(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1と第2の転送部は、前記n個の処理領域よりも多いN個の処理領域分の処理データを転送する場合に、描画処理順序が連続する(N−n)個の処理領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、前記第1の転送処理の終了後に描画処理順序が連続する残りのn個の処理領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、の2回に分けたデータ転送処理を行い、
前記第1と第2の転送部は、互いに一方が前記第1の転送処理と前記第2の転送処理とを行う場合に、他方が前記データ入力処理を行う際、前記一方の前記第1の転送処理中において前記処理データの入力を開始し、前記第2の転送処理開始後にはさらなる新たな処理領域分の処理データの入力を行わないことを特徴とする請求項2記載の荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子ビーム描画装置では、例えば、2台の転送処理装置を使って、一方がデータ変換後のデータを入力する間に、他方が偏向制御回路へと既に入力済のデータを転送するといった動作を交互に繰り返す。これにより、偏向制御回路へのデータ転送を滞りなく行い、描画処理をスムーズに進めることが行われる。ここで、転送処理装置から偏向制御回路へのデータ転送が間に合わず、描画処理が停滞してしまうといった問題がある。
【0007】
例えば、偏向制御回路に搭載するバッファの記憶容量があまり大きく設定されていない場合が挙げられる。かかる場合、多くの計算領域分のデータを予めデータ転送しておくことができないので、描画処理の進行に合わせて、順次、データ転送を行う必要がある。例えば、1台目の転送処理装置の1回の入力処理にかかる時間に対して、2台目の転送処理装置から偏向制御回路へのデータ転送量が少ないと、2台目の転送処理装置のデータ転送終了までに1台目の転送処理装置のデータ入力が間に合わず、次に1台目の転送処理装置が行う予定のデータ転送処理が停滞してしまうことに繋がる。その結果、転送処理装置から偏向制御回路へのデータ転送が間に合わず、描画処理が停滞してしまうことになる。
【0008】
その他、例えば、2台目の転送処理装置がデータ転送中に、1台目の転送処理装置がデータ入力を行う際、予定していた1回の入力処理が終わったが、1台目の転送処理装置に搭載されているバッファにまだ余裕があったために2回目の入力処理を開始した場合が挙げられる。かかる場合、2台目の転送処理装置のデータ転送終了までに1台目の転送処理装置の2回目のデータ入力が終了しなかった場合、次に1台目の転送処理装置が行う予定のデータ転送処理が停滞してしまうことに繋がる。その結果、転送処理装置から偏向制御回路へのデータ転送が間に合わず、描画処理が停滞してしまうことになる。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点の少なくとも1つを克服し、偏向制御回路へのデータ転送を滞りなく行い、描画処理をスムーズに進めることが可能な描画装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
試料の描画領域が複数の処理領域に仮想分割された処理領域毎に描画データを並列にデータ変換処理する複数の変換処理部と、
互いに一方相手がデータ転送処理中に、他方が、データ変換処理された、予め設定されたn個の処理領域よりも多いN個の処理領域分の処理データを並列に入力し、互いに一方がデータ入力処理中に、他方が(N−n)個の処理領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に残りのn個の処理領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、に分けたデータ転送処理を行い、互いに一方がデータ入力処理を行う際、他方の第1の転送処理中において処理データの入力を開始し、第2の転送処理開始後にはさらなる新たな処理領域分の処理データの入力を行わない、第1と第2の転送部と、
第1と第2の転送部から転送された処理領域毎の処理データに沿って、荷電粒子ビームを偏向する偏向量を制御する偏向制御回路と、
偏向量に基づいて荷電粒子ビームを偏向することによって、試料にパターンを描画する描画部と、
を備え、
上述したnは、複数の変換処理部の1以上の変換処理部から第1と第2の転送部の一方への1回のデータ入力処理にかかる時間を第1と第2の転送部の他方から偏向制御回路への1つの処理領域分の処理データの転送にかかる時間で割った値以上の値に設定され
、
前記複数の処理領域は、前記第1と第2の転送部が前記処理データを並列に入力する場合に、入力処理時間が入力される処理領域数に関わらず一定にできるサイズで分割されることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
試料の描画領域が複数の処理領域に仮想分割された処理領域毎に描画データを並列にデータ変換処理する複数の変換処理部と、
