特許第6293417号(P6293417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293417
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】化合物、発光材料および有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/24 20060101AFI20180305BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 413/14 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 417/12 20060101ALI20180305BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20180305BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180305BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
   C07D251/24CSP
   C07D401/14
   C07D403/12
   C07D403/14
   C07D413/12
   C07D413/14
   C07D417/12
   C07D417/14
   C09K11/06 640
   C09K11/06 645
   C09K11/06 650
   C09K11/06 655
   H05B33/14 B
【請求項の数】15
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2013-46229(P2013-46229)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-172852(P2014-172852A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】516003621
【氏名又は名称】株式会社Kyulux
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】志津 功將
(72)【発明者】
【氏名】益居 健介
(72)【発明者】
【氏名】野村 洸子
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−292860(JP,A)
【文献】 特開2002−193952(JP,A)
【文献】 特表2012−500789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
[一般式(1)において、Ar1、Ar2およびAr3は各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基(前記ヘテロアリーレン基を構成する環は、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、トリアゾール環またはベンゾトリアゾール環である。)、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基を表す。D1およびD2の少なくとも一方は各々独立に下記の群1−1:
【化2】
(上記各構造中の水素原子はヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基置換もしくは無置換のアミド基(−CONH2、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミド基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)
から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表し、その他のD1およびD2と、D3は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)のD1およびD2の少なくとも一方が、前記群1−1から選択される構造を有する基でメタ位またはパラ位が置換されたジフェニルアミノ基を表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)のD1およびD2の少なくとも一方が、下記の群1−2:
【化3】
(上記各構造中の水素原子はヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基置換もしくは無置換のアミド基(−CONH2、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミド基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)
から選択される基であることを特徴とする請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(1)のD1およびD2の少なくとも一方が、下記の群1−3:
【化4】
(上記各構造中の水素原子はヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基置換もしくは無置換のアミド基(−CONH2、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミド基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)
から選択される基であることを特徴とする請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
一般式(1)のAr1、Ar2およびAr3が、各々独立に置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のピリジレン基、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
一般式(1)のAr1、Ar2およびAr3が、各々独立に下記の群2−1:
【化5】
(上記各構造中の水素原子はヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基で置換されていてもよい)
から選択される基であることを特徴とする請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
一般式(1)のD1が前記の群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基であって、Ar1が置換もしくは無置換のパラフェニレン基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
下記一般式(2)で表される構造を有する請求項1に記載の化合物。
【化6】
[一般式(2)において、R1〜R10のうちの少なくとも1つは各々独立に下記の群1−1:
【化7】
(上記各構造中の水素原子はヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基置換もしくは無置換のアミド基(−CONH2、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミド基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基で置換されていてもよい)
