(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりや住宅の気密性向上などを背景に、室内の空気質モニタへの関心が高まっている。中でも、最も身近で検出しやすい成分として、二酸化炭素が注目されている。二酸化炭素は人間活動により放出されるため、二酸化炭素濃度のモニタリングにより室内活動での適度な換気タイミングを知ることができ、住宅やオフィスビルでのエネルギー使用効率化に貢献できる。このようなシステムを組み込んだ建物管理システムはHEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)などと呼ばれ、スマートシティ構想の重要な担い手として、大きく注目されている。
【0003】
この二酸化炭素センシングの方式には大きく分けて2つの方法がある。1つは固体電解質法と呼ばれるもので、固体電解質を加熱した際、二酸化炭素濃度に応じた起電圧が発生することを利用したものである。もう一つがNDIR(Non−dispersive Infrared)法と呼ばれるもので、前者に比べて精度が高い、製品寿命が長いといった利点があり、今後の二酸化酸素センサの主流になると期待されている。
【0004】
NDIR法ガスセンサの原理は以下のようなものである。まず、赤外線の光源と2つの赤外線センサ、そしてその間に測定対象ガスを注入するガスセルを用意する。2つ赤外線のセンサにはそれぞれ、測定したいガスの吸収波長及び非吸収波長のみを透過するフィルタが設けられており、これらセンサの出力比をとることで、ガスセル内のガス濃度を定量的に測定することができる。
【0005】
しかしながら、NDIR法を用いた二酸化炭素センサは、一般に複雑な部品構成や演算アルゴリズムを要するために高価であり、広く普及するには至っていない。特に、赤外線光源としては通常白熱球が用いられるが、白熱球は消費電力が高い上、コスト面でも高価格の一因となっている。上記の問題に対する手段の一つとして、光源として特定波長の赤外線を発する半導体発光素子(LED:Light Emitting Diode)の使用がある。例えば、消費電力について考えた場合、白熱球は非常に広帯域の発光スペクトルを発生させるが、LEDは必要な特定の波長付近のみの発光スペクトルを発生させる。従って、LEDを使用することにより、必要としない波長に対するエネルギーの非効率使用を削減させることができる。
【0006】
また、白熱球は使用時に電源を投入してから安定するまでに一定時間が必要なのに対し、LEDの立ち上がりは非常にシャープである。さらに、LEDは高速応答性も有するため、高速の間欠駆動が可能となり、最小限のエネルギーで二酸化炭素センサを駆動させるのに適していると言える。コストについても、従来技術の白熱球をLEDとすることでパッケージの小型化を狙うことができ、低コスト化に貢献できると考えられる。さらに、LEDの波長は半導体材料の組み合わせにより幅広く変化させることが可能である。二酸化炭素センサのみならず、他のガス検知へも、将来的には用途を拡大することが期待できる。
【0007】
以上に述べた理由から、二酸化炭素センサ光源としてLEDを採用することの利点は数多く存在するが、現在までに普及していないもう一つの理由として、発光強度が得られないためにガスセンサとしての信号強度(S/N比)が得られていないというものがある。発光強度を大きくするほどNDIR方式ガスセンサのS/N比は向上するため、ガスセンサとしての応用のためには、まず十分なLEDの発光強度を得なければならない。
【0008】
NDIR方式ガスセンサを二酸化炭素センサとして使用する場合、光源は二酸化炭素の特徴的な吸収帯である4.3μm付近の発光を示すLEDを用いる必要がある。このようなLEDを作成するためには4.3μmに対応するバンドギャップを有する半導体を用いてpn接合ダイオードを形成し、形成したpn接合ダイオードに順方向電流を流して接合部分である空乏層において、電子と正孔を再結合させることにより赤外線の発光を獲得する必要がある。ここで、LEDについては紫外線・可視光線領域での発光を示すものも含めると非常に多様な発光効率の向上策が検討されており、その多くは異なる波長についても応用が可能なものである。その方法の一つとして、特許文献1には、電極形状の工夫による発光効率の向上が述べられている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態と称する)を説明する。
[発光素子]