互いに一方が転送処理中に、他方が、データ変換処理された、描画処理順序が連続する予め設定されたn個以上の処理領域分の処理データを並列に入力し、互いに一方がデータ入力処理中に、他方が、描画処理順序が連続するn個以上の処理領域分の処理データを転送する、第1と第2の転送部と、
第1と第2の転送部から順に転送された処理領域毎の処理データに沿って、荷電粒子ビームを偏向する偏向量を制御する偏向制御回路と、
偏向量に基づいて荷電粒子ビームを偏向することによって、試料にパターンを描画する描画部と、
を備え、
上述したnは、複数の変換処理部の1以上の変換処理部から第1と第2の転送部の一方への1回のデータ入力処理にかかる時間を第1と第2の転送部の他方から偏向制御回路への1つの処理領域分の処理データの転送にかかる時間で割った値以上の値に設定され
、
前記複数の処理領域は、前記第1と第2の転送部が前記処理データを並列に入力する場合に、入力処理時間が入力される処理領域数に関わらず一定にできるサイズで分割されることを特徴とする。
【0012】
また、第1と第2の転送部は、上述したn個の処理領域よりも多いN個の処理領域分の処理データを転送する場合に、描画処理順序が連続する(N−n)個の処理領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に描画処理順序が連続する残りのn個の処理領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、の2回に分けたデータ転送処理を行い、
第1と第2の転送部は、互いに一方が第1の転送処理と第2の転送処理とを行う場合に、他方がデータ入力処理を行う際、一方の第1の転送処理中において処理データの入力を開始し、第2の転送処理開始後にはさらなる新たな処理領域分の処理データの入力を行わないように構成すると好適である。
【0013】
また、試料の描画領域は、短冊状に複数のストライプ領域に分割され、
描画部は、ストライプ領域毎に描画処理を行い、
第1と第2の転送部は、ストライプ領域毎に、当該ストライプ領域の終端の処理領域の処理データを入力が完了した際には、データ入力処理を終了し、
第1と第2の転送部は、ストライプ領域の終端の処理領域の処理データを転送する際には、入力された処理データがn個未満であっても転送処理を行うように構成すると好適である。
【0014】
本発明の他の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
複数の変換処理部を用いて、試料の描画領域が複数の処理領域に仮想分割された処理領域毎に描画データを並列にデータ変換処理する工程と、
第1の転送部が、データ変換処理された、予め設定されたn個の処理領域よりも多いN
1個の処理領域分の処理データを並列に入力する工程と、
第1の転送部が、(N
1−n)個の処理領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に残りのn個の処理領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、に分けた偏向制御回路へのデータ転送処理を行う工程と、
第2の転送部が、第1の転送部による第1の転送処理中に、データ変換処理された、予め設定されたn個の処理領域よりも多いN
2個の処理領域分の処理データの並列入力を開始し、第2の転送処理開始後にはさらなる新たな処理領域分の処理データの入力を行わない工程と、
第2の転送部が、第1の転送部による第2の転送処理終了後、(N
2−n)個の処理領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に残りのn個の処理領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、に分けた偏向制御回路への転送処理を行う工程と、
第1と第2の転送部から転送された処理領域毎の処理データに基づいて、荷電粒子ビームを偏向することによって、試料にパターンを描画する工程と、
を備え、
上述したnは、複数の変換処理部の1以上の変換処理部から第1と第2の転送部の一方への1回のデータ入力処理にかかる時間を第1と第2の転送部の他方から偏向制御回路への1つの処理領域分の処理データの転送にかかる時間で割った値以上の値に設定され
、
前記複数の処理領域は、前記第1と第2の転送部が前記処理データを並列に入力する場合に、入力処理時間が入力される処理領域数に関わらず一定にできるサイズで分割されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、偏向制御回路へのデータ転送を滞りなく行うことができる。よって、描画処理をスムーズに進めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0019】
制御部160は、複数の制御計算機ユニット110a〜n、複数のデータ転送計算機ユニット120a,b、偏向制御回路130(偏向演算ユニット)、制御回路132、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。複数の制御計算機ユニット110a〜n、複数のデータ転送計算機ユニット120a,b、偏向制御回路130、制御回路132、及び記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0020】
