(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液晶ポリエステルと、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料とを含み、前記液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有し、2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量が、全繰返し単位の合計量に対して、10モル%以上15モル%以下である液晶ポリエステルである液晶ポリエステル組成物。
−O−Ar1−CO− (1)
−CO−Ar2−CO− (2)
−O−Ar3−O− (3)
(Ar1は、2,6−ナフチレン基、1,4−フェニレン基又は4,4’−ビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、2,6−ナフチレン基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は4,4’−ビフェニリレン基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の液晶ポリエステル組成物に含まれる液晶ポリエステルは、溶融時に光学異方性を示すポリエステルであり、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(1)ということがある)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(2)ということがある)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、繰返し単位(3)ということがある)とを有するものである。
【0008】
(1)−O−Ar
1−CO−
(2)−CO−Ar
2−CO−
(3)−O−Ar
3−O−
【0009】
(Ar
1は、2,6−ナフチレン基、1,4−フェニレン基又は4,4’−ビフェニリレン基を表す。Ar
2及びAr
3は、それぞれ独立に、2,6−ナフチレン基、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基又は4,4’−ビフェニリレン基を表す。Ar
1、Ar
2又はAr
3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
【0010】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar
1、Ar
2又はAr
3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0011】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar
1が2,6−ナフチレン基であるもの、すなわち6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位、及びAr
1が1,4−フェニレン基であるもの、すなわちp−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位が好ましい。
【0012】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar
2が2,6−ナフチレン基であるもの、すなわち2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位、Ar
2が1,4−フェニレン基であるもの、すなわちテレフタル酸に由来する繰返し単位、及びAr
2が1,3−フェニレン基であるもの、すなわちイソフタル酸に由来する繰返し単位が好ましい。
【0013】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar
3が1,4−フェニレン基であるもの、すなわちヒドロキノンに由来する繰返し単位、及びAr
3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの、すなわち4,4’−ジヒドロキシビフェニルに由来する繰返し単位が好ましい。
【0014】
液晶ポリエステル中、2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量、すなわち、Ar
1が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(1)、Ar
2が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)、及びAr
3が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(3)の合計含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量を各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、10モル%以上である。かかる所定の繰返し単位組成を有する液晶ポリエステルを用いることにより、磁性フィラーの含有量が多くても、機械的特性に優れる液晶ポリエステル組成物を得ることができる。この2,6−ナフチレン基の含有量は、好ましくは12モル%以上、より好ましくは14モル%以上である。なお、液晶ポリエステルとして、2種以上の混合物を用いる場合は、混合物全体における全繰返し単位の合計量に対して、混合物全体における2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量が、10モル%以上、好ましくは12モル%以上、より好ましくは14モル%以上になるようにすればよい。
【0015】
また、液晶ポリエステル中、繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%であり、繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%であり、繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。このような所定の繰返し単位組成を有する液晶ポリエステルは、耐熱性と成形性とのバランスに優れている。なお、繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量とは、実質的に等しいことが好ましい。また、液晶ポリエステルは、必要に応じて繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有していてもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0016】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、繰返し単位(2)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ジカルボン酸と、繰返し単位(3)を与えるモノマー、すなわち所定の芳香族ジオールとを、重合(重縮合)させることにより、製造することができる。その際、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの、カルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるものが挙げられる。
【0017】
また、液晶ポリエステルは、モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や溶融張力が高い液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0018】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上、さらに好ましくは295℃以上であり、また、通常380℃以下、好ましくは350℃以下である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や溶融張力が向上し易いが、あまり高いと、溶融させるために高温を要し、成形時に熱劣化し易くなる。
【0019】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管レオメータを用い、9.8MPa(100kg/cm
2)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で液晶ポリエステルの加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48,000ポイズ)を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0020】
本発明の液晶ポリエステル組成物は、磁性フィラーとして、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料を含む。
【0021】
セラミック粉は、セラミックを含む粉体であり、セラミックの例としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム及びバリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物、窒化物及び炭化物が挙げられ、それらの2種以上を用いてもよい。セラミック粉は、酸化ケイ素を主成分とするものであることが好ましい。セラミック粉に占める酸化珪素の割合は、通常50〜100質量%、好ましくは80〜100質量%である。
【0022】
軟磁性金属粉は、保磁力が小さく、透磁率が大きい金属(軟磁性金属)を含む粉体であり、軟磁性金属の例としては、コバルト、鉄、ニッケル及びそれらの合金が挙げられ、それらの2種以上を用いてもよい。軟磁性金属の合金の例としては、Fe−Si系合金(珪素鋼)、Fe−Al系合金(アルパーム)、Fe−Ni系合金(パーマロイ)、Fe−Co系合金、Fe−V系合金(パーメンジュール)Fe−Cr系合金、Fe−Si系合金(ケイ素鋼)、Fe−Al−Si系合金、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Cu−Nb−Si−B系合金及びFe−Ni−Cr系合金(ミューメタル)が挙げられる。軟磁性金属又はその合金の透磁率は、真空の透磁率で除した比透磁率で表して、好ましくは100以上、より好ましくは200以上である。