本実施形態に係る発光素子は、第1導電型半導体層と、発光層と、第2導電型半導体層とがこの順で積層された複数のメサ型化合物半導体積層部と、第1導電型半導体層に電気的に接続される第1電極部と、第2導電型半導体層に電気的に接続される第2電極部と、を備える。複数のメサ型化合物半導体積層部は、平面視でマトリクス状に配置されている。第1電極部は、複数のメサ型化合物半導体積層部の周囲に配置された底部電極部を有する。第2電極部は、第2導電型半導体層を覆う頂部電極部と、複数のメサ型化合物半導体積層部のうちマトリクスの行方向及び列方向の一方で隣り合うメサ型化合物半導体積層部の頂部電極部同士を電気的に接続する連結電極部とを有する。底部電極部は、マトリクスの行方向及び列方向の他方に沿って、行方向及び列方向の一方で隣り合うメサ型化合物半導体積層部間まで延伸した延伸電極部を含む。
【0016】
本実施形態に係る発光素子は、PN接合又はPIN接合により、注入電流に応じて所望の発光を出力するものである。メサ型化合物半導体積層部の保護と、第1電極部と第2電極部との電気的分離の観点から、発光素子はメサ型化合物半導体積層部の少なくとも一部を覆う保護層を備えていてもよい。
また、メサ型化合物半導体積層部を支持する部材として、基板をさらに有していてもよい。基板の具体例としては、Si、GaAs、InAs、GaSb、InSbなどが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0017】
[化合物半導体積層部]
本実施形態に係る発光素子において、化合物半導体積層部は、第1導電型半導体層と、発光層と、第2導電型半導体層とがこの順で積層された、メサ型化合物半導体積層部である。効率的な発光の観点から、第1導電型半導体層と発光層と第2導電型半導体層とによるPN接合、又は第1導電型半導体層と発光層と第2導電型半導体層とによるPIN接合からなる、フォトダイオード構造を含むものであることが好ましい。PN接合又はPIN接合の具体例として、赤外線領域ではp−InSb/n−InSb、p−InSb/i−InSb/n−InSb、p−AlInSb/i−AlInSb/n−AlInSb等が挙げられるがこれに限定されるものではない。また、i型半導体層は、p又はn型にドープされていても良い。また、さらに上記したPN接合又はPIN接合の各層の間に、キャリアの閉じ込め効果を狙ったバリア層を備えていても良い。このバリア層は第1導電型半導体層や第2導電型半導体層よりもバンドギャップが大きい材料であることが好ましい。
【0018】
メサ型化合物半導体積層部は、その表面に各導電型のコンタクト層を備えていてもよい。コンタクト層は各導電型のドーパントが高濃度にドープされた化合物半導体層であることが好ましい。
本実施形態に係る発光素子は、上記したメサ型化合物半導体積層部を複数備える。これら複数のメサ型化合物半導体積層部は、平面視で、n行m列(n≧2,m≧2)のマトリクス状に配置されている。ここで、マトリクスとは、平面視で、行方向に沿う複数の行と、列方向に沿う複数の列とが互いに交差する(例えば、直交する)態様のことである。本実施形態では、行の数がn(nは2以上の整数)で、列の数がm(mは2以上の整数)のマトリクスを、n行m列(n≧2、m≧2)のマトリクスという。
【0019】
メサ構造を設けることにより、第1電極部と第2電極部とを化合物半導体積層部の同一方向側(例えば、上下の一方側)に設けることが可能であり、第1、第2電極部が設けられない他方側から光を出射することにより、より広い面積を発光出射部として使用することが可能となる。発光素子が基板を備える場合は、基板側から光を出射することになるため、化合物半導体積層部の発光層よりもバンドギャップが大きな材料を基板として用いることが好ましい。
【0020】
[保護層]
本実施形態に係る発光素子において、保護層は、化合物半導体積層部の表面の少なくとも一部を覆う。また、保護層は、第1保護層と第2保護層とを有してもよい。第1保護層は、メサ型化合物半導体積層部を保護することに加え、発光層で発光された光を光取り出し面へ効率よく導き、出力を高める機能があるものが好ましい。例えば、光取り出し面をメサ凸側(即ち、メサの頂部側)と反対側(即ち、メサの底部側)に設けた赤外線発光素子の場合、第1保護層は、メサ構造の半導体層よりも屈折率の低い材料であることが好ましく、屈折率が1.47程度である酸化珪素(SiO
2)、又は屈折率が1.9程度である窒化珪素(SiN)が最も代表的な例として挙げられる。また、第2保護層は、湿度環境に対するバリアとしての機能を有するものが好ましく、例えば、耐湿性に優れたSiNが挙げられる。
【0021】
[電極部]
本実施形態に係る発光素子において、電極部は、メサ型化合物半導体積層部の第1導電型半導体層に電気的に接続される第1電極部と、メサ型化合物半導体積層部の第2導電型半導体層に電気的に接続される第2電極部とに分類される。
第1電極部は、複数のメサ型化合物半導体積層部の周囲に配置された底部電極部を有する。また、第2電極部は、第2導電型半導体層を覆う頂部電極部と、連結電極部とを有する。連結電極部は、複数のメサ型化合物半導体積層部のうちマトリクスの行方向及び列方向の一方で隣り合うメサ型化合物半導体積層部の頂部電極部同士を電気的に接続するものである。
【0022】