複数の制御計算機ユニット110a〜n内には、それぞれ、複数のCPU及び複数のメモリが配置されている。複数のデータ転送計算機ユニット120a,b内には、それぞれ、入力部34、バッファメモリ30及び転送部32が配置される。偏向制御回路130内には、バッファメモリ40及び偏向量演算部42が配置される。
【0021】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、1段の偏向器或いは3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。
【0022】
記憶装置140には、複数の図形パターンの位置およびサイズ等が定義された描画データが外部から入力され、記憶される。
【0023】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10は、x方向或いはy方向に主偏向器208で偏向可能な幅で短冊状の複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、ブロック状の複数の計算処理単位領域(DPB)30に分けられる。
【0024】
図3は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図3において、実施の形態1における描画方法は、データ変換工程(S102)と、データ入力工程(S104)と、データ転送工程(S106)と、偏向量演算工程(S120)と、描画工程(S122)と、いう一例の工程を実施する。データ入力工程(S104a)とデータ転送工程(S106a)は、並列に実施される。データ入力工程(S104b)とデータ転送工程(S106b)は、並列に実施される。また、データ転送工程(S106a)は、その内部工程として、転送処理(1)工程(S108a)と転送処理(2)工程(S110a)とを実施する。データ転送工程(S106b)は、その内部工程として、転送処理(1)工程(S108b)と転送処理(2)工程(S110b)とを実施する。
【0025】
データ変換工程(S102)において、複数の制御計算機ユニット110a〜n(データ変換部或いは変換処理部の一例)は、試料101の描画領域10が複数のDPB領域31(処理領域)に仮想分割されたDPB領域31毎に描画データを並列にデータ変換処理する。複数の制御計算機ユニット110a〜n内の各CPUは、それぞれ、記憶装置140からDPB領域31単位で対応する描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行って、装置固有のショットデータを生成する。このように、並列にデータ処理を行うことで、高速にデータ処理を行うことができる。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズに描画データに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そこで、各複数のデータ変換部110a〜n内の各CPUは、描画データが示す図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、及び照射量といった図形データが定義される。ここで、実施の形態1では、さらに、各ショットデータに描画順序を示す描画順番情報をヘッダに定義する。
【0026】
各ショットデータでは、そのヘッダに描画順番情報が示される。例えば、DPB情報が定義される。かかるDPB情報によって、描画順序が示される。例えば、ストライプ領域20毎にDPB情報が定義される場合には、さらに、ストライプ領域情報も定義される。DPB情報として、例えば、DPBアドレスを用いると好適である。そして、例えば、アドレスが示す位置が若い順のDPB毎に描画処理は進められる。或いは、例えば、ストライプ領域毎にアドレスが示す位置がストライプ領域の描画開始位置に近い順のDPB毎に描画処理は進められる。或いは、単に、複数のDPBに対して、それぞれのDPBの描画処理順にあたる番号が定義されてもよい。
【0027】
そして、ヘッダの後に、例えば、図形種、図形サイズ、照射位置、及び照射量といった図形データが定義される。各データ変換部110a〜n内の各CPUで計算されたショットデータは、各CPUに対応するメモリに記憶される。
【0028】
各データ転送計算機ユニット120a,bは、共に、データ入力(ショットデータの入力)とデータ転送(ショットデータの転送)とを交互に繰り返し行う。各データ転送計算機ユニット120は、共に、データ入力とデータ転送を同時には実施しない。そのため、2つのデータ転送計算機ユニット120a,bの一方(例えばデータ転送計算機ユニット120a)がデータ入力を行っている間は、他方(例えばデータ転送計算機ユニット120b)が偏向制御回路130へとデータ転送を行う。そして、かかる他方(例えばデータ転送計算機ユニット120b)のデータ転送終了後、今度は他方(例えばデータ転送計算機ユニット120b)がデータ入力を行っている間に、一方(例えばデータ転送計算機ユニット120a)が偏向制御回路130へとデータ転送を行う。かかる動作を繰り返す。かかる繰り返し動作により、偏向制御回路130へ滞りなくデータ転送を行うことができるはずである。しかしながら、偏向制御回路130へのデータ転送が間に合わず、描画処理が停滞してしまうといった問題がある。
