(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液晶ポリマー粒子を、熱硬化性樹脂組成物(ただし、熱硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合は、溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物の質量を基準とする。)の全質量の5〜80質量%含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
前記有機溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる1種以上の有機溶剤を含む、請求項12又は13に記載の成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[樹脂組成物]
一実施形態に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂と、液晶ポリマー粒子と、を含有する。
【0029】
<液晶ポリマー粒子>
(液晶ポリマー)
一実施形態において、液晶ポリマー(「液晶性ポリマー」又は「液晶性樹脂」とも記載する)とは、光学異方性の溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性を示すポリマーを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用し、リンカム社製ホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。一実施形態において、液晶ポリマーは、直交偏光子の間で検査したときに、溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
【0030】
液晶ポリマーの種類としては特に限定されず、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドであることが好ましい。また、芳香族ポリエステル及び/又は芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルもその範囲にある。液晶ポリマーとしては、60℃でペンタフルオロフェノールに濃度0.1質量%で溶解したときに、好ましくは少なくとも約2.0dl/g、更に好ましくは2.0〜10.0dl/gの対数粘度(I.V.)を有するものが好ましく使用される。
【0031】
液晶ポリマーとしての芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドは、特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、及び芳香族ジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する繰り返し単位を構成成分として有する芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドである。
【0032】
より具体的には、
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位からなるポリエステル;
(2)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の少なくとも1種又は2種以上に由来する繰り返し単位、とからなるポリエステルアミド等が挙げられる。
更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。また、他に任意の成分を含んでもよい。
【0033】
なお、上記(1)〜(4)において、主として含まれる「芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上に由来する繰り返し単位」の比率は特に限定されないが、液晶ポリマーを構成する繰り返し単位中40モル%以上であることが好ましい。また、上記(1)〜(4)にそれぞれ例示される繰り返し単位の合計が、液晶ポリマーを構成する繰り返し単位中、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上(100モル%を含む)であることがより好ましい。
【0034】
一実施形態において、液晶ポリマーを構成する具体的モノマー化合物の好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、下記一般式(I)で表される化合物、及び下記一般式(II)で表される化合物等の芳香族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び下記一般式(III)で表される化合物等の芳香族ジカルボン酸;p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、アセトキシアミノフェノール等の芳香族アミン類が挙げられる。
【0035】
【化1】
(Xは、アルキレン(C
1〜C
4)、アルキリデン、−O−、−SO−、−SO
2−、−S−、及び−CO−より選ばれる基である。)
【0037】
【化3】
(Yは、−(CH
2)
n−(n=1〜4)及び−O(CH
2)
nO−(n=1〜4)より選ばれる基である。)
【0038】