から選択されるを表し、その他のR1〜R10は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20の置換もしくは無置換のアシル基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基置換もしくは無置換のアミド基(−CONH2、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキルアミド基、炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基またはニトロ基を表す。R11、R12およびR14〜R25は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換もしくは無置換のアルキニル基炭素数3〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルケニル基または炭素数5〜20の置換もしくは無置換のトリアルキルシリルアルキニル基を表す。R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10、R11とR12、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は、各々互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【請求項9】
1〜R10のうちの少なくとも1つが前記群1−1から選択されるを表し、その他のR1〜R10、およびR11、R12、R14〜R25が水素原子であることを特徴とする請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
2、R3、R7、R8のうちの少なくとも1つが、前記群1−1から選択されるを表すことを特徴とする請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物からなる遅延蛍光体。
【請求項13】
請求項11に記載の発光材料を含む発光層を基板上に有することを特徴とする有機発光
素子。
【請求項14】
遅延蛍光を放射することを特徴とする請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項13または14に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料として有用な化合物とそれを用いた有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの有機発光素子の発光効率を高める研究が盛んに行われている。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する電子輸送材料、正孔輸送材料、発光材料などを新たに開発して組み合わせることにより、発光効率を高める工夫が種々なされてきている。その中には、トリアジン環とジフェニルアミノ基を含む化合物を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関する研究も見受けられる。
【0003】
例えば特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する一対の電極間に存在する発光層の中に、下記の一般式で表される化合物をホスト材料として用いることが記載されている。下記の一般式において、LC1は連結基を表し、ZC1は芳香族炭化水素環またはヘテロ環の形成に必要な原子群を表し、nC1は2以上の整数を表すものと規定されている。
【化1】
【0004】
特許文献1によると、LC1はさまざまな連結基をとりうることになっており、その中には2,4,6−トリアジントリイル基も含まれている。また、ZC1によって広範囲な環を形成しうることが記載されているが、ベンゼン環を形成する場合の置換基として、特定の基で置換されたジフェニルアミノ基を採用することについては言及がない。特許文献1には、LC1が2,4,6−トリアジントリイル基であって、ZC1によってベンゼン環を形成しており、そのベンゼン環にジフェニルアミノ基が置換されている化合物として、下記の2つの構造が具体的に記載されている。そのうち、化合物Aについては実施例にてホスト材料としての有用性が確認されている。
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−183303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1にはトリアジン環とジフェニルアミノ基を含む化合物を有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層のホスト材料として用いることが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載される化合物が、発光材料として機能しうるものであるか否かについては一切記載されていない。発光材料とホスト材料は機能が異なることから、特許文献1に記載される化合物の発光材料としての有用性は不明である。本願発明者らが検討したところでは、特許文献1に記載されている化合物の発光特性に際立った特徴は見出されなかった。
【0007】
このような状況下において本発明者らは、トリアジン環とジフェニルアミノ基を含んでいるが特許文献1には記載されていない構造について検討を始め、発光特性が優れた化合物を見出すことを目指して研究を重ねた。そして、発光材料として有用な化合物の一般式を導きだし、発光効率が高い有機発光素子の構成を一般化することを目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、特定の構造を有する化合物群を合成することに成功するとともに、それらの化合物群が発光材料として優れた性質を有することを見出した。また、そのような化合物群の中に、遅延蛍光材料として有用なものがあることを見出し、発光効率が高い有機発光素子を安価に提供しうることを明らかにした。本発明者らは、これらの知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0009】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
【化3】
[一般式(1)において、Ar1、Ar2およびAr3は各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基を表す。D1、D2およびD3は各々独立に水素原子または置換基を表し、D1、D2およびD3の少なくとも1つは下記の群1−1:
【化4】
から選択される基で0置換されたジアリールアミノ基を表す。]
[2] 一般式(1)のD1、D2およびD3の少なくとも1つが、前記群1−1から選択される構造を有する基でメタ位またはパラ位が置換されたジフェニルアミノ基を表すことを特徴とする[1]に記載の化合物。
【0010】
[3] 一般式(1)のD1、D2およびD3の少なくとも1つが、下記の群1−2:
【化5】
から選択される基で置換されたジアリールアミノ基であることを特徴とする[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(1)のD1、D2およびD3の少なくとも1つが、下記の群1−3:
【化6】
から選択される基で置換されたジアリールアミノ基であることを特徴とする[3]に記載の化合物。
【0011】
[5] 一般式(1)のAr1、Ar2およびAr3が、各々独立に置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のピリジレン基、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] 一般式(1)のAr1、Ar2およびAr3が、各々独立に下記の群2−1:
【化7】
から選択される基であることを特徴とする[5]に記載の化合物。
[7] 一般式(1)のD1が前記の群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基であって、Ar1が置換もしくは無置換のパラフェニレン基であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の化合物。
