(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液晶組成物は、主鎖に環構造を3個以上有する重合性液晶化合物を含む。なお、本発明において「主鎖」とは、重合性液晶化合物の分子鎖における主要な炭素鎖であり、炭素数が最大となる幹にあたる部分を意味する。
【0011】
<重合性液晶化合物>
本発明の液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物は、主鎖に3個以上の環構造を有する。前記重合性液晶化合物の主鎖に含まれ得る環構造としては、1価または2価の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基等が挙げられる。これらの環構造は、それぞれ単環系であってもよく、多環系であってもよい。また、多環系の場合、縮合型の多環系構造であってもよく、集合型の多環系構造であってもよい。
【0012】
単環系の環構造としては、例えば3〜20員環の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基等が挙げられ、好ましくは4〜10員環の、より好ましくは5員環または6員環の、さらに好ましくは6員環の環構造の脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基が挙げられる。具体的には、例えばベンゼン環、シクロヘキサン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリジン環、ピペリジン環、テトラヒドロピラン環、ジオキサン環、チアジン環などが挙げられる。
【0013】
多環系の環構造としては多環系芳香族基、芳香族複素環基、多環系脂環式炭化水素基等が挙げられ、複素環を有する多環系芳香族基が好ましい。具体的には、例えばインドール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾフラン基、ベンゾチオフェン基、ベンゾチアゾール基などが挙げられる。
【0014】
重合性液晶化合物における環構造の数は3個以上であり、好ましくは13個以下、より好ましくは9個以下であり、好ましくは5個以上、さらに好ましくは5個以上7個以下であり、特に好ましくは5個である。主鎖に3個以上、好ましくは5個以上の環構造を有することで、液晶相の熱安定性が高くなる。なお、本発明において、環構造が多環系の基である場合、当該基全体を1つの環構造として数える。
【0015】
本発明の液晶化合物に含まれる重合性液晶化合物は、下記式(A)で表される主鎖に環構造を3個以上、さらには5個以上有する化合物であることが好ましい。主鎖には2環以上単環系の環構造を含んでいることが好ましく、4環以上単環系の環構造を含んでいることがさらに好ましい。重合性液晶化合物が下記式(A)で表される化合物であると、溶剤への溶解性に優れ、配向欠陥を生じにくく、本発明の所望の効果をより良好に発現できる。
【0017】
式(A)中、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表し、mが2以上の整数である場合、複数のA
1およびB
1は、互いに同一でも異なっていてもよく、nが2以上の整数である場合、複数のA
2およびB
2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
B
1、B
2、D
1、D
2、E
1およびE
2は、それぞれ独立に、−CR
1R
2−、−CH
2−CH
2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR
1−、−NR
2−CO−、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−S−CH
2−、−CH
2−S−または単結合を表し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
A
1、A
2、G
1およびG
2は、それぞれ独立に、炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基および該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R
3、−OR
3、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH
2−は、−O−、−S−、−NH−または−NR
4−で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置換されていてもよく、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
F
1およびF
2は、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、−OR
3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH
2−は、−O−または−CO−で置き換わっていてもよい。
P
1およびP
2は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す(ただしP
1およびP
2のうち少なくとも1つは重合性基を表す)。
Arは置換されていてもよい2価の芳香族基であり、該芳香族基中に、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含む。
【0018】
式(A)中、mおよびnは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。重合性液晶化合物が主鎖に環構造を5個以上有する場合にmおよびnのいずれか一方が0であるときは、他方は2または3の整数であってもよい。mおよびnは、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。また、重合性液晶化合物を製造し易く、製造コストを抑制することができるという観点から、mおよびnは互いに同一の整数であることが好ましい。さらに、mおよびnが2または3である場合、複数存在するAおよびBは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。重合性液晶化合物を工業的に製造し易いという観点からは、複数存在するAおよびBは、それぞれ互いに同一であることが好ましい。
【0019】
式(A)中、B
1、B
2、D
1、D
2、E
1およびE
2は、それぞれ独立に、−CR
1R
2−、−CH
2−CH
2−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR
1−、−NR
2−CO−、−O−CH
2−、−CH
2−O−、−S−CH
2−、−CH
2−S−または単結合を表す。前記式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0020】
B
1およびB
2は、液晶相の発現しやすさの観点から、それぞれ独立に、−O−、−S−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−O−CH
2−、または−CH
2−O−であることが好ましく、−O−、−O−CO−または−CO−O−であることがより好ましい。重合性液晶化合物を容易に製造し易く、製造コストを抑制することができる観点から、B
1およびB
2は互いに同一であることが好ましい。なお、B
1およびB
2が互いに同一であるとは、Arを中心としてみた場合のB
1およびB
2の構造が互いに同一であることを意味し、例えばB
1が−O−CO−である場合において、B
1と互いに同一であるB
2とは−CO−O−である。以下、D
1とD
2、E
1とE
2、A
1とA
2、G
1とG
2、F
1とF
2およびP
1とP
2における関係についても同様である。
【0021】
D
1、D
2、E
1およびE
2は、液晶相の発現しやすさの観点から、それぞれ独立に、−O−、−S−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR
1−または−NR
2−CO−であることが好ましく、−O−、−O−CO−、または−CO−O−であることがより好ましい。重合性液晶化合物を容易に製造し易く、製造コストを抑制することができる観点から、D
1とD
2およびE
1とE
2が、それぞれ互いに同一であることが好ましい。
【0022】
式(A)において、A
1、A
2、G
1およびG
2は、それぞれ独立に、炭素数3〜16の2価の脂環式炭化水素基または炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基を表す。前記2価の脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは4〜15、より好ましくは5〜10、さらに好ましくは5または6である。前記2価の芳香族炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜16、さらに好ましくは5または6である。前記脂環式炭化水素基および前記芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、−R
3、−OR
3、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよい。ここで、R
3は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0023】
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、炭素数1または2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0024】
−OR
3における炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、炭素数1または2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0025】
前記2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルカンジイル基等が挙げられる。該脂環式炭化水素基に含まれる−CH