液晶ポリマーの調製は、例えば、上記のモノマー化合物(又はモノマー化合物の混合物)から直接重合法又はエステル交換法を用いて当該技術分野においてよく知られている方法で行うことができ、通常は溶融重合法又はスラリー重合法等が用いられる。エステル形成能を有する化合物類はそのままの形で重合に用いてもよく、また、重合の前段階で前駆体からエステル形成能を有する誘導体に変性されたものでもよい。これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、ジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタン、けい酸塩類、チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩類、BF
3の如きルイス酸塩等が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマー化合物の全質量に対して約0.001〜1質量%、特に約0.01〜0.2質量%が好ましい。これらの重合方法により製造された液晶ポリマーは更に必要があれば、減圧又は不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。
【0039】
上記のような方法で得られた液晶ポリマーの溶融粘度は特に限定されない。一般には液晶ポリマーの融点より10〜30℃高い温度での溶融粘度が剪断速度1000sec
−1で5MPa以上600MPa以下のものを使用することが好ましい。
【0040】
なお、上記液晶ポリマーは2種以上の液晶ポリマーの混合物であってもよい。
【0041】
(液晶ポリマー粒子)
一実施形態によれば、液晶ポリマー粒子は、上記の液晶ポリマーを主成分として含む。主成分として含むとは、液晶ポリマー粒子の質量の80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上(100質量%を含む)が上記液晶ポリマーであることを意味する。
【0042】
一実施形態では、液晶ポリマー粒子は、融点が270℃以上であることが好ましい。上限は特に限定されないが、生産性の観点から400℃以下であることが好ましい。液晶ポリマー粒子の融点が270℃以上であると、基板実装のリフロー工程における耐熱性の観点で好ましい。液晶ポリマー粒子の融点は300℃以上であることがより好ましく、330℃以上であることが更に好ましい。なお、本明細書において、液晶ポリマー粒子の「融点(融解温度)」とは、示差走査型熱量計を用いてJIS K 7121に準じて測定される温度を意味する。測定には、液晶ポリマー(例えばペレット)又は液晶ポリマー粒子を使用できる。
【0043】
液晶ポリマー粒子の形状は特に限定されず、球状(略球状を含む)、紡錘状、不定形の粒子状、フィブリル状、繊維状等、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。なお、電気的特性の等方的な向上の観点からは球状が好ましく、機械物性の向上の観点からはフィブリル状が好ましい。
【0044】
液晶ポリマー粒子の平均粒子径は特に限定されないが、一実施形態では、例えば0.1μm以上250μm以下であり、1μm以上200μm以下であることが好ましい。液晶ポリマー粒子の平均粒子径が250μm以下であると、樹脂組成物を用いて得られる成形体の表面粗さを適切な範囲に維持し易い。また、0.1μm以上であると、液晶ポリマー粒子の生産性の観点で好ましい。また、液晶ポリマー粒子の平均粒子径は、樹脂組成物中における分散性と表面特性の向上の観点から、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましく、80μm以下であることが特に好ましい。
【0045】
また、一実施形態では、均一な特性を有する成形体を得る観点から、液晶ポリマー粒子の平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
【0046】
なお、本明細書において、液晶ポリマー粒子の「平均粒子径」は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による体積基準の算術平均粒子径を意味する。平均粒子径は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて測定することができる。
【0047】
また、一実施形態では、液晶ポリマー粒子の分散性及び成形体の特性の均質化を図る観点から、液晶ポリマー粒子の粒度分布のピーク粒度が0.1〜300μmの範囲にあることが好ましく、1〜250μmの範囲にあることがより好ましく、150μm以下にあることが更に好ましく、100μm以下にあることが特に好ましい。なお、本明細書において、液晶ポリマー粒子の「粒度分布のピーク粒度」とは、レーザー回折/散乱分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒度分布におけるピーク粒径を意味する。粒度分布に2以上のピークが存在する場合は、ピーク高さの最も大きいピークのピーク粒径が上記の粒径範囲内に存在すればよい。粒度分布のピーク粒度は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920を用いて測定することができる。
【0048】
また、一実施形態では、液晶ポリマー粒子の嵩密度が、0.08〜1.2g/mLの範囲であることが好ましく、0.09〜1.0g/mLの範囲であることがより好ましく、0.1〜0.5g/mLの範囲であることが更に好ましい。液晶ポリマー粒子の嵩密度が0.08g/mL以上であると、製造時のハンドリングの観点から好ましく、1.2g/mL以下であると粒子の分散性の観点から好ましい。なお、本明細書において、液晶ポリマー粒子の嵩密度は、液晶ポリマー粒子を、体積50mLのメスシリンダー(外寸径2.5cm、外寸高さ21.5cm)に、ロートを用いてメスシリンダーの外側底面から15cmの高さから自然落下させることにより、50mLのメモリまで充填し、充填された液晶ポリマー粒子の質量を測定することにより算出することができる。
