【文献】
Eriko Shimada et al.、Inhibitory Effect of Topical Maize Glucosylceramide on Skin Photoaging in UVA−irradiated Hairless Mice、J. Oleo Sci、日本、2011.発行、Vol. 60, No.6、pp.321−325
【文献】
清水純ほか、セラミド含有パイナップル果実抽出物が乾燥肌モデルマウスの皮膚機能に与える影響、日本食品科学工学会第58回大会講演集、2011.09.09発行、p.117
【文献】
湯浅弘樹ほか、パイナップル果実由来グルコシルセラミドが乾燥肌モデルマウスの皮膚機能に与える影響とその作用機序、日本農芸化学会2012年度大会講演要旨集(オンライン)、2012.03.05発行、講演番号:2J12a04
【文献】
浅見直人ほか、パイナップル由来グルコシルセラミドによる乾燥肌モデルマウスの皮膚機能改善効果、日本薬学会第131年会要旨集3、2011.03.05発行、p.229
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(シワ抑制剤)
本発明のシワ抑制剤は、パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0013】
<パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド>
前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物の混合物が好ましい。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、mは、繰返し単位数であり、10〜20の整数を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、nは、繰返し単位数であり、20〜30の整数を表す。
【0014】
前記一般式(1)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記構造式(1)〜(2)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化3】
【化4】
【0015】
前記一般式(2)で表される化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記構造式(3)〜(5)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化5】
【化6】
【化7】
【0016】
前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド中に、前記一般式(1)〜(2)及び前記構造式(1)〜(5)が含有されていることを分析する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of Flight Mass Spectrometry;MALDI−TOFMS)により分析する方法などが挙げられる。
【0017】
<<パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドの製造方法>>
前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パイナップルを調製する工程と、抽出工程と、析出濾過工程と、再溶解工程と、精製工程とを含み、更に必要に応じて、濾過工程、濃縮工程等のその他の工程を含む。
【0018】
−パイナップルを調製する工程−
前記パイナップルは、熱帯アメリカを原産地とする常緑多年草であり、学名は、
Ananas comosusである。前記パイナップルの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、果実部、果芯部(芯部)、果皮部、果汁部、繊維部等のパイナップル可食部;葉部、茎部、花部、根部等のパイナップル不可食部などが挙げられる。これらの中でも、食経験が豊富な点で、パイナップル可食部が好ましく、パイナップル可食部の圧搾後の残渣、即ち、パイナップルの果汁部を採取した後に残留した繊維部(パイナップルパルプ部)がより好ましい。
【0019】
前記パイナップルを調製する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、植物を採取後、洗浄して乾燥し、粉砕して圧搾し、調製する方法が好ましい。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機等を使用して行ってもよい。
【0020】
−抽出工程−
前記抽出工程は、前記パイナップルを調製する工程により調製されたパイナップルを、80体積%〜100体積%のエタノール水溶液で抽出して抽出液を得る工程である。
前記抽出工程により、前記パイナップルに含まれる脂溶性成分を、前記エタノール水溶液に溶出させ、脂溶性成分を含む抽出液を得ることができる。前記エタノール水溶液は、飲食品、化粧品等に使用可能な溶媒であり、安全性に優れる点で、好ましい。
【0021】
前記抽出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80体積%〜100体積%のエタノール水溶液を満たした処理槽に、前記パイナップルを投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、還流抽出器で加熱抽出し、熱時濾過して脂溶性成分を前記エタノール水溶液に溶出させる方法が好ましい。
【0022】
