特許第6294981号(P6294981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6294981
(24)【登録日】2018年2月23日
(45)【発行日】2018年3月14日
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20180305BHJP
【FI】
   F28D15/02 106F
   F28D15/02 101H
   F28D15/02 L
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-13588(P2017-13588)
(22)【出願日】2017年1月27日
【審査請求日】2017年6月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】青木 博史
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義勝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 啓志
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−153438(JP,A)
【文献】 特開2010−243077(JP,A)
【文献】 特開2005−016892(JP,A)
【文献】 特開平10−082591(JP,A)
【文献】 特開2009−024933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H05K 7/20
H01L 23/34−23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された板状部材により空洞部が形成されたコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、前記空洞部に収容されたウィック構造体と、を有するベーパーチャンバであって、
前記コンテナの最外層を構成する一方の板状部材が、孔部を有する少なくとも一つの一方の突出部を有し、前記コンテナの最外層を構成する他方の板状部材が、前記一方の突出部と積層される、前記孔部と前記空洞部を連通する流路を備えた少なくとも一つの他方の突出部を有し、
積層された前記板状部材が、少なくとも3枚であり、最外層を構成する前記一方の板状部材と最外層を構成する前記他方の板状部材との間に積層された中層の板状部材が、前記一方の突出部及び前記他方の突出部と積層される、前記孔部と前記流路に連通した他の孔部を備えた少なくとも一つの中層の突出部と、前記空洞部の内側面を形成する枠部と、を有し、
前記空洞部の外周が封止されたベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記孔部よりも前記空洞部側に、前記流路の封止部を有する請求項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
前記封止部よりも外側に、積層された前記一方の突出部と前記他方の突出部の切断部が形成された請求項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
前記切断部が、コンテナの外周から突出していない請求項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
前記流路が、板金加工で形成された請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項6】
前記孔部及び前記他の孔部が、平面視円形であり、0.1〜5mmの直径を有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項7】
前記流路が、0.1〜5mmの幅、0.1〜5mmの高さ、5〜150mmの長さを有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項8】
前記コンテナの材質が、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル及びニッケル合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属である請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の注入、脱気用ノズルが取り付けられていないことにより、同じ設置スペースであっても、作動流体の封入された領域をより拡張することができるベーパーチャンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化に伴う高密度搭載等により、発熱量が増大し、近年、その冷却がより重要となっている。電子部品の冷却方法として、ベーパーチャンバが使用されることがある。
