、硫黄含分が3000ppm未満、2500ppm未満、2000ppm未満、1500ppm未満、1200ppm未満、1000ppm未満、700ppm未満、500ppm未満、300ppm未満、又は100ppm未満であり得る(ASTM D5185標準、又はASTM D4951に従って測定)。
【0092】
或いは潤滑剤組成物は、ASTM D5185により測定したリン含分が、1〜1000ppm、1〜800ppm、100〜700ppm、又は100〜600ppmであり得る。
【0093】
潤滑剤組成物は、カルボン酸エステル及び/又はリン酸エステルについて不含であるか、又は実質的に不含であり得る。潤滑剤組成物は例えば、20質量%未満、15質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、3質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満、カルボン酸エステル及び/又はリン酸エステルを含有することができる。カルボン酸エステル及び/又はリン酸エステルは、水反応性官能液体中に慣用の基油として含まれていてよい。潤滑剤組成物は、1気圧の安定した圧力下、25℃の安定した状態で液状であるカルボン酸エステル系の基油及び/又はリン酸エステル系の基油を含有しなくてもよい。
【0094】
潤滑剤組成物は、水と反応性でなくてもよい。水と非反応性とは、25℃、1気圧で潤滑剤組成物の5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満しか、水と反応しないということである。
【0095】
様々な態様において、潤滑剤組成物は実質的に水不含であり、潤滑剤組成物は例えば、潤滑剤組成物の全質量に対して5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満の量で、水を含有する。或いは、潤滑剤組成物は完全に水不含である。
【0096】
潤滑剤組成物は、フッ素化された基油を50質量%未満、25質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、1質量%未満、0.1質量%未満、又は0.01質量%未満、含有することができるか、又はフッ素化された基油を含有しなくてもよい。フッ化された基油は、あらゆるフッ化された油成分を含有することができる(ペルフルオロポリエーテル)。例示的なペルフルオロポリエーテルを、以下に示す:
【化16】
繰り返しの基−(CF
2CFCl)
rを含有するハロカーボン、ここでnは、0〜60の整数であり、yは0〜60の整数であり、mは0〜60の整数であり、zは0〜60の整数であり、pは0〜60の整数であり、qは0〜60の整数でありrは2〜10の整数である。
【0097】
フッ素化された基油成分はまた、一般的に1分子当たりフッ素原子を5個超、10個超、15個超、又は20個超有するあらゆる成分としても規定できる。
【0098】
1つの態様において潤滑剤組成物は、リン含分についてASTM D4951の試験に合格する。ASTM D4951 は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-OES)を用いて、潤滑剤成分中の添加剤要素を特定するための標準的な試験法である。
【0099】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6795を通過し、この規格は、水とドライアイスで処理して短時間(30分)加熱した後で、潤滑剤組成物の濾過性能に対する作用を測定するための標準的な試験法である。ASTM D6795は、オイル中に少量の水を入れて長期間貯蔵した後、新品のエンジンを稼働させた場合に短時間で起こり得る問題をシミュレーションすることができる。ASTM D6795は、潤滑剤組成物に、オイルフィルターを詰まらせる沈殿物を形成する傾向がどの程度あるのかを測定するために設計されている。
【0100】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6794の試験に合格し、この規格は、様々な量の水と、6時間の加熱時間により処理した後で、潤滑剤組成物の濾過性能に対する作用を測定するための標準的な試験法である。ASTM D6794は、オイル中に少量の水を入れて長期間貯蔵した後、新品のエンジンを稼働させた場合に短時間で起こり得る問題をシミュレーションすることができる。ASTM D6794は、潤滑剤組成物に、オイルフィルターを詰まらせる沈殿物を形成する傾向がどの程度あるのかを測定するために設計されている。
【0101】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6922の試験に合格し、この規格は、潤滑剤組成物における均質性と混和性を測定するための標準的な試験法である。ASTM D6922は、潤滑剤組成物が均質であり、そのままであるかどうか、また所定の温度変化サイクルに掛けた後、潤滑剤組成物が特定の標準的な参照用オイルと混和性であるかどうかを試験するために設計されている。
【0102】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D5133の試験に合格し、この規格は、温度スキャン技術を用いて潤滑油の低温で低い剪断速度、粘度/温度の依存性を測定するための標準的な試験法である。潤滑組成物の低温で低い剪断粘度は、潤滑剤組成物が油取り入れスクリーンに、それからオイルポンプへ、それからエンジンで潤滑油が必要とされる箇所に充分な量で流入し、エンジンの損傷を直ちに、又は最終的には起動後の低温後に防止するかどうかによって測定される。
【0103】
別の態様において潤滑剤組成物はASTM D5800及び/又はASTM D6417の試験に合格し、これらの規格はいずれも、潤滑剤組成物の蒸発損失量を測定するための方法である。蒸発損失量は、エンジン潤滑剤において特に重要である。なぜならば、高温が発生した場合、潤滑剤組成物の一部が蒸発することがあり、これによって潤滑剤組成物の特性が変わり得るからである。
【0104】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6577の試験に合格し、この規格は、潤滑剤組成物の防錆特性を評価するための標準的な試験法である。ASTM D6577は、潤滑剤組成物の防錆性を評価するためのボールさび試験(BRT)工程を有する。BRT工程は特に、低温、酸性の稼働条件下における潤滑剤組成物の評価に適している。
【0105】
別の態様において潤滑剤組成物は、硫黄含分についてASTM D4951を通過する。する。ASTM D4951は、ICP-OESを用いて、潤滑剤成分中の添加剤要素を特定するための標準的な試験法である。さらに潤滑剤組成物はまた、ASTM D2622の試験に合格し、これは波長分散性の蛍光X線質量分析により、石油製品中の硫黄を測定するための標準的な方法である。
【0106】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6891の試験に合格し、この規格は、IVA火花添加エンジンにおける潤滑剤組成物を評価するための標準的な試験法である。ASTM D6891は、車両稼働においてエンジンのアイドリングが長くなった場合をシミュレーションするために設計されている。特にASTM D6891により、頭上弁列とサイディングカムフォロアを備えた、火花点火式エンジン用カムシャフトローブの摩耗を制御するための、潤滑剤組成物の性能が測定される。
【0107】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6593の試験に合格し、この規格は、ガソリンが供給され、火花点火式内燃機関において、低温、低負荷条件で堆積物の形成阻害について潤滑剤組成物を評価するための標準的な試験法である。ASTM D6593は、堆積物の京成を加速させるために意図的に選択された稼働条件下で、エンジン堆積物に対する潤滑剤の制御能力を評価するために設計されている。
【0108】
別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6709の試験に合格し、この規格は、火花添加エンジンのVIIIで潤滑剤組成物を評価するための標準的な試験法である。ASTM D6709は、質量損失に対するエンジンの保護に関して潤滑剤組成物を評価するために設計されている。