【0012】
[8] 下記一般式(2)で表される構造を有する[1]に記載の化合物。
【化8】
[一般式(2)において、R1〜R12およびR14〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1〜R10のうちの少なくとも1つは下記の群1−1:
【化9】
から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表す。R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10、R11とR12、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は、各々互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[9] R1〜R12およびR14〜R25のうちの少なくとも1つが前記群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表し、その他のR1〜R12およびR14〜R25が水素原子であることを特徴とする[8]に記載の化合物。
[10] R2、R3、R7、R8のうちの少なくとも1つが、前記群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表すことを特徴とする[8]または[9]に記載の化合物。
【0013】
[11] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物からなる発光材料。
[12] [1]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物からなる遅延蛍光体。
[13] [11]に記載の発光材料を含む発光層を基板上に有することを特徴とする有機発光素子。
[14] 遅延蛍光を放射することを特徴とする[13]に記載の有機発光素子。
[15] 有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする[13]または[14]に記載の有機発光素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、発光材料として有用である。また、本発明の化合物の中には遅延蛍光を放射するものが含まれている。本発明の化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、高い発光効率を実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成例を示す概略断面図である。
図2】化合物1の1H NMRスペクトルである。
図3】実施例1のトルエン溶液の発光スペクトルである。
図4】実施例1のトルエン溶液の時間分解スペクトルである。
図5】比較例1のトルエン溶液の発光スペクトルである。
図6】比較例1のトルエン溶液の時間分解スペクトルである。
図7】実施例2の薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図8】実施例2の薄膜型有機フォトルミネッセンス素子の時間分解スペクトルである。
図9】実施例3の有機エレクトロミネッセンス素子の発光スペクトルである。
図10】実施例3の有機エレクトロルミネッセンス素子の電圧−電流密度特性を示すグラフである。
図11】実施例3の有機エレクトロルミネッセンス素子の電流密度−外部量子効率特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
【化10】
【0018】
一般式(1)におけるD1、D2およびD3は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ここで、D1、D2およびD3の少なくとも1つは、下記の群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表す。群1−1に記載される各構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。群1−1の各基は、その構造中の窒素原子でジアリールアミノ基の芳香環に結合する。
【化11】
【0019】
上記のジアリールアミノ基を構成する2つのアリール基は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。好ましいのは同一である場合である。アリール基は、単環であっても縮合環であってもよく、環構成炭素数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましく、6〜10であることがさらに好ましい。ジアリールアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1−ナフチル)アミノ基、2−ナフチルフェニルアミノ基、ジ(2−ナフチル)アミノ基を挙げることができ、ジフェニルアミノ基が好ましい。
群1−1から選択される基は、ジアリールアミノ基のいずれの位置に置換されていてもよいが、アミノ窒素に結合しているベンゼン環のメタ位またはパラ位に置換されていることが好ましく、パラ位に置換されていることがより好ましい。
【0020】
群1−1から選択される基は、ジアリールアミノ基に1つだけ置換されていてもよいし、2つ以上置換されていてもよい。2つ以上置換されている場合は、アミノ窒素に結合している各ベンゼン環にそれぞれ1つ以上ずつ置換されていることが好ましい。群1−1から選択される基の置換個数は1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0021】
群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基の構造例として、下記の群1−2を挙げることができる。群1−2に記載される各構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【化12】
【0022】
群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基は、特に下記の群1−3のいずれかの基であることが好ましい。群1−3に記載される各構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【化13】
【0023】
上記の群1−1、群1−2、群1−3に記載される各構造中の水素原子や、群1−1に記載される基で置換されるジアリールアミノ基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。置換基の数は特に制限されず、置換基は存在していなくてもよい。また、2つ以上の置換基が存在するときは、それらの置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数12〜40のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜10のアルキルスルホニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、アミド基、炭素数2〜10のアルキルアミド基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基およびニトロ基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、炭素数12〜40の置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。さらに好ましい置換基は、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のジアルキルアミノ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0024】