【0049】
液晶ポリマー粒子の製造方法としては特に限定されないが、液晶性熱可塑性樹脂と非液晶性熱可塑性樹脂からなるシートを製造後、非液晶性熱可塑性樹脂を溶媒により溶出して除去する方法;液晶性熱可塑性樹脂のオリゴマーを粉砕し、次いで固相重合を行う方法;シート状の液晶性樹脂を粉砕及びフィブリル化する方法;ペレット状の液晶性樹脂を粉砕する方法等が挙げられる。
【0050】
また、一実施形態では、液晶ポリマーを石臼型摩砕機により粉砕する方法が好ましい。石臼型摩砕機により粉砕する方法によると、平均粒子径の小さい粒子を簡便に製造し易い。
【0051】
樹脂組成物中の液晶ポリマー粒子の含有量は特に限定されないが、全組成物の5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。液晶ポリマー粒子の含有量が5質量%以上であると電気的特性向上(低誘電率化)の効果をより高めることができ、80質量%以下であると経済性の観点でより有利である。液晶ポリマー粒子の含有量は、全組成物の10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、また、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。樹脂組成物が溶剤を含む場合、前記範囲は、溶剤を除いた樹脂組成物の質量を基準として求める。
【0052】
<樹脂成分>
一実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂成分」とも記載する)を含む。樹脂成分は、液晶ポリマー以外の樹脂である。
【0053】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は特に限定されず、一実施形態に係る樹脂組成物の用途等を考慮して適宜選択することができる。
【0054】
例えば、後述のように樹脂組成物を回路基板に用いる場合は、一般に、低誘電率の樹脂成分を用いることが望まれる。しかし、一実施形態に係る樹脂組成物は液晶ポリマー粒子を含むため、誘電率が比較的高い樹脂を用いた場合も、優れた電気的特性(低誘電率)を維持することができるという利点がある。誘電率が比較的高い樹脂としては、具体的には、液晶ポリマーよりも誘電率が高い樹脂、例えば、5GHzにおける誘電率が3以上、又は3.2以上の樹脂が挙げられる。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)等が例示されるがこれらに限定されない。なお、当然のことながら、誘電率が3未満である樹脂も好適に用いることができる。ここで、誘電率は、空洞共振器摂動法により23℃で測定した5GHzにおける値である。
【0055】
また、一実施形態に係る樹脂組成物は液晶ポリマーの粒子を含むため、当該樹脂組成物の製造時に当該液晶ポリマー粒子を加熱溶融させる必要がなく、樹脂成分と液晶ポリマー粒子とを液晶ポリマー粒子の融点未満の温度で混合した場合も、液晶ポリマー粒子が分散した樹脂組成物を得ることが可能である。このため、一実施形態では、樹脂成分として、熱分解温度が液晶ポリマー粒子の融点未満である樹脂を好適に用いることができる。なお、当然のことながら、熱分解温度が上記液晶ポリマー粒子の溶融温度以上である樹脂も好適に用いることができる。
【0056】
また、一実施形態に係る樹脂組成物を後述の回路基板に用いる場合、樹脂成分のガラス転移温度、融点(溶融温度)及び熱分解温度が、回路基板製造時のプロセス温度以上であることが好ましく、具体的には、300℃以上であることが好ましく、330℃以上であることがより好ましく、350℃以上であることが更に好ましい。
【0057】
なお、本明細書において、『樹脂成分のガラス転移温度、融点及び熱分解温度が特定の温度以上である』と記載した場合、当該樹脂のガラス転移温度、融点及び熱分解温度のうち最も低い温度が、当該特定の温度以上であることを意味する。ここで、「融点(溶融温度)」とは示差走査熱量測定(DSC)によりJIS K 7121に準じて測定される温度を表し、「熱分解温度」とは熱重量測定装置を用いて空気気流中で25℃から10℃/分で昇温したときに10%重量が減少したときの温度(10%重量減少温度)を表し、「ガラス転移温度」は、示差走査熱量測定(DSC)によりJIS K 6240に準じて測定される温度を意味する。
【0058】
一実施形態において、好ましく用いられる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0059】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂を挙げることができる。また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂を用いることもできる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。フェノール樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(ポリイミド樹脂)