2−(メチレン基)は、−O−、−S−、−NH−または−NR
4−に置換されていてもよく、−CH(−)−は、−N(−)−で置換されていてもよい。ここで、R
4は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0026】
2価の脂環式炭化水素基としては、下記式(g−1)〜式(g−4)で表される基が挙げられる。脂環式炭化水素基に含まれる−CH
2−が、−O−、−S−、−NH−または−NR
4−に置き換わった2価の脂環式炭化水素基としては、下記式(g−5)〜式(g−8)で表される基が挙げられる。脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−が、−N(−)−に置き換わった2価の脂環式炭化水素基としては、下記式(g−9)および式(g−10)で表される基が挙げられる。これらは、5員環または6員環の脂環式炭化水素基であることが好ましい。
【0028】
2価の脂環式炭化水素基としては、式(g−1)で表される基であることが好ましく、シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがさらに好ましく、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが特に好ましい。
【0029】
前記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、式(a−1)〜式(a−8)で表される基が挙げられる。2価の芳香族炭化水素基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0031】
本発明の一実施態様において、本発明の化合物の製造上の観点から、A
1およびA
2は、それぞれ独立に、2価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。また、本発明の一実施態様において、本発明の化合物の製造上の観点から、G
1およびG
2は、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがより好ましく、G
1およびG
2のいずれもがトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが特に好ましい。G
1およびG
2のいずれもがトランス−シクロヘキサン−1,4−ジイル基である場合、特に良好な液晶性を示す。また、重合性液晶化合物を容易に製造し易く、製造コストを抑制することができる観点から、A
1とA
2およびG
1とG
2が、それぞれ互いに同一であることが好ましい。
【0032】
式(A)において、F
1およびF
2は、それぞれ独立に、炭素数1〜12、好ましくは2〜15、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは4〜10のアルカンジイル基を表す。該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、−OR
3またはハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH
2−は、−O−または−CO−で置換されていてもよい。R
3は、炭素数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。重合性液晶化合物を容易に製造し易く、製造コストを抑制することができる観点から、F
1とF
2は互いに同一であることが好ましい。
【0033】
式(A)において、P
1およびP
2は、それぞれ独立に、水素原子または重合性基を表す。ただし、P
1およびP
2のうち少なくとも1つは重合性基であり、P
1およびP
2のいずれもが重合性基であることが好ましい。重合性基とは、重合反応に関与し得る基を含む基である。重合反応に関与し得る基としては、ビニル基、p−(2−フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、ホルミル基、−N=C=O、−N=C=S、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。
【0034】
光重合に適するという点では、重合性基は、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基であることが好ましい。特に、取り扱いや製造が容易であるという点で、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基またはメタクリロイルオキシ基が好ましく、重合性が高いという点で、アクリロイル基またはアクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0035】
式(A)において、Arで表される2価の芳香族基は、少なくとも1つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含む。ここで、本発明において、Arで表される2価の芳香族基が「少なくとも1つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子を含む」とは、Ar中にこれらのヘテロ原子を含んでいればよいことを意味し、Arは複素環を有していてもよく、複素環を有していなくてもよい。Arで表される2価の芳香族基は、得られる位相差フィルムの逆波長分散性発現の観点から、複素環を有する芳香族基であることが好ましい。このような芳香族基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、フェナンスロリン環等を有する芳香族基が挙げられる。なかでも、ベンゼン環、チアゾール環、またはベンゾチアゾール環を有する芳香族基がより好ましく、ベンゾチアゾール環を有する芳香族基がさらに好ましい。
【0036】
Arで表される芳香族基はπ電子を有することが好ましい。該芳香族基に含まれるπ電子の合計数N
πは、液晶組成物から得られる位相差フィルムの逆波長分散性発現の観点から、好ましくは10個以上、より好ましくは12個以上、さらに好ましくは14個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは25個以下である。
【0037】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が挙げられる。
【0039】
式(Ar−1)〜式(Ar−20)中、*部は連結部を表し、Z
0’、Z
1’およびZ
2’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基または炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
Q
1、Q
2およびQ
3は、それぞれ独立に、−CR
5R
6−、−S−、−NR
7−、−CO−または−O−を表す。
R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Y
1’、Y
2’およびY
3’は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
W
1’およびW
2’は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表す。
mは、0〜6の整数を表す。
【0040】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、または臭素原子が好ましい。
【0041】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1および2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0042】
炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1および2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0043】
炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1および2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0044】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1および2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0045】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1および2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0046】
炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルチオ基が好ましく、炭素数1および2のアルキルチオ基がより好ましく、メチルチオ基が特に好ましい。
【0047】
炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1および2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0048】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0049】
炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1および2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0050】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0051】
Z
0’、Z
1’およびZ
2’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルチオ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルスルファモイル基またはN,N−ジメチルスルファモイル基であることが好ましい。