底部電極部は、マトリクスの行方向及び列方向の他方(即ち、連結電極部の延伸方向に垂直に交わる方向)に沿って、行方向及び列方向の一方で隣り合うメサ型化合物半導体積層部間まで延伸した延伸電極部を含む。底部電極部は、複数のメサ型化合物半導体積層部の各々の周囲の55%以上を囲うことが好ましい(即ち、下部電極囲い率は55%以上であることが好ましい。)。
【0023】
また、マトリクスの行方向及び列方向の一方(即ち、連結電極部の延伸方向)で隣り合うメサ型化合物半導体積層部間において、連結電極部の他方に沿う長さ(即ち、幅)と、延伸電極部の他方に沿う長さ(即ち、長手方向の長さ)との比が、1:1〜1:20の範囲内であることが好ましい。また、上記の比が1:20に近づくと連結電極部の配線抵抗が増加するため、1:1〜1:10、さらには1:1〜1:5とすることがより好ましい。
【0024】
また、頂部電極部は、複数のメサ型化合物半導体積層部の各々について、平面視で、その第2導電型半導体層の面積の70%以上を覆うように形成されていることが好ましい(即ち、上部電極被覆率は70%以上であることが好ましい)。
また、第1、第2電極部の構成材料としては、化合物半導体積層部とのコンタクト抵抗が低いものや、電気抵抗が低いものであることが好ましい。具体的にはTi、Ni、Pt、Cr、Al、Cuが挙げられる。また、第1、第2電極部は複数の電極材料の積層体で構成されていても良い。
【0025】
メサ型化合物半導体積層部の第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層(バリア層を除く)としてナローバンドギャップ材料を用いる場合、本実施形態に示した第1、第2電極部の構造をとることにより、特に発光効率の向上が達成される。ナローバンドギャップ半導体は可視・紫外領域に発光波長を有するLED材料に対して電気伝導性が高く、特に延伸電極部の寄与により発光効率の向上が見込める。
【0026】
具体的には第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層(バリア層を除く)がそれぞれ、0.1eV以上、1.2eV以下のバンドギャップ材料である形態が例示される。バンドギャップが0.1〜1.2eVの材料としては、InSb、AlInSb、GaInSb、InAs、InAsSbが挙げられるがこの限りではない。
以下、図面を参酌しながら、本実施形態の具体的な形態として、第1〜第3実施形態、実施例1〜3をそれぞれ説明するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。また、各図面において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0027】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る発光素子100の構成例を模式的に示す図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)の平面図をA1−A´1線で切断した断面図、
図1(c)は
図1(a)の平面図をB1−B´1線で切断した断面図である。また、
図2は、第1実施形態に係る発光素子100の構成例を模式的に示す斜視図である。
【0028】
図1(a)〜(c)に示すように、第1実施形態に係る発光素子100は、例えば赤外線発光素子である。この発光素子100は、基板上に形成された複数のメサ型化合物半導体積層部10と、第1電極部20と、第2電極部30とを備える。複数のメサ型化合物半導体積層部10の各々は、PN接合又はPIN接合によるフォトダイオード構造を含み、
図1(a)及び
図2に示すようにn行m列(n≧2,m≧2)のマトリクス状に配置されている。
【0029】
第1電極部20は、複数のメサ型化合物半導体積層部10の各々を平面視で囲う底部電極部21を有する。第2電極部30は、複数のメサ型化合物半導体積層部10の頂部の第2導電型半導体層の70%以上を覆う頂部電極部31と、列方向に隣接する頂部電極部31同士を電気的に接続する連結電極部32とを有する。そして、底部電極部21は、連結電極部32の延伸方向と平面視で垂直に交わる方向に沿って、隣り合うメサ型化合物半導体積層部10間まで延伸した延伸電極部22を含む。
【0030】
図9は、本発明の比較例に係る赤外線発光素子900の構成例を模式的に示す平面図である。
図9に示すように、比較例に係る赤外線発光素子900には、本実施形態で説明した連結電極部32や延伸電極部22が存在せず、発光効率の向上に関して最適化された形ではなかった。
しかし、