前記抽出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記パイナップルに対する前記エタノール水溶液量としては、5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、抽出時間としては、1時間〜3時間が好ましく、抽出温度としては、20℃〜95℃が好ましく、前記エタノール水溶液(抽出溶媒)に用いる水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水などの他、これらに各種処理(例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等)を施した水などが好ましい。
【0023】
前記抽出時におけるエタノール水溶液(抽出溶媒)のエタノール濃度としては、80体積%〜100体積%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、85体積%〜95体積%が好ましい。前記濃度が、80体積%未満であると、グルコシルセラミドが効率よく抽出されないことがある。一方、前記好ましい範囲であると、グルコシルセラミドを抽出しやすい点で有利である。
【0024】
−析出濾過工程−
前記析出濾過工程は、前記抽出液を、25体積%〜35体積%のエタノール濃度となるまで希釈して濾過し、析出したグルコシルセラミド残渣として得る工程である。前記析出濾過工程において、前記抽出液を希釈(25体積%〜35体積%のエタノール水溶液となるよう希釈)して濾過することにより、残渣(濾物)中にはグルコシルセラミドが析出され、濾液中には糖類等が溶解される。
【0025】
前記希釈方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記抽出液に水(希釈溶媒)を加えて希釈する方法などが挙げられる。
前記希釈条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記水の温度としては、30℃〜60℃が好ましく、前記水(希釈溶媒)としては、前記エタノール水溶液(抽出溶媒)で用いられる水と同様のものが好ましい。
【0026】
前記希釈後におけるエタノール水溶液(希釈液)のエタノール濃度としては、25体積%〜35体積%であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記濃度が、25体積%未満であると、濾過性が悪くなることがあり、35体積%を超えると、グルコシルセラミドが溶解することがある。一方、前記好ましい範囲であると、グルコシルセラミドが析出した状態で濾過性も良好となる点で有利である。前記エタノール水溶液(希釈液)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エタノール水溶液(希釈液)を均一化できる点で、攪拌することが好ましい。
【0027】
前記析出方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記析出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記析出時における溶液温度としては、30℃〜60℃が好ましく、前記析出時間としては、30分間以上が好ましい。
【0028】
前記濾過方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離濾過等による濾過方法などが挙げられる。
前記濾過条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記濾過に用いる濾材としては、セルロース、ガラス繊維フィルター、メンブレンフィルター、珪藻土などが好ましく、前記濾過で得られた残渣としては、糖質類が除去でき、グルコシルセラミドが溶解しない点で、35体積%以下のエタノール水溶液で洗浄することが好ましい。
【0029】
−再溶解工程−
前記再溶解工程は、前記残渣を、70体積%〜100体積%のエタノール水溶液に再溶解して再溶解液を得る工程である。前記再溶解工程により、前記残渣に含有される不純物を除去する。
【0030】
前記再溶解方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記残渣を前記エタノール水溶液(再溶解するための溶媒)に懸濁し、攪拌しながら再溶解する方法などが挙げられる。
【0031】
前記再溶解条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記エタノール水溶液量としては、前記残渣に対して5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、再溶解時間としては、1時間〜3時間が好ましく、再溶解温度としては、20℃〜95℃が好ましい。前記再溶解により得られた再溶解液としては、濾過して得られた濾液及び洗浄液の濾液を併せたものを再溶解液としてもよい。前記再溶解液を濾過する方法としては、前記希釈液を濾過する方法と同様の方法を用いることができる。
【0032】
前記再溶解時におけるエタノール水溶液(再溶解するための溶媒)のエタノール濃度としては、70体積%〜100体積%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、75体積%〜100体積%が好ましい。前記濃度が、70体積%未満であると、グルコシルセラミドが溶解しないことがある。一方、前記好ましい範囲であると、グルコシルセラミドの溶解性が良い点で有利である。前記エタノール水溶液(再溶解するための溶媒)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1mol/L〜1.0mol/Lのアルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)を含むことが好ましい。
【0033】