【0029】
図4は、比較例におけるデータ入力とデータ転送のタイムチャートの一例である。偏向制御回路に搭載するバッファの記憶容量があまり大きく設定されていない場合、多くのDPB領域分の処理データを予めデータ転送しておくことができないので、描画処理の進行に合わせて、順次、データ転送を行う必要がある。例えば、データ転送計算機ユニット120a(転送装置1)によりデータ転送を開始後、データ転送計算機ユニット120b(転送装置2)によりデータ入力を開始する。しかし、例えば、データ転送計算機ユニット120bの1回の入力処理にかかる時間に対して、データ転送計算機ユニット120aから偏向制御回路130へのデータ転送量が少ないと、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了までにデータ転送計算機ユニット120bのデータ入力が間に合わない。そのため、
図4に示すように、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了からデータ転送計算機ユニット120bのデータ入力終了までに時間ΔTのタイムラグが発生する。かかる停滞時間の発生により、描画装置100ではリカバー動作を行うことになる。言い換えれば、描画処理を一旦停止し、少し手前の位置までステージを戻した上で、再度、データの到着を待って処理を再開する。かかるリカバー動作にかかる時間分、描画処理が停滞してしまうことになる。
【0030】
図5は、比較例におけるデータ入力とデータ転送のタイムチャートの他の一例である。
図5では、データ転送計算機ユニット120a(転送装置1)がデータ転送中に、データ転送計算機ユニット120b(転送装置2)がデータ入力を行う際、予定していた1回の入力処理(第1データの入力処理)が終わったが、データ転送計算機ユニット120bに搭載されているバッファにまだ余裕があったために2回目の入力処理(第2データの入力処理)を開始した場合を示している。かかる場合、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了までにデータ転送計算機ユニット120bの2回目のデータ入力が終了しなかった場合、次にデータ転送計算機ユニット120bが行う予定のデータ転送処理が停滞してしまうことに繋がる。そのため、
図5に示すように、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了からデータ転送計算機ユニット120bの第2データ入力終了までに時間ΔTのタイムラグが発生する。かかる停滞時間の発生により、描画装置100ではリカバー動作を行うことになる。その結果、データ転送計算機ユニット120bから偏向制御回路130へのデータ転送が間に合わず、描画処理が停滞してしまうことになる。
【0031】
そこで、実施の形態1では、各データ転送計算機ユニット120の1回のデータ入力処理にかかる時間と、各データ転送計算機ユニット120から偏向制御回路130への1つのDPB領域31分の処理データ(ショットデータ)の転送にかかる時間とを考慮する。各データ転送計算機ユニット120の1回のデータ入力処理にかかる時間は、t1(sec)かかる。かかる入力処理時間は、複数のDPB領域31の処理データの並列入力が可能であるため、入力されるDPB数に関わらず一定にできる。一方、各データ転送計算機ユニット120から偏向制御回路130へデータ転送する際の処理データの転送にかかる時間は、DPB領域31毎の直列転送(シリーズ転送)になるので1つのDPB領域31あたりt2(sec/DPB)かかる。よって、複数の制御計算機ユニット110a〜nのうち1以上の制御計算機ユニット110a〜nからデータ転送計算機ユニット120a,bの一方への1回のデータ入力処理にかかる時間t1(sec)をデータ転送計算機ユニット120a,bの他方から偏向制御回路130への1つのDPB領域31分の処理データの転送にかかる時間t2(sec/DPB)で割った値以上の整数値(n個)のDPB領域31数の処理データをデータ入力およびデータ転送すれば、データ転送にデータ入力が遅れることはない。よって、描画データの転送処理を描画処理の進行に合わせてリアルタイムに行なうことができる。
【0032】
また、その後の描画処理を停滞させないようにするため、n個以上のDPB領域31数の処理データは、描画処理順序が連続する複数のDPB領域31数の処理データにする。整数値nは、t1/t2の値の小数点以下を切り上げた整数値に設定すると好適である。
【0033】
ここで、実施の形態1では、データ転送計算機ユニット120a,bが例えばn個よりも多いN個のDPB領域31数の処理データをデータ入力およびデータ転送する場合について説明する。例えば、データ転送計算機ユニット120a,120bのデータ入力およびデータ転送する処理データのDPB領域31数は、n個のDPB領域31よりも多いN個とする。データ転送計算機ユニット120a,120bにおける各N値は、同じ値であっても良いし、異なってもよい。例えば、N
1個とN