【0109】
さらに別の態様では、潤滑剤組成物はASTM D6984の試験に合格し、この規格は、点火発火のIIIFにおける自動車エンジンオイルを評価するための標準的な試験法である。言い換えると、試験終了時における潤滑剤組成物の粘度上昇は、試験開始時の潤滑剤組成物の粘度に対して275%未満である。
【0110】
別の態様では、潤滑剤組成物は、以下の標準試験法のうち2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを満たす:ASTM D4951、ASTM D6795、ASTM D6794、ASTM D6922、ASTM D5133、ASTM D6557、ASTM D6891、ASTM D2622、ASTM D6593、及びASTM D6709。
【0111】
潤滑剤組成物は、クランクケースの潤滑剤組成物のように、潤滑剤組成物の全質量に対して、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも6質量%、少なくとも7質量%、又は少なくとも8質量%という合計添加処理速度を有する潤滑剤組成物であり得る。或いは潤滑剤組成物は、3〜20質量%、4〜18質量%、5〜16質量%、又は6〜14質量%の合計添加処理速度を有することができる。「合計添加処理割合」という用語は、潤滑剤組成物中に含まれる添加剤の合計質量パーセンテージを言う。合計添加処理割合に含まれる添加剤には、以下のものが含まれるが、これらに限られるわけではない:シール適合性添加剤、アミン化合物、非アミン系分散剤、洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及びこれらの組み合わせ。特定の態様において、添加剤は潤滑剤組成物にある、基油以外のあらゆる化合物である。言い換えると、合計添加処理割合の計算には、添加剤としての基油を考慮しない。
【0112】
添加剤パッケージには、以下のものが含まれるが、これらに限られるわけではない:シール適合性添加剤、アミン化合物、分散剤、洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、流動点降下剤、粘度調整剤、及びこれらの組み合わせ。潤滑剤組成物は添加剤パッケージを、潤滑剤組成物の全質量に対して少なくとも0.1質量%、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも6質量%、少なくとも7質量%、又は少なくとも8質量%、含有することができる。或いは、潤滑剤組成物は添加剤パッケージを、潤滑剤組成物の全質量に対して0.1〜5質量%、0.5〜10質量%、1〜5質量%、3〜20質量%、4〜18質量%、5〜16質量%、又は6〜14質量%の量で含有することができる。幾つかの態様において、添加剤パッケージは、基油の質量を添加剤として考慮しない。必ずしも必要ではないが、添加剤パッケージは、潤滑剤組成物中に、基油以外のあらゆる化合物を含む。しかしながら特定の個々の成分は、独立して、また個々に潤滑剤組成物に、添加剤パッケージの潤滑剤組成物への添加とは別に添加することができるが、それでも、潤滑剤組成物に個別に添加された添加剤が他の添加剤とともに潤滑剤組成物中に存在していれば、添加剤パッケージの一部とみなされると理解されるべきである。
【0113】
添加剤パッケージとは、シール適合性添加剤、アミン化合物、分散剤、洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、流動点降下剤、粘度調整剤、又はこれらの組み合わせが、溶液、混合物、濃縮物、又はブレンド(例えば潤滑剤組成物)に集合的に存在する量を言う。幾つかの態様において「添加剤パッケージ」とは、これらの添加剤が、基油に添加する前に物理的に一緒に包装されている、又は一緒にブレンドされている必要はない。よって、シール適合性添加剤と分散剤を含有する基油は(それぞれ基油に別個に添加)、シール適合性添加剤と分散剤とを含有する添加剤パッケージを有する潤滑剤組成物と解釈できる。別の態様において添加剤パッケージとは、シール適合性添加剤、アミン化合物、分散剤、洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、消泡剤、耐摩耗性添加剤、流動点降下剤、粘度調整剤のブレンド、又はこれらの組み合わせを言う。添加剤パッケージは、潤滑剤組成物を作製するために、基油にブレンドされていてよい。
【0114】
添加剤パッケージは、添加剤パッケージを基油の所定の量と合わせる場合、潤滑剤組成物中に所望の濃度で得られるように調製することができる。本明細書の開示内容による潤滑剤組成物に関する多くの言及は、添加剤パッケージにも当てはまることに、留意すべきである。添加剤パッケージは例えば、潤滑剤組成物として同じ成分を様々な量で含有することができ、又は排除することができる。
【0115】
潤滑剤組成物は、基油、シール適合性添加剤、及びアミン化合物(例えば立体障害性アミン化合物)から成るか、又は実質的にこれらから成っていてよい。潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤の官能性又は性能に大きく影響を与えない添加剤1種以上に加えて、基油、シール適合性添加剤、及びアミン化合物から成るか、又は実質的に基油、ボロキシン化合物、及びアミン化合物から成る。例えば、潤滑剤組成物の性能全体に大きく影響を与える化合物は、TBN増強、潤滑性、フルオロポリマーシール適合性、腐食防止性、又は潤滑剤組成物の酸性に影響を与える化合物を含むことがある。
【0116】
別の態様において、添加剤パッケージは、シール適合性添加剤から成る、若しくは実質的にシール適合性添加剤から成るか、又はシール適合性添加剤とアミン化合物から成るか、又は実質的にシール適合性添加剤とアミン化合物から成る。添加剤パッケージは、シール適合性添加剤の官能性又は性能に大きく影響を与えない添加剤1種以上に加えて、シール適合性添加剤とアミン化合物から成るか、又は実質的に、シール適合性添加剤とアミン化合物から成る。添加剤パッケージとの関連で「実質的に・・・から成る」という表現は、添加剤パッケージが、添加剤パッケージの性能全体に大きく影響する化合物を含まないということである。例えば、潤滑剤組成物の性能全体に大きく影響を与える化合物は、添加剤パッケージのTBN増強、潤滑性、フルオロポリマーシール適合性、腐食防止性、又は酸性に影響を与える化合物を含むことがある。
【0117】
添加剤パッケージは、シール適合性添加剤とアミン化合物を、1:100から10:1、1:80から2:1、1:50から10:1、又は1:10から10:1の質量比で含むことができる。或いは、添加剤パッケージは、シール適合性添加剤とアミン化合物を、1:3から1:6の質量比で含むことができる。より具体的には、添加剤パッケージは、シール適合性添加剤と立体障害性アミンを、1:10から10:1の質量比又は1:3から1:6の質量比で含むことができる。
【0118】
耐摩耗性添加剤の例には、以下のものが含まれる:硫黄及び/又はリン及び/又はハロゲン含有成分、例えば硫黄化オレフィン、及び植物油、アルキル化トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリクレシルホスフェートアリールのジスルフィド及びトリスルフィド、モノアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェートのアミン塩、メチルホスホン酸のアミン塩、ジエタノールアミノメチルトリルトリアゾール、ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチルトリルトリアゾールの誘導体、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、エチル−3−[(ジイソプロポキシホスフィノチオイル)チオ]プロピオネート、トリフェニルチオホスフェート(トリフェニルホスホロチオエート)、トリス(アルキルフェニル)ホスホロチオエート、及びこれらの混合物、ジフェニルモノノニルフェニルホスホロチオエート、イソブチルフェニルジフェニルホスホロチオエート、3−ヒドロキシ−1,3−チアホスフェタン−3−オキシドのドデシルアミン塩、トリチオリン酸5,5,5−トリス[イソオクチル2−アセテート]、2−メルカプトベンゾチアゾール、例えば1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−2−メルカプト−1H−1,3−ベンゾチアゾール、エトキシカルボニル−5−オクチルジチオカルバメート、及び/又はこれらの組み合わせ。
