特許第6295957号(P6295957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6295957
(24)【登録日】2018年3月2日
(45)【発行日】2018年3月20日
(54)【発明の名称】導電性薄膜付きガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20180312BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20180312BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20180312BHJP
   C03C 17/23 20060101ALI20180312BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20180312BHJP
   H01L 31/0236 20060101ALI20180312BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   B32B17/06
   C03C15/00 A
   C03C17/23
   C03C17/34
   H01L31/04 282
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-542120(P2014-542120)
(86)(22)【出願日】2013年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2013077841
(87)【国際公開番号】WO2014061612
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-229515(P2012-229515)
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 崇
(72)【発明者】
【氏名】岡畑 直樹
(72)【発明者】
【氏名】笹井 淳
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 勇介
(72)【発明者】
【氏名】東原 元気
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−212988(JP,A)
【文献】 特開2009−249220(JP,A)
【文献】 特開2012−138310(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068204(WO,A1)
【文献】 特開2010−137220(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102350(WO,A1)
【文献】 特開平08−165144(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/156176(WO,A1)
【文献】 特開2011−110757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 17/06
C03C 15/00
C03C 17/00
H01L 31/0236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の面上にアンダーコート層と次いで導電性薄膜とが積層され、
前記ガラス基板の、前記アンダーコート層、前記導電性薄膜が積層される側の面が、フッ化水素によってエッチング処理がなされる導電性薄膜付きガラス基板の製造方法において、
前記フッ化水素によるエッチング処理は、
フッ化水素濃度が0.1体積%以上10体積%以下であるフッ化水素を含有する気体を、搬送されているシート状のガラスに対して、常圧下、300℃以上で1秒以上2分以下吹きつけて行うことを特徴とする導電性薄膜付きガラス基板の製造方法。
【請求項2】
ガラス基板の面上に酸化ケイ素を含むアンダーコート層と、次いで導電性薄膜とが積層され、
前記酸化ケイ素を含むアンダーコート層が付いたガラス基板の、前記導電性薄膜が積層される側の面がフッ化水素によってエッチング処理がなさる導電性薄膜付きガラス基板の製造方法において、
前記フッ化水素によるエッチング処理は、
フッ化水素濃度が0.1体積%以上10体積%以下であるフッ化水素を含有する気体を、搬送されている酸化ケイ素を含むアンダーコート層が形成されたシート状のガラスに対して、常圧下、300℃以上で1秒以上2分以下吹きつけて行うことを特徴とする導電性薄膜付きガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性薄膜付きガラス基板、薄膜太陽電池、低放射ガラス基板、導電性薄膜付きガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラス基板に導電性薄膜を形成した導電性薄膜付きガラス基板が知られており、例えば太陽電池モジュールや建築用低放射ガラス等に使用されている。このような導電性薄膜付きガラス基板においては、製造時や、使用時において導電性薄膜に膜剥がれが生じる場合があり、係る問題を解決するため各種検討がなされていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、アルカリ含有基板ガラス上に、凹凸を付与するための膜厚150Å以上の結晶性を有する金属酸化物の下地膜と、SiOからなり前記下地膜の凹凸を反映する膜厚のアルカリバリア連続膜と、不純物をドープしたSnOからなり膜厚5000Å以上の透明導電膜とがその順序で成膜することにより、透明導電膜の付着力を向上させることが開示されている。
【0004】
また、特許文献1においては、ガラス基板上に熱分解スプレー法やCVD法によりSnO下地膜が製膜され、結晶粒子の成長によって凹凸が形成されること、さらに該凹凸によって膜剥がれが抑制されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2000−261013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、当該方法では結晶粒子の大きさの制御は難しく、結果、結晶粒子が大きくなり、凹凸の密度も疎になりやすい。したがって、実際の使用環境下、すなわち、高温で、かつ導電性薄膜に電圧が印加された環境下における導電性薄膜の耐膜剥がれ性を十分に抑制できているとは言えない。また、結晶粒子が大きくなるため、ヘーズも大きくなりやすく、導電性薄膜付き基板の透明性が低下してしまう。また、凹凸形成用下地膜のための原材料も別途必要となる。
【0007】
本発明は上記従来技術が有する問題に鑑み、高温での使用環境下において、特に導電性薄膜に電圧が印加された使用環境下で、導電性薄膜の膜剥がれの発生を抑制でき、かつヘーズも抑制した導電性薄膜付きガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、
ガラス基板の面上にアンダーコート層と次いで導電性薄膜とが積層され
記ガラス基板の、前記アンダーコート層、前記導電性薄膜が積層される側の面が、フッ化水素によってエッチング処理がなされる導電性薄膜付きガラス基板の製造方法において、
前記フッ化水素によるエッチング処理は、
フッ化水素濃度が0.1体積%以上10体積%以下であるフッ化水素を含有する気体を、搬送されているシート状のガラスに対して、常圧下、300℃以上で1秒以上2分以下吹きつけて行うことを特徴とする導電性薄膜付きガラス基板の製造方法を提供する。
【0009】
また、ガラス基板の面上に酸化ケイ素を含むアンダーコート層と、次いで導電性薄膜とが積層され、
