(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリアミンが、1,3−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス−(アミノメチル)ベンゼン、ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、5〜7のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン、ジプロピレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、200〜500g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジアミン及びポリオキシアルキレントリアミン、ポリアミドアミン、フェナルカミン、第一級アミノ基を部分的に又は完全にアルキル化した上記のポリアミンの化合物、並びに上記のポリアミンとエポキシド及びエポキシ樹脂との付加物からなる群より選択される、請求項1に記載の硬化剤。
エポキシ基に反応性である式(I)のアミンのアミン水素の数と、エポキシ基に反応性である前記ポリアミンのアミン水素の数との比が、0.05〜5の範囲である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例えば、ポリアミン、ポリオール、又はポリエポキシドなどの「ポリ」で始まる物質名は、正式には各分子中に、その名前で現れる官能基を2つ以上含有する物質を指す。
【0011】
「脂肪族」とは、そのアミノ基が脂肪族、脂環式又はアリール脂肪族残基に結合しているアミンを表し、したがってこれらの基は、脂肪族アミノ基と呼ばれる。
【0012】
「芳香族」とは、そのアミノ基が芳香族残基に結合しているアミンを表し、したがって、これらの基は芳香族アミノ基と呼ばれる。
【0013】
「アミン水素」とは、第一級及び第二級アミノ基の水素原子を表す。
【0014】
「NH等量」は、硬化剤中又はアミン中に存在するアミン水素当たりの硬化剤又はアミンの重量分率を意味している。
【0015】
「組み込みできないシンナー」とは、エポキシ樹脂に可溶性であり、かつその粘度を低下させる物質であって、エポキシ樹脂の硬化時に樹脂混合物中に共有結合的に組み込まれない物質を表す。
【0016】
「粘度」とは、本文書では動的粘度又は剪断粘度を表し、これは、剪断応力とせん断率(速度勾配)との比によって定義され、DIN EN ISO 3219に記載のように決定される。
【0017】
特に有利には、上記式(I)のアミンを、1,3−ビス−(アミノメチル)ベンゼン(=メタ−キシリレンジアミン又はMXDA)のベンズアルデヒドでの還元アルキル化によって得ることができる。ベンズアルデヒドは、1,3−ビス−(アミノメチル)ベンゼンの第一級アミノ基に関して、好ましくは化学量論的に用いられる。還元アルキル化は、好ましくは水素の存在下で、かつ高圧下で実行される。これは、分子の水素を用いて直接実行でき、又は他の反応剤から由来する水素によって間接的に実行できる。分子の水素を用いるのが好ましい。第一級アミノ基を、できるだけ完全に還元アルキル化するようにして条件が選択される一方、他方ではベンゼン環は水素化されない。5〜100barの水素圧力、40〜120℃の温度、及び適切な触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、パラジウム炭素(Pd/C)、プラチナ炭素(Pt/C)、アダムス触媒、及びラネーニッケルが好ましく、特にパラジウム炭素及びプラチナ炭素が好ましい。
【0018】
第一級アミノ基は非常に選択的にアルキル化されるが、第二級アミノ基はそれ以上アルキル化されにくいため、記載された方法における還元アルキル化による式(I)のアミンの製造は、エポキシ樹脂の硬化剤としての使用に特に有利である。したがって、記載の調製の生成物は、記載した方法でエポキシ樹脂を硬化するための処理をさらに行うことなく、還元アルキル化後に使用することができる。
【0019】
式(I)のアミンを、還元アルキル化以外の方法でも得ることができ、特に1,3−ビス−(アミノメチル)ベンゼンと、ベンジルクロリド又はベンジルブロミドとを適切な比で反応させることによって得ることもできる。これは、2つアルキル化したアミノ基の実質的な部分を通常は有する反応混合物を生成する。
【0020】
式(I)のアミンは、わずかに揮発性であり、臭いが少なく、CO
2とほとんど反応しないため、空気中でクラスト(crust)を形成したり、沈殿したり、粘度が上昇する傾向もなく、先行技術の多くのアミンとは異なる。これは、他のアミン及び他のエポキシ樹脂と優れた相溶性を示す。式(I)のアミンを含む硬化剤は、比較的高いNH等価重量を有しながら、低い粘度を有するため、エポキシ樹脂の良好なシンナーである。これは、特に低温で、エポキシ樹脂を驚くほど速く硬化させ、白化現象を与えない。コーティングに適用した場合、驚くほど高い硬度の通常粘着性のないフィルムを与える。
【0021】
エポキシ樹脂の硬化に適切である、本発明による硬化剤は、エポキシ基と反応する少なくとも3つのアミン水素を有する、少なくとも1つのポリアミンAを特に追加的に含む。ポリアミンAと共に式(I)のアミンを含む硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化の加速を追加的にもたらし、これは比較的高い硬度と比較的低い脆さを有する硬化樹脂を与える。これは、コーティングとして特に有益である。ポリアミンAと共に式(I)のアミンを含む硬化剤は、同様に低い粘度を有する。特に、ポリアミンAが式(I)のアミンよりもずっと高い粘度を有する場合でも、硬化剤の粘度が低くなる。したがって、式(I)のアミンは、ポリアミンAが比較的高い粘性を有する場合に、ポリアミンAを実質的に希釈する機能を有している。したがって、式(I)のアミンは、白化現象を与える傾向のある強い臭いのアミン又は組み込みできないシンナーを用いずに、ポリアミンAを効果的に希釈することができる。この希釈は、700mPa・s超、特に1500mPa・s超の粘度を有するポリアミンAに対して特に有利である。式(I)のアミンの存在によって、硬化剤のエポキシ樹脂の硬化速度、並びにそのフィルムの硬度及び表面品質は、驚くべき事に負の影響を受けることなく、脆さがさらに低下する。
【0022】
以下のポリアミンは、ポリアミンAとして特に適切である:
− 脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族第一級ジアミン、例えばエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2−メチルメチル−1,2−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,3−ペンタンジアミン(DAMP)、1,5−ペンタンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD)、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン(C11−ネオジアミン)、1,6−ヘキサンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン(H
12−MDA)、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−エチルシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3,5−ジメチルシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−エチル−5−メチルシクロヘキシル)メタン(M−MECA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミン又はIPDA)、2−及び4−メチル−1,3−ジアミノシクロヘキサン及びこれらの混合物、1,3−及び1,4−ビス−(アミノメチル)シクロヘキサン、2,5(2,6)−ビス−(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4)、8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2、6]デカン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、1,8−メンタンジアミン、3,9−ビス−(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ならびに1,3−及び1,4−ビス−(アミノメチル)ベンゼン;
【0023】