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アリール基は、単環でも融合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。アルコキシ基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソプロピポキシ基を挙げることができる。ジアルキルアミノ基の2つのアルキル基は、互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。ジアルキルアミノ基の2つのアルキル基は、各々独立に直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、より好ましくは炭素数1〜6であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる。アリール基は、単環でも融合環でもよく、具体例としてフェニル基、ナフチル基を挙げることができる。ヘテロアリール基も、単環でも融合環でもよく、具体例としてピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、トリアジル基、トリアゾリル基、ベンゾトリアゾリル基を挙げることができる。
【0025】
群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基は、D1、D2およびD3の少なくとも1つであればよく、いずれか2つであっても、3つすべてであってもよい。2つ以上である場合は、群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基の構造は、互いに同一であっても異なっていてもよい。D1、D2およびD3のすべてが群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基である場合は、D1−Ar1−で表される基、D2−Ar2−で表される基、D3−Ar3−で表される基のすべてが同一である化合物も好ましい。
【0026】
一般式(1)において、Ar1、Ar2およびAr3は各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基を表す。2つが連結した連結基には、2つの同じアリーレン基が結合した基、2つの互いに異なるアリーレン基が結合した基、2つの同じヘテロアリーレン基が結合した基、2つの互いに異なるヘテロアリーレン基が結合した基、アリーレン基とヘテロアリーレン基が結合した基が含まれる。
【0027】
Ar1、Ar2およびAr3がとりうるアリーレン基は、単環のアリーレン基であっても、縮合環のアリーレン基であってもよい。具体例として、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、1,2−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基を挙げることができ、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましい。Ar1、Ar2およびAr3がとりうるヘテロアリーレン基も、単環のヘテロアリーレン基であっても、縮合環のヘテロアリーレン基であってもよい。縮合環のヘテロアリーレン基にはベンゼン環とヘテロ環の縮合環も含まれる。ヘテロアリーレン基を構成する環構造の例として、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環を挙げることができ、ピリジン環が好ましい。
【0028】
Ar1、Ar2およびAr3は、各々独立に置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のピリジレン基、またはこれらのいずれか2つが連結した連結基であることが好ましく、各々独立に下記の群2−1から選択される基であることがより好ましい。群2−1に記載される各構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【化14】
【0029】
一般式(1)のD1が群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表すとき、Ar1はフェニレン基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることがより好ましい。同様に、一般式(1)のD2が群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表すとき、Ar2はフェニレン基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることがより好ましい。また、一般式(1)のD3が群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表すとき、Ar3はフェニレン基であることが好ましく、1,4−フェニレン基であることがより好ましい。
【0030】
一般式(1)のD1が水素原子であるときのAr1、D2が水素原子であるときのAr2、D3が水素原子であるときのAr3は、下記の群2−2から選択される基であることが好ましい。群2−2に記載される各構造中の水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【化15】
【0031】
Ar1、Ar2およびAr3がとりうるアリーレン基やヘテロアリーレン基は置換基で置換されていてもよく、また上記の群2−1、群2−2に記載される各構造中の水素原子も置換基で置換されていてもよい。置換基の数は特に制限されず、置換基は存在していなくてもよい。また、2つ以上の置換基が存在するときは、それらの置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、例えばヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜40のアリール基、炭素数3〜40のヘテロアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数1〜10のハロアルキル基、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のトリアルキルシリルアルキル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルケニル基、炭素数5〜20のトリアルキルシリルアルキニル基等が挙げられる。これらの具体例のうち、さらに置換基により置換可能なものは置換されていてもよい。より好ましい置換基は、炭素数1〜20の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜40の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。さらに好ましい置換基は、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルコキシ基、炭素数6〜15の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数3〜12の置換もしくは無置換のヘテロアリール基である。
【0032】
一般式(1)で表される化合物は、D1が群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基であって、Ar1が置換もしくは無置換のパラフェニレン基であることが好ましく、下記の一般式(2)で表される構造を有するものであることがより好ましい。
【化16】
【0033】