【0119】
幾つかの態様では、耐摩耗性添加剤として、ジヒドロカルビルジチオホスフェート塩が例示できる。ジチオカルビルジチオホスフェート塩は、以下の一般式(XI)によって示すことができる:
【化17】
上記式中、R
8及びR
9はそれぞれヒドロカルビル基であり、独立して1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、又は1〜5個の炭素原子を有し、Mは金属原子であるか、又はアンモニウム基である。例えば、R
8、及びR
9はそれぞれ独立して、C
1〜C
20アルキル基、C
2〜C
20アルケニル基、C
3〜C
20シクロアルキル基、C
1〜C
20アラルキル基、又はC
3〜C
20アリール基である。R
8及びR
9で表される基は、置換されているか、又は非置換である。R
8及びR
9で示されるヒドロカルビル基は、一般式(II)に関して前述のRと意味と同じであってよい。金属原子は、アルミニウム、鉛、錫、マンガン、コバルト、ニッケル、又はアクリル酸塩を含む群から選択されていてよい。アンモニウム基は、アンモニア、又は第一級、第二級、若しくは第三級アミンから誘導される基であり得る。アンモニウム基は、式R
10R
11R
12R
13N
+のものであってよく、ここでR
10、R
11、R
12、及びR
13はそれぞれ、水素原子であるか、又は炭素原子数が1〜150のヒドロカルビル基である。幾つかの態様において、R
10、R
11、R
12、及びR
13はそれぞれ独立して、炭素原子数が4〜30のヒドロカルビル基であり得る。R
10、R
11、R
12、及びR
13で示されるヒドロカルビル基は、一般式(II)におけるRと意味と同じであってよい。1つの態様において、ジヒドロカルビルジチオホスフェート塩は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである。潤滑剤組成物は、異なるジヒドロカルビルジチオホスフェート塩の混合物を含有することができる。
【0120】
特定の態様において、ジヒドロカルビルジチオホスフェート塩は、R
8及びR
9について第一級及び第二級アルキル基の混合物を含有し、ここで第二級アルキル基は、ジヒドロカルビルジチオホスフェート塩におけるアルキル基のモル数に対して、主要なモル割合を占める(例えば少なくとも60モル%、少なくとも75モル%、又は少なくとも85モル%)。
【0121】
幾つかの態様では、耐摩耗性添加剤は、灰不含であり得る。耐摩耗性添加剤はさらに、リン酸塩として規定することができる。別の態様において耐摩耗性添加剤はさらに、亜リン酸塩として規定される。さらに別の態様において耐摩耗性添加剤はさらに、ホスホロチオネートとして規定される。或いは耐摩耗添加剤はさらに、ホスホロジチオネートとして規定することができる。1つの態様において耐摩耗性添加剤はさらに、ジチオホスフェートとして規定される。耐摩耗性添加剤はまた、アミン、例えば第二級若しくは第三級アミンを含有することができる。1つの態様において耐摩耗性添加剤は、アルキルアミン、及び/又はジアルキルアミンを含有する。耐摩耗添加剤適切な例(これらに限られるわけではない)は、以下の通りである:
【化18-1】
【化18-2】
【0122】
耐摩耗性添加剤は潤滑剤組成物中に、それぞれ潤滑剤組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%、0.5〜15質量%、1〜10質量%、0.1〜5質量%、0.1〜1質量%、0.1〜0.5質量%、又は0.1〜1.5質量%の量で存在していてよい。或いは耐摩耗性添加剤は、潤滑剤組成物の全質量に対して20質量%未満、10質量%未満、5質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満の量で、存在していてよい。添加剤パッケージはまた、それぞれ添加剤の全質量に対して0.1〜20質量%、0.5〜15質量%、1〜10質量%、0.1〜5質量%、0.1〜1質量%、0.1〜0.5質量%、又は0.1〜1.5質量%、リン含有耐摩耗性添加剤を含むことができる。
【0123】
添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物はさらに、生成する潤滑剤組成物の様々な化学的及び/又は物理的特性を改善するため、上記添加剤以外に1種以上の添加剤を含有することができる。添加剤の特定の例に含まれるのは、耐摩耗性添加剤、抗酸化剤、金属失活剤(不活性化剤)、防錆剤、粘度指数改善剤、流動性抑制剤、分散剤、洗浄剤、及び減摩材である。添加剤はそれぞれ単独で、又は組み合わせて使用できる。添加剤は、これを使用する場合、様々な量で使用できる。添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物は、防錆・酸化防止性潤滑剤組成物、液圧潤滑剤組成物、タービン潤滑組成物、及び内燃エンジン潤滑組成物であり得る。
【0124】
使用する場合、抗酸化剤は様々な種類が使用できる。適切な抗酸化剤には、アルキル化モノフェノール、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール、2,4−ジメチル−6(1’−メチルウンデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデカ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデカ−1’−イル)フェノール、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0125】
さらなる適切な抗酸化剤には、アルキルチオメチルフェノール、例えば2,4−ジオクチルチオメチル−6−t−ブチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクチルチオメチル−6−エチルフェノール、2,6−ジドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール、及びこれらの組み合わせが含まれる。ヒドロキノンとアルキル化ヒドロキノン、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート、及びこれらの組み合わせも使用できる。
【0126】
さらには、ヒドロキシ化チオジフェニルエーテル、例えば2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3,6−ジ−s−アミルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、及びこれらの組み合わせも使用できる。
【0127】
また、以下のものも潤滑剤組成物中において抗酸化剤として利用できる:例えば2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−t−ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−t−ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−t−ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(5−tブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプタン、1,1,5,5−テトラ−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、及びこれらの組み合わせ。
【0128】
O−ベンジル化合物、N−ベンジル化合物、及びS−ベンジル化合物、例えば3,5,3’,5’−テトラ−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオールテレフタレート、ビス(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート、及びこれらの組み合わせも、使用できる。