2個でよい。また、N値は、データ転送計算機ユニット120aがデータ入力する毎に変動してもよい。例えば、N
1個、N
3個、・・・でよい。同様に、N値は、データ転送計算機ユニット120bがデータ入力する毎に変動してもよい。例えば、N
2個、N
4個、・・・でよい。
【0034】
データ入力工程(S104a)において、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部)が、データ変換処理された、予め設定されたn個のDPB領域31よりも多いN個のDPB領域31分の処理データ(ショットデータ)を入力する。ここでは、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部)の入力部34aが、データ変換処理された、予め設定されたn個のDPB領域31よりも多いN個のDPB領域31分の処理データを入力する。入力されたN個のDPB領域31分の処理データはバッファメモリ30aに格納される。予め設定される値「n」とは、上述したn(t1/t2以上の整数値)である。
【0035】
図6は、実施の形態1におけるデータ入力とデータ転送のタイムチャート図の一例である。
データ転送工程(S106b)において、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部)は、その内部工程として、転送処理(1)工程(S108b)と転送処理(2)工程(S110b)とを実施する。
【0036】
まず、転送処理(1)工程(S108b)(第1の転送処理)において、転送部32aは、(N
1−n)個のDPB領域分の処理データを順に偏向制御回路130に転送する。転送処理(1)工程(S108b)の終了後、続いて、転送処理(2)工程(S110b)(第2の転送処理)において、転送部32aは、残りのn個のDPB領域分の処理データを順に転送する。転送された処理データ(ショットデータ)は、バッファメモリ40に一時的に格納される。
【0037】
データ入力工程(S104b)において、データ転送計算機ユニット120b(第2の転送部)の入力部34bは、データ転送計算機ユニット120aによる転送処理(1)工程(S108b)中に、データ変換処理された、予め設定されたn個の処理領域よりも多いN
2個のDPB領域分の処理データの入力を開始する。その後、入力部34bは、データ転送計算機ユニット120aによる転送処理(2)工程(S110b)開始後にはさらなる新たなDPB領域分の処理データの入力を行わないようにする。転送処理(2)工程(S110b)においてかかる転送時間は、n個のDPB領域分の処理データを転送する時間(n×t2≧t1)なので、少なくとも、その間に、データ転送計算機ユニット120bは、データ入力時間t1の1回のデータ入力(N
2個のDPB領域の処理データ入力)が完了できる。よって、データ転送計算機ユニット120bは、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了までに、N
2個のDPB領域の処理データのデータ入力を完了させることができる。
【0038】
続いて、データ転送工程(S106a)において、データ転送計算機ユニット120b(第2の転送部)は、その内部工程として、転送処理(1)工程(S108a)と転送処理(2)工程(S110a)とを実施する。具体的には、転送処理(1)工程(S108a)(第1の転送処理)において、転送部32bは、(N
2−n)個のDPB領域分の処理データを順に偏向制御回路130に転送する。転送処理(1)工程(S108a)の終了後、続いて、転送処理(2)工程(S110a)(第2の転送処理)において、転送部32bは、残りのn個のDPB領域分の処理データを順に転送する。転送された処理データ(ショットデータ)は、バッファメモリ40に一時的に格納される。
【0039】
データ入力工程(S104a)において、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部)の入力部34aは、データ転送計算機ユニット120bによる転送処理(1)工程(S108a)中に、データ変換処理された、予め設定されたn個の処理領域よりも多いN
3個のDPB領域分の処理データの入力を開始する。その後、入力部34aは、データ転送計算機ユニット120bによる転送処理(2)工程(S110a)開始後にはさらなる新たなDPB領域分の処理データの入力を行わないようにする。転送処理(2)工程(S110a)においてかかる転送時間は、n個のDPB領域分の処理データを転送する時間(n×t2≧t1)なので、少なくとも、その間に、データ転送計算機ユニット120aは、データ入力時間t1の1回のデータ入力(N
3個のDPB領域の処理データ入力)が完了できる。よって、データ転送計算機ユニット120aは、データ転送計算機ユニット120bのデータ転送終了までに、N個のDPB領域の処理データのデータ入力を完了させることができる。
【0040】
以上のように、データ転送計算機ユニット120a,120bは、互いに一方がデータ転送処理中に、他方が、データ変換処理された、予め設定されたn個のDPB領域よりも多いN(N値は、その都度可変で構わない。例えば、N
1、N
2、N