− 脂肪族、脂環式、又はアリール脂肪族第一級トリアミン、例えば4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、1,3,5−トリス−(アミノメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス−(アミノメチル)シクロヘキサン、トリス−(2−アミノエチル)アミン、トリス−(2−アミノプロピル)アミン、及びトリス−(3−アミノプロピル)アミン;
【0024】
− エーテル基を含む脂肪族第一級ジアミン、例えば、特にビス−(2−アミノエチル)エーテル、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、4,7−ジオキサデカン−2,9−ジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、5,8−ジオキサドデカン−3,10−ジアミン、4,7,10−トリオキサデカン−1,13−ジアミン、及びこれらのジアミンの高次オリゴマー、ビス−(3−アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン、及び他のポリテトラヒドロフランジアミン、ならびにポリオキシアルキレンジアミン。後者は典型的には、ポリオキシアルキレンジオールのアミノ化からの生成物を構成し、商品名Jeffamine(商標)(Huntsmanから)で、商品名Polyetheramine(BASFから)で、又は商品名PC Amine(商標)(Nitroilから)で入手できる。特に好適なポリオキシアルキレンジアミンは、Jeffamine(商標)D−230、Jeffamine(商標)D−400、Jeffamine(商標)D−2000、Jeffamine(商標)D−4000、Jeffamine(商標)XTJ−511、Jeffamine(商標)ED−600、Jeffamine(商標)ED−900、Jeffamine(商標)ED−2003、Jeffamine(商標)XTJ−568、Jeffamine(商標)XTJ−569、Jeffamine(商標)XTJ−523、Jeffamine(商標)XTJ−536、Jeffamine(商標)XTJ−542、Jeffamine(商標)XTJ−559、Jeffamine(商標)EDR−104、Jeffamine(商標)EDR−148、Jeffamine(商標)EDR−176; Polyetheramine D 230、Polyetheramine D 400、及びPolyetheramine D 2000, PC Amine(商標)DA 250、PC Amine(商標)DA 400、PC Amine(商標)DA 650、及びPC Amine(商標)DA 2000である。
【0025】
− 第一級ポリオキシアルキレントリアミン、これは、典型的にはポリオキシアルキレントリオールからの生成物を構成し、例えば、名前Jeffamine(商標)(Huntsmanから)で、名前polyetheramine(BASFから)で、又は名前PC Amine(商標)(Nitroilから)で、例えば、特にJeffamine(商標)T−403、Jeffamine(商標)T−3000、Jeffamine(商標)T−5000、Polyetheramine T 403、Polyetheramine T 5000、及びPC Amine(商標)TA 403で入手できる;
【0026】
− 2つの第一級脂肪族アミノ基を有する第三級アミノ基を有するポリアミン、例えば、特にN,N’−ビス−(アミノプロピル)−ピペラジン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)メチルアミン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)エチルアミン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)プロピルアミン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、N,N−ビス−(3−アミノプロピル)−2−エチル−ヘキシルアミン、ならびに天然脂肪酸から誘導される脂肪族アミンの二重シアノエチル化とその後の還元による生成物、例えばどN,N−ビス−(3−アミノプロピル)ドデシルアミン、及びN,N−ビス−(3−アミノプロピル)タロー−アルキルアミン、Triameen(商標)Y12D、及びTriameen(商標)YT(Akzo Nobelから)として入手できる;
【0027】
− 3つの第一級脂肪族アミノ基を有する第三級アミノ基を有するポリアミン、例えば、特にトリス−(2−アミノエチル)アミン、トリス−(2−アミノプロピル)アミン、及びトリス−(3−アミノプロピル)アミン;
【0028】
− 2つの第一級脂肪族アミノ基を有する第二級アミノ基を有するポリアミン、例えば、特に3−(2−アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミン(BHMT)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、及び5〜7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミンのような直鎖ポリエチレンアミンの高級同族体(いわゆる「高級エチレンポリアミン」、HEPA)、少なくとも2つの第一級アミノ基を有する第一級ジアミン及びポリアミンの多重シアノエチル化又はシアノブチル化及び以後の水素化による生成物、例えばジプロピレントリアミン(DPTA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N3−アミン)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン(N4−アミン)、N,N’−ビス−(3−アミノプロピル)−1,4−ジアミノブタン、N5−(3−アミノプロピル)−2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、N3−(3−アミノペンチル)−1,3−ペンタンジアミン、N5−(3−アミノ−1−エチルプロピル)−2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、及びN,N’−ビス−(3−アミノ−1−エチルプロピル)−2−メチル−1,5−ペンタンジアミン。
【0029】
別の態様において、式(VIII)のアミンとして適切なものは、1つのみの脂肪族アミノ基を有するアミンであり、特に以下のものである:
− 第一級及び第二アミノ基を有するポリアミン、例えば、特にN−メチル−1,2−エタンジアミン、N−エチル−1,2−エタンジアミン、N−ブチル−1,2−エタンジアミン、N−ヘキシル−−1,2−エタンジアミン、N−(2−エチルヘキシル)−1,2−エタンジアミン、N−シクロヘキシル−1,2−エタンジアミン、4−アミノメチルピペリジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−ブチル−1,3−プロパンジアミン、N−(2−エチルヘキシル)−1,3−プロパンジアミン、N−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、3−メチルアミノ−1−ペンチルアミン、3−エチルアミノ−1−ペンチルアミン、3−シクロヘキシル−1−ペンチルアミン、脂肪族ジアミン、例えばN−ココアルキル−1,3−プロパンジアミン、及びモル比1:1で反応させた第一級脂肪族ジアミンと、アクリロニトリル、マレイン酸もしくはフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、アクリル酸及びメタクリル酸アミド、イタコン酸ジエステルとのマイケル型付加反応からの生成物、及びベンズアルデヒド又は他のアルデヒド若しくはケトンを用いた第一級脂肪族ポリアミンの部分的還元アルキル化からの生成物、そしてGaskamine(商標)240 (Mitsubishi Gas Chemical (MGC))等の部分的スチロール化ポリアミン;
【0030】