前記酸化ケイ素を含むアンダーコート層が付いたガラス基板の、前記導電性薄膜が積層される側の面がフッ化水素によってエッチング処理がなされる導電性薄膜付きガラス基板の製造方法において、
前記フッ化水素によるエッチング処理は、
フッ化水素濃度が0.1体積%以上10体積%以下であるフッ化水素を含有する気体を、搬送されている酸化ケイ素を含むアンダーコート層が形成されたシート状のガラスに対して、常圧下、300℃以上で1秒以上2分以下吹きつけて行うことを特徴とする導電性薄膜付きガラス基板の製造方法を提供する。


【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性薄膜付きガラス基板においては、ガラス基板の表面粗さが緻密で適度に細かく、かつヘーズが小さい。よって、透明性に優れ、高温での使用環境下において、特に導電性薄膜に電圧が印加された使用環境下で、導電性薄膜の膜剥がれの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態における導電性薄膜付きガラス基板の断面図
図2】本発明の第3の実施形態における薄膜太陽電池の断面図
図3】本発明の実施例におけるインジェクタの断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施形態]
本実施形態では、本発明の導電性薄膜付きガラス基板の一構成例について説明する。
【0013】
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板は、ガラス基板の面上にアンダーコート層と、次いで導電性薄膜とが積層され、前記ガラス基板のヘーズが3%以下であり、前記ガラス基板の、前記アンダーコート層、前記導電性薄膜が積層される側の面の表面粗さ(Ra)が0.5nm以上50nm以下となっている。
【0014】
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板の具体的な構成例について、図1を用いて以下に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板の断面図を模式的に示したものであり、図中下から順に、ガラス基板11、アンダーコート層12、導電性薄膜(トップコート層)13が積層された構成を有している。以下、ガラス基板及び各層の構成について説明する。
<ガラス基板>
ガラス基板としては特に限定されるものではなく、用途に応じて選択することができる。具体的には例えば、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、その他の各種ガラスを用いることができる。
【0016】
アンダーコート層12として、後述の様にアルカリバリア性を有する層を設ける場合、アルカリバリア性を有するアンダーコート層は通常アルカリ成分を含有するガラス基板から導電性薄膜13等へのアルカリ成分の拡散を抑制することを目的に設けられている。このため、係る目的に鑑み、このような場合には例えば、ソーダライムシリケートガラスのようなアルカリ金属酸化物を含有するアルカリガラスを好適に用いることもできる。
【0017】
ただし、アルカリバリア性を有するアンダーコート層を設ける場合であってもアルカリ金属酸化物含有量の少ないまたは含有しないガラス基板を排除するものではなく、ソーダライムシリケートガラス以外の各種ガラス基板も用いることができる。
【0018】
なお、太陽電池等の光電変換素子や液晶ディスプレイに用いられるガラス基板のように、その上に透明導電性酸化物膜が形成される用途に用いられる場合、ガラス基板は光線透過率が高いことが好ましい。具体的には例えば、350〜800nmの波長領域において80%以上の光線透過率を有することが好ましい。
【0019】
ガラス基板の厚さは、その用途に応じて適宜選択することができる。太陽電池等の光電変換素子や液晶ディスプレイに用いられるガラス基板のように、その上に透明導電性酸化物膜が形成される用途に用いられるガラス基板の場合、ガラス基板の厚さは0.2〜6.0mmであることが好ましい。この範囲であると、ガラス基板の強度が強く、上述した波長領域における光線透過率が高いためである。
【0020】
そして、ガラス基板のアンダーコート層、導電性薄膜が積層される側の表面粗さ(Ra)は0.5nm以上50nm以下であり、0.5nm以上30nm以下であることがより好ましく、4.0nm以上15nm以下であることが特に好ましい。
【0021】
表面粗さ(Ra)は、AFMにより観察される表面形状における表面粗さ(Ra)であり、JIS B 0601(1994)に準拠した測定方法により測定することができる。
【0022】
このように、ガラス基板アンダーコート層、導電性薄膜が積層される側の面の表面粗さ(Ra)が上記範囲を満たすことにより、高温で、かつ導電性薄膜に電圧が印加された実際の使用環境下においても、導電性薄膜の剥離の発生を抑制できるため好ましい。
【0023】
そして、ガラス基板のヘーズが3%以下であり、1%以下であることがより好ましく0.8%以下であることが特に好ましい。
【0024】
ヘーズは、ガラス基板に光を当てた場合に、その反対側の面に透過した光(全透過光量)のうちの散乱透過光量の割合を示したものであり、JIS K 7136に準拠した方法により測定することができる。
【0025】
すなわち、ヘーズが上記範囲にあることにより、ガラス基板を透過する光の散乱の度合いは小さく、ガラス基板が透明であり、曇りがないことを意味している。
【0026】
このようにガラス基板を透過する光のうち、散乱透過光量の比率をほとんど増加させない程度の微細な凹凸を、少なくともガラス基板のアンダーコート層等を形成する側の面に設けることにより、透明性を要求される太陽電池用ガラス基板や、ディスプレイ用ガラス基板、低放射ガラス基板、建築用低放射ガラス基板等の各種用途に好ましく用いることができるため好ましい。
<フッ化水素によるエッチング処理>
そして、本実施形態のガラス基板の、アンダーコート層、導電性薄膜が積層される側の面11Aが、フッ化水素によってエッチング処理がなされていることが好ましく、これにより容易に上記特性を有するガラス基板とすることができる。
【0027】
フッ化水素によるエッチング処理について説明する。
【0028】
フッ化水素によるエッチング処理としては例えば、搬送されているシート状のガラスに対して、常圧下でフッ化水素を含有する気体を吹きつけることにより行うことができる。 そして、この際、シート状のガラスの、少なくともフッ化水素を含有する気体を吹きつける部分が300℃以上であり、ガラスの被処理部分に対する前記フッ化水素を含有する気体を吹き付ける時間が1秒以上2分以下であり、前記フッ化水素を含有する気体に含まれるフッ化水素濃度が0.1体積%以上10体積%以下であることが好ましい。ここで、シート状のガラスとは、成型工程後、除冷工程、切断工程等を経て製造されたガラス基板と、製造工程において成型工程後、切断工程を行っていないガラスリボンとを含み、いずれの形態であってもよい。ガラスリボンの場合には、エッチング処理後更に切断工程を行い所望のサイズのガラス基板とすることができる。
【0029】
エッチング処理を十分に進めるため、シート状のガラスは、上記のように少なくともフッ化水素を含有する気体を吹きつける部分を300℃以上とすることが好ましい。特にエッチング処理の際の反応性を高めるため、350℃以上とすることがより好ましい。
【0030】
この際、シート状のガラスのフッ化水素を含有する気体を吹きつける部分の温度の上限値としては特に限定されるものではない。シート状のガラスに対してフッ化水素を含有する気体を吹きつけた際に、シート状のガラスが変形、破損しない程度であることが好ましい。また、フッ化水素を含有する気体を吹きつけてエッチング処理を行った後、係る反応以外により形状が変化しない温度であることが好ましい。具体的には例えば加熱に要するコスト等も鑑みて、650℃以下であることが好ましく、600℃以下であることが、より好ましい。
