(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚みが35μm未満である長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールから巻出しつつ搬送させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程と、
膨潤浴から引き出されたフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程と、をこの順に含み、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの巻出し工程における雰囲気の温度が23±5℃であり、前記雰囲気の相対湿度が20〜70%RHであり、
前記巻出し工程の所要時間が650秒以下であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが膨潤浴に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度が90°未満であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの間に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して乾燥処理を施す、偏光フィルムの製造方法。
厚みが65μm以下である長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールから巻出しつつ搬送させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程と、
膨潤浴から引き出されたフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程と、をこの順に含み、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの巻出し工程における雰囲気の温度が23±5℃であり、前記雰囲気の相対湿度が20〜70%RHであり、
前記巻出し工程の所要時間が750秒以下であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの間に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して乾燥処理を施し、 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが膨潤浴に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度が90°未満である、偏光フィルムの製造方法。
厚みが65μm以下である長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールから巻出しつつ搬送させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程と、
膨潤浴から引き出されたフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程と、をこの順に含み、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの巻出し工程における雰囲気の温度が23±5℃であり、前記雰囲気の相対湿度が20〜70%RHであり、
前記巻出し工程の所要時間が750秒以下であり、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの間に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して拡幅処理を施し、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが膨潤浴に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度が90°未満である、偏光フィルムの製造方法。
前記膨潤処理工程において、原反ロールより巻出した前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ガイドロール及びニップロールから選択される2以上のロールに沿って搬送させることより膨潤浴に浸漬させ、
前記2以上のロールに関し、隣り合うロール間の距離の最大値をL、隣り合うロール間の搬送に要する時間の最大値をTとするとき、Lが2m以下であるか、又はTが30秒以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<偏光フィルムの製造方法>
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000〜10000、好ましくは約1500〜5000程度である。
【0016】
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
【0017】
本発明では、偏光フィルム製造の開始材料として、厚みが65μm以下(例えば60μm以下)、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。原反フィルムが薄いほど、延伸処理時のフィルム破断を生じやすいが、本発明によれば、原反フィルムが薄い場合でもフィルム破断を効果的に抑制することができる。原反フィルムの厚みが65μmより厚い場合には、折れ込み(カール)に起因する延伸処理時のフィルム破断は問題とならないことが多い。原反フィルムは、事前に気相中で延伸処理が施されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムでもよい。
【0018】
原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400〜6000mm程度であることができるが、フィルム幅が大きいほど延伸処理時にフィルム破断を生じやすい傾向にある。
【0019】
本発明において原反フィルムは、長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。
【0020】
偏光フィルムは、上記の長尺の原反フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて所定の処理工程を実施することにより長尺の偏光フィルムとして連続製造することができる。所定の処理工程は、原反フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程、膨潤処理工程後のフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程、及び染色処理後のフィルムを架橋浴に浸漬させた後に引き出す架橋処理工程を含むことができる。また、これらの一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理を施す。必要に応じて、他の処理工程を付加してもよい。上記の各処理工程は、1つの浴にフィルムを浸漬させる処理であってもよいし、2以上の浴に順次浸漬させる処理であってもよい。
【0021】
以下、
図1を参照しながら、本発明に係る偏光フィルムの製造方法についてより詳細に説明する。
図1は、本発明に係る偏光フィルムの製造方法及びそれに用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示される偏光フィルム製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反(未延伸)フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴13、染色浴15、架橋浴17、及び洗浄浴19を順次通過させ、最後に乾燥炉21を通過させるように構成されている。得られた偏光フィルム23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。