−精製工程−
前記精製工程は、前記再溶解工程において得られた再溶解液を、合成吸着剤に吸着させた後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する工程である。前記精製工程により、グルコシルセラミドを含有する抽出物を精製することができる。
【0034】
前記精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記再溶解液をバッチ法により合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する方法、前記再溶解液をカラム法により合成吸着剤に通液した後、90体積%〜100体積%のエタノール水溶液で溶出して精製する方法などが挙げられる。これらの中でも、カラム法を用いた精製が好ましい。
【0035】
前記精製条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記合成吸着剤量としては、前記再溶解液に対して1/10倍量〜1/2倍量(体積比)が好ましく、カラム法における前記再溶解液の流速としては、合成吸着剤量の1倍量/時間〜3倍量/時間が好ましく、前記再溶解液の温度としては、5℃〜40℃が好ましい。前記再溶解液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記合成吸着剤に吸着していない成分を除去するために、通液後かつ溶出前に、前記合成吸着剤量の2倍量〜10倍量(体積比)の75体積%〜85体積%のエタノール水溶液で洗浄することが好ましい。前記合成吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤、メタクリル系合成吸着剤などが挙げられる。これらの中でも、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤が好ましい。前記スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンSP825(いずれも三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
前記精製時におけるエタノール水溶液(溶出剤)のエタノール濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、グルコシルセラミドを溶出しやすい点で、前記合成吸着剤の5倍量〜10倍量(体積比)の90体積%〜100体積%が好ましい。
【0037】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、濾過工程、濃縮工程などが挙げられる。
【0038】
前記濾過工程は、前記抽出工程において得られた前記脂溶性成分を含む抽出液を、析出濾過工程において前記抽出液を希釈する前に、濾過する工程である。前記濾過工程により、抽出後のパイナップル残渣や不溶成分などを取り除くことができる。前記濾過する方法としては、例えば、布などで濾し取る濾過、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心分離濾過等による方法などが挙げられる。
【0039】
前記濃縮工程は、前記抽出工程において得られた抽出液、前記再溶解工程において得られた再溶解液、前記精製工程において得られた精製液等の溶液を濃縮する工程である。前記濃縮工程により、目的とするグルコシルセラミドの濃度を高めることができると共に、ハンドリングする溶液量や廃液量を減らすことができる。前記濃縮する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の濃縮方法を選択することができ、例えば、大気下で蒸留する常圧濃縮、エバポレーター等を用いた減圧濃縮などが挙げられる。
【0040】
<<パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドの含有量>>
前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドの前記シワ抑制剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.0001質量%〜20質量%が好ましく、0.0001質量%〜10質量%がより好ましく、0.001質量%〜1質量%が更に好ましく、シワ及び表皮水分量低下の抑制に優れる点で、0.005質量%〜0.015質量%が特に好ましく、表皮肥厚の抑制に優れる点で、0.05質量%〜0.15質量%が特に好ましい。
【0041】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、細胞賦活剤、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、水、界面活性剤、香料、栄養剤などが挙げられる。
【0042】
<用法>
前記シワ抑制剤の用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口などの投与形態が挙げられ、外用であってもよい。これらの中でも、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れる点で、経口投与が好ましい。
【0043】
<剤型>
前記シワ抑制剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等の外用剤などが挙げられる。
【0044】
<用途>