ポリイミド樹脂としては、酸無水物とジアミンを用いて得られる種々のポリイミド樹脂を用いることができる。酸無水物は、芳香族テトラカルボン酸であることが好ましく、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物等が例示され、ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましく、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等が例示されるがこれらに限定されない。また、アミン系化合物等のイミド化触媒、カルボン酸無水物等の脱水剤などを併用することもできる。なお、樹脂成分としてポリイミド樹脂を用いる場合は、酸無水物とジアミンとを重合させて得られるポリアミック酸を用い、成形時又は成形後にイミド化させることが好ましい。ポリイミド樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(ビスマレイミドトリアジン樹脂)
ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)としては、ビスマレイミドと芳香族シアン酸エステルを架橋して得られる種々のビスマレイミドトリアジン樹脂を用いることができる。ビスマレイミドトリアジン樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
一実施形態において、樹脂成分としては、熱可塑性樹脂も好ましく用いることができる。具体的には、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が例示されるがこれらに限定されない。
【0064】
中でも、ポリフェニレンエーテルは、誘電率等の電気的特性の観点から、後述する基板用途等において好ましく用いることができる。ポリフェニレンエーテルは、フェニレンエーテル単位構造(−C
6H
4−O−)を主成分とするポリマーを意味する。フェニレンエーテル単位構造は置換基を有していてもよく、例えば、フェニレンエーテル単位構造の一つ以上の水素原子が、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基等で置換されていてもよい。ポリフェニレンエーテルの具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、更に変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0065】
熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。樹脂組成物中の樹脂成分の含有量は特に限定されないが、全組成物の20質量%以上95質量%以下であることが好ましい。樹脂成分の含有量が20質量%以上であると経済性の観点でより有利であり、95質量%以下であると電気的特性向上(低誘電率化)の効果をより高めることができる。樹脂成分の含有量は、全組成物の30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、また、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが更に好ましい。樹脂組成物が溶剤を含む場合、前記範囲は、溶剤を除いた樹脂組成物の質量を基準として求める。また、樹脂組成物が樹脂成分として熱硬化性樹脂を含み、更に硬化剤及び/又は硬化促進剤を含む場合、前記範囲は、樹脂成分、硬化剤及び硬化促進剤の合計の含有量についての範囲である。
【0066】
一実施形態に係る樹脂組成物は、上述の液晶ポリマー粒子と樹脂成分とを少なくとも含むが、必要により、以下に例示するように、上述の液晶ポリマー粒子と樹脂成分以外の成分を含むものを包含する。
【0067】
<硬化剤及び硬化促進剤>
一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂成分として熱硬化性樹脂を含む場合、更に硬化剤を含むことも好ましい。硬化剤としては特に限定されず当該技術分野で知られている硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、ジシアンジアミド、ヒドラジド、イミダゾール化合物、アミン付加物、スルホニウム塩、オニウム塩、ケチミン、酸無水物、三級アミン、ノボラック型フェノール樹脂等が例示されるがこれらに限定されない。
【0068】
硬化剤の含有量は、特に限定されず、用いる樹脂成分及び硬化条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、上述の熱硬化性樹脂100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、20〜90質量部であることがより好ましい。
【0069】
また、上述の硬化剤に代えて、又は硬化剤と組み合わせて、硬化促進剤を用いることもできる。硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジアザビシクロウンデセン、その誘導体、及びその塩;有機ホスフィン化合物、その塩、及びその誘導体等を挙げることができる。硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、上述の熱硬化性樹脂100質量部に対して、50〜150質量部であることが好ましく、80〜120質量部であることがより好ましい。
【0070】
<充填材>
また、一実施形態に係る樹脂組成物は、必要により、充填材を含むことができる。ここでの充填材に、液晶ポリマー粒子は含まれない。
【0071】