【0023】
軟磁性金属粉は、鉄若しくはその合金又はニッケル若しくはその合金を主成分とするものであることが好ましく、鉄又はその合金を主成分とするものであることがより好ましい。軟磁性金属粉に占める鉄若しくはその合金又はニッケル若しくはその合金の割合は、通常50〜100重量%、好ましくは80〜100重量%である。
【0024】
軟磁性金属粉の扁平率は、好ましくは2以上であり、より好ましくは2.5以上である。ここでいう扁平率とは、軟磁性金属粉を、走査型電子顕微鏡又は光学顕微鏡を用いて、100〜300倍程度で外観観察し、100個程度の粒子について、各粒子における最も短い径(短径S)に対する最も長い径(長径L)の比率(L/S)を求め、それらを数平均して得られる値である。軟磁性金属粉の扁平率が2以上であれば、液晶ポリエステル組成物を溶融成形する際、その流動方向(MD)に複合材料の長軸が配向し易くなり、MDに平行な面を電磁波シールド面とすると、この面に占める複合材料の面積割合が増大し易くなり、複合材料の電磁波シールド性能を有効に活かせるので好ましい。
【0025】
複合材料は、液晶ポリエステル組成物の絶縁性の観点から、軟磁性金属粉をセラミック粉で被覆してなるものであることが好ましい。この複合材料は、軟磁性金属粉の表面の一部をセラミック粉で被覆してなるものであってもよいが、軟磁性金属粉の表面の全部をセラミック粉で被覆してなるものであることが好ましい。
【0026】
複合材料の体積平均粒径は、液晶ポリエステルに対する分散性の観点から、好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。複合材料の体積平均粒径は、レーザー回折散乱法により測定できる。
【0027】
複合材料は、セラミック粉と軟磁性金属粉とを、ボールミル、遊星ボールミル、サンドミル等、乾式で混合できる混合機を用いて混合し、その後、必要に応じて、熱処理、粉砕、分球等を行うことにより、製造することができる。その際、混合機として遊星ボールミルを用いると、軟磁性金属粉をセラミック粉で被覆してなる複合材料が得られ易い。混合や熱処理は、軟磁性金属粉の酸化を防止するために、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0028】
複合材料の市販品は、(株)日立ハイテクノロジーズから入手することができる(「電子材料」2008年9月号参照)。
【0029】
液晶ポリエステル組成物中の複合材料の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、液晶ポリエステル組成物の電磁波シールド性の観点から、好ましくは100質量部以上、より好ましくは120質量部以上、さらに好ましくは140質量部以上であり、液晶ポリエステル組成物の成形加工性の観点から、好ましくは450質量部以下、より好ましくは300質量部以下、さらに好ましくは250質量部以下である。
【0030】
液晶ポリエステル組成物は、複合材料以外の充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0031】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0032】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
【0033】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜20質量部である。
【0034】
液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステル、複合材料及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、ペレット状に裁断することにより、すなわち溶融造粒により、製造することができる。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0035】
液晶ポリエステル組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形法が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0036】
液晶ポリエステル組成物の成形体である製品・部品の例としては、ハウジング;光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。
【実施例】
【0037】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm
2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0038】
〔液晶ポリエステル(1)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、ヒドロキノン272.52g(2.475モル:2,6−ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸の合計量に対して0.225モル過剰)、無水酢酸1226.87g(12モル)及び触媒として1−メチルイミダゾール0.17gを入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで30分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温し、310℃で3時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から293℃まで5時間かけて昇温し、293℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルは、全繰り返し単位の合計量に対して、Ar
1が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(1)を55モル%、Ar
2が2,6−ナフチレン基である繰返し単位(2)を17.5モル%、Ar
2が1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)を5モル%、及びAr
3が1,4−フェニレン基である繰返し単位(3)を22.5%有し、その流動開始温度は319℃であった。
【0039】
〔液晶ポリエステル(2)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルは、Ar
1が1,4−フェニレン基である繰返し単位(1)を60モル%、Ar
2が1,4−フェニレン基である繰返し単位(2)を15モル%、Ar
2が1,3−フェニレン基である繰返し単位(2)を5モル%、及びAr
3が4,4’−ビフェニリレン基である繰返し単位(3)を20%有し、その流動開始温度は327℃であった。
【0040】
実施例1
液晶ポリエステル(1)100質量部に対して、液晶ポリエステル(2)375質量部及び複合材料((株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー)775質量部(液晶ポリエステル(1)及び(2)の合計100質量部に対して、163質量部)を混合し、同方向2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30HS」)を用いて、330℃で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、裁断して、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。この液晶ポリエステル組成物に含まれる液晶ポリエステル中の2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量は、15モル%である。
【0041】
得られた液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)の「PS40E5ASE型」)を用いて、350℃で、ASTM 4号ダンベルに成形し、ASTM D638に準拠して、引張強さ及び引張弾性率を測定した結果、引張強さは74MPaであり、引張弾性率は4343MPaであった。
【0042】
また、得られた液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)の「PS40E5ASE型」)を用いて、350℃で、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ6.4mmの試験片に成形し、ASTM D790に準拠して、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した結果、曲げ強さは93MPaであり、曲げ弾性率は7117MPaであった。
【0043】
比較例1
液晶ポリエステル(2)100質量部に対して、複合材料((株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー)163質量部を混合し、同方向2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30HS」)を用いて、330℃で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、裁断して、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。この液晶ポリエステル組成物に含まれる液晶ポリエステル中の2,6−ナフチレン基を含む繰返し単位の含有量は、0モル%である。
【0044】
得られた液晶ポリエステル組成物について、実施例1と同様に、引張強さ及び引張弾性率を測定した結果、引張強さは58MPaであり、引張弾性率は4063MPaであった。
【0045】
また、得られた液晶ポリエステル組成物について、実施例1と同様に、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した結果、曲げ強さは74MPaであり、曲げ弾性率は6961MPaであった。