【0129】
ヒドロキシベンジル化マロネート、例えばジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシベンジル)マロネート、ジオクタデシル−2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、及びこれらの組み合わせも、抗酸化剤としての使用に適している。
【0130】
トリアジン化合物、例えば2,4−ビス(オクチルメルカプト)−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)−ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、及びこれらの混合物も使用できる。
【0131】
抗酸化剤のさらなる例には、芳香族ヒドロキシベンジル化合物、例えば1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール、及びこれらの組み合わせが含まれる。ベンジルホスホネート、例えばジメチル−2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩、及びこれらの組み合わせも使用できる。さらには、アシルアミノフェノール、例えば4−ヒドロキシラウルアニリド、4−ヒドロキシステアルアニリド、及びオクチルN−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメートである。
【0132】
[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオン酸と、一価若しくは多価アルコールとのエステルも使用でき、これらのアルコールは例えば、メタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシ)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン、及びこれらの組み合わせである。
【0133】
適切な抗酸化剤のさらなる例には、窒素を含有するものが含まれ、それは例えば、(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えばN,N’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジンである。他の適切な抗酸化剤の例に含まれるのは、アミン系抗酸化剤、例えばN,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−エチル−3−メチルペンチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、4−(p−トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N−アリルジフェニルアミン、4−イソプロポキシジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、例えばp,p’−ジ−t−オクチルジフェニルアミン、4−n−ブチルアミノフェノール、4−ブチリルアミノフェノール、4−ノナノイルアミノフェノール、4−ドデカノイルアミノフェノール、4−オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4−メトキシフェニル)アミン、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’−ジアミンノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,2−ビス[(2−メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2−ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o−トルイル)ビグアニド、ビス[4−(1’,3’−ジメチルブチル)フェニル]アミン、ーオクチル化N−フェニル−1−ナフチルアミン、モノアルキル化及びジアルキル化されたt−ブチル/t−オクチルジフェニルアミンの混合物、モノアルキル化及びジアルキル化されたイソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノアルキル化及びジアルキル化されたt−ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3−ジヒドロ−3,3−ジメチル−4H−1,4−ベンゾチアジジン、フェのチアジジン、N−アリルフェノチアジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−ジアミノブタ−2−エン、N,N−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジ−4−イル)セバケート、2,2,6,−テトラメチルピペリジン−4−音、及び2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール、及びこれらの組み合わせである。
【0134】
適切な抗酸化剤のさらなる例には、脂肪族若しくは芳香族ホスファイト、チオジプロピオン酸、又はチオジ酢酸、又はジチオカルバミン酸若しくはジチオリン酸の塩、2,2,12,12−テトラメチル−5,9−ジヒドロキシ−3,7,1−トリチアトリデカン、及び2,2,15,15−テトラメチル−5,12−ジヒドロキシ−3,7,10,14−テトラチアヘキサデカン、及びこれらの組み合わせが含まれる。さらに、硫黄化脂肪エステル、硫黄化オレフィン、及びこれらの組み合わせも使用できる。
【0135】
使用する場合、抗酸化剤は様々な量で使用できる。抗酸化剤はまた、添加剤パッケージ中に、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の量で存在していてよい。抗酸化剤は通常、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜5質量%、0.1〜3質量%、又は0.5〜2質量%の量で存在している。
【0136】
使用する場合、金属失活剤は様々な種類が使用できる。適切な金属失活剤には、ベンゾトリアゾールとその誘導体、例えば4若しくは5アルキルベンゾトリアゾール(例えばトルトリアゾール)とその誘導体、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾトリアゾール、及び5,5’−メチレンビスベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール若しくはトルトリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]トルトリアゾール、及び1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、及びアルコキシアルキルベンゾトリアゾール、例えば1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]トルトリアゾール、及び1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、及びアルコキシアルキルベンゾトリアゾール、例えば1−(ノニルメチル)ベンゾトリアゾール、1−(1−ブトキシエチル)ベンゾトリアゾール、及び1−(1−シクロヘキシルオキシブチル)トルトリアゾール、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0137】