図1に示したように、本実施形態では、複数のメサ型化合物半導体積層部10を平面視でマトリクス状に配置し、且つ、マトリクスの行方向及び列方向の一方(例えば、行方向)に沿って連結電極部32を配置し、行方向及び列方向の他方(例えば、列方向)に沿って、行方向及び列方向の一方(例えば、行方向)で隣り合うメサ型化合物半導体積層部10間まで延伸する延伸電極部22を配置することにより、発光素子の電極形状のさらなる最適化及び発光効率のさらなる向上が可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態に係る発光素子200の構成例を模式的に示す図であり、
図3(a)は平面図、
図3(b)は
図3(a)の平面図をA3−A´3線で切断した断面図、
図3(c)は
図3(a)の平面図をB3−B´3線で切断した断面図である。
図3(a)〜(c)に示すように、第2実施形態に係る発光素子200は、第1実施形態に係る発光素子100と比較して、例えば1列目(左端側)のメサ型化合物半導体積層部10の左側も延伸電極部22で囲われているため、発光効率の向上に寄与する。
【0032】
[第3実施形態]
図4は本発明の第3実施形態に係る発光素子300の構成例を模式的に示す図であり、
図4(a)は平面図、
図4(b)は
図4(a)の平面図をA4−A´4線で切断した断面図、
図4(c)は
図4(a)の平面図をB4−B´4線で切断した断面図である。
第3実施形態に係る発光素子300は、第1実施形態に係る発光素子100と比較して、保護層40をさらに備えている。保護層40は、メサ型化合物半導体積層部10の側斜面部と頂部の一部を覆うように形成されている。換言すると、第2電極部30が第1導電型半導体層と接しないように保護層が形成されている。これにより、第2電極部30に入力される電力を発光部に効率的に導くことができるため好ましい。
【0033】
(実施形態の効果)
本実施形態は、第1導電型半導体層、発光層、第2導電型半導体層がこの順で積層された複数のメサ型半導体積層部をn行m列(n≧2,m≧2)のマトリクス状に形成した発光素子に関するものである。本実施形態に係る発光素子によれば、延伸電極部をもたない発光素子に比べて、発光効率の向上を達成することができる。さらに、一般にダイオードの発光強度はダイオード面積に比例するが、本実施形態によれば、延伸電極部によるダイオード面積の縮小にも関わらず、発光効率を向上させることができる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
図5(a)に示すように、GaAs基板1上に、第1導電型(例えば、n型)半導体層11として、Snを濃度1×10
19[cm−3]ドーピングしたAl
0.05In
0.95Sb層を1μm形成した。さらに、その上に第1導電型のバリア層12として、Snを濃度1×10
19[cm
−3]ドーピングしたAl
0.22In
0.88Sb層を20nm形成した。さらに、その上に発光層13としてノンドープのInSb層を2μm形成した。さらに、その上に第2導電型(例えば、p型)のバリア層14として、Znを濃度1×10
18[cm
−3]ドーピングしたAl
0.22In
0.88Sbを20nm形成した。さらに、その上に第2導電型半導体層15として、Znを濃度1×10
18[cm
−3]ドーピングしたAl
0.05In
0.95Sb層を0.5μm形成した。第1導電型半導体層11と、第1導電型のバリア層12と、発光層13と、第2導電型のバリア層14と、第2導電型半導体層15とが、PIN接合によるフォトダイオード構造をなしている。
【0035】
この化合物半導体積層体上にレジストパターンを形成した。そして、このレジストパターンをマスクに化合物半導体積層体をエッチングした。これにより、
図5(b)に示すように、基板1上に複数のメサ型化合物半導体積層部10を形成した。実施例1では、複数のメサ型化合物半導体積層部10を、平面視で3行2列のマトリクス状に形成した。
次に、メサ型化合物半導体積層部10の上方全面に第1保護層41としてSiO
2膜を5000Å形成した。そして、このSiO
2膜上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにSiO
2膜をドライエッチングした。これにより、第1保護層41としてのSiO
2膜をパターニングした。続いて、このSiO
2膜をハードマスクに用いて、第1導電型半導体層11を基板までドライエッチングした。これにより、
図5(c)に示すように、複数のメサ型化合物半導体積層部10を囲むように溝部50をGaAs基板1に形成し、ダイオードを電気的に独立とした。このドライエッチングにより、SiO
2膜は膜減りし、その厚さは約3000Åとなった。なお、この溝部50の形成により、平面視でマトリクス状に配置された複数のメサ型化合物半導体積層部10の周囲を囲むように第1導電型半導体メサ部60が形成される。
【0036】
次に、第1保護層41としてのSiO
