(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6293844
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20180305BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20180305BHJP
【FI】
C23C14/34 C
C23C14/34 B
H01L21/285 S
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-214157(P2016-214157)
(22)【出願日】2016年11月1日
(62)【分割の表示】特願2015-518680(P2015-518680)の分割
【原出願日】2014年9月5日
(65)【公開番号】特開2017-78226(P2017-78226A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2016年11月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-189387(P2013-189387)
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093296
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 志郎
【審査官】
塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−104972(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/047199(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレート一体型のチタン製又はチタン合金製スパッタリングターゲットであって、周囲がバッキングプレートとなるターゲットと一体のフランジ部を備え、ターゲットのスパッタ面の中心部のビッカース硬度Hvとターゲットのスパッタ面の外周部のビッカース硬度Hvとの差が10未満であり、且つフランジ部のビッカース硬度Hvが110以上であることを特徴とするバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
【請求項2】
バッキングプレート一体型のチタン製又はチタン合金製スパッタリングターゲットであって、周囲がバッキングプレートとなるターゲットと一体のフランジ部を備え、ターゲットのスパッタ面の中心部のビッカース硬度Hvとターゲットのスパッタ面の外周部のビッカース硬度Hvが100以上110未満であり、且つフランジ部のビッカース硬度Hvが110以上であることを特徴とするバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
【請求項3】
バッキングプレート一体型のチタン製又はチタン合金製スパッタリングターゲットであって、周囲がバッキングプレートとなるターゲットと一体のフランジ部を備え、ターゲットのスパッタ面の中心部のビッカース硬度Hvとターゲットのスパッタ面の外周部のビッカース硬度Hvが100以上120未満であり、且つフランジ部のビッカース硬度Hvが160以上であることを特徴とするバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
【請求項4】
円盤型、楕円型又は矩形であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の薄膜形成用スパッタリングターゲットに関する。特に、バッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。なお、金属製ターゲットには、金属製及び合金製を含むものである。特に、チタン製ターゲットの場合は、チタン合金製を含む。
【背景技術】
【0002】
近年、金属又は合金製スパッタリングターゲットを使用して、各種電子部品への成膜が行われている。特に、チタン(チタン合金)製スパッタリングターゲットの使用が増加している。
【0003】
一般に、スパッタリングターゲットは、バッキングプレートとボンディング材等を用いて接合されている場合が多いが、ターゲットの使用後は、スパッタリング装置を停止して使用済みのターゲットを交換する必要がある。しかし、この停止時間(ダウンタイム)は生産効率を低下させる。
【0004】
このため、停止時間を極力短縮すると共に、製造コストを削減するためにターゲットとバッキングプレートを一体型にして、ターゲット自体の厚みを厚くすることが求められている。しかし、このような一体型のターゲットは機械強度が不足して、スパッタ中にターゲットが反りなどの変形を生ずるという欠点がある。
【0005】
このような欠点を克服するために、例えば、特許文献1には、ターゲットとバッキングプレートとが同一材料で製作された一体構造型ターゲットにおいて、ターゲットを塑性加工して、機械的強度を高くすることにより、高出力でスパッタしても、ターゲットの反りなど生じさせない技術が開示されている。
しかし、ターゲット全体の機械的強度を高くするために塑性加工の条件を変更すると、ターゲット自体のスパッタ特性が変化してしまい、所望の製品性能を満たすことができないという問題がある。
【0006】
特許文献2には、スパッタリングターゲットの非エロージョン部にレーザーを照射して窪みを形成し、その窪みの底面の硬さを非エロージョン部表面の硬さに比べて小さくすることによって、粗大パーティクルの発生を阻止する技術が記載されている。しかし、これはレーザー照射によりメルト部分を軟化して、非エロージョン部の表面に比べて窪みの底面の硬さを小さくするもので、ターゲットの強度を高めて、スパッタ時におけるターゲット変形を抑制するものではない。