【0003】
ベーパーチャンバのコンテナには、脱気され、作動流体の封入された空洞部が設けられている。作動流体が空洞部内を相変化しながら拡散、還流することで、ベーパーチャンバの受熱部から放熱部へ面状に熱が輸送される。空洞部を脱気し、空洞部に作動流体を注入するために、コンテナには該空洞部と連通したノズルが取り付けられる。ノズルは、作動流体を注入後、径方向に潰されて封止されるので、ベーパーチャンバには、ノズルが、コンテナの外周から所定の突出量にて突出した状態で残される。このため、ベーパーチャンバを設置するには、コンテナの外側にノズルの突出量に応じたスペースが必要である。しかし、狭小空間では、上記スペースを設けることが難しいので、ベーパーチャンバを設置することができない場合がある。
【0004】
そこで、ノズルの突出量に応じて、所定の輪郭線の内側にノズルが位置するように収められたベーパーチャンバが提案されている(特許文献1)。しかし、特許文献1でも、ノズルがコンテナの外周から突出しているので、ノズル周辺の空洞部を後退させる必要があり、作動流体による熱輸送面積が、空洞部の後退分、狭くなってしまう、すなわち、放熱効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
また、特許文献1では、コンテナとは別の部材であるノズルが必要なので、部品点数が増大してしまうという問題、さらに、ベーパーチャンバの生産にあたり、ノズルの取り付け工程が必要なので、生産性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−258079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、部品点数の低減と生産性に優れ、また、作動流体が封入された空洞部の外周のスペースを低減しつつ、空洞部の面積縮小を防止できるベーパーチャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、積層された板状部材により空洞部が形成されたコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、前記空洞部に収容されたウィック構造体と、を有するベーパーチャンバであって、前記コンテナの最外層を構成する一方の板状部材が、孔部を有する少なくとも一つの一方の突出部を有し、前記コンテナの最外層を構成する他方の板状部材が、前記一方の突出部と積層される、前記孔部と前記空洞部を連通する流路を備えた少なくとも一つの他方の突出部を有し、前記空洞部の外周が封止されたベーパーチャンバである。
【0009】
上記態様では、少なくとも2枚の板状部材が積層されて、空洞部を有するコンテナが形成されている。また、一方の突出部及び他方の突出部は、コンテナの外周から突出した部位である。
【0010】
本発明の態様は、積層された板状部材により空洞部が形成されたコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、前記空洞部に収容されたウィック構造体と、を有するベーパーチャンバであって、前記コンテナの最外層を構成する一方の板状部材が、孔部を有する少なくとも一つの一方の突出部を有し、前記コンテナの最外層を構成する他方の板状部材が、前記一方の突出部と積層される、前記孔部と前記空洞部を連通する流路を備えた少なくとも一つの他方の突出部を有し、積層された前記板状部材が、少なくとも3枚であり、最外層を構成する前記一方の板状部材と最外層を構成する前記他方の板状部材との間に積層された中層の板状部材が、前記一方の突出部及び前記他方の突出部と積層される、前記孔部と前記流路に連通した他の孔部を備えた少なくとも一つの中層の突出部と、前記空洞部の内側面を形成する枠部と、を有し、前記空洞部の外周が封止されたベーパーチャンバである。
【0011】
上記態様では、少なくとも3枚の板状部材が積層されて、空洞部を有するコンテナが形成されている。このうち、中層の板状部材の枠部が、空洞部を形成するスペーサーとして機能する。また、中層の突出部は、コンテナの外周から突出した部位である。
【0012】
本発明の態様は、前記孔部よりも前記空洞部側に、前記流路の封止部を有するベーパーチャンバである。
【0013】
本発明の態様は、前記封止部よりも外側に、積層された前記一方の突出部と前記他方の突出部の切断部が形成されたベーパーチャンバである。
【0014】
上記態様では、流路の封止部よりも突出部の先端側にて、積層された一方の突出部と他方の突出部が切断されている。
【0015】