【0031】
上記のようにシート状のガラスのうち、少なくともフッ化水素を含有する気体を吹きつける部分(エッチング処理を行う部分)について上記温度範囲となっていればよいが、シート状のガラスの全体を上記温度としてもよい。
【0032】
また、シート状のガラスは上記の様に製造したガラス基板を加熱して上記温度とすることもできるが、ガラス基板の製造工程において、ガラス基板(ガラスリボン)が上記温度範囲にあるタイミングでフッ化水素によるエッチング処理を行うこともできる。具体的には例えばフロートバスで成型し、フロートバスから出てきたガラスリボン、具体的には例えば除冷工程におけるガラスリボンに対して行うことができる。なお、この場合でも必要に応じて加熱を行ってもよい。
【0033】
このようにガラス基板の製造工程において、ガラス基板またはガラスリボンが所定の温度範囲にある時に行うことにより、加熱に要するエネルギーを節約することができるため、製造コスト、環境負荷の低減の観点から好ましい。
【0034】
フッ化水素を含有する気体としては、シート状のガラスに吹きつけた際、少なくともシート状のガラス表面においてフッ化水素を含有する気体であればよい。
【0035】
このように、少なくともシート状ガラス表面においてフッ化水素を含有する気体であればよいため、原料として、すなわち、シート状のガラス表面に対してノズル等から吐出する物質としては、シート状ガラス表面でフッ化水素を含有する物質となるものを用いることができる。具体的には例えば、その構造中にフッ素原子が存在する分子を含有する物質を用いることができる。係る物質として、例えば非爆発性等の安全性およびガラスとの高い反応性からフッ化水素が、非爆発性等、原料自体の安定性、熱分解反応物の安全性からトリフルオロ酢酸が好ましい。なお、トリフルオロ酢酸を原料に使う際は、熱分解の促進のため、シート状のガラスのうち、吹き付ける部分は500℃以上が好ましい。
【0036】
フッ化水素を含有する気体は、上記物質以外の各種液体や気体以外の液体や気体を含んでいてもよく、係る液体又は気体は常温でフッ素原子が存在する分子、特にフッ化水素と反応しない液体や気体であることが好ましい。具体的には例えばN、空気、H、O、Ne、Xe、CO、Ar、He、Krなどが挙げられるが、これらのものに限定されるものではない。またこれらのガスのうち、2種以上を混合して使用することもできる。フッ化水素を含有する気体のキャリアガスとしては、N、アルゴンなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
【0037】
また、フッ化水素を含有する気体には、更にSOを含んでもよい。SOはフロート法などで連続的にガラス基体を生産する際に使用されており、徐冷域において搬送ローラーがガラス基体と接触して、ガラスに疵を発生させることを防ぐ働きがある。また、高温で分解するガスを含んでいてもよい。
【0038】
更に、フッ化水素を含有する気体には、水蒸気もしくは水を含んでもよい。水蒸気は加熱した水に窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガスをバブリングさせて取り出すことができる。大量の水蒸気が必要な場合は、気化器に水を送り込んで直接気化させる方法をとることも可能である。
【0039】
フッ化水素を含有する気体としてHFを用い、これに水を添加する場合、HFと水のモル比([水]/[HF])は50以下であることが好ましい。HFと水を共存させると、HF分子と水分子の間で水素結合が形成されガラス基体に作用するHFが少なくなると考えられる。このため、[水]/[HF]が50を超えると、DHB試験における膜剥がれが生じる温度を十分に高められなくなる場合があるためである。
【0040】
[水]/[HF]は40以下であることが、ガラス基体に作用するHFが少なくならない点でより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
【0041】
なお、水は含んでいなくてもよいことから、上記[水]/[HF]のモル比の下限値としては0以上であればよい。
【0042】
そして、フッ化水素を含有する気体に含まれるフッ化水素濃度は特に限定されるものではないが、上記の様に0.1体積%以上10体積%以下であることが好ましく、0.2体積%以上8体積%以下であることがより好ましく、0.5体積%以上6体積%以下であることが更に好ましい。ここでいうフッ化水素を含有する気体に含まれるフッ化水素濃度とは、少なくとも被処理物であるシート状のガラス表面における濃度であり、より好ましくはインジェクタの吐出口から、シート状のガラス表面にわたる範囲において上記濃度であることが好ましい。
【0043】
フッ化水素濃度は要求される反応性や、表面に形成する凹凸の深さ、形状等に応じて選択することができるが、上記範囲を満たしている場合、導電性薄膜の膜剥がれの発生を特に抑制できるため好ましい。
【0044】
上記の様に、フッ化水素を含有する気体に水分やその他のガス等を添加する場合には、予めその全部を混合してからシート状のガラスに吹きつけることもできる。また、予め一部を混合したガスおよび/または各成分のガスを、例えば後述するインジェクタ部分において互いに近接して配置したノズルからシート状のガラスに対して吹きつけ、シート状のガラス表面で略混合されるように吹き付けてもよい。
【0045】
シート状のガラスに対して、フッ化水素を含有する気体を吹き付ける方法としては特に限定されるものではないが、搬送されているシート状のガラスの搬送経路上にインジェクタを配置して、インジェクタに設けた吐出口から吹き付けることができる。
【0046】
インジェクタは、両流し・片流しなど、いずれの態様で用いてもよく、シート状のガラスの搬送方向に直列に2個以上並べて、シート状のガラス表面を処理してもよい。
【0047】
両流しインジェクタとは、後述する図3に示すように、吐出から排気へのガスの流れがシート状のガラスの搬送方向に対して、順方向と逆方向に均等に分かれるインジェクタである。片流しインジェクタとは、吐出から排気へのガスの流れがガラス基体の移動方向に対して順方向もしくは逆方向のいずれかに固定されるインジェクタである。片流しインジェクタを使用するときは、気流安定性の点でシート状のガラス上のガスの流れとガラス基体の移動方向が同じであることの方が好ましい。
【0048】
常圧下でフッ化水素を含有する気体を吹きつけるとは、シート状のガラス周辺部分を意図して加圧または減圧とするものではないことを意味しており、フッ化水素を含有するガス等の操作に伴い圧力変動が生じることを排除するものではない。
【0049】
具体的には例えば、フッ化水素を含有する気体の吹きつけに応じて、排気(吸気)を行い、シート状のガラス周辺の雰囲気を常圧またはその近傍に保つ環境下で操作を行うことが好ましい。
【0050】
特に、本実施形態において、フッ化水素を含有する気体の吹きつけを行う際の常圧としては、大気圧±100Paの圧力範囲の雰囲気の中で行われることが好ましく、大気圧±50Paの圧力範囲の雰囲気の中で行われることがより好ましい。
【0051】
シート状のガラスの被処理部にフッ化水素を含有する気体を吹きつける時間としては、シート状のガラス表面について、導電性薄膜の剥離の発生を十分に抑制可能な凹凸を形成するため1秒以上2分以下であることが好ましい。特に、5秒以上60秒以下であることがより好ましく、5秒以上30秒以下であることが特に好ましい。
【0052】