【0007】
特許文献3には、アルミニウムまたはアルミニウム合金スパッターターゲットと当該ターゲットを製造する方法を提供する。純アルミニウムまたはアルミニウム合金を機械的に加工して円形ブランクとしてから、当該ブランクに再結晶熱処理を加えて、必要な結晶粒径と結晶集合組織とを実現する。この熱処理ステップ後に当該ブランクに10〜50%の追加ひずみを与えて、機械的強度を増大させる。さらに、当該ターゲットのフランジ領域においては、ひずみは他のターゲット領域におけるよりも大きく、当該フランジ領域に約20〜60%の割合のひずみが与えられる。次に、当該ブランクを仕上げ加工して、必要な結晶集合組織と十分な機械的強度とを有するスパッタリングターゲットとすることが記載されている。
【0008】
特許文献4には、バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットにおいて、フランジ部におけるビッカース硬度Hvが90以上、かつフランジ部における0.2%降伏応力が6.98×10
7N/m
2以上であることを特徴とするバッキングプレート一体型スパッタリングターゲットが記載されている。
上記特許文献3及び特許文献4には、バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットが記載されているが、これらの製造条件はフランジ部が同時に塑性加工されているため、フランジ部の塑性加工に伴いターゲットの周囲から中心部へ向かって歪を与え、ターゲットの硬度にばらつきが出る可能性があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−121662号公報
【特許文献2】特開平9−209133号公報
【特許文献3】特表2012−515847号公報
【特許文献4】国際公開WO2013/047199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットにおいて、ターゲットのフランジ部のみの機械強度を高めることにより、スパッタ中のターゲットの変形を抑制することができ、さらには、従来のスパッタ特性を変えることがなく、これにより、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成することを可能にし、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上することを課題とする。
特に、バッキングプレート一体型のチタン製スパッタリングターゲットのバッキングプレートとなるフランジ部のビッカース硬度Hvが110以上で、チタン製ターゲットのスパッタリング面の硬さが均一であるバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の発明を提供するものである。
1)バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットであって、周囲がバッキングプレートとなるターゲットと一体のフランジ部を備え、該フランジ部は部分的な鍛造を繰り返し行った組織を備えることを特徴とするバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
2)鍛造した後のターゲットの外周を切削し、鍛造により歪みの入った部分を除去したターゲットであることを特徴とする上記1)に記載のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲット。
3)円盤型、楕円型又は矩形であることを特徴とする上記1)〜2)のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
4)バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットが、チタン又はチタン合金からなり、バッキングプレートとなるフランジ部のビッカース硬度Hvが110以上であることを特徴とする上記1)〜3)のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲット。
【0012】
また、本願は、以下の発明を提供する。
5)バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを製造する方法であって、バッキングプレートとなるフランジ部を鍛造する際に、部分的な鍛造を行い、最終的に材料の全外周を鍛造してフランジ部とすることを特徴とするバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法。
6)1回の鍛造で、金属材料の全周の1/5以下とすることを特徴とする上記5)に記載のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法。
7)鍛造後、ターゲットの外周を切削し、鍛造により歪みの入った部分を除去することを特徴とする上記5)〜6)のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法。
8)円盤型、楕円型又は矩形に成型することを特徴とする上記5)〜7)のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法。