一般式(2)において、R1〜R12およびR14〜R25は各々独立に水素原子または置換基を表す。R1〜R10のうちの少なくとも1つは上記の群1−1から選択されるを表す。
1〜R12がとりうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記の群1−1、群1−2、群1−3に記載される各構造がとりうる置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。また、R11、R12、R14〜R25がとりうる置換基の説明と好ましい範囲については、上記のAr1、Ar2およびAr3がとりうるアリーレン基やヘテロアリーレン基の置換基の説明と好ましい範囲を参照することができる。
【0034】
1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、R6とR7、R7とR8、R8とR9、R9とR10、R11とR12、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R18とR19、R19とR20、R21とR22、R22とR23、R23とR24、R24とR25は、各々互いに結合して環状構造を形成していてもよい。環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環などを挙げることができる。
【0035】
一般式(2)で表される化合物の好ましい一群として、R1〜R12およびR14〜R25のうちの少なくとも1つが前記群1−1から選択されるであり、その他のR1〜R12およびR14〜R25が水素原子である化合物群を挙げることができる。
また、一般式(2)で表される化合物の別の好ましい一群として、R2、R3、R7、R8のうちの少なくとも1つが、前記群1−1から選択されるである化合物群を挙げることができる。
【0036】
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
【0037】
【化17】
【0038】
【化18】
【0039】
【化19】
【0040】
【化20】
【0041】
【化21】
【0042】
【化22】
【0043】
【化23】
【0044】
【化24】
【0045】
【化25】
【0046】
【化26】
【0047】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば一般式(1)で表される化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、一般式(1)で表される最小化合物の分子量である。
一般式(1)で表される化合物は、分子量にかかわらず塗布法で成膜してもよい。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0048】
本発明を応用して、分子内に一般式(1)で表される構造を複数個含む化合物を、発光材料として用いることも考えられる。
例えば、一般式(1)で表される構造中にあらかじめ重合性基を存在させておいて、その重合性基を重合させることによって得られる重合体を、発光材料として用いることが考えられる。具体的には、一般式(1)のAr1、Ar2、Ar3、D1、D2、D3のいずれかに重合性官能基を含むモノマーを用意して、これを単独で重合させるか、他のモノマーとともに共重合させることにより、繰り返し単位を有する重合体を得て、その重合体を発光材料として用いることが考えられる。あるいは、一般式(1)で表される構造を有する化合物どうしをカップリングさせることにより、二量体や三量体を得て、それらを発光材料として用いることも考えられる。
【0049】
一般式(1)で表される構造を含む繰り返し単位を有する重合体の例として、下記一般式(3)または(4)で表される構造を含む重合体を挙げることができる。
【化27】
【0050】
一般式(3)および(4)において、Qは一般式(1)で表される構造を含む基を表し、L1およびL2は連結基を表す。連結基の炭素数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。連結基は−X11−L11−で表される構造を有するものであることが好ましい。ここで、X11は酸素原子または硫黄原子を表し、酸素原子であることが好ましい。L11は連結基を表し、置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基であることが好ましく、炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキレン基、または置換もしくは無置換のフェニレン基であることがより好ましい。
一般式(3)および(4)において、R101、R102、R103およびR104は、各々独立に置換基を表す。好ましくは、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の無置換のアルキル基、炭素数1〜3の無置換のアルコキシ基である。
1およびL2で表される連結基は、Qを構成する一般式(1)の構造のAr1、Ar2、Ar3、D1、D2、D3のいずれか、一般式(2)のR1〜R12、R14〜R25のいずれかに結合することができる。1つのQに対して連結基が2つ以上連結して架橋構造や網目構造を形成していてもよい。
【0051】
繰り返し単位の具体的な構造例として、下記式(5)〜(8)で表される構造を挙げることができる。
【化28】
【0052】
これらの式(5)〜(8)を含む繰り返し単位を有する重合体は、一般式(1)の構造のAかDのいずれかにヒドロキシ基を導入しておき、それをリンカーとして下記化合物を反応させて重合性基を導入し、その重合性基を重合させることにより合成することができる。
【化29】
【0053】
分子内に一般式(1)で表される構造を含む重合体は、一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位のみからなる重合体であってもよいし、それ以外の構造を有する繰り返し単位を含む重合体であってもよい。また、重合体の中に含まれる一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(1)で表される構造を有さない繰り返し単位としては、通常の共重合に用いられるモノマーから誘導されるものを挙げることができる。例えば、エチレン、スチレンなどのエチレン性不飽和結合を有するモノマーから誘導される繰り返し単位を挙げることができる。
【0054】
[一般式(1)で表される化合物の合成方法]
一般式(1)で表される化合物は、既知の反応を組み合わせることによって合成することができる。例えば、以下のスキームにしたがって合成することが可能である。
【化30】
【0055】
上記のスキームにおけるAr1、Ar2、Ar3、D2、D3の説明については、一般式(1)における対応する記載を参照することができる。D1は、群1−1から選択される基で置換されたジアリールアミノ基を表す。Xはハロゲン原子を表し、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
上記のスキームにおける反応は、公知のカップリング反応を応用したものであり、公知の反応条件を適宜選択して用いることができる。上記の反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
【0056】
[有機発光素子]
本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光材料として有用である。このため、本発明の一般式(1)で表される化合物は、有機発光素子の発光層に発光材料として効果的に用いることができる。一般式(1)で表される化合物の中には、遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)が含まれている。すなわち本発明は、一般式(1)で表される構造を有する遅延蛍光体の発明と、一般式(1)で表される化合物を遅延蛍光体として使用する発明と、一般式(1)で表される化合物を用いて遅延蛍光を発光させる方法の発明も提供する。そのような化合物を発光材料として用いた有機発光素子は、遅延蛍光を放射し、発光効率が高いという特徴を有する。その原理を、有機エレクトロルミネッセンス素子を例にとって説明すると以下のようになる。