ここで、上記シート状のガラスの被処理部にフッ化水素を含有する気体を吹きつける時間とは、フッ化水素を含有する気体を吹きつけている領域をシート状のガラスが通過するのに要する時間を意味している。具体的には、(フッ化水素を含有する気体を吹きつけている領域のシート状のガラスの搬送方向の長さ)/(シート状のガラスの搬送速度)により算出される。
【0053】
シート状のガラスの搬送方法としては特に限定されるものではなく、シート状のガラスの形状を所望の形状に維持しながら搬送することができるものであればよい。具体的には例えば、ローラーや(ベルト)コンベヤー(以下、これらについて「ローラー等」とも記載する)を用いて搬送することができる。このように搬送しているシート状のガラス基板に対してフッ化水素を含有する気体を吹きつけることにより、連続的にエッチング処理を行うことが可能になるため、生産性を高めることができる。
【0054】
フッ化水素によるエッチング処理は、少なくともアンダーコート層12及び導電性薄膜13(トップコート層)が積層される面について処理がなされていればよいが、アンダーコート層12等が積層される面以外の面についても同様にフッ化水素により処理を行ってもよい。
このため、フッ化水素を含有する気体は、上記の様に搬送しているシート状のガラスについて、ローラー等に触れていない側と、ローラー等に触れている側の少なくとも一方の側に供給し、エッチング処理を行えばよい。また、シート状のガラスの両面についてエッチング処理を行う場合には、ローラー等に触れていない側と、ローラー等に触れている側の両方の側に当該気体等を供給してエッチング処理をしてもよい。
【0055】
なお、ローラー等に接触している面に当該気体を供給する場合には、例えばローラー間に、シート状のガラスと(その吐出口が)対向する様にインジェクタを配置することにより行える。また、シート状のガラスの搬送手段がコンベヤーの場合には、コンベヤーベルトにメッシュベルトなどのシート状のガラスの一部が覆われていないメッシュ素材を用いることにより、コンベヤーに触れている側から供給してもよい。
【0056】
ただし、ローラー等が接触している側についてエッチング処理を行った場合、その後の搬送工程において、エッチング処理を行った面は更にローラー等と接触することから、エッチング処理を行った部分の形状が変化する可能性がある。このため、一方の面についてのみエッチング処理をする場合にはローラー等の搬送手段が接触していない面についてフッ化水素を含有する気体を供給してエッチング処理を行うことが好ましい。
【0057】
シート状のガラスを搬送する際の速度等は特に限定されるものではなく、シート状のガラスに対して十分にフッ化水素によるエッチング処理を施せる速度であればよく、シート状のガラスの被処理部にフッ化水素を含有するガスを吹きつける時間が上記範囲になるように速度を選択することが好ましい。
【0058】
このようにガラス基板表面についてフッ化水素によるエッチング処理を行うことにより、ガラス基板表面に微細な凹凸を形成することができる。このような凹凸を形成することにより、アンダーコート層、導電性薄膜の密着性(耐剥離性)を高めることができ、導電性薄膜の剥離の発生を抑制することができる。
【0059】
これは、ガラス基板表面に上記微細な凹凸を設けることによりまず、ガラス基板に対するアンダーコート層の接着強度を高めることができる。そして、この際ガラス基板表面に形成されたアンダーコート層はその表面(導電性薄膜を形成する面)にガラス基板表面の凹凸形状を反映した微細な凹凸形状を有することになる。このため、導電性薄膜のアンダーコート層に対する接着強度を高めることが可能になる。
【0060】
従って、ガラス基板、アンダーコート層、導電性薄膜それぞれの層間の接着強度を高め、これらの層の耐剥離性を高めることが可能になる。特に、電圧を印加した環境下では導電性薄膜が剥離し易くなるところ、上記構成とすることにより、このような環境下においても導電性薄膜の剥離の発生を抑制することが可能になる。
<アンダーコート層>
アンダーコート層12は、ガラス基板11と導電性薄膜13の間に設けられる層であって、その構成は特に限定されるものではないが、アンダーコート層は少なくとも酸化ケイ素を含む層を有することが好ましい。ここでいう、酸化ケイ素を含む層とは、酸化ケイ素を含んでいればよいが、酸化ケイ素を主成分とする膜を有していることがより好ましい。この場合「主成分」とは、該成分が酸化物基準の質量百分率表示で、90%以上含まれていることを意味する。
【0061】
このように、酸化ケイ素を含む層を設けることにより、ガラス基板中に含まれるアルカリ成分が、導電性薄膜へ移動することを抑制することが可能となり、導電性薄膜の特性劣化を抑制することができる。
【0062】
また、ガラス基板から導電性薄膜へアルカリ成分が移動した場合、導電性薄膜が剥離する場合があるが、係る酸化ケイ素を含む層を設けることによりアルカリ成分の移動が抑制され、導電性薄膜が剥離することも抑制することができる。このため、ガラス基板の表面に施したフッ化水素によるエッチング処理の効果と相乗的に働き、導電性薄膜の剥離の発生をより抑制することが可能になり好ましい。
【0063】
酸化ケイ素を含む層を有するアンダーコート層の構成としては例えばSiO膜、SiO/TiO膜(SiO膜とTiO膜との積層構造を意味している、なお、この場合の積層の順番は問わない。以下積層構造の膜についてこれと同様に表記する)、SiOC膜、SnO/SiO膜を含む構成が挙げられる。これらの膜はいずれもアルカリバリア膜として機能することができ、中でもSiO/TiO膜はアルカリバリア性能が高いため特に好ましく用いることができる
アンダーコート層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、熱分解法、CVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法等が挙げられる。
【0064】
アンダーコート層の厚さは、層の構成や、その機能により選択され特に限定されるものではないが、上記の様にアルカリバリア膜を含む場合、アルカリバリア性能の点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がさらに好ましい。また、コストおよび可視光透過率の調整の点から、500nm以下が好ましく、100nm以下、50nm以下がさらに好ましい。
<導電性薄膜>
導電性薄膜13としては特に限定されるものではなく、用途や、要求される性能に応じて選択することができるが、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板においては、ガラス基板側の構成部材には少なくとも可視光域における透明性が要求されることが一般的である。このため、導電性薄膜としては透明導電膜を用いることが好ましい。
【0065】
透明導電膜としては、SnOを主成分とする膜、ZnOを主成分とする膜、スズドープ酸化インジウム(ITO)膜、低放射性能を有するAgを含有する層を有する膜であることが好ましく、Ag層またはPd等の金属元素を含有する銀合金からなる膜等が挙げられ、原料コスト、量産性等の点から、SnOを主成分とする膜が好ましい。ここで、「主成分」とは、該成分が酸化物基準の質量百分率表示で、90%以上含まれていることを意味する。
【0066】
SnOを主成分とする膜としては、SnOからなる膜、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)からなる膜、アンチモンドープ酸化スズからなる膜等が挙げられる。これらの層は導電性に加えて低放射性能を有してもよい。
【0067】
透明導電膜の形成方法としては特に限定されるものではないが、熱分解法、CVD法、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、スプレー法等が挙げられる。