本発明の態様は、前記切断部が、コンテナの外周から突出していないベーパーチャンバである。上記態様では、一方の突出部と他方の突出部が、その基部から切り落とされている。
【0016】
本発明の態様は、前記流路が、板金加工で形成されたベーパーチャンバである。
【0017】
本発明の態様は、前記孔部及び前記他の孔部が、平面視円形であり、0.1〜5mmの直径を有するベーパーチャンバである。本明細書中、「平面視」とは、ベーパーチャンバの平面部に対して鉛直方向から視認した態様を意味する。
【0018】
本発明の態様は、前記流路が、0.1〜5mmの幅、0.1〜5mmの高さ、5〜150mmの長さを有するベーパーチャンバである。
【0019】
本発明の態様は、前記コンテナの材質が、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル及びニッケル合金からなる群から選択された少なくとも1種の金属であるベーパーチャンバである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、一方の突出部には孔部を設けるスペースがあればよく、また、他方の突出部は一方の突出部と同じスペースがあればよい、すなわち、一方の突出部と他方の突出部の突出量を低減できるので、空洞部外周のスペースを低減しつつ、空洞部の面積縮小を防止できる。従って、ベーパーチャンバの設置スペースが狭小でも、空洞部の面積を確保することができ、優れた放熱効率を得ることができる。
【0021】
本発明の態様によれば、空洞部を脱気し、空洞部に作動流体を注入するために、ノズル等、コンテナとは別の部材を用意する必要がないので、部品点数を低減できる。また、本発明の態様によれば、ベーパーチャンバの製造にあたり、ノズル等、コンテナとは別の部材をコンテナに取り付ける工程が必要ないので、生産性に優れている。
【0022】
本発明の態様によれば、積層された板状部材が少なくとも3枚であり、中層の板状部材が空洞部の内側面を形成する枠部を有することにより、コンテナの平面視の形状を複雑化できるので、ベーパーチャンバの設計の自由度が向上する。
【0023】
本発明の態様によれば、封止部よりも外側に、積層された突出部の切断部が形成されることにより、突出部の突出量をより低減できるので、空洞部外周のスペースをより低減しつつ、空洞部の面積をより十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバの封止前の分解斜視図である。
図2】(a)図は、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバの封止前の平面図、(b)図は、(a)図の(A)−(A)断面の説明図、(c)図は、(a)図の(B)−(B)断面の説明図、(d)図は、(a)図の(C)−(C)断面の説明図である。
図3】(a)図は、本発明の第2実施形態例に係るベーパーチャンバの完全封止後の平面図、(b)図は、(a)図の(D)−(D)断面の説明図である。
図4】(a)図は、本発明の第3実施形態例に係るベーパーチャンバの封止前の斜視図、(b)図は、(a)図の(E)−(E)断面の説明図である。
図5】本発明の第4実施形態例に係るベーパーチャンバの封止前の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバについて、図面を用いながら説明する。図1に示すように、第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1は、空洞部14を有する平面型のコンテナ10と、空洞部14内に封入された作動流体(図示せず)とを有している。また、空洞部14内には、毛細管力を有するウィック構造体15が収納されている。
【0026】
コンテナ10は、最外層を構成する一方の板状部材11と、一方の板状部材11と対向し、同じく最外層を構成する他方の板状部材12と、一方の板状部材11と他方の板状部材12との間に配置された中層の板状部材13とが、積層された構造となっている。従って、ベーパーチャンバ1のコンテナ10は、3層構造となっている。一方の板状部材11と他方の板状部材12と中層の板状部材13は、相互に、平面視において重なり合う位置にて積層されている。
【0027】
一方の板状部材11と他方の板状部材12は、それぞれ、平板状の部材である。中層の板状部材13は、枠状の部材であり、枠部16の外面がコンテナ10の外側面を形成する。また、枠部16の内面が空洞部14の側面を形成する。従って、中層の板状部材13の枠部16内面と一方の板状部材11内面と他方の板状部材12内面とで形成されたコンテナ10の中空部が、空洞部14となっている。空洞部14の平面視の形状は、ベーパーチャンバ1の使用条件等に応じて、適宜選択可能であるが、ベーパーチャンバ1では矩形となっている。