【0057】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。
【0058】
本発明の一般式(1)で表される化合物を発光層の発光材料として用いることにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。有機フォトルミネッセンス素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を図1に示す。図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、基板と発光層の説明は有機フォトルミネッセンス素子の基板と発光層にも該当する。
【0059】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0060】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0061】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0062】
(発光層)
発光層は、陽極および陰極のそれぞれから注入された正孔および電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光材料を単独で発光層に使用しても良いが、好ましくは発光材料とホスト材料を含む。発光材料としては、一般式(1)で表される本発明の化合物群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。従って、発光層中に発光材料に加えてホスト材料を用いることが好ましい。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方が本発明の発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、本発明の発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、本発明の発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。本発明の有機発光素子または有機エレクトロルミネッセンス素子において、発光は発光層に含まれる本発明の発光材料から生じる。この発光は蛍光発光および遅延蛍光発光の両方を含む。但し、発光の一部或いは部分的にホスト材料からの発光があってもかまわない。
ホスト材料を用いる場合、発光材料である本発明の化合物が発光層中に含有される量は0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。
発光層におけるホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
【0063】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0064】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0065】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0066】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0067】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0068】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0069】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0070】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0071】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R1〜R10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0072】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0073】
【化31】
【0074】
【化32】
【0075】
【化33】
【0076】
【化34】
【0077】
【化35】
【0078】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0079】
【化36】
【0080】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0081】
【化37】
【0082】
【化38】
【0083】
【化39】
【0084】
【化40】
【0085】
【化41】
【0086】
【化42】
【0087】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0088】
【化43】
【0089】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0090】
【化44】
【0091】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0092】
【化45】
【0093】
【化46】
【0094】
【化47】
【0095】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0096】
【化48】
【0097】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0098】
【化49】
【0099】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
一方、りん光については、本発明の化合物のような通常の有機化合物では、励起三重項エネルギーは不安定で熱等に変換され、寿命が短く直ちに失活するため、室温では殆ど観測できない。通常の有機化合物の励起三重項エネルギーを測定するためには、極低温の条件での発光を観測することにより測定可能である。
【0100】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光層に一般式(1)で表される化合物を含有させることにより、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0101】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0102】
(合成例1) 化合物1の合成
【化50】
【0103】