− 芳香族ポリアミン、例えば、特にm−及びp−フェニレンジアミン、4,4’−、2,4’、及び2,2’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、2,4−及び2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,4−及び−2,6−トルイレンジアミンの混合物(AlbemarleからEthacure(商標)300として入手可能)、3,5−ジエチル−2,4−及び−2,6−トルイレンジアミン(DETDA)の混合物、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−DEA)、3,3’,5,5’−テトラエチル−2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−CDEA)、3,3’−ジイソプロピル−5,5’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−MIPA)、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(M−DIPA)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、4−アミノ−N−(4−アミノフェニル)ベンゼンスルホンアミド、5,5’−メチレンジアントラニル酸、ジメチル−(5,5’−メチレンジアントラニレート)、1,3−プロピレン−ビス−(4−アミノベンゾエート)、1,4−ブチレン−ビス−(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ビス−(4−アミノベンゾエート)(Air ProductsからVersalink(商標)として入手可能)、1,2−ビス−(2−アミノフェニルチオ)エタン、2−メチルプロピル−(4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート)及びtert−ブチル−(4−クロロ−3,5−ジアミノベンゾエート);
【0031】
− アミン/エポキシド付加物、特にアミンとジエポキシドのモル比が少なくとも2/1、特に2/1〜6/1のモル比の、ジエポキシドを有する上記アミンの付加物、及びアミンとエピクロロヒドリンからの反応生成物、特に、Gaskamine(商標)328(Mitsubishi Gas Chemicalから)として市販されている1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンの反応生成物;
【0032】
− 1価又は多価カルボン酸、又はそのエステルもしくは無水物、特にダイマー脂肪酸、の反応生成物を構成するポリアミドアミン、及び化学量論量過剰で使用される脂肪族、脂環式、又は芳香族ポリアミン、特に、DETAもしくはTETAなどのポリアルキルアミン、特に、市販されているポリアミドアミンである Versamid(商標)100, 125、140、及び150(Cognisから)、Aradur(商標)223、250、及び 848(Huntsmanから)、Euretek(商標)3607、及び 530(Huntsmanから)、及び Beckopox(商標)EH 651、EH 654、EH 655、EH 661、及びEH 663(Cytecから);
【0033】
− フェノール、特にカルダノール、ノニルフェノール、又はtert−ブチルフェノールと、アルデヒド、特にホルムアルデヒド、とのマンニッヒ反応の反応生成物を構成する、フェナルカミンとしても知られているマンニッヒ塩基、及びポリアミン、特に市販のマンニッヒ塩基 Cardolite(商標)NC−541、NC−557、NC−558、NC−566、Lite 2001、及び Lite 2002(Cardoliteから)、Aradur(商標)3440、3441、3442、及び 3460(Huntsmanから)、及び Beckopox(商標)EH 614、EH 621、EH 624、EH 628、及び EH 629(Cytecから)。
【0034】
ポリアミンAとして好ましい選択は、次の群からなるポリアミンである:
1,3−ペンタンジアミン(DAMP)、 1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD) 、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン(C11−ネオジアミン)、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、1,12−ドデカンジアミン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(H
12−MDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA) 、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス−(アミノメチル)ベンゼネル(MXDA)、ビスヘキサメチレントリアミン(BHMT)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、及び直鎖ポリエチレンアミンのさらに高級の同族体、例えば5〜7のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(HEPA)、ジプロピレントリアミン(DPTA)、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン(N3−アミン)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン(N4−アミン)、200〜500g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジアミン及びポリオキシアルキレントリアミン、特にJeffamine(商標) D−230、Jeffamine D−400、及びJeffamine T−403、ポリアミドアミン、フェナルカミン、第一級アミノ基を部分的に又は完全にアルキル化した上記のポリアミンの化合物、並びに上記のポリアミンとエポキシド及びエポキシ樹脂との付加物。
【0035】
これらの好ましいポリアミンAは、エポキシ樹脂と特に適合性が高く、かつ非常に良好な品質のフィルムを与える。
【0036】
特に好ましいポリアミンAは、少なくとも1つの第二級アミノ基を有するポリアミン、特にフェナルカミン、ポリアミンとエポキシド及びエポキシ樹脂との付加物、並びに第一級ポリアミンの少なくとも1つの第一級アミノ基がアルキル化されているもの、特にスチロール化1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン及びベンジル化ポリアルキレンアミンである。これらの好ましいポリアミンAは、湿度が高くかつ低温の条件であっても、殆ど白化現象を与える傾向がなく、特に高い品質のフィルムをエポキシ樹脂と共に生成する。しかし、これらのアミンの多くは、高い粘度を有しており、希釈しない場合には、エポキシ樹脂コーティングとして不適切な作業性のみを有することになる。組み込みできないシンナーを用いなくても、白化する傾向が殆どなく、かつ高い硬度と低い脆さとを併せ持つフィルムに硬化させる、低粘度硬化剤を与えることができるので、低排出性コーティングに関して、式(I)のアミンとのこれらの組合せは特に有利である。
【0037】
上記のポリアミンを複数含む混合物も、ポリアミンAとして特に有用である。
【0038】
高い粘度を有し、このために作業性が悪く、かつ/又は過度に高い脆さを有するエポキシ樹脂を用いたコーティングとしてそれ自体に良好な特性を有するポリアミンは、最も好ましいが、これは高品質コーティングの要求に合うように、組み込みできないシンナー、例えばベンジルアルコール、アルキルフェノール、スチロール化フェノール、又は炭化水素の樹脂と組み合わされるであろう。しかし、低排出系が求められる用途に関しては、このような組み込みできないシンナーを含む組成物は、不適切である。しかしながら、硬化によって樹脂マトリックスに完全に組み込まれる式(I)のアミンによって、硬化後の排出は起こらない。
【0039】
硬化剤が、式(I)のアミンに加えて、ポリアミンAも含む場合、エポキシ基に対して反応性である式(I)のアミンのアミン水素の数と、エポキシ基に対して反応性であるポリアミンAのアミン水素の数との比は、通常0.05〜5の範囲であり、特に0.05〜2である。このような硬化剤は、低い粘度を有し、かつエポキシ樹脂を低い脆さで硬化させ、かつ幅広く硬度を調節できる。式(I)のアミンを比較的多い量で用いた場合に中程度の硬度となり、式(I)のアミンを比較的少ない量で用いた場合に高い硬度となる。
この比は、0.1〜1の範囲であることが特に好ましい。このような硬化剤は、低い粘度を与え、かつエポキシ樹脂との急速な硬化によって高い硬度及び低い脆さのフィルムを形成する点で優れている。
【0040】
上記の硬化剤のうち、式(I)のアミンとポリアミンAとの重量比は、好ましくは0.2〜2の範囲であり、特に0.4〜1.5の範囲である。このような硬化剤は、低い粘度を与え、かつエポキシ樹脂との速い硬化によって形成する点で優れている。
【0041】
本発明の硬化剤は、式(I)のアミンに加えて、少なくとも1種の促進剤を含むことができる。