【0028】
図1に示すように、一方の板状部材11には、コンテナ10の平面方向へ伸延した平板状であり短冊状の突出領域(一方の突出部21)が設けられている。ベーパーチャンバ1では、一方の突出部21が一つ設けられている。一方の突出部21は、一方の板状部材11と同一平面上に伸延している。従って、一方の突出部21は、平面視において空洞部14の外側に位置している。また、他方の板状部材12には、コンテナ10の平面方向へ伸延した平板状であり短冊状の突出領域(他方の突出部22)が設けられている。ベーパーチャンバ1では、他方の突出部22が一つ設けられている。他方の突出部22は、他方の板状部材12と同一平面上に伸延している。従って、他方の突出部22は、平面視において空洞部14の外側に位置している。また、他方の突出部22は、平面視において一方の突出部21と重なり合う位置に設けられている。また、中層の板状部材13には、コンテナ10の平面方向へ伸延した平板状であり短冊状の突出領域(中層の突出部23)が設けられている。ベーパーチャンバ1では、中層の突出部23が一つ設けられている。中層の突出部23は、中層の板状部材13と同一平面上に伸延している。従って、中層の突出部23は、平面視において空洞部14の外側に位置している。また、中層の突出部23は、平面視において一方の突出部21及び他方の突出部22と重なり合う位置に設けられている。従って、一方の板状部材11と他方の板状部材12と中層の板状部材13が、相互に、平面視において重なり合う位置にて積層されていることに対応して、一方の突出部21と他方の突出部22と中層の突出部23は、相互に、平面視において重なり合う位置にて積層されている。
【0029】
一方の突出部21には、貫通孔である第1の孔部24が設けられている。また、中層の突出部23にも、平面視において第1の孔部24と重なり合う位置に、貫通孔である第2の孔部25が設けられている。従って、第1の孔部24と第2の孔部25は、相互に、連通している。第1の孔部24と第2の孔部25の平面視の形状は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ1では、それぞれ、平面視円形である。また、第1の孔部24と第2の孔部25の寸法は、特に限定されないが、例えば、それぞれ、0.1〜5mmの直径を有している。
【0030】
他方の突出部22には、空洞部14から視て凹状に窪んだ流路26が設けられている。従って、流路26は、他方の突出部22表面から凸状に突起(隆起)した態様となっている。
【0031】
図2(a)、(b)に示すように、流路26は、平面視において第1の孔部24及び第2の孔部25と重なり合う位置に設けられている。従って、流路26は、第1の孔部24及び第2の孔部25と連通している。また、図2(a)、(d)に示すように、流路26は、平面視において、第1の孔部24及び第2の孔部25と重なり合う位置から空洞部14と重なり合う位置まで延在している。従って、流路26は、空洞部14と連通している。すなわち、流路26を介して、第1の孔部24及び第2の孔部25と空洞部14とが連通している。ベーパーチャンバ1では、流路26の一方の端部が第1の孔部24及び第2の孔部25と連通し、流路26の他方の端部が空洞部14と連通している。
【0032】
なお、図2(c)に示すように、流路26のうち、平面視において第1の孔部24及び第2の孔部25と重なり合う部位(すなわち、一方の端部)と平面視において空洞部14と重なり合う部位(すなわち、他方の端部)との間の部位である中央部は、中層の突出部23面上に位置している。
【0033】
流路26の作製方法は、特に限定されないが、例えば、絞り加工等のプレス装置を用いた板金加工を挙げることができる。また、流路26の寸法は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ1では、例えば、0.1〜5mmの幅、0.1〜5mmの高さ、5〜150mmの長さを有している。また、流路26の平面視の形状は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ1では、直線状となっている。
【0034】
コンテナ10の材料としては、例えば、ステンレス鋼、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金等を挙げることができる。
【0035】
流路26の部位を除いたベーパーチャンバ1の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2〜10mmを挙げることができる。また、空洞部14の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1〜9.9mmを挙げることができる。また、一方の板状部材11及び他方の板状部材12の板厚は、特に限定されないが、例えば、それぞれ、0.05〜3mmを挙げることができる。