【0052】
R
5、R
6およびR
7における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1および2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
Q
1およびQ
2は、それぞれ独立に、−S−、−CO−、−NH−、−N(CH
3)−であることが好ましく、Q
3は、−S−、−CO−であることが好ましい。
【0053】
Y
1’、Y
2’およびY
3’における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む、炭素数4〜20の芳香族複素環基が挙げられる。中でも、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0054】
かかる芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は、少なくとも1つの置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1および2のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1および2のアルキルスルホニル基、炭素数1および2のフルオロアルキル基、炭素数1および2のアルコキシ基、炭素数1および2のアルキルチオ基、炭素数1および2のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1および2のアルキルスルファモイル基が好ましい。
【0055】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基および炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0056】
式(Ar−14)〜(Ar−20)の中でも、式(Ar−6)および式(Ar−7)が分子の安定性の観点から好ましい。
式(Ar−14)〜(Ar−20)において、Y
1’は、これが結合する窒素原子およびZ
0’と共に芳香族複素環基を形成していてもよい。例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y
1’は、これが結合する窒素原子およびZ
0’と共に、後述する置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。
【0057】
Y
1’、Y
2’およびY
3’は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。例えば、Y
1’、Y
2’およびY
3’は、それぞれ独立に、下記式(Y
1−1)〜式(Y
1−7)で表されるいずれかの基であることが好ましく、式(Y
1−1)または式(Y
1−4)で表されるいずれかの基であることがより好ましい。
【0059】
前記式(Y
1−1)〜式(Y
1−7)中、*部は連結部を表し、Z
3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロキシキド基、スルホン基、スルホキシド基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のチオアルキル基、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基または炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基を表す。
V
1およびV
2は、それぞれ独立に、−CO−、−S−、−NR
8−、−O−、−Se−または−SO
2−を表す。
W
1〜W
5は、それぞれ独立に、−C=または−N=を表す。
ただし、V
1、V
2およびW
1〜W
5のうち少なくとも1つは、S、N、OまたはSeを含む基を表す。
R
8は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
bは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。
【0060】
式(Y
1−1)〜式(Y
1−7)で表されるいずれかの基は、下記式(Y
2−1)〜式(Y
2−16)で表されるいずれかの基であることが好ましく、下記式(Y
3−1)〜式(Y
3−6)で表されるいずれかの基であることがより好ましく、式(Y
3−1)または式(Y
3−3)で表される基であることが特に好ましい。なお、*部は連結部を表す。
【0062】
式(Y
2−1)〜式(Y
2−16)中、Z
3、a、b、V
1、V
2およびW
1〜W
5は、上記と同じ意味を表す。
【0064】
式(Y
3−1)〜式(Y
3−6)中、Z
3、a、b、V
1、V
2およびW
1は、上記と同じ意味を表す。
【0065】
Z
3としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホン基、ニトロキシキド基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、チオメチル基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0066】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基および炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0067】
V
1およびV
2は、それぞれ独立に、−S−、−NR
8−または−O−であることが好ましい。
【0068】
W
1〜W
5は、それぞれ独立に、−C=または−N=であることが好ましい。
【0069】
V
1、V
2およびW
1〜W
5のうち少なくとも1つは、S、NまたはOを含む基を表すことが好ましい。
【0070】
aは0または1であることが好ましい。bは0であることが好ましい。
Y
1’〜Y
3’の具体例として、例えば、下記式(ar−1)〜式(ar−846)で表される基が挙げられる。なお、*部は連結部を表す。
【0192】
式(A)で表される重合性液晶化合物としては、具体的に、例えば以下の化合物が挙げられる。なお、本発明の液晶組成物は、重合性液晶化合物として、1種の重合性液晶化合物のみを含んでいてもよく、2種以上の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。
【0228】
本発明において、重合性液晶化合物の極大吸収波長(λ
max)は、好ましくは300〜400nm、より好ましくは315〜385nm、さらに好ましくは320〜380nmである。重合性液晶化合物の極大吸収波長(λ
max)が上記下限値以上であると、液晶組成物の配向状態における重合体から構成される位相差フィルムは逆波長分散性を示しやすい傾向にある。重合性液晶化合物の極大吸収波長(λ
max)が上記上限値以下であると、可視光域での吸収が抑制されるためフィルムへの着色を抑えることができる。
【0229】
前記重合性液晶化合物の製造方法は、特に限定されず、例えば、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより製造することができる。
【0230】
具体的には、例えば、前記重合性液晶化合物の1種である下記式(A−1):
【化164】
で表される重合性液晶化合物(式中のm=nの場合)は、
式(B):
【化165】
で表されるアルコール化合物(B)と、
式(C):
【化166】
で表されるカルボン酸化合物(C)とのエステル化反応を行うことにより製造することができる。なお、前記式(A−1)、(B)および(C)におけるAr、A
1、B
1、E
1、F
1、G
1、P
1、m、nは、上記で規定されたものと同一である。
【0231】
アルコール化合物(B)としては、芳香族基Arに対して2つのヒドロキシル基が結合した化合物であればよい。芳香族基Arとしては、先に規定したものと同じであり、例えば、前記式(Ar−1)〜(Ar−20)において2つの*部がヒドロキシル基である化合物が挙げられる。
【0232】
カルボン酸(C)は、単独で用いられてよいし、2種以上を組み合わせて用いてよい。
2種以上のカルボン酸化合物(C)を用いる場合、Arを中心として左右の構造が異なる重合性液晶化合物を得ることができる。カルボン酸化合物(C)は、例えば以下の式(R−1)〜式(R−104)で表される化合物が挙げられる。
【0233】
式(R−1)〜式(R−104)におけるnは1〜12の整数を表す。またシクロヘキサン環はトランス体であることが好ましい。
【0242】
アルコール化合物(B)とカルボン酸化合物(C)とのエステル化反応は、好ましくは縮合剤の存在下において行われる。縮合剤の存在下でエステル化反応を行うことにより、エステル化反応を効率良く迅速に行うことができる。
【0243】
縮合剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド:WSCとして市販)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドおよび、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド等のカルボジイミド化合物、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラ−トルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラ−トルエンスルホネート並びに、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル等が挙げられる。
【0244】
縮合剤は、好ましくは、カルボジイミド化合物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイドおよび、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラ−トルエンスルホネートである。
【0245】
縮合剤は、より好ましくは、カルボジイミド化合物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリドおよび、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイドであり、さらに好ましくは、経済性の観点から、カルボジイミド化合物である。