3、・・・)個のDPB領域分の処理データを入力する。そして、データ転送計算機ユニット120a,120bは、互いに一方がデータ入力処理中に、他方が(N−n)個のDPB領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に残りのn個のDPB領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、の2回に分けたデータ転送処理を行う。そして、データ転送計算機ユニット120a,120bは、互いに一方がデータ入力処理を行う際、他方の第1の転送処理中において処理データの入力を開始し、第2の転送処理開始後にはさらなる新たなDPB領域分の処理データの入力を行わないようにする。
【0041】
以上のようにして、データ入力工程(S104a)とデータ転送工程(S106a)の並列処理と、データ入力工程(S104b)とデータ転送工程(S106b)の並列処理と、を繰り返す。その結果、偏向制御回路130のバッファメモリ40に、滞りなく描画処理順のDPB領域31のショットデータを順次格納することができる。
【0042】
偏向量演算工程(S120)において、偏向量演算部42は、バッファメモリ40から描画順に処理データ(ショットデータ)を読み出し、偏向器205、主偏向器208及び副偏向器209で偏向する偏向量をそれぞれ演算する。そして、各偏向器用のそれぞれ図示しないデジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニットに偏向量を示すデジタル信号を出力する。図示しない各DACアンプユニットでは、偏向制御回路130により出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して、偏向器205、主偏向器208、及び副偏向器209といった各偏向器の対応する偏向器にそれぞれ偏向電圧として印加することになる。このように、偏向制御回路130は、データ転送計算機ユニット120a,120bから転送されたDPB領域31毎の処理データに沿って、電子ビーム200を偏向する偏向量を制御する。
【0043】
描画工程(S122)において、制御回路132に制御された描画部150は、かかる偏向量に基づいて電子ビーム200を偏向することによって、試料101にパターンを描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0044】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形させる)ことができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208で描画領域を仮想分割したサブフィールド(SF)の基準位置にステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0045】
ここで、描画処理は、ストライプ領域20毎に行われる。そして、データ転送計算機ユニット120a,120bは、ストライプ領域20毎に、当該ストライプ領域20の終端のDPB領域33の処理データの入力が完了した際には、データ入力処理を一旦終了すると好適である。終端のDPB領域33の処理データには、終端であることを示すフラグを定義しておけばよい。そして、入力部34a,34bは、終端であることを示すフラグを検出したらそのデータの入力処理が終了した時点で入力処理を終了すればよい。また、データ転送計算機ユニット120a,120bは、ストライプ領域20の終端のDPB領域33の処理データを転送する際には、入力された処理データがn個未満であっても転送処理を行う。その場合には、1回の転送処理でn個未満の処理データを転送すればよい。これにより、ストライプ終端まで描画処理を進めることができる。
【0046】
次のストライプ領域20において、最初のDPB領域31の描画は、直ぐには開始しない。それは、次のストライプ領域20でのデータ入力工程(S104a)でN個のデータ入力を行った後、データ転送工程(S106a)を完了させることによって、その後の変更量演算工程(S120)及び描画工程(S122)に進むことができる。よって、データ入力工程(S104a)とデータ転送工程(S106a)にかかる時間だけ描画開始が遅れることになる。しかし、描画済のストライプ領域20から次のストライプ領域20の先頭箇所がビームの偏向範囲になるようにXYステージ105を移動させる時間に重ねることができるのでその分描画開始を早めることができる。結果として、リカバーを行う場合よりは短時間で済ますことができる。なお、終端のDPB領域33の処理データの入力処理を終了後、バッファメモリ30a,bの空き容量が十分で、入力された処理データの他に、合計でN個となる次のストライプ領域20の描画処理順序が連続するDPB領域分の処理データが格納できるようであれば、前の一端データ入力工程を打ち切った(終了せさた)後で、再度、データ入力を行っても構わない。その場合には、次のストライプ領域20の描画開始を早めることができる。
【0047】