【0036】
空洞部14に封入する作動流体としては、コンテナ10の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコール、これらの混合物等を挙げることができる。ウィック構造体15としては、特に限定されないが、例えば、銅粉等の金属粉の焼結体、金属線からなる金属メッシュ、グルーブ、不織布等を挙げることができる。なお、ベーパーチャンバ1では、平面視はしご状に形成された金属メッシュが用いられている。
【0037】
次に、第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1の空洞部14に作動流体を注入する方法について、図面を用いながら説明する。空洞部14に作動流体を注入する前に、予め、突出部の外周を含めたコンテナ10の外周を溶接(例えば、レーザー溶接、抵抗溶接等)して封止しておく。
【0038】
図2(a)〜(d)に示すように、第1の孔部24は、第2の孔部25と流路26を介して空洞部14と連通している。従って、まず、第1の孔部24に脱気装置(図示せず)を取り付け、第1の孔部24から第2の孔部25と流路26とを介して空洞部14内を脱気処理し、空洞部14内を減圧状態とする。すなわち、第1の孔部24と第2の孔部25は空洞部14の脱気口として機能する。また、流路26は、空洞部14の気体を空洞部14から脱気口である第1の孔部24へ流通させる気体の排出路として機能する。脱気処理後、第1の孔部24から第2の孔部25と流路26とを介して空洞部14内へ液相の作動流体(図示せず)を注入する。すなわち、第1の孔部24と第2の孔部25は液相の作動流体の注入口としても機能する。また、流路26は、液相の作動流体を注入口である第1の孔部24及び第2の孔部25から空洞部14へ流通させる液相の作動流体の供給路としても機能する。なお、ここでは、空洞部14内を減圧状態としてから液相の作動流体を注入したが、これに代えて、空洞部14内に液相の作動流体を注入してから、空洞部14内を脱気処理してもよい。
【0039】
脱気処理された空洞部14へ液相の作動流体を注入後、流路26の中央部(第1の孔部24及び第2の孔部25に対応する部位と空洞部14に対応する部位との間の部位)をカシメ治具等で中層の突出部23面上へ圧潰することにより、流路26を封止して突出部に封止部(図示せず)を形成する。突出部に封止部を形成することで、作動流体が、減圧された空洞部14内に封入される。さらに、突出部の封止部を溶接(例えば、レーザー溶接、抵抗溶接等)することで、該封止部を完全に封止することができる。従って、封止されたベーパーチャンバ1では、第1の孔部24及び第2の孔部25に対応する部位と空洞部14に対応する部位との間の部位で封止された流路26が、第1の孔部24及び第2の孔部25の位置(突出部の位置)から空洞部14の位置まで残された態様となっている。
【0040】
第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1では、一方の突出部21には第1の孔部24を設けるスペース、中層の突出部23には第2の孔部25を設けるスペースが、それぞれ、あればよく、また、他方の突出部22には一方の突出部21及び中層の突出部23と同じスペースがあればよいので、一方の突出部21、中層の突出部23及び他方の突出部22の突出量を低減できる。従って、空洞部14外周のスペースを低減しつつ、作動流体が熱輸送特性を発揮する空洞部14の面積縮小を防止できる。よって、ベーパーチャンバ1の設置スペースが狭小でも、空洞部14の面積を確保することができ、優れた放熱効率を発揮できる。
【0041】
ベーパーチャンバ1では、空洞部14を脱気し、空洞部14に作動流体を注入するために、ノズル等、コンテナ10とは別の部材を用意する必要がないので、部品点数を低減できる。また、ベーパーチャンバ1では、製造にあたり、ノズル等、コンテナ10とは別の部材をコンテナ10に取り付ける工程が必要ないので、生産性に優れている。また、ベーパーチャンバ1では、積層された板状部材が少なくとも3枚であり、中層の板状部材13が空洞部14の内側面を形成する枠部16を有するので、コンテナ10の平面視の形状を複雑化でき、ベーパーチャンバ1の設計の自由度が向上する。
【0042】
また、ベーパーチャンバ1では、流路26の断面が他方の突出部22表面から凸状に突起した形状をしているので、圧潰による封止が容易である。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態例に係るベーパーチャンバについて、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係るベーパーチャンバと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0044】