2−(4−ブロモフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン2.00g(5.15mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.594g(6.18mmol)、ジフェニルアミン1.31g(7.73mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)99.7mg(0.109mmol)を100mL三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へトルエン30mL、0.75mol/L濃度のトリ(tert−ブチル)ホスフィンのトルエン溶液1.0mLを加えた。この混合物を30分間窒素バブリングした後、窒素雰囲気下、80℃で20時間攪拌した。攪拌後、この混合物をセライト、シリカゲルを通して吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液に水を加えて洗浄した。洗浄後、有機層と水層を分離し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥後、この混合物を吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液を濃縮して得た固体をアセトンとメタノールの混合溶媒で洗浄したところ、化合物1を収量2.40g、収率97.8%で得た。図21H−NMRスペクトル(CDCl3,500MHz)を示す。
【0104】
【化51】
【0105】
4−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)トリフェニルアミン2.40g(5.03mmol)、テトラヒドロフラン20mL、酢酸エチル20mLを100mLエーレンマイヤーフラスコに入れて攪拌した。この溶液を0℃に冷却した後、N−ブロモこはく酸イミド2.08g(11.7mmol)を少量ずつ加えた。この溶液を室温で24時間攪拌したところ、固体が析出した。攪拌後、この混合物に水を加えて攪拌した。攪拌後、この混合物の有機層を濃縮し、水100mLを加えて攪拌した後、吸引ろ過して固体を得た。得られた固体をアセトンとメタノールの混合溶媒で洗浄したところ、目的物の粉末状淡黄色固体を収量2.97g、収率93.1%得た。
【0106】
【化52】
【0107】
4,4’−ジブロモ−4’’−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)トリフェニルアミン1.50g(2.36mmol)、ジフェニルアミン1.00g(5.91mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)43.2mg(0.0472mmol)、ナトリウム tert−ブトキシド0.681g(7.09mmol)を100mL三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へ、トルエン20mL、0.75mol/L濃度のトリ(tert−ブチル)ホスフィンのトルエン溶液1.0mLを加えた。この混合物を窒素雰囲気下、80℃で20時間攪拌した。攪拌後、この混合物を水100mL、トルエン100mLに加えて攪拌した。攪拌後、この混合物の水層を除去し、セライト、シリカゲルを通して吸引ろ過した。得られたろ液に水を加えて洗浄した。洗浄後、有機層と水層を分離し、有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。乾燥後、この混合物を吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液を濃縮して得た固体をアセトンとメタノールの混合溶媒で洗浄したところ、粉末状黄色固体の化合物1を収量1.71g、収量89.3%で得た。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ8.75(d,J=8.5Hz,4H),8.62,(d,J=9.0Hz,2H),7.61−7.53(m,6H),7.29−7.26(m,8H),7.17−7.05(m,22H).
【0108】
(実施例1) 有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価(溶液)
合成例1で合成した化合物1のトルエン溶液(濃度10-5mol/L)を調製して、窒素をバブリングしながら300Kで紫外光を照射したところ、図3に示すようにピーク波長が565nmの蛍光が観測された。化合物1のトルエン溶液中でのフォトルミネッセンス量子効率を絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス(株)製Quantaurus−QY)により300Kで測定したところ、窒素バブル前が34.8%で窒素バブル後が44.5%となり、約10%の増加が見られた。図4に窒素バブル後の時間分解スペクトルを示す。
【0109】
(比較例1) 有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価(溶液)
化合物1のかわりに、比較化合物として上記の化合物Aを用いて、実施例1と同様にトルエン溶液を調製した。図5に発光スペクトルを示し、図6に時間分解スペクトルを示す。窒素バブル前後で差が見られず、遅延蛍光は確認されなかった。
【0110】
(実施例2) 有機フォトルミネッセンス素子の作製と評価(薄膜)
シリコン基板上に真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paの条件にて化合物1とmCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、化合物1の濃度が6.0重量%である薄膜を0.3nm/秒にて100nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。実施例1と同じ測定装置を用いて得た発光スペクトルを図7に示す(ピーク波長539nm)。また、300K、250K、200K、150Kにおいて小型蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス(株)製Quantaurus−tau)による測定を行って、図8に示す時間分解スペクトルを得た。図8より、温度低下に伴って遅延蛍光成分が減少する熱活性型の遅延蛍光であることが確認された。フォトルミネッセンス量子効率は窒素流通下で300Kにて100%であった。
【0111】
(実施例3) 有機エレクトロルミネッセンス素子の作製と評価
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成した。次に、化合物1とmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、化合物1の濃度は6.0重量%とした。次に、TPBiを65nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
製造した有機エレクトロルミネッセンス素子を、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、および光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)を用いて測定したところ、図9に示すように548nmの発光が認められた。電圧−電流密度特性を図10に示し、電流密度−外部量子効率特性を図11に示す。化合物1を発光材料として用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は15.44%の高い外部量子効率を達成した。この値は、遅延蛍光を示さない通常の蛍光材料を発光材料として用いた場合の外部量子効率の理論限界値(7.5%)を大幅に上回っている。
【0112】
【化53】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の化合物は発光材料として有用である。このため本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子用の発光材料として効果的に用いられる。本発明の化合物の中には、遅延蛍光が放射するものも含まれているため、発光効率が高い有機発光素子を提供することも可能である。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0114】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11