【0068】
透明導電膜の厚さは、5nm以上1500nm以下が好ましく、SnOを主成分とする膜の場合、100nm以上1200nm以下が好ましく、300nm以上800nm以下がさらに好ましい。
<その他の層>
上述した、ガラス基板、アンダーコート層、導電性薄膜に加えて、以下の層を任意に設けることもできる。
【0069】
上記の様にアンダーコート層としてアルカリバリア膜を含む場合、ガラス基板とアルカリバリア膜との間にTiO膜、SnO膜等を設けることができる。
【0070】
さらに、アルカリバリア膜と導電性薄膜との間に、SiOとSnOの混合酸化物や多層膜等を設けることもできる。
【0071】
ガラス基板の導電性薄膜を形成する面とは反対側の面に、反射防止膜等を設けることもできる。
【0072】
なお、上記したガラス基板と導電性薄膜との間に設ける膜自身がアルカリバリア性能を有していてもよい。
【0073】
また、上記のようにガラス基板と導電性薄膜との間に、アンダーコート層、導電性薄膜以外の膜を設けた場合であっても、それぞれの層の表面(導電性薄膜側の面)にガラス基板表面に形成した凹凸が転写(反映)されるため、それぞれの層間の密着性を高めることができる。このため、これらの膜を設けた場合であっても本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板の目的を達成することができる。
【0074】
以上、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板について説明したが、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板はDHB試験において膜剥がれが生じる温度が150℃以上であることが好ましい。この点について以下に説明する。
<DHB試験>
以下に、DHB試験について説明する。
【0075】
DHB(Dump Heat Bias)試験は、導電性薄膜の剥離のしやすさを見積もることができる耐久性試験であり、導電性薄膜をコートした試験片への電気的、熱的攻撃を同時に評価する試験である。
【0076】
具体的には、サンプルである導電性薄膜付きガラス基板について、各設定温度(試験温度)で安定するまで充分な時間加熱し、同時に導電性薄膜付きガラス基板に電界をかけることによって行い、導電性薄膜に膜剥がれが生じる温度(設定温度)を調べる試験である。すなわち、加熱と、電圧の印加を同時に行い、導電性薄膜に膜剥がれが生じる温度を調べる試験である。
【0077】
本試験によれば、温度と電圧とが同時に加えられた環境下での膜剥がれ耐久性を評価することができるため、現実の使用環境下で膜剥がれに影響を与える要素を加味して耐久性を評価することができる。
【0078】
具体的には例えば以下の手順によりDHB試験を行うことができる。
【0079】
(1)サンプルを、2つの電極間に配置した。導電性薄膜が形成されていない側(ガラス基板表面)をアルミニウムで覆われた銅電極(アノード)に接触させ、導電性薄膜側を、グラファイト電極(カソード)に接触させる。サンプルを設定温度まで加熱した後、電圧:500Vで、電圧印加時間:15分間保持する。
【0080】
(2)室温まで冷却した後、サンプルの導電性薄膜側を、相対湿度100%の雰囲気に1時間暴露し、導電性薄膜側に凝集を起こさせる(水分を導電性薄膜表面で結露させる)。凝集温度、水温は、55℃とし、気化温度は、50℃±2℃とする。
【0081】
本操作は密閉した容器内で行い、容器底部に水を上記水温で保ち、容器上部に配置したサンプルの導電性薄膜部分を上記凝集温度に保つことにより行っている。また、気化温度とは容器内の蒸気の温度を意味している。
【0082】
(3)サンプルの導電性薄膜側の表面に、導電性薄膜の剥離が発生しているか否かを確認する。なお、剥離の有無は、サンプル内に目視で確認できる剥離部分の面積が10%を超える場合、剥離が発生したと定義した。
【0083】
(4)同一条件で作製した別のサンプルを複数用意し、試験は、各設定温度について3回ずつ行った。サンプルの導電性薄膜が剥がれてしまった温度をTmax(℃)とする。Tmaxが高いほど、導電性薄膜が長期間剥離しにくい(耐久性が高い)ことを意味している。
【0084】
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板においては、上記の様にDHB試験において膜剥がれが生じる温度が150℃以上であることが好ましく、165℃以上であることがより好ましい。
【0085】
本発明の発明者らの検討によると、DHB試験において膜剥がれが生じる温度が上記温度以上であることにより、例えば太陽電池等の過酷な使用環境下で用いる用途であっても、十分な期間に渡って膜剥がれが発生しにくい導電性薄膜付きガラス基板とすることができる。
[第2の実施形態]
本実施形態では、本発明の導電性薄膜付きガラス基板の他の構成例について説明する。
【0086】
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板は、ガラス基板の面上に酸化ケイ素を含むアンダーコート層と、次いで導電性薄膜とが積層され、前記酸化ケイ素を含むアンダーコート層が付いたガラス基板のヘーズが3%以下であり、前記酸化ケイ素を含むアンダーコート層が付いたガラス基板の、前記導電性薄膜が積層される側の面の表面粗さ(Ra)が0.5nm以上50nm以下となっている。
【0087】
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板の具体的な構成としては、第1の実施形態同様、図1に示すように下から順に、ガラス基板11、アンダーコート層12、導電性薄膜(トップコート層)13が積層された構成を有している。以下、具体的に説明する。
<ガラス基板、導電性薄膜、アンダーコート層>
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板におけるガラス基板、導電性薄膜としては、第1の実施形態の場合と同様のものを好ましく用いることができる。この際、ガラス基板のアンダーコート層を積層する面の表面粗さ、ヘーズについては、特に限定されるものではないが、第1の実施形態と同様の表面粗さ、ヘーズを有するものであってもよい。
【0088】
また、アンダーコート層についても、第1の実施形態で説明したものと同様のものを用いることができるが、本実施形態においては、アンダーコート層は少なくとも酸化ケイ素を含む層を有している。ここでいう、酸化ケイ素を含む層とは、第1の実施形態で既述の様に、酸化ケイ素を含んでいればよいが、酸化ケイ素を主成分とする層を有していることがより好ましい。この場合「主成分」とは、該成分が酸化物基準の質量百分率表示で、90%以上含まれていることを意味する。
【0089】
このように、酸化ケイ素を含む層を設けることにより、ガラス基板中に含まれるアルカリ成分が、導電性薄膜へ移動することを抑制することが可能となり、導電性薄膜の特性劣化を抑制することができる。また、酸化ケイ素を含む層(膜)の表面上で、フッ化水素によるエッチング処理が可能となる。
【0090】
また、ガラス基板から導電性薄膜へアルカリ成分が移動した場合、導電性薄膜が剥離する場合があるが、係る酸化ケイ素を含む層を設けることによりアルカリ成分の移動が抑制され、導電性薄膜が剥離することも抑制することができる。このため、ガラス基板の表面に施したフッ化水素によるエッチング処理の効果と相乗的に働き、導電性薄膜の剥離の発生をより抑制することが可能になり好ましい。
【0091】
なお、第1の実施形態で説明したように酸化ケイ素を含む層以外の層を有することもできる。酸化ケイ素を含む層を有するアンダーコート層の構成としては例えばSiO膜、SiO/TiO膜、SiOC膜、SnO/SiO膜を含む構成が挙げられる。これらの膜はいずれもアルカリバリア膜として機能することができ、中でもSiO/TiO膜はアルカリバリア性能が高いため特に好ましく用いることができる。