ここで、上述した例では、データ転送計算機ユニット120a,120bは、共に、予め設定されたn個のDPB領域よりも多いN個のDPB領域分の処理データを入力し、転送していたが、これに限るものではない。データ転送計算機ユニット120a,120bは、共に、描画処理順序が連続する予め設定されたn個のDPB領域分の処理データを入力し、転送するようにしてもよい。かかる場合のデータ転送工程(S106)では、転送処理を2回に分ける必要はない。
【0048】
図7は、実施の形態1におけるデータ入力とデータ転送のタイムチャート図の他の一例である。
図7では、データ転送計算機ユニット120a(転送装置1)のバッファメモリ30aには、描画処理順序が連続するn個のDPB領域分の処理データの入力が終了した時点からそれ以降の処理を示している。
【0049】
データ転送工程(S106b)において、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部の転送部32aは、描画処理順序が連続するn個のDPB領域分の処理データを順に偏向制御回路130に転送する転送処理を開始する。転送された処理データ(ショットデータ)は、バッファメモリ40に一時的に格納される。
【0050】
データ入力工程(S104b)において、データ転送計算機ユニット120b(第2の転送部)の入力部34bは、データ転送計算機ユニット120aによるデータ転送処理中に、データ変換処理された、描画処理順序が連続する予め設定されたn個のDPB領域域分の処理データの入力を開始する。データ転送工程(S106b)においてかかる転送時間は、n個のDPB領域分の処理データを転送する時間(n×t2≧t1)なので、少なくとも、その間に、データ転送計算機ユニット120bは、データ入力時間t1の1回のデータ入力(n個のDPB領域の処理データ入力)が完了できる。よって、データ転送計算機ユニット120bは、データ転送計算機ユニット120aのデータ転送終了までに、n個のDPB領域の処理データのデータ入力を完了させることができる。
【0051】
続いて、データ転送工程(S106a)において、データ転送計算機ユニット120b(第2の転送部)の転送部32bは、描画処理順序が連続するn個のDPB領域分の処理データを順に偏向制御回路130に転送する。転送された処理データ(ショットデータ)は、バッファメモリ40に一時的に格納される。
【0052】
データ入力工程(S104a)において、データ転送計算機ユニット120a(第1の転送部)の入力部34aは、データ転送計算機ユニット120bによるデータ転送工程(S106a)中に、データ変換処理された、描画処理順序が連続する予め設定されたn個のDPB領域分の処理データの入力を開始する。データ転送工程(S106a)においてかかる転送時間は、n個のDPB領域分の処理データを転送する時間(n×t2≧t1)なので、少なくとも、その間に、データ転送計算機ユニット120aは、データ入力時間t1の1回のデータ入力(n個のDPB領域の処理データ入力)が完了できる。よって、データ転送計算機ユニット120aは、データ転送計算機ユニット120bのデータ転送終了までに、描画処理が連続するn個のDPB領域の処理データのデータ入力を完了させることができる。
【0053】
以上のように、実施の形態1におけるデータ転送計算機ユニット120a,120bは、互いに一方が転送処理中に、他方が、データ変換処理された、描画処理順序が連続する予め設定されたn個以上のDPB領域31分の処理データを入力する。データ転送計算機ユニット120a,120bは、互いに一方がデータ入力処理中に、他方が、描画処理順序が連続するn個以上の処理領域分の処理データを転送する。かかる構成により、データ転送にデータ入力が遅れることはない。
【0054】
以上のように実施の形態1によれば、偏向制御回路130へのデータ転送を滞りなく行うことができる。よって、描画処理をスムーズに進めることができる。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、データ転送計算機ユニット120a,bが例えばn個よりも多いN個のDPB領域31数の処理データをデータ入力およびデータ転送する場合と、データ転送計算機ユニット120a,bが例えばn個のDPB領域31数の処理データをデータ入力およびデータ転送する場合とについて説明した。但し、これに限るものではない。予め設定されたn個以上であれば、データ入力およびデータ転送する処理データのDPB領域数は、n個の場合とn個よりも多いN個の場合とが多様に混在してもよい。かかる場合、n個よりも多いN個のDPB領域31数の処理データをデータ転送する場合だけ、(N−n)個のDPB領域分の処理データを順に転送する第1の転送処理と、第1の転送処理の終了後に残りのn個のDPB領域分の処理データを順に転送する第2の転送処理と、の2回に分けたデータ転送処理を行えばよい。n個のDPB領域31数の処理データをデータ転送する場合には、1回のデータ転送処理を行えばよい。そして、n個よりも多いN個のDPB領域31数の処理データをデータ転送する際に並列に行うデータ入力の場合だけ、第2の転送処理開始後に新たなデータ入力は行わないようにすればよい。
【0056】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0057】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。