【0042】
促進剤として適しているものは、アミノ基とエポキシ基の間の反応を促進する物質、特に酸又は加水分解して酸にすることができる化合物、特に有機酸、例えば酢酸、安息香酸、サリチル酸、2−ニトロ安息香酸、乳酸、有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又は4−ドデシルベンゼンスルホン酸、スルホン酸エステル、他の有機酸又は無機酸、例えば、特にリン酸、又は上記の酸及び酸エステルの混合物;さらに第三級アミン、例えば、特に1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、イミダゾール、例えば、特にN−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、又は1,2−ジメチルイミダゾール、このような第三級アミンの塩、第四級アンモニウム塩、例えば、特にベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アミジン、例えば、特に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、グアニジン、例えば、特に1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、フェノール、特にビスフェノール、フェノール樹脂、マンニッヒ塩基、例えば、特に2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノール、及びフェノールのポリマー、ホルムアルデヒド、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ホスファイト、ならびにメルカプト基を有する化合物、例えば既に記載されているものである。
【0043】
好ましい促進剤は、サリチル酸及び2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0044】
本発明の硬化剤はさらに、少なくとも1種の組み込みできないシンナー、例えば、特にキシレン、2−メトキシエタノール、ジメトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチリルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、N−メチルピロリドン、ジフェニルメタン、ジイソプロピルナフタリン、石油留分、例えばSolvesso(商標)タイプ(Exxonから)、アルキルフェノール、例えばtert−ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、及び8,11,14−ペンタデカトリエニルフェノール(カシューナッツ殻油からのCardanol、例えばCardolite Corp., USAから Cardolite NC−700として入手可能)、スチレン化フェノール、ビスフェノール、芳香族炭化水素樹脂、特にフェノール基を含むタイプ、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、安息香酸塩、有機リン酸及びスルホン酸エステル、及びスルホンアミドを含むことができる。好ましいのは、ベンジルアルコール、ドデシルフェノール、tert−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、及びフェノール基を含む芳香族炭化水素樹脂、特にNovares(商標)タイプLS500、LX200、LA300(Ruetgersから)LA700である。
【0045】
好ましくは硬化剤は、組み込みできないシンナーをほとんど又は全く含まず、特に好ましくは、25wt%未満、特に10wt%未満、最も好ましくは5wt%未満である。特に、組み込みできないシンナーは硬化剤に添加される。
【0046】
さらに、記載の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化に適した他の化合物、特に以下の化合物を含むことができる:
− モノアミン、例えば、特にベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、2−メトキシフェニルエチルアミン、4−メトキシフェニルエチルアミン、3,4−ジメトキシフェニルエチルアミン(ホモベラトリルアミン)、1−及び2−ブチルアミン、イソブチルアミン、tert−ブチルアミン、3−メチル−2−ブチルアミン、1−ヘキシルアミン、1−オクチルアミン、2−エチル−1−ヘキシルアミン、2−メトキシメトキシ−1−エチルアミン、2−エトキシ−1−エチルアミン、3−メトキシ−1−プロピルアミン、3−エトキシ−1−プロピルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、3−(2−メトキシエトキシ)プロピルアミン;
【0047】
− 第二級脂肪族ポリアミン、例えば、特にN,N’−ジブチル−エチレンジアミン、N,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、1−(1−メチル−アミノ)−3−(1−メチルエチル−アミノメチル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(HuntsmanからのJefflink(商標)754)、N
4−シクロヘキシル−2−メチル−N
2−(2−メチルプロピル)−2,4−ペンタンジアミン、N,N’−ジアルキル−1,3−キシレンジアミン、ビス−(4−(N−3−ブチルアミノ)−シクロヘキシル)−メタン(UOPからのClearlink(商標)1000)、N−アルキル化ポリエーテルアミン、例えばJeffamine(商標)タイプSD−231、SD−401、ST−404、及びSD−2001(Huntsmanから)、第一級脂肪族ポリアミンとマイケルアクセプター(例えばアクリロニトリル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、桂皮酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、ビニルホスホン酸ジエステル、ビニルスルホン酸アリールエステル、ビニルスルホン、ビニルニトリル、1−ニトロエチレン)とのマイケル型付加反応からの生成物、又はクネベナーゲル縮合(Knoevenagel condensation)生成物、例えばマロン酸ジエステル、及びアルデヒド(例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、又はベンズアルデヒド)からのものの、及びGaskamine(商標)240 (Mitsubishi Gas Chemicalから) のような市販の第二級脂肪族ポリアミン;
【0048】
− 液体メルカプタン末端ポリスルフィドポリマー、商品名Thiokol(商標)(Morton Thiokolから;例えば、SPI Supplies 又はToray Fine Chemicalsから入手可能)で知られているもの、特にタイプ LP−3、LP−33、LP−980、LP−23、LP−55、LP−56、LP−12、LP−31、LP−32、及びLP−2;ならびに、商品名Thioplast(商標)(Akzo Nobelから)で知られているもの、特にタイプ G10、G112、G131、G1、G12、G21、G22、G44、及びG4;
【0049】
− メルカプタン末端ポリオキシアルキレンエーテル、例えばポリオキシアルキレンジ−及びトリチオールと、エピクロロヒドリン又はアルキレンオキシドとの反応、次に硫化水素ナトリウムとの反応により入手可能;
【0050】
− ポリオキシアルキレン誘導体の形のメルカプタン末端化合物、商品名Capcure(商標)(Cognisから)で知られているもの、特にタイプWR−8、LOF、及び3−800;
【0051】
− チオカルボン酸のポリエステル、例えばペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトアセテート、ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオネート)、及びグリコールジ−(3−メルカプトプロピオネート)、ならびに、ポリオキシアルキレンジオール及びトリオール、エトキシ化トリメチロールプロペイン及びポリエステルジオールと、チオグリコール酸、及び2−又は3−メルカプトプロピオン酸とのエステル化生成物;
【0052】
− メルカプト基を有する他の化合物、例えば、特に2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、2,2’−(エチレンジオキシ)−ジエタンチオール(トリエチレングリコールジメルカプタン)、及びエタンジチオール。