図1における矢印は、フィルムを搬送方向を示している。
【0022】
なお
図1は、膨潤浴13、染色浴15、架橋浴17及び洗浄浴19をそれぞれ1槽ずつ設けた例を示しているが、必要に応じて、いずれか1以上の処理浴(膨潤浴13、染色浴15、架橋浴17及び洗浄浴19のような、フィルム搬送経路上に設けられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して処理を施す処理液を収容する浴を総称して「処理浴」ともいう。)を2槽以上設けてもよい。
【0023】
偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、搬送されるフィルムを支持する、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるガイドロール30〜41,60,61や、搬送されるフィルムを押圧・挟持し、その回転による駆動力をフィルムに与えることができる、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるニップロール50〜55を適宜の位置に配置することによって構築することができる。ガイドロールやニップロールは、各処理浴の前後や処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入・浸漬及び処理浴からの引き出しを行うことができる〔
図1参照〕。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理浴にフィルムを浸漬させることができる。
【0024】
図1に示される偏光フィルム製造装置は、各処理浴の前後にニップロールが配置されており(ニップロール50〜54)、これにより、いずれか1以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能になっている。以下、各処理工程について説明する。
【0025】
(膨潤処理)
膨潤処理は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
【0026】
図1を参照して、膨潤処理は、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原反フィルム10を膨潤浴13(膨潤槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
図1の例において、原反フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原反フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30〜32によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
【0027】
膨潤浴13には、純水のほか、ホウ酸(特開平10−153709号公報)、塩化物(特開平06−281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01〜10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
【0028】
膨潤浴13の温度は、例えば10〜50℃程度、好ましくは10〜40℃程度、より好ましくは15〜30℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10〜300秒程度、より好ましくは20〜200秒程度である。また、原反フィルム10が予め気体中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、膨潤浴13の温度は、例えば20〜70℃程度、好ましくは30〜60℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは30〜300秒程度、より好ましくは60〜240秒程度である。
【0029】
本発明では、原反フィルム10が膨潤浴13に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度を90°未満とする。原反ロール11から巻出された原反フィルム10には通常、その幅方向両端部の少なくとも一方(より典型的には幅方向両端部の双方)が反った(浮いた)状態となったり、あるいは反りがさらに大きくなって幅方向両端が幅方向中央部の方へ反り返った状態になったりするカールが生じているところ、原反フィルム10が膨潤浴13に浸漬するときのカール角度が90°未満であることにより、延伸処理時におけるフィルム破断を抑制することができる。フィルム破断をより効果的に抑制するために、フィルム幅方向両端部の双方のカール角度が90°未満であることが好ましい。また同様の理由で、フィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度は、好ましくは80°以下であり、より好ましくは75°未満である。原反ロール11から巻き出された直後から膨潤浴13に浸漬するまでを通じてフィルム幅方向両端部の双方のカール角度を90°未満とすることがより好ましい。
【0030】
図2は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムがカールする様子及びそのカール角度を模式的に示すフィルム断面図である。
図2は、フィルム幅方向両端部の双方がカールしている例であり、
図2(a)はカール角度が45°の場合、
図2(b)はカール角度が90°の場合、
図2(c)はカール角度が150°の場合を示している。
図2に示されるように、カール角度がα°であるとは、カールしていないフィルム面の外挿面に対して、カールしているフィルム部分の末端がα°をなす方向に向いていることをいう。連続的に膨潤浴13へ浸漬される原反フィルム10の幅方向両端部のカール角度は、実施例の項に記載する方法によって測定することができる。
【0031】
原反フィルム10が膨潤浴13に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方(好ましくは双方)におけるカール角度を90°未満とするために、例えば次のような手段を講じることが好ましい。下記の手段は、1つのみを採用してもよいし、2以上を組み合わせてもよい。
【0032】
〔a〕原反フィルム10を原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの巻出し工程における雰囲気を適切な条件に調整する。好ましい雰囲気条件は、温度23±5℃、相対湿度20〜70%RHである。より好ましい相対湿度は20〜65%RHであり、さらに好ましい相対湿度は25〜60%RHである。かかる雰囲気下で巻出し工程を実施することにより、原反フィルム10の吸湿、ひいてはカールの成長を抑制することができる。
【0033】
〔b〕上記巻出し工程の所要時間(原反フィルム10を原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの時間)を短く抑える。当該時間を短くすることは、巻出し工程中におけるカールの成長を抑制するうえで有利であり、生産効率の観点からも有利である。一般に、原反フィルムが薄いほど巻出し工程中においてカールが成長しやすい。上記所要時間は、35μm〜65μmの原反フィルム10を用いる場合は、好ましくは750秒以下であり、より好ましくは600秒以下であり、さらに好ましくは300秒以下である。35μm未満の原反フィルム10を用いる場合は、好ましくは650秒以下であり、より好ましくは300秒以下であり、さらに好ましくは150秒以下である。一方、上記所要時間が極端に短すぎると、巻出し工程におけるフィルムの張力の制御が難しくなりフィルム搬送が不安定化することから、上記所要時間は通常、10秒以上、好ましくは20秒以上である。