9)バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットがチタン又はチタン合金からなり、バッキングプレートとなるフランジ部のビッカース硬度Hvを110以上とすることを特徴とする上記5)〜8)のいずれか一項に記載のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッキングプレート一体型スパッタリングターゲットは、ターゲットのフランジ部のみ機械強度を高めることにより、スパッタ中のターゲットの変形を抑制することができ、さらには、従来のスパッタ特性を変えることがなく、これにより、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成することを可能にし、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上することができるという優れた効果を有する。
【0014】
特に、バッキングプレート一体型のチタン製スパッタリングターゲットのバッキングプレートとなるフランジ部のビッカース硬度Hvが110以上で、チタン製ターゲットのスパッタリング面の硬さが均一であるバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを提供することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】従来の鍛造(型鍛造)の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットとバッキングプレートとが一体化し、同一材料で製造されていることを意味する。従来のスパッタリングターゲットとバッキングプレートの2ピース品では、バッキングプレートによって機械的強度を保つことができるので、本発明のように機械強度が不足しても、スパッタ中にターゲットが変形(反りなど)するという問題は内在しない。変形の問題は、本発明のようなスパッタリングターゲットとバッキングプレートとを一体化し、十分な厚みを持たせたものに対して、顕在化するものである。
【0017】
しかし、従来のスパッタリングターゲットとバッキングプレートの2ピース品では、ボンディング材等を用いて接合されている場合が多いが、ターゲットの使用後は、スパッタリング装置を停止して使用済みのターゲットを交換する必要があり、この停止時間(ダウンタイム)は生産効率を低下させるという問題がある。
また、製造コストを削減するためにターゲットとバッキングプレートを一体型にして、ターゲット自体の厚みを厚くすることが求められているが、バッキングプレート自体が別物なので、その分だけ厚みに制限があるという問題がある。
【0018】
本発明は、バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットであって、周囲がバッキングプレートとなるターゲットと一体のフランジ部を備え、該フランジ部は部分的な鍛造を繰り返し行った組織を備えることを特徴とするバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを提供する。一般に、ターゲットとバッキングプレートは、それぞれ別体で作製され、最後にこれらを組立(必要に応じて溶接等により接合して)、製作されるものであるが、本願発明は、同じ材料を用いて一体型としたものである。すなわち、本願発明で使用する加工する(鍛造する)前のターゲットとバッキングプレート材料は、成分組成及び組織は同一である。
上記の通り、本発明のフランジ部は、部分的な鍛造を繰り返し行った組織を備えるが、この組織は実質的には鍛造組織である。しかし、部分的な鍛造は、一度に鍛造する場合に比べて、歪みの発生量が少なくなるので、従来の鍛造法(一度に鍛造する方法)に比べて、ターゲットに及ぼす歪みを大きく低減できる特徴を有する。
【0019】
上記フランジ部は、バッキングプレート一体型ターゲットをスパッタリング装置に装着するための継ぎ手部分であり、フランジ部自体がスパッタされることはない。フランジ部に相当する部分を順送りに加工するために、その都度ターゲットよりも低い面となる。フランジ部は、バッキングプレート一体型ターゲットの最大径から20%程度の範囲であるが、バッキングプレート一体型ターゲットのサイズに応じて、任意に決めることができ、その範囲は10〜30%の範囲とすることもできる。
【0020】
ターゲット全体の機械的強度(硬さ)が十分でない場合には、スパッタリング中のターゲットに反りが発生して、膜厚均一性(ユニフォミーティ)を低下させるため、好ましくない。したがって、ターゲットのスパッタ面の硬さが均一であることは、均一なスパッタリングを行う上で重要な要件である。
【0021】
一般に、ターゲットを製造する場合には、
図1に示すような工程によって行われる。バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットの製造は、たとえば、溶解して得られる金属や合金を鋳造してインゴット(ビレット)を作製し、このインゴットを所定の鍛造比で鍛造し、その後、所定の圧下率で圧延して圧延板を得る。
さらに、この圧延板の外周部(フランジ部に相当)を鍛造(ハンマー、型鍛造など)して機械的強度を高める。すなわち、
図1に示すように、金敷の上に金属ターゲット原料(
図1ではTi材)を置き、その上に空間部を有する金型を載せ、金敷によりプレスして型鍛造によりフランジ部を成型していた。
【0022】
このようにバッキングプレート部分となるフランジ部を作製するために、ターゲット原料の全周を一度に鍛造(塑性加工)により変形させると、歪みの発生が大きくなり、その歪みがターゲットのスパッタ面にも入る。この歪みがターゲットの外周部に存在すると、ターゲット中心部と外周部の硬度差を生じ、ばらつきが出る。
これはスパッタリング特性に影響を与えることになる。このように歪みが入ったターゲットの外周部は、切削により除去する必要がある。歪みの発生量が多い程、ターゲットの周縁部から切削量が増加するので、歩留まりが低下し、生産コストを増加させる原因となる。
