【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本実施形態をさらに詳細に説明する。
(実験1)
<ピックル液配合の検討>
(実施例1−1)
豚バラ肉をトリミングし、ジャガードで筋を切断した後、注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を37に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して50重量%となるようにインジェクションした。
【0035】
インジェクションした豚バラ肉を温度10〜14℃、−0.08MPa以下の減圧条件で6時間タンブリングを行い、10℃以下で12時間静置した。静置した豚バラ肉の折径109mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材のケーシングに長手方向に56g/cmとなるように充填した。
【0036】
充填した豚バラ肉を蒸気により、70℃,60分、80℃,30分、95℃,20分、100℃,75分と段階的に加熱温度を上昇させながら、豚バラ肉の品温が100℃になるまで加熱した。
【0037】
加熱殺菌した豚バラ肉を冷却し、−25℃の凍結庫にて10時間凍結した。凍結した豚バラ肉を−5℃程度になるまで解凍し、スライサーを用いて肉厚が4
.0mmとなるようにスライスした。
【0038】
スライスした豚バラ肉をトレーに並べ、再びー25℃の凍結庫にて品温が−20℃になるまで凍結した。凍結した豚バラ肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が一定になるまで真空凍結乾燥し、48℃の調湿庫で調湿し、即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0039】
(実施例1−2)
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を38に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して45重量%となるようにインジェクションする以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0040】
(実施例1−3)
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を35に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して50重量%となるようにインジェクションする以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0041】
(実施例1−4)
注射針を用いて表1で示した可溶性固形分値を41に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して60重量%となるようにインジェクションする以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0042】
(比較例1−1)
豚バラ肉をトリミングし、ジャガードで筋を切断した後、注射針を用いて一回目の味付けとして表1で示した醤油を含まない、可溶性固形分値を35に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して42重量%となるようにインジェクションした。
【0043】
インジェクションした豚バラ肉を温度10〜14℃、−0.08MPa以下の減圧条件で6時間タンブリングを行い、10℃以下で12時間静置した。静置した豚バラ肉の折径109mm、7mm千鳥穿孔のファイブラ素材のケーシングに長手方向に56g/cmとなるように充填した。
【0044】
充填した豚バラ肉を蒸気により、70℃,60分、80℃,30分、95℃,20分、100℃,75分と段階的に加熱温度を上昇させながら、豚バラ肉の品温が100℃になるまで加熱した。
【0045】
加熱殺菌した豚バラ肉を冷却し、−25℃の凍結庫にて10時間凍結した。凍結した豚バラ肉を−5℃程度になるまで解凍し、スライサーを用いて肉厚が40mmとなるようにスライスした。
【0046】
スライスした豚バラ肉を2回目の味付けとして表2で示した調味液にスライスした豚バラ肉の重量に対し400重量%の30分浸漬し、浸漬後、目開き1mmのメッシュにて5分間液切りした。
【0047】
液切りした豚バラ肉をトレーに並べ、再びー25℃の凍結庫にて品温が−20℃になるまで凍結した。凍結した豚バラ肉を真空度60Pa以下、棚温60℃で品温が一定になるまで真空凍結乾燥し、48℃の調湿庫で調湿し、2回味付け工程を行った即席乾燥味付肉(乾燥チャーシュー)を製造した。
【0048】
(比較例1−2)
注射針を用いて表1で示したに可溶性固形分値を41に調整したピックル液を豚バラ肉の重量に対して42重量%となるようにインジェクションする以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0049】
これらのサンプルをポリスチレン製の容器にいれて350mlの熱湯を注加し、蓋をし
て5分放置して復元し、喫食した。喫食時の評価方法は、ベテランのパネラー5人によって5段階評価で食感、復元性について官能評価を行った。評価は、食感は、硬さ、肉の繊維感、弾力性を総合評価し、評価5が非常に良好、評価4が良好、評価3が概ね良好、評価2が悪い、評価1が著しく悪い、とした。また、復元性については、全体的な水の入りや復元ムラを総合的に評価し、評価5が非常に良好、評価4が良好、評価3が概ね良好、評価2が悪い、評価1が著しく悪い、とした。以後の実験の官能評価も同様に行った。
【0050】
実験1に使用したピックル液および調味液の配合を表1及び表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
実験1の官能評価結果ならびに5分復元後の水分について表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
比較例1−1は、味付け工程を2回に分けて製造したものだが、復元ムラもなく戻りもよく良好であった。食感は、肉本来の繊維感や弾力感を感じ良好であった。
【0056】
比較例1−2は、味付け工程を1回に簡略し、味付け工程を2回に分けて行った場合と原料肉に対して添加する原材料量が等量となるようにピックル液を調整したもので、ピックル液の可溶性固形分値は41であった。これを比較例1−1と同じ原料肉に対して42重量%となるようにピックル液をインジェクションした。復元後の食感は硬く、肉本来の繊維感がなく、ハムのような詰まった食感になり、肉に粘りが発生した。また、全体的な水の入りも悪く、味付けムラや復元性が悪い部分が目立った。
【0057】