【0053】
本発明の別の主題は、
a)少なくとも1種のエポキシ樹脂と、
b)上述の式(I)のアミンを含む少なくとも1種の硬化剤と、
を含有するエポキシ樹脂組成物である。
【0054】
エポキシ樹脂として、通常の工業的エポキシ樹脂が適している。これらは公知の方法により、例えば、対応するオレフィンの酸化から、又はエピクロロヒドリンと対応するポリオール、ポリフェノール、もしくはアミンとの反応から得られる。
【0055】
エポキシ樹脂として特に好適なものは、いわゆるポリエポキシド液体樹脂(以後「液体樹脂」と呼ぶ)である。これらは、25℃より高いガラス転移温度を有するいわゆる固体樹脂とは異なり、通常25℃未満のガラス転移温度を有し、粉砕して25℃以下で注ぎ込むことができる粉末にすることができる。
【0056】
ある態様において、液体樹脂は芳香族ポリエポキシドである。これに適しているのは、例えば式(II)の液体樹脂である。
【化3】
[式中、R”及びR”’は、互いに独立に、水素原子、又はメチル基を表し、sは平均して0〜1の値を表す]。
好ましいのは、指数sが平均して0.2未満の値を表す式(II)のそのような液体樹脂である。
【0057】
式(II)の液体樹脂は、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、及びビスフェノール−A/Fのジグリシジルエーテルであり、ここで、Aはアセトンを表し、Fはホルムアルデヒドを表し、これらは、これらのビスフェノールの製造のための抽出物として機能する。したがって、式(II)中のR”及びR”’として、ビスフェノール−A液体樹脂はメチル基を有し、ビスフェノール−F液体樹脂は水素原子を有し、ビスフェノール−A/F液体樹脂はメチル基と水素原子の両方を有する。ビスフェノール−Fの場合、位置異性体も存在することができ、特に2,4’−及び2,2’−ヒドロキシフェニルメタン由来のものがある。
【0058】
他の好適な芳香族液体樹脂は、以下のグリシジル化生成物である:
【0059】
− ジヒドロキシベンゼン誘導体、例えばレゾルシン、ハイドロキノン、及びピロカテコール;
− 他のビスフェノール又はポリフェノール、例えばビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−メタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン(ビスフェノール−C)、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン(ビスフェノールB)、3,3−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン)(ビスフェノールP)、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン)(ビスフェノールM)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルフェニル(DOD)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(2−ヒドロキシナフト−1−イル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシナフト−1−イル)−メタン、1,5−ジヒドロキシナフタリン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;
【0060】
− 酸性条件下で得られるフェノールとホルムアルデヒドとの縮合生成物、例えば、フェノールNovolaks又はクレゾールNovolaks(ビスフェノール−F Novolaksとしても知られている);
【0061】
− 芳香族アミン、例えばアニリン、トルイジン、4−アミノフェノール、4,4’−メチレンジフェニルジアミン(MDA)、4,4’−メチレンジフェニルジ−(N−メチル)−アミン、4,4’−1−[1,4−フェニルナフタレン−ビス−(1−メチルエチリデン)]−ビスアニリン(ビスアニリン−P)、4,4’−[1,3−フェニレン−ビス−(1−メチルエチリデン)]−ビスアニリン(ビスアニリン−M)。
【0062】
またエポキシ樹脂として適しているのは、脂肪族又は脂環式ポリエポキシドであり、例えば以下である:
− 飽和又は不飽和の、分枝状又は非分枝の、環状又は開鎖した、C
2−〜C
30−ジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、又はジブロモネオペンチルグリコールのグリシジルエーテル;
【0063】
− 3官能性又は4官能性の飽和又は不飽和の、分枝状又は非分枝の、環状又は開鎖したポリオール、例えば、リシン油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、ソルビトール、又はグリセリン、ならびにアルコキシル化グリセリン、又はアルコキシル化トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル;
【0064】
− 水素化ビスフェノール−A、−F、又は−A/F液体樹脂、又は水素化ビスフェノール−A、−F、又は−A/Fのグリシジル化生成物;
【0065】
− アミド又はヘテロ環状窒素塩基のN−グリシジル誘導体、例えばトリグリシジルグリシアヌレート及びトリグリシジルイソシアヌレート、ならびにエピクロロヒドリンとヒダントインの反応生成物。
【0066】
また、エポキシ樹脂として可能のものは、ビスフェノール−A、−F、又は−A/F固体樹脂であり、これは、既に記載した式(V)の液体樹脂と同様の構造であるが、指数sの代わりに2〜12の値を有し、25℃を超えるガラス転移温度を有する。
最後に、エポキシ樹脂として適しているのは、オレフィンの酸化からのエポキシ樹脂であり、例えば、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロドデカジエジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、ブタジエン、ポリブタジエン、又はジビニルベンゼンの酸化からのものである。
【0067】
エポキシ樹脂として好適なものは、ビスフェノールに基づく液体樹脂であり、特に、例えばDow、Huntsman、及びHexionから市販されているようなビスフェノール−A、−F、又は−A/Fに基づくものである。これらの液体樹脂は、エポキシ樹脂の低粘度と硬化状態のコーティングとして良好な特性を有する。これらは、任意に、ビスフェノールA固体樹脂又はビスフェノール−F Novolakエポキシ樹脂と一緒に存在することができる。
【0068】
エポキシ樹脂は、反応性シンナー、特に少なくとも1つのエポキシ基を有する反応性シンナーを含むことができる。反応性シンナーとして好適なものは、例えば一価又は多価フェノール及び脂肪族又は脂環式アルコールのグリシジルエーテルであり、特に、既に述べたジオール又はポリオールのポリグリシジルエーテル、及びまた、特にフェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、p−n−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチル−フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ならびに天然アルコールのグリシジルエーテル、例えばC
8〜C
10−アルキルグリシジルエーテル、又はC
12〜C
14−アルキルグリシジルエーテルである。エポキシ樹脂に反応性シンナーを加えると、粘度の減少、及び、硬化状態のエポキシ樹脂組成物では、ガラス転移温度及び機械値の低下をもたらす。
【0069】
エポキシ樹脂組成物は、任意に他の成分、特に、例えば以下のような、通常のエポキシ樹脂組成物に用いられる補助剤及び添加剤を含有する:
− 溶剤、シンナー、成膜助剤、又は増量剤、例えば既に述べた組み込み不可能なシンナー;
【0070】
− 反応性シンナー、特にエポキシ基を有する反応性シンナー、例えば、既に記載したエポキシ化大豆油又は亜麻仁油、アセトアセテート基を有する化合物、特にアセトアセチル化ポリオール、ブチロラクトン、カーボネート、アルデヒド、及びまた反応性基を有するイソシアネート及びシリコーン;
【0071】
− ポリマー、例えばポリアミド、ポリスルフィド、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PUR)、カルボキシル基を有するポリマー、ポリアミド、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、不飽和モノマーのホモポリマー又は共重合体、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル及びアルキル(メタ)アクリレートを含む基からのもの、特にクロロスルホン化ポリエチレン、及びフッ素含有ポリマー、スルホンアミド変性メラミン、及び精製Montanワックス;