【0092】
なお、アンダーコート層の好ましい厚さや好適な形成方法等については、第1の実施形態で説明したとおりであるため、ここでは省略する。
【0093】
そして、酸化ケイ素を含むアンダーコート層が積層されたガラス基板の、導電性薄膜が積層される側の表面粗さ(Ra)は0.5nm以上50nm以下であり、0.5nm以上30nm以下であることがより好ましく、0.5nm以上15nm以下であることが特に好ましい。
【0094】
表面粗さ(Ra)は、AFMにより観察される表面形状における表面粗さ(Ra)であり、JIS B 0601(1994)に準拠した測定方法により測定することができる。
【0095】
このように、酸化ケイ素を含むアンダーコート層が積層されたガラス基板の、導電性薄膜が積層される側の面の表面粗さ(Ra)が上記範囲を満たすことにより、高温で、かつ導電性薄膜に電圧が印加された実際の使用環境下においても、導電性薄膜の剥離の発生を抑制できるため好ましい。
【0096】
そして、酸化ケイ素を含むアンダーコート層を有するガラス基板のヘーズは3%以下であり、1%以下であることがより好ましく0.8%以下であることが特に好ましい。
【0097】
ヘーズは、ガラス基板に光を当てた場合に、その反対側の面に透過した光(全透過光量)のうちの散乱透過光量の割合を示したものであり、JIS K 7136に準拠した方法により測定することができる。
【0098】
すなわち、ヘーズが上記範囲にあることにより、ガラス基板を透過する光の散乱の度合いは小さく、アンダーコート層を有するガラス基板が透明であり、曇りがないことを意味している。
【0099】
このように酸化ケイ素を含むアンダーコート層を有するガラス基板を透過する光のうち、散乱透過光量の比率をほとんど増加させない程度の微細な凹凸を、酸化ケイ素を含むアンダーコート層を有するガラス基板のアンダーコート層上面に設けることにより、透明性を要求される太陽電池用ガラス基板や、ディスプレイ用ガラス基板、低放射ガラス基板、建築用低放射ガラス基板等の各種用途に好ましく用いることができるため好ましい。
【0100】
そして、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板として、ガラス基板の面上に積層された酸化ケイ素を含むアンダーコート層がついたガラス基板の、導電性薄膜が積層される側の面がフッ化水素によりエッチング処理がなされていることが好ましい。これにより容易に、上記特性を有する酸化ケイ素を含むアンダーコート層を有するガラス基板とすることができる。この点について以下に説明する。
<酸化ケイ素を含むアンダーコート層のエッチング処理>
本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板においては、フッ化水素によるエッチング処理としては例えば、搬送されているシート状のガラスに対して、常圧下でフッ化水素を含有する気体を吹きつけることにより行うことができる。
【0101】
この際、搬送されているシート状のガラスに対して、常圧下でフッ化水素を含有する気体を吹きつけることにより行い、少なくとも前記シート状のガラスの、前記フッ化水素を含有する気体を吹きつける部分が300℃以上であり、シート状のガラスの被処理部分に対する前記フッ化水素を含有する気体を吹きつける時間が1秒以上2分以下であることが好ましい。
【0102】
ここで、本実施形態におけるシート状のガラスとは、成型工程後、除冷工程、切断工程等を経て製造されたガラス基板の面上に酸化ケイ素含むアンダーコート層を形成したガラス基板、製造工程において成型工程後、切断工程を行っていないガラスリボンの面上に酸化ケイ素を含むアンダーコート層を形成したものとを含み、いずれの形態であってもよい。ガラスリボンの場合には、エッチング処理後更に切断工程を行い所望のサイズのガラス基板とすることができる。
【0103】
なお、第1の実施形態でも既述のように、ガラス基板の製造工程におけるガラスリボンの面上に酸化ケイ素を含むアンダーコート層を形成したものをシート状のガラスとして用いる場合、加熱に要するエネルギーを節約することができるため製造コスト等の観点から好ましい。
【0104】
フッ化水素により酸化ケイ素を含むアンダーコート層の上面についてエッチング処理を行う際のより具体的な条件としては、特に限定されるものではない。しかし、第1の実施形態において、ガラス基板表面についてのフッ化水素によるエッチング処理として記載したものと同様の条件により好ましく行うことができる。
【0105】
なお、第1の実施形態で説明したようにシート状のガラスを搬送する際には、シート状のガラスをローラー等により搬送することができる。この際、少なくとも、シート状のガラスの酸化ケイ素を含むアンダーコート層の面についてフッ化水素により処理を行えばよいが、該アンダーコート層を設けていない面についてもフッ化水素を含有する気体により処理を行ってもよい。
【0106】
また、第1の実施形態でも既述のように、ローラー等の搬送手段と接触している面、接触していない面、いずれについてもフッ化水素を含有する気体により処理することができるが、ローラー等と接触していない面について処理を行うことが好ましい。このため、本実施形態において、シート状のガラスを搬送する際には、酸化ケイ素を含むアンダーコート層を形成した面がローラー等と接触しないように搬送し、該面についてフッ化水素により処理を行うことが好ましい。
【0107】
そして、(酸化ケイ素を含むアンダーコート層を形成した)シート状のガラスについてフッ化水素によるエッチング処理を行うことにより、該アンダーコート層上に微細な凹凸を形成することができる。このような凹凸を形成することにより、アンダーコート層と、導電性薄膜の密着性(耐剥離性)を高めることができ、導電性薄膜の剥離の発生を抑制することができる。
【0108】
これは、酸化ケイ素を含むアンダーコート層表面に上記微細な凹凸を設けることにより、導電性薄膜のアンダーコート層に対する接着強度を高めることが可能になるためである。
【0109】
なお、上記のように、エッチング処理を施した酸化ケイ素を含むアンダーコート層上に、他のアンダーコート層や、後述するその他の層を形成した場合でも、前記酸化ケイ素を含むアンダーコート層に形成した凹凸が、その上に積層したアンダーコート層等の表面に転写される。このため、導電性薄膜との耐剥離性を同様に高めることができる。
【0110】
そして、一般的に導電性薄膜付きガラス基板においては、アンダーコート層と導電性薄膜の間で剥離を生じ易いところ、上記構成とすることにより、アンダーコート層と、導電性薄膜との層間の接着強度を高め、これらの層の耐剥離性を高めることが可能になる。特に、電圧を印加した環境下では導電性薄膜が剥離し易くなるところ、上記構成とすることにより、このような環境下においても導電性薄膜の剥離の発生を抑制することが可能になる。
<その他の層>
また、本実施形態においても、上述した、ガラス基板、アンダーコート層、導電性薄膜に加えて、第1の実施形態でその他の層として挙げた以下の層を任意に設けることもできる。
【0111】
ガラス基板と酸化ケイ素を含むアンダーコート層との間にTiO膜、SnO膜等を設けることができる。
【0112】
さらに、酸化ケイ素を含むアンダーコート層と導電性薄膜との間に、SiOとSnOの混合酸化物や多層膜等を設けることもできる。
【0113】
ガラス基板の導電性薄膜を形成する面とは反対側の面に、反射防止膜等を設けることもできる。
【0114】
なお、上記したガラス基板と導電性薄膜との間に設ける膜自身がアルカリバリア性能を有していてもよい。
【0115】
