【0012】
また、本発明において、酸化物焼結体のIn、Ga及びZnの原子数比は、以下の式を満たすことが好ましい。
0.314≦In/(In+Ga+Zn)≦0.342
0.314≦Ga/(In+Ga+Zn)≦0.342
0.325≦Zn/(In+Ga+Zn)≦0.364
IGZO焼結体において、(111)組成からZn−richの組成とすることにより高強度かつ安定したDCスパッタリングが可能なバルク抵抗を付与することができる。
なお、原料粉末の配合、混合、焼結等の際に、各成分量が変動することがあり、例えば、目標組成がIn:Ga:Zn=1:1:1の場合、In:Ga:Zn=1±0.02:1±0.02:1±0.02の変動が生じるので、事実上、Zn−richとならない場合があるが、そのこと自体が発明を否定する根拠とならない。
【実施例】
【0025】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。
【0026】
(実施例1)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比がIn、Ga及びZnの原子比で1.00:1.00:1.01となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃で20時間焼結した。
【0027】
このようにして得られたIGZO焼結体の抗折強度は55MPaであり、バルク抵抗は36.0mΩcmと、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は20.8μmであり、焼結体密度は6.3g/cm
3と高密度のものが得られた。以上の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例2〜4、比較例1)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃で20時間焼結した。
実施例2〜4の条件で得られたIGZO焼結体は、抗折強度がいずれも50MPa以上であり、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。一方、比較例1の条件で得られたIGZO焼結体は、バルク抵抗が低いものの、抗折強度が33MPaと低い値を示した。
【0030】
(実施例5〜6)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1350℃で10時間焼結した。
実施例5〜6の条件で得られたIGZO焼結体は、抗折強度がいずれも50MPa以上であり、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。
【0031】
(実施例7〜10、比較例3)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1300℃で20時間焼結した。
実施例7〜10の条件で得られたIGZO焼結体は、抗折強度がいずれも50MPa以上であり、バルク抵抗が100mΩcm以下と、高強度かつ低抵抗のものが得られた。また、焼結体の平均粒径は22μm以下であり、焼結体密度は6.10g/cm
3以上と高密度のものが得られた。一方、比較例3の条件で得られたIGZO焼結体は、抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。
【0032】
(比較例4〜8)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1250℃で20時間焼結した。比較例4〜8の条件で得られたIGZO焼結体は、いずれも抗折強度が高いものの、バルク抵抗が100mΩcm超と高い値を示した。また、比較例7、8の焼結体では、結晶粒径は小さいものの、焼結体中のポアが多く見られた。
【0033】
(比較例2)
In
2O
3粉、Ga
2O
3粉、ZnO粉を、焼結体の組成比が、表1に記載されるIn、Ga及びZnの原子比となるように秤量した後、これらの粉末を湿式で混合・微粉砕し、その後、スプレードライヤーで乾燥・造粒して、混合粉末を得た。次に、この混合粉末を面圧400〜1000kgf/cm
2で一軸プレスして成形体を得た。次に得られた成形体をビニールで2重に真空パックし、1500〜4000kgf/cm
2でCIP成型した後、酸素雰囲気中、温度1430℃で5時間焼結した。得られたIGZO焼結体は、結晶粒径が小さいものの、焼結体中のポアが多く、ターゲットとして用いた場合には、スパッタ時にアーキングやパーティクルの発生が懸念されるものであった。
【0034】
上記実施例及び比較例におけるIGZO焼結体について、その抗折強度とバルク抵抗の関係を
図1に示す。焼結体組成と焼結温度を適切に調整することにより、
図1に示されるような、抗折強度が50MPa以上、かつ、バルク抵抗が100mΩcm以下の焼結体を作製することができた、