【0034】
〔c〕巻出し工程において、搬送される原反フィルム10に対して乾燥処理を施す。ここでいう乾燥処理とは、原反フィルム10中の水分を揮発させて原反フィルム10の水分率を低くする処理をいう。乾燥処理は、カールを低減したり、解消したりするうえで有利である。カールの低減、解消のためには、原反フィルム10のカール面の乾燥度(すなわち、乾燥による水分率の低下の程度)がその反対側の面よりも小さくなるように乾燥処理を施すことがとりわけ好ましい。カール面とは、カールの内側の面を含む原反フィルム面であり、
図2を参照すれば、当該図における上側の主面である。
【0035】
カール面の乾燥度をその反対側の面よりも小さくする方法としては、当該反対側の面側から熱風や、ドライエアー、赤外線ヒーターを当てたり、温度が互いに異なる一対のロールの間に原反フィルム10を挟んだりする方法を挙げることができる。
【0036】
〔d〕巻出し工程において、搬送される原反フィルム10に対して拡幅処理を施す。フィルム幅を広げる目的でなされる拡幅処理は、原反フィルム10が膨潤浴13に浸漬するときのカールを低減又は解消するうえで有利である。拡幅処理としては、ガイドロールにエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。中でも簡便であることから、拡幅機能を有するロールを用いる処理が好ましい。例えば
図1に示されるガイドロール60及び/又は61として、拡幅機能を有するロールを用いることができる。
【0037】
〔e〕巻出し工程において、搬送される原反フィルム10に対して、カール部分を強制的に押さえ込む処理を施す。この処理も、拡幅処理と同様、原反フィルム10が膨潤浴13に浸漬するときのカールを低減又は解消するうえで有利である。具体的な方法としては、コンベアーのような装置でフィルム搬送を行う方法、ロールやバー(ロールのようなそれ自身が回転するものではない棒状物)をカール部分に押し当てる方法、空気、窒素、アルゴン等の原反フィルム10に対して不活性なガスをカール部分に噴射する方法などを挙げることができる。
【0038】
〔f〕例えば
図1に示される例のように、巻出し工程において原反フィルム10が、ガイドロール及びニップロールから選択される2以上のロールによって構築されるフィルム搬送経路に沿って搬送される場合においては、隣り合うロール間の距離の最大値Lを短くしたり、及び/又は隣り合うロール間の搬送に要する時間
の最大値Tを短くしたりする。L及び/又はTを短くすることは、巻出し工程中におけるカールの成長を抑制するうえで有利である。
【0039】
隣り合うロール間の距離の最大値Lとは、隣り合うロール間の距離のうち最も大きい値である。隣り合うロール間の距離は、隣り合うロール中心間の距離として求められる。ニップロールの場合は、ロール中心の代わりに、ニップロールを構成する一対のロールの中心を結ぶ線の中心が採用される。Lは、通常0.01m以上、好ましくは2m以下であり、より好ましくは0.05〜1.5mである。
【0040】
同様に隣り合うロール間の搬送に要する時間の最大値Tとは、隣り合うロール間の搬送に要する時間(
図1の例ではガイドロール60からガイドロール61までの搬送に要する時間T
1、及びガイドロール61からニップロール50までの搬送に要する時間T
2)のうち最も大きい値である。隣り合うロール間の搬送に要する時間は、隣り合うロールのうち一方のロールを離れてから他方のロールに接するまでの時間として求められる。Tは、通常0.5秒以上、好ましくは30秒以下であり、より好ましくは0.1〜20秒である。
【0041】
〔g〕巻出し工程においては通常、膨潤浴へ浸漬する前に配置された1つ以上のニップロールで原反フィルム10の張力を一定に保ちながら搬送を行うが、この場合において、原反ロール11と膨潤浴へ浸漬する直前に配置されたニップロールとの間にある原反フィルム10にかかる張力を、該ニップロール以降にかかる張力よりも高くする。これにより、巻出し工程中におけるカールの成長を抑制することができる。原反ロール11と膨潤浴へ浸漬する直前に配置されたニップロールとの間にある原反フィルム10にかかる張力は、例えば5〜300N/mmであり、好ましくは10〜200N/mmである。原反ロール11と膨潤浴へ浸漬する直前に配置されたニップロールとの間にある原反フィルム10にかかる張力と、該ニップロール以降にかかる張力との差は、例えば10N/m以上、好ましくは50N/m以上である。原反ロール11と膨潤浴へ浸漬する直前に配置されたニップロールとの間にある原反フィルム10の張力や、上記張力差が上記範囲にあることは、原反フィルム10端部のカール発生抑制の効果だけでなく、原反フィルム10のシワ発生を抑える点でも好ましい。
【0042】
膨潤処理では、原反フィルム10が幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取りつつフィルムを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又は32にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は延伸処理を施すことである。例えば、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して膨潤浴13中で一軸延伸処理を施すことができる。
【0043】
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
【0044】
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51を順に通過して染色浴15へ導入される。
【0045】
(染色処理)
染色処理は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。
図1を参照して、染色処理は、ガイドロール33〜35及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色処理工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
【0046】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色浴15には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003〜0.3/約0.1〜10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、通常10〜45℃程度、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは20〜35℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒である。
【0047】
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、染色浴15には、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001〜0.1/100である水溶液を用いることができる。この染色浴15には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、例えば20〜80℃程度、好ましくは30〜70℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒程度である。
【0048】
上述のように染色処理工程では、染色浴15でフィルムの一軸延伸を行うことができる。フィルムの一軸延伸は、染色浴15の前後に配置したニップロール51とニップロール52との間に周速差をつけるなどの方法によって行うことができる。
【0049】