第1実施形態例に係るベーパーチャンバでは、流路の中央部に封止部を形成し、該封止部を溶接することで完全に封止していたが、図3(a)、(b)に示すように、第2実施形態例に係るベーパーチャンバ2では、流路26の中央部に形成された封止部を溶接にて完全に封止後、さらに、該封止部よりも先端部側にて、積層された一方の突出部、中層の突出部及び他方の突出部が切断されている。
【0045】
ベーパーチャンバ2では、流路26の中央部をカシメ治具等で中層の板状部材13の枠部16上へ圧潰して封止部を形成し、さらに、封止部を溶接(例えば、レーザー溶接、抵抗溶接等)して溶接部30を形成する。溶接部30の形成された封止部よりも外側、すなわち、突出部の先端部側にて、積層された一方の突出部、中層の突出部及び他方の突出部が切断されて積層された突出部の切断部31が形成されている。従って、封止されたベーパーチャンバ2では、コンテナ10の周縁部に形成された溶接部30で封止された流路26が、枠部16の位置から空洞部14の位置まで残された態様となっている。
【0046】
図3(a)に示すように、ベーパーチャンバ2では、積層された一方の突出部、中層の突出部及び他方の突出部は、いずれも、その基部にて切断されている。従って、切断部31の切断面は、コンテナ10の外周から突出していない。
【0047】
積層された突出部が切断されていることで、積層された突出部の突出量をより低減でき、さらに、ベーパーチャンバ2では、積層された突出部が基部にて切断されることで積層された突出部が完全に除去されているので、空洞部14外周のスペースをより低減しつつ、空洞部14の面積をより十分に確保できる。
【0048】
次に、本発明の第3実施形態例に係るベーパーチャンバについて、図面を用いながら説明する。なお、第1、第2実施形態例に係るベーパーチャンバと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0049】
第1、第2実施形態例に係るベーパーチャンバでは、コンテナは、一方の板状部材と中層の板状部材と他方の板状部材とが積層された3層構造であったが、これに代えて、図4(a)、(b)に示すように、第3実施形態例に係るベーパーチャンバ3では、一方の板状部材41と、一方の板状部材41と対向する他方の板状部材42とが積層された2層構造となっている。
【0050】
図4(a)に示すように、ベーパーチャンバ3では、下板である一方の板状部材41と上板である他方の板状部材42とを重ねることにより空洞部44を有するコンテナ40が形成される。他方の板状部材42の中央部に、一方の板状部材41から視て凹部が設けられている。他方の板状部材42の凹部がコンテナ40の空洞部44を形成している。他方の板状部材42の他方の突出部22には、一方の板状部材41から視て凹状に窪んだ流路26が設けられている。流路26は、他方の突出部22表面から凸状に突起(隆起)した態様となっている。流路26は、平面視において、空洞部44と重なり合う位置まで延在している。従って、流路26は、空洞部44と連通している。
【0051】
一方の板状部材41は、第1、第2実施形態例に係るベーパーチャンバの一方の板状部材と同じ構造の部材である。従って、一方の板状部材41の一方の突出部21には、貫通孔である第1の孔部24が設けられている。流路26は、平面視において第1の孔部24と重なり合う位置に設けられている。
【0052】
従って、図4(b)に示すように、ベーパーチャンバ3では、他方の突出部22の流路26は、一方の突出部21の第1の孔部24と連通している。すなわち、流路26を介して、第1の孔部24と空洞部44とが連通している。
【0053】
ベーパーチャンバ3では、脱気処理された空洞部44へ液相の作動流体(図示せず)を注入後、他方の板状部材42の流路26中央部を、カシメ治具等で一方の板状部材41の一方の突出部21面上へ圧潰することにより、流路26を封止して突出部に封止部(図示せず)を形成する。突出部に封止部を形成することで、作動流体が、減圧された空洞部44内に封入される。さらに、突出部の封止部を溶接(例えば、レーザー溶接、抵抗溶接等)することで、該封止部を完全に封止することができる。
【0054】
第3実施形態例に係るベーパーチャンバ3でも、第1実施形態例に係るベーパーチャンバと同様に、一方の突出部21と他方の突出部22の突出量を低減できる。従って、空洞部44外周のスペースを低減しつつ、作動流体が熱輸送特性を発揮する空洞部44の面積縮小を防止できる。
【0055】