さらなる適切な金属失活剤には、1,2,4−トリアゾールとその誘導体(例えば3−アルキル(若しくはアリール)−1,2,4−トリアゾール)、及び1,2,4−トリアゾールのマンニッヒ塩基、例えば1−[ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,2,4−トリアゾール、アルコキシアルキル−1,2,4−トリアゾール、例えば1−(1−ブトキシエチル)−1,2,4−トリアゾール、及びアシル化3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール誘導体、例えば4,4’−メチレンビス(2−ウンデシル−5−メチルイミダゾール)、及びビス[(N−メチル)イミダゾール−2−イル]カルビノールオクチルエーテル、及びこれらの組み合わせが含まれる。適切な金属失活剤のさらなる例に含まれるのは、硫黄含有複素環化合物、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、及びこれらの誘導体、並びに3,5−ビス[ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチル]−1,3,4−チアジアゾリン−2−オン、及びこれらの組み合わせが含まれる。金属失活剤のさらなる例には、アミノ化合物、例えばサリシリデンプロピレンジアミン、サリシルアミノグアニジン、及びこれらの塩、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0138】
使用する場合、金属失活剤は様々な量で使用できる。金属失活剤はまた、添加剤パッケージ中に、添加剤パッケーの全質量に対して0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の量で存在していてよい。金属失活剤は潤滑剤組成物中に通常、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の量で存在している。
【0139】
使用する場合、防錆剤及び/又は減摩材は様々な種類が使用できる。適切な防錆剤及び/又は減摩剤の例には、有機酸とそのエステル、金属塩、アミン塩、無水物、例えばアルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、及びこれらの酸とアルコールとの部分エステル、ジオール、又はヒドロキシカルボン酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸の部分アミド、4−ノニルフェノキシ酢酸、アルコキシカルボン酸、及びアルコキシエトキシカルボン酸、例えばドデシルオキシ酢酸、ドデシルオキシ(エトキシ)酢酸、及びこれらのアミン塩、並びにN−オレオイルサルコシン、ソルビタンモノオレエート、鉛ナフテネート、アルケニル無水コハク酸、例えばドデセニル無水コハク酸、2−カルボキシメチル−1−ドデシル−3−メチルグリセロール、及びこれらのアミン塩、並びにこれらの組み合わせが含まれる。さらなる例には、窒素含有化合物、例えば第一級、第二級、若しくは第三級の脂肪族又は脂環式アミン、及び有機酸と無機酸のアミン塩、例えば油溶性アルキルアンモニウムカルボキシレート、並びに1−[N.N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−3−(4−ノニルフェノキシ)プロパン−2−オール、及びこれらの組み合わせが含まれる。さらなる例には、複素環式化合物、例えば置換イミダゾリン、置換オキサゾリン、及び2−ヘプタデセニル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリン、リン含有化合物、例えばリン酸部分エステルのアミン塩、又はリン酸部分エステル、モリブデン含有化合物、例えばモリブデンジチオカルバメート、及び他の硫黄及びリン含有誘導体、硫黄含有化合物、例えばバリウムジノニルナフタレンスルホネート、カルシウム石油スルホネート、アルキルチオ置換された脂肪族カルボン酸、脂肪族2−スルホカルボン酸のエステルとその塩、グリセロール誘導体、例えばグリセロールモノオレエート、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2−ヒドロキシエチル)グリセロール、1−(アルキルフェノキシ)−3−(2,3−ジヒドロキシプロピル)グリセロール、及び2−カルボキシアルキル−1,3−ジアルキルグリセロール、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0140】
使用する場合、防錆剤及び/又は減摩剤は様々な量で使用できる。防錆材及び/又は減摩材は添加剤パッケージ中に、添加剤パッケージの全質量に対して0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の量で存在していてよい。防錆材及び/又は減摩材は通常、潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%の量で存在している。
【0141】
使用する場合、粘度指数改善剤(VII)は様々な種類が使用できる。粘度指数改善剤(VII)の適切な例には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルピロリドン/メタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィンコポリマー、スチレン/アクリレートコポリマー、及びポリエーテル、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0142】
使用する場合、粘度指数改善剤(VII)は様々な量で使用できる。粘度指数改善剤(VII)はまた、添加剤パッケージ中に、添加剤パッケージの全質量に対して0.01〜20質量%、1〜15質量%、又は1〜10質量%の量で存在していてよい。粘度指数改善剤(VII)は潤滑剤組成物中に通常、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜20質量%、1〜15質量%、又は1〜10質量%の量で存在している。
【0143】
使用する場合、流動点降下剤は様々な種類が使用できる。流動性抑制剤の適切な例には、ポリメタクリレート、及びアルキル化ナフタレン誘導体、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0144】
使用する場合、流動点降下剤は様々な量で使用できる。流動点降下剤はまた、添加剤パッケージ中に、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の量で存在していてよい。流動点降下剤は潤滑剤組成物中に通常、それぞれ潤滑剤組成物の全質量に対して、0.01〜0.1質量%、0.05〜0.01質量%、又は0.07〜0.1質量%、存在している。
【0145】
使用する場合、洗浄剤は様々な種類が使用できる。適切な洗浄剤の例には、過塩基性若しくは中性の金属スルホネート、フェネート、及びサリシレート、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0146】
使用する場合、洗浄剤は様々な量で使用できる。洗浄剤は通常、添加剤パッケージ中に、添加剤パッケージの全質量に対して0.1〜99質量%、1〜70質量%、5〜50質量%、又は25〜50質量%の量で存在している。洗浄剤は通常、潤滑剤組成物の全質量に対して0.01〜5質量%、0.1〜4質量%、0.5〜3質量%、又は1〜3質量%の量で存在する。或いは洗浄剤は、潤滑剤組成物の全質量に対して5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、又は1pm未満の量で、存在していてよい。
【0147】
様々な態様において、添加剤パッケージは実質的に水不含であり、添加剤パッケージは例えば、添加剤パッケージの全質量に対して5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満の量で、水を含有する。或いは、潤滑剤添加剤パッケージは完全に水不含である。同様に、潤滑剤組成物は実質的に水不含であってよく、潤滑剤組成物は例えば、潤滑剤組成物の全質量に対して5質量%未満、4質量%未満、3質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、又は0.1質量%未満の量で、水を含有する。
【0148】