【0246】
カルボジイミド化合物の中でも、好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(水溶性カルボジイミド:WSCとして市販)および、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドである。
【0247】
縮合剤の使用量は、アルコール化合物(B)1モルに対して、通常2〜4モルである。
【0248】
エステル化反応では、さらに、N−ヒドロキシスクシンイミド、ベンゾトリアゾール、パラニトロフェノール、3,5−ジブチル−4−ヒドロキシトルエン等を添加剤として加えて混合してもよい。添加剤の使用量は、縮合剤1モルに対して、好ましくは0.01〜1.5モルである。
【0249】
エステル化反応は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、N,N−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルアンモニウムペンタフルオロベンゼンスルホナート等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチルアミノピリジンおよび、N,N−ジメチルアニリンが好ましく、N,N−ジメチルアミノピリジンがより好ましい。触媒の使用量は、アルコール化合物(B)1モルに対して、好ましくは0.01〜0.5モルである。
【0250】
エステル化反応は、通常、溶剤中で行われる。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン、ベンゼンまたはクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリルなどのニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤;乳酸エチルなどのエステル系溶剤;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素溶剤;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶剤;などが挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0251】
溶剤は、反応収率や生産性の観点から、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン等の非極性有機溶剤であり、より好ましくはトルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、クロロホルムおよびジクロロメタンである。
【0252】
カルボン酸化合物(C)の使用量は、アルコール化合物(B)1モルに対して、好ましくは2〜10モル、より好ましくは2〜5モルであり、さらに好ましくは2〜3モルである。
【0253】
溶剤の使用量は、アルコール化合物(B)とカルボン酸化合物(C)との合計1質量部に対して、好ましくは0.5〜50質量部であり、より好ましくは1〜20質量部であり、さらに好ましくは2〜10質量部である。
【0254】
エステル化反応の温度は、反応収率や生産性の観点から、好ましくは−20〜120℃であり、より好ましくは−20〜60℃であり、さらに好ましくは−10〜20℃である。また、エステル化反応の時間は、反応収率や生産性の観点から、好ましくは1分〜72時間であり、より好ましくは1〜48時間であり、さらに好ましくは1〜24時間である。得られた懸濁液から、ろ過やデカンテーション等の方法により重合性液晶化合物を得ることができる。
【0255】
<液晶組成物>
本発明の液晶組成物は、前記重合性液晶化合物に加えてアルミニウムを含む。本発明の液晶組成物において、アルミニウムは触媒として作用し、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物に基づき重合体が形成される。これにより本発明の液晶組成物は、溶剤への溶解時、重合性液晶化合物およびその重合体が溶解した溶液において、重合体が重合性液晶化合物の溶媒和を向上させて過飽和状態を安定化させることができると考えられる。このため、本発明の液晶組成物は、長期保存においても重合性液晶化合物の析出を抑制することができ、保存安定性に優れる。
【0256】
一般的に溶剤への溶解性を向上させるために、環状構造を多数持つ化合物では長鎖のアルキル基を導入する手法が用いられるが、重合性液晶化合物において長鎖アルキル基を置換基として導入すると、導入される置換基の存在により液晶化合物の分子の配向が乱れるため、光学フィルムにおける配向欠陥の原因となる。本発明の液晶組成物においては、長鎖アルキル基等の置換基を導入することなく、アルミニウムを触媒として、重合性液晶化合物からその重合体が形成され、単量体としての重合性液晶化合物とその重合体とが存在することにより重合性液晶化合物の析出を抑制することができる。このため、本発明の液晶組成物は、配向欠陥を生じにくく、かつ高い保存安定性を実現できる。
【0257】
本発明の液晶組成物に含まれるアルミニウムの形態は、特に限定されるものではなく、単体のアルミニウムであっても、アルミニウム合金であっても、3価のアルミニウム化合物であってもよい。アルミニウム合金としては、例えば、アルミニウム―銅系合金、アルミニウム―ケイ素系合金、アルミニウム―ニッケル系合金、アルミニウム―鉄系合金、アルミニウム―マグネシウム系合金などが挙げられ、3価のアルミニウム化合物としては、例えば、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、リン化アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。これらのアルミニウム化合物は、単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよく、単体アルミニウムとアルミニウム合金とアルミニウム化合物が含まれていてもよい。
【0258】
本発明の液晶組成物に含まれるアルミニウムは、液晶組成物を調製する際に所定の濃度となるよう添加されたものであってもよく、また、重合性液晶化合物や液晶組成物を調製する過程において用いたアルミニウムに由来するものであってもよく、用いた原料中に含有され、この原料を介して持ち込まれるアルミニウムに由来するものであってもよい。
【0259】
本発明の液晶組成物において、アルミニウムの含有量は、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物に対して1ppm以上であり170ppm以下である。アルミニウムの含有量が1ppm未満であると、アルミニウムが触媒として十分に作用することができず、重合性液晶化合物の重合体を生成することが困難となるおそれがある。一方、アルミニウムの含有量が170ppmを超えると、重合反応が進み過ぎて、液晶組成物がゲル状になる傾向にあり、支持基材等に塗布することが困難となるおそれがある。本発明の液晶組成物において、アルミニウムの含有量の下限値は、好ましくは1ppm以上、より好ましくは2ppm以上、さらに好ましくは5ppm以上である。また、上限値は、好ましくは170ppm以下、より好ましくは160ppm以下、さらに好ましくは110ppm以下である。アルミニウムの含有量が前記範囲内にあると、長期間の保存安定性に優れた液晶組成物を得ることができる。アルミニウムの含有量は、実施例の欄に記載するICP(誘導結合プラズマ)発光分析法によりアルミニウム元素の含有量として測定される。
【0260】
本発明の液晶組成物は、重合反応を効率的に進行させるため、有機溶剤を含むことが好ましい。本発明の液晶組成物に含有し得る有機溶剤としては、重合性液晶化合物などを溶解し得る有機溶剤であり、重合反応に不活性な溶剤であればよい。
このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートまたは乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレンまたはフェノールなどの非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤;テトラヒドロフランまたはジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤;クロロホルムまたはクロロベンゼンなどの塩素系溶剤;N−メチルピロリドン(NMP)またはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶剤などが挙げられ、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、非塩素系芳香族炭化水素溶剤、エーテル系溶剤およびアミド系溶剤が好ましく、ケトン系溶剤およびアミド系溶剤がより好ましく、アミド系溶剤がさらに好ましい。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0261】
本発明の液晶組成物における有機溶剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは100〜10000質量部、より好ましくは200〜5000質量部、さらに好ましくは500〜2500質量部である。有機溶剤の含有量が前記範囲内であると、得られる光学フィルム(位相差フィルム)が薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償のために必要な複屈折率を有する光学フィルムが得られやすい傾向がある。
【0262】
また、本発明の液晶組成物は種々の有機溶剤に対する溶解性に優れる。このため、本発明の液晶組成物は溶剤への溶解時における保存安定性に優れるとともに、塗工時および保存時等に使用する有機溶剤の量を減らすことができる点においても有利である。例えば、溶剤としてN−メチルピロリドンを用いた場合、溶剤の含有量が重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば2500質量部以下、例えば1500質量部以下、特に1000質量部以下であっても長期間(例えば、24時間以上、好ましくは72時間以上)にわたり重合性液晶化合物の析出を抑制することができる。