充填材としては、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、セラミックバルーン、ガラスフレーク、シリカ、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維、黒鉛;珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等の金属酸化物;カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩又は硫酸塩;更には炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素等が例示され、有機充填材としては、芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等の高融点の繊維が例示されるがこれらに限定されない。
【0072】
充填材を含む場合、一実施形態に係る樹脂組成物の全質量中、80質量%以下であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。樹脂組成物が溶剤を含む場合、前記範囲は、溶剤を除いた樹脂組成物の質量を基準として求める。
【0073】
<有機溶剤>
一実施形態に係る樹脂組成物は、必要により、更に、有機溶剤を含むことができる。
【0074】
有機溶剤は、一実施形態に係る樹脂組成物の成形時の流動性を向上させるように機能し、成形時のプロセス条件下で乾燥及び/又は加熱することにより除去し得る化合物であることが好ましい。
【0075】
有機溶剤は、液晶ポリマー粒子の融点未満の温度で乾燥及び/又は加熱することにより除去し得る化合物であることがより好ましい。
【0076】
一実施形態では、有機溶剤を除去する際の樹脂成分等の劣化を抑制する観点から、有機溶剤の沸点(標準沸点)は40〜210℃であることが好ましく、50〜190℃であることがより好ましい。
【0077】
一実施形態において好ましく用いることのできる有機溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びこれらの誘導体等が挙げられるがこれらに限定されない。有機溶剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤を含む場合、有機溶剤の含有量は成形加工性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、有機溶剤の含有量は、樹脂組成物の全質量中90質量%以下とできる。ここでの樹脂組成物の全質量とは、有機溶剤も含む全質量である。
【0078】
なお、樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、樹脂組成物の樹脂成分及び液晶ポリマー粒子が有機溶剤中に溶解及び/又は分散していることが好ましく、樹脂成分の少なくとも一部が有機溶剤に溶解していることが好ましい。
【0079】
<その他の成分>
一実施形態の液晶ポリマー粒子含有樹脂組成物は、効果を害さない範囲で、上述の成分以外のその他の成分を任意に含んでもよい。その他の成分としては、各種安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、離型剤、染料及び顔料等の着色剤、蛍光増白剤などが挙げられる。これらの1種以上を、必要に応じて添加することができる。
【0080】
<樹脂組成物の製造方法>
一実施形態に係る樹脂組成物は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法を用いて製造することができる。好適な方法としては、例えば、1軸又は2軸押出機等の混練装置を用いて、各成分を混練(混合)する方法が挙げられる。
【0081】
一実施形態では、樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂成分と、液晶ポリマー粒子とを、前記液晶ポリマー粒子の融点未満の温度で混合することにより製造することが好ましい。
【0082】
一実施形態の樹脂組成物は、樹脂成分と液晶ポリマー粒子とを含む樹脂組成物であり、樹脂組成物の製造時に液晶ポリマー粒子を加熱溶融する必要がなく、樹脂成分と液晶ポリマー粒子を液晶ポリマー粒子の融点未満の温度で混合することにより、液晶ポリマー粒子が樹脂成分中に分散した樹脂組成物を得ることができる。そのため、液晶ポリマー粒子の融点以上の温度で加熱溶融すると分解する樹脂を樹脂成分として用いることも可能になる。
【0083】
なお、樹脂成分及び液晶ポリマー粒子以外の成分(硬化剤、充填材、有機溶媒等)は、樹脂成分と液晶ポリマー粒子とを混合する工程において添加してもよいし、成形時に添加してもよい。
【0084】
[成形品及び成形方法]
一実施形態に係る樹脂組成物の成形体(成形品)の形状は特に限定されないが、フィルム状、シート状、板状、三次元成形品等が挙げられる。フィルム状、シート状、又は板状である場合、一実施形態に係る樹脂組成物による顕著な効果が得られる。
【0085】
成形体は、押出成形、射出成形、プレス成形、流延成形等の樹脂組成物の成形方法として知られる種々の方法により製造することができる。
【0086】
例えば、一実施形態の成形体は
一実施形態に係る樹脂組成物を含む液状組成物を調製する工程と、
液状組成物を固化させる工程と
を含む方法により製造することができる。
【0087】
樹脂組成物を含む液状組成物が、一実施形態に係る樹脂組成物であってもよい(例えば、樹脂成分として液状樹脂を用いる場合、及び/又は、一実施形態に係る樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合等)。また、必要により、樹脂組成物を液晶ポリマー粒子の融点未満の温度で加熱溶融することによって液状組成物を調製してもよい。
【0088】