使用のために用意される、また本発明により使用される潤滑剤組成物には、CEC L-39-T96のシール適合性試験に合格するものが含まれる。前述のように添加剤パッケージは、CEC L-39-T96のシール適合性試験に合格する潤滑剤組成物を調製するために使用できる。CEC L-39-T96試験は、潤滑剤組成物中のフルオロポリマーシールの試験体を150℃に維持する工程を伴う。それからシール検体を取り外して乾燥させ、シール検体の特性を推測し、潤滑時組成物中で加熱しなかったシール検体と比較する。これらの特性におけるパーセンテージの変化は、潤滑剤組成物とのフルオロポリマーシールの適合性を定量化するために評価される。シール適合性添加剤を潤滑剤組成物に組み込むことにより、潤滑剤組成物がシールを分解する傾向は、シール適合性添加剤不含の潤滑剤組成物に比べて減少する。
【0149】
合格/不合格の基準には、事前にエージングせずに新しいオイルに7日間含浸させた後の、特定の特性の最大の変化幅が含まれる。各特性値についてこの最大変化幅は、使用するエラストマーの種類、使用するエンジンの種類、及び後処理デバイスを利用するかどうかによって異なる。
【0150】
含浸前、及び含浸後に測定した特性には、DIDC硬度(点)、引張強さ(%)、破断点伸び(%)、体積変化(%)が含まれる。負荷が高いディーゼルエンジンについて、合格/不合格の基準を以下の表1に示す。
【表1】
【0151】
これらの試験において潤滑剤組成物が試験に合格するのは、被曝した検体が、硬度において−1%〜+5%、引張強さにおいて−50〜+10%(試験していない検体と比較して)、破断点伸びにおいて−60〜+10%、体積変化が−1%〜+5%、変化を示す場合である。1つ以上の態様において潤滑剤組成物は、リン含分について、前述のL-39-T96の試験のパラメータに合格する。
【0152】
高負荷のディーゼルエンジンについて潤滑剤組成物をCEC L-39-T96に従って試験した場合、硬度における変化は、−1〜5%、−0.5〜5%、−0.1〜5%、0.5〜5%、又は1〜5%の範囲であり、引張強さにおける変化は、−20〜10%、−10〜10%、−5〜10%、又は−3〜5%の範囲であり、破断点伸びにおける変化は、−30〜10%、−20〜10%、−10〜5%、又は−10〜1%の範囲であり、体積変化は1〜5%、−0.75〜5%、−0.5〜5%、−0.1〜5%、又は0〜5%の範囲であり得る。
【0153】
シール適合性添加剤はさらにまた、添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物の合計塩基数(TBN)の値に対して、否定的な影響をもたらさない。添加剤パッケージ又は潤滑剤組成物のTBN値は以下に記すように、ASTM D2896及びASTM D4739に従って測定できる。TBNは、ある材料の塩基性を、水酸化カリウムの塩基性と関連付けるために用いられる工業的な標準測定値である。
【0154】
シール適合性添加剤は、潤滑剤組成物の腐食防止性に大きな影響を与えてはならない。或いは、シール適合性添加剤は、潤滑剤組成物の腐食防止性を改善させることができる。ASTM D6954、又はASTM D5185に従って、腐食防止性を測定できる。
【0155】
上記化合物のうち幾つかは、潤滑剤組成物中で相互作用を起こしてもよく、これにより、最終的な形態における潤滑剤組成物の成分は、当初添加した、又は一緒に合わせた成分とは異なることがある。これによって形成される生成物のうち幾つか(本発明の潤滑剤組成物により形成される生成物を含む)は、記載するのが困難であるか、又は記載できない。それにも拘わらず、これら全ての変性、反応生成物、及び本発明の潤滑剤組成物を用いて形成される生成物は、明示的に考慮され、本明細書に組み込まれるものとする。本発明の様々な態様は上述のように、1種以上の変性、反応生成物、潤滑剤を用いることにより形成される生成物を含む。
【0156】
系を潤滑にする方法が提供される。この方法は系を、上記潤滑剤組成物と接触させる工程を有する。この系は、内燃エンジンを有することができる。或いは、システムはさらに、燃焼エンジン、又は潤滑剤組成物を利用するアプリケーションを有することができる。システムは、少なくとも1種のフルオロポリマーシールを有する。
【0157】
フルオロポリマーシールは、フルオロエラストマーを有することができる。フルオロエラストマーは例えば、FKMのASTM D1418及びISO 1629呼称に分類できる。フルオロエラストマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とビニリデンフルオリド(VF2のVDF)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオリド、及びヘキサフルオロプロピレンのターポリマー、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、TFEとプロピレンのコポリマー、及びTFE、PMVE、及びエチレンのコポリマーである。フッ素含分は例えば、フルオロポリマーシールの全質量に対して66〜70質量%の間で変わる。FKMは、ポリメチレン系のフッ素ゴムであり、ポリマー鎖上に置換基のフルオロとペルフルオロアルキル、又はペルフルオロアルコキシ基を有するものである。
【0158】
加えて、潤滑剤組成物を形成する方法が提供される。この方法は、基油、アミン化合物、及び/又はシール適合性添加剤を合する工程を有することができる。シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物は、あらゆる慣用の方法で基油に組み込むことができる。よってシール適合性添加剤は、シール適合性添加剤を基油に所望の濃度水準で分散又は溶解させることにより、基油に直接添加することができる。或いは、シール適合性添加剤が所望の濃度水準になるまで撹拌しながら、基油をシール適合性添加及び/又はアミン化合物と合することができる。このように合する工程は、周辺温度、又は低温で行うことができ、その温度は例えば、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、又は5℃である。
【0159】
実施例
以下の実施例では、均質になるまで各成分をともに混合することによって、例示的な潤滑剤組成物を調製したが、本願発明による潤滑剤組成物が、これらに限られるわけではない。
【0160】
参照用濃縮物No.1
洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、消泡剤、基油、流動点降下剤、リン含有耐摩耗性添加剤、及び粘度調整剤を含有する、第一の潤滑油組成物(潤滑剤濃縮物:No.1)を作製した。参照用の潤滑剤(参照用潤滑剤:No.1)を、実施例1に従って作製した。市販のクランクケース潤滑剤であるこの潤滑剤組成物を、シール適合性添加剤の作用を示すための基準として用いた。
【0161】
潤滑剤濃縮物No.1を、様々なシール適合性添加剤及び基油と合して、フルオロポリマーシールとの適合性に対するシール適合性添加剤の作用を示す。フルオロポリマーシールとの適合性に関して、シール適合性添加剤とこれらの他の成分との相乗効果を示すために、その他の成分を、シール適合性添加剤と組み合わされた潤滑剤濃縮物と合した。
【0162】
実施例2、15、及び28で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードヘキサンだった。実施例3、16、及び29で使用したシール適合性添加剤は、1−ブロモヘキサンだった。実施例4、17、及び30で使用したシール適合性添加剤は、3−ヨードプロパノールだった。実施例5、18、及び31で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードドデカンだった。実施例6、19、及び32で使用したシール適合性添加剤は、1−ブロモドデカンだった。実施例7、20、及び33で使用したシール適合性添加剤は、1,4−ジヨードブタンだった。実施例8、21、及びC34で使用したシール適合性添加剤は、1,4−ジブロモブタンだった。実施例10と23で使用したシール適合性添加剤は、1−クロロデカンだった。実施例11と24で使用したシール適合性添加剤は、1−フルオロオクタンだった。実施例12と25で使用したシール適合性添加剤は、4−ブロモアニソールだった。実施例13と26で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードプロパンだった。実施例14と27で使用したシール適合性添加剤は、1−ブロモプロパンだった。
【0163】