上述の層を設けた場合でも、アンダーコート層表面に形成した凹凸により導電性薄膜の剥離の発生を抑制することが可能である。
【0116】
以上、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板について説明したが、本実施形態の導電性薄膜付きガラス基板はDHB試験において膜剥がれが生じる温度が150℃以上であることが好ましく、165℃以上であることがより好ましい。
【0117】
なお、DHB試験については、第1の実施形態で説明した方法と同様の手順により行うことができる。
【0118】
本発明の発明者らの検討によると、DHB試験において膜剥がれが生じる温度が上記温度以上であることにより、例えば太陽電池等の過酷な使用環境下で用いる用途であっても、十分な期間に渡って膜剥がれが発生しにくい導電性薄膜付きガラス基板とすることができる。
[第3の実施形態]
本実施形態では、第1または第2の実施形態で説明した導電性薄膜付きガラス基板を用いた薄膜太陽電池について、すなわち、第1または第2の実施形態で説明した導電性薄膜付きガラス基板を薄膜太陽電池用ガラス基板として用いた例について説明する。
【0119】
図2は、薄膜太陽電池の一例を示す断面図である。薄膜太陽電池20は、ガラス基板11の一方の表面に、アンダーコート層12を介して、薄膜太陽電池素子21を形成したものである。なお、上述の様にガラス基板11の他方の表面に反射防止膜(図示略)等を設けてもよい。
【0120】
薄膜太陽電池素子21は、ガラス基板11側から順に、透明電極層(導電性薄膜)22、光電変換層23(発電層)、裏面電極層24を有する。
【0121】
透明電極層22は、上述した導電性薄膜13からなる層である。
【0122】
光電変換層23は、薄膜半導体からなる層である。薄膜半導体としては、アモルファスシリコン系半導体、微結晶シリコン系半導体、化合物半導体(カルコパイライト系半導体、CdTe系半導体等)、有機系半導体等が挙げられる。
【0123】
裏面電極層24の材料としては、光透過性を有さない材料(銀、アルミニウム等)、光透過性を有する材料(ITO、SnO、ZnO等)が挙げられる。
【0124】
このように、第1または第2の実施形態で説明した導電性薄膜付きガラス基板は、薄膜太陽電池用ガラス基板に好適に用いることができる。そして、第1または第2の実施形態で説明した導電性薄膜付きガラス基板は、ガラス基板の表面粗さが緻密で適度に細かく、かつヘーズが小さい。このため、透明性に優れ、高温で、かつ導電性薄膜に電圧が印加された実際の使用環境下においても、導電性薄膜の膜剥がれの発生を抑制することができる。従って、該導電性薄膜付きガラス基板を用いた薄膜太陽電池は耐久性の高いものとすることが可能になる。
【0125】
本実施形態の薄膜太陽電池としては、薄膜シリコン系太陽電池、CdTe系薄膜太陽電池等のガラス板上に透明導電膜(導電性薄膜)を設ける薄膜太陽電池全般に好適に適用することができる。
【実施例】
【0126】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)評価方法
以下の実施例、比較例において得られた導電性薄膜付きガラス基板の特性評価方法について以下に説明する。
(DHB試験)
本発明におけるDHB試験は以下の手順により行った。
【0127】
(1)サンプルを、2つの電極間に配置した。導電性薄膜が形成されていない側(ガラス基板表面)をアルミニウムで覆われた銅電極(アノード)に接触させ、導電性薄膜側を、グラファイト電極(カソード)に接触させた。設定温度まで加熱した後、電圧:500Vで、電圧印加時間:15分間保持した。
【0128】
(2)室温まで冷却した後、サンプルの導電性薄膜側を、相対湿度100%の雰囲気に1時間暴露し、導電性薄膜側に凝集を起こさせた。凝集温度、水温は、55℃とし、気化温度は、50℃±2℃とした。
【0129】
(3)サンプルの導電性薄膜側の表面に、導電性薄膜の剥離が発生しているか否かを確認した。なお、剥離の有無は、サンプル内に目視で確認できる剥離部分の面積が10%を超える場合、剥離が発生したと定義した。
【0130】
(4)同一条件で作製した別のサンプルを複数用意し、試験は、各設定温度について3回ずつ(3サンプルずつ)行い、サンプルの導電性薄膜が剥がれてしまった温度をTmax(℃)とした。
【0131】
なお、(1)の工程において加熱する温度、すなわち設定温度は、120℃から225℃の範囲について、15℃毎とし、それぞれの設定温度についてサンプルを作成して測定を行っている。また、225℃でも剥離が生じなかった試料については、DHB温度を「225℃超」とした。
(表面粗さRa)
エッチング処理後のガラス基板のエッチング処理を行った面について、JIS B 0601に準拠して表面粗さ(Ra)を測定した。
【0132】
具体的には、走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、型番SPI3800N)を用いて、得られたガラス基体中の観察層を2μm角、取得データ数を1024×1024として、DFMモードで観察を行った時の表面粗さ(Ra)を測定した。
(ヘーズ)
JIS K 7136に準拠してヘーズ(HAZE)を測定した。
【0133】
具体的には、ヘーズメータ(スガ試験機社製、型番HZ−2)を用いてC光源でおこなった。
(2)実験手順
[実施例1]
大気圧CVD法で用いる両流しインジェクタ30を用いて、図3に示す模式図のようにして、板厚4mmのソーダライムシリケートガラス基板の表面に、フッ化水素を含むガスを接触させた(以下、単に「HF処理」とも呼ぶ)。
【0134】
具体的な条件としては、図3に示す中央スリット31から、フッ化水素3.70SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素41.3SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹き付けた。また、同時に、外スリット32からHOを17.5g/minとNを75.2SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、ガラス基体のエッチング処理を行った。
【0135】
ガス全体に対するフッ化水素の濃度は2.6体積%であり、水とフッ化水素のモル比である〔HO(mol)〕/〔HF(mol)〕=5.9であった。ガスはガラス基板33上を、流路34を通じて流れ、排気スリット35では吹きつけガス流量の2倍量を排気している。
【0136】
ガラス基板は550℃に加熱して、図中矢印Aの方向に搬送した。ガラス基板の温度は、ガスを吹き付ける直前に放射温度計を設置して測定した。エッチング時間(ガラス基板の被処理部分に対してフッ化水素を含有するガスを吹きつける時間)は約20秒と短時間であった。
【0137】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板の表面粗さ(Ra)=5.7nmであり、ヘーズ=0.06%であった。
【0138】
580℃に加熱したガラス基板の表面(エッチング処理を行った面)にCVD法によって、厚さ8nmのTiO膜、厚さ25nmのSiOからなるアルカリバリア膜(アンダーコート層)および厚さ550nmのSnOからなる透明導電膜(導電性薄膜)を形成した。得られた透明導電膜付きガラス基板について、DHB試験に供した。結果を表1に示す。
[実施例2]
図3に示す中央スリット31から、フッ化水素1.85SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素43.15SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹き付けた。また、同時に外スリット32からHOを17.5g/minとNを75.2SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、ガラス基体のエッチング処理を行った。