実施例1−1では、ピックル液の可溶性固形分値を37に調整し、原料肉に対して50重量%となるようにピックル液をインジェクションしたものだが、食感は、肉本来の繊維感や弾力感を充分感じ良好であった。復元性についても全体的な水の入りも良く、復元ムラもなく良好であった。
【0058】
実施例1−2では、ピックル液の可溶性固形分値を38に調整し、原料肉に対して45重量%となるようにピックル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感は、やや硬さが残るものの肉の繊維感や弾力感を感じ概ね良好であった。復元性は、僅かにムラがあるが全体的に復元しており概ね良好であった。
【0059】
実施例1−3では、ピックル液の可溶性固形分値を35に調整し、原料肉に対して50重量%となるようにピックル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感は、実施例1−1と比較しても、適度な弾力感があり、肉本来の繊維感があり、非常に良好であった。復元性に関しても、復元ムラもなく、全体的な水の入りも非常に良く、非常に良好であった。
【0060】
実施例1−4では、ピックル液の可溶性固形分値を29に調整し、原料肉に対して60重量%となるようにピックル液をインジェクションしたものだが、復元後の食感、復元性は、実施例1−3ほどではないが良好であった。
【0061】
(実験2)
<蒸気加熱条件の検討>
(実施例2−1)
蒸気による加熱を80℃,130分行い、品温が80℃に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0062】
(実施例2−2)
蒸気による加熱を90℃,130分行い、品温が90℃に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0063】
(実施例2−3)
蒸気による加熱を95℃,110分行い、品温が90℃に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0064】
(実施例2−4)
蒸気による加熱を98℃,95分行い、品温が90℃に達温するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0065】
(実施例2−5)
蒸気による加熱を100℃,65分行い、品温が80℃に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0066】
(実施例2−6)
蒸気による加熱を100℃,85分行い、品温が90℃に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0067】
(実施例2−7)
蒸気による加熱を100℃,135分行い、品温が100℃に達するまで加熱すること以外は、実施例1−1の方法に従って製造した。
【0068】
実験2の官能結果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
実施例2−1は、蒸気による加熱温度が80℃で品温が80℃になるまで加熱したもので加熱にかかった時間は、130分であった。復元後の食感は、やや硬さが残るものの肉の繊維感や弾力感を感じ概ね良好であった。復元性は、全体的な水の入りがやや悪いが全体的に復元しており、復元ムラもなく概ね良好であった。
【0071】
実施例2−2は、蒸気による加熱温度が90℃で品温が90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、130分であった。復元後の食感は、適度な弾力感があり、繊維感も感じ、良好であった。復元性についても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好であった。
【0072】
実施例2−3は、蒸気による加熱温度が95℃で品温が90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、110分であった。復元後の食感は、適度な弾力感があり、繊維感も感じ、良好であった。復元性についても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好であった。また、風味に関しても肉の味を感じ良好であった。
【0073】
実施例2−4は、蒸気による加熱温度が98℃で品温が90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、95分であった。復元後の食感は、適度な弾力感があり、繊維感も強く、非常に良好であった。復元性についても全体的な水の入りも非常によく、復元ムラなく非常に良好であった。また、風味に関しても肉の味を強く感じ非常に良好であった。
【0074】
実施例2−5は、蒸気による加熱温度が100℃で品温が80℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、65分であった。復元後の食感は、弾力感がやや強いものの、繊維感が強く、良好であった。復元性についても全体的な水の入りもよく、復元ムラなく良好であった。また、風味に関しても肉の味を感じ良好であった。
【0075】
実施例2−6は、蒸気による加熱温度が100℃で品温が90℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、85分であった。復元後の食感は、適度な弾力感があり、繊維感も強く、非常に良好であった。復元性についても全体的な水の入りも非常によく、復元ムラなく非常に良好であった。また、風味に関しても肉の味を強く感じ非常に良好であった。
【0076】
実施例2−7は、100℃で品温が100℃になるまで加熱したものだが、加熱にかかった時間は、135分であった。復元後の食感は、実施例2−6と比較し柔らかくなり、弾力感が弱くなるが肉本来の繊維感があり良好であった。復元性については、非常に良好だが、水の入りが良好すぎて食感が柔らかくなるように感じた。風味に関しては、実施例2−4と比較し、僅かに弱いが良好であった。
【0077】
以上のように実施例の結果から、ピックル液の固形分含量を調整し、原料肉へのピックル液の充填量を増やすことで、味付け工程を1回に簡略した場合でも、食感、復元に優れた即席乾燥味付肉を製造できることがわかる。また、蒸気による加熱温度が高いほど食感、復元性に優れた即席乾燥味付肉を製造でき且つ加熱時間を短縮できることがわかる。
【0078】
なお、本願発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を
逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記実施形態には種々の段
階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。