【0072】
− 無機及び有機充填剤、例えば粉末又は沈降炭酸カルシウムであり、これは任意に、脂肪酸、特にステアレート、バライト(重晶石)、タルク、石英粉末、石英砂、雲母鉄鉱石、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、雲母(ケイ酸アルミニウムカリウム)、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸、セメント、石膏、フライアッシュ、煤、黒鉛、金属粉末、例えばアルミニウム、銅、鉄、亜鉛、銀、又は鋼、PVC粉末、又は中空球で被覆される;
【0073】
− 繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、又はプラスチック繊維、例えばポリアミド繊維もしくはポリエチレン繊維;
【0074】
− 顔料、例えば二酸化チタン及び酸化鉄;
【0076】
− 特定の増粘剤中のようなレオロジー調整剤、例えばベントナイトなどの層状ケイ酸塩、リシン油誘導体、水素化リシン油、ポリアミド、ポリウレタン、尿素化合物、熱分解法ケイ酸、セルロースエーテル、及び疎水的に改質されたポリオキシエチレン;
【0077】
− 接着促進剤、例えばアミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリロシラン、イソシアナトシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、S−(アルキルカルボニル)−メルカプトシラン、及びアルジミノシランなどの有機アルコキシシラン、ならびにこれらのシランのオリゴマー型、特に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N’−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、又はメトキシ基の代わりにエトキシ基を有する対応する有機シラン;
【0078】
− 酸化、熱、光、及びUV照射に対する安定剤;
【0079】
− 難燃剤、特に、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3;「アルミニウム3水和物」のATHとしても知られる)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2;「マグネシウム2水和物」のMDHとも呼ばれる)、硫酸アンモニウム((NH
4)
2SO
4)、ホウ酸(B(OH)
3)、ホウ酸亜鉛、リン酸亜鉛、ホウ酸メラミン、及びシアヌレートのような化合物;リン含有化合物、例えばリン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)、ピロリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリオクチルホスフェート、モノ−、ビス−及びトリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールジホスフェートオリゴマー、テトラフェニル−レゾルシノール−ジホスフェート、エチレンジアミンジホスフェート、及びビスフェノール−A−ビス(ジフェニルホスフェート);ハロゲン含有化合物、例えばクロロアルキルホスフェート、特にトリス−(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス−(ジクロロイソプロピル)ホスフェート、ポリ臭素化ジフェニルエーテル、特にデカブロモジフェニルエーテル、ポリ臭素化ジフェニルオキシド、トリス−[3−ブロモ−2,2−ビス(ブロモメチル)プロピル]ホスフェート、テトラブロモ−ビスフェノールA、ビスフェノールAのビス−(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、臭素化エポキシ樹脂、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレン−ビス(ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド)、1,2−ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン、及びクロロパラフィン、ならびにハロゲン含有化合物と3酸化アンチモン(Sb
2O
3)又は五酸化アンチモン(Sb
2O
5)の組み合わせ;
【0080】
− 界面活性剤、例えば、特に架橋剤、レベリング剤、脱気剤、又は消泡剤;
【0081】
− 殺生物剤、例えば殺藻剤、殺菌剤すなわち真菌の増殖を阻害する物質。
【0082】
好ましくは、エポキシ樹脂組成物はさらに、補助剤及び添加剤、特に架橋剤、レベリング剤、消泡剤、安定剤、顔料及び触媒、特にサリチル酸又は2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノールを含有する。
【0083】
好ましくは、エポキシ樹脂組成物は、組み込みできないシンナーをほとんど又は全く含まず、特に好ましくは、10wt%未満、特に5wt%未満、最も好ましくは2wt%未満である。
【0084】
エポキシ樹脂組成物において、エポキシ基に反応性の基の数とエポキシ基の数の比は、0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.2の範囲にある。
【0085】
エポキシ樹脂組成物中に存在するアミン水素、及びエポキシ基に対して反応性で存在する任意の他の基は、その環が開放する時、エポキシ基と反応する(付加反応)。これらの反応の結果として、組成物は重合し、最終的に硬化する。当業者は、第一級アミノ基がエポキシ基に対して2官能性であり、したがって、第一級アミノ基がエポキシ基に対して反応性である2つの基と見なされることを承知している。
【0086】
特に、エポキシ樹脂組成物は、
(i)少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有する樹脂成分と、
(ii)上記の式(I)のアミンを含む硬化剤を含有する硬化剤成分と、
からなる2成分組成物である。
【0087】
2成分組成物の成分は、各々独自の容器内に保管される。樹脂の成分又は硬化剤成分の成分として、2成分エポキシ樹脂組成物の他の成分が存在することができるが、エポキシ基に対して反応性である他の成分は、好ましくは硬化剤成分の成分である。樹脂や硬化剤成分の貯蔵に適した容器は、特にドラム、ホボック(hobbock)、バッグ、バケツ、缶、カートリッジ、又はチューブである。成分は貯蔵可能であり、つまりこれらは、これらの使用について、関連する特性を大きく変化させることなく、使用するまで数ヶ月〜1年以上保管することができる。
【0088】
2成分エポキシ樹脂組成物を使用するために、樹脂成分と硬化剤成分は、適用の少し前又は適用中に混合される。2つの成分の混合比は、好ましくはエポキシ基に反応性である硬化剤成分の基が、上記したように、樹脂成分のエポキシ基に対して適切であるように選択される。重量部で、樹脂成分と硬化剤成分との混合比は通常1:10〜10:1の範囲である。
【0089】
2つの成分の混合は、適切な方法を使用して行われる。これは、連続的に又はバッチ式に行うことができる。混合が適用の前に行われる場合は、成分の混合と適用の間にあまり長い時間が経過すると、基材へのゆっくりした又は不完全な接着などの乱れを生じるため、あまり長い時間が経過しないように注意しなければならない。混合は、特に周囲温度で行われ、これは典型的には約5〜50℃の範囲、好ましくは約10〜30℃の範囲である。
【0090】
2つの成分の混合では、上記したように、化学反応により硬化が始まる。硬化は、特に周囲温度で起き、これは典型的には約5〜50℃の範囲、好ましくは約10〜30℃の範囲である。これは、与えられる条件下でほとんど完了するまで、典型的には数日〜数週間まで延長される。この持続は、特に温度、成分の反応性、及びこれらの化学量論、ならびに促進剤の存在に依存する。
【0091】
したがって、本発明の別の主題はまた、本明細書に記載されるように、エポキシ樹脂組成物の硬化から得られる硬化組成物である。
【0092】
エポキシ樹脂組成物の適用は、少なくとも1種の基材に行われ、以下のものが特に適している:
− ガラス、ガラスセラミックス、コンクリート、モルタル、レンガ、タイル、石膏、自然石、例えば花崗岩や大理石;
【0093】