実施例9〜37で使用した分散剤は、質量平均分子量が約2250の非ボレート系アミン分散剤である。実施例22〜34で使用したアミン化合物は、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルドデカノエートだった。実施例35〜37で使用したアミン化合物は、ビス(2−エチルヘキシル)アミンだった。
【0164】
各例について、潤滑剤濃縮物No.1の量、及び添加成分の量はそれぞれ、下記表2〜8に記載されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0165】
例に記載の潤滑剤組成物のシール適合性は、工業規格のシール適合性試験CEC-L-39-T96に従って試験した。The CEC-L-39-T96シール適合性試験は、シールを潤滑剤組成物にさらし、潤滑剤組成物を、そこに含有されるシールとともに高温に加熱し、しばらくの間、高温を維持することによって行う。それからシールを取り外して乾燥させ、シールの特性を推測し、潤滑時組成物中で加熱しなかったシール検体と比較する。これらの特性におけるパーセンテージの変化は、潤滑剤組成物とのシールの適合性を評価するために分析する。適合性試験の結果が、表8〜13に示してある。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0166】
これらの例によりシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物とフルオロポリマーシールとの適合性を改善させることが分かる。これらの例により例えば、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、通常であれば、潤滑剤組成物のシール適合性に対して著しく否定的に作用する成分と合したとしても、引張強度及び/又は破断点伸びが改善されていることが分かる。要約すると、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤を含有しない潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0167】
これらの例によってまた、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物とフルオロポリマーシールとの適合性を改善させることが分かる。これらの例により例えば、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、通常であれば、潤滑剤組成物のシール適合性に対して著しく否定的に作用する成分と合したとしても、引張強度及び/又は破断点伸びが改善されていることが分かる。要約すると、シール適合性添加剤とアミン化合物を含有する潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0168】
参照用濃縮物No.2
洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、減摩剤、消泡剤、基油、流動点降下剤、リン含有耐摩耗性添加剤、及び粘度調整剤を含有する、第二の潤滑油組成物(潤滑剤濃縮物:No.2)を作製して、堆積物について様々なシール適合性添加剤の効果を試験した。第二の参照用潤滑剤(参照用潤滑剤:No.2)を、実施例38に従って作製した。市販のクランクケース潤滑剤であるこの潤滑剤組成物を、シール適合性添加剤の抗堆積作用を示すための基準として用いた。
【0169】
堆積物に対するシール適合性添加剤の作用を示すために、潤滑剤濃縮物No.2を、様々なシール適合性添加剤及び基油と合する。堆積物との適合性に関して、シール適合性添加剤とこれらの他の成分との相乗効果を示すために、その他の成分を、シール適合性添加剤と組み合わされた参照用潤滑剤と合する。
【0170】
実施例40、及び41で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードドデカンだった。実施例38〜41で使用した分散剤は、質量平均分子量が約2250の非ボレート系アミン分散剤だった。実施例39、及び41で使用したアミン化合物は、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルドデカノエートだった。
【0171】
各例について、潤滑剤濃縮物No.2の量、及び添加成分の量はそれぞれ、下記表14に記載されている。
【表14】
【0172】
例による潤滑剤組成物の抗堆積作用は、TEOST MHT(登録商標)試験(ASTM D 7097)に従って試験した。TEOST MHT(登録商標)(ASTM D 7097)試験では、試料オイル8.5gを触媒とともに、事前に秤量した鋼製の堆積用ロッドに24時間、285℃で連続的に通す。ロッドの重さが堆積で増加することにより、オイルの性能を測定した。抗堆積試験の結果が、表15に示してある。
【表15】
【0173】
これらの例により、例によるシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物により形成される堆積物の量を減らすことが分かる。例えば、これらの例により、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、堆積物について改善された結果が示される。要約すると、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤を含有しない潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0174】
これらの例によってまた、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物の堆積物量を減少させることが分かる。例えば、これらの例により、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、堆積物について改善された結果が示される。要約すると、シール適合性添加剤とアミン化合物を含有する潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物を含有しない潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0175】
参照用濃縮物No.3
洗浄剤、アミン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、減摩剤、消泡剤、基油、流動点降下剤、リン含有耐摩耗性添加剤、及び粘度調整剤を含有する、第三の潤滑油組成物(潤滑剤濃縮物:No.3)を作製して、堆積物について様々なシール適合性添加剤の効果を試験した。第三の参照用の潤滑剤(参照用潤滑剤:No.3)を、実施例42に従って作製した。市販のクランクケース潤滑剤であるこの潤滑剤組成物を、シール適合性添加剤の抗堆積作用を示すための基準として用いた。
【0176】
抗酸化作用に対するシール適合性添加剤の作用を示すために、潤滑剤濃縮物No.3を、様々なシール適合性添加剤及び基油と合した。抗酸化作用に関して、シール適合性添加剤とこれらの他の成分との相乗効果を示すために、その他の成分を、シール適合性添加剤と組み合わされた参照用潤滑剤と合する。
【0177】
実施例44、及び45で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードドデカンだった。実施例46、及び47で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードヘキサンだった。実施例48と49で使用したシール適合性添加剤は、1−ブロモドデカンだった。実施例50、及び51で使用したシール適合性添加剤は、1,4−ジヨードブタンだった。実施例52と53で使用したシール適合性添加剤は、ヨードシクロヘキサンだった。実施例54と55で使用したシール適合性添加剤は、ブロモシクロヘキサンだった。実施例56とP57で使用したシール適合性添加剤は、ヨードベンゼンだった。実施例58と59で使用したシール適合性添加剤は、4−ブロモアニソールだった。実施例61〜63で使用したシール適合性添加剤は、1−ヨードドデカンだった。実施例42〜63で使用したアミン系分散剤は、質量平均分子量が約2250の非ボレート系アミン分散剤だった。実施例43、45、47、49、51〜60、62、及び63で使用したアミン化合物は、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルドデカノエートだった。