【0023】
このため、本願発明においては、上記のようにバッキングプレートとなるフランジ部を鍛造する場合に、1回の鍛造で金属材料の外周を部分的に鍛造してフランジ部とするのである。具体的には、
図2のように、押圧冶具を、フランジを形成する全部ではなく、部分的に充てプレスを行う。このような部分的な鍛造(部分押し)を行うことにより、ターゲット周縁への歪みの発生が著しく減少した。また、未プレスの部分については、ターゲットを回転させて再度プレスすることができる。
【0024】
すなわち、バッキングプレートとなるフランジ部を成形する際に、1回目の鍛造で金属材料の外周を部分的に鍛造プレスし、次に金型を回転させ、再度金属材料の外周を部分的に鍛造し、これを繰り返して最終的に全外周部を鍛造してフランジ部とする。
1回の鍛造で、ターゲットへの歪みの発生量を低減でき、さらに全周の鍛造を実施しても、1回の鍛造によって発生する少量の歪みの繰り返しなので、ターゲット周縁への歪みの発生は大きく低減できる。
この鍛造は、押圧冶具のサイズを変更することにより鍛造の大きさと頻度を任意に調節できる。すなわち複数回の鍛造を行うことによりバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットを製造できる。
【0025】
1回の鍛造では、金属材料の全周の1/5以下、好ましくは1/6〜1/8が望ましい。また、鍛造後は、ターゲットの外周を切削し、鍛造により歪みの入った部分を除去することも可能であるが、本願発明のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲットの製造方法では、その量を著しく低減できる。
通常、鍛造品のターゲットのスパッタ面に歪みが入る部分は、外周から3mm以内であり、切削して除去する量は極めて少ないと言える。
このようにして、周面がターゲットよりも低い面であるバッキングプレートとなるフランジ部を作製し、ターゲットのスパッタリング面の硬さを均一としたバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを製造できる。
【0026】
一般に、バッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットは円盤型であるが、楕円型又は矩形に成型することも可能である。チタン製又はチタン合金製のバッキングプレート一体型スパッタリングターゲットに適用した場合は、バッキングプレートとなるフランジ部のビッカース硬度Hvを110以上とし、かつスパッタリング面の硬さを均一とすることが可能である。鍛造条件は、材料に応じて任意に決定できるが、例えば、チタン製又はチタン合金製の場合は、鍛造時の加熱温度は700℃以下、鍛造圧下率は10%以上で行うことができる。
そして、フランジ部の機械的強度を高めてスパッタリング中の反りを抑え、また上記のようにターゲットのスパッタ面への歪みの残留を無くすことにより、スパッタリング特性を安定化させることができる。
【0027】
これは、他の金属(合金を含む)においても同様であり、それぞれの金属(合金)の材料特性に応じて、本発明の鍛造を実施することにより、フランジ部の機械的強度を高めてスパッタリング中の反りを抑えることができる。また、同様に、ターゲットのスパッタ面への歪みの残留を低減することが可能であり、スパッタリング特性を安定化させ、かつターゲットの歩留まりを高める著しい利点がある。
このような特性の向上は、本願発明のバッキングプレート一体型金属製スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法において、共通する属性と言える。
【0028】
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0029】
(実施例1)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、前記
図2を用いて説明した部分押しによる鍛造を実施した。チタンの加熱温度は500℃、フランジ部の鍛造圧下率は30%とした。スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、フランジ部は塑性変形により硬さはHv=110〜140であった。スパッタ面外周部は最外周から2.0mmの範囲が鍛造時の歪みにより、硬さHvが110以上となった。
フランジ部の硬さ測定は、90°毎に4か所測定した。具体的には、測定位置をフランジ部に沿って90°ずつ周回させながら、その周回したフランジ長さの中心位置を測定した。
【0030】
このターゲットの最外周の硬い部分は仕上げ加工により取り除いた。この切除部分の量は、従来と比較すると、極めて少ない量であり、実施例の効果は非常に高かった。
スパッタ評価を行った結果、ユニフォーミティは約4%と良好であり、パーティクルも7個/waferと少なかった。使用後のターゲット反りは0.1mmであり良好なTi製スパッタリングターゲットを得ることができた。
【0031】
(実施例2)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、前記
図2を用いて説明した部分押しによる鍛造を実施した。チタンは室温の25℃、フランジ部の鍛造圧下率は20%とした。
スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、フランジ部は塑性変形により硬さはHv=160〜170であった。ターゲットの外周部は最外周から3.0mmの範囲が鍛造時の歪みにより、硬さHvは120以上となった。
【0032】