− 金属及び合金、例えばアルミニウム、鉄、鉄鋼、非鉄金属、ならびに表面処理された金属、及び合金、例えば亜鉛メッキやクロムメッキ金属;
【0094】
− 皮革、繊維、紙、木材、樹脂と結合された木質材料、例えばフェノール、メラミン、又はエポキシ樹脂、樹脂−繊維複合材料及び他のいわゆるポリマー複合体;
【0095】
− プラスチック、例えばポリ塩化ビニル(硬質及び軟質PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPM)、及びエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、ここで、プラスチックは、プラズマ、コロナ又は火炎により表面処理することができる;
【0096】
− 繊維強化プラスチック、例えば炭素繊維強化プラスチック(CFK)、ガラス繊維強化プラスチック(GFK)、及びシート成形化合物(SMC);
【0097】
− コーティングされた基材、例えば粉体塗装金属又は合金;
【0098】
− 塗料やワニス、特に自動車の仕上げ。
【0099】
必要であれば、基材は、エポキシ樹脂組成物の適用前に前処理することができる。このような前処理は、物理的及び/又は化学的洗浄方法、例えば研磨、サンドブラスト、ショットピーニング、ブラッシングなどを含み、ここで、結果として得られるゴミは、有利には吸引除去され、また洗浄剤や溶剤とのさらなる処理、又は接着促進剤、接着促進溶液、もしくはプライマーの適用によるさらなる処理を含む。
【0100】
記載のエポキシ樹脂組成物は、繊維複合体、鋳造用化合物、シーラント、接着剤、床仕上げ材、コーティング、塗料、ワニス、シール、アンダーコート、プライマー、発泡体、ブロック、エラストマー、繊維、フィルム又は膜として有利に使用可能である。
【0101】
特に、これは、鋳造用化合物、シーラント、及び接着剤として、例えば、電気鋳造用化合物、シーリングコンパウンド、サーフェーサー、目地材、接着剤、シャーシ接着剤、サンドイッチ素子接着剤、半シェル接着剤として、例えば風力発電所のロータブレード、ブリッジ要素接着剤、積層接着剤、又は固着接着剤用に、及び、特に床材、コーティング、塗料、ワニス、シール、アンダーコート、及びプライマーとして、建築及び産業用途に、特に床材及び床コーティングとして、オフィス、工業用ベイ、体育館や冷蔵室などのインテリアルーム用に、又は屋外バルコニー、パティオ、駐車場の屋根、橋や屋根用に、コンクリート、セメント、金属又はプラスチックの保護コーティングとして、例えば、積載エリア、タンク、サイロ、シャフト、パイプライン、機械又は鋼鉄製の構造物、例えば、船舶、桟橋、海上プラットフォーム、水門、水力発電所、水路、スイミングプール、風力発電所、橋梁、煙突、クレーン、又はシートパイルなどの表面のシール保護コーティングとして使用することができ、ここで、これらのコーティングは、特に腐食、磨耗、湿気、水及び/又は塩もしくは化学物質の影響に対して、またアンダーコート、プライマー、防食被膜として、又は表面は防水性にするために、特定の基材を保護する。記載された組成物はまた、水を中心に、特に海水を中心に、いわゆる高い腐食性に対する防護のためのコーティングとして特に適している。特に、完全に又は部分的に硬化したエポキシ樹脂組成物が、コーティング、カバーリング、ペイントコートとして使用されている時、別のコーティング、別のカバーリング又は別のペイントコートを適用することが可能であり、この追加の層は、エポキシ樹脂組成物であるか、又は、異なる材料、特にポリウレタン又はポリ尿素コーティングであってもよい。
【0102】
記載のエポキシ樹脂組成物は、コーティングとして特に有利に使用可能である。コーティングとは、シートに適用される任意の種類の層、特に上記したように、ペイントコート、ワニス、シーラント、アンダーコート、及びプライマーを意味する。記載されたエポキシ樹脂組成物は、特にEmicode(EC1 Plus)、AgBB、DIBT、Del Blaue Engel、AFSSET、RTS(M1)、及び米国グリーンビルディング協会(US Green Building Council)(LEED )などのエコ認可シール(Eco Seal of Approval)を用いる低排出システムで特に有利に使用可能である)。
したがって本発明の更なる主題は、コーティングとしての記載のエポキシ樹脂組成物の使用である。
【0103】
コーティングとして、エポキシ樹脂組成物は、それが低粘度で良好な拡散特性を有する一貫性がある流体のコーティング法で有利に使用され、特に、多くの種類の表面への自己拡散コーティングとして又はペイントコートとして適用することができる。好ましくは本明細書において、樹脂と硬化剤成分の混合直後にエポキシ樹脂組成物は、20℃で測定すると、300から2000mPa・s、の範囲、好ましくは300〜1500mPa・sの範囲、特に300〜1000mPa・sの範囲の粘度を有する。混合された組成物は、典型的には周囲温度で、基材上のシートで約50μm〜約5mmの層厚の薄膜として作業時間内に適用される。適用は、例えばコーティングされる基材上に注ぎ出すことで行われる。
【0104】
液状の組成物は、例えばヘラやコテの助けを借りて均一に広げられる。さらに、いったん広げられた組成物は、スパイクローラーで平準化して、気泡を除去することができる。しかし、適用はまた、例えば、鋼上の防食コーティング用に、ブラシやローラーを用いて手動で行うか、スプレー塗布として行うことができる。硬化により、通常、基材の最も多様なものに対して良好な接着性を有する高硬度と優れた抵抗性を有する、大体は明確な光沢のある非粘着性のフィルムが得られる。記載された硬化剤のおかげで、自発拡散型エポキシ樹脂コーティングは、組み込みできないシンナーがほとんど又は全く無しで利用でき、その第一級アミノ基の含有量は低く維持できるため、空気中の二酸化炭素とほとんど反応が起こらない。その結果、白化現象を促進する好ましくない反応条件(すなわち、特に5〜10℃の範囲の低硬化温度と高湿度)下でも、シート状適用について大体白化現象は無い。
【0105】
本発明のさらなる主題は、コーティングとして記載のエポキシ樹脂組成物を使用して得られる物品である。
【0106】
記載のエポキシ樹脂組成物は、多数の有利な特性によって区別される。これは、ほんのわずかな臭いを有するのみであり、室温で驚くほど流動性があり、したがって、特にシートで適用される場合は、追加のシンナー無しでも容易に作業することができる。これは、周囲温度で驚くほど迅速に硬化し、特に湿った低温条件下でも硬化し、白化現象が無く、そして硬化した状態では、驚くほど高い硬度と低い脆さを有する。したがって、これは機械的応力に耐えることができ、特に保護コーティング又は床防護として用いる場合に特に重要である。硬化フィルムは、典型的に曇りが無く、一様に光沢があり、穴のない、非粘着性表面を有する。式(I)のアミンに加えて、少なくとも1種のポリアミンAを含むエポキシ樹脂組成物は、特に有利な特性を有する。これらのエポキシ樹脂組成物は、驚くべき組合せの効果を示す:一方で、式(I)のアミンは、組成物に優れた希釈効果を与え、それにより成分の配合直後にこの組成物は低い粘度を有し、他方では、この組成物はすぐに硬化する。さらに式(I)のアミンは、白化現象の傾向を低下させ、かつこの組成物を最終的に、透明性、輝き、表面粘着性、高い硬度、及び低い脆さの点で優れた品質のフィルムに硬化させる。式(I)のアミンが第一級アミノ基を含まず、かつ2つの第二級アミノ基のみを有することに起因して、素早い硬化、高い硬度、及び非粘着性が特に驚くべき程度で達成できる。
【実施例】
【0107】
記載された本発明をより詳細に説明するために、以下に態様の例が提示される。もちろん本発明は、これらの態様の例に限定されるものではない。
【0108】
1.測定法の説明
アミン含量、すなわち製造された化合物中のアミノ基の総含有量は、滴定(氷酢酸中0.1NのHClO
4を用いて、クリスタルバイオレットに対して)により測定し、これを常にmmolN/gで示す。
【0109】
赤外吸収スペクトルは、未希釈のフィルムとして、ZnSe結晶を有する水平ATR測定ユニットを取り付けたPerkin−Elmer FT−IR 1600装置で測定した。吸収バンドを、端数(cm
−1)で示す(測定ウィンドウ:4000〜650cm
−1)。
【0110】
1H NMRスペクトルは、Bruker社のDPX−300型分光計で300.13 MHzで測定した。ケミカルシフトδを、テトラメチルシラン(TMS)に対するppmで示す。
【0111】
質量分析(FIMS)を、高精細質量分光法型のThermo Scientific LTQ Orbitrap XLで測定した。これは、メタノール中に溶解した500μlのサンプルを、10μl/分の注入速度で質量分析器に直接注入し、キャリア(メタノール中1mMのギ酸アンモニウム)の流速を500μl/分とし、検出をエレクトロスプレーイオン化で行うことにより測定した。