液状組成物を固化させる固化工程は特に限定されず当該技術分野で知られている方法を採用することができる。固化工程としては、液状組成物を冷却する冷却工程、液状組成物を乾燥させる乾燥工程、液状組成物を加熱する加熱工程、又はこれらの組み合わせが例示される。乾燥工程は、室温〜液晶ポリマー粒子の融点未満の温度範囲で行うことが好ましく、例えば100℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。加熱工程は、用いる樹脂成分の硬化条件等を考慮して適宜設定することができるが、液晶ポリマー粒子の融点未満の温度範囲で行うことが好ましく、例えば120℃〜220℃の範囲で行うことが好ましい。乾燥工程が加熱工程を兼ねていても、又は、加熱工程が乾燥工程を兼ねていてもよい。
【0089】
一実施形態では、
1.樹脂組成物を型に流し込む工程と、
2.前記樹脂組成物を加熱する工程(硬化工程)と、
を含む方法により、成形体を製造することができる。
【0090】
また、一実施形態では、成形体が基材を含むことが好ましく、例えば、
1.液状組成物を調製する工程と、
2.前記液状組成物を基材に含浸させる工程と、
3.前記液状組成物を含浸させた基材を乾燥させる工程と
を含む方法により、成形体を製造することができる。
一実施形態において、樹脂組成物は好ましくは熱可塑性樹脂を含む。一実施形態において、樹脂組成物は好ましくは熱硬化性樹脂を含む。上記乾燥させる工程により得られる成形体をプリプレグと称することもある。
【0091】
また、一実施形態では、
1.液状組成物を調製する工程と、
2.前記液状組成物を基材に含浸させる工程と、
3.前記液状組成物を含浸させた基材を乾燥させる工程(半硬化工程)と、
4.乾燥させた前記基材を加熱する工程(硬化工程)と
を含む方法により、成形体を製造することができる。
一実施形態において、樹脂組成物は好ましくは熱硬化性樹脂を含む。上記半硬化工程により得られる成形体をプリプレグと称することもある。
【0092】
基材の材料としては、特に限定されないが、例えば、回路基板の絶縁層の補強材として用いることのできる材料が挙げられる。例えば、ガラス繊維、石英ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナファイバー、炭化珪素ファイバー、アルベスト、ロックウール、スラグウール、石膏ウィスカ等の無機繊維、又は全芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリエステル繊維等の有機繊維が挙げられる。基材はフィルム状、不織布又は織布であってもよい。
【0093】
また、一実施形態では、樹脂組成物を含む液状組成物を用いて流延成形を行うことにより、成形体を製造することも好ましい。
【0094】
[回路基板]
一実施形態に係る樹脂組成物を用いて形成されるフィルム状、シート状、又は板状の成形体においては、液晶ポリマー粒子が樹脂成分中に分散している。このため、成形体は電気的特性(低誘電率)に優れ、また、優れた表面特性(表面平滑性)が得られ易く、フレキシブル回路基板等の電子回路基板などに好適に用いることができる。電子回路基板の製造方法は特に限定されないが、上記のフィルム状、シート状、又は板状の成形体(半硬化体又は硬化体)と、銅箔等の金属箔とを貼りあわせて加熱プレスすることにより金属積層体を形成する方法が挙げられる。加熱プレスの条件は特に限定されないが、例えば、加熱温度:60〜220℃、圧力:0.1〜10MPa、時間:1分〜3時間とすることができる。
【実施例】
【0095】
実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
<液晶ポリマー>
・液晶性ポリエステルアミド樹脂
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からストランドを排出し、ストランドをペレタイズしてペレットを得た。得られたペレットについて、窒素気流下、300℃で2時間の熱処理を行って、目的のポリマーを得た。得られたポリマーの融点は334℃、溶融粘度は14.0Pa・sであった。なお、上記ポリマーの融点は、示差走査型熱量計(TAインスツルメント社製、DSC Q1000)を用いてJIS K 7121に準じて測定した。上記ポリマーの溶融粘度は、キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製、キャピログラフ1D:ピストン径10mm)により、シリンダー温度350℃、せん断速度1000sec
−1の条件での見かけの溶融粘度をISO 11443に準拠して測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
(I)4−ヒドロキシ安息香酸;188.4g(60モル%)
(II)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸;21.4g(5モル%)
(III)テレフタル酸;66.8g(17.7モル%)
(IV)4,4’−ジヒドロキシビフェニル;52.2g(12.3モル%)
(V)4−アセトキシアミノフェノール;17.2g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);15mg
アシル化剤(無水酢酸);226.2g
【0097】
<1.液晶ポリマー粒子の製造>
(LCP粒子1)
平均粒子径:15μm、ピーク粒度:21μm
嵩密度:0.10g/mL