【0263】
本発明の液晶化合物は、例えば、重合性液晶化合物、アルミニウム、および有機溶剤を混合することによって得ることができる。重合性液晶化合物を容易に有機溶剤に溶解させることができるとともに、アルミニウムを触媒として重合性液晶化合物の重合反応が効率的に進むため、重合性液晶化合物、アルミニウムおよび有機溶剤の混合時または混合後に加熱することが好ましい。このような加熱を施す場合、加熱温度や加熱時間は、所望する量や分子量の重合体を形成することができるよう適宜決定すればよい。本発明の一実施態様において、加熱温度は、例えば40〜200℃であり、好ましくは45〜150℃、より好ましくは50〜100℃である。また、加熱時間は、例えば1分〜24時間、好ましくは1〜12時間、より好ましくは1〜8時間である。
【0264】
前記加熱は、具体的には、例えば、バイアル管に液晶組成物、溶剤、撹拌子を仕込み、カルーセルを用いて撹拌することにより行うことができる。
【0265】
本発明の液晶組成物において、アルミニウムの存在下、重合性液晶化合物から形成される重合体は、好ましくは5000〜100000の、より好ましくは8000〜80000の、さらに好ましくは10000〜60000の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。重合性液晶化合物から形成される重合体の重量平均分子量が前記範囲内にあると、液晶組成物がゲル状になりにくく、支持基材等への塗布に支障をきたしにくくなる。
【0266】
本発明の液晶組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定された面積百分率値において、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物と形成された重合体の全ピーク面積に対して、重合体の面積百分率値が好ましくは0.1%以上30%以下、より好ましくは0.2%以上25%以下、さらに好ましくは0.3%以上20%以下、特に好ましくは0.4%以上16%以下となる量の重合体を含む。形成された重合体の面積百分率値が上記下限値以上であると、保存時に重合性液晶化合物が析出しにくくなり、本発明の液晶組成物を種々の溶剤に溶解させた場合において、長期間(例えば、24時間以上、好ましくは72時間以上)にわたり重合性液晶化合物の析出を抑制することができる。また、上記上限値以下であると、液晶組成物がゲル状になりにくく、支持基材等への塗布に支障をきたしにくい。なお、前記面積百分率値は、GPC(ポリスチレン標準)を用い、下記式より算出した値である。
【0267】
本発明の液晶組成物の極大吸収波長(λ
max)は、好ましくは300〜400nm、より好ましくは315〜385nm、さらに好ましくは320〜380nmである。液晶組成物の極大吸収波長(λ
max)が上記下限値以上であると、液晶組成物の配向状態における重合体から構成される位相差フィルムは逆波長分散性を示しやすい傾向にある。液晶組成物の極大吸収波長(λ
max)が上記上限値以下であると、可視光域での吸収が抑制されるためフィルムへの着色を抑えることができる。
【0268】
本発明の一実施態様において、上記液晶組成物の配向状態における重合体から構成される位相差フィルム(以下、「本発明の位相差フィルム」ともいう)が提供される。本発明の位相差フィルムは下記式(1)の波長分散度Re(450nm)/Re(550nm)を満たすことが好ましい。
0.80≦Re(450)/Re(550)<1.00 (1)
[式(1)中、Re(λ)は波長λnmの光に対する正面位相差値を表す。]
本発明の位相差フィルムの波長分散度Re(450nm)/Re(550nm)は、より好ましくは0.8以上0.97未満、さらに好ましくは0.8以上0.96未満である。本発明の位相差フィルムの波長分散度Re(450nm)/Re(550nm)が上記下限値以上であると、450nm付近の短波長域において円偏光変換が可能となるため好ましい。本発明の位相差フィルムの波長分散度Re(450nm)/Re(550nm)が上記上限値未満であると、得られる位相差フィルムが逆波長分散性を示すため好ましい。
【0269】
本発明の位相差フィルムは、透明性に優れ、様々な光学ディスプレイにおいて用いることができる。該位相差フィルムの厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.5〜3μmであることがさらに好ましい。
【0270】
本発明の位相差フィルムをλ/4板に用いる場合には、得られる位相差フィルムの、波長550nmにおける位相差値(Re(550nm))が好ましくは113〜163nm、より好ましくは130〜150nm、特に好ましくは約135nm〜150nmであるように、位相差フィルムの膜厚を調整すればよい。
【0271】
本発明の位相差フィルムをVA(Vertical Alignment)モード用光学フィルムとして使用するためには、Re(550nm)を好ましくは40〜100nm、より好ましくは60〜80nm程度となるように、位相差フィルムの膜厚を調整すればよい。
【0272】
本発明の位相差フィルムを偏光フィルムと組み合わせることにより、偏光板(以下、「本発明の偏光板」ともいう)、特に楕円偏光板および円偏光板が提供される。これら楕円偏光板および円偏光板においては、偏光フィルムに本発明の位相差フィルムが貼合されている。また、本発明においては、該楕円偏光板または円偏光板にさらに本発明の位相差フィルムを広帯域λ/4板として貼合させた広帯域円偏光板も提供することができる。
【0273】
本発明の一実施態様において、本発明の偏光板を含む光学ディスプレイ、例えば、反射型液晶ディスプレイおよび有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイに用いることができる。上記FPDは、特に限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(LCD)や有機EL表示装置を挙げることができる。
【0274】
本発明において光学ディスプレイは、本発明の偏光板を備えるものであり、例えば本発明の偏光板と液晶パネルとが貼り合わされた貼合品を備える液晶表示装置や、本発明の偏光板と、発光層とが貼り合わされた有機ELパネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
【0275】
なお、本発明において位相差フィルムとは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光または楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられるフィルムである。本発明の位相差フィルムは、本発明の液晶組成物の重合体を含むものである。すなわち、本発明の位相差フィルムは、重合性液晶化合物に由来する構造単位から構成される重合体を含むものである。
【0276】
本発明の位相差フィルムは、例えば、以下のような方法により製造することができる。
まず、本発明の液晶組成物に、必要に応じて、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤またはレベリング剤などの添加剤を加えて、混合溶液を調製する。
【0277】
〔重合開始剤〕
本発明の液晶組成物は、得られた位相差フィルムを硬化する働きをもつことから重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤としては、重合性液晶化合物の重合を開始する能力を有する限り特に制限されるものではなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。本発明において、重合開始剤としては、光重合開始剤および熱重合開始剤等が挙げられ、光重合開始剤であることが好ましい。
【0278】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩またはスルホニウム塩等が挙げられ、より具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152またはアデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)などを挙げることができる。
【0279】
本発明の液晶組成物における重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは0.5〜10質量部である。重合開始剤の含有量が前記範囲内であれば、液晶化合物の配向性を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合させることができる。
【0280】
〔重合禁止剤〕
本発明の位相差フィルムを調製する際に、重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノンまたはアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル捕捉剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類またはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0281】
重合禁止剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を制御することができ、得られる位相差フィルムの安定性を向上させることができる。重合禁止剤の使用量は、例えば重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向性を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合させることができる。
【0282】
〔光増感剤〕
また本発明の位相差フィルムを調製する際に、光増感剤を使用してもよい。光増感剤としては、例えばキサントンまたはチオキサントン等のキサントン類、アントラセンまたはアルキルエーテルなどの置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0283】