本発明のシワ抑制剤は、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れるため、紫外線曝露に起因する表皮水分量低下抑制剤、表皮肥厚抑制剤、及び細胞損傷に関する医薬品、並びにこれらの疾患に関する安全な予防薬として好適に利用できる。また、本発明のシワ抑制剤は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、美容用飲食品、健康用飲食品などの飲食品として好適に利用できる。
なお、本発明のシワ抑制剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0045】
本発明のシワ抑制剤は、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚化粧料への利用に特に好適である。
【0046】
(経口用内服剤)
本発明の経口用内服剤は、上述した本発明のシワ抑制剤を含有し、更に必要に応じて前記その他の成分を含有する。
【0047】
前記経口用内服剤の剤形としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などが挙げられる。
【0048】
前記経口用内服剤における前記シワ抑制剤の含有量としては、特に制限はなく、経口用内服剤の種類や抽出物の生理活性等に応じて適宜調整することができるが、前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド量に換算して、0.0001質量%〜20質量%が好ましく、0.0001質量%〜10質量%がより好ましく、0.01質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0049】
本発明の経口用内服剤は、紫外線曝露に起因するシワ抑制作用、表皮水分量低下抑制作用、及び表皮肥厚抑制作用に優れるだけでなく、安全性にも優れる。
なお、本発明の経口用内服剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0050】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、上述した本発明のシワ抑制剤を含有し、更に必要に応じて前記その他の成分を含有する。
【0051】
前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼントなどが挙げられる。
【0052】
前記皮膚化粧料における前記シワ抑制剤の含有量としては、特に制限はなく、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等に応じて適宜調整することができるが、前記パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド量に換算して、0.0001質量%〜20質量%が好ましく、0.0001質量%〜10質量%がより好ましく、0.01質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0053】
本発明の皮膚化粧料は、紫外線曝露に起因するシワ抑制作用、表皮水分量低下抑制作用、及び表皮肥厚抑制作用に優れるだけでなく、安全性にも優れる。
なお、本発明の皮膚化粧料は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び配合例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0055】
[被験物質]
被験物質として、パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド(丸善製薬株式会社製)を用いた。なお、このパイナップルから抽出されたグルコシルセラミドに、前記一般式(1)〜(2)及び前記構造式(1)〜(5)が含有されていることは、マトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析法(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization−Time of Flight Mass Spectrometry;MALDI−TOFMS)により確認されている。本試験では、グルコシルセラミドとして、0.01質量%及び0.1質量%の割合で、マウス用飼料(ラボMRストック、日本農産工業株式会社製)へ配合した混餌食を調製し、自由摂取にて摂取させた。
【0056】
[試験動物]
5週齢の雌性へアレスマウス(Hos:HR−1、清水実験材料株式会社、京都市)を購入し、十分検疫馴化した後に一般状態の観察及び体重測定を行い、健康状態が良好な動物を選んで、6週齢で使用した。
【0057】
[飼育条件]
飼育は、温度:22±3℃、湿度:55±15%、換気:常時オールフレッシュ方式、照明12時間/日(午前6時より午後6時)に設定し、プラスチック製飼育ケージに4匹ずつ収容した。また、飲料水は、水道水を自動給水装置で自由摂取させた。
【0058】
[試験群の構成]
下記表1の4群構成とした。
【表1】
【0059】
[紫外線照射条件]
6週齢のへアレスマウス(n=8)を各試験群に割り当てた。各試験群におけるヘアレスマウスの背部に紫外線を照射すると同時に、表1に記載の「飼料」又は「飼料に被験物質を配合した混餌飼料」を自由摂取させた。摂餌量は毎日測定し、体重は毎週計測して記録した。紫外線照射は、下記表2のとおりとし、紫外線ランプ(FL20S−E ランプ、株式会社東芝製)を用いて週3回行った。紫外線の総照射量は、1,278mJ/cm
2とした。
【表2】
【0060】
[統計処理]
被験物質の有効性の検討は、Dunnettの多重検定を行い、p値が0.05未満であれば、「有意である」と判定した。
【0061】
[飼料摂餌量及び被験物質摂餌量の結果]
試験期間中の飼料摂餌量を
図1に、試験期間中の平均摂餌量及び被験物質摂餌量を表3に示し、被験物質の体重に及ぼす影響を
