【実施例】
【0043】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。なお、銅粉末の製造、洗浄には、下記の原材料を使用し、物性を測定・評価した。
【0044】
「銅原料」
・酸化銅A:酸化第二銅(含水率5質量%、住友金属鉱山株式会社製)
・酸化銅B:酸化第二銅(含水率25質量%、住友金属鉱山株式会社製)
・水酸化銅A:水酸化銅(和光純薬工業株式会社製)
・炭酸銅A:炭酸銅(和光純薬工業株式会社製)
・シュウ酸銅A:シュウ酸銅(和光純薬工業株式会社製)
【0045】
「ポリオール」
・ポリオールA:トリエチレングリコール(関東化学株式会社製、沸点:287℃)
・ポリオールB:テトラエチレングリコール(関東化学株式会社製、沸点:327℃)
【0046】
「洗浄剤」
・純水:(導電率1.0μS/cm)
・アルコールA:エタノール(関東化学株式会社)
・アルコールB:1−オクタノール(関東化学株式会社)
・硫酸A:3質量%硫酸水溶液(関東化学株式会社製を純水で希釈)
【0047】
(1)平均粒径、形状
得られた銅粉末は大きさと形状を走査型電子顕微鏡(以下、SEM)で観察し、平均粒径は画像解析した粒径測定値の平均値を示す。
【0048】
(2)酸素濃度
得られた銅粉末の酸素濃度(質量%)を作製直後と、25℃で2000時間大気雰囲気下で放置した後に不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)でそれぞれ測定した。酸素濃度上昇は、後者から前者の酸素濃度を差し引いた値である。
【0049】
(3)連結粒子の長さ
得られた銅粉末をSEMで10000倍の視野で撮影し画像解析した結果、連結粒子の長径が平均粒径の4倍を超えるものがある場合を不可(×)とし、すべてが4倍未満である場合を良(○)とした。なお表には連結粒子の長径/平均粒径の最大値を記載している。
【0050】
(4)生産性
所定量の銅粉末を得るまでに要する時間を測定し、従来と比べ同等である場合を不可(×)、時間が短縮された場合を可(△)とし、時間が著しく短縮された場合を良(○)とした。
【0051】
(5)コストメリット
所定量の銅粉末を得るまでに要するコストを試算し、従来法のアルコール洗浄の場合と比べ、同等であれば可(△)、著しく高くなる場合を不可(×)とし、低下した場合を良(○)とした。
【0052】
(6)総合評価
上記の5項目において、平均粒径が0.1〜20μm、酸素濃度上昇が1%以下、連結粒子の長径が平均粒径の4倍以下、生産性、コストメリットの各条件を全て満たすか可が一つあるものを良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
(実施例1)
酸化銅A(含水率が5質量%の酸化第二銅)を原料とし、表1の条件で原料を溶媒中に供給し、所定の設定温度にして加熱し、1時間撹拌した。その後、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、残留品に純水を供給し25℃で撹拌洗浄(純水洗浄)し、再び銅粉末を沈降させ上澄みを回収後に、遠心分離機(2300rpm)で遠心脱水しながら、表1の条件で一価アルコールを供給し脱水洗浄(アルコール洗浄)した。
作製した銅粉末は、平均粒径をSEM観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
【0056】
(実施例2、3)
表1に記載したように酸化銅とポリオールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
【0057】
(実施例4〜8)
表1に記載したように原料の銅化合物の種類を変えるか、ポリオールの種類を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
【0058】
(実施例9、10)
表1に記載したように反応温度を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
【0059】
(実施例11〜13)
表1に記載したように洗浄用の純水とアルコールの比を変えるか、アルコールの種類を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表1に併記した。
【0060】
(比較例1、2)
表2に記載したように酸化銅Aとポリオールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であったが、比較例2の銅粉末は連結粒子の長径が大きかった。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0061】
(比較例3)
表2に記載したように反応温度を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析した。形状は略球形であったが、平均粒径は10μmを超えていた。酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0062】
(比較例4、5)
表2に記載したように洗浄時に純水とアルコールの比を変えた以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0063】
(比較例6)
表2に記載したようにアルコール洗浄を行わず、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収後に純水を供給して撹拌洗浄を行った以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0064】
(比較例7)
表2に記載したように純水洗浄を行わず、還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、遠心分離機にて脱水(脱溶媒)しながら、アルコールAを供給して脱水(脱溶媒)洗浄した以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0065】
(比較例8)
表2に記載したように還元後の銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、残留品に純水を供給して撹拌洗浄を行った後に再度銅粉末を沈降させ上澄みを回収した後、遠心分離機にて脱水しながら、5質量%の硫酸水溶液を供給して脱水洗浄した以外は実施例1と同様にして銅粉末を作製した。作製した銅粉末の平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらの結果は表2に併記した。
【0066】
(参考例1〜3)
参考例1は三井金属工業株式会社製の電解銅粉(品名:ECY)を使用し、参考例2は三井金属工業株式会社製の湿式銅粉(品名:1100Y)を用い、参考例3は三井金属工業株式会社製のアトマイズ銅粉(品名:MA−C025K)で、それらの平均粒径をSEMの観察後、画像解析し、酸素濃度を不活性ガスインパルス加熱融解赤外吸収法(型式:TC−436AR,LECO社製)で分析した。これらは前記原料、ポリオールを用いず、洗浄もおこなっていない。結果は表2に併記した。
【0067】
「評価」
表1から明らかなように、実施例1〜13の銅粉末は、銅化合物とポリオールの比および反応温度を所定の範囲とし、適切な洗浄を行っているので、作製した銅粉末の粒径、酸素濃度上昇、生産性、コストメリットが優れていることがわかる。なお、実施例3、10は酸素濃度上昇がやや高く、実施例13はコストメリットがやや小さいが、いずれも実用上問題のないレベルである。
【0068】
これに対し、比較例1は、銅化合物とポリオールの比について、銅化合物を本発明の好ましい範囲よりも低くしたため、生産性が悪く、工業的に不利になり不可となった。比較例2は、銅化合物とポリオールの比について、銅化合物を本発明の好ましい範囲よりも高くしたため、十分に還元反応が進まず生産性が悪く、連結粒子の長さ評価も悪く不可となった。比較例3は、反応温度が本発明の好ましい範囲より低いため、還元反応が適切に進まず生産性が悪く、酸素濃度上昇も高く不可となった。
【0069】
比較例4は、純水とアルコールの比で純水を本発明の好ましい範囲よりも高くしたため、乾燥が十分でなく酸素濃度が高く不可となった。比較例5は、純水とアルコールの比でアルコールを本発明の好ましい範囲よりも高くしたため、工業的に不利になりコストメリットがなく不可となった。
比較例6は、アルコール洗浄を行っていないため、酸素濃度上昇が高くなり不可となった。比較例7は、純水洗浄を行わず全てアルコール洗浄としたため、工業的に不利になりコストメリットがなく不可となった。比較例8は、硫酸洗浄としたため酸素濃度上昇が高くなり不可となった。
また、参考例1〜3は、原材料として、銅化合物とポリオールを用いず、他の製法による銅粉末を用いており、いずれも25℃で2000時間大気保存後の酸素濃度上昇が高くなり不可となった。