光増感剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を高感度化することができる。
光増感剤の使用量としては、重合性液晶化合物100質量部に対して、例えば0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向性を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合させることができる。
【0284】
〔レベリング剤〕
さらに本発明の位相差フィルムを調製する際に、レベリング剤を使用してもよい。レベリング剤としては、例えば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)またはフッ素系添加剤(大日本インキ化学工業株式会社製:F−445、F−470、F−479)などを挙げることができる。
【0285】
レベリング剤を用いることにより、得られる位相差フィルムを平滑化することができる。さらに位相差フィルムの製造過程で、液晶組成物を含有する混合溶液の流動性を制御したり、重合性液晶化合物を重合して得られる位相差フィルムの架橋密度を調整したりすることができる。またレベリング剤の使用量の具体的な数値は、例えば重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1〜30質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部である。上記範囲内であれば、液晶化合物の配向性を乱すことなく、重合性液晶化合物を重合させることができる。
【0286】
本発明の液晶組成物を含有する混合溶液の粘度は、塗布しやすいように、例えば10Pa・s以下、好ましくは0.1〜7Pa・s程度に調整されることが好ましい。なお、混合溶液の粘度は、有機溶剤の含有量により調整することができる。
【0287】
また、上記混合溶液における固形分の濃度は、例えば5〜50質量%であり、好ましくは5〜30%、より好ましくは5%〜15%である。なお、ここでいう「固形分」とは、混合溶液(液晶組成物)から溶剤を除いた成分のことをいう。固形分の濃度が5%以上であると、位相差フィルムが薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償に必要な複屈折率が与えられる傾向がある。また50%以下であると、混合溶液の粘度が低いことから、位相差フィルムの膜厚にムラが生じにくくなる傾向があることから好ましい。
【0288】
続いて支持基材に、支持基材の上に、本発明の液晶組成物を含有する混合溶液を塗布し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。未重合フィルムがネマチック相などの液晶相を示す場合、得られる位相差フィルムは、モノドメイン配向による複屈折性を有する。未重合フィルムは0〜120℃程度、好ましくは、25〜80℃の低温で配向することから、配向膜として耐熱性に関して必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。また、配向後さらに30〜10℃程度に冷却しても結晶化することがないため、取扱いが容易である。
【0289】
なお、混合溶液の塗布量や濃度を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調整することができる。重合性液晶化合物の量が一定である混合溶液の場合、得られる位相差フィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(I)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るために、膜厚dを調整してもよい。
【0290】
Re(λ)=d×Δn(λ) (I)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0291】
支持基材への塗布方法としては、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法またはダイコーティング法などが挙げられる。またディップコーター、バーコーターまたはスピンコーターなどのコーターを用いて塗布する方法などが挙げられる。
【0292】
上記支持基材としては、例えばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルムまたは透光性フィルムを挙げることができる。なお前記透光性フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルムまたはポリフェニレンオキシドフィルムなどが挙げられる。
【0293】
例えば本発明の位相差フィルムの貼合工程、運搬工程、保管工程など、位相差フィルムの強度が必要な工程でも、支持基材を用いることにより、破れなどなく容易に取り扱うことができる。
【0294】
また、支持基材上に配向膜を形成して、配向膜上に本発明の液晶組成物を含む混合溶液を塗工することが好ましい。配向膜は、本発明の液晶組成物などを含有する混合溶液の塗工時に、混合溶液に溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶剤の除去や液晶の配向の加熱処理時に耐熱性をもつこと、ラビング時に摩擦などによる剥がれなどが起きないことが好ましく、ポリマーまたはポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。
【0295】
前記ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体としたりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0296】
またこれらのポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートまたは乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエンまたはキシレンなどの非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤;テトラヒドロフランまたはジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤;クロロホルムまたはクロロベンゼンなどの塩素系溶剤;などが挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0297】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)またはオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)などが挙げられる。
【0298】
このような配向膜を用いれば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ、支持基材上にフラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな位相差フィルムを提供できるという効果を奏する。
【0299】
上記支持基材上に配向膜を形成する方法としては、例えば上記支持基材上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールすることにより、上記支持基材上に配向膜を形成することができる。
【0300】
このようにして得られる配向膜の厚さは、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、重合性液晶化合物等を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0301】
またこれら配向膜は、必要に応じてラビングまたは偏光UV照射を行うことができる。
配向膜を形成させることにより重合性液晶化合物等を所望の方向に配向させることができる。
【0302】
配向膜をラビングする方法としては、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
【0303】
上記の通り、未重合フィルムを調製する工程では、任意の支持基材の上に積層した配向膜上に未重合フィルム(液晶層)を積層してもよい。この場合、液晶セルを作製し、該液晶セルに液晶組成物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらにロールフィルムでのフィルムの生産が可能である。
【0304】
溶剤の乾燥は、重合を進行させるとともに行ってもよいが、重合前にほとんどの溶剤を乾燥させることが、成膜性の点から好ましい。
【0305】
溶剤の乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥などの方法が挙げられる。具体的な加熱温度としては、10〜120℃であることが好ましく、25〜80℃であることがさらに好ましい。また加熱時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、上記支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0306】
次に、上記で得られた未重合フィルムを重合し、硬化させる。これにより重合性液晶化合物の配向性が固定化されたフィルム、すなわち本発明の液晶組成物の重合体を含むフィルム(以下、「重合フィルム」ともいう)となる。これにより、フィルムの平面方向に屈折率変化が小さく、フィルムの法線方向に屈折率変化が大きい重合フィルムを製造することができる。
【0307】
未重合フィルムを重合させる方法は、重合性液晶化合物の種類に応じて、決定されるものである。重合性液晶化合物に含まれる重合性基が光重合性であれば光重合、該重合性基が熱重合性であれば熱重合により、上記未重合フィルムを重合させることができる。本発明では、特に光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。光重合によれば低温で未重合フィルムを重合させることができるので、支持基材の耐熱性の選択幅が広がる。また工業的にも製造が容易となる。また成膜性の観点からも光重合が好ましい。光重合は、未重合フィルムに可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行う。取り扱い性の観点から、紫外光が特に好ましい光照射は、重合性液晶化合物が液晶相をとる温度に加温しながら行ってもよい。この際、マスキングなどによって重合フィルムをパターニングすることもできる。