この最外周の硬い部分は仕上げ加工により取り除いた。この切除部分の量は、従来と比較すると、極めて少ない量であり、実施例の効果は非常に高かった。
スパッタ評価を行った結果、ユニフォーミティは約4.5%と良好であり、パーティクルも6個/waferと少なかった。使用後のターゲット反りは0.1mmであり良好なTi製スパッタリングターゲットを得ることができた。
【0033】
(実施例3)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、前記
図2を用いて説明した部分押しによる鍛造を実施した。チタンの加熱温度は700℃、フランジ部の鍛造圧下率は30%とした。
スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、フランジ部は塑性変形により硬さはHv=110〜130であった。ターゲットの面外周部は最外周から1.5mmの範囲が鍛造時の歪みにより、硬さHvは110以上となった。
【0034】
この最外周の硬い部分は仕上げ加工により取り除いた。この切除部分の量は、従来と比較すると、極めて少ない量であり、実施例の効果は非常に高かった。
スパッタ評価を行った結果、ユニフォーミティは約5%と良好であり、パーティクルも9個/waferと少なかった。使用後のターゲット反りは0.2mmであり良好なTi製スパッタリングターゲットを得ることができた。
【0035】
(実施例4)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、前記
図2を用いて説明した部分押しによる鍛造を実施した。チタンの加熱温度は500℃、フランジ部の鍛造圧下率は10%とした。
スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、フランジ部は塑性変形により硬さはHv=110〜130であった。スパッタ面外周部は最外周から2.0mmの範囲が鍛造時の歪みにより、硬さHvは110以上となった。
【0036】
このターゲットの最外周の硬い部分は仕上げ加工により取り除いた。この切除部分の量は、従来と比較すると、極めて少ない量であり、実施例の効果は非常に高かった。
スパッタ評価を行った結果、ユニフォーミティは約5%と良好であり、パーティクルも10個/waferと少なかった。使用後のターゲット反りは0.2mmであり良好なTi製スパッタリングターゲットを得ることができた。
【0037】
(比較例1)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、従来法である全面押しによる型鍛造を実施した。チタンの加熱温度は500℃、フランジ部の鍛造圧下率は30%とした。スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、スパッタ面外周部は最外周から5.0mmの範囲で硬さHvは110以上であった。この最外周の硬い部分は、仕上げ加工をしても完全には取り除くことができず3.0mm程度残ってしまった。
スパッタ評価を行った結果、パーティクルは8個/wafer、使用後のターゲット反りは0.1mmと良好であったが、ユニフォーミティは約7%と悪かった。
【0038】
(比較例2)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、削り出しでターゲットを作製した。スパッタ面、フランジ部とも硬さはHv=100程度であった。スパッタ評価の結果、ユニフォーミティは6%とやや悪く、パーティクルも13個/waferと多かった。使用後のターゲット反りは0.5mmであった。この比較例の大きな問題は、大量の切削による材料の無駄が発生すること、そしてフランジ部の強度が不足するために、スパッタリング中に熱による反りが大きく発生し、ユニフォーミティが悪化したことである。
【0039】
(比較例3)
Tiワンピースターゲット用圧延板に対し、従来法である全面押しによる型鍛造を実施した。チタンの加熱温度は800℃、フランジ部の鍛造圧下率は30%とした。スパッタ面中心部の硬さがHv=100に対し、フランジ部の硬さはHv=100〜120であった。ターゲット外周部は最外周から3.0mmの範囲が鍛造時の歪みにより、硬さHv=110〜120であった。
スパッタ評価を行った結果、パーティクルは12個/wafer、使用後のターゲット反りは0.4mmと大きく、ユニフォーミティは約6%と悪かった。
【0040】
なお、上記実施例及び比較例のスパッタ条件は、以下の通りで行った。
<スパッタ条件>
・パワー20kW
・厚さ20nmのTiN膜をSiO
2基板上に成膜
・ユニフォーミティはKLAテンコール社製オムニマップ(RS−100)で測定
・パーティクルはKLAテンコール社製パーティクルカウンター(Surfscan SP1−DLS)で測定。0.2μm以上のものを測定した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、バッキングプレート一体型スパッタリングターゲットを提供するものであり、ターゲットのフランジ部のみの機械的強度を高めることにより、スパッタ中のターゲットの変形を抑制することができ、さらに、従来のスパッタ特性を変えることがなく、これにより、均一性(ユニフォーミティ)に優れた薄膜を形成することができるので、微細化・高集積化が進む半導体製品の歩留まりや信頼性を向上することができるという優れた効果を有する。
【0042】
特に、フランジ部のビッカース硬度Hvが110以上で、チタン製ターゲットのスパッタリング面の硬さが均一であるバッキングプレート一体型の金属製スパッタリングターゲットを提供することができるので、バッキングプレート一体型のチタン製スパッタリングターゲットのバッキングプレートに有用である。