2膜上に、第2保護層42としてSiN膜を2000Å形成した。次に、メサ型化合物半導体積層部10の頂部(即ち、第2導電型半導体層15)上の一部と、底部(即ち、第1導電型半導体層11)上の一部とをそれぞれ開口し、それ以外の領域を覆うレジストパターンを形成した。そして、このレジストパターンをマスクにSiN膜、SiO
2膜を順次ドライエッチングした。これにより、
図6(a)に示すように、SiN膜及びSiO
2膜下から、メサ型化合物半導体積層部10の頂部と底部をそれぞれ露出させた。このとき、底部上(即ち、第1導電型半導体層11)には複数のメサ型化合物半導体積層部10の各々を囲むように露出部が形成される。
【0037】
さらに、
図4に示したような第1電極部20、第2電極部30を形成するために、基板1上方にレジストパターンを形成し、Tiを1000Å、Ptを200Å、Auを3000Å、この順で蒸着し、その後リフトオフを行った。これにより、
図6(b)に示すように、第1電極部20(底部電極部21、延伸電極部22)と、第2電極部30(頂部電極部31、連結電極部32)とを形成し、赤外線発光素子400を得た。
【0038】
ここで、メサ型化合物半導体層の底部(即ち、第1導電型半導体層)の外周辺のうち、第1電極部20で覆われている外周辺の割合を、下部電極囲い率(%)と定義する。また、メサ型化合物半導体層の頂部(即ち、第2導電型半導体層)上面のうち、第2電極部30で覆われている頂部上面の割合を上部電極被覆率(%)と定義する。
また、上記の製造方法で得られた赤外線発光素子400を
図7に示す。
図7(a)は赤外線発光素子400の表面を倍率100倍で観察した光学顕微鏡による上面図である。
図7(b)は
図7(a)のトレース図である。
【0039】
実施例1では、化合物半導体積層部10をメサ型で、且つ平面視で3行2列のマトリクス状に形成した。その結果、赤外線発光素子400の下部電極囲い率は79%となり、上部電極被覆率92%となった。また、例えば行方向で隣り合う化合物半導体積層部10間で、連結電極部32の幅Wと、延伸電極部22の長さLの比は1:1.4となった。
この赤外線発光素子400を用いて発光強度の測定を行ったところ、
図9の比較例に比べて、同一消費電力あたり約1.13倍の発光効率を得ることができた。
【0040】
[実施例2]
メサ型化合物半導体積層部のマトリクス状の配置を3行4列とし、それ以外は実施例1と同様の工程を経て赤外線発光素子500を得た。また、第1電極部20の形成領域を含めた全ダイオード形成面積を、実施例1と同じになるようにした。得られた赤外線発光素子500を
図8に示す。
図8(a)は赤外線発光素子500の表面を倍率100倍で観察した光学顕微鏡による上面図であり、
図8(b)はそのトレース図である。
【0041】
実施例2で得られた赤外線発光素子500の下部電極囲い率は68%となり、上部電極被覆率は90%となった。また、連結電極部32の幅Wと、延伸電極部22の長さLの比は1:1.4となった。
この赤外線発光素子500を用いて発光強度の測定を行ったところ、
図9の比較例に比べて、同一消費電力あたり約1.16倍の発光効率を得ることができた。
【0042】
[実施例3]
メサ型化合物半導体積層部のマトリクス状の配置を3行6列とし、それ以外は実施例1と同様の工程を経て赤外線発光素子(図示せず)を得た。また、第1電極部20の形成領域を含めた全ダイオード形成面積を、実施例1と同じになるようにした。
実施例3で得られた赤外線発光素子の下部電極囲い率は59%となり、上部電極被覆率は88%となった。また、連結電極部32の幅Wと、延伸電極部22の長さLの比は1:1.4となった。この赤外線発光素子を用いて発光強度の測定を行ったところ、
図9の比較例に比べて、同一消費電力あたり約1.18倍の発光効率を得ることができた。
【0043】
[比較例]
メサ型化合物半導体積層部910のマトリクス状の配置を3行1列とし、それ以外は実施例1と同様の工程を経て赤外線発光素子900を得た。また、第1電極部920の形成領域を含めた全ダイオード形成面積を、実施例1と同じになるようにした。得られた赤外線発光素子900を
図9に示す。
前述のように、メサ型化合物半導体積層部910のマトリクス状の配置は3行1列であるため、第1電極部920に延伸電極部は存在しない。この比較例では、下部電極囲い率が83%、上部電極被覆率が95%となった。第1〜第3実施例と、比較例との違いを表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
<その他>
本発明は、以上に記載した各実施形態や実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて各実施形態や実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、各実施形態や実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更が加えられた態様も本発明の範囲に含まれる。