製造した液晶ポリマーのペレットを、マスコロイダー(増幸産業株式会社製、MKZA10−15JP)を用いて以下の条件で粉砕し、略球状の液晶ポリマー粒子を得た。得られた液晶ポリマー粒子の平均粒子径及びピーク粒度をレーザー式粒度計(株式会社堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920)で測定した。平均粒子径は、演算結果データとして示される算術平均径である。また、50mLのメスシリンダー(柴田科学株式会社製、メスシリンダー カスタムA 026500−501A、外寸径2.5cm、外寸高さ21.5cm)に、液晶ポリマー粒子を、ロートを用いてメスシリンダーの外側底面から15cmの高さから自然落下させることにより50mLのメモリまで充填し、その重量を測定することにより液晶ポリマー粒子の嵩密度を算出した。
原料:液晶ポリマーのペレット(平均粒子径:3mm)
原料投入量:400g
粉砕速度:60g/hr
水流し込み(30L/min)
クリアランス:50μm
回転数:1400rpm
【0098】
(LCP粒子2)
平均粒子径:195μm、ピーク粒度:242μm
嵩密度:0.12g/mL
製造した液晶ポリマーのペレットを、ボールミル型凍結粉砕機(日本分析工業株式会社製、JFC−1500)を用いて以下の条件で凍結粉砕し、略球状の液晶ポリマー粒子を得た。得られた液晶ポリマー粒子の平均粒子径、ピーク粒度及び嵩密度を、LCP粒子1と同様にして測定した。
原料:液晶ポリマーのペレット(平均粒子径:3mm)
原料投入量:5g
予備凍結時間:30min
凍結粉砕時間:20min
【0099】
(LCP粒子3)
平均粒子径:211μm、ピーク粒度:281μm
嵩密度:0.06g/mL
製造した液晶ポリマーのペレットを、メッシュミル型粉砕機(株式会社ホーライ製、HA−2542)を用いて以下の条件で粉砕し、フィブリル状の液晶ポリマー粒子を得た。得られた液晶ポリマー粒子の平均粒子径、ピーク粒度及び嵩密度を、LCP粒子1と同様にして測定した。
原料:液晶ポリマーのペレット(平均粒子径:3mm)
原料投入量:10kg
粉砕速度:10kg/hr
【0100】
(LCP粒子4)
平均粒子径:5.3μm、ピーク粒度:6.9μm
嵩密度:0.47g/mL
LCP粒子1を半自由渦式分級機(日清エンジニアリング株式会社)で分級し、微細な略球状の液晶ポリマー粒子を得た。得られた液晶ポリマー粒子の平均粒子径、ピーク粒度及び嵩密度を、LCP粒子1と同様にして測定した。
【0101】
<2.液晶ポリマー粒子含有樹脂組成物の製造>
<実施例1〜3>
製造した液晶ポリマー粒子、液状エポキシ樹脂((株)ナガセケムテックス製XNR5002G)、硬化剤としてのテトラヒドロメチル無水フタル酸((株)ナガセケムテックス製XNH5002G)を、表1に示す質量比率で室温(23℃)で混練し、均一な混合組成物を得た。
【0102】
<比較例1>
液晶ポリマー粒子を用いないこと以外は実施例1〜3と同様にして、混合組成物を得た。
【0103】
<3.成形体の製造及び評価>
<実施例1〜3、比較例1>
前記混合組成物を8cm×3cm×2mmのポリエチレン製の型に流し込み、100℃で1時間加熱後、更に150℃で3時間加熱して、試験片を得た。
得られた試験片をφ1.5mm×8cmの円柱状に切削し、5GHzでの誘電率及び誘電正接を摂動法空洞共振器・誘電率測定装置(株式会社関東電子応用開発製Cavity Resornator)を用い、23℃で測定した。
また、得られた試験片の表面を目視にて観察し、割れがないものを◎、一部(表面積の30%未満)に割れがあるものを○、半分程度(表面積の30〜70%程度)に割れのあるものを△、全体(表面積の70%超)に割れがあるものを×として、分散性を評価した。
さらに、得られた試験片を破断後、破断面を目視にて観察し、液晶ポリマー粒子の凝集物がないものを◎、凝集物が5個未満であるものを○、凝集物が5個以上10個未満であるものを△、凝集物が10個以上であるものを×として、表面性を評価した。
分散性及び表面性ともに、◎〜△が実用に適した範囲である。結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
樹脂成分と液晶ポリマー粒子とを含有する樹脂組成物を用いた実施例1〜3では、簡便な製造方法によって、経済性に優れた成形体が得られた。
また、表1に示すとおり、液晶ポリマー粒子を含有する樹脂組成物を用いた実施例1〜3の成形体では、実用に適した表面性を維持しながら、優れた電気的特性(誘電率及び誘電正接)が得られた。特に、LCP粒子の平均粒子径が200μm以下である実施例1及び実施例2の成形体では、LCP粒子の分散性が良好であり、優れた表面性と優れた電気的特性が得られた。
【0106】
<4.プリプレグの製造及び評価>
<実施例4及び5、比較例2>
(実施例4及び5)
製造した液晶ポリマー粒子、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON N−690−75M、75%メチルエチルケトン溶液、エポキシ当量:217g/eq)、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製TD−2090−60M、60%メチルエチルケトン溶液、水酸基当量:105g/eq)を、表2に示す質量比率でメチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤に加えて撹拌し、均一な樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製#2116、厚み100μm)に含浸させ、150℃の熱風乾燥器で10分間処理してプリプレグを得た。
表2に示す質量比率は、溶剤を除いた固形分の質量比率である。
(比較例2)
液晶ポリマー粒子を用いないこと以外は実施例4及び5と同様にして、プリプレグを得た。
【0107】
<実施例6及び7、比較例3>
(実施例6及び7)