【0178】
各例について、潤滑剤濃縮物No.3の量、及び添加成分の量はそれぞれ、下記表16〜19に記載されている。
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【0179】
例に記載の潤滑剤組成物の抗酸化作用は、VITに従って、合計酸価(TAN)/TBNのクロスオーバー点を評価することによって試験した。TANとは、潤滑剤組成物1gにおける酸を中和するために必要となる水酸化カリウム量(mg)で特定される、酸の測定値である。VITに関して、抗酸化剤の利点は、老化した潤滑剤組成物と、老化していない潤滑剤組成物との間で、KV40における差違が、初期のKV40と比較して150%になった時に測定された時間が上昇する程度によって定量化される。TAN、TBNのクロスオーバー点に向かって、潤滑剤組成物を老化させ、これによりTANが増加し、TBNが減少する。TANとTBNが相互に交差する時点を、TAN、TBNのクロスオーバー点と言う。KV、又はTAN、TBNのクロスオーバー点が150%に達するまでに長い持続時間を示す潤滑剤組成物が、より大きな抗酸化作用を有すると考えられる。抗酸化試験の結果が、表20〜23に示してある。
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【0180】
これらの例により、例によるシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物の抗酸化作用を改善させることが分かる。これらの例は例えば、シール適合性添加剤を含有する潤滑組成物が、抗酸化剤に関して改善された結果を示す(KVが150%に達するまでの持続時間増加、又はTAN、TBAのクロスオーバー点で示されるように)。要約すると、シール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤を含有しない潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0181】
これらの例によってまた、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤が、潤滑剤組成物の抗酸化作用を改善させることが分かる。例えば、これらの例により、アミン化合物と組み合わされたシール適合性添加剤を含有する潤滑剤組成物は、抗酸化性について改善された結果が示される。要約すると、シール適合性添加剤とアミン化合物を含有する潤滑剤組成物は、シール適合性添加剤及び/又はアミン化合物を含有しない潤滑剤組成物と比べて、優れた結果を示す。
【0182】
従属請求項は、特定の化合物、組成物、又は詳細な説明に記載された方法に制限されると理解されるべきではなく、これらは従属請求項の範囲内で全て、特定の態様の範囲内で変わり得ると理解されるべきである。ここで記載したマーカッシュ群については、様々な態様の特定の特徴又は形態を記載するものではなく、異なる、特別な、及び/又は予測できない結果が、他のマーカッシュの選択肢とは独立して、各マーカッシュ群から得られることに留意すべきである。マーカッシュ群の各選択肢は、個々に、及び/又は組み合わせに基づいていてよく、従属請求項の範囲内で特定の態様を充分にサポートする。
【0183】
また、本発明の様々な態様を記載するに当たり、あらゆる範囲と二次的な範囲は、独立して、また共同して、従属請求項の範囲に入ると理解されるべきであり、たとえここに具体的な値が明示的に記載されていない場合であっても、全体の、及び/又は部分的な値を含む全ての範囲を記載、保証すると理解されるべきである。当業者は、挙げられた範囲と二次的な範囲が、本発明の様々な態様を記載、かつ可能にしていることを直ちに理解でき、これらの範囲と二次的な範囲はさらに、半分、三分の一、四分の一、五分の一などに線引きすることができる。単に例として挙げると、「0.1〜0.9」という波には、さらに細かく分けることができる。つまり、0.1〜0.3(下限の三分の一)、0.4〜0.6(真ん中の三分の一)、そして0.7〜0.9(上限の三分の一)という具合であり、これらは個々に、また共同して従属請求項の範囲に入り、個々に、及び/又は共同して従属請求項の範囲にある特定の態様を充分にサポートする。
【0184】
加えて、範囲を規定又は修正する言語について、例えば「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」、「以上」などという言葉には、二次的な範囲及び/又は上限又は下限が含まれると理解されるべきである。別の態様において、「少なくとも10」という範囲には、内在的に少なくとも10〜35という二次的な範囲、少なくとも10〜25という二次的な範囲、25〜35という二次的な範囲などが含まれ、二次的な範囲はそれぞれ、個々に及び/又は共同していてよく、従属請求項の範囲にある特定の態様を充分にサポートする。ある特定の態様を充分にサポートする。最後に、開示された範囲にある個々の数字は、従属請求項の範囲内で特定の態様の根拠となり、またこれを充分にサポートすることができる。例えば、1〜9という範囲には、様々な整数、例えば3、また10分の一(又は画分)を含む個々の数値(例えば4.1)が含まれ、これらは従属請求項の範囲内で特定の態様の根拠となり、またこれを充分にサポートすることができる。
【0185】
独立請求項及び従属請求項(単項従属と多項従属の双方)のあらゆる組み合わせの対象は、ここで明示的に考慮されるべきである。以下にその例を記すが、従属関係がこれらに限られるわけではない:
・請求項3は、請求項1又は2に従属することができる。
・請求項4は、請求項1から3までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項5は、請求項1から4までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項6は、請求項1から5までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項7は、請求項1から6までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項8は、請求項1から7までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項11は、請求項9又は10に従属することができる。
・請求項12は、請求項9から11までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項13は、請求項9から12までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項14は、請求項9から13までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項15は、請求項9から14までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項16は、請求項9から15までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項17は、請求項9から16までのいずれか1項に従属することができる。
・請求項18は、請求項9から17のいずれか1項に従属することができる。
【0186】
前述のように潤滑剤組成物は、上記添加剤を1種以上、様々な量で含有することができる。特定の添加剤の量はそれぞれ、以下に記載する通りである:
【表24】
【0187】
本発明は、ここに説明的に記載されているが、これまで使用されてきた技術が、制限という意味合いではなく、明細書の用語の本質に意図されていると理解されるべきである。本発明について多くの修正と変形が、上記教示に基づき可能であり、本発明は具体的に記載された以外のやり方でも、実施できる。本発明について多くの修正と変形が、上記教示に基づき可能であり、本発明は具体的に記載された以外のやり方でも、実施できる。本発明について多くの修正と変形が、上記教示に基づき可能であり、本発明は具体的に記載された以外のやり方でも、実施できる。