【0139】
ガス全体に対するフッ化水素の濃度は1.3体積%、〔HO(mol)〕/〔HF(mol)〕=11.8であった。
【0140】
それ以外の点は実施例1と同様に実施した。
【0141】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板の表面粗さ(Ra)=8.3nmであり、ヘーズ=0.03%であった。
【0142】
さらに、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、得られた透明導電膜付きガラス基板について、DHB試験に供した。結果を表1に示す。
[実施例3]
図3に示す中央スリット31から、フッ化水素3.70SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素41.3SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹き付けた。また、同時に外スリット32からN97SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、ガラス基体のエッチング処理を行った。
【0143】
ガス全体に対するフッ化水素の濃度は2.6体積%、〔HO(mol)〕/〔HF(mol)〕=0であった。ガラス基板は搬送してエッチング処理を行った。エッチング時間は約10秒と短時間であった。
【0144】
それ以外の点は実施例1と同様に実施した。
【0145】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板の表面粗さ(Ra)=4.0 nm であり、ヘーズ=0.05%であった。
【0146】
さらに、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、得られた透明導電膜付きガラス基板についてDHB試験に供した。結果を表1に示す。
[実施例4]
図3に示す中央スリット31から、フッ化水素3.70SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素41.3SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹き付けた。また、同時に外スリット32からHOを63.0g/minとNを18.6SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、ガラス基体のエッチング処理を行った。
【0147】
ガス全体に対するフッ化水素の濃度は2.6体積%、〔HO(mol)〕/〔HF(mol)〕=21.2であった。エッチング処理の際ガラス基板は600℃に加熱して行った。それ以外の点は実施例1と同様に実施した。
【0148】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板の表面粗さ(Ra)=7.0nmであり、ヘーズ=0.03%であった。
【0149】
さらに、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、得られた透明導電膜付きガラス基板についてDHB試験に供した。結果を表1に示す。
[実施例5]
580℃に加熱した板厚4mmのソーダライムシリケートガラス基板の表面にCVD法によって、厚さ8nmのTiO膜さらに厚さ25nmのSiOからなるアルカリバリア膜(アンダーコート層)を作成した。
【0150】
595℃へ加熱した上記アンダーコート層付きガラス基板に対して、図3に示す中央スリット31から、フッ化水素1.50SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素58.5SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹き付けた。また、同時に外スリット32からHOを20g/minとNを205SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹き付けて、ガラス基体のエッチング処理を行った。
【0151】
ガス全体に対するフッ化水素の濃度は0.5体積%、〔HO(mol)〕/〔HF(mol)〕=16.6であった。ガラス基板は搬送してエッチング処理を行った。エッチング時間は約7.5秒と短時間であった。
【0152】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板(アンダーコート層)の表面粗さ(Ra)=0.6nmであり、ヘーズ=0.25%であった。
【0153】
さらに、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、得られた透明導電膜付きガラス基板について、DHB試験に供した。結果を表1に示す。
[比較例1]
図3に示す中央スリット31から、フッ化水素0SLM(標準状態での気体で毎分リットル)と窒素45SLMを混合したガスを150℃に加熱して流速34cm/sでガラス基板に向けて吹きつけた。また、同時に外スリット2からHOを52.5g/minとNを31.7SLMを同じく150℃に加熱してガラス基板に向けて吹きつけて、ガラス基体の処理を行った。ガス全体に対するフッ化水素の濃度は0体積%であった。
【0154】
それ以外の点は実施例1と同様に実施した。
【0155】
エッチング処理後、エッチング処理を行った面のガラス基板の表面粗さ(Ra)=0.4nmであり、ヘーズ=0.04%であった。
【0156】
さらに、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、得られた透明導電膜付きガラス基板についてDHB試験に供した。結果を表1に示す。
[比較例2]
未処理ガラス基板(板厚4mmのソーダライムシリケートガラス基板)に対して、実施例1同様に透明導電膜等を成膜し、DHB試験に供した。結果を表1に示す。
【0157】
また、ヘーズ、表面粗さ(Ra)は未処理ガラス基板のアンダーコート層、導電性薄膜を形成する面について測定を行ったところ、ガラス基板の表面粗さ(Ra)=0.3nm、ヘーズ=0.06%であった。
【0158】
以上の実施例、比較例の結果によれば、フッ化水素によりエッチング処理が施された実施例1〜5の導電性薄膜付きガラス基板においては、DHB試験の結果が150℃以上となり、実際の使用環境下においても導電性薄膜の膜剥がれの発生を十分に抑制した導電性薄膜付きガラス基板となっていることが確認できた。
【0159】
これに対して、フッ化水素によるエッチング処理を行っていない比較例1、2の導電性薄膜付きガラス基板においては、DHB試験の結果は150℃未満であり、導電性薄膜の膜剥がれ耐久性が十分なものではなかった。
【0160】
【表1】
以上、導電性薄膜付きガラス基板、薄膜太陽電池、低放射ガラス基板、導電性薄膜付きガラス基板の製造方法を実施形態および実施例等で説明したが、本発明は上記実施形態および実施例等に限定されない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0161】
本出願は、2012年10月17日に日本国特許庁に出願された特願2012−229515号に基づく優先権を主張するものであり、特願2012−229515号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0162】
10 導電性薄膜付きガラス基板
11 ガラス基板
12 アンダーコート層
13、22 導電性薄膜(トップコート層)
図1
図2
図3