【0308】
さらに本発明の位相差フィルムは、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムと比較して、薄膜である。
【0309】
本発明の位相差フィルムの製造方法において、さらに、支持基材を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られる積層体は、配向膜と位相差フィルムとからなるフィルムとなる。また上記支持基材を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、位相差フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0310】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0311】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析条件を以下に示す。
<GPC分析条件>
測定装置:HLC−8220(東ソー株式会社)
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ−N 3本
カラム温度:40℃
インレットオーブン:40℃
移動相:テトラヒドロフラン
分析時間:20分
サンプルポンプ流量:0.35mL/分
リファレンスポンプ流量:0.35mL/分
注入量:10μm
検出:紫外吸収(波長:254nm)
【0312】
アルミニウムの含有量は以下の方法に従い、ICP発光分析により測定した。
(i)石英製分解容器に試料を量り取る。
(ii)量り取った試料に、硫酸、および硝酸を加えホットプレート上で加熱分解する。
(iii)試料の色が褐色から黒色になった時点でホットプレートから下し、放冷する。
(iv)続いて純水と塩酸を加えてホットプレート上で加熱溶解する。
(v)得られた溶液を純水にて定容し、ICP発光分析装置(SPS5520、日立ハイテクサイエンス)を用いてAl元素の含有量として測定する。
【0313】
1.実施例1〜5
(1)重合性液晶化合物の合成
(1−1)合成例(1)
以下の方法に従い、下記式(A−1)で示される重合性液晶化合物(以下、「化合物(A−1)」ともいう)とアルミニウムを含む重合性液晶混合物(A−1a)を合成した。
【0314】
【化175】
【0315】
(i)式(C−1−1)で示される化合物の合成
式(C−1−1)で示される化合物は、特許文献(特開2015−157776)を参考に合成した。
【化176】
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL−四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、上記式(B)で示されるトランス−シクロヘキサンジカルボン酸36g(市販品であり、上記ICP発光分析により測定したアルミニウム元素含有量は3ppm)と、N−メチル−2−ピロリドン(関東化学(株)製)72gとを混合し溶液を得た。得られた溶液に上記式(D)で示されるモノアルコール化合物9.9gと、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と略す。和光純薬工業(株)製)0.7gと、4−ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と略す。和光純薬工業(株)製)0.055gとを加えて、45℃に温調した。得られた混合物にジイソプロピルカルボジイミド(以下、「IPC」と略す。和光純薬工業(株)製)6.9gを1時間かけて滴下し、その後15時間撹拌することよりエステル化反応を行い、反応混合物Aを得た。
一方、水酸化ナトリウム(関東化学(株)製)2.1gと、水145gとを混合し、得られた混合物を前記反応混合物Aに滴下し、2時間撹拌して懸濁液を得た。得られた懸濁液を濾過することにより得られた固形物を、メタノールと水との混合溶媒(質量比1:1)で6回洗浄し、さらに、30℃で減圧乾燥することにより上記式(C−1−1)で示される化合物(C−1−1a)を12.6g得た。化合物(D)基準での化合物(C−1−1a)の収率は77%であった。ICP発光分析により測定した化合物(C−1−1a)中のアルミニウムの含有量を表1に示す。
【0316】
(ii)重合性液晶混合物(A−1a)の合成
ジムロート冷却管および温度計を設置した100mL−四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気とし、上記合成方法により合成した化合物(C−1−1a)11.02g、特許文献(特開2011−207765)を参考に合成した化合物(F−1−1)4.00g、ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」と略す。和光純薬工業(株)製)0.02g、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、「BHT」と略す。和光純薬工業(株)製)0.20g、およびクロロホルム(関東化学(株)製)58gを混合した後、ジイソプロピルカルボジイミド(以下、「IPC」と略す。和光純薬工業(株)製)4.05gを滴下漏斗で加えて0℃で一晩反応させた。反応終了後、濾過をして不溶成分を除去した。得られたクロロホルム溶液を、含有するクロロホルムの重量に対して3倍の重量のアセトニトリル(和光純薬工業(株)製)に滴下した。続いて、濾過して析出した固体を取り出し、20gのアセトニトリルで3回洗浄した後、30℃で減圧乾燥することにより化合物(A−1)とアルミニウムを含有する重合性液晶混合物(A−1a)を得た。表1に、重合性液晶混合物(A−1a)の得量、重合性液晶混合物(A−1a)の収率、重合性液晶混合物(A−1a)中のアルミニウム含有量、化合物(A−1)の極大吸収波長(λ
max)を示す。なお、重合性液晶混合物(A−1a)の収率は、化合物(F−1−1)を基準として算出した。
【0317】
(1−2)合成例(2)
(i)式(C−1−1)で示される化合物の合成
トランス−シクロヘキサンジカルボン酸としてロットの異なるもの〔アルミニウム元素含有量が450ppm(ICP発光分析)の市販品〕を用いた以外は、合成例1の(i)と同様の方法により、上記式(C−1−1)で示される化合物(C−1−1b)を得た。化合物(D)基準での化合物(C−1−1b)の収率は77%であった。ICP発光分析により測定した化合物(C−1−1b)中のアルミニウムの含有量を表1に示す。
【0318】
(ii)重合性液晶混合物(A−1b)の合成
化合物(C−1−1a)の代わりに化合物(C−1−1b)を用いた以外は合成例1と同様の方法により、化合物(A−1)とアルミニウムを含有する重合性液晶混合物(A−1b)を得た。重合性液晶混合物(A−1b)の得量、重合性液晶混合物(A−1b)の収率、重合性液晶混合物(A−1b)中のアルミニウム含有量、化合物(A−1)の極大吸収波長(λ
max)を表1に示す。なお、重合性液晶混合物(A−1b)の収率は、化合物(F−1−1)を基準として算出した。
【0319】
【表1】
【0320】
(2)液晶組成物の調製
表2に示す組成に従い、バイアル管に、合成例1および合成例2で得られた重合性液晶混合物、重合開始剤、レベリング剤、重合禁止剤および溶剤を仕込み、カルーセルを用いて80℃で5時間撹拌し、液晶組成物(1)〜(5)を得た。なお、表2に示す組成は、加熱前における各成分の質量%を表す。また、表2の割合で混合した場合における液晶組成物中の化合物(A−1)に対するアルミニウム含有量を表3に示す。
なお、下記重合開始剤(イルガキュア369)、レベリング剤(BYK−361N)、重合禁止剤(BHT)および溶剤(NMP)のアルミニウム含有量はいずれも0(ゼロ)ppmである。
【0321】
【表2】
【0322】
重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン(イルガキュア369;BASFジャパン社製)
レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK−361N;ビックケミージャパン製)
重合禁止剤:BHT(和光純薬工業(株)製)
溶剤:N−メチルピロリドン(NMP;関東化学(株)製)
【0323】
得られた液晶組成物(1)〜(5)は、それぞれ、重合性液晶化合物(A−1)の重合体を含む。GPCを用いて、前記重合体の重量平均分子量および面積百分率値を測定した。その結果を表3に示す。
【0324】
【表3】
【0325】
(3)保存安定性評価
液晶組成物(1)〜(5)を、それぞれ25℃で保管し、経時的に目視にて結晶析出の有無を確認し、以下の評価基準に従い保存安定性を評価した。結果を表4に示す。
保存安定性評価基準
1:保管後直ちに析出
2:保管24時間後に析出なし
3:保管48時間後に析出なし
4:保管72時間後に析出なし
【0326】
(4)光学フィルム(位相差フィルム)の作製
<光配向膜形成用組成物の調製>
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間撹拌することにより、光配向膜形成用組成物(1)を得た。
光配向性材料(5部):
【化177】
溶剤(95部):シクロペンタノン
【0327】
<光学フィルムの製造例>
以下のように光学フィルムを製造した。シクロオレフィンポリマーフィルム(COP)(ZF−14、日本ゼオン株式会社製)を、コロナ処理装置(AGF−B10、春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した表面に、前記光配向膜形成用組成物(1)をバーコーター塗布し、80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP−7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm
2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた配向膜の膜厚をレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ100nmであった。
続いて、前記保存安定性評価と同様の手順にて調製した液晶組成物(1)〜(5)を、それぞれ、配向膜上にバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY−A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm
2)することにより光学フィルムを作成した。なお、得られた光学フィルムのRe(450)/Re(550)の値は0.82であり、式(1):0.8≦Re(450)/Re(550)<1.00の光学特性を満たしていた。
【0328】
(5)配向欠陥の確認
得られた光学フィルムを、それぞれ10cm四方に切り出し、偏光顕微鏡(LEXT、オリンパス社製)を用いて目視にて画面上の配向欠陥の個数を確認した。結果を表4に示す。
配向欠陥評価基準
1:全面に配向欠陥が発生(>100個)
2:11〜100個
3:1〜10個
4:欠陥なし
【0329】
【表4】
【0330】
2.実施例6〜10
(1)重合性液晶化合物の合成
(1−1)合成例(3)
以下の方法に従い、下記式(A−2)で示される重合性液晶化合物(以下、「化合物(A−2)」ともいう)とアルミニウムを含む重合性液晶混合物(A−2a)を合成した。
【0331】
【化178】
【0332】
合成例1で用いた化合物(F−1−1)を化合物(F−1−2)に変更した以外は、合成例(1)と同様の条件で化合物(A−2)とアルミニウムを含有する重合性液晶混合物(A−2a)を得た。なお、化合物(F−1−2)は、特許文献(特開2010−31223)を参考に合成した。表5に、化合物(C−1−1a)中のアルミニウム含有量、重合性液晶混合物(A−2a)の得量、重合性液晶混合物(A−2a)の収率、重合性液晶混合物(A−2a)中のアルミニウム含有量、化合物(A−2)の極大吸収波長(λ
max)を示す。なお、重合性液晶混合物(A−2a)の収率は、化合物(F−1−2)を基準として算出した。
【0333】
(1−2)合成例(4)
【0334】
化合物(F−1−1)を化合物(F−1−2)に変更した以外は、合成例(2)と同様の条件で、化合物(A−2)とアルミニウムを含有する重合性液晶混合物(A−2b)を得た。化合物(C−1−1b)中のアルミニウム含有量、重合性液晶混合物(A−2b)の得量、重合性液晶混合物(A−2b)の収率、重合性液晶混合物(A−2b)中のアルミニウム含有量、化合物(A−2)の極大吸収波長(λ
max)を表5に示す。なお、重合性液晶混合物(A−2b)の収率は、化合物(F−1−2)を基準として算出した。
【0335】
【表5】
【0336】
(2)液晶組成物の調製
合成例3および合成例4で得られた重合性液晶混合物を用い、表6に示す組成に従い、実施例1と同様の方法で液晶組成物(6)〜(10)を調製した。なお、表6に示す組成は、加熱前における各成分の質量%を表す。また、表6の割合で混合した場合における液晶組成物中の化合物(A−2)に対するアルミニウム含有量を表7に示す。
【0337】
【表6】
【0338】
得られた液晶組成物(6)〜(10)は、それぞれ重合性液晶化合物(A−2)の重合体を含む。GPCを用いて、前記重合体の重量平均分子量および面積百分率値を測定した。その結果を表7に示す。
【0339】
【表7】
【0340】
(3)保存安定性評価、光学フィルム(位相差フィルム)の作製および配向欠陥の確認
得られた液晶組成物(6)〜(10)について、実施例1と同様の方法により保存安定性を評価した。さらに、実施例1と同様の方法により光学フィルムを作製し、得られた光学フィルムの配向欠陥の有無を確認した。その結果を表8に示す。
【0341】
【表8】
【0342】
3.実施例11〜15
(1)重合性液晶化合物の合成
(1−1)合成例(5)
以下の方法に従い、下記式(A−3)で示される重合性液晶化合物(以下、「化合物(A−3)」ともいう)とアルミニウムを含む重合性液晶混合物(A−3a)を合成した。
【0343】
【化179】
【0344】
合成例1で用いた化合物(F−1−1)を化合物(F−1−3)に変更した以外は、合成例1と同様の条件で化合物(A−3)とアルミニウムを含む重合性液晶混合物(A−3a)を得た。なお、化合物(F−1−3)は、特許文献(特開2011−207765)を参考に合成した。表9に、(C−1−1a)中のアルミニウム含有量、重合性液晶混合物(A−3a)の得量、重合性液晶混合物(A−3a)の収率、重合性液晶混合物(A−3a)中のアルミニウム含有量、化合物(A−3)の極大吸収波長(λ
max)を示す。
なお、重合性液晶混合物(A−3a)の収率は、化合物(F−1−3)を基準として算出した。
【0345】
(1−2)合成例(6)
【0346】
化合物(F−1−1)を化合物(F−1−3)に変更した以外は、合成例(2)と同様の条件で、化合物(A−3)とアルミニウムを含有する重合性液晶混合物(A−3b)を得た。化合物(C−1−1b)中のアルミニウム含有量、重合性液晶混合物(A−3b)の得量、重合性液晶混合物(A−3b)の収率、重合性液晶混合物(A−3b)中のアルミニウム含有量、化合物(A−3)の極大吸収波長(λ
max)を表1示す。なお、重合性液晶混合物(A−3b)の収率は、化合物(F−1−3)を基準として算出した。
【0347】
【表9】
【0348】
(2)液晶組成物の調製
合成例5および合成例6で得られた重合性液晶混合物を用い、表10に示す組成に従い、実施例1と同様の方法で液晶組成物(11)〜(15)を調製した。なお、表10に示す組成は、加熱前における各成分の質量%を表す。また、表10の割合で混合した場合における液晶混合物中の化合物(A−3)に対するアルミニウム含有量を表11に示す。
【0349】
【表10】
【0350】
得られた液晶組成物(11)〜(15)は、それぞれ、重合性液晶化合物(A−3)の重合体を含む。GPCを用いて、前記重合体の重量平均分子量および面積百分率値を測定した。その結果を表11に示す。
【0351】
【表11】
【0352】
(3)保存安定性評価、光学フィルム(位相差フィルム)の作製および配向欠陥の確認
得られた液晶組成物(11)〜(15)について、実施例1と同様の方法により保存安定性を評価した。さらに、実施例1と同様の方法により光学フィルムを作製し、得られた光学フィルムの配向欠陥の有無を確認した。その結果を表12に示す。
【0353】
【表12】
【0354】
4.比較例1〜6
(1)液晶組成物の調製
合成例(1)〜(6)で得た重合性液晶混合物(A−1a)〜(A−3b)を用い、表13に示す組成に従い、実施例1と同様の方法により液晶組成物(16)〜(21)を調製した。なお、表13に示す組成は、加熱前における各成分の質量%を表す。また、液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物に対するアルミニウム含有量を表14に示す。
【0355】
【表13】
【0356】
(2)保存安定性評価
得られた液晶組成物(16)、(18)および(20)について、実施例1と同様の方法により保存安定性を評価した。その結果を表14に示す。なお、液晶組成物(17)、(19)および(21)については、液晶組成物を構成する各成分を加熱、混合時にゲル化したため、保存安定性を評価することができなかった。
【0357】
【表14】
【0358】
表4、表8および表12に示すとおり、主鎖に環構造を3個以上(さらには5個以上)有する重合性液晶化合物と、前記重合性液晶化合物に対して1ppm以上170ppm以下のアルミニウムを含む実施例1〜15の液晶組成物は、保管後長時間にわたり結晶の析出が抑えられ、保存安定性に優れていた。また、実施例1〜15の液晶組成物を用いて形成した光学フィルムは、配向欠陥のない光学フィルムとなった。これに対して、本発明の実施例で用いたものと同じ重合性液晶化合物を含む液晶組成物であっても、重合性液晶化合物に対するアルミニウム含有量が1ppm未満である液晶組成物(比較例1、3および5)では重合性液晶化合物の重合体が得られず、保管後直ちに結晶の析出がみられ、保存安定性に劣ることが確認された。
【0359】
5.実施例16〜実施例17および比較例7
以下に、重合性液晶混合物に塩化アルミニウムを添加して調製した液晶組成物を用いた場合の保存安定性試験結果を示す。
(1)液晶組成物の調製
合成例(1)で得た重合性液晶混合物(A−1a)を用い、表15に示す組成に従い、この重合性液晶混合物(A−1a)、塩化アルミニウム(関東化学(株)製)、重合開始剤(イルガキュア369)、レベリング剤(BYK−361N)、重合禁止剤(BHT)および溶剤(NMP)を添加する以外は、実施例1と同様の方法で液晶組成物(22)、(23)および(24)を調製した。なお、表15に示す組成は、加熱前における液晶組成物〔重合性液晶混合物(A−1a)、塩化アルミニウム、重合開始剤、レベリング剤、重合禁止剤および溶剤〕の合計量(100質量%)に対する各成分の質量%を表す。また、表15の割合で混合した場合における液晶組成物中の化合物(A−1)に対するアルミニウム含有量(IPC分析法)を表16に示す。なお、用いた重合開始剤(イルガキュア369)、レベリング剤(BYK−361N)、重合禁止剤(BHT)および溶剤(NMP)のアルミニウム含有量はいずれも0(ゼロ)ppmである。
【0360】
【表15】
【0361】
得られた液晶組成物(22)、(23)および(24)は、それぞれ、重合性液晶化合物(A−1)の重合体を含む。GPCを用いて、前記重合体の重量平均分子量および面積百分率値を測定した。その結果を表16に示す。また、各液晶組成物の極大吸収波長を測定した結果を併せて示す。なお、液晶組成物(24)の重合体分子量(Mw)、重合体面積百分率および極大吸収波長は加熱中のゲル化により測定できなかった。
【0362】
【表16】
【0363】
(3)保存安定性評価、光学フィルム(位相差フィルム)の作製および配向欠陥の確認
得られた液晶組成物(22)および(23)について、実施例1と同様の方法により保存安定性を評価した。さらに、実施例1と同様の方法により光学フィルムを作製し、得られた光学フィルムの配向欠陥の有無を確認した。その結果を表17に示す。なお、液晶組成物(24)はゲル化したので、保存安定性の評価、光学フィルムの作製は行えなかった。
【0364】
【表17】