染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール33,34及び/又は35にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
【0050】
図1に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール35、ニップロール52を順に通過して架橋浴17へ導入される。
【0051】
(架橋処理)
架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。
図1を参照して、架橋処理は、ガイドロール36〜38及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、架橋浴17(架橋槽に収容された処理液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
【0052】
架橋浴17は、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1〜10重量部含有する水溶液であることができる。架橋浴17は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1〜30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
【0053】
架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに架橋浴17の温度を適宜変更することができる。例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化であり、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、架橋浴の架橋剤含有液は、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3〜10/1〜20/100の水溶液であることができる。必要に応じ、ホウ酸に代えてグリオキザール又はグルタルアルデヒド等の他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの架橋浴の温度は、通常50〜70℃程度、好ましくは53〜65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10〜600秒程度、好ましくは20〜300秒、より好ましくは20〜200秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理及び架橋処理をこの順に施す場合、架橋浴17の温度は、通常50〜85℃程度、好ましくは55〜80℃である。
【0054】
色相調整を目的とする架橋処理においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1〜5/3〜30/100の架橋剤含有液を使用することができる。フィルムを浸漬するときの架橋浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常1〜300秒程度、好ましくは2〜100秒である。
【0055】
架橋処理は複数回行ってもよく、通常2〜5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
【0056】
ニップロール52とニップロール53との周速差を利用して架橋浴17中で一軸延伸処理を施すこともできる。
【0057】
架橋処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール36,37及び/又は38にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
【0058】
図1に示される例において、架橋浴17から引き出されたフィルムは、ガイドロール38、ニップロール53を順に通過して洗浄浴19へ導入される。
【0059】
(洗浄処理)
本発明の製造方法は、架橋処理工程後の洗浄処理工程を含むことができる。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄処理は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19(水)に浸漬、又は該フィルムに対して水をシャワーとして噴霧、若しくはこれらを併用することによって行うことができる。
【0060】
図1には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬して洗浄処理を行う場合の例を示している。洗浄処理における洗浄浴19の温度は、通常2〜40℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常2〜120秒程度である。
【0061】
なお、洗浄処理においても、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール39,40及び/又は41にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。また、洗浄処理において、シワの発生を抑制するために延伸処理を施してもよい。
【0062】
(延伸処理)
上述のように原反フィルム10は、上記一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸処理工程は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
【0063】
原反フィルム10を基準とする、偏光フィルム23の最終的な累積延伸倍率は通常、4.5〜7倍程度であり、好ましくは5〜6.5倍である。
【0064】
延伸処理工程はいずれの処理工程で行ってもよく、2以上の処理工程で延伸処理を行う場合においても延伸処理はいずれの処理工程で行ってもよい。本発明によれば、膨潤処理工程以降(膨潤処理工程を含む)のいずれの段階で一軸延伸処理を行う場合であっても、延伸処理時におけるフィルム破断を効果的に抑制することができる。
【0065】
(乾燥処理)
洗浄処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、
図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥温度は、例えば30〜100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30〜600秒程度である。以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5〜30μm程度である。
【0066】
(その他の処理工程)
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋処理の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
【0067】
<偏光板>
以上のようにして製造される偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;シクロオレフィン系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【0068】
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。
【0069】
偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理を施してもよい。偏光フィルムと保護フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、紫外線硬化性接着剤のような活性エネルギー線硬化性接着剤や、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、又はこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤を挙げることができる。紫外線硬化型接着剤は、(メタ)アクリル系化合物と光ラジカル重合開始剤の混合物や、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤の混合物等であることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物とラジカル重合性の(メタ)アクリル系化合物とを併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することもできる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお以下の例において、連続的に膨潤浴13へ浸漬される原反フィルム10の幅方向両端部のカール角度は、次の方法によって測定した。
【0071】
〔カール角度の測定〕
膨潤浴13へ浸漬する直前に通過したロールから膨潤浴13中の最初のガイドロールの方向に沿ってフィルムを目視し、フィルムが浸漬する直前の位置に設置した角度の目印に従いフィルム端部先端が示す角度領域を15°毎に測定した(例えば角度領域が0°以上15°未満のとき、測定角度は0°となり、角度領域が15°以上30°未満のとき、測定角度は15°といったように、測定角度は角度領域の最小値となる。以下同様。)。また、巻出し直後から膨潤浴13に浸漬する前に通過するロールの直前にも角度目印を設置し、同様にカール角度の測定を行った。
【0072】
<実施例1>
2つの架橋浴17(以下では、1つ目の架橋浴を17aといい、2つ目の架橋浴を17bという。)を用いたこと以外は
図1に示される偏光フィルム製造装置と同様の装置を用いて偏光フィルムを製造した。ガイドロール30〜41にはすべてフラットロールを使用した。
【0073】
(1)膨潤処理工程
厚み60μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#6000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反ロール11より連続的に巻出しながら搬送し、30℃の純水が入った膨潤浴13に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま100秒間浸漬した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの時間(巻出し工程の時間)は60秒、巻出し工程における雰囲気は温度23℃、相対湿度60%RHであった。また、ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は30°以下であった。
【0074】
(2)染色処理工程
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)が0.05/2/100である30℃の染色浴15に120秒間浸漬した。この染色処理では、ニップロール51,52間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。
【0075】
(3)架橋処理工程
次に、耐水化を目的とする第1の架橋処理を施すため、ニップロール52を通過したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である56℃の第1架橋浴17aに30秒間浸漬した。この第1の架橋処理においても、ニップロール間に周速差をつけて、原反フィルム10を基準とする累積延伸倍率が5.5倍になるまでロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。次いで、第1の架橋処理後のフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が9/2.9/100である40℃の第2架橋浴17bに15秒間浸漬した(第2の架橋処理)。
【0076】
その後、第2の架橋処理後のフィルムを6℃の純水が入った洗浄浴19に浸漬し、次いで乾燥炉21を通過させることにより70℃で3分間乾燥させて、偏光フィルム23を作製した。
【0077】
以上の偏光フィルム製造を連続して24時間実施したところ、24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらなかった。また、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0078】
<実施例2>
巻出し工程における雰囲気を温度23℃、相対湿度40%RHとしたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は15°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0079】
<実施例3>
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#3000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反フィルムとして用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0080】
<実施例4>
巻出し工程の時間を480秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0081】
<実施例5>
巻出し工程の時間を600秒としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0082】
<実施例6>
巻出し工程の時間を720秒としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0083】
<実施例7>
巻出し工程の時間を600秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0084】
<比較例1>
巻出し工程の時間を720秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルムの製造を行った。ポリビニルアルコールフィルムが膨潤浴13に浸漬するときのフィルム幅方向両端部のカール角度は105°であった。架橋処理における延伸処理時にフィルムの破断が生じ偏光フィルムを得ることができなかった。
【0085】
<実施例8>
ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの間に、ポリビニルアルコールフィルムのカール面とは反対側の面側から30℃の温風を30秒間吹き付けたこと以外は比較例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0086】
<実施例9>
巻出し工程のニップロール50の直前に、フィルム幅方向両端部を押さえ付けるための金属製のバーを設置し、ポリビニルアルコールフィルムの幅方向両端部の拡幅処理を行ったこと以外は比較例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0087】
<実施例10>
巻出し工程の時間を300秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は45°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
【0088】
<実施例11>
巻出し工程の時間を150秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は45°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。