図2に示す。いずれの試験群においても摂餌量に目立った差は確認されなかった。そのため、パイナップルから抽出されたグルコシルセラミドによる摂餌量への影響はないと判断した。また、いずれの試験群も順調な体重増加が確認された。
【表3】
【0062】
(試験例1:シワ抑制作用試験)
最終照射終了日の翌日(5週後)に、へアレスマウスの背部皮膚を、マイクロスコープを用いて撮影した。各試験群におけるヘアレスマウスの背部皮膚を撮影したマイクロスコープ画像を
図3A〜Dに示す。
これらの結果から、5週間の紫外線照射を行った試験群は、紫外線照射を行わなかった試験群と比較して、シワの形成が認められた。このとき、紫外線照射を行った試験群の中でも、実施例1の試験群が、最もシワ抑制作用を発揮することがわかった。
【0063】
(試験例2:シワ抑制作用試験)
最終照射終了日の翌日(5週後)に、へアレスマウスの背部皮膚のレプリカを作製した後、ASA−3RXD(アサヒバイオメッド社製)を用いてシワの解析(シワ体積率、シワ面積率及びシワ個数)を行った。各試験群におけるヘアレスマウスの背部皮膚のレプリカ解析画像を
図4A〜Dに示し、レプリカによるシワ解析結果を
図5A〜Cに示す。
これらの結果から、5週間の紫外線照射を行った試験群は、紫外線照射を行わなかった試験群と比較して、シワの形成が認められた。このとき、紫外線照射を行った試験群の中でも、実施例1の試験群が、参考例2に対するシワ体積率、シワ面積率、及びシワ個数が最も低く、シワ抑制作用を発揮することがわかった。
【0064】
(試験例3:表皮水分量低下抑制作用試験)
最終照射終了日の翌日(5週後)に、へアレスマウスの表皮水分量の計測を無麻酔にて行った。測定は、皮膚表面の水分測定装置(CORNEOMETER)を用いた。各試験群におけるヘアレスマウスの表皮水分量の計測結果を
図6及び表4に示す。
これらの結果から、5週間の紫外線照射を行った試験群は、紫外線照射を行わなかった試験群と比較して、有意な水分量の低下が認められた。このとき、紫外線照射を行った試験群の中でも、実施例1の試験群が、最も表皮水分量低下が小さく、表皮水分量低下抑制作用を発揮することがわかった。
【表4】
【0065】
(試験例4:表皮肥厚抑制作用試験)
最終照射終了日の翌日(5週後)に、へアレスマウスの背部皮膚を摘出した。摘出後ホルマリン固定を行い、HE染色による組織学的な検討を行った。各試験群におけるヘアレスマウスの背部皮膚のHE染色画像を
図7A〜Dに示す。
これらの結果から、5週間の紫外線照射を行った試験群は、紫外線照射を行わなかった試験群と比較して、表皮の肥厚や角化の亢進が認められた。このとき、紫外線照射を行った試験群の中でも、実施例2の試験群が、最も表皮肥厚抑制作用を発揮することがわかった。
【0066】
(配合例1:乳液)
下記組成の乳液を常法により製造した。配合例1の乳液は、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れることがわかった。
−組成−
・パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド(丸善製薬株式会社製) 0.2g
・セチルアルコール 0.5g
・ミツロウ 2g
・POE(10)モノオレイン酸エステル 1g
・グリセリンモノステアリン酸エステル 1g
・ヒアルロン酸ナトリウム 0.1g
・プロピレングリコール 5g
・エタノール 3g
・エチルバラベン 0.3g
・香料 0.03g
・精製水 残量(全量を100mLとする)
【0067】
(配合例2:パック)
下記組成のパックを常法により製造した。配合例2のパックは、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れることがわかった。
−組成−
・パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド(丸善製薬株式会社製) 0.3g
・ポリビニルアルコール 15g
・ポリエチレングリコール 3g
・プロピレングリコール 7g
・エタノール 10g
・メチルパラベン 0.05g
・香料 0.05g
・精製水 残量(全量を100mLとする)
【0068】
(配合例3:クリーム)
下記組成のクリームを常法により製造した。配合例3のパックは、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れることがわかった。
−組成−
・パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド(丸善製薬株式会社製) 0.8g
・セトステアリルアルコール 3.5g
・スクワラン 40g
・ミツロウ 3g
・還元ラノリン 5g
・エチルバラベン 0.3g
・ポリオキシエチレン 2g
・ステアリン酸モノグリセリド 2g
・1,3−ブチレングリコール 5g
・香料 0.03g
・グリセリン 5g
【0069】
(配合例4:経口用内服剤の錠剤)
下記組成の経口用内服剤の錠剤を常法により製造した。配合例4の錠剤は、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れることがわかった。
−組成−
・パイナップルから抽出されたグルコシルセラミド(丸善製薬株式会社製) 1.0g
・粉糖(ショ糖) 178g
・ソルビット 10g
・グリセリン脂肪酸エステル 11g
【0070】
(配合例5:コラーゲン入りドリンク)
下記組成の経口内服薬剤であるコラーゲン入りドリンクを常法により製造した。配合例5のコラーゲン入りドリンクは、安全性に優れ、かつ、紫外線曝露に起因するシワ、表皮水分量低下、及び表皮肥厚の抑制に優れることがわかった。
・ビタミンC 1g
・コラーゲン 5g
・ヒアルロン酸 5mg
・香料 適量
・酸味料 適量
・水 残部(全量を100mLとする)