【0112】
粘度(η)を、20℃で、サーモスタット制御された円錐平板粘度計Rheotec RC30(コーン直径:50mm、コーン角度:1°、コーン先端からプレートまで距離:0.05mm、剪断速度10〜100s
−1)で測定した。
【0113】
2.使用した物質とその略語
EP−adduct 1:
116.0重量部の1,5−ジアミノ−2−メチル−ペンタンと、182重量部のAraldite(商標)DY−Kとの反応生成物;NH当量=99.3g/Eq;η=5830mPa・s
EP−adduct 2:
136.2重量部の1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンと、182重量部のAraldite(商標)DY−Kとの反応生成物;NH当量=106.1g/Eq;η=59490mPa・s
Gaskamine(商標) A−229(MGC)
1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンと、アクリロニトリルとの反応生成物;NH当量=102g/Eq;η=230mPa・s
Gaskamine(商標) A−240(MGC)
スチロール化1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン;NH当量=103g/Eq;η=165mPa・s
Gaskamine(商標) A−328(MGC)
1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンと、エピクロロヒドリンとの反応生成物;NH当量=55g/Eq;η=12720mPa・s
Polypox(商標)IH 7011(UPPC Dow)
変性ポリアミン、低排出EP系用の硬化剤;NH当量=82g/Eq;η=810mPa・s
Aradur(商標)3442(Huntsman)
フェナルカミン;NH当量=125g/Eq;η=10210mPa・s
Araldite(商標)DY−K(Huntsman)
クレゾールのモノグリシジルエーテル;EEW:約182g/Eq
Araldite(商標)GY 250(Huntsman)
ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル;エポキシ当量:約187.5g/Eq
Araldite(商標)DY−E(Huntsman)
C
12〜C
14アルコールのモノグリシジルエーテル;エポキシ当量:約290g/Eq
Ancamine(商標)K 54(Air Products)
2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノール
【0114】
3.アミンの調製
アミン1:N,N’−ジベンジル−m−キシリレンジアミン
丸底フラスコ中で、21.2gのベンズアルデヒドと13.6gの1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンを、窒素雰囲気下で充分量のイソプロパノールに溶解した。この溶液を室温で30分攪拌し、次に80barの水素圧、80℃の温度、及び3ml/分の流速で、連続操作水素化装置で、Pd/C固体床触媒を用いて水素化した。反応の制御のために、IRスペクトル法を使用して、約1665cm
−1のイミンバンドが消失したかどうかを調べた。次に溶液を真空中で80℃で濃縮した。20℃で230mPa・sの粘度を有し、アミン含量が6.41mmolN/gで、かつ(ガスクロマトグラフィによる測定で)純度が94.4%である透明な淡黄色のオイルが得られた。
【0115】
FT−IR:3024,2910,2810,1604,1494,1452,1108,1028,784,732,694。
1H−NMR(CDCl
3,300 K):δ7.4-7.1(m,14H,Ar−H),3.77(s,8H,CH
2),1.70(s,2H,NH)。
FIMS:m/z=317.20203([MH
+];C
22H
25N
2の理論質量:317.20123)。
【0116】
アミン2:N−ベンジル−3−(N−ベンジル)アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン
1つ目の例に記載した方法と同じ方法で、21.2gのベンズアルデヒドと、17.0gの1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミン)とを結合させた。20℃で590mPa・sの粘度を有し、アミン含量が5.82mmolN/gである無色透明のオイルが得られた。
【0117】
アミン3:N,N’−ジベンジル−2−メチルペンタン−1,5−ジアミン
1つ目の例に記載した方法と同じ方法で、21.2gのベンズアルデヒドと、11.6gの1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンを結合させた。20℃で420mPa・sの粘度を有し、アミン含量が6.67mmolN/gである透明な淡黄色のオイルが得られた。
【0118】
5.硬化剤の調製
例1〜5
各例に関して、従来技術による表1に示す硬化剤を、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標) DAC 150, FlackTek Inc.)を用いて、(重量部で)示した量でアミン1と混合した。1時間の混合後に、生じた硬化剤の粘度を測定した(アミン1のNH当量の数値と従来技術の硬化剤のNH当量の数値との間の比率は、各回0.33であった)。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例及び比較例の例6〜17
各例について、表2〜4に記載の成分を記載の量(重量部で)で遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC150,FlackTek Inc.)を用いて混合した。混合の10分後、毎回組成物の粘度を測定した(「粘度(10’)」)。さらに、毎回ガラスプレートの上に第1のフィルムを500μmの層厚に広げ、23±1℃と50±5%相対湿度(標準化気象、以後「NK」と省略する)で維持したか、又は硬化させた。4週間後、フィルムの外観を判定した(表中で「外観(NK)」として記載する)を判定した。フィルムが透明で、構造体が無く光沢があり粘着性が無い場合は、「良好」と判定した。「構造体」とは、表面上の何らかのマークや模様を意味する。さらに、フィルムのケーニッヒ(Koenig)硬度(ケーニッヒのねじれ硬度(pendulum hardness)、DIN EN ISO 1522に従って測定した)を、2日後(「ケーニッヒ硬度(NK)(2d)」)、4日後(「ケーニッヒ硬度(NK)(4d)」)、7日後(「ケーニッヒ硬度(NK)(7d)」)、及び4週間後(「ケーニッヒ硬度(NK)(4W)」)に測定した。さらに毎回、ガラスプレート上に第2のフィルムを層厚500μmに広げ、これを、適用直後に8℃で80%の相対湿度で7日間、次にNKで4週間維持したか、又は硬化させた。適用して24時間後に、ポリプロピレンのボトルキャップを、湿らせたスポンジをその下にして、フィルム上に置いた。さらに24時間後、スポンジとキャップを取り除き、フィルムの新たな別の場所に置いた。これを、24時間後に再び取り除き、新たな場所に置いて、合計4回行った。この後、これらのフィルムの外観を、外観(NK)について記載したものと同じ方法で判定した(表中で「外観(8°/80%)」として記載される)。各回で、湿らせたスポンジ及び/又はキャップによってできたフィルム中の目視できるマークの数も示す。変色又は曇りがマークの場所で発生した場合、これも示した。再度、これらの硬化したフィルムのケーニッヒ硬度を、毎回8℃で80%の相対湿度で7日間後(「ケーニッヒ硬度(8°/80%)(7d低温)」)、次にNKで2日間後(「ケーニッヒ硬度(8°/80%)(+2d NK)」)、そしてNKで7日間後(「ケーニッヒ硬度(8°/80%)(+7d NK)」)、またNKで4週間後(「ケーニッヒ硬度(8°/80%)(+4w NK)」)に測定した。標準化気象で硬化させた第1のフィルムでは、2ヶ月後に脆さの測定で、亀裂(Splinter)の傾向が判明した(表中、「亀裂傾向」と示す)。これは、約45°の傾きで押圧した千枚通しを用いてフィルムから削りくずを剥がすことによって行う。これが、亀裂してフィルムのかけらを生じなかった場合、亀裂傾向を「なし」と判断する。そうではない場合、削りくずを剥がすグレードの圧力の下でかけらをフィルムから容易に裂けるかどうかに応じて、「小さい」、「中程度」、「大きい」と判断する。
結果を、表2〜4に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】