製造した液晶ポリマー粒子、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON HP−7200H−75M、75%メチルエチルケトン溶液、エポキシ当量:279g/eq)、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製TD−2090−60M、60%メチルエチルケトン溶液、水酸基当量:105g/eq)を、表2に示す質量比率でメチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤に加えて撹拌し、均一な樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製#2116、厚み100μm)に含浸させ、150℃の熱風乾燥器で10分間処理してプリプレグを得た。
(比較例3)
液晶ポリマー粒子を用いないこと以外は実施例6及び7と同様にして、プリプレグを得た。
【0108】
<実施例8及び9、比較例4>
(実施例8及び9)
製造した液晶ポリマー粒子、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON N−740−80M、80%メチルエチルケトン溶液、エポキシ当量:182g/eq)、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製TD−2090−60M、60%メチルエチルケトン溶液、水酸基当量:105g/eq)を、表2に示す質量比率でメチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤に加えて撹拌し、均一な樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製#2116、厚み100μm)に含浸させ、150℃の熱風乾燥器で10分間処理してプリプレグを得た。
(比較例4)
液晶ポリマー粒子を用いないこと以外は実施例8及び9と同様にして、プリプレグを得た。
【0109】
<実施例10及び11、比較例5>
(実施例10及び11)
製造した液晶ポリマー粒子、ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製EPICOAT 828、エポキシ当量:190g/eq)、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製TD−2090−60M、60%メチルエチルケトン溶液、水酸基当量:105g/eq)を、表2に示す質量比率でメチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤に加えて撹拌し、均一な樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製#2116、厚み100μm)に含浸させ、150℃の熱風乾燥器で10分間処理してプリプレグを得た。
(比較例5)
液晶ポリマー粒子を用いないこと以外は実施例10及び11と同様にして、プリプレグを得た。
【0110】
<比較例6>
ポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE粒子、ダイキン工業株式会社製ルブロンL−2、平均粒子径:10μm)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON N−690−75M、75%メチルエチルケトン溶液、エポキシ当量:217g/eq)、硬化剤としてのノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製TD−2090−60M、60%メチルエチルケトン溶液、水酸基当量:105g/eq)を、表2に示す質量比率でメチルエチルケトンとエチレングリコールモノメチルエーテルの混合溶剤に加えて撹拌し、均一な樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製#2116、厚み100μm)に含浸させ、150℃の熱風乾燥器で10分間処理してプリプレグを得た。
【0111】
<5.積層体の製造及び評価>
<実施例4〜11、比較例2〜6>
前記プリプレグ6枚を5MPaの荷重下、200℃×60分間加熱して厚さ約1mmの積層体を得た。得られた積層体を1.5mm×1.0mm×70mmの四角柱状に切削し、5GHzでの誘電率及び誘電正接を摂動法空洞共振器・誘電率測定装置(株式会社関東電子応用開発製Cavity Resornator)で23℃で測定した。
また、得られた積層体をダンベル型引張試験片(JIS K7127 Type5)の形状に打ち抜き、試験片を得た。得られた試験片を用いて、打ち抜き直後及び170℃×500時間後に引張試験を行い、打ち抜き直後の引張強度に対する170℃×500時間後の引張強度の比を引張強度保持率とした。
さらに、得られた試験片を液体窒素で冷却して破断後、破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、液晶ポリマー粒子(又はポリテトラフルオロエチレン粒子)とエポキシ樹脂との界面に剥離が見られないものを○、剥離が見られるものを×として、界面密着性を評価した。
結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
樹脂成分と液晶ポリマー粒子とを含有する樹脂組成物を用いた実施例4〜11では、簡便な製造方法によって、経済性に優れたプリプレグが得られた。
また、表2に示すとおり、液晶ポリマー粒子を含有する樹脂組成物を用いた実施例4〜11のプリプレグでは、実用に適した引張強度保持率及び界面密着性を維持しながら、優れた電気的特性(誘電率及び誘電正接)が得られた。