次に、本発明の第4実施形態例に係るベーパーチャンバについて、図面を用いながら説明する。なお、第1〜第3実施形態例に係るベーパーチャンバと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0056】
上記第1実施形態例に係るベーパーチャンバでは、積層された突出部が一つ設けられていたが、これに代えて、図5に示すように、第4実施形態例に係るベーパーチャンバ4では、積層された突出部が複数(図5では、二つ)設けられている。すなわち、ベーパーチャンバ4では、一方の突出部、他方の突出部22及び中層の突出部が、それぞれ、複数(図5では、二つ)設けられている。また、一方の板状部材と他方の板状部材12と中層の板状部材が、相互に、平面視において重なり合う位置にて積層されていることに対応して、二つの一方の突出部と二つの他方の突出部22と二つの中層の突出部は、それぞれ、相互に、平面視において重なり合う位置にて積層されて、二つの積層された突出部(第1の積層された突出部と第2の積層された突出部)が形成されている。
【0057】
積層された突出部の位置は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ4では、コンテナ10の対向する端部に、それぞれ、一つの積層された突出部が設けられている。
【0058】
ベーパーチャンバ4では、二つの積層された突出部のうち、第1の積層された突出部(図5では、左側の積層された突出部)から空洞部14内へ液相の作動流体を注入し、第2の積層された突出部(図5では、右側の積層された突出部)から空洞部14内を脱気処理し、空洞部14内を減圧状態としている。すなわち、ベーパーチャンバ4では、液相の作動流体注入用の積層された突出部と、空洞部14脱気用の積層された突出部が、設けられている。
【0059】
第4実施形態例に係るベーパーチャンバ4でも、積層された突出部が一つである第1実施形態例に係るベーパーチャンバと同様に、積層された突出部の突出量を低減できるので、空洞部14外周のスペースを低減しつつ、作動流体が熱輸送特性を発揮する空洞部14の面積縮小を防止できる。
【0060】
次に、本発明のベーパーチャンバの他の実施形態例について説明する。第1、第2、第4実施形態例に係るベーパーチャンバではコンテナは3層構造であったが、中層の板状部材を複数積層させて、4層以上の多層構造としてもよい。また、第1実施形態例に係るベーパーチャンバでは、流路の中央部を中層の突出部面上へ圧潰して突出部に封止部を形成し、該封止部を溶接していたが、これに代えて、さらに、溶接された封止部よりも先端部側にて、積層された突出部を切断してもよい。また、第3、第4実施形態例に係るベーパーチャンバでも、溶接された突出部の封止部よりも先端部側にて、積層された突出部の先端部を切断してもよい。また、第3実施形態例に係るベーパーチャンバでは、積層された突出部が一つ設けられていたが、これに代えて、積層された突出部を複数設けてもよい。また、上記各実施形態例のベーパーチャンバについて、必要に応じて、流路の封止後に、さらに、他方の突出部表面と同一平面となるまで、プレス加工等により該流路全体を圧潰してもよい。なお、流路全体を圧潰することで、コンテナに流路の圧潰痕が形成される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のベーパーチャンバは、作動流体が封入された空洞部の外周のスペースを低減しつつ、空洞部の面積縮小を防止できるので、例えば、狭小なスペースに設置され、且つ優れた放熱効率が要求される分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0062】
1、2、3、4 ベーパーチャンバ
10、40 コンテナ
11、41 一方の板状部材
12、42 他方の板状部材
14、44 空洞部
21 一方の突出部
22 他方の突出部
24 第1の孔部
25 第2の孔部
26 流路
【要約】
【課題】部品点数の低減と生産性に優れ、また、作動流体が封入された空洞部の外周のスペースを低減しつつ、空洞部の面積縮小を防止できるベーパーチャンバを提供する。
【解決手段】積層された板状部材により空洞部が形成されたコンテナと、前記空洞部に封入された作動流体と、前記空洞部に収容されたウィック構造体と、を有するベーパーチャンバであって、前記コンテナの最外層を構成する一方の板状部材が、孔部を有する少なくとも一つの一方の突出部を有し、前記コンテナの最外層を構成する他方の板状部材が、前記一方の突出部と積層される、前記孔部と前記空洞部を連通する流路を備えた少なくとも一つの他方の突出部を有し、前記空洞部の外周が封